(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電動モータと、前記電動モータの回転力をワイパアームに伝達する出力ギヤと、前記電動モータに電流を供給する電源回路と、前記出力ギヤを収容するケーシングと、を有するワイパモータであって、
前記電源回路は、
前記出力ギヤの回転力で回転する可動端子と、
前記ケーシングに支持され、かつ、前記可動端子が回転すると前記可動端子に接触及び離反する第1接触点を有する第1固定端子と、
前記ケーシングに支持され、かつ、前記可動端子が回転すると前記可動端子に接触及び離反する第2接触点を有する第2固定端子と、
を備え、
前記第1固定端子と前記第2固定端子とは、前記出力ギヤの回転方向で互いに異なる位置に配置され、
前記第2接触点は、前記出力ギヤの径方向で前記第1接触点よりも外側に配置され、
前記可動端子は、
円弧状に配置された接続部と、
前記出力ギヤの回転方向で前記接続部の一端に接続され、かつ、前記第1接触点が接触及び離間する第1接点部と、
前記出力ギヤの回転方向で前記接続部の他端に接続され、かつ、前記第2接触点が接触及び離間する第2接点部と、
を有し、
前記第1接点部は、前記出力ギヤの径方向において、前記第1接点部と前記出力ギヤの回転中心である軸線との距離が、前記接続部と前記軸線との距離よりも長く、かつ、前記第2接触点と前記軸線との距離よりも短くなる位置に配置されている、ワイパモータ。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、ウィンドシールドを払拭するワイパ装置が設けられている。ワイパ装置は、ウィンドシールドを払拭するワイパアームと、ワイパアームを動作させるワイパモータと、を有する。ワイパモータ及びワイパ装置が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されたワイパ装置は、ピボット軸を支点としてそれぞれ揺動可能な第1ワイパアーム及び第2ワイパアームと、ワイパモータと、ワイパモータの回転力をピボット軸に伝達する駆動ロッド及び連結ロッドと、を有する。
【0003】
ワイパモータは電動モータであり、ワイパモータは、モータハウジング内に設けたアマチュアと、アマチュアに設けたコイルと、モータハウジングに固定されたギヤケースと、ギヤケース内に配置された駆動ギヤと、アマチュアの回転力を駆動ギヤに伝達するピニオンギヤと、駆動ギヤと共に回転する出力ギヤと、を有する。駆動ギヤに可動端子としてのリレープレートが取り付けられている。ギヤケースに、第1固定端子としての第1コンタクトプレート、及び第2固定端子としての第2コンタクトプレートが設けられている。
【0004】
アマチュアに通電するアース用ブラシ、高速用ブラシ、低速用ブラシが設けられている。また、バッテリと各ブラシとの間に電源回路が設けられ、電源回路を接続及び遮断するワイパスイッチが設けられている。例えば、ワイパスイッチがLO位置に操作されると、バッテリから低速用ブラシに電流が流れ、アマチュアが回転する。アマチュアの回転力は駆動ギヤ、連結ロッド、ピボット軸を介して第1ワイパアーム及び第2ワイパアームに伝達され、第1ワイパアーム及び第2ワイパアームが揺動し、上反転位置と下反転位置との間で動作する。
【0005】
ワイパスイッチがOFF位置に操作されると、バッテリからアマチュアへの電流の供給が遮断されるが、アマチュアは回転を継続する。そして、第1コンタクトプレート及び第2コンタクトプレートが共にリレープレートに接触すると、低速側ブラシはアース用ブラシと短絡され、ワイパモータに電気的なブレーキが掛けられ、第1ワイパアーム及び第2ワイパアームが下反転位置で停止する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載されたワイパモータ及びワイパ装置は、第1固定端子と可動端子とが、駆動ギヤの径方向に接近して配置されている。このため、異物、例えば、第1固定端子と駆動ギヤとの摺動により摩耗粉が発生すると、ワイパアームが反転位置に到達する前に、第1固定端子と可動端子とが短絡する可能性があった。
【0008】
本発明の目的は、固定端子と可動端子とが不用意に短絡することを防止できる、ワイパモータ及びワイパ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電動モータと、前記電動モータの回転力をワイパアームに伝達する出力ギヤと、前記電動モータに電流を供給する電源回路と、前記出力ギヤを収容するケーシングと、を有するワイパモータであって、前記電源回路は、前記出力ギヤの回転力で回転する可動端子と、前記ケーシングに支持され、かつ、前記可動端子が回転すると前記可動端子に接触及び離反する
