(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
次いで、添付図面にその実例が示されている本開示の例示の実施例を詳細に参照する。可能な限り、複数の図面を通して、同一又は同様の部分を参照するのに同一の参照符号が使用される。
【0018】
本開示の実施例は、概して、身体内の閉塞を治療するための医療デバイス及び方法に関する。より具体的には、本開示の実施例は、限定しないが塞栓及び血栓を含めた、凝血塊を血管から除去するためのデバイス及び方法に関する。しかし、本開示の実施例が、障害物又は異物を除去することが望まれるような他の医療手当でも利用され得ることを強調すべきである。
【0019】
本開示の実施例によると、拡張可能な凝血塊係合要素を有する凝血塊除去デバイスが提供され得る。拡張可能な凝血塊係合要素は、血管内で展開されると、血餅又は別の妨害物を掴持するか、掴むか、封じ込めるか、保持及び/又は回収することができる任意の構造であってよい。
【0020】
図1Aが、例示の凝血塊除去デバイス100に関連した凝血塊係合要素102の一実例を示している。本開示の目的のため、「近位側」は使用時にデバイス・オペレータにより近い端部を意味し、「遠位側」は使用時にデバイス・オペレータから遠い端部を意味する。
【0021】
図1Bに示されるように、一実施例では、凝血塊係合要素102が1つ又は複数の巻線(windings)108を備えるコイルを有することができる。巻線108は血管1002の長手方向軸線1006に対して角度を付けられてよい(
図7A)。巻線108の角度は約0度から約180度の範囲であってよく、より好適には、約90度から約180度の範囲である。
【0022】
さらに、複数の巻線108が螺旋構成を形成することができ、それにより、複数の巻線108が、
図7Aで基準線を用いて示されるように、実質的に一定のピッチP及び/又は実質的に一定の半径Rを共有する。したがって、回転中、等しい半径及びピッチを有する隣接する巻線は実質的に等しい回転経路に従うようになる。別法として、1つ又は複数の巻線108が異なるピッチ及び/又は異なる半径を有していてもよい。1つ又は複数の巻線108は、血管内に留まる凝血塊を中心に回転するように、凝血塊の外周の少なくとも一部分を掴むように、及び、血管から凝血塊を分離させるように(
図6B)構成され得る任意の形状及び/又は構成であってよい。例えば、1つ又は複数の巻線108が任意の適切な形状となるように巻かれてよく、これには、限定しないが、円形及び楕円形が含まれる。また、1つ又は複数の巻線108は連続する材料部片であってもよい。この連続する材料部片は任意の適切な断面形状を有することができ、これには、限定しないが、円形、楕円形、多角形、又は巻くことが可能である任意の他の形状が含まれる。
【0023】
1つ又は複数の巻線108は、実質的に平坦であってよいか又は丸みを有してもよい非外傷性の底部凝血塊接触面をさらに有することができる。1つ又は複数の巻線108の底部凝血塊接触面は、接触時に凝血塊1000が複数の部分に分かれる傾向を軽減することができる。さらに、1つ又は複数の巻線108の底部凝血塊接触面は、凝血塊1000を掴持するのを改善するためにテクスチャを有していて(型押し加工されていて)もよい。1つ又は複数の巻線108の頂部外面も非外傷性の表面であってよい。1つ又は複数の巻線108の非外傷性の頂部外面は、凝血塊部位のところで1つ又は複数の巻線108に接触される可能性のある組織の損傷を軽減することができる。また、巻線108は、それらの頂部表面及び/又は底部表面上に被覆物を有することができる。被覆物には、限定しないが、潤滑剤及び/又は麻酔剤が含まれてよい。
【0024】
さらに、凝血塊係合要素102は、自己拡張及び自己後退するように構成されるばね状部材であってよい。拡張及び後退は長手方向及び/又は径方向であってよい。したがって、凝血塊係合要素102は収縮構成(
図1A)及び拡張構成(
図1B)を含むことができる。収縮構成は、シース118が凝血塊係合要素102の外側表面を実質的に取り囲んでいるときに維持され得る。拡張構成は、シース118が凝血塊係合要素102の外側表面の少なくとも一部分から取り外されたときに達成され得る(シース118は後でより詳細に考察される)。
【0025】
凝血塊係合要素102は、血管1002のほぼ内径まで拡張するように構成され得る(
図7A)。血管1002のほぼ内径まで拡張することにより、凝血塊係合要素102が血管1002の壁1004に力を作用させることができるようになる(必ずしも力を作用させるわけではない)。血管壁1004に力が作用する場合、その力により血管1002の壁1004から凝血塊1000を分離させることができる。凝血塊1000は多くの事例で血管1002内に留まる可能性があることから、このように結果として分離させることが有利となる場合がある。したがって、血管の壁1004から凝血塊1000を分離させることにより、血管1002から凝血塊1000をさらに除去するときに必要となる力の大きさを低減させることができ、また血管1002から除去されるときに凝血塊1000が複数の小片に分かれる傾向を軽減することができる。
