特許第6552481号(P6552481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6552481生物由来の反応性希釈剤及び樹脂を有する合成樹脂接着剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552481
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】生物由来の反応性希釈剤及び樹脂を有する合成樹脂接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20190722BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20190722BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20190722BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20190722BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20190722BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   C09J201/00
   C09J163/00
   C09J133/00
   C09J4/02
   C09J11/06
   C09J11/04
【請求項の数】17
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-505729(P2016-505729)
(86)(22)【出願日】2014年3月21日
(65)【公表番号】特表2016-520677(P2016-520677A)
(43)【公表日】2016年7月14日
(86)【国際出願番号】EP2014000774
(87)【国際公開番号】WO2015018466
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2016年12月2日
(31)【優先権主張番号】102013103399.7
(32)【優先日】2013年4月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514271866
【氏名又は名称】フィッシャーヴェルケ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】fischerwerke GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン グリューン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン フォーゲル
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シュレンク
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヴァイネルト
【審査官】 磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−190779(JP,A)
【文献】 特開平11−020063(JP,A)
【文献】 特開2001−011411(JP,A)
【文献】 特開2010−037233(JP,A)
【文献】 特開2012−176961(JP,A)
【文献】 特表2009−541540(JP,A)
【文献】 特表2012−513983(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/064717(WO,A1)
【文献】 特表2009−538380(JP,A)
【文献】 特開平06−336457(JP,A)
【文献】 特公昭49−010528(JP,B1)
【文献】 特開2009−292884(JP,A)
【文献】 特開2005−281413(JP,A)
【文献】 特表2007−514009(JP,A)
【文献】 特表2014−501805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂接着剤及びアンカー材を孔又は間隙に導入し、前記合成樹脂接着剤を硬化させて、孔又は間隙でアンカー材をモルタル充填するための多成分系合成樹脂接着剤の使用であって、前記多成分系合成樹脂接着剤は、反応性希釈剤及び反応性樹脂、及び任意でさらなる添加剤の合成樹脂接着剤であり、前記反応性希釈剤及び前記反応性樹脂は、生物由来であるか、又は生物由来の割合を有する反応性希釈剤及び反応性樹脂を少なくとも1種包含し、前記生物由来の割合を有する前記反応性希釈剤又は前記反応性樹脂は、
(i)一方では非生物由来若しくは生物由来のエピクロロヒドリン、及び非生物由来若しくは生物由来の(メタ)アクリル酸から選択される1種以上の出発物質と、他方では非生物由来若しくは生物由来の相補的な出発原料中に含まれているOH基、若しくはSH基、若しくはアミノ基(NH2−)、若しくはイミノ基(−NH−)、又はこれらの基2つ以上との反応により得られる反応性基を1つ以上有し、前記出発原料の少なくとも1つは、少なくとも部分的に生物由来であるもの、および
(ii)エポキシ化された大豆油(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニルメタクリレート、ソルビトール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル化されたフーゼル油、又は純粋に生物由来のグリセリントリ(メタ)アクリレート、又は少なくとも(メタ)アクリレート割合が生物由来であるグリセリントリ(メタ)アクリレートであるか、又は少なくとも部分的に生物由来である前記反応性希釈剤2種以上の混合物、及び完全に若しくは部分的に生物由来のアルカン(モノオール、ジオール、トリオール、テトラオール、ペンタオール、ヘキサオール、若しくはポリオールのモノグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、テトラグリシジルエーテル、ペンタグリシジルエーテル、ヘキサグリシジルエーテル、又はポリグリシジルエーテル)
から選択されており、前記合成樹脂接着剤は、エポキシ系の反応性合成樹脂、又はラジカル硬化性の反応性合成樹脂を含んでおり、生物由来、生物由来の割合を有する、又は少なくとも部分的に生物由来とは、前記反応性希釈剤または生物由来の割合を有する希釈剤が、その分子の少なくとも一部が、植物からなるか、又は植物性若しくは動物性の材料から得られたものであり、14C法により検出することができるものであり、かつ前記生物由来の割合を有する反応性希釈剤の割合は、包装を除いた接着剤の全成分に対して0.5〜80質量%であることを特徴とする、前記多成分系合成樹脂接着剤の使用。
【請求項2】
