(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記芯パッドの非通気性発泡体を発泡ポリプロピレン又は発泡スチロールの成形体とし、さらに前記芯パッドの表面に裏面側へ向けてなだらかに落ち込んで低くなる凹み設け、さらに該凹みの凹底域に前記透孔に係る表面側の孔口を配した請求項8又は9に記載の車両用シートパッドの製造方法。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1の請求項1は「上下二層の発泡体層からなる車両用シートの層状異硬度パッドであって、上層がポリウレタン発泡体で形成されるとともに、下層がポリスチロール発泡体で形成されており、上・下層が一体に接合されていることを特徴とする車両用シートの層状異硬度パッド。」で、ポリウレタン発泡体の発泡成形で、ボイドや欠肉の不具合が発生する虞がある。通常、
図16のごとく上型K2に下層LRたるポリスチロール発泡体のセット後、型閉じし、その後、上層UPたるポリウレタン発泡体を発泡成形する製法を採るが、発泡成形過程で発生する余剰ガスが行き場を失う。下層LR(本発明の「芯パッド」)のポリスチロール発泡体は非通気性であり、上昇してきた余剰ガスが下層LRの下面に溜まって、上層UPのポリウレタン発泡体に欠肉不具合Fを引き起こす。しかも、この欠肉不良は製品内部にできるため、発泡成形後に発見が難しいという問題がある。さらに、上層UPの発泡成形で、下層LRとの結合一体化を図った場合は、製品を分解するのが困難で厄介な問題になる。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するもので、非通気性発泡体を用いても、軟質ウレタン発泡体の発泡成形で発生する余剰ガスによる欠肉不良を起こさないようして、軽量化やウレタン使用量の削減を実現する車両用シートパッド及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、少なくとも乗員が当接する側の当たり面部分を軟質ポリウレタン発泡体で形成した車両用シートパッドであって、非通気性発泡体にして、その表面側から裏面側へ貫通する透孔を設け、さらに裏面側に該透孔の孔径よりも大きな窪みを設けて、該窪みの底部に前記透孔に係る裏面側の孔口を配した芯パッドと、軟質ポリウレタン発泡体にして、その意匠面側に前記当たり面部分を形成すると共に、前記透孔及び前記裏面側の孔口を含む前記窪み内を埋めるように充填された透孔充填部及び窪み充填部を形成する一方、前記意匠面側と反対の内面側が前記芯パッドの表面に接合する上層パッドと、を具備し、且つ前記軟質ポリウレタン発泡体の見掛け密度よりも前記非通気性発泡体の見掛け密度が小であ
り、前記窪み充填部の露出面に、該窪み充填部内へと凹む凹穴が形成されていることを特徴とする車両用シートパッドにある。請求項2に記載の要旨は、少なくとも乗員が当接する側の当たり面部分を軟質ポリウレタン発泡体で形成した車両用シートパッドであって、非通気性発泡体にして、その表面側から裏面側へ貫通する透孔を設け、さらに裏面側に該透孔の孔径よりも大きな窪みを設けて、該窪みの底部に前記透孔に係る裏面側の孔口を配した芯パッドと、軟質ポリウレタン発泡体にして、その意匠面側に前記当たり面部分を形成すると共に、前記透孔及び前記裏面側の孔口を含む前記窪み内を埋めるように充填された透孔充填部及び窪み充填部を形成する一方、前記意匠面側と反対の内面側が前記芯パッドの表面に接合する上層パッドと、を具備し、且つ前記軟質ポリウレタン発泡体の見掛け密度よりも前記非通気性発泡体の見掛け密度が小であ