【0026】
シャフト116が凝血塊係合要素102の近位端から延びることができる。シャフト116は、凝血塊係合要素102の回転運動及び長手方向の移動を制御するように構成された細長部材であってよい。例えば
図7Aに示されるように、矢印1010によって示される方向にシャフト116が移動することにより、凝血塊係合要素102を矢印1010’の方向に移動させることができる。さらに、シャフト116を矢印1012の方向に回転させることにより、凝血塊係合要素102を矢印1012’の方向に回転運動させることができる。
【0027】
シャフト116は、凝血塊係合要素102を回転及び前進させるように構成され得ることを条件として任意の形状及び/又は構成を有することができる。さらに、シャフト116は、回転するように構成され得ることを条件として任意の適切な断面形状を有することができる(
図7A)。
【0028】
上述の実施例は広い意味で巻かれた構造の凝血塊係合要素102の一実例を提示しているが、凝血塊係合要素は凝血塊を掴むこと及び血管から凝血塊を除去することが可能であることを条件として任意の形状及び/又は構成を有することができる。また、凝血塊係合要素は、血管の管腔内を前後に動くことができるような任意のサイズを有することができる。
【0029】
凝血塊係合要素は、血管の管腔内を前後に動くのに十分な柔軟性及び/又は剛性を有する任意の適切な生体適合性材料で構築されてよい。生体適合性材料には、限定しないが、合成プラスチック、ステンレス鋼、ePTFE、PTFE、金属−重合体複合材料、並びに、ニッケル、チタン、ニッケル−チタン、銅コバルト、クロム及び鉄の合金が含まれてよい。
【0030】
本開示の広範囲の実施例では、凝血塊係合要素には、凝血塊又は他の妨害物に係合され得る任意の構造又は機構が含まれてよい。例えば、凝血塊係合要素には、1つ又は複数のフック、鉗子、拡張可能なケージ、拡張可能なバルーン、又は機械的構造物を凝血塊若しくは妨害物に接続させるための熱的機構若しくは化学的機構が含まれてよい。
【0031】
本開示の少なくともいくつかの実施例によると、拡張可能な凝血塊捕捉要素が提供され得る。拡張可能な凝血塊係合要素は、血管内に配備されたときに、凝血塊係合要素によって係合された凝血塊を捕捉することができる任意の構造であってよい。
【0032】
本開示の例示の実施例に一致して、例示の凝血塊捕捉要素104が
図1に示されている。凝血塊捕捉要素104は、凝血塊係合要素102が血管内に配備されたときに凝血塊捕捉要素104内で移動可能となるように構築され得る。凝血塊係合要素102は、例えば後でより詳細に説明するようにシース118を取り外すと、凝血塊捕捉要素104内で回転するように、拡張するように、及び/又は長手方向に摺動するように構成され得る。
【0033】
図1Cに示されるように、凝血塊捕捉要素104は、限定しないが、近位端104a及び遠位端部104bを有するカテーテルを有することができる。近位端104a及び遠位端部104bの各々がそこに開口112を有することができる。近位端104a及び遠位端部104bのところの開口112は、凝血塊捕捉要素104内の中央ルーメン110に連通され得る(
図1A)。凝血塊捕捉要素104内の中央ルーメン110により、凝血塊係合要素102を挿入することが可能となり得、さらには医療手当を補助することができる他の構成要素を挿入することが可能となり得る。他の構成要素には、限定しないが、任意選択のガイドワイヤ120、真空源、照明デバイス及び/又は撮像デバイス、並びに凝血塊を掴むためのツールが含まれる。
【0034】
凝血塊捕捉要素104は、さらに、拡張及び収縮するように構成され得る。したがって、凝血塊捕捉要素104は、周囲のシース118に対して移動することに反応して、ばね方式で収縮構成(
図1A)と拡張構成(
図1B)との間で移行するように構成され得る。凝血塊係合要素102と同様に、凝血塊捕捉要素104は、凝血塊部位のところで血管1002の内径とほぼ同じサイズまで拡張するように構成され得る。凝血塊捕捉要素104が血管1002の内径まで拡張すること、及び凝血塊部位のところで血管壁1004に力が作用することにより、血管1002の壁1004から凝血塊1000を分離させるのを補助することができる。このように分離させることにより、血管1002から凝血塊1000を除去するのに必要となる力を低減することができる。また分離させることで、血管1002から凝血塊1000を除去するときに凝血塊1000が複数の部分に分かれる傾向を軽減するのを補助することができる。