前記反応性希釈剤は、一方では非生物由来若しくは生物由来のエピクロロヒドリン及び非生物由来若しくは生物由来の(メタ)アクリル酸から選択される1種以上の出発物質と、他方では非生物由来若しくは生物由来の相補的な出発原料との反応生成物であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記反応性希釈剤が、部分的に、若しくは完全に生物由来のグリセリントリグリシジルエーテルから選択されるものであることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記エポキシ系の反応性合成樹脂は、Novolak、ビスフェノールF及びビスフェノールAから選択される少なくとも1種の多価アルコール若しくはフェノールのポリ(「ジ−」を含む)グリシジルエーテル、又はこれらのエポキシドの混合物であり、かつ前記ラジカル硬化性の反応性合成樹脂は、それぞれプロポキシ化若しくはエトキシ化されたビスフェノールA、ビスフェノールF、又はNovolakジ(メタ)アクリレートであるか、ビスフェノールA、ビスフェノールF、又はNovolakのジグリシジルエーテル及び/又はポリグリシジルエーテルと、不飽和C2〜C7アルケンカルボン酸との反応生成物であるか、又はウレタン(メタ)アクリレート及び/又は尿素(メタ)アクリレート、又はこれら2種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
TUEV RheinlandのASTM 6866に準拠する生物系製品のための認証プログラムにより測定可能な生物由来の炭素の割合が、包装無しの全調製物に対して、少なくとも50質量%超であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
生物由来の炭素の割合が、50〜85質量%であることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
生物由来の炭素の割合が、少なくとも85質量%であることを特徴とする、請求項5に記載の使用。
【請求項8】
前記合成樹脂接着剤が、反応性合成樹脂成分(A)と、硬化剤成分(B)とを有する二成分キットであることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記合成樹脂接着剤が、前記合成樹脂成分(A)中に生物由来の割合を有する前記反応性希釈剤の割合を含有することを特徴とする、請求項に記載の使用。
【請求項10】
前記合成樹脂接着剤が、前記硬化剤成分(B)中に生物由来の割合を有する硬化剤を含有することを特徴とする、請求項に記載の使用。
【請求項11】
前記合成樹脂接着剤が、反応性合成樹脂成分(A)として、エポキシ系の反応性合成樹脂、又はラジカル硬化性の反応性合成樹脂を包含し、かつそれぞれが硬化剤成分(B)を包含することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記合成樹脂接着剤が、前記反応性合成樹脂成分(A)として、ラジカル硬化性の反応性合成樹脂を包含し、前記硬化剤成分(B)として、開始剤としての過酸化物を有する硬化剤成分を包含することを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記合成樹脂接着剤が、反応性合成樹脂成分(A)中に、
・下記式のエポキシ(メタ)アクリレート:
【化1】
[前記式中、nは1以上の数を表す]、及び/又は
・下記式の芳香族ジオールの(メタ)アクリレートのエトキシ化物
【化2】
[式中、a及びbはそれぞれ相互に独立して、0以上の数を表すが、ただし少なくとも一方の値が0より大きい]、又は芳香族ジオールの(メタ)アクリレートのプロポキシ化物、及び/又は
・1種以上のウレタン(メタ)アクリレート
を包含することを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
前記合成樹脂接着剤は、1種以上の硬化性エポキシ系反応性樹脂が、反応性合成樹脂成分(A)中にエポキシドとして、Novolak、ビスフェノールF、若しくはビスフェノールAのポリグリシジルエーテル、又はこれらのエポキシドの混合物を、生物由来でないか、又は完全に若しくは部分的に生物由来の形で包含し、硬化剤成分(B)中に硬化剤として、アミノ、イミノ、及びメルカプトから選択される2種以上の基を有する硬化剤を、相応するアミン若しくはチオール、チオアルコール、アミノアルコール、若しくはアミノチオールの形で、又は完全に若しくは部分的に生物系のマンニッヒ塩基調製物、又はこれらの化合物の混合物を包含することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
前記合成樹脂接着剤は、アミン系促進剤、ラジカル反応性樹脂の場合には防止剤、反応性希釈剤、チキソトロープ剤、及び充填材から選択される1種以上のさらなる含有物質を包含し、可塑剤、非反応性の希釈溶剤、可撓化剤、安定剤、レオロジー助剤、湿潤分散剤、及び着色助剤から選択される、さらなる別の含有物質を含んでいるか、又は含んでいないことを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
前記合成樹脂接着剤は、スタチックミキサを有する、又は有していない2チャンバカートリッジ式の二成分系であることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
前記合成樹脂接着剤が、二成分若しくは多成分の合成樹脂接着剤として構成されており、以下のa)〜d):
a)硬化性反応性樹脂、つまりラジカル硬化性の反応性樹脂、又はエポキシ系の反応性樹脂、それぞれ前記請求項に記載の範囲内で、
b)Brookfield粘度測定器によりスピンドル3を用いて23℃、20回転/分で測定可能な粘度が、800mPa*s未満である硬化性反応性希釈剤、
c)任意で、非硬化性の希釈剤、及び
d)a)及びb)を硬化させる硬化剤、若しくはa)及びb)の硬化を開始させる硬化剤、
を包含する、請求項1から16までのいずれか1項に記載の使用において、生物由来の炭素含分が、50%超であることを特徴とする、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定領域用、特に孔(例えば穿孔)、又は間隙において、反応性希釈剤、樹脂、及び任意でさらなる添加剤を用いてアンカー要素を接着するための、多成分系の合成樹脂接着剤、並びに以下に記載する本発明の対象に関する。
【0002】
多種多様なポリマー結合剤成分をベースとした固定用モルタル系(合成樹脂接着剤、例えば注入型のもの)が多数、知られており、一成分系、二成分系、又は多成分系を形成しているが、こうした固定用モルタル系は、アンカー材(例えばくさび、アンカーポールなど)を、それぞれ固定された土台(例えば壁材又はコンクリート)における孔、例えば穿孔、又は間隙をモルタル充填するために用いられる。ここでアンカー材には、さらなる建材(例えば上張り要素)を固定することができる。アンカー材のモルタル充填は一方で、合成樹脂とアンカー要素及び/又は孔若しくは間隙の濡れた面との間の物質結合の意味合いでの接着効果に基づき、他方では形状結合(例えば合成モルタルでアンカー要素及び/又は孔若しくは亀裂の突出部又は貫入部を取り囲むことによるアンダーカット)に基づく。
【0003】
例えばWO 2010/130919 A1(木材製品用の膠状組成物、例えば生物由来のポリオール)、WO 2009/087360 A1(合板用結合剤など、例えばバイオディーゼル生成物からのグリセリンを添加剤として、シリケート溶液に添加)、WO 2011/019997 A1、WO 2011/020010 A1、及びWO 2011/020004 A1(ポリオール、例えばヒマシ油、若しくはグリセリンを、イソシアネートによる成形体のためのウレタン製造における反応成分として)、WO 2008/014549 A1(特に、ポリオールをフェノール樹脂の構成成分として)、又はWO 2007/112104 A1(ポリオールを、ポリウレタン成形体を作製するためのイソシアネートのための反応相手として)といった文献には、一部が植物性供給源による添加剤が記載されている。
【0004】
