特許第6552484号(P6552484)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6552484ナノフィブリル化セルロースを製造するための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552484
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】ナノフィブリル化セルロースを製造するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   D21H 11/18 20060101AFI20190722BHJP
【FI】
   D21H11/18
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-513413(P2016-513413)
(86)(22)【出願日】2014年5月13日
(65)【公表番号】特表2016-526114(P2016-526114A)
(43)【公表日】2016年9月1日
(86)【国際出願番号】FI2014050357
(87)【国際公開番号】WO2014184438
(87)【国際公開日】20141120
【審査請求日】2017年5月9日
(31)【優先権主張番号】20135515
(32)【優先日】2013年5月14日
(33)【優先権主張国】FI
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314013187
【氏名又は名称】ウーペーエム−キュンメネ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】UPM−Kymmene Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】ヌオッポネン,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】タンペル,ユハ
(72)【発明者】
【氏名】ティエンヴィエリ,タイスト
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−161893(JP,A)
【文献】 米国特許第06202946(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00〜D21J7/00
C08B 1/00〜37/18
B27N 1/00〜 9/00
B02C13/00〜13/31
18/00〜18/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノフィブリル化セルロースの製造方法であって、
分散液中のセルロース系繊維材料が、小繊維を分離するために処理される製造方法において、
前記繊維材料が分散機に供給され、当該材料が異なるいくつかの逆回転ロータに流され、異なる逆回転ロータの効果によってせん断力と衝撃力とに繰り返しさらされる第1工程と、
第1工程から得られた繊維材料がホモジナイザに供給され、圧力の効果によって均質化される第2工程とを含み、
前記第1工程において、繊維材料は、当該繊維材料が、異なる逆回転ロータのブレード(1)の効果によってせん断力および衝撃力に繰り返しさらされ、それによって同時に、少なくとも部分的に、フィブリル化されるように、いくつかの逆回転ロータ(R1,R2,R3・・・)を通過させて、当該ロータの回転軸(RA)に関して半径方向外側に供給され、
前記フィブリル化は、様々な作用方向を有する一連の高頻度繰り返し衝撃を利用する衝撃エネルギーによって達成され、
前記分散液中の気体含有量は、少なくとも50体積%であることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記第2工程において、均質化圧力は、200〜1000bar、好ましくは300〜650bar、最も好ましくは310〜450barであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1工程において、材料の分散機通過が1回以上繰り返され、および/または第2工程において、材料のホモジナイザ通過が1回以上繰り返されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第1工程において材料が分散機を1〜3回通過し、第2工程において材料がホモジナイザを1〜3回通過することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ナノフィブリル化セルロースは、材料が1つの分散機または直列に接続された分散機を連続的に通過することによって、および材料が1つのホモジナイザまたは直列に接続されたホモジナイザを連続的に通過することによって連続的に製造されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記繊維材料は、第1工程から得られる同一の濃度で第2工程において処理されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記繊維材料は、少なくとも第1工程において1〜8重量%、より好ましくは2〜5重量%の濃度で処理されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記繊維材料は、第2工程において1.5〜6重量%、好ましくは2.5〜4重量%の濃度で処理されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第1工程に供給される繊維材料において、繊維の内部結合が、化学的または酵素的前処理によって弱められていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記セルロースは、アニオンまたはカチオンで修飾されたセルロースであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記セルロースは、カルボキシル基を含む酸化セルロースであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記セルロースは、カルボキシメチル化セルロースであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