第1接触点を有する第1固定端子と、前記ケーシングに支持され、かつ、前記可動端子が回転すると前記可動端子に接触及び離反する
第2接触点を有する第2固定端子と、を備え、
前記第1固定端子と前記第2固定端子とは、前記出力ギヤの回転方向で互いに異なる位置に配置され、前記第2接触点は、前記出力ギヤの径方向で前記第1接触点よりも外側に配置され、前記可動端子は、円弧状に配置された接続部と、前記出力ギヤの回転方向で前記接続部の一端に接続され、かつ、前記第1接触点が接触及び離間する第1接点部と、前記出力ギヤの回転方向で前記接続部の他端に接続され、かつ、前記第2接触点が接触及び離間する第2接点部と、を有し、前記第1接点部は、前記出力ギヤの径方向において、前記第1接点部と前記出力ギヤの回転中心である軸線との距離が、前記接続部と前記軸線との距離よりも長く、かつ、前記第2接触点と前記軸線との距離よりも短くなる位置に配置されている。
【0010】
本発明における前記電源回路は、複数の接点と、前記複数の接点を接続及び遮断する信号を出力するマイクロコンピュータと、を有する。
【0011】
本発明における前記可動端子、前記第1固定端子及び前記第2固定端子は、前記出力ギヤの回転中心である軸線に沿った方向で前記出力ギヤと前記ケーシングとの間に配置されている。
【0012】
本発明における前記電動モータは、前記出力ギヤに回転力を伝達するアマチュア軸を有し、前記ケーシングは、前記アマチュア軸を収容するギヤケースと、前記ギヤケースの開口部を覆うカバーと、を有し、前記カバーにより支持され、かつ、前記出力ギヤと共に回転するホルダが設けられ、前記可動端子は、前記ホルダに取り付けられている。
【0013】
本発明における前記可動端子は、前記出力ギヤに取り付けられている。
【0014】
本発明は、車両に設けられ、かつ、第1反転位置と第2反転位置との間で往復動作してウィンドシールドを払拭するワイパアームと、電動モータの回転力を前記ワイパアームに伝達する出力ギヤと、前記電動モータに電流を供給する電源回路と、前記出力ギヤを収容するケーシングと、を有するワイパ装置であって、前記電動モータは、前記電源回路から電流が供給されるコンミテータと、前記コンミテータに接触する第1ブラシ、第2ブラシ及び第3ブラシと、を有し、前記電源回路は、前記出力ギヤの回転力で回転する可動端子と、前記ケーシングにより支持され、かつ、前記可動端子が回転すると前記可動端子に接触及び離反する
第1接触点を有する第1固定端子と、前記ケーシングにより支持され、かつ、前記可動端子が回転すると前記可動端子に接触及び離反する
第2接触点を有する第2固定端子と、前記電動モータに電流を供給する電源と、前記電源に接続された第1接点と、前記第1ブラシに接続された第2接点と、前記第2ブラシに接続された第3接点と、前記第1固定端子に接続された第4接点と、
前記第1接点及び前記第2接点、前記第3接点、前記第4接点を互いに接続及び遮断する信号を出力するマイクロコンピュータと、前記マイクロコンピュータに信号を出力して前記電動モータの駆動及び停止を切り替えるワイパスイッチと、を備え
、前記第1固定端子と前記第2固定端子と
は、前記出力ギヤの回転方向で互いに異なる位置に配置さ
れ、前記
第2接触点は、前記出力ギヤの径方向で前記第1接触点よりも外側に配置され、前記可動端子は、円弧状に配置された接続部と、前記出力ギヤの回転方向で前記接続部の一端に接続され、かつ、前記第1接触点が接触及び離間する第1接点部と、前記出力ギヤの回転方向で前記接続部の他端に接続され、かつ、前記第2接触点が接触及び離間する第2接点部と、を有し、前記第1接点部は、前記出力ギヤの径方向において、前記第1接点部と前記出力ギヤの回転中心である軸線との距離が、前記接続部と前記軸線との距離よりも長く、かつ、前記第2接触点と前記軸線との距離よりも短くなる位置に配置され、前記マイクロコンピュータは、前記電動モータを駆動するように前記ワイパスイッチが操作されると、前記第1接点を前記第2接点または前記第3接点に接続し、かつ、前記第1接点を前記第4接点から遮断し、前記
マイクロコンピュータは、前記電動モータを停止するように前記ワイパスイッチが操作されると、前記第4接点と前記第3接点とを接続し、かつ、前記第1接点を前記第2接点及び前記第3接点から遮断する。
【0015】
本発明は、前記電動モータを駆動するように前記ワイパスイッチが操作されて前記出力ギヤが回転すると、前記第1固定端子及び前記第2固定端子が前記可動端子に接触する動作と、前記第1固定端子及び前記第2固定端子が前記可動端子から離反する動作とを交互に繰り返す。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、固定端子と可動端子とが不用意に短絡することを防止できる。