従来技術の他の文献、例えばEP 1 118 628 A1、又はWO 2003/044114 A1は、まず二成分製品としてのエポキシ系モルタル材料に関し、第二にラジカル硬化性樹脂系のねじに雌ねじを確実に接着するための接着剤(この接着剤は、グリセリントリグリシジルエーテル、及び/又はアルカンジオール(メタ)アクリレート、及びグリセリン(メタ)アクリレートを成分として包含する)としてのモルタル材料に関するが、生物由来のものという特徴は挙げられていない。
【0005】
よって従来技術は、本発明のものとは異なる課題と解決法に関する。
【0006】
合成樹脂及びプラスチックの領域では、環境的、経済的、そして法律的に好ましいという理由から、化石成分の有機結合炭素(例えば石油、褐炭、石炭から得られるもの)の割合を低減させるという要求が存在する。
【0007】
バイオマス又は生物圏に基づく(再生可能な、持続可能な、生物系の)、又は単に「生物由来」の炭素原料は、資源の節約になり、長期間にわたって維持可能なため、特に興味が持たれている。
【0008】
生物系原料の割合を評価するためには通常、生物系の炭素の割合を、14C法によって検出して測定する。炭素同位測定の比はまた、製造工程によって特定可能なため、化石由来のバイオマスと、生物由来のバイオマスとの区別は可能である。
【0009】
生物系の製品は、完全に、又は少なくとも部分的に生物系の原料から成り得る。また、さらなる添加剤、無機物質、又は化石材料、又はこれら2種以上が含まれていてよい。
【0010】
生物系の割合を有する製品を統一的に認証可能にする努力がなされている。その例は、TUEV Rheinland(ドイツ国ベルリン在、DIN CERTCO)のASTM 6866による生物系製品の認証プログラムであり、これにより認証のための指標として「生物系・・・% DIN試験済み」が得られ、例えば「生物系50〜85% DIN試験済み」となる。
【0011】
このような認証を得るためには、最低限の要求事項が2つ設定されている:まず、強熱損失量として特定可能な有機材料の最小含分が、少なくとも50質量%でなければならない。
【0012】
その一方で、生物系の炭素含分が20質量%を超えなければならない。「生物系20〜50% DIN試験済み」では、その割合は20〜50%でなければならず、「生物系50〜85% DIN試験済み」では、その割合は50〜85%でなければならず、「生物系85%超 DIN試験済み」では、その割合は85%超でなければならない。
【0013】
製品の試験は、(たいていは、製造元又は販売元自身が)製造、又は販売/購入により試料を取得して試験する。最初の試験の後、定期的なチェックが行われる。
【0014】
ここで強熱損失量は、公知の方法によって測定できる。強熱損失量は、有機材料の量に相当する。試験材料の既知質量m0を灰にし、得られた残渣の質量mfを測定し、m0から引く。この値が、試験材料の揮発性割合又は有機割合に相当する。強熱損失量が高いということは、試料における有機物質の割合が高いということである。含まれる炭素が酸化され、二酸化炭素として放出されるからである。この測定は例えば、DIN EN 14775、又はDIN 18128によって行うことができる。
【0015】
生物系炭素の割合は、ASTM 6866(Standard Test Method for Determining the Biobased Content of Solid, Liquid and Gaseous Samples Using Radiocarbon Analysis)に基づき測定する(ASTM International, D6866:2008, Methode A)。
【0016】
本発明の課題は、合成樹脂接着剤における生物由来材料の割合を向上させること、また環境性と持続性に関連した製品特性(例えば環境製品宣言(EPD)の枠組みにおける物質収支、又は「カーボンフットプリント」で測定される)を改善することであった。エネルギー消費量は低減させるべきであり、二酸化炭素収支は改善するべきである。
【0017】
ここでその目的は、固定系において生物由来の炭素含分(ASTM 6866準拠で試験)が、20%超、特に50%超、55%超、60%超、65%超、75%超、又は80%超でもある(本発明による変法で好ましいとする含分に相当)。
【0018】
そこで、(言及する箇所ではいずれも)生物由来の反応性希釈剤及び樹脂が、冒頭で述べた合成樹脂接着剤を実現するために、非常に適していることが判明した。
【0019】
よって本発明は第一の態様において、冒頭で挙げたような多成分系合成樹脂接着剤に関し、その特徴は、反応性希釈剤として、及び/又は樹脂として、生物由来であるか、又は生物由来の割合を有する反応性希釈剤及び/又は反応性樹脂を少なくとも1種包含することであり、好適にはこのような反応性希釈剤及び/又は樹脂の少なくとも1つが、生物由来であるか、又は生物由来の割合を有するものである。
【0020】
本発明の実施態様はまた、アンカー材をモルタル充填するために本発明による多成分合成樹脂接着剤を使用する、アンカー材要素、及び孔若しくは間隙をモルタル充填するための適切な方法及び手法であり、ここで合成樹脂接着剤、及びアンカー材は順次、特にまず合成樹脂接着剤、それからアンカー材、又は(少なくとも実質的に)同時に、孔若しくは間隙において基材へと(亀裂のある基材であっても)導入できる。
【0021】
本発明のさらなる態様はまた、上記反応性の生物由来希釈剤、及び/又は生物由来の樹脂、又はこれら2種類以上の混合物を、多成分系合成樹脂接着剤のため、特に本発明による目的のために、反応性希釈剤及び/又は樹脂として用いる使用に関し、ここで好適には相応する反応性希釈剤が、このような原料に添加される。
【0022】
以下の定義は、特定の用語又は記号、及び本発明の特別な実施形態を説明するために用いられ、ここで前述、又は後述する本発明の実施態様において、それぞれの、複数の、若しくは全ての用語又は記号は、特別な定義によって置き換えることができ、これにより本発明の特別な実施態様となる。
【0023】
生物由来とは好適には、反応性希釈剤若しくは樹脂、又は「生物由来の割合を有する」反応性希釈剤若しくは樹脂の分子の少なくとも一部、及び場合によりその他の生物由来成分が、植物から、又は植物性若しくはさらに動物性の材料から得られることを意味する。生物由来の特徴は前述のように、ASTM 6866により(14C含分によって)検出可能であるのが、非常に好ましい。
【0024】
質量に関してパーセンテージ(質量%)で記載する場合、特に記載しない限り、この記載は、本発明による合成樹脂接着剤の反応体と添加剤の総質量を言う(つまり、混合後に硬化させる材料中に存在する成分、及び/又は包装無しの前駆体(同様に充填材として硬化性若しくは硬化された材料の総質量に算入可能なケース若しくはシートの場合は除く)、及び他の想定され得る部分、例えばスタチックミキサ、カートリッジカバーなどは含まない)。
【0025】
生物由来の樹脂、又は生物由来の割合を有する樹脂と言う場合、これは好適にはそのような反応性の天然樹脂、又は特に合成樹脂であると理解されるべきである。
【0026】
(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート、又はこれらの混合物を言う。
【0027】