第2工程から得られるナノフィブリル化セルロースは、0.8%濃度および10rpmで測定された、少なくとも5,000mPa・s、有利には少なくとも15,000mPa・sのブルックフィールド粘度を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
第2工程から得られるナノフィブリル化セルロースは、0.1%濃度で測定された、90NTU未満、有利には5〜90NTUの濁度値を有することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
第2工程から得られるナノフィブリル化セルロースは、0.5重量%の濃度で回転式レオメーターによって測定された、1,000〜100,000Pa・s、好ましくは5,000〜50,000の範囲のゼロせん断粘度と、1〜50Paの範囲、有利には3〜15Paの範囲の降伏応力とを有することを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノフィブリル化セルロースを製造するための方法であって、セルロース系繊維材料が、小繊維を分離するための精製間隙内に供給される方法に関する。
【背景技術】
【0002】
約3〜4%の低濃度における、たとえば、ディスクリファイナーまたはコニカルリファイナーによるリグノセルロース含有繊維の精製においては、繊維壁の構造が緩められ、小繊維、またはいわゆる微細繊維が、繊維の表面から分離される。形成された微細繊維と柔軟な繊維とは、大部分の紙グレードの特性に有利な効果を有する。しかしながら、パルプ繊維の精製においては、その目的は、繊維の長さと強度とを保持することである。機械パルプの後の精製では、その目的は、精製によって厚い繊維壁を薄くすることによって、繊維を部分的にフィブリル化し、繊維の表面から小繊維を分離することである。
【0003】
リグノセルロース含有繊維は、繊維壁において構成要素として機能する小繊維を分離することによってより小さな部分に完全に分解することも可能であり、得られる粒子は、非常に小さな寸法になる。いわゆるナノフィブリル化セルロースが得られ、その特性は、したがって、通常のパルプの特性とは顕著に異なる。製紙における添加剤としてナノフィブリル化セルロースを使用すること、紙製品の内部結合強度(層間強度)および引張強度を向上すること、ならびに紙の気密度を向上することも可能である。ナノフィブリル化セルロースは、その外観においてもパルプとは異なる。なぜなら、それは、小繊維が水分散液中に存在するゲル様材料であるからである。ナノフィブリル化セルロースは、その特性のために、それは所望の原料となっており、それを含む製品は、たとえば、様々な組成物における添加剤として産業においていくつかの用途を有している。
【0004】
ナノフィブリル化セルロースは、いくつかの細菌(アセトバクター・キシリナス(Acetobacter xylinus)など)の発酵工程から直接それ自体で分離することが可能である。しかしながら、ナノフィブリル化セルロースの大規模製造を考慮すると、見込みのある潜在的原料の大部分は、セルロース繊維、特に木、およびそれから作製される繊維性パルプを含み植物に由来する原料である。パルプからのナノフィブリル化セルロースの製造は、繊維を小繊維にさらに分解することを必要とする。
【0005】
従来の寸法等級のセルロース繊維からのナノフィブリル化セルロースの製造は、食品産業の需要のために開発された実験室規模のディスクリファイナーによって実施されている。この技術は、ナノセルロースの寸法等級を得るために、いくつかの精製工程、たとえば2〜5工程を連続して実施することを必要とする。この方法も、規模を産業規模に拡大しにくい。
【0006】
繊維性原料を均質化によってナノフィブリル化セルロースレベルに分解することも知られている。この工程において、セルロース繊維懸濁液は、材料において高いせん断力を生じる均質化工程を数回通過する。たとえば米国特許第4,374,702号において、このことは、高圧下で懸濁液を狭い間隙に繰り返し通して高速で衝撃面に衝突させて速度を減速させることによって行われる。米国特許第4,481,077号は、前記特許のホモジナイザを適用する方法を開示しており、添加剤は、均質化前にパルプに混合される。ナノフィブリル化セルロースの製造のための、セルロース誘導体からなる繊維パルプの均質化は、同様にUS6,602,994で公知である。
【0007】
実際のところ、ナノフィブリル化セルロース製造における均質化において妥協がなされなければならない。良好なフィブリル化のために高い入力電力/パルプ流速が必要とされ、このことは利用可能なホモジナイザ電力によって生産性を減少させる。たとえば、パルプをホモジナイザに数回通過させ、所望の程度のフィブリル化を行うことが知られている。繊維含有パルプの処理に伴う他の問題は、比較的低い濃度(1〜2%)においてさえも生じ得る、ホモジナイザの構造による目詰まりに対するホモジナイザの感受性である。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、上述の欠点を除き、ナノフィブリル化セルロースを良好な生産能力、かつ高濃度で製造することができる方法を提供することである。
【0009】
本発明の方法は、2つの工程を含む。第1工程において、繊維材料は、分散機であって、当該繊維材料がいくつかの逆回転ロータを通ってロータの回転軸に関して半径方向外側に流れ、異なる逆回転ロータの効果によって当該繊維材料がせん断力および衝撃力に繰り返しさらされる分散機に供給される。第2工程において、第1工程で得られた繊維材料は、ホモジナイザに供給され、圧力の効果によって均質化にさらされる。両方の工程は、好適な濃度において繊維材料の水性分散液に実施される。第2工程は、第1工程と同じ濃度で実施することができるか、または第1工程で得られる水性繊維材料分散液は、第2工程のために好適な濃度に希釈される。
【0010】