り、前記芯パッドの裏面に凹所が形成され、該凹所の凹底に前記窪みが形成されていることを特徴とする車両用シートパッドにある。請求項3に記載の要旨は、少なくとも乗員が当接する側の当たり面部分を軟質ポリウレタン発泡体で形成した車両用シートパッドであって、非通気性発泡体にして、その表面側から裏面側へ貫通する透孔を設け、さらに裏面側に該透孔の孔径よりも大きな窪みを設けて、該窪みの底部に前記透孔に係る裏面側の孔口を配した芯パッドと、軟質ポリウレタン発泡体にして、その意匠面側に前記当たり面部分を形成すると共に、前記透孔及び前記裏面側の孔口を含む前記窪み内を埋めるように充填された透孔充填部及び窪み充填部を形成する一方、前記意匠面側と反対の内面側が前記芯パッドの表面に接合する上層パッドと、を具備し、且つ前記軟質ポリウレタン発泡体の見掛け密度よりも前記非通気性発泡体の見掛け密度が小であ
り、前記窪み充填部と前記窪みを形成する側壁との間に環状溝が形成されていることを特徴とする車両用シートパッドにある。請求項4の発明たる車両用シートパッドは、
請求項1で、窪み充填部と前記窪みを形成する側壁との間に環状溝が形成されたことを特徴とする。請求項5の発明たる車両用シートパッドは、
請求項1で、芯パッドの裏面に凹所が形成され、該凹所の凹底に前記窪みが形成されたことを特徴とする。請求項6の発明たる車両用シートパッドは、
請求項1〜5で、芯パッドの表面に裏面側へ向けてなだらかに落ち込んで低くなる凹みが設けられ、且つ該凹みの凹底域に前記透孔に係る表面側の孔口が配されたことを特徴とする。請求項7の発明たる車両用シートパッドは、
請求項1〜6で、芯パッドの非通気性発泡体が発泡ポリプロピレン又は発泡スチロールの成形体であることを特徴とする。
請求項8に記載の要旨は、少なくとも乗員が当接する側の当たり面部分を軟質ポリウレタン発泡体で形成した車両用シートパッドの製造方法であって、見掛け密度が前記軟質ポリウレタン発泡体よりも小の非通気性発泡体にして、その表面側から裏面側へ貫通する透孔を設け、さらに裏面側に該透孔の孔径よりも大きな窪みを設けて、該窪みの底部に前記透孔に係る裏面側の孔口を配した芯パッドを、裏面側が上型型面に当接するようにし
、且つ前記上型型面に陥没穴が形成されており、該陥没穴の穴口に前記窪みの窪み口が対向するようにして、前記芯パッドを前記上型型面にセットし、次いで、下型型面上に軟質ポリウレタン発泡体用原料を注入すると共に型閉じし、その後、意匠面側に前記当たり面部分を形成すると共に、前記透孔及び前記裏面側の孔口を含む前記窪み内を埋めて透孔充填部及び窪み充填部を形成し、さらに内面側は前記芯パッドの表面に接合させた軟質ポリウレタン発泡体の上層パッドを発泡成形したことを特徴とする車両用シートパッドの製造方法にある。請求項9の発明たる車両用シートパッドの製造方法は、
請求項8で、陥没穴の穴底に突状部をさらに設け、該突状部と前記窪みの側壁との間、及び該突状部と該窪みの底部との間に隙が残るようにして、前記芯パッドを上型型面にセットすることを特徴とする。請求項10の発明たる車両用シートパッドの製造方法は、
請求項8又は9で、芯パッドの非通気性発泡体を発泡ポリプロピレン又は発泡スチロールの成形体とし、さらに前記芯パッドの表面に裏面側へ向けてなだらかに落ち込んで低くなる凹み設け、さらに該凹みの凹底域に前記透孔に係る表面側の孔口を配したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両用シートパッド及びその製造方法は、当たり面部分を軟質ポリウレタン発泡体の上層パッドで形成する一方、該軟質ポリウレタン発泡体の見掛け密度よりも見掛け密度が小の非通気性発泡体で構成した芯パッドに透孔及び窪みを設けることによって、軟質ウレタン発泡体の発泡成形で発生する余剰ガスによる欠肉不良を解消し、さらに透孔充填部及び窪み充填部の形成によって、アンカー効果を発揮して上層パッドと芯パッドの一体化が強化されるので、クッション性等の快適性確保と軽量化を可能にするだけでなく、歩留り向上,品質向上に優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る車両用シートパッド(以下、単に「シートパッド」ともいう。)及びその製造方法について詳述する。