生物由来の割合を有する反応性希釈剤又は樹脂は好適には、単数、若しくは好適には複数の反応基((共)重合を可能にする、すなわち特に、不飽和基若しくはエポキシ基)を有するもの、つまり特に、少なくとも部分的に(=少なくとも一分子内で)生物由来の全ての出発原料(原材料)であって、(好適には生物由来の)エピクロロヒドリン又は(メタ)アクリル酸により、例えば(好適には同様に生物由来の)相補性(すなわち、エピクロロヒドリン又は(メタ)アクリル酸と反応して、最終生成物になる)出発生成物(原材料)を含有するOH基、若しくはさらにSH基、若しくはアミノ基(NH2−)、若しくはイミノ基(−NH−)、又はこれら2種以上の基によって官能化されており(或いは、これらの出発原料の反応によって得られる反応性希釈剤及び樹脂である)、特に、ヒドロキシ基を含有し、官能化されて(相応して完全に若しくは少なくとも部分的に生物由来の)(メタ)アクリル酸エステル及び/又はグリシジルエーテルになっているもの、又はさらに、相応する官能化されたアミノ基又はカルボキシ(COOH)基、例えばヒドロキシ基含有植物油(例えばヒマシ油若しくは大豆油)の(メタ)アクリレート(好適には生物由来の(メタ)アクリレート割合を有するもの)、完全に若しくは少なくとも部分的に生物由来の(例えばC1〜C10)アルカン(モノオール、ジオール、トリオール、テトラオール、ペンタオール、ヘキサオール、若しくはポリオールの(メタ)アクリレート)、部分的に、若しくは好適には完全に生物由来のポリグリセリン(メタ)アクリレート、完全に若しくは部分的に生物由来の糖アルコールの(メタ)アクリレート、例えばマンニトール、キシリトール、若しくはソルビトール、完全に若しくは部分的に生物由来の(メタ)アクリル化されたフーゼル油、完全に若しくは部分的に生物由来の5員若しくは6員のヘテロシクリル(メタ)アクリレート(特に環内でO、N、及びSから選択されるヘテロ原子を1個若しくは2個有するもの)、部分的に若しくは好適には完全に生物由来のグリセリンメタクリレート又はポリグリセリン(メタ)アクリレート、完全に若しくは部分的に生物由来の多糖類メタクリレート、又は生物由来の、若しくは非生物由来のポリカルボキシ化合物を有する不飽和ポリエステル(UP)樹脂、及び生物由来、若しくは非生物由来のジオール又はポリオール、若しくは混合型官能性の化合物、例えば生物由来の乳酸、ここでカルボキシ基及びジオール基又はポリオール基の少なくとも1つが生物由来である、又は、部分的に、若しくは完全に生物由来のC2〜C12アルキル(モノオール、ジオール、トリオール、テトラオール、ペンタオール、ヘキサオール、若しくはポリオールのモノグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、テトラグリシジルエーテル、ペンタグリシジルエーテル、ヘキサグリシジルエーテル、若しくはポリグリシジルエーテル、例えばトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、又はグリセリントリグリシジルエーテルである。
【0028】
好適には、特に本発明による生成物の場合、生物由来の割合を有する反応性希釈剤は、エポキシド化されたヒマシ油ではない。
【0029】
特に好ましいのは、エポキシ化された大豆油(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ソルビトール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル化されたフーゼル油、又は純粋に生物由来のグリセリントリ(メタ)アクリレート、又は(メタ)アクリレート割合が少なくとも生物由来のグリセリントリ(メタ)アクリレート、又はエポキシドの場合、完全に若しくは部分的に(特にグリシジル割合において)生物由来のアルカン(モノオール、ジオール、トリオール、テトラオール、ペンタオール、ヘキサオール、若しくはポリオールのモノグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、テトラグリシジルエーテル、ペンタグリシジルエーテル、ヘキサグリシジルエーテル、若しくはポリグリシジルエーテル)、例えばトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、又は部分的若しくは好適には完全に生物由来のグリセリントリグリシジルエーテル、部分的に生物由来のフェノール系エポキシ樹脂、例えばNovolak、ビスフェノールF、若しくはビスフェノールA、又は少なくとも部分的に生物由来の反応性希釈剤2種以上の適切な(それぞれ不飽和若しくはエポキシ系に適合した)混合物、又は少なくとも部分的に生物由来の反応性樹脂があり得る。工業的にはしばしば、一部のみが官能化された化学種が得られることは当業者に知られており(つまり例えば、1分子当たり3個のヒドロキシ基を有するもの、ひいては理論的に三重に官能化され得るもの、しかしながら実際には、より少ない程度、例えば平均で2.7倍が官能化される)、特に示唆が無くても、それぞれカバーされるべきである。
【0030】
特別な場合にはまた、(メタ)アクリル酸割合、又はエピクロロヒドリン割合も、生物由来の起源である。特にエピクロロヒドリン(Bruce M. Bellら著、「Glycerin as a Renewable Feedstock for Eoichlorohydrin Production. The GTE Process.」 Clean 36 (8), 2008年; p.657〜661)、及び(メタ)アクリル酸(例えばEP1710227 B1、DE10 2008 038273 A1に記載のもの)、又は「Einfuehrung in die Technische Chemie」、Arno Behr、David W. Agar、Jakob Joerissen著、Spektrum Akademischer Verlag Heidelberg, 2010年、p.139)は、グリセリン及び/又は乳酸から公知の方法により製造できる。
【0031】
生物由来の割合を有する反応性希釈剤は例えば、0.5〜80質量%、例えば1〜55質量%、添加する。適切な割合の例は、1〜35質量%の範囲にあり、別の例では、36〜60質量%の範囲であり得る。
【0032】
「包含する」又は「含む」とは、上記成分若しくは特徴に加えてさらに別のものが存在し得ることを表す。つまり、使用する際に挙げる成分又は特徴の限定列挙を意味する「含有する」とは異なって、非限定列挙である。
【0033】
「さらに」という付加語は、その特徴が、この付加語なしでもより好ましくあり得ることを意味する。
【0034】
「及び/又は」とは、記載した特徴/物質がそれぞれ単独で、又は2種以上の混合物、若しくは記載したそれぞれの特徴/物質との組み合わせで存在し得ることを意味する。
【0035】
「1つの」とは通常(ここで直接用いるように文中で数として認識可能である場合を除き)、不定冠詞であり、特に「少なくとも1つ」(1、2、又はそれより多く)であることを意味する。
【0036】
合成樹脂としてはまず、エポキシ系又はラジカル硬化可能な(すなわち、ラジカル形成剤(硬化剤)の添加により硬化する)反応性合成樹脂(それぞれ相応する硬化剤(硬化剤成分)によって硬化可能なもの)が用いられ(硬化可能な成分)、それは例えば後述のものである。
【0037】
エポキシ系の合成樹脂