第1工程において、繊維材料は、未だ分解していない標準寸法の繊維による目詰まりのリスクなしに逆回転ロータによって少なくとも部分的にナノフィブリル化セルロースに縮小することが可能である。繊維材料は、ロータを通って流れる際に、様々な方向を有する高頻度に繰り返される一連の衝撃にさらされる。第1工程は、たとえ8重量%までの高濃度でも実施することができる。第2工程において、第1工程に由来する材料であって、未だ非均質であり、小繊維および小繊維に未だ分解されていない繊維フラグメントのような異なる寸法の繊維材料を含む材料は、目詰まりのリスクなしに、ホモジナイザにおいて加圧下でナノフィブリル化セルロースの均一ゲルに均質化することが可能である。第1工程において処理された材料は、通常よりも高濃度で第2工程に供給することが可能であり、総エネルギー消費量を減少させる。
【0011】
各工程において、繊維材料の分散液は、装置を一度通過するか、または繰り返し通過することが可能である。通過の総回数は1〜3回であり、反復性装置を通る。
【0012】
分散機における第1工程において、分散液における繊維材料は、ロータのブレードが回転速度と反対方向半径(回転軸までの距離)によって決定される周辺速度とで回転するとき、当該繊維材料を反対方向からたたくロータのブレードまたはリブによって繰り返し衝撃を加えられる。繊維材料は、半径方向外側に移されるので、反対方向から速い周辺速度で交互に回ってくるブレードの幅広表面、すなわちリブ上に衝突する。言い換えれば、繊維材料は、反対方向からの複数の連続的衝撃を受ける。また、ブレードの幅広表面、すなわちリブの端部であって、隣接するロータブレードの反対の端部とブレード間隙を形成する端部において、せん断力が生じ、繊維の分解と小繊維の分離とをもたらす。衝撃頻度は、ロータの回転速度、ロータの数、各ロータにおけるブレードの数、および装置を通る分散液の流速によって決定される。
【0013】
ホモジナイザにおける第2工程では、ナノフィブリル化セルロースへの繊維材料分散液の均質化は、分散液の強制貫流によって生じ、材料を小繊維に分解する。繊維材料分散液は、所定の圧力で狭い貫流間隙を通過し、分散液の直線速度の増加は、分散液にせん断力と衝撃力を生じ、繊維材料から小繊維の除去をもたらす。繊維フラグメント、その最大部分は、第1工程後に分散液中に依然として存在しており、第2工程において小繊維に分解される。言い換えれば、これらの繊維フラグメントは、それらがホモジナイザを目詰まりさせることがないように十分に小さい。
【0014】
処理される繊維材料は、好ましくはそのようなセルロースであり、当該セルロースにおいて、セルロースの化学的または酵素的前処理によって繊維の内部結合は既に弱められている。そのような材料は、第1工程における衝撃によって繊維フラグメントおよび小繊維に容易に分解される。化学的前処理は、繊維への化学物質、特にセルロース誘導体の吸着、または繊維のセルロース成分の化学的修飾であってもよい。たとえば、セルロース構造体へのカルボキシメチルセルロース(CMC)の吸着は、WO2010/092239に記載された技術に従って実施することが可能である。酵素的前処理は、セルラーゼのような木分解酵素を用いる繊維材料の穏やかな処理であってもよい。さらに、繊維材料のセルロースは、官能基がセルロース鎖中に導入された化学的に修飾されたセルロースであってもよい。そのような基は、たとえば、カルボキシル基(アニオン修飾セルロース)または4級アンモニウム(カチオン修飾セルロース)を含む。カルボキシル基は、公知の方法、たとえばセルロースアンヒドログルコースユニットの第一級アルコール基をカルボキシル基に酸化する好適なN−オキシル触媒を用いるセルロースのN−オキシル媒介触媒酸化によってセルロース分子中に提供することが可能である。繊維材料におけるセルロースのN−オキシル媒介酸化のための方法は、たとえば公開公報WO2012/168562に公開されている。アニオン修飾セルロースは、カルボキシメチル基が、低度の置換を有するセルロースであって、セルロースが固体(水に不溶)のままであるセルロースのアルコール基に付着されたカルボキシメチル化セルロースであってもよい。
【0015】
繊維材料であって、上述のいくつかの方法でセルロースの構造が弱まるか、または「不安定化した」繊維材料は、繊維が1つのロータの作動範囲から次のロータの作動範囲に移動する際に、ブレードの端部において生じるせん断力と、対向方向のブレードからの衝撃であって一連の連続ロータによって生じる衝撃とによって第1工程において分散機中で既によく影響を受けていてもよい。ナノフィブリル化セルロース水性分散液の形成は、ホモジナイザにおける連続的処理で達成することが可能であり、セルロース小繊維の均一なゲル様分散液をもたらし、低いせん断応力値における高粘度値によって特徴付けることが可能であり、繊維フラグメントによって生じる濁りのない透明なゲルとして目視分析によって見ることが可能である。
【0016】
第1工程にさらされ、第2工程が未修飾である、つまりセルロースの初期内部強度が保たれている場合、繊維は、好ましくは予め精製される。繊維は、70を超える、好ましくは80を超えるSR番号に予め精製される。
【0017】
さらに、小繊維の分離は、繊維材料分散液のpHが中性またはわずかにアルカリ性範囲(pH6〜9、有利には7〜8)にあるとき、分散機の第1工程において良好に作用する。高温(30℃を超える温度)も、フィブリル化に寄与する。温度に関して、処理の通常動作環境は、通常20〜60℃である。温度は、有利には35〜50℃である。
【0018】
ホモジナイザにおける第2工程において、加えられるホモジナイズ圧力は、200〜1000bar、有利には300〜650barである。圧力は、最も好ましくは310〜450barの範囲である。加えられる圧力は、第1工程が原因で、文献によって一般的に示唆される値に比べて比較的低く、このことは、エネルギー消費量が少ないことを意味する。
【0019】
ホモジナイザにおいて、pH値は、分散機と同一であってもよい。温度は、90℃を超えて上昇させられることはない。
【0020】
繊維材料分散液が処理される濃度は、好ましくは1〜8重量%、より好ましくは2〜5重量%である。エネルギー効率性および生産量のために、上述の範囲における少なくとも3重量%の濃度が好ましく使用される。濃度は、好ましくは3〜4.5%であり、好適には3〜4%である。
【0021】