【0035】
凝血塊捕捉要素104は、血管の管腔内を前後に動くことができるようになるような任意の形状及び/又は構成であってよい。一実施例では、凝血塊捕捉要素104は一定の直径を有する中空チューブであってよい。別法として、凝血塊捕捉要素104はその長さに沿って変化する直径を有してもよい。例えば、
図2に示されるように、凝血塊捕捉要素104はその近位端104aのところでテーパ状となる直径を有することができ、この場合、近位端104aは、制御シャフト114の遠位端部に接続されるように構成され得る(制御シャフト114は後でより詳細に考察される)。
【0036】
凝血塊捕捉要素104は、血管の管腔内を前後に動くのに十分な柔軟性及び/又は剛性を有する任意の既知の適切な生体適合性材料で構築されてよい。凝血塊捕捉要素104の生体適合性材料は、上で考察した様式で凝血塊捕捉要素104が拡張及び収縮するのを可能にし得る特性をさらに有することができる。したがって生体適合性材料には、限定しないが、合成プラスチック、シリコーン・エラストマ、熱可塑性エラストマ、ニッケル−チタン、ステンレス鋼、ePTFE、PTFE、ポリイミド、ポリアミド、HDPE、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、LDPE、金属−重合体複合材料、及び合金が含まれてよい。
【0037】
凝血塊捕捉要素104は単一の生体適合性材料を含むか又は複数の生体適合性材料の組合せを含んでよい。一実施例では、凝血塊捕捉要素104は様々な生体適合性材料を含むことができ、この場合、凝血塊捕捉要素104上での生体適合性材料のロケーションに応じて生体適合性材料のタイプ及び特性を変化させることができる。例えば、凝血塊捕捉要素104の遠位端部104bが、ばね状の特性を有する材料を含むことができる。このような生体適合性材料には、限定しないが、ポリウレタン、低密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ニチノール、及びTHVが含まれてよい。
【0038】
凝血塊捕捉要素104の近位端104aが遠位端部104bよりも高いスティフネス(剛性)の生体適合性材料を含むことが所望される可能性がある。凝血塊捕捉要素104の近位端104aの生体適合性材料は、凝血塊捕捉要素104が血管の管腔内を前後に動くように構成され得ることを条件として任意の適切な高さのスティフネスを有してよい。したがって、凝血塊捕捉要素104の近位端104aの生体適合性材料には、限定しないが、ポリイミド、ポリアミド、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、PTFE、ポリスルホン、共重合体、及び上で言及した材料のブレンド又は混合物が含まれてよい。
【0039】
凝血塊捕捉要素104は連続する材料部片で形成される一体構造であってよい。別法として、
図2に示されるように、凝血塊捕捉要素104は複数の構成要素106を含んでもよい。一実施例では、例えば、複数の構成要素106には、メッシュ状構成を形成するように織り合わされる複数の織物のブレード(braid;組ひも)が含まれてよい(
図2)。複数の織物ブレード106は任意の既知の手段を介して互いに接続され得る。別法として、メッシュ状の構造はネットの形態であってもよく、複数の織物ブレード106が接続されずに互いに交差してよく、それにより、複数の織物ブレード106が互いに対して動くように構成され得るようになる。加えて、複数の織物ブレード106に複数のワイヤが含まれてもよい。ワイヤはメッシュ状構成を形成するように交差させられて曲げられ得、この場合、凝血塊捕捉要素104の近位端104a及び遠位端部104bがワイヤの開放端(open end)を有さなくてよい(
図2)。開放端が存在しないことで、血管の外傷を低減することができる。他の実施例では、拘束されない開放端が使用されてもよい。このような実施例のうちのいくつかの実施例では、開放端は内側にわずかに曲げられ得るか、又は別法として血管の外傷を最小にするような物理的な構造であってもよい。
【0040】
凝血塊捕捉要素104内でメッシュ状の構造が採用される場合、メッシュはチャイニーズ・フィンガー・トラップと同様の様式で構築され得、この場合、長手方向に後退する力により円筒形構造が径方向に収縮する。
【0041】
このように、採用され得る他の構造に関係なく、本開示の一実施例は管状の凝血塊捕捉要素を含むことができ、ここで凝血塊捕捉要素は、凝血塊を取り囲むように血管内に配備されるように構成され、凝血塊捕捉要素は、凝血塊係合要素を受け入れて案内するように構成された開口をその中に有し、凝血塊捕捉要素は、後退すると径方向に収縮するように構成され、この場合、凝血塊捕捉要素が凝血塊を取り囲んで血管の長手方向において後退するとき、凝血塊捕捉要素が凝血塊に対して径方向内向きの圧縮力を作用させるように構成される。