本発明による多成分合成樹脂接着剤において使用する際に使用可能な、エポキシ系反応性合成樹脂は、エポキシ成分、好適にはグリシジル化合物系のもの、例えば平均グリシジル基官能性が1.5以上のもの、特に2以上のもの(例えば2〜10)であり、これらは任意でさらなるグリシジルエーテルを反応性希釈剤として包含できる。エポキシ成分のエポキシドとは好適には、少なくとも1種の多価アルコール若しくはフェノール、例えばNovolak、ビスフェノールF若しくはビスフェノールA、又はこれらのエポキシドの混合物のポリ(「ジ−」を含む)グリシジルエーテルであり、これは例えば、相応する多価アルコールと、エピクロロヒドリンとの反応によって得られるものである。例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、Novolak−エポキシ樹脂、ビスフェノールA−エピクロロヒドリン樹脂、及び/又はビスフェノールF−エピクロロヒドリン樹脂であり、例えばその平均分子量が2000Da以下のものである。エポキシ樹脂は例えば、エポキシド当量が120〜2000、好適には150〜400であり、特に155〜195、例えば165〜185である。本発明による変法では、少なくとも部分的に生物由来の構成要素から製造されている樹脂が好ましい。この樹脂は、生物由来の炭素割合を向上させるからである(例えば生物由来のグリシジル割合を有するビスフェノールA、ビスフェノールF、又はビスフェノールA/Fの樹脂、例えばチェコ共和国、Revolucni 1930/86400 32 Usti nad Labern在のSpolchemie社から得られる)。注入型合成モルタル系の反応体と添加剤の合計質量の割合は、好適には5〜100質量%未満、特に10〜80質量%、10〜70質量%、又は10〜60質量%である。このようなエポキシ成分2種以上の混合物もまた、可能である。適切なエポキシ樹脂、反応性希釈剤、及び硬化剤はまた、Lee H、及びNeville K著、"Handbook of Epoxy Resins" (New. York: McGraw-Hill), 1982年に見られる(これらの化合物は、ここで明示的に本願に組み込む)。
【0038】
「エポキシ系」とは特に、本発明による合成樹脂接着剤が、これまでに挙げた成分に加えて、さらに別の通常の含有物質(例えば添加剤又はその他の前述若しくは後述の構成成分)を包含することができる。これらのさらなる含有物質は例えば、合計で最大80質量%、好適には0.01〜65質量%、存在し得る。「〜系」と明示的に言及していない場合もまた、このような通常の含有物質が包含されている。
【0039】
さらなる含有物質の重要な例は、促進剤、非反応性希釈剤、さらなる(生物由来以外の)反応性希釈剤、チキソトロープ剤、充填材、及びさらなる添加剤である。
【0040】
促進剤としては例えば、t−アミン、例えばイミダゾール若しくはt−アミノフェノール、例えば2,4,6−トリメチルアミノメチルフェノール、オルガノホスフィン、又はルイス塩基若しくはルイス酸、例えばリン酸エステル、又はこれら2種以上の混合物が、1成分中に、又は(特に多成分系の場合)又は複数の成分中に、好ましくはそのつど1つの硬化剤成分中に、反応体及び注入型合成モルタル系の添加剤に対して、例えば0.001〜15質量%包含されている。
【0041】
チキソトロープ剤としては通常、レオロジー助剤を使用し、それは例えば焼成ケイ酸(例えば表面を疎水性に処理したもの)、又は水素化した(室温で固体の)、又はヒドロキシアルキル化されたヒマシ油である。これらは例えば、0.001〜50質量%、例えば0.5〜20質量%の質量割合で添加することができる。
【0042】
充填材は、1種以上の成分中、例えば本発明による多成分系キットの成分中、例えば相応する二成分系キットの一成分若しくは二成分の成分中に、存在していてよい。さらなる充填材の割合は好適には、0〜90質量%、例えば10〜90質量%である。このためには生物由来の充填材、例えばリグニンスルホネート、植物の核若しくは殻の粉砕物、例えばココナッツ殻粉砕物、クルミ殻粉砕物、又はオリーブ核粉砕物、又は植物性の炭、又はこれら2種以上の混合物を使用することができる。非生物由来の充填材、例えばコランダム、珪砂、又は石英粉砕物も添加されていてよい。さらに、水硬性硬化充填材、例えば石膏、生石灰、又はセメント(例えばアルミナセメント若しくはポートランドセメント)、水ガラス、若しくは他の活性水酸化アルミニウム、又はこれらの2種以上を添加することができる。
【0043】
さらなる含有物質、例えば可塑剤、非反応性希釈溶剤、可撓化剤、安定剤、レオロジー助剤、湿潤分散剤、着色性助剤、例えば色素、若しくは特に顔料など、又はこれらの2種以上の混合物を、例えば様々な成分を着色するため、これらの成分の完全混合を良好に制御するために、添加することもできる。このようなさらなる添加剤は好適には、合計で0〜90質量%、例えば0〜40質量%という質量割合で添加されていてよい。
【0044】
エポキシドの定義で挙げた、芳香族基含有エポキシドよりも粘度が低い化合物(例えばトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、若しくはヘキサンジオールジグリシジルエーテル、若しくはグリシジルオキシプロピルメトキシシラン)は、さらなる反応性希釈剤として使用することもでき、その質量割合は例えば0.1〜90質量%、例えば0.5〜75質量%、又は1〜40質量%である。
【0045】
硬化剤は、エポキシ硬化に慣用の化合物(重付加における反応相手)を少なくとも1種包含する。ここで「硬化剤」とは好適には、充填材(特に、本発明による生物由来の充填材)を添加して、又は添加せずに、エポキシ硬化のために慣用の化合物少なくとも1種、及び/又はさらなる添加剤、例えば水、粘調剤、及び/又はさらなる添加物質、例えば着色剤などであり、言い換えると、完全な硬化剤成分である。硬化剤は別個の成分として、及び/又は(特に保護された形で、すなわち例えばマイクロカプセル化された形で)、また反応性樹脂調製物において(硬化性成分として、すなわち硬化剤との混合後に、マイクロカプセルのカバーが開いた後に、重合により硬化するものとして)、混入することができる。通常の添加剤を添加することができ、それは例えば充填材(特に先に定義のもの)、及び/又は(特に、ペースト若しくはエマルジョンを製造するための)溶剤(非反応性希釈剤)、例えばベンジルアルコール、及び/又は水である。
【0046】
エポキシ硬化に慣用の化合物(付加重合時に反応相手として作用するもの)は特に、アミノ、イミノ、及びメルカプトから選択される基2種以上を有するもの、例えば相応するアミン(これが好ましい)、チオール、若しくはアミノチオール、又はこれら2種以上の混合物、例えばLee H及びNeville K著、"Handbook of Epoxy Resins" (New. York: McGraw-Hill), 1982年が挙げられ(これについてはここで引用により組み込まれるものとする)、例えば上記ジアミン又はポリアミン、及び/又はジチオール及び/又はポリチオールである。
【0047】
本発明の特別な実施態様では、エポキシ硬化のために慣用の化合物は、エポキシ系であるか、又はいずれもゴム変性を有さない。
【0048】
(一般的に)エポキシ硬化に慣用の化合物には、本発明の実施態様において例えば、以下のものが含まれる:
・ジアミン若しくはポリアミン、例えば特に脂肪族(例えばエチレンジアミン)、脂環式及び芳香族のジアミン若しくはポリアミン、アミドアミン、アミン付加物、ポリエーテルジアミン、又はポリフェニル/ポリメチレンポリアミン、マンニッヒ塩基、ポリアミドなど(ここでマンニッヒ塩基、特にWO 2005/090433で開示されたもの、特に3p最後〜6p第二段落で開示されたもの、例えば例1、又は特に例2で開示されたもの、これらは引用により本願に組み込まれるものとし、又は極めて特に好適には、(生物由来の)カルダノール系のもの、単独で、又は1種以上のさらなるジアミン若しくはポリアミンとの混合物で)、
・ジチオール若しくはポリチオール、特に二官能性チオール若しくは多官能性チオール、例えばジメルカプト−α,ω−C1〜C12アルカン、4,4’−ジメルカプトジシクロヘキシルメタン、ジメルカプトジフェニルメタンなど、
・さらに、脂肪族アミノール、例えば特にヒドロキシ低級アルキルアミン、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、若しくは3−アミノプロパノール、又は芳香族アミノール、例えば2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、若しくは4−アミノフェノール。