図1〜
図15は本発明のシートパッド及びその製造方法の一形態で、
図1は型開状態にある発泡型に芯パッドをセットし、発泡原料を注入する断面図、
図2は
図1の上型に芯パッドをセットする部分拡大図、
図3は型閉じした断面図、
図4は芯パッド付き上層パッドを発泡成形した断面図、
図5は発泡成形過程で発泡原料が透孔内を上昇する断面図、
図6は
図4の窪み周りの断面図、
図7は脱型後のシートパッドの断面図、
図8はシートパッドを裏面側から見た斜視図、
図9はシートパッドを表面側から見た斜視図、
図10は
図5に代わる
参考の断面図、
図11は
図6に代わる
参考のシートパッドの窪み周りの断面図、
図12は
図5に代わる別態様の断面図、
図13は
図6に代わる別態様のシートパッドの窪み周りの断面図、
図14は
図5に代わる第二の別態様の断面図、
図15は
図6に代わる第二の別態様のシートパッドの窪み周りの断面図である。
各図は図面を判り易くするため簡略図示し、また本発明と直接関係しない部分を省略する。芯パッドは断面表示のハッチングを省く。
【0010】
(1)車両用シートパッドの製造方法
車両用シートパッドの製造方法は、少なくとも乗員が当接する側の当たり面部分41を軟質ポリウレタン発泡体で構成し、該軟質ポリウレタン発泡体の上層パッド4の発泡成形で、その内面4b側を軽量の芯パッド2に接合させる製法である。シートパッドPは、車両用座席シートの座部や背もたれに使用される。ここでは、
図7〜
図9のような運転座席の座部用クッションパッドに適用する。上層パッド4の発泡成形に先立ち、芯パッド2,発泡型7が用意される。
【0011】
芯パッド2は塊状の非通気性発泡体である。上層パッド4を形成する軟質ポリウレタン発泡体の見掛け密度よりも見掛け密度が小の非通気性発泡体で構成し、
図7のごとくクッションパッドPの裏面側に配される芯部材である。芯パッド2と上層パッド4との密度比較は、発泡前の素材の密度でなく、発泡後の見掛け密度で比較する。
上層パッド4の発泡成形に先立ち、予め発泡成形される芯パッド2には、表面2a側から裏面2b側へ貫通する透孔23を設け、さらに裏面2b側に該透孔23の孔径よりも大きな窪み24を設ける(
図2)。また、芯パッド2は、その表面2aに裏面2b側へ向けてなだらかに落ち込んで低くなる凹み25を設け、該凹み25の凹底域251に透孔23に係る表面2a側の孔口23aを配する。そして、すり鉢状にへこむ窪み24の底部241に透孔23に係る裏面2b側の孔口23bを配する。ここで、芯パッド2の「表面側」,「裏面側」は、車両に取付け姿態にある
図9のクッションパッドPでいえば、文字通り紙面の「表面側」,紙面の「裏面側」となる。上層パッド4の「意匠面側」,「内面側」も、車両に取付け姿態にある
図9のクッションパッドPでいえば、紙面の「表面側」,紙面の「裏面側」となり、同じ意である。文言を使い分けて部位を特定し易くしている。
【0012】