【0017】
本発明によれば、可動端子と固定端子とが接触する時間または範囲をなるべく短くでき、摩耗粉の発生を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、ワイパ装置及びワイパモータの実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0020】
図1に示す車両10は、ウィンドシールドとしてのフロントガラス11を有する。また、車両10は、フロントガラス11を払拭するワイパ装置12を有している。ワイパ装置12は、フロントガラス11に付着した雨水、雪、塵埃等の異物を払拭して、視界を良好にするために設けられている。ワイパ装置12は、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14と、ワイパモータ15と、ワイパモータ15の回転力を第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14に伝達する動力伝達機構16と、を有する。
【0021】
第1ワイパアーム13はピボット軸17を中心として回動可能であり、第2ワイパアーム14はピボット軸18を中心として回動可能である。第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14にワイパブレード19がそれぞれ取り付けられている。2本のピボット軸17,18は車体20によってそれぞれ回動可能に支持されている。
【0022】
ワイパモータ15は、車両10の前後方向で、フロントガラス11の前端部11Aよりも前方に配置されている。ワイパモータ15の具体例を、
図2、
図3、
図4、
図5を参照して説明する。ワイパモータ15は、ギヤケース21と、ギヤケース21の開口部58を覆うカバー22と、ギヤケース21に固定したモータケース23と、モータケース23及びギヤケース21内に亘って配置した電動モータ24と、を有する。ギヤケース21、カバー22及びモータケース23によりケーシング95が構成されている。
【0023】
電動モータ24はブラシ付きモータである。電動モータ24は、モータケース23内に固定した永久磁石25と、モータケース23内に回転可能に設けたアマチュアコア26と、アマチュアコア26を取り付けたアマチュア軸27と、アマチュア軸27に取り付けられたコンミテータ28と、複数のブラシと、を有する。アマチュア軸27は、軸線A1を中心として回転可能である。
【0024】
アマチュアコア26に通電用のコイルが巻かれている。コンミテータ28はアマチュアコア26のコイルに通電可能に接続されている。ギヤケース21は、トレイ部59及び筒部60を有する。筒部60にモータケース23がねじ部材により固定されている。筒部60内及びモータケース23内に亘ってブラシホルダ29が設けられている。複数のブラシは、アース用ブラシ30、低速用ブラシ31及び高速用ブラシ32を含む。ブラシホルダ29は、
図5のように、アース用ブラシ30、低速用ブラシ31及び高速用ブラシ32を支持している。アース用ブラシ30、低速用ブラシ31及び高速用ブラシ32は、コンミテータ28に接触している。
【0025】
図2のように、トレイ部59及びカバー22により囲まれた収容室61が形成されている。アマチュア軸27のうち、収容室61に配置された箇所にウォーム33,34が設けられている。ウォーム33,34は、アマチュア軸27に対する傾斜方向が互いに逆となっている。
【0026】
図3のように、収容室61内に支持軸35,36が設けられている。支持軸35がウォームギヤ37を回転可能に支持し、支持軸36がウォームギヤ38を回転可能に支持している。ウォームギヤ37はウォーム33と噛み合い、ウォームギヤ38はウォーム34と噛み合っている。ウォームギヤ37に固定されたピニオンギヤ41が設けられ、ウォームギヤ38に固定されたピニオンギヤ42が設けられている。
【0027】
収容室61内に出力軸39が回転可能に設けられ、出力軸39の一部は収容室61の外に配置されている。出力軸39の回転中心は軸線A2で表されている。収容室61内に出力ギヤ40が設けられている。出力ギヤ40は出力軸39と共に一体回転可能である。出力ギヤ40はピニオンギヤ41,42に噛み合っている。
【0028】
動力伝達機構16は、出力軸39とピボット軸17,18とを動力伝達可能に接続する要素であり、動力伝達機構16は、アーム43、リンク44及びアーム55,56を有する。アーム43は、出力軸39に固定され、アーム55はピボット軸18に連結され、アーム56はピボット軸17に連結されている。また、アーム43とアーム55とを連結するリンク57が設けられている。アーム55とリンク44とがピンを介して回動可能に連結され、アーム56とリンク44とがピンを介して回動可能に連結されている。