繊維材料は、少なくとも第1工程における上述の濃度で処理される。第2工程において、処理は、第1工程と同じ濃度で続けることが可能であり、またはより低濃度に希釈することが可能である。分散液が希釈される場合、濃度は、しかしながら、第2工程において、少なくとも1.5%、好ましくは少なくとも2重量%である。第2工程における濃度は、好ましくは1.5〜6重量%、最も好ましくは2.5〜4重量%である。第2工程における好適な濃度は、セルロースの化学的または酵素的前処理に依存する。
【0022】
各工程において、同一の繊維材料分散液は、装置を1〜3回通過させられる。工程間において繊維材料分散液は希釈されてもよいが、工程の簡略化のために、繊維材料は、第1工程と第2工程との両方において同一の濃度で処理されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明は、添付図面を参照して以下に説明される。
図1】ロータの回転軸に一致する断面A−Aにおいて第1工程で使用される装置を示す。
図2図1の装置を部分水平断面図で示す。
図3】方法の一般的原理を概略的に示す。
図4図4aおよび図4bは、第1工程および第2工程後の製品の比較である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の開示において、特に示されない限り、全てのパーセント値は重量によるものである。さらに、特に示されない限り、示される全ての数値範囲は、範囲の上限および下限値を含む。
【0025】
本願において、全ての示される結果およびなされる計算は、パルプ量に関するときは乾燥パルプに基づいてなされる。
【0026】
本願において、ナノフィブリル化セルロースは、セルロース系繊維原料から分離されたセルロースマイクロフィブリルまたはマイクロフィブリル束を表す。これらの小繊維は、高いアスペクト比(長さ/直径)によって特徴付けられ、それらの長さは1μmを超えてもよいが、直径は通常200nmよりも小さいままである。最小の小繊維は、直径が通常2〜12nmであるいわゆる基本小繊維の寸法である。小繊維の寸法および寸法分布は、精製方法と効率とに依存する。ナノフィブリル化セルロースは、セルロース系材料として特徴付けることが可能であり、粒子(小繊維または小繊維束)の中程度の長さは10μm以下、たとえば0.2〜10μm、有利には1μm以下であり、粒径は1μm以下、好ましくは2nm〜200nmである。ナノフィブリルセルロースは、大きな特定表面積と、水素結合を形成する高い能力とによって特徴付けられる。水分散液において、ナノフィブリル化セルロースは通常、色の薄い、またはほとんど色のないゲル様材料として見える。繊維原料によって、ナノフィブリルセルロースは、ヘミセルロースまたはリグニンなどの少量の他の木質成分を含んでもよい。よく使用されるナノフィブリル化セルロースの同等名称は、多くの場合ナノセルロースと単に称されるナノフィブリル化セルロース(NFC)、およびマイクロフィブリル化セルロース(MFC)を含む。
【0027】
本願において、用語「フィブリル化」は一般的に、繊維材料をその粒子に仕事を適用することによって機械的に分解することを表し、セルロース小繊維は、繊維または繊維フラグメントから分離される。
【0028】
フィブリル化にさらされる繊維材料分散液は、繊維材料と水との混合物である。用語「パルプ」は、繊維原料と水との混合物にも使用される。繊維材料分散液は一般的に、水に混合された繊維全体、それらから分離した部分(フラグメント)、小繊維束または小繊維を表し、通常、繊維材料分散液は、そのような構成要素の混合物であり、成分間の割合は、処理の程度に依存する。
【0029】
出発材料として使用される修飾または前処理された繊維材料は、セルロースを含有する任意の植物材料に基づくものであってもよい。木は、トウヒ、マツ、モミ、カラマツ、ダグラスモミもしくはツガなどの軟材の木、またはカバ、アスペン、ポプラ、ハンノキ、ユーカリノキもしくはアカシアなどの硬材の木、または軟材と硬材との混合物であればよい。非木材材料は、農業残渣、草、または、その他の植物性物質であってもよく、たとえば、ワタ、トウモロコシ、コムギ、オートムギ、ライムギ、オオムギ、コメ、アマ、アサ、マニラアサ、サイザルアサ、ジュート、ラミー、ケナフ、バガス、タケ、またはアシに由来する、わら、葉、樹皮、種子、外皮、花、野菜、もしくは果実などである。
【0030】
第1工程(分散機)
第1工程において使用される分散機は、図1および図2に示される。それは、反対方向に回転するように配置されたいくつもの同軸ロータ、ロータR1,R2などを含む。
【0031】
各ロータの外縁において、いくつかのブレードが半径方向における先行および/または次のロータのいくつかのブレードと共に存在し、反対方向へのそれらの回転運動によっていくつかの狭いブレード空間または間隙を繰り返して生じ、繊維は、反対方向に移動する際に高速で擦れ違うブレード、すなわちリブの対向する端部としてせん断力にさらされる。
【0032】
逆回転ロータの各対において、多数の狭いブレード間隙と、対応する衝撃方向の反転とは、各ロータの1回転の間に生じ、繰り返し頻度は、外縁のブレード、すなわちリブの数に比例するということができる。結果的に、ブレード、すなわちリブによって繊維材料上に生じる衝撃方向は、高頻度で変化する。回転の間のブレード間隙の数と、それらの繰り返し頻度とは、各ロータの外縁上に分布するブレード密度と、対応する各ロータの回転速度とに依存する。そのようなロータ対の数はn−1であり、nはロータの総数である。なぜなら、ロータは、処理パルプが精製処理を終える最も外側のロータを除いて、半径方向に隣接する外側ロータと常に対を形成するからである。
【0033】
異なるロータは、たとえばブレードの数が最も外側のロータで増加するように、様々な数のブレード、すなわちリブを有してもよい。ブレード、すなわちリブの数は、別の式に従って変化してもよい。
【0034】
各ロータの外縁上のブレード/リブの密度と、半径方向に対するブレードの角度と、ロータの回転速度とは、精製効率(精製度)と、精製されるべき繊維材料の処理時間とに影響を与えるために使用可能である。
【0035】
異なる方向から高頻度でもたらされる衝撃に基づくフィブリル化方法は、そのようなセルロース系繊維材料であって、セルロースの内部結合が前処理で弱められた繊維材料に特に好適である。前処理されたセルロースは、特にカルボキシメチル化または酸化(たとえば、N−オキシル媒介酸化)などのアニオン修飾をすることが可能である。