芯パッド2を構成する非通気性発泡体は、その見掛け密度が上層パッド4を形成する軟質ポリウレタン発泡体の見掛け密度よりも小さければ充足するが、非通気性の発泡ポリプロピレン又は発泡スチロールの成形体がより好ましい。例えばビーズ法発泡スチロールの発泡スチロールの成形体は、気泡が内部に密閉された非通気性発泡体となっており、且つ体積の大部分が気体で軽量にして、その見掛け密度を軟質ポリウレタン発泡体の見掛け密度よりも小さくできる。ビーズ法発泡ポリプロピレンの発泡ポリプロピレンも発泡スチロールに酷似し、気泡が内部に密閉された非通気性発泡体にして芯パッド2の材料として機能的に優れ、且つその見掛け密度を小さくできる。本実施形態の芯パッド2も発泡ポリプロピレンを用いる。発泡ポリプロピレンは、発泡スチロールよりも弾力があり、シートパッドP用芯パッド2の構成材としてさらに好ましくなっている。
符号28は発泡型7に芯パッド2をセットした時、芯パッド2の外壁途中に水平外方へ出っ張る出っ張り部の上端面である。符号29は芯パッド22に設けた開孔で、符号291は裏面側に配される大径部、符号292は小径部、符号293は受面を示す。芯パッド22を
図1のように上型9にセットした時、受面293と上型型面91との間にスペースが確保される。
【0013】
発泡型7は、
図1ごとくの分割型で、下型8と上型9はヒンジ71により開閉可能に接続されている。ヒンジ71を支点に
図3のごとく型閉じすると、全体が椀状にへこんで当たり面部分41の意匠面4aを形成する下型型面81と、中央にへこみを有するものの全体がやや凸状にして芯パッド2の裏面2bに合わせた上型型面91とで、クッションパッドPのキャビティCをつくる。上型型面91には陥没穴92が形成され、上型型面91への芯パッド2のセットで、陥没穴92の穴口920に窪み24の窪み口240が対向するようにしている(
図2)。穴口920は窪み口240よりも大きいと、余剰ガスが取り込み易くなりより好ましくなる。また本実施形態は陥没穴92の穴底921に突状部93が設けられている。穴底921に、棒状にして先細りの突状部93が起立する。芯パッド2を上型型面91にセットした際(
図1,
図5)、突状部93と窪み24の側壁242との間、及び該突状部93と該窪み24の底部241との間に隙εが確保されるように、突状部93が形成される。尚、
図1〜
図6の発泡型7は、車両設置状態に在る
図9のクッションパッドPと上下が逆の姿態で、該クッションパッドPたる芯パッド2付き上層パッド4を造る型構造になっている。
【0014】
前記発泡型7,芯パッド2を用いて、シートパッドPが例えば次のように製造される。
まず、発泡型7を
図1の型開状態とする。この型開状態下、芯パッド2の裏面2b側が上型型面91に当接するようにし、且つ陥没穴92の穴口920に窪み24の窪み口240が対向するようにして、芯パッド2を上型型面91にセットする(
図2)。本実施形態は突状部93を備えており、突状部93と窪み24の側壁242との間、及び突状部93と窪み24の底部241との間に隙εが残るようにして、芯パッド2が上型型面91にセットされる。
上型型面91への芯パッド2のセット後、椀状にへこむ下型型面81上に、注入ノズルNL等を使用して上層パッド4成形用発泡原料g(軟質ポリウレタン発泡体用原料)を所定量注入する。
【0015】
続いて、上型9を作動させ型閉じする(
図3)。上型9と下型8との型閉じで、芯パッド2がインサートセットされたクッションパッドP用キャビティCができる。尚、本実施形態は発泡原料gを注入後に型閉じしたが、型閉じした後、発泡原料gを注入することもできる。
【0016】
型閉じ後、主工程の発泡成形に移る。意匠面4a側に着座乗員の当たり面部分41(ここでは「座面部分」)を有する、軟質ポリウレタン発泡体からなる上層パッド4を発泡成形する。
図3の型閉じ状態を所定時間維持し、上層パッド4の意匠面4aと反対側にあたる内面4b側が芯パッド2の表面2aに接合した芯パッド2付き上層パッド4を造る。
【0017】