【0049】
エポキシ硬化のために慣用の化合物2種以上の混合物もまた、使用できる、及び/又は包含されていてよい。
【0050】
エポキシ硬化の慣用の化合物が存在する場合、その量は好適には、反応体と合成樹脂接着剤(例えば注入型合成樹脂系)の硬化すべき材料の添加剤の総質量に対して最大95質量%、好適には2〜70質量%で存在する。
【0051】
本発明による多成分系合成樹脂接着剤の硬化剤成分に対して、相応する化合物の割合は、本発明の好ましい1つの実施態様において、1〜100質量%であり、例えば4〜95質量%、5〜90質量%、又は10〜80質量%である。
【0052】
本発明による多成分系の硬化剤成分の場合、さらなる添加剤はまた、「硬化剤」の構成要素であってよく、例えば水、有機溶剤、例えばベンジルアルコール、充填材(例えば上記のもの)、及びさらなる上記含有物質であり、その質量割合は例えば、合計で0.01〜70質量%、例えば1〜40質量%である。
【0053】
ラジカル硬化性の反応性合成樹脂
(本発明の実施態様において好ましい)ラジカル硬化性の反応性合成樹脂とはまず、ラジカル硬化性の不飽和反応性樹脂系のもの、また別個の成分として存在するラジカル形成性硬化剤である。
【0054】
使用する際に外部から、熱の供給及び/又は光(例えば紫外線)の供給を必要としないのが好ましい。
【0055】
ラジカル硬化性の不飽和反応性樹脂とはまず、ラジカルにより硬化する成分(これは例えば硬化剤の添加により、硬化可能なものを含む)として、不飽和(例えばオレフィン性)基を有する有機化合物を包含するか、又は特に、1分子につき不飽和(オレフィン)基を2個以上有するものから成る化合物であると理解されるべきであり、特に、不飽和カルボン酸エステルにより硬化可能なエステルを包含する。好適には、それぞれプロポキシ化若しくは特にエトキシ化された芳香族のジオール、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、又はNovolakのメタクリレート(特にジメタクリレート)、エポキシ(メタ)アクリレート、特にジエポキシド若しくはポリエポキシド、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、又はNovolakのジグリシジルエーテル及び/又はポリグリシジルエーテルと、飽和カルボン酸、例えばC2〜C7アルケンカルボン酸、例えば特に(メタ)アクリル酸、ウレタン(メタ)アクリレート、及び/又は尿素(メタ)アクリレート(これには、オリゴマー変性体又はポリマー変性体も含まれる)、及び/又は不飽和ポリエステル樹脂などとの反応生成物形態、例えば平均分子量が2000以下のもの、又はこれらの硬化可能な不飽和有機成分2種以上であり、その質量割合は例えば、0.1〜90質量%、例えば0.5〜75質量%、又は1〜40質量%、又は40〜65質量%である。
【0056】
本発明の特別な実施態様において存在若しくは使用するエポキシ(メタ)アクリレートの例は、以下の式のもの:
【化1】
であるか、又は
下記式のビスフェノールA−ジグリシジルエーテルを製造する際の予備連鎖反応を考慮したもの:
【化2】
前記式中、nは1以上の数である(様々なnの値を有する多様な分子の混合物が存在し、上記式によって表される場合にはまた、平均値として整数にならない場合もあり得る)。これらはまた、以下で「ビニルエステル」と呼ぶことがある。
【0057】
本発明の特別な実施態様において存在又は使用するプロポキシ化、若しくは特にエトキシ化された芳香族ジオール、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、又はNovolakの(メタ)アクリレート(特にジ(メタ)アクリレート)の例は、下記式:
【化3】
のものであるか、又は
一般的により高度のエトキシ化度を考慮すると、
【化4】
であり、
ここでa及びbはそれぞれ相互に独立して、0より大きい数であるが、ただし好適には少なくとも一方の値が0より大きく、好適には双方ともに1以上である(様々な(a及びb)の値を有する多様な分子の混合物が存在し、上記式によって表される場合、平均値として整数とならない場合もあり得、別個に考慮された各分子でのみ、それぞれ整数となる)。これらはまた、以下で「ビニルエステル」と呼ぶことがある。
【0058】
ここでさらなる含有物質の重要な例は、アミン系促進剤、防止剤、非反応性希釈剤、さらなる(生物由来以外の)反応性希釈剤、チキソトロープ剤、充填材、及び/又はさらなる添加剤である。
【0059】
アミン系促進剤としては、活性が充分に高いものが考慮され、特に(好適には第三級、特にヒドロキシアルキルアミノ基置換された)芳香族アミンであって、エポキシアルキル化されたアニリン、トルイジン、又はキシリジン、例えばエトキシ化されたトルイジン、アニリン、若しくはキシリジン、例えばN,N−ビス(ヒドロキシプロピル若しくはヒドロキシエチル)−トルイジン、若しくはN,N−ビス(ヒドロキシプロピル若しくはヒドロキシエチル)−キシリジン、例えばN,N−ビス(ヒドロキシプロピル若しくはヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)キシリジン、及び極めて特に相応する高級アルコキシ化された工業的生成物から成る群から選択されるものである。このような促進剤は1種以上であり得る。これらの促進剤はその割合(濃度)が、好適には0.05〜10質量%、特に0.1〜5質量%である。
【0060】
防止剤としては例えば、非フェノール系の(嫌気性)、及び/又はフェノール系防止剤が添加できる。
【0061】
フェノール系防止剤として考慮されるのは(しばしば市販のラジカル硬化性反応性樹脂の成分として予め混和されているが、存在しなくてもよい)、(アルキル化されていない、又はアルキル化された)ヒドロキノン、例えばヒドロキノン、モノメチルヒドロキノン、ジメチルヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン、(アルキル化されていない、又はアルキル化された)フェノール、例えば4,4’−メチレンビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、(アルキル化されていない、又はアルキル化された)ブレンツカテキン、例えばt−ブチルブレンツカテキン、3,5−ジ−t−ブチル−1,2−ベンゼンジオール、又は特に4−メトキシフェノール、又はこれら2種以上の混合物である。これらは好適には、割合が最大1質量%、特に0.0001〜0.5質量%であり、例えば0.01〜0.1質量%である。
【0062】
非フェノール系若しくは嫌気性(すなわち、フェノール系防止剤とは異なり、酸素無しでも作用する)防止剤(特に、硬化時間がほとんど影響を受けないもの)は好適には、フェノチアジン、又は有機ニトロキシラジカルが考慮される。有機ニトロキシラジカルとしては例えば、DE 199 56 509に記載されたもの(特に、ここに記載された化合物は引用により本願に組み込まれるものとする)が添加でき、それは特に、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オール(4−OH−TEMPO、又はTEMPOL)である。非フェノール系防止剤の質量割合は好適には、反応性樹脂調製物に対して、1ppm(質量%)〜2質量%の範囲、特に例えば10ppm〜1質量%の範囲である。
【0063】