【0042】
したがって、例えば本開示の一実施例は単純に
図2の捕捉要素104の構造であってよく、これは、シャフト116を受け入れて案内するための開口112を近位端104aのところに備える、メッシュ106で形成される管形状を有する。そのメッシュ状の構造により、捕捉要素104は後退するときに径方向内側に収縮する。
【0043】
メッシュ状の構造はネットであってもよいか又はブレードであってもよい。ネット自体が複数の交差するブレードを含んでもよく、この場合、交差するブレードは互いに対して動くことができる。ネットは複数のワイヤを含むことができ、この場合、捕捉要素の近位端及び遠位端部のうちの1つ又は複数がワイヤの開放端を有さない(例えば、露出されるワイヤの自由端が存在しない
図2の捕捉要素104の遠位端部を参照されたい)。
【0044】
図3A〜3B及び4A〜4Bがメッシュ状の構造に対しての代替形態を示しており、これらは任意の適切な自己拡張構造を含むことができる。例えば、適切な自己拡張構造には、限定しないが、円形のコイル、平坦なリボン・コイル、複数の拡張可能なリング(
図3A〜3B)、及び/又はステント状の構造(
図4A〜4B)が含まれてよい。また、自己拡張構造は、凝血塊捕捉要素104に適切な構造を与えることができる複数の材料層306(例えば重合体)の間で支持され得る。
【0045】
凝血塊捕捉要素104は、凝血塊部位のところに配備されたときに組織の損傷を制限することができる非外傷性の外面をさらに有することができる。凝血塊捕捉要素104はまた、その外面及び/又は内面上に被覆物を有することができる。被覆物には麻酔剤及び/又は潤滑剤が含まれてよく、それにより凝血塊捕捉要素104及び凝血塊係合要素102を配備するのを補助すること、及び/又は凝血塊捕捉要素104内で凝血塊係合要素102を移動させることを補助可能である。
【0046】
上述したように、凝血塊捕捉要素104の近位端104aは制御シャフト114に接続され得る(例えば
図2を参照)。制御シャフト114は、収縮構成とするために凝血塊捕捉要素104を引くように構成された細長部材であってよい。制御シャフト114の細長部材は、固体壁構成、ブレードで作られた壁構成、巻かれた壁構成、ハイポチューブ(すなわち、湾曲するのを促進するために取り外された部分を含む固体壁構成)を用いた中空チューブであってよい。中空チューブは各端部上に開口を有することができ、それにより、制御シャフト114が凝血塊捕捉要素104の中央ルーメン110(
図1)に連通され得る。したがって制御シャフト114によりツールを通過させることが可能となり、これには、限定しないが、ガイドワイヤ120、及び凝血塊1000に係合されるための器具が含まれる。制御シャフト114はさらに、例えば
図2に示されるように、凝血塊係合要素102のシャフト116を通過させるのを可能にすることができる。別法として、制御シャフト114は中実の構成であってもよく、シャフト116は制御シャフト114を通って延びるのではなくシャフト114に隣接して配置されてもよい。
【0047】
シャフト116は制御シャフト114の直径より小さい直径を有することができ、それにより、凝血塊捕捉要素104の長手方向軸線に沿って凝血塊係合要素102を移動させることが可能となり得る。シャフト116はまた、摩擦を最小にする外面を有することができる。例えば、シャフト116の外面は滑らかであってよく、且つ/又は、潤滑性の被覆物を有することができ、その結果、シャフト116が制御シャフト114内で比較的容易に摺動することができるようになる。シャフト116はさらにその中にルーメンを有することができる。ルーメンは凝血塊捕捉要素104に連通され得る。また、ルーメンは、凝血塊除去デバイス100が凝血塊部位のところまで送達されたときに血管1002内の管腔1008に連通され得る。したがってこのルーメンにより、凝血塊除去手当中に有用なツールを挿入することが可能となり得、これには、限定しないが、ガイドワイヤ120、吸引デバイス、照明デバイス、撮像デバイス、及び/又は凝血塊を掴むための適切な器具が含まれる。
【0048】
制御シャフト114は、シャフト116を移動させることを介して凝血塊捕捉要素104内で凝血塊係合要素102を移動させることを可能にすることを目的としてシャフト116を受け入れるようなサイズとされた直径を有することができる。シャフト116は制御シャフト114の長さより大きい長さを有することができ(