上層パッド4の発泡成形過程で、発泡原料gは乗員が当接する側の当たり面部分41を有する上層パッド4本体用キャビティCを埋めるように上昇した後、
図5のごとく透孔23、窪み24内へと進出する(
図5)。ここで、液状発泡原料gは、窪み24に至る直前の透孔23がくびれ部となって抵抗が大きいため、前に進むのが遅く、発泡原料gの発泡硬化が始まる。透孔23に係る裏面2b側の孔口23bにたどり着いて、窪み24内で発泡原料gの硬化を終える。また、穴底921に突状部93をさらに設け、該突状部93と窪み24の側壁242との間、及び突状部93と窪み24の底部241との間に隙εが残るようにして、芯パッド2を上型型面91にセットした場合は、発泡原料gが窪み24を越えて芯パッド裏面2bの方まで行き着くのが至難で、突状部93と窪み24間で確実に発泡硬化する。こうして、意匠面4a側に当たり面部分41を形成すると共に、透孔23及び裏面2b側の孔口23bを含む窪み24内を埋めて透孔充填部43及び窪み充填部44を形成し、内面4b側が芯パッド2の表面2aに接合した軟質ポリウレタン発泡体の上層パッド4を発泡成形する(
図4,
図6)。
一方、上層パッド4の発泡成形で発生する余剰ガス(型内に在った残留ガスも含む。)は、液状の発泡原料gと違って、透孔23の通気抵抗が小さく該透孔23をスムーズに抜け出る(
図5の矢印)。発泡原料gが上昇して透孔23にたどり着く前に、大半の余剰ガスが透孔23を通って窪み24内に到達する。しかも、芯パッド表面2aに裏面2b側へ向けてなだらかに落ち込んで低くなる凹み25を設けているので、余剰の発泡ガスは発泡成形の早い段階で集められて凹み25の凹底域251へと向かう。該凹底域251には透孔23の表面2a側の孔口23aが有るので、余剰ガスは速やかに透孔23を通過して窪み24に溜められる。陥没穴92が上型9に設けられると、該陥没穴92にも余剰ガスを溜めることができる。芯パッド2と上層パッド4との接合域に余剰ガスが存在しなくなり、従来の欠肉不具合Fが解消する。
【0018】
ところで、軟質ポリウレタン発泡体の上層パッド4が、発泡成形されても、芯パッド2を構成する発泡ポリプロピレン,発泡スチロール等の非通気性発泡体とは接着性に乏しく、そのままでは両者の一体化が不十分である。しかるに、本発明は上層パッド4の発泡成形で、芯パッド2の透孔23に充填される透孔充填部43及び窪み充填部44がアンカー効果を発揮し、上層パッド4と非通気性発泡体たる芯パッド2とを一体化する。さらに、本実施形態は
図1のごとく芯パッド2に受面293付き開孔29や、セット時に上端面28が略水平になる張出し部分等を形成して、芯パッド2と上層パッド4との一体化を支援する。上層パッド4の発泡成形時に、発泡原料gが開孔29の小径部292を潜り、大径部291側の受面293上に発泡原料gが浸入して発泡硬化し、大径部291内を埋める露出部分43が受面293に受け止められて、芯パッド2と上層パッド4の一体化を図る。また、上層パッド4の発泡成形で、該上層パッド4が
図4のごとく芯パッド2の張出し上端面28に乗り上げ、これを該上層パッド4が巻き込む形となって、両者の一体化を補完する。
【0019】
上層パッド4の発泡成形を終え、脱型すれば、芯パッド2と欠肉部分Fのない上層パッド4が一体となった所望のクッションパッドPが得られる(
図8,
図9)。
符号441は窪み24内に現れる発泡原料gの最前線がつくった露出面、符号442は窪み側壁242とで隙εを形成した突状部93の突端部分933が露出面441上に残した凹穴である。符号4Aはメイン部、符号4Bはサイド部、符号4Cはバックレストとの合わせ部、符号49は吊溝で、符号491は縦溝、符号492は横溝を示す。
【0020】
図10,
図11は、
図5,
図6に代わる