【0036】
第1工程の利点は、たとえばホモジナイザと比較して、高濃度(8重量%まででさえ)の標準寸法繊維をフィブリル化するために使用することができる点である。ブレード/リブの密度は、使用の時点の濃度に応じて調節することが可能である。
【0037】
供給は、ロータを通過する繊維材料分散液が、それに混合された所定体積の気体媒体を含むが、分離相として、たとえば10体積%を超えるように実施することが可能である。小繊維の分離を増大するために、気体の含有量は、少なくとも50体積%、有利には少なくとも70%、より有利には80〜99%であり、つまり、90体積%未満、50%未満、30%未満、同様に1〜20%の充填度(ロータを通過する体積における処理されるべき繊維材料分散液の割合)で表わされる。気体は、有利には空気であり、処理される繊維懸濁液は、空気の所定の割合が繊維懸濁液に混合されるように供給することが可能である。
【0038】
方法は、たとえばロータの数を増やすことによって、容易に規模を拡大することができるという点でも有利である。
【0039】
図1に示される装置は、共通の回転軸RAの周囲を回転するように互いに内部に同心に配置されるいくつかの逆回転ロータR1,R2,R3・・・を含む。この装置は、同一の方向に回転する一連のロータR1,R3・・・と、反対の方向に回転するロータR2,R4・・・とを含み、ロータは、1つのロータが逆回転ロータによって常に半径方向に後続および/または先行されるように2つ1組で配置される。同一方向に回転するロータR1,R3・・・は、同一の機械的回転手段5に接続する。また、反対方向に回転するロータR2,R4・・・は、同一の機械的回転手段4に接続されるが、上述の手段の方向に対して反対の方向に回転する。回転手段4,5の両方は、下から差し込まれるそれら自身の駆動軸に接続される。複数の駆動軸は、たとえば外側駆動軸が下部回転手段4に接続され、その内側に位置し、それに関して自由に回転する内側駆動軸が上部回転手段5に接続されるように回転軸RAに関して同心円状に位置してもよい。
【0040】
図は、内部でロータが回転するように配置される装置の固定ハウジングを示していない。ハウジングは、材料を最も内側のロータR1の上部から内部に供給することができる供給口と、ロータの外縁に関してほぼ接線方向外側向きに近接して位置する排出口とを備える。また、ハウジングは、駆動軸を下部に通す貫通孔を備える。
【0041】
実際には、ロータは、円の外縁において所定の間隔で位置し、その幾何学的中央は、回転軸RAであり、放射状に延びるベーンまたはブレード1からなる。同一ロータにおいて、流通経路2は、複数のベーン1の間に形成され、精製される材料は、当該経路を通って外側に放射状に流れてもよい。2つの連続的なロータ、R1とR2,R2とR3,R3とR4などの間において、いくつかのブレード間隔または間隙は、反対方向におけるロータの回転運動の間に高頻度で繰り返し形成される。図2において、参照符号3は、半径方向における第4および第5ロータR4,R5のブレード1の間のそのようなブレード間隙を示す。同一ロータのブレード1は、半径方向における先行ロータ(円の外縁上により狭い半径を有する)のブレード1と、半径方向における次のロータ(より大きな半径を有する円の外縁に位置する)のブレード1とによって、狭い間隙、すなわちブレード間隙3を形成する。同様の方法において、衝撃方向における多くの変化は、第1ロータのブレードが円の外縁に沿って第1方向に回転する際に2つの連続するロータの間に形成され、次のロータのブレードは、同心円の外縁に沿って反対方向に回転する。
【0042】
第1シリーズのロータR1,R3,R5は、水平な下部ディスクと水平な上部ディスクとからなる同一の機械的回転手段5に取り付けられ、半径方向に最も内部の第1ロータR1のブレード1によって互いに接続される。上部ディスクにおいて、同様に、下方に延びるブレード1によって、この第1シリーズの他のロータR3,R4のブレード1に取り付けられる。このシリーズにおいて、同一ロータのブレード1は、最も内側のロータR1を除いて、接続リングによってそれらの下部末端でさらに接続される。第2シリーズのロータR2,R4,R6は、下部ディスクの底面に位置する水平ディスクである第2機械的回転手段4に取り付けられ、当該シリーズのロータのブレード1が接続され、上方に延びる。このシリーズにおいて、同一ロータのブレード1は、接続リングによってそれらの上端部で接続される。前記接続リングは、回転軸RAと同心である。下部ディスクは、さらに環状溝によって同心円状に配置され、ディスクの表面に面する環状突起に組み合わされ、回転軸RAに同心円状に配置され、それから等距離離れる。
【0043】
図1は、ベーンまたはブレード1が、回転軸R1に平行な細長い要素であり、幅I(半径方向の寸法)よりも大きな高さを有していることを示す。断面図において、ブレードは、四角形であり、図2において長方形である。繊維材料は、中央から外側に向かってブレードの長手軸方向に斜めに通過し、ブレード1における半径方向に面する表面の側面における端部は、第2ロータのブレード1の対応する端部とともにブレードの長手軸方向に延びる長く狭いブレード間隙3を形成する。
【0044】
ロータR1,R2,R3・・・は、したがって、ある点では、回転軸に関して回転同心体形状の貫流ロータであり、繊維材料を処理するそれらの部分は、回転軸RAの方向に延びる細長いベーンまたはブレード1と、それらの間に残る流通経路2とからなる。
【0045】
また、図1は、ロータブレード1の高さh1,h2,h3・・・が第1、すなわち最も内側のロータR1から外側に向かって徐々に増加することを示す。その結果、ロータブレード1によって制限される流通経路2の高さは、同一方向に増加する。実際には、このことは、放射状流の断面積が、ロータの周辺長さとして外側に向けて増加するとき、高さの増加は、この断面積も増加することを意味する。その結果、体積流量が一定であるとみなされる場合、単繊維の移動速度は、外方向に減速する。
【0046】
ロータの回転運動で生じる遠心力によって、処理されるべき材料は、所定の保持時間でロータを通過する。