【0029】
図4のように、カバー22の内面に支持軸62が設けられており、インシュレータ63が支持軸62により回転可能に支持されている。インシュレータ63は合成樹脂により形成され、インシュレータ63は収容室61に配置されている。インシュレータ63は、軸線A2に沿った方向で、出力ギヤ40とカバー22との間に配置されている。インシュレータ63は環状であり、
図6のように、インシュレータ63は、筒部68と、筒部68の外周端から外側に向けてフランジ形状に張り出した円板部69と、を有する。
【0030】
図6、
図7、
図8のように、インシュレータ63の円板部69にリレープレート64が取り付けられている。リレープレート64は、導電性の金属をプレート形状にプレス加工したものであり、リレープレート64は円板部69に固定されている。リレープレート64は、第1接点部65と第2接点部66と円弧部67とを有する。第1接点部65は、円板部69の円周方向における一部の範囲に配置されている。第2接点部66は、円板部69の円周方向における一部の範囲に配置されている。第1接点部65が配置されている範囲と、第2接点部66が配置されている範囲とは異なる。なお、
図7はインシュレータ63を
図8の背面側から見た図を示している。
【0031】
円弧部67は第1接点部65と第2接点部66とを接続している。円弧部67は筒部68の外側を囲むように、円板部69の円周方向で一部の範囲に配置されている。第1接点部65に爪70が設けられ、第2接点部66に爪71が設けられている。円板部69には円板部69を厚さ方向に貫通する孔が2つ設けられている。爪70,71が円板部69の孔にそれぞれ挿入されてカシメられ、リレープレート64が円板部69に固定されている。
【0032】
図2及び
図4のように、カバー22に基板72が取り付けられている。基板72は、軸線A2方向で、出力ギヤ40とカバー22との間に配置されている。基板72は合成樹脂製であり、基板72にモータ用コンタクトプレート73及びアース用コンタクトプレート74が取り付けられている。モータ用コンタクトプレート73及びアース用コンタクトプレート74は、基板72を介してカバー22により支持されている。モータ用コンタクトプレート73は接点75を有し、アース用コンタクトプレート74は接点76を有する。モータ用コンタクトプレート73及びアース用コンタクトプレート74は導電性の金属をプレート状に加工したものである。軸線A2に対して垂直な平面視で、接点75及び接点76は、円板部69の配置領域内に配置されている。
【0033】
具体的に説明すると、接点75と接点76とは、円板部69の径方向で異なる位置に配置され、かつ、円板部69の円周方向で異なる位置に配置されている。つまり、接点75と接点76とは、円板部69の回転中心である軸線A2からの径方向の距離が異なる位置に配置されている。また、第1接点部65及び第2接点部66とは、円板部69の回転中心である軸線A2からの径方向の距離が異なる位置に配置されている。接点75は、円板部69の径方向で、第1接点部65の配置範囲内に配置されている。接点76は、円板部69の径方向で、第2接点部66の配置範囲内に配置されている。
【0034】
次に、電動モータ24に電流を供給する電源回路94の構成を、
図5を参照して説明する。バッテリ77が車両10に搭載されており、バッテリ77の一方の電極は車体20に接地され、バッテリ77の他方の電極はキースイッチ78、ヒューズ79を介してマイクロコンピュータ80に接続されている。バッテリ77は、充電及び放電が可能な二次電池である。
【0035】
マイクロコンピュータ80は、中央演算処理装置(CPU)、入力ポート、出力ポート、記憶部、演算部、複数の接点81,82,83,84を互いに接続及び遮断するスイッチング素子、スイッチング素子を動作させる低電流駆動回路を有する。低電流回路に供給される電流はミリアンペア単位である。マイクロコンピュータ80は、スイッチング素子をオン・オフする信号を出力する。半導体スイッチをオン・オフすると、接点81,82,83,84互いに接続及び遮断される。
【0036】
マイクロコンピュータ80には、ワイパスイッチ85の信号が入力される。ワイパスイッチ85は、車両10の乗員が操作して、ワイパ装置12の起動及び停止を選択する。また、ワイパスイッチ85を操作すると、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14の動作速度として高速モード及び低速モードを切り替え可能である。