参考のシートパッドの製造方法を示す。
図10,
図11には
図1〜
図7の上型9に存在した陥没穴92や突状部93がない。それでも、上層パッド4の発泡成形過程で、余剰ガスは透孔23を経由して
図10のごとく窪み24に溜めることができ、芯パッド2と上層パッド4との接合域に余剰ガスを残さない。芯パッド2の裏面2b側に透孔23の孔径に比し、一段と大きな窪み24を設けて、上層パッド4の発泡成形で、
図1〜
図7と同様、当たり面部分41を含む上層パッド4の本体に加え、透孔充填部43及び窪み充填部44を形成する(
図11)。発泡成形で発生する余剰ガスは透孔23を通って窪み24の上半部へ導かれる。
また、
図12,
図13は、
図5,
図6に代わる別態様のシートパッドの製造方法を示す。芯パッド2は、裏面2bに柱状凹所26が形成され、該凹所26の凹底261に柱状窪み24が形成されている。窪み24に対向する上型型面91に
図5と同じように陥没穴92と突状部93を備えるが、陥没穴92の周縁に筒状隆起部95を形成する。芯パッド裏面2b側が上型型面91に当接するようにして、芯パッド2を上型型面91にセットすると、隆起部95の先端が凹所凹底261に当接する。よって、発泡成形過程で、発泡原料gが透孔23を通って窪み24内だけに終わらず、さらに上昇する万一の場合でも凹所26内に発泡原料gの硬化物を留める。上層パッド4の発泡成形で、
図1〜
図7と同様、当たり面部分41を含む上層パッド4の本体に加え、透孔充填部43及び窪み充填部44を形成する(
図13)。発泡成形で発生する余剰ガスは透孔23を通って窪み24及び陥没穴92へと導かれる。
また、
図14,15は、
図5,
図6に代わる第二の別態様のシートパッドの製造方法を示す。窪み24の大きさを
図13の凹所26の大きさにまで拡大して、凹所26をなくした形である。芯パッド2の裏面2b側に透孔23の孔径よりも大きな柱状窪み24を設け、上型型面91に
図12と同じように、陥没穴92と突状部93と筒状隆起部95を形成する。芯パッド裏面2b側が上型型面91に当接するようにして、芯パッド2を上型型面91にセットすると、隆起部95の先端が窪み底部241に当接し、また突状部93の先端が透孔23内へ入り込む。上層パッド4の発泡成形で、
図1〜
図7と同様、当たり面部分41を含む上層パッド4の本体に加え、透孔充填部43及び窪み充填部44を形成する(
図15)。隆起部95の先端が窪み底部241に当接することによって、窪み充填部44と窪み24を形成する芯パッド2の側壁242との間に環状溝Rが形成される。発泡成形で発生する余剰ガスは透孔23を通って窪み24及び陥没穴92へ導かれる。
他の構成は
図1〜
図9のシートパッドの製造方法の説明と同様で、その説明を省く。
図1〜
図7と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0021】
(2)シートパッド
図1〜
図9の上記製造方法等で得られるシートパッドP(ここでは「クッションパッド」)は、少なくとも乗員が当接する側の当たり面部分41を軟質ポリウレタン発泡体で形成して、芯パッド2と上層パッド4とを具備するシートパッドPである。
【0022】
芯パッド2は、非通気性発泡体にして、その表面2a側から裏面2b側へ貫通する透孔23が設けられる。さらに裏面2b側に透孔23の孔径よりも孔径が大きな窪み24が設けられて、窪み24の底部241に透孔23に係る裏面2b側の孔口23bを配した芯パッド2とする。窪み24は
図1〜
図7のすり鉢状窪み24でも、
図11のような柱状窪み24でも構わない。芯パッド2の表面2aには裏面2b側へ向けてなだらかに落ち込んで低くなる凹み25が設けられており、該凹み25の凹底域251に透孔23に係る表面2a側の孔口23aが配されている。