図2)、その結果、制御シャフト114が少なくとも部分的にシャフト116を取り囲むことができ、それにより、デバイス・オペレータが凝血塊係合要素102を長手方向に移動させること及び回転運動させることを制御可能となり得る。制御シャフト114はさらに、凝血塊係合要素102のシャフト116の一部分を血管壁1004に接触させない状態で維持するように構成され得、また、凝血塊部位において凝血塊1000に対して凝血塊係合要素102を所望の位置で維持するように構成され得る。したがって制御シャフト114は、凝血塊係合要素102が凝血塊捕捉要素104内にあるときに凝血塊係合要素102のための安定装置として機能することができる。例えば、制御シャフト114の直径は、シャフト116を長手方向に移動させること及び回転運動させることを可能にするのに十分な大きさであってよいが、凝血塊1000に対してシャフト116を、さらにはそれにより凝血塊係合要素102を、所定のロケーションから実質的に逸脱させるのを防止するのに十分な小ささであってよい。このように、制御シャフトの1つの機能はシャフト116を血管の中央に配置することであってよく、その結果、係合要素102が回転する場合にその回転が血管の実質的な長手方向に沿って起こるようになる。
【0049】
制御シャフト114が存在しない場合、又は制御シャフト114に追加して、係合要素を血管の中央に配置することは捕捉要素104がテーパ状であることの結果としてなされ得るか、又はシャフト116を血管の中央に配置するための図示されないスペーサを使用することによりなされ得る。これに関して、本開示の別の実施例が、シャフトと、シャフトの一方の端部上にある凝血塊係合要素であって、凝血塊係合要素及びシャフトが血管内に配備されるように構成された凝血塊係合要素と、シャフトを少なくとも部分的に取り囲むように及びシャフトの一部分を血管壁に接触させない状態で維持するように構成された安定装置とを有する凝血塊除去デバイスを含むことができる。
【0050】
例えば
図2に描かれるように、シャフト116は、制御シャフト114を捕捉要素104に対して中央で相互接続させることによって血管壁に接触しない状態で維持され得る。したがって、シャフト116が捕捉要素104によって画定されたルーメンに入るとき、シャフト116は血管の中央を向く方向に付勢され得る。これによりさらに、回転時に、長手方向に対して実質的に横方向ではなく血管の長手方向に沿って回転する傾向を有し得るように係合要素を維持することが補助され得る。これは安定装置構造の単に一実例である。血管壁から離して係合要素のシャフトを保持することができるいかなる構造もこの実施例に包含されるものと考えられる。
【0051】
制御シャフト114はまた、凝血塊捕捉要素104を拡張構成から少なくとも部分的な収縮構成へと移行させるように構成され得る。例えば、
図2の矢印115によって示される方向に制御シャフト114を移動させることにより、凝血塊係合要素104の近位端104aに力を加えることができる。凝血塊捕捉要素104の近位端104aに加えられる力は矢印115によって示される方向であってもよく、それにより、凝血塊捕捉要素104を収縮させることができる。
【0052】
後退中、凝血塊1000及び/又は凝血塊係合要素102が凝血塊捕捉要素の中央ルーメン110内にある場合、凝血塊捕捉要素104は凝血塊1000及び/又は凝血塊係合要素102に力1016、1018(
図8)を作用させながら収縮することができる。力1016、1018は、血管1002から凝血塊1000を除去するときに凝血塊捕捉要素104の中央ルーメン110内で凝血塊1000を維持することができ、凝血塊1000を複数の部分に分かれさせる傾向を軽減することができる。次いで、血管から凝血塊が回収され得、ここでは、
図7A及び7Bに示されるように凝血塊は単に捕捉要素及び係合要素内で保持される。別法として、凝血塊がシース118内に入り込むくらいに十分に小さい場合、
図7C及び7Dに示されるように、凝血塊は血管から除去される前にシース118内に引き入れられてよい。この場合、シース118が凝血塊にさらなる保持力を作用させることができる。
【0053】
少なくともいくつかの実施例によると、捕捉要素及び係合要素を取り囲んで圧縮するシースが提供され得る。シースは、シースが配備されるところの血管内で捕捉要素を拡張させるのを可能にするように、及び捕捉要素内で係合要素を拡張させるのを可能にするように、取り外し可能であってよい。シースは、凝血塊係合要素及び凝血塊捕捉要素のうちの1つ又は複数を保持することが可能であることと同時に、それらの要素のうちの1つ又は複数を血管内に配備するために十分に湾曲することが可能である任意の構造であってよい。
【0054】
本開示の少なくともいくつかの例示の実施例に一致して、例示のシース118が
図1に示される。凝血塊係合要素102及び凝血塊捕捉要素104がシース118内で凝血塊部位のところまで送達され得る。シース118は、凝血塊係合要素102及び凝血塊捕捉要素104を取り囲むように構成された中央ルーメンを有する中空管状構造であってよい(