【0037】
接点81はヒューズ79に接続され、接点82はモータ用コンタクトプレート73に接続され、接点83はコイル87を介して低速用ブラシ31に接続され、接点84はコイル88を介して高速用ブラシ32に接続されている。アース用ブラシ30はサーキットブレーカ89を介して車体20に接地されている。サーキットブレーカ89とアース用コンタクトプレート74とは、互いに並列に配置されている。
【0038】
出力ギヤ40に突起90が設けられている。突起90は出力ギヤ40の回転方向で1箇所に配置されている。インシュレータ63の円板部69に突起91が設けられている。突起91は円板部69の円周方向で1箇所に設けられている。突起90及び突起91は、出力ギヤ40の径方向で同じ箇所に設けられており、突起90と突起91とは接触及び離反可能である。
【0039】
次に、ワイパ装置12の動作及び制御を説明する。キースイッチ78がオンされ、かつ、ワイパスイッチ85がオフされていると、マイクロコンピュータ80は、接点81を接点83及び接点84から遮断する信号を出力する。キースイッチ78がオンされ、かつ、ワイパスイッチ85がオンされ、低速モードが選択されていると、マイクロコンピュータ80は、接点81を接点83に接続し、接点81を接点84から遮断する信号を出力する。すると、低速用ブラシ31は、アース用ブラシ30及びバッテリ77に接続され、バッテリ77の電流が電動モータ24に供給され、アマチュア軸27が一方向に回転する。
【0040】
アマチュア軸27の回転力の一部は、ウォーム33、ウォームギヤ37、ピニオンギヤ41を介して出力ギヤ40に伝達される。アマチュア軸27の回転力の一部は、ウォーム34、ウォームギヤ38、ピニオンギヤ42を介して出力ギヤ40に伝達される。ウォームギヤ37の回転方向と、ウォームギヤ38の回転方向とは、互いに逆になる。出力ギヤ40は、
図3及び
図8において、便宜上、時計方向に回転するものとする。
【0041】
出力ギヤ40と共に出力軸39が回転すると、出力軸39の回転力は動力伝達機構16を介してピボット軸17,18にそれぞれ伝達される。第1ワイパアーム13は、ピボット軸17を中心として所定角度の範囲内で往復動作する。第2ワイパアーム14は、ピボット軸18を中心として所定角度の範囲内で往復動作する。このように、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14は、上反転位置B1と下反転位置B2との間で往復動作し、フロントガラス11を払拭する。
【0042】
図1においては、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14の上反転位置B1におけるワイパブレード19が実線で示され、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14の下反転位置B2におけるワイパブレード19が二点鎖線で示されている。
【0043】
上反転位置B1は、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14の動作範囲において、フロントガラス11の前端部11Aから最も離れた位置に動作した場合における、ワイパブレード19の位置を意味する。下反転位置B2は、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14の動作範囲において、フロントガラス11の前端部11Aに最も近づいた位置に動作した場合における、ワイパブレード19の位置を意味する。なお、本実施形態においては、便宜上、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14の上反転位置B1または下反転位置B2と記載する。
【0044】
出力ギヤ40が
図8で時計方向に回転する間、突起90が突起91に接触し、インシュレータ63は、
図8において出力ギヤ40と共に時計方向に回転する。電動モータ24のアマチュア軸27が回転している間、モータ用コンタクトプレート73及びアース用コンタクトプレート74がリレープレート64に接触する動作と離反する動作とを交互に繰り返す。
【0045】
なお、高速モードが選択されていると、マイクロコンピュータ80は、接点81と接点84とを接続し、接点81と接点83とを遮断する信号を出力する。低速モードまたは高速モードの何れが選択されている場合も、アマチュア軸27は一方向に回転する。高速モードが選択された場合のアマチュア軸27の回転速度は、低速モードが選択された場合のアマチュア軸27の回転速度よりも高い。
【0046】