【0023】
また、裏面2bに凹所26が形成され、該凹所26の凹底261に前記窪み24が形成された
図13のような芯パッド2とすることもできる。凹所26を設ければ、上層パッド4の発泡成形で、窪み24に入り込んだ発泡原料gが溢れ出る事態になっても、凹所26内に溜め込むので、発泡原料gの硬化部分がクッションパッドPの裏面に広がって汚すことがない。
芯パッド2の非通気性発泡体は、既述のごとく発泡ポリプロピレン又は発泡スチロールの成形体であるとより好ましい。軟質ポリウレタン発泡体に比し低コストで、独立気泡として且つ体積の大部分が気体である発泡ポリプロピレンや発泡スチロールの成形体は、軽量にして気密性,保形性があり、適度の保形維持が必要な芯パッド2に好都合となる。
【0024】
上層パッド4は、軟質ポリウレタン発泡体にして、その意匠面4a側に当たり面部分41が形成されると共に、透孔23及び裏面2b側の孔口23bを含む窪み24内を埋めるように充填された透孔充填部43及び窪み充填部44が形成される。意匠面4a側と反対の内面4b側が芯パッド2の表面2aに接合する発泡成形体になっている。軟質ポリウレタン発泡体が透孔23を埋めた透孔充填部43が存在するだけでもアンカー効果を発揮するが、透孔23の孔径よりも大きな窪み24を埋めた窪み充填部44が存在することで、アンカー効果が一段と強まる。
また、
図6や
図13、
図15のように、窪み充填部44の露出面441に、窪み充填部44内へと凹む凹穴442が形成されると、上層パッド4の発泡成形で、突状部93によって凹穴部位での発泡原料gの通過抵抗を大にでき、より好ましくなる。余剰の発泡ガスの通過を可能にする一方、発泡原料gの通過を抑えて窪み24内への流入を少なくする。さらに、
図15に示す第二の別態様のシートパッドPでは、窪み充填部44と窪み24を形成する側壁242との間に環状溝Rが設けられ、より好ましいクッションパッドPになっている(詳細後述)。
【0025】
そして、芯パッド2を形成する非通気性発泡体の見掛け密度が、上層パッド4の上層パッド4を形成する軟質ポリウレタン発泡体の見掛け密度よりも小さく設定されて、
図8,
図9に示す所望のシートパッドPが出来上がっている。斯かるシートパッドPに図示しない表皮を被せれば、車両用座席の座部側シートクッションが完成する。
他の構成は(1)シートパッドの製造方法で述べた構成と同様で、その説明を省く。(1)で述べた符号と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0026】
(3)効果
このように構成した車両用シートパッド及びその製造方法は、芯パッド2と上層パッド4とを備えて、芯パッド2が軟質ポリウレタン発泡体の見掛け密度よりも見掛け密度が小の非通気性発泡体で形成されるので、軽量化が進む。それでいて、軟質ポリウレタン発泡体で構成された上層パッド4の意匠面4a側に、着座乗員との当たり面部分41が設けられているので、クッション性等の快適性は確保される。
【0027】
そして、芯パッド2の表面2a側から裏面2b側へ貫通する透孔23を設けると、
図3,
図4のように上型9に芯パッド2をセットして上層パッド4を発泡成形しても、発泡成形過程で発生する余剰ガスは透孔23を通って芯パッド裏面2b側へ抜け出るので、
図16で示した欠肉不具合を抑制できる。裏面2b側に透孔23の孔径よりも大きな窪み24を設けて、該窪み24の底部241に透孔23に係る裏面2b側の孔口23bを配した芯パッド2とすると(
図10,
図11)、余剰ガスと一緒に透孔23を通過した発泡原料gは窪み24内で硬化させることで(
図11)、芯パッド裏面2bを汚さない。
【0028】