図1A)。シース118はさらに、凝血塊係合要素102及び凝血塊捕捉要素104が凝血塊部位までの送達経路を辿るときに凝血塊係合要素102及び凝血塊捕捉要素104を保護するように構成され得る。したがってシース118は任意の適切な生体適合性材料で作られてよく、また凝血塊係合要素102及び凝血塊捕捉要素104を凝血塊部位のところまで送達するとき又は凝血塊部位から取り外すときに凝血塊係合要素102及び凝血塊捕捉要素104をそれらのそれぞれの収縮構成の状態に維持しながら患者の脈管内を前後に動くように構成され得ることを条件として、任意の適切な形状及び/又は構成を有してよい。さらに、シースは、凝血塊係合要素102及び凝血塊捕捉要素104を凝血塊部位から取り外すときに凝血塊をその中央ルーメン内で維持するようにも構成され得る(
図7D)。
【0055】
加えて、シース118は、凝血塊捕捉要素104及び凝血塊係合要素102を制御された形で拡張させるのを可能にするように構成され得る。例えば、上で考察したように、凝血塊捕捉要素104及び凝血塊係合要素102はシース118から取り外されるときに拡張するように構成され得る。シース118は凝血塊捕捉要素104の遠位端部104bから離れる方向に後退させられ得る。したがってシース118は、凝血塊捕捉要素104及び凝血塊係合の拡張速度を制御することができるような速度で取り外され得る。またシース118は、凝血塊捕捉要素104及び凝血塊係合要素102の可能な露出量及び拡張量を制御することができるような距離だけ後退させられ得る(
図1B)。別法として、シース118は実質的に静止していてもよく、凝血塊捕捉要素104及び凝血塊係合要素102が前進させられてもよく、その結果、それらの構成要素が拡張してもよい。
【0056】
本開示の別の実施例によると、第1の内径を有する管状の凝血塊捕捉要素と、第2の外径を有する凝血塊係合要素とが提供され得、ここでは、第1の直径及び第2の直径が、管状の凝血塊捕捉要素内で凝血塊係合要素を回転させるのを可能にするように選択される。
【0057】
単に例として、
図2さらには他の図で示されるように、凝血塊捕捉要素104の内径は、中で凝血塊係合要素102を回転させるのを可能にするのに十分な大きさとなるようなサイズとされてよい。最終的な市販のデザインによっては、これにより、凝血塊を捕捉要素104内に引き入れるのと同時にオペレータが係合要素102を用いて凝血塊を自由に取り囲むことができるようになる。すなわち、凝血塊が捕捉要素104内にある場合に凝血塊の向きを変える能力をオペレータに与えることができる。したがって、要素102、104は、凝血塊係合要素102の外側表面領域を凝血塊捕捉要素104の内側表面領域に接触させるのを可能にするようなサイズとされ得る。
【0058】
凝血塊除去デバイス100の動作中、デバイス・オペレータは、凝血塊捕捉要素104に対して凝血塊係合要素102が移動するのを防止することが有用であると考える場合がある。これは例えば、凝血塊除去デバイス100を凝血塊部位のところまで送達するとき及び/又は患者から凝血塊1000を除去するときに望まれる可能性がある。したがって
図5にロック機構150が示され、これは、凝血塊捕捉要素104の制御シャフト114に対して凝血塊係合要素102のシャフト116を固定位置で選択的にロックするために、凝血塊除去デバイス100と共に使用され得る。ロック機構150が一方の方向に回転させられたときにロックすることができ、反対方向に回転させられるときに解放することができる。ロック機構は、凝血塊係合要素と凝血塊捕捉要素との間の相対移動を選択的に防止する任意の適切なデバイスであってよい。ロック機構の例には、限定しないが、スナップ・ロック、回転ロック、及び締まり嵌めが含まれてよい。例えば、一実施例では、ロック機構はトルカ(torquer)150であってよい。シース118と捕捉要素104との間の相対移動を制御するのに同様の又は異なるロック機構が使用され得る。
【0059】
凝血塊除去デバイス100はまた、凝血塊除去デバイス100が凝血塊部位まで移動するときにデバイス・オペレータが凝血塊除去デバイス100のロケーションを知るのを可能にし得る構成要素を有することができる。位置構成要素(location component)には、限定しないが、X線不透過性マーカ、センサ、及び/又は撮像デバイスが含まれてよい。一実施例では、例えば凝血塊捕捉要素104の遠位端部104bがX線不透過性マーカ(図示せず)を有することができる。
【0060】
次に、
図6A〜6B、7A〜7D及び8を参照すると、
図1に示される凝血塊除去デバイス100を使用して血管から凝血塊を除去する手当が示される。凝血塊除去デバイス100は、血管1002内の凝血塊部位のところまで送達され得る。凝血塊除去デバイス100を送達することには、患者の脈管内で凝血塊1000の近傍のロケーションまでシース118を移送することが含まれてよく、シース118は凝血塊係合要素102及び凝血塊捕捉要素104を実質的に取り囲んでいてよい。デバイス・オペレータは、凝血塊除去デバイス100が凝血塊部位まで正確な経路を確実に辿るようにするためにガイドワイヤ120上で凝血塊除去デバイス100を挿入することができる。凝血塊係合要素102は、シース118内で送達されるとき、