ワイパスイッチ85がオンからオフに切り替えられると、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14が上反転位置B1から下反転位置B2の直前に到達するまでの間、
図8(A)に示すように、接点75及び接点76が共にリレープレート64から離れている状態、または、
図8(B)に示すように、接点75がリレープレート64に接触し、かつ、接点76がリレープレート64から離れている状態にある。
【0047】
このため、低速用ブラシ31はアース用ブラシ30に短絡されない。したがって、マイクロコンピュータ80は、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14が下反転位置B2の直前に到達していないと判断し、接点81を、接点83または接点84に接続した状態を維持する。
【0048】
つまり、ワイパスイッチ85がオフされた後も、電動モータ24の回転力で出力ギヤ40が回転し、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14は、上反転位置B1から下反転位置B2に向けて動作を継続する。
【0049】
そして、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14が下反転位置B2に到達する直前で、
図8(C)のように、接点75がリレープレート64の第1接点部65に接続され、接点76がリレープレート64の第2接点部66に接続される。
【0050】
すると、低速用ブラシ31は、接点82,83及びモータ用コンタクトプレート73、アース用コンタクトプレート74を介してアース用ブラシ30に短絡され、アマチュア軸27に電気ブレーキ力が付与される。また、マイクロコンピュータ80は、低速用ブラシ31がアース用ブラシ30に短絡されたことで、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14が下反転位置B2に到達する直前であると判断し、接点81を接点83及び接点84から遮断する。このため、バッテリ77から電動モータ24に電流が供給されなくなる。このような制御及び作用により、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14が下反転位置B2で確実に停止する。
【0051】
本実施形態のワイパモータ15及びワイパ装置12においては、接点75と接点76とが、出力ギヤ40の回転方向で異なる位置に配置されている。また、接点75と接点76とは、出力ギヤ40の回転中心である軸線A2からの径方向の距離が異なる位置に配置されている。また、第1接点部65及び第2接点部66とは、出力ギヤ40の回転中心である軸線A2からの径方向の距離が異なる位置に配置されている。また、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14が、上反転位置B1から下反転位置B2に到達するまでの間、
図8(A)または
図8(B)に示すように、接点76とリレープレート64とは、出力ギヤ40の径方向及び回転方向に大きな隙間を隔てて位置する。
【0052】
したがって、導電性の異物、例えば、摩耗粉等があったとしても、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14が、上反転位置B1から下反転位置B2の直前に到達するまでの間に、低速用ブラシ31とアース用ブラシ30とが、不用意に短絡されることを抑制できる。このため、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14が下反転位置B2に到達する前に、電気ブレーキ力が発生することを抑制する機能、言い換えれば、ロバスト性を維持できる。すなわち、電気ブレーキ力が発生することを抑制する機能が、外乱や環境の変化によって影響を受けることを阻止できる。
【0053】
また、本実施形態では、マイクロコンピュータ80が低電流駆動回路を有しており、マイクロコンピュータ80が出力する信号は、ミリアンペア単位の電流である。このため、リレープレート64付近に存在する異物が溶けにくい環境であるが、低速用ブラシ31とアース用ブラシ30とが、不用意に短絡されることを抑制できる。
【0054】
さらに、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14が下反転位置B2から上反転位置B1に向けて動作する途中で、雪等の荷重が第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14に加わると、
図3及び