【0047】
図2から容易に結論付けることができるように、ロータ対の1回の全回転(所定のブレード1が並べられた位置から、同一のブレード1が再度並べられる位置まで)の間に、周辺方向における連続的ブレード1が第2ロータの連続的ブレード1に出会うとき、いくつかのブレード間隙3が形成される。その結果、経路2を通って半径方向外側に移動する材料は、材料がロータの範囲から外側のロータの範囲に移るとき、異なるロータ間のブレード間隙3において、およびロータ周辺部のブレード1の間の流通経路においてせん断および衝撃力に連続的にさらされるが、周辺方向におけるブレードの動きと、異なる方向に回転するロータによって生じる動きの方向変化とは、材料の流れが遠心力の効果によってロータを過剰に速く通過することを防ぐ。
【0048】
ブレード間隙3と、同様に、ブレード1の遭遇、および半径方向に連続した2つのロータにおける衝撃方向の相対変化とは、[1/s]の頻度で2×f×n×nで発生し、ここでnは、第1ロータ外縁のブレード1の数であり、nは、第2ロータ外縁のブレードの数であり、fは、一秒あたりの一回転の回転速度である。係数2は、ロータが反対方向に同一の回転速度で回転するという事実によるものである。より一般的に、上記の式は、(f(1)+f(2))×n×nの形式を有し、ここでf(1)は、第1ロータの回転速度であり、f(2)は、反対方向の第2ロータの回転速度である。
【0049】
さらに、図2は、どのようにブレード1の数が異なるロータにおいて異なるかを示す。この図において、ロータ毎のブレード1の数は、最も内側のロータから増加する。ただし、最後のロータR6を除き、当該ロータR5では先行ロータR5の数よりも少ない。回転速度(rpm)が、ロータの回転位置および方向に関わらず等しいとき、このことは、ブレード3が所定点を通過する頻度と、同様に、ブレード間隙3の形成頻度とが、装置の半径方向において内側から外側に増加すること意味する。
【0050】
図1において、半径rの方向におけるブレードの寸法lは15mmであり、同一方向におけるブレード間隙3の寸法eは1.5mmである。前記値は、変化してもよく、それぞれ、たとえば10〜20mmおよび1.0〜2.0mmである。寸法は、たとえば処理されるべき材料の濃度によって影響を受ける。
【0051】
最も外側のロータR6の外縁から計算される装置の直径dは、所望の容量に応じて変化してもよい。直径は、500〜1200mmであってもよい。ロータの回転速度は、1500〜2000rpmであってもよい。
【0052】
上述の第1工程において、第2工程のための中間製品を製造するために処理される材料は、水と、パルプとしても知られるセルロース系繊維材料との混合物である。パルプにおいて、繊維は、それぞれ機械的パルプ化または化学的パルプ化として知られるように機械パルプまたは化学パルプの前製造処理の結果として互いに分離される。これらのパルプ化処理において、出発材料は、好ましくは木材原料であるが、他の植物源も利用することが可能である。
【0053】
パルプは、出発材料繊維をむき出しにし、小繊維の分離を開始するために十分にふくらまして均一に供給することができるように十分に希釈される(1〜6重量%)。また、材料は、1回以上同一の処理を通過した繊維材料であって、小繊維が既に分離された繊維材料であってもよい。材料が先行する処理工程の結果として既に部分的にゲル状にされているとき、材料は、同一の比較的高濃度で流すことが可能である。しかしながら、第1工程によって提供される修飾可能性(とりわけ、ブレード密度、回転速度、および同様に、周辺速度、衝突頻度など)によって、処理されるパルプの濃度は、1〜8%の広い範囲内で変化してもよいことに留意すべきである。
【0054】
水中における所定濃度の繊維材料は、所望のフィブリル化の程度に到達するまで、上述の方法でロータR1,R2,R3・・・を通って供給される。必要ならば、処理は、材料を再びロータに流すことによって数回繰り返される。また、材料は、連続して接続される同様の装置を通過させられ、所望数の通過に達してもよい。
【0055】
第2工程(ホモジナイザ)
均質化は、第1工程において得られた繊維材料分散液を、高速でホモジナイザに流すそのような圧力にさらすことによって実施される。この結果、懸濁液における繊維は、せん断および衝撃力にさらされ、最終の所望特性を有するフィブリル化およびナノフィブリル化セルロースをもたらす。
【0056】
均質化は、繊維材料分散液について比較的低濃度で実施される。上述されたように、第1工程に由来する繊維材料分散液は、水で希釈され、第2工程に適した濃度をもたらし、装置の適切な機能を保護することが可能である。
【0057】
本明細書において、均質化は、処理される繊維材料分散液の強制貫流によって生じる均質化を表し、その中に分散する材料はより小さな部分に分解される。本明細書において示される方法は、所定の型のホモジナイザの使用に限定されない。しかしながら、均質化において、繊維懸濁液は、狭い貫流間隙を所定の圧力で通過し、直線速度の増加は、分散液にせん断力と衝撃力とを生じ、繊維材料の完全なフィブリル化をもたらすということができる。貫流間隙は、環状であり、その形状(環の平面を横断する方向の断面)について多くの代替案がある。材料の分解は、貫流間隙の形状によって影響を受けてもよい。貫流間隙は、均質化バルブと称される構造体である。
【0058】
また、前記方法に限定されることなく、ホモジナイザにおいて均質化されるパルプは、ポンプによって貫流間隙に供給され、均質化圧力は、間隙によって生じる抵抗を原因として間隙の前にパルプに生じる圧力であるということができる。この圧力は、前記間隙が閉鎖位置に向けて押される圧力を制御することによって調整することが可能である。ホモジナイザにおける入力電力は、通常一定であり、体積流量(時間あたりに通過する体積)は、供給圧力が減少すると増加する。
【0059】
第1工程において得られた繊維材料がかなり不均一であったとしても、最初の繊維材料分散液に比べて目詰まりを生じ易い粒子の割合は少なくなっている。したがって、均質化は、通常よりも高濃度で実施することが可能であり、特定エネルギー消費量(SEC)、処理される材料の質量あたりのエネルギー入力を減少させる。
【0060】
第1工程におけるように、第2工程における処理は、所望数の経路がもたらされるように繰り返すことが可能である。