図1Aに示されるように凝血塊捕捉要素104によって実質的に取り囲まれていてよい。別法として、凝血塊係合要素102は凝血塊捕捉要素104の外側に位置していてもよく、手当中のその後のある時点で凝血塊1000を掴んだ後で凝血塊捕捉要素102内に引き入れられてもよい。
【0061】
上で考察したように、デバイス・オペレータは、凝血塊除去デバイス100が凝血塊部位に接近するときの凝血塊除去デバイス100のロケーションを、センサ、X線不透過性マーカ及び/又は撮像デバイスを介して監視することができる。凝血塊除去デバイス100が凝血塊部位に到達すると、デバイス・オペレータが凝血塊除去デバイス100からガイドワイヤ120を取り外すことができる。デバイス・オペレータは、係合要素102を回転させるのを可能にするのに十分な量だけシース118を後退させること(又は係合要素を前進させること)ができる。別法として、シース118の全体が取り外されてもよい。凝血塊係合要素102からシース118が外されると、凝血塊係合要素102は径方向に拡張することができ、凝血塊捕捉要素104内で移動すること(例えば長手方向に移動すること、及び回転運動すること)が可能となる。凝血塊係合要素102及び凝血塊捕捉要素104は共にばね方式で自己拡張することができる。凝血塊捕捉要素104は血管1002の内径のサイズまでほぼ拡張することができる。上で考察したように、凝血塊捕捉要素104が拡張することで、血管壁1004から凝血塊1000を分離させるのを開始することができる。
【0062】
デバイス・オペレータは、凝血塊1000に向かう矢印1010の方向に凝血塊係合要素102のシャフト116を移動させること、及び矢印1012の方向にシャフト116を回転させることができ、それにより凝血塊係合要素102を凝血塊1000に係合させることができる。シャフト116を長手方向に移動させることにより、矢印1010’の方向に凝血塊係合要素102を長手方向移動させることができ、またシャフト116を回転運動させることにより、矢印1012’の方向に凝血塊係合要素102を回転運動させることができる。凝血塊係合要素102は血管の長手方向軸線1006に沿って凝血塊1000に向かって移動させられ得る。凝血塊係合要素102の最も遠位側の端部が凝血塊1000に到達すると、シャフト116を長手方向に移動させることと回転運動させることとを同時に行うことで、凝血塊係合要素102により凝血塊1000を取り囲むことができる。凝血塊捕捉要素102の巻線108が実質的に一定のピッチ及び実質的に一定の半径を有する場合、捕捉要素102が巻かれていることから巻線は単一の経路を辿ること、及び凝血塊の外傷を最小にすることができ、それにより、凝血塊がばらばらになるリスクを最小にすることができる。凝血塊係合要素102が凝血塊1000を取り囲むとき、凝血塊係合要素102は凝血塊1000と凝血塊捕捉要素との間にあってよい。いくつかの使用例では、凝血塊係合要素102を回転させることにより、係合要素を大きく前進させる必要なしに、アルキメデスのスクリュー効果で凝血塊が係合要素102内にさらに引き入れられ得るようになる。アルキメデス効果の程度、及びそれが起こるか否かは、凝血塊の具体的な性質と、凝血塊と血管壁1004との接続の程度とによって決定され得る。
【0063】
凝血塊係合要素102により凝血塊1000を取り囲むことにより、凝血塊係合要素102を追加的に拡張させることができる。上で考察したように、凝血塊係合要素102を径方向に拡張させることにより、凝血塊係合要素102の外側表面により血管1002の壁1004に力を作用させることができ、それによりさらに血管壁1004から凝血塊1000を分離させることが補助され得る。このように分離させることにより、血管1002から凝血塊1000を除去するのに必要となる力を低減することを補助することができる。また、分離させることで、血管1002から凝血塊を除去するときに凝血塊1000が複数の部分に分かれる傾向を軽減するのを補助することができる。
【0064】
デバイス・オペレータは、凝血塊係合デバイスを用いて凝血塊1000を取り囲むことができ、その結果デバイス・オペレータは、凝血塊係合要素102及び凝血塊1000を一体に凝血塊捕捉要素104内に引き入れることができるようになる。したがってデバイス・オペレータは矢印1014の方向にシャフト116を移動させることができ、その結果、凝血塊係合要素102によって取り囲まれた凝血塊1000は開口112を通して凝血塊捕捉要素104の中央ルーメン110内へと引き入れられ得る。