図8で、出力ギヤ40を反時計方向に回転させようとする回転力が生じる。また、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14が下反転位置B2付近に到達した際、下反転位置B2付近の雪等による障害物により、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14に、下反転位置B2から上反転位置B1方向へ押し戻される力が加わった場合、出力ギヤ40を反時計方向に回転させようとする回転力が生じる。しかし、出力ギヤ40を反時計方向に回転させようとする回転力が生じると、突起90が突起91から離れ、出力ギヤ40の回転力はインシュレータ63に伝達されない。つまり、突起90,91は、一方向クラッチの役割を果たす。
【0055】
このため、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14が下反転位置B2から上反転位置B1に向けて動作する途中で、または、上反転位置B1から下反転位置B2に向けて動作する途中で、低速用ブラシ31とアース用ブラシ30とが、不用意に短絡されることを抑制できる。したがって、マイクロコンピュータ80は、「第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14が下反転位置B2に到達する直前であると誤判断すること」を防止できる。リレープレート64は、2箇所の爪70,71がカシメられてインシュレータ63に固定されている。このためリレープレート64をインシュレータ63に固定する作業工数が少ない。
【0056】
さらに、第1接点部65及び第2接点部66は、出力ギヤ40の回転方向の全周に設けられておらず、一部に設けられている。このため、第1接点部65と接点75とが接触する時間及び範囲をなるべく短くすることができ、第2接点部66と接点76とが接触する時間及び範囲をなるべく短くすることができる。また、円弧部67における出力ギヤ40の回転中心である軸線A2からの径方向の距離は、接点75および接点76における出力ギヤ40の回転中心である軸線A2からの径方向の距離と異なっており、円弧部67と接点75および円弧部67と接点76は接触することがない。したがって、摩耗粉の発生を抑制できる。
【0057】
次に、リレープレート64の他の取り付け例を
図9を参照して説明する。
図9に示す出力ギヤ40にはインシュレータ63が取り付けられておらず、リレープレート64は、出力ギヤ40に直接取り付けられている。このため、リレープレート64は出力ギヤ40と共に一体回転する。なお、
図9の出力ギヤ40に突起90は設けられていない。
図9において、
図8と同じ要素は
図8と同じ符号を付してある。
【0058】
図9のリレープレート64を出力ギヤ40に取り付ける場合における電源回路の例を、
図10を参照して説明する。電源回路94において、接点84及びコイル88は、コンデンサ92を介してサーキットブレーカ89及びアース用コンタクトプレート74に接続されている。また、接点83及びコイル87は、コンデンサ93を介してサーキットブレーカ89及びアース用コンタクトプレート74に接続されている。
図10において、
図5と同じ要素は
図5と同じ符号を付してある。
【0059】
図9に示すように、リレープレート64を出力ギヤ40に取り付けたワイパモータ15及びワイパ装置12においても、前述と同様の効果を得ることができる。
【0060】
実施の形態で説明した事項の意味を説明すると、第1ワイパアーム13及び第2ワイパアーム14がワイパアームであり、リレープレート64が可動端子であり、モータ用コンタクトプレート73が第1固定端子であり、アース用コンタクトプレート74が第2固定端子であり、インシュレータ63がホルダである。また、低速用ブラシ31が第1ブラシであり、高速用ブラシ32が第2ブラシであり、アース用ブラシ30が第3ブラシであり、接点81が第1接点であり、接点83が第2接点であり、接点84が第3接点であり、接点82が第4接点であり、上反転位置が第1反転位置であり、下反転位置が第2反転位置であり、バッテリ77が電源であり、円弧部67が接続部である。
接点75が第1接触点であり、接点76が第2接触点である。爪70,71が2つの爪であり、爪70が第1の爪である。
【0061】
ワイパモータ及びワイパ装置は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、電源回路は、アース用ブラシと低速用ブラシとを短絡して電気ブレーキを発生する構造の他、アース用ブラシと高速用ブラシとを短絡して電気ブレーキを発生する構造を含む。また、電源は、直流電源及び交流電源を含む。電源は、バッテリの他、燃料電池、キャパシタを含む。