チキソトロープ剤としては通常チキソトロープ剤由来のレオロジー助剤、例えば焼成ケイ酸、及び/又は水素化された(室温で固体の)ヒマシ油、又はヒドロキシアルキル化されたヒマシ油を使用することができる。これらは例えば、0.01〜50質量%、例えば0.5〜20質量%の質量割合で添加することができる。
【0064】
充填材としては、通常の充填材、特にセメント(例えばポートランドセメント、又はアルミナセメント)、白亜、砂、珪砂、石英粉砕物など、又は他のこれらの混合物(これらは粉末として、粒状で、又は成形体の形で添加することができる)、又は他の充填材、特に植物の核若しくは殻の粉砕物(これによって生物由来の炭素割合がさらに向上される、例えばオリーブ核粉砕物、ココナッツ殻粉砕物、若しくはさらにクルミ殻粉砕物)、又は水硬性充填材(例えばエポキシドのところで記載したもの)が使用され、又はこれら2種以上の混合物、ここで充填材はさらに、又は特にシラン化されていてよい。
【0065】
充填材は、本発明による多成分系合成樹脂接着剤の1種以上の成分中に、例えば相応する二成分キットの片方若しくは両方の成分中に存在していてよい。充填材の割合は好適には、0〜90質量%、例えば10〜50質量%(ここでアンカー要素を導入する際に破壊されるカバー材料(例えば破砕ガラス、若しくは破砕プラスチック)、例えばケースのガラス破片は、充填材として計算できる)。さらに、又は1種以上の充填材に代えて、水硬性充填材、例えば石膏、生石灰、又はセメント(例えばアルミナセメント、又はポートランドセメント)、水ガラス、若しくは活性水酸化アルミニウム、又はこれら2種以上を添加することができる。
【0066】
さらなる含有物質、例えば可塑剤、非反応性希釈剤、可撓化剤、安定剤、レオロジー助剤、湿潤分散剤、着色性助剤、例えば色素、若しくは特に顔料など、又はその他の添加剤、これらの2種以上の混合物を、例えば様々な成分を着色するため、これらの成分の完全混合を良好に制御するために、添加することもできる。このようなさらなる添加剤は好適には、合計で0〜90質量%、例えば0〜40質量%という質量割合で添加されていてよい。
【0067】
本発明による「さらなる反応性希釈剤」としては、例えば好ましいビニルエステル若しくはウレタン(メタ)アクリレートに、1種以上の(低粘度)ラジカル硬化性不飽和反応性希釈剤(非生物由来のもの)も添加でき、これにはまず、ラジカル硬化性((例えば硬化剤の添加前に)硬化可能なものを含む)成分として、不飽和(例えばオレフィン性)基を有する有機化合物を包含するか、又は特に以下のような有機化合物から成ると理解されるべきである:例えば、特に(メタ)アクリレートモノマー、又は(メタ)アクリルアミドモノマー、例えばアクリル酸及び/又はメタクリル酸、若しくはこれらのエステル、((メタ)アクリレートと呼ばれる)、又はアミド、特に(メタ)アクリレート、例えばモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、又はポリ(メタ)アクリレート(ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、又はヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含む)、(メタ)アクリレート基を1〜10個有するアルキル(メタ)アクリレート、例えばモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサ(メタ)アクリレート、又はポリ(メタ)アクリレート、例えばアルキルジ(メタ)アクリレート若しくはアルキルトリ(メタ)アクリレート、例えば1,2−エタンジオールジ(メタ)アクリレート(エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、例えば1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート若しくは特に1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ポリグリセリンポリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ビシクロアルキル(メタ)アクリレート、又はヘテロシクリル(メタ)アクリレート(ここでシクロアルキル若しくはビシクロアルキルは、環に炭素原子を5〜7個有し、かつヘテロシクリルは環原子を5個又は6個有し、かつN、O、及びSから選択される環ヘテロ原子を1個又は2個有し、例えばテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、又はイソボルニル(メタ)アクリレート、又はアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート、又はさらにスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、及び/又はジビニルベンゼン;又はこれらの2種以上の混合物、ラジカル硬化性の不飽和反応性樹脂とともに並行して硬化する構成要素として存在していてよく、その質量割合は、例えば0.1〜90質量%、例えば0.5〜75質量%、又は1〜40質量%である。
【0068】
非反応性希釈剤としては例えば、植物油、例えばリシン油、若しくはさらにバイオアルコール、及び脂肪酸、及び脂肪酸エステル、又はこれら2種以上の混合物を添加することができ、その割合は例えば3〜60質量%、例えば4〜55質量%である。
【0069】
硬化剤は少なくとも1種の過酸化物を、本来の開始剤として包含する。ここで「硬化剤」とは好適には、前述の、及び後述する純粋な開始剤、又は粘稠化された開始剤、充填材の添加あり、又は無しで、水、粘調剤、及び/又はさらなる添加物質、例えば色素、顔料、添加剤などであり、言い換えると、完全な硬化剤成分である。粘稠化のためには、さらなる添加剤、例えば石膏、白亜、(好適には表面処理された、例えば疎水化された)焼成ケイ酸、フタレート、クロロパラフィンなどが添加できる。これに加えてまた、さらなる充填材及び/又は(特に、ペースト又はエマルジョンを製造するための)溶剤(非反応性希釈剤、例えば液状のエポキシ化された、若しくはヒドロキシ基を含有する油、例えばヒマシ油、又は水、粘稠剤、充填材(例えば上述のもの)、及び上記のさらなる添加剤が添加できる。全ての添加剤の割合は例えば、合計で0.1〜99.5質量%、例えば1〜99.5質量%であり得る。
【0070】
硬化剤成分に対して、開始剤(本来の硬化剤)の割合は、本発明の好ましい実施態様において、0.5〜90質量%、特に0.9〜30質量%であり得る。
【0071】
本発明による反応性樹脂調製物を硬化させるための硬化剤としては、ラジカル重合の場合、例えばラジカル形成性過酸化物、例えば有機過酸化物、例えばジアシルペルオキシド、例えばジベンゾイルペルオキシド、ケトンペルオキシド、例えばメチルエチルケトンペルオキシド、若しくはシクロヘキサノンペルオキシド、又はアルキルペルエステル、例えばt−ブチルペルベンゾエート、無機過酸化物、例えば過硫酸塩若しくは過ホウ酸塩、並びにこれらの混合物が使用できる。
【0072】
本発明による合成樹脂接着剤における硬化剤の割合は好適には、包装を含まない全ての反応体及び添加剤の重量(質量)に対して、1〜60質量%の範囲、例えば2〜50質量%であり、ここで過酸化物の割合は、同様に属する全ての反応性樹脂調製物の質量に対して(100%)、0.1質量%以上、特に好ましい実施態様では、0.1〜1質量%未満であり、さらにまた1〜10質量%であり得る。
【0073】
ラジカル硬化性の不飽和反応性樹脂(又はその成分の合計量)は例えば、質量割合が5〜99.5質量%、例えば10〜98.5質量%、例えば10〜89.5質量%である。
【0074】