また、透孔23,窪み24を設けて、上層パッド4の発泡成形で、軟質ポリウレタン発泡体にして、その意匠面4a側に当たり面部分41を形成すると共に、透孔23及び裏面2b側の孔口23bを含む窪み24内を埋めるように充填された透孔充填部43及び窪み充填部44を形成すると、透孔充填部43及び窪み充填部44がアンカー効果を発揮して、上層パッド4と芯パッド2の一体強化を促す。透孔23の孔径よりも大きな窪み24が形成されるので、窪み充填部44が存在すれば、これがストッパーとなって上層パッド4と芯パッド2の結合力を一段と高める。
【0029】
さらに、芯パッド2の表面2aに裏面2b側へ向けてなだらかに落ち込んで低くなる凹み25が設けられ、且つ凹み25の凹底域251に透孔23に係る表面2a側の孔口23aが配されると、
図3の上層パッド4の発泡成形で発生する余剰の発泡ガスが、凹み25を伝って凹底域251へと速やかに移動して透孔23,窪み24へ向かうので、上層パッド4にできる欠肉不具合をほぼ解消できる。
加えて、上型型面91に陥没穴92を形成し、該陥没穴92の穴口920に窪み24の窪み口240が対向するようにして、芯パッド2を上型型面91にセットすると、余剰の発泡ガスを窪み24と共に陥没穴92に余力をもって溜めることができるので、芯パッド2と上層パッド4の接合域での余剰ガスを除去し、従来の欠肉不具合を一挙に解決できる。しかも、窪み24と陥没穴92に溜まった余剰ガスは、その圧力も若干高めになり、発泡成形に必要な分のガスが型外へ抜け出すのを抑え、良好な発泡成形を促す効果も期待できる。
【0030】
また、窪み充填部44の露出面441に、該窪み充填部44内へと凹む凹穴442が形成されると(
図6)、上層パッド4の発泡成形で、凹穴部位での発泡原料gの通過抵抗を大きくできるので、余剰ガスの通過を許容しながら窪み24内への発泡原料gの流入を抑えることができる。窪み24をさほど大きくしなくても、窪み24外へ発泡原料gが溢れて芯パッド裏面2bを汚すのを回避できる。窪み24及び窪み充填部44の露出面441を小さくでき、芯パッド裏面2bの見栄えを良くする。
また、芯パッド裏面2bに
図13のような凹所26が形成され、凹所26の凹底261に窪み24が形成されると、上層パッド4の発泡成形で、窪み24から発泡原料gが溢れ出ても、凹所26内に溜まるので、発泡原料gの硬化部分がクッションパッドPの裏面に広がって汚すことにはならない。
さらに、
図15のごとく窪み充填部44と窪み24を形成する側壁242との間に環状溝Rが形成されると、発泡原料gの硬化部分がクッションパッドPの裏面に広がって悪さをするのをシャットアウトできる。上層パッド4の発泡成形で、
図14のごとく筒状隆起部95の先端を窪み底部241に当接させ、且つ筒状隆起部95の外側壁を窪み側壁242に密着又は近接させることができるので、この密着又は近接域を発泡原料gが硬化せずに通って窪み24外へ出るのは不可能に近いからである。また、筒状隆起部95の外径を窪み24より僅かに大きく設定すれば、芯パッド2を上型91にセットする際の取付部としての役割も持たせることもできる。
かくのごとく、本車両用シートパッド及びその製造方法は、上述した種々の優れた効果を発揮し極めて有益である。
【0031】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。芯パッド2,透孔23,窪み24,凹み25,凹所26,上層パッド4,透孔充填部43,窪み充填部44,凹穴442,環状溝R等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。実施形態は座部用クッションパッドPにしたが、背もたれ用バックパッドにも適用できる。