【0061】
十分な数の均質化を通過後(通常1〜3回)、強いせん断減粘特性を有するゲルであるフィブリルセルロース分散液、固有のナノフィブリル化セルロースが得られる。繊維および繊維フラグメントの完全なフィブリル化は、第2工程において実施される。ナノフィブリル化セルロースの品質は、第1工程から得た繊維材料分散液と、第2工程における特定エネルギー消費量と相関関係にある。
【0062】
図3は、模式的に両方の工程を示す。第1工程において、繊維材料分散液は、上述のように、分散機10を通過し、逆回転ロータR1,R2,R3・・・を有する。分散機10のロータを通って数回繰り返される経路10aは、破線によって示される(分散機の排出口から分散機の供給口をつなぐ)。第2工程において、繊維材料分散液は、上述の原理に従ってホモジナイザ11を通過する。ホモジナイザ11の間隙を通り、数回繰り返される経路11aは、破線によって示される(ホモジナイザの排出口からホモジナイザの供給口をつなぐ)。第1工程において、第2工程に供給される用意ができるまでに分散機10によって繊維材料懸濁液の処理に消費される全エネルギーは、質量単位毎のエネルギー入力(たとえばkWh/kgパルプまたはkWh/トンパルプなど)として表わされ、機械的パルプ化における特定エネルギー消費量として知られる変数である。SEC1は、好ましくは1000kWh/トンパルプ未満である。第2工程において、最終ナノフィブリル化セルロース製品の特性を有するまで、ホモジナイザによって繊維材料懸濁液の処理に消費される全エネルギー、NFCは、SEC2である。SEC2は、好ましくは1回の通過あたり200〜600kWh/トンパルプである。方法の全特異的エネルギー消費量SECは、SEC1+SEC2である。SECは、好ましくは2000kWh/トン未満であり、好ましくは1000kWh/トン未満である。値は、処理濃度、使用される均質化圧力、およびナノフィブリル化セルロースの目的とする品質によって変化する。
【0063】
第1工程と第2工程と経るNFCの連続的な製造を設計するための1つの可能性は、各工程を接続し、第1工程において材料を連続して接続された2つの分散機10を通過させ、第2工程において1つのホモジナイザ11を通過させるか、または容量を確保するために並列に接続された2つのホモジナイザを通過させることである(繊維材料への全ての処理は、分散機を2回通過し、ホモジナイザを1回通過することと等価である)。均質化において低い圧力を使用することが可能であるので、処理量を第2工程において増加させることが可能である。良好な品質のNFC製品を、1000kWh/トンパルプ未満であるSECを用いて4%の濃度においてこの組み合わせによって得ることが可能であると推測することができる。
【0064】
連続的製造は、第1工程において分散機、および/または第2工程においてホモジナイザを連続的に接続することによって設計することが可能であり、連続して接続された装置の数は、各工程における必要な通過数に対応する。第1工程の最後の分散機または唯1つの分散機の排出口は、第2工程の第1ホモジナイザまたは唯1つのホモジナイザの供給口(または並列に接続された複数のホモジナイザの複数の供給口)に直接に接続することが可能である。連続的製造において、繊維材料分散液は、不必要な中間処理工程を回避するために工程の間において希釈されないことが好ましい。
【実施例】
【0065】
実施例1
セルロースカバノキパルプは、0.22のDS(置換度)にカルボキシメチル化によってアニオン修飾された。
【0066】
アニオン性パルプは、2%(w/w)分散液を作るために水に分散された。分散液は、ホモジナイザ(GEA Niro Soavi Panther)に600barで供給されたが、ホモジナイザは、試料をフィブリル化することができなかった。なぜなら、長い繊維が原因で、機械が目詰まりするからである。
【0067】
実施例2
実施例1に由来するカルボキシメチル化セルロースは、2.0%(w/w)の濃度で水に分散され、分散機(Atrex)をその一連の逆回転ロータを通して4回流された。使用された分散機は、850mmの直径を有し、使用された回転速度は、1800rpmであった。最終製品の粘度は、15300mPas(0.8%で測定された、ブルックフィールド10rpm)であり、濁度は48NTU(0.1%で測定された)であった。
【0068】
実施例3
実施例1からのカルボキシメチル化セルロースは、2.0%(w/w)の濃度で水に分散され、実施例2と同一の条件で分散機(Atrex)を2回流された。試料が1%に希釈された後、ホモジナイザ(GEA Niro Soavi Panther)を3回以上流された。均質化圧力は、600barであった。
【0069】
最終製品の粘度は、18800mPasであり、濁度は43NTU(0.1%)であった。光学顕微鏡の画像、図4aおよび4bから、ホモジナイザ処理後(図4b)、フィブリル化されていない繊維の量が、分散機を2回通過後に得られた試料に比較して減少していることが分かる。
【0070】
分散機およびホモジナイザの組み合わせを用いることによって、製品は、分散機のみで作製された製品よりも良好な品質(より高い粘性および透明性)となる。フィブリル化のための装置としてホモジナイザ単体と比較して、前記の組み合わせは、目詰まりのリスクなしにより良好な操作安定性を有する。
【0071】
実施例4
実施例1に由来するカルボキシメチル化セルロースは、水に1.5%(w/w)で分散され、上記に特定された条件で2回分散機(Atrex)に流された。その後、試料は、同一の濃度でさらに1回600barにおいてホモジナイザ(GEA Niro SoaviPanther)を通過させられた。
【0072】
最終製品の粘度は、13400mPas(ブルックフィールド10rpm、0.8%)、濁度37NTU(0.1%溶液)であった。
【0073】
濁度が実施例2と比較されるとき、分散機のみによる処理(4回通過)は48NTUをもたらすことが分かるが、一方、分散機の2回通過とホモジナイザの1回通過との組み合わせは、より透明なNFC分散液(濁度37NTU)をもたらす。
【0074】
ナノフィブリル化セルロースの特性
本願において、以下の方法は、ナノフィブリル化セルロース製品を特徴付けるために使用される。