「〜系」とはここでも、本発明による合成樹脂接着剤が、先に挙げた成分に加えて、さらに別の通常の含有物質(例えば添加剤又はその他の前述若しくは後述の構成成分)を包含することができる。これらのさらなる含有物質は例えば、合計で最大80質量%、好適には0.01〜65質量%、存在し得る。「〜系」と明示的に言及していない場合もまた、このような通常の含有物質が包含されている。
【0075】
孔又は間隙とは、固定された(特に既にそれ自体が完成した)土台(基材)、特に壁材又はコンクリート、場合によってはまた亀裂のある基材、例えば亀裂が入ったコンクリートに存在し、少なくとも片側から到達可能な孔又は間隙であると理解されるべきであり、例えば穿孔、又はさらにさらに無機モルタル材料若しくは上塗り材料(例えばセメント若しくは石膏)を用いたモルタル充填の際に残された領域などである。
【0076】
本発明の特別な態様において、硬化性成分とそれに付随する硬化剤(硬化剤成分)は、相互に別個に二成分系又は多成分系内に保管されており、それからこれらを所望の場所(例えば孔若しくは溝、例えば穿孔内)で相互に混合する。
【0077】
本発明による注入型合成樹脂系は、多成分系として(例えば複数成分キット)想定されており、またそのままでも使用される。
【0078】
多成分キットとは特に、二成分又は(さらに)多成分キット(好適には二成分キット)であり、成分(A)は1種以上のラジカル硬化性(ラジカル形成剤(硬化剤)の添加後)反応性合成樹脂、又はエポキシ系の反応性合成樹脂1種以上を包含し、それぞれ付随する硬化剤(成分B)は、前述、又は以下で定義する通りであり、ここでさらなる添加剤は、前記成分の片方又は両方に存在していてよく、好適には2チャンバ式、又は多数チャンバ式装置であると理解され、ここで相互に反応性の成分(A)及び(B)、及び任意でさらなる別個の成分が含有されており、これによりこれらの構成成分は、貯蔵の間に(特に硬化しながら)相互に反応することがなく、好適にはこれらの構成成分は適用前に相互に接触しないのだが、これによって成分(A)及び(B)、及び任意でさらなる成分は、所望の箇所で(例えば孔の前又は孔の中)固定するために混合し、本発明により導入し、これによりそこで硬化反応を起こすことができる。またケース(例えばプラスチック製、セラミック製、又は特にガラス製のもの)、この中で成分が破壊可能な隔壁又は組み込まれた別個の破壊可能な容器によって相互に別個に配置されており、相互に接続されたケース(例えばアンプル)、並びに特に多成分又は特に二成分のカートリッジ(同様に特に好ましい)、これらのチャンバでは、本発明による合成樹脂接着剤の複数の又は好適には2つの成分(特に成分(A)及び(B))が、使用前の保管のために前述及び後述する組成で、含有されており、ここで好適には、スタチックミキサが、相応するキットに付属している。
【0079】
包装材料(例えばシート、カートリッジ(スタチックミキサも)、又はプラスチックケース)は同様に有利には、生物由来の炭素割合が高い、又は完全に生物由来の炭素割合で実施されていてよく、例えば相応するポリアミド製である。
【0080】
本発明による合成樹脂接着剤は、所望の箇所で使用することができ、付随する(混合前に反応を阻害する別個の)成分の混合、特に孔のそば、及び/又は孔のすぐ前、又は(例えば特にスタチックミキサを有するカートリッジを用いた場合)孔のすぐ前、及び/又は(特に、相応するケース若しくはアンプルを破壊する場合)孔若しくは間隙の内部、例えば穿孔で使用できる。
【0081】
「モルタル充填」とは特に、金属製アンカー材(例えばアンダーカットアンカー、ねじ棒、ねじ、穿孔アンカー、ボルト)を、(物質結合及び/又は形状結合により)固定することであると理解されるか、又はさらなる別の材料、例えばプラスチック又は木材、固定された(好適には既にそれ自体で完成している)土台、例えばコンクリート若しくは壁材、特に人工的に得られる構成部材である限り、特に壁材、屋根、壁、床材、プレート、支柱など(例えば、コンクリート、天然石、中実な石材若しくは有孔石材製の建材、さらにはプラスチック又は木材)、特に孔、例えば穿孔に固定することと理解される。このアンカー材によって例えば、手すり、被覆要素、例えばプレート、ファサード要素、又は他の構造要素が固定できる。
【0082】
「2種以上の混合物」と言う場合、これには特に、特に好ましいとして挙げた上記成分少なくとも1種と、別の成分少なくとも1種(特に、同様に好ましい成分として挙げたもの)との混合物が包含される。
【0083】
「それ自体で完成している」とは特に、あり得る表面変性(例えば被覆、例えば上塗り若しくは塗装)などを除いて、基材が既に完成されており(例えば石材又は壁として)、まず接着剤と同時には作製されないか、又は接着剤から成ることを言う。言い換えれば、この場合接着剤は、それ自体が既に完成した基材である。
【0084】
1種以上のアンカー材の導入は好適には、既に短時間、好適には30分間未満、本発明による固定用モルタルの成分を混合した後に行う。さらに説明すると、アンカー材を固定したい所望の箇所で成分を混合、導入することによって、複数の、実質的には並行の、及び/又は時間的により短いずれで反応が進行する。最終的な硬化は、その場で行う。
【0085】
本発明の特別な実施態様はまた、請求項と要約に記載した変法に関し、請求項、及び要約は、ここで引用することによって、本願に組み込まれるものとする。
【0086】
以下の実施例は、本発明の説明に役立つものであり、本願を何ら限定するものではないものの、同様に本願の特別な実施形態である(ここでまた、上記特定の各成分はそれぞれ、前述及び後述の本発明の対象において一般的な1つ、複数、又は全ての用語の代わりとなってよく、これが本発明の特定の実施態様を規定する)。
【0087】
例1:ラジカル硬化性反応樹脂系の本発明による二成分系接着剤
重合可能な以下の成分から、本発明により使用可能な成分(A)を作製した:
【表1】
【0088】
)*は、生物由来の、又は少なくとも生物由来の割合を有する、本発明による反応性希釈剤又は樹脂である。
【0089】
(*)は、潜在的に生物由来の、又は少なくとも生物由来の割合を有する、本発明による反応性希釈剤である。
【0090】
「Sarbio」は、フランス国のColombes Cedex在、Sartomer Europe社の商標名である。
【0091】
大豆油アクリレートCN 111も、同様にSartomer Europe社のものである。
【0092】
硬化剤成分(B)としてはそれぞれ、以下のものを使用する:
【表2】
【0093】
この硬化剤は、密度が1.50g/ccmであり、23℃での粘度が120Pa*sである(Brookfield、スピンドル7、10回転/分)。生物由来の炭素含分は、88.9%である。
【0094】
全てのモルタル硬化剤の組み合わせによって、固定用モルタルを作製する(成分(A)対(B)の体積比は、5:1)。全ての固定用モルタルによって、15〜23N/mm2の範囲という良好〜非常に良好な接合応力が得られた。
【0095】
例2:エポキシ系反応樹脂系の本発明による二成分系接着剤
重合可能な以下の成分から、本発明により使用可能な成分(A)を作製した:
【表3】
【0096】
硬化剤成分(B)としてはそれぞれ、以下のものを使用する:
【表4】
【0097】
この硬化剤は、密度が1.28g/ccmであり、23℃での粘度が160Pa*sである(Brookfield、スピンドル7、10回転/分)。生物由来の炭素含分は、73%である。
【0098】
全てのモルタル硬化剤の組み合わせによって、固定用モルタルを作製する(成分(A)対(B)の体積比は、3:1)。固定用モルタルによって、18〜25N/mm2の範囲という接合応力が得られた。