【0075】
濁度
濁度は、好適な濁度測定装置を用いて定量的に測定されてもよい。いくつもの市販の濁度計が、定量的濁度測定に利用可能である。本願では、比濁法に基づく方法が使用される。目盛付き濁度計からの濁度の単位は、比濁計濁度単位(NTU)と称される。測定装置(濁度計)は、標準調整試料で調整および制御され、続いて希釈されたNFC試料の濁度を測定する。
【0076】
本発明の方法において、ナノフィブリル化セルロース試料は、当該ナノフィブリル化セルロースのゲル化点以下の濃度まで水中で希釈され、希釈された試料の濁度が測定される。ナノフィブリル化セルロース試料の濁度が測定される濃度は、0.1%である。50mlの測定管を有するHACH P2100濁度計は、濁度測定に使用される。ナノフィブリル化セルロース試料の乾燥物質が測定され、乾燥物質として計算される0.5gの試料が水道水で満たされた測定管に入れられ、約30秒間の撹拌によってしっかり混合される。遅滞なく、水性混合物は、5つの測定管に分けられ、濁度計に入れられる。各管において3つの測定が実施され、平均値および標準偏差が、得られた結果から計算され、最終結果は、NTU単位で示される。
【0077】
レオメーター粘度
NFCは、0.5w%の濃度まで脱イオン水で希釈され、200gの混合物は、ビュッヒミキサ(B−400,最大2100W、Buchi Labortechnik AG、スイス)を用いて3×10秒間均質化される。
【0078】
NFC分散液の粘度は、30mmの直径を有する円筒状試料カップにナローギャップベーン形状(直径28mm、長さ42mm)を備える応力制御回転式レオメーター(AR−G2,TA Instruments、イギリス)を用いて22℃で測定される。レオメーターに試料を入れた後、それらは、測定が開始される前に5分間静止させられる。安定状態の粘度は、(適用された回転力に比例する)せん断応力を徐々に増加させて測定され、(角速度に比例する)せん断速度が測定される。特定のせん断応力で報告された粘度(=せん断応力/せん断速度)は、一定のせん断速度に到達後、または最大2分後に記録される。測定は、1000s−1のせん断速度を超えると停止される。この方法は、ゼロせん断粘度を測定するために使用される。
【0079】
ブルックフィールド粘度
NFCの見掛け粘度は、ブルックフィールド粘度計(ブルックフィールド粘度)、または別の類似装置で測定される。好ましくは、ベーンスピンドル(番号73)が使用される。いくつもの市販のブルックフィールド粘度計が見掛け粘度の測定に利用可能であり、全て同一の原理に基づくものである。好適なRVDVスプリング(ブルックフィールドRVDV−III)が装置において使用される。ナノフィブリル化セルロースの試料は、水中で0.8重量%の濃度まで希釈され、10分間混合される。希釈された試料は、250mlビーカに添加され、温度は20℃±1℃に調整され、必要であれば加熱され、混合される。低い回転速度10rpmが使用される。
【0080】
目標特性
典型的には、本発明の方法において、ナノフィブリル化セルロースであって、0.8%の濃度および10rpmの回転速度で測定されたブルックフィールド粘度が少なくとも5,000mPa・s、有利には少なくとも15,000であるナノフィブリル化セルロースを最終製品として得ることが目的である。粘度は、有利には5,000〜40,000mPa・sの範囲内である。得られる水性ナノフィブリル化セルロース分散液は、いわゆるせん断減粘性によっても特徴付けられる。つまり、粘度が減少すればせん断速度は増加する。
【0081】
さらに、ナノフィブリル化セルロースであって、0.1重量%の濃度(水性媒体)において、濁度計によって測定される濁度が通常90NTU未満、たとえば5〜90NTU、好ましくは10〜60であるナノフィブリル化セルロースを得ることが目的である。
【0082】
さらに、ナノフィブリル化セルロースであって、0.5重量%の濃度(水性媒体)で回転式レオメーターによって測定される、1,000〜100,000Pa・s、好ましくは5,000〜50,000の範囲内のゼロせん断粘度(小さなせん断応力における一定粘度の「プラトー」)と、1〜50Pa、有利には3〜15Paの範囲の降伏応力(せん断減粘が始まるせん断応力)とを有するナノフィブリル化セルロースを得ることが目的である。
【0083】
上述の定義において、濃度は、測定が行われる時点の濃度を表し、それらは、必ずしも上記方法によって得られる製品の濃度ではない。
【0084】
上述の値は、アニオンまたはカチオンで修飾されたパルプ、特にアニオン修飾パルプであって、セルロースがたとえばN−オキシル媒介によって触媒的に(TEMPO触媒など)酸化されてアルコールがカルボキシル基に変換されたアニオン修飾パルプ、またはセルロースがカルボキシメチル化されたアニオン修飾パルプで得ることが可能である。酸化されたセルロースの置換度は、好ましくは0.5〜1.2mmol COOH/gパルプ、好ましくは0.6〜1.05、最も好ましくは0.7〜0.9である。カルボキシメチル化セルロースの置換度(0〜3の尺度)は、好ましくは0.10〜0.25である。
【0085】
パルプであって、触媒的に前処理されたパルプまたは化学物質をセルロースに吸着させることによって前処理されたパルプなどの、セルロース繊維の内部結合が別の方法で弱められたパルプも出発材料として使用することが可能である。
【0086】
そのレオロジー特性、小繊維の強度特性、およびそれから作製される製品の半透明性によって、本発明の方法によって得られるナノフィブリル化セルロースは、たとえばレオロジー調節剤および粘度調整剤として、ならびに補強材などの異なる構造体における要素としての多くの用途に適用することが可能である。ナノフィブリルセルロースは、特に油田においてレオロジー調節剤およびシール剤として使用することが可能である。同様に、ナノフィブリルセルロースは、様々な医療品および化粧品における添加剤として、複合材料における補強材として、ならびに紙製品における成分として使用することが可能である。このリストは、網羅的なものであることを意図されておらず、ナノフィブリルセルロースは、それらに好適な特性を有することが見出されれば、他の用途においても使用することが可能である。
図1
図2
図3
図4a
図4b