【0065】
デバイス・オペレータが矢印1014の方向において凝血塊1000及び凝血塊係合要素102を凝血塊捕捉要素104の中央ルーメン110内へと引き入れるとき、デバイス・オペレータは凝血塊捕捉要素104の制御シャフト114を矢印115の方向に引くこともできる。このように引くことにより、凝血塊捕捉要素104は、径方向の収縮力1016及び長手方向剪断力1018を凝血塊1000及び凝血塊係合要素102に加えることができるようになる。加えられたこれらの力は、凝血塊1000を複数の部分に分かれさせることなくデバイス・オペレータが凝血塊捕捉要素104内で凝血塊1000を維持すること及び血管1002から凝血塊1000を除去することを補助することができる。また、凝血塊が壊れたとき、捕捉要素104は、小片が血流内へと解放されるのを防ぐことができる。
【0066】
図7Dに示されるように、凝血塊捕捉要素104と、凝血塊係合要素102によって取り囲まれた凝血塊1000とを同時に引くことにより、上で言及した構成要素を矢印1020の方向にシース118内へと後方へ引き入れることが可能となる。凝血塊係合要素102及び凝血塊捕捉要素104をシース118内へと後方に引き入れることにより、凝血塊係合要素102及び凝血塊捕捉要素104を拡張構成(
図7C)から収縮構成(
図7D)へと移行させることが可能となる。その後デバイス・オペレータは、血管1002の長手方向軸線1006に沿って患者の脈管から凝血塊除去デバイス100を除去することができる。
【0067】
別法として、捕捉要素及び係合要素を後方に引いてシース内に入れることなく凝血塊を脈管から除去してもよい。代わりに凝血塊は捕捉要素内で捕らえられることができるので、後退させるときに作用する径方向の力は捕捉要素内で凝血塊を圧縮するのに十分な大きさとすることができ、それによりこの構造は実質的に拡張形態で後退させられることができる。
【0068】
必要に応じて、デバイス・オペレータは血管1002から凝血塊1000を除去する方法を変更することができる。例えば、凝血塊1000を取り囲むために凝血塊係合要素102を位置決めする前に、デバイス・オペレータは、凝血塊部位を一掃するのに必要となる可能性がある器具を凝血塊捕捉要素104の中央ルーメンを通して挿入することができる。加えて、凝血塊捕捉要素104内で凝血塊1000を掴むため及び/又は凝血塊1000を維持するための適切なツールにより凝血塊1000を除去することが達成され得る。例えばデバイス・オペレータは、凝血塊除去デバイス100の近位端のところで吸引デバイスを使用することができる。吸引デバイスはさらに、凝血塊1000を引いて凝血塊捕捉要素104に入れることと、凝血塊1000を患者の脈管から引っ張り出すときに凝血塊捕捉要素104内で凝血塊104を維持することとを補助することができる。
【0069】
本開示の別の実施例によると、血管から凝血塊を除去する方法が、血管内に管状の凝血塊捕捉要素を配備する段階であって、この凝血塊捕捉要素は凝血塊係合要素を受け入れて案内する開口をその中に有している段階と、凝血塊捕捉要素を用いて凝血塊を取り囲む段階と、血管の長手方向において凝血塊捕捉要素を後退させる段階であって、それにより凝血塊捕捉要素が径方向に収縮し、凝血塊に対して径方向内向きの圧縮力を作用させる段階とを含むことができる。本開示のこの実施例は、凝血塊捕捉要素104を含めて、上で説明した凝血塊捕捉要素のうちのいずれかを用いて実施され得る。
【0070】
本開示の別の実施例によると、血管から凝血塊を除去する方法が、第1の直径を有する管状の凝血塊捕捉要素を凝血塊部位のところまで送達する段階と、第2の外径を有する凝血塊係合要素を凝血塊部位のところまで送達する段階とを含むことができ、ここで第1の直径及び第2の直径は、管状の凝血塊捕捉要素内で凝血塊係合要素が回転するように選択される。
図2に関連して上で説明したように、この方法は、例えば凝血塊捕捉要素104が凝血塊部位のところまで送達され、凝血塊係合要素102が凝血塊部位のところまで送達される場合、さらには、これらの2つの要素の直径が捕捉要素内で係合要素を回転させるのを可能にする場合に達成され得る。
【0071】
捕捉要素及び係合要素は同じシース内などで一体に配備され得るが、本開示はその最も広い意味においては必ずしもこれを必要とするわけではない。例えば、係合要素が最初に送達され、次いで捕捉要素が送達されてもよい。また係合要素は、回転時に捕捉要素の内壁に接触するようなサイズとされてもよく、又は接触するのを回避するようなサイズとされてもよい。
【0072】
本開示の別の実施例によると、血管から凝血塊を除去するための方法が、血管内に凝血塊係合要素を配備する段階であって、この凝血塊係合要素はシャフトの端部に位置していてもよい段階と、シャフトの一部分を血管壁に接触させない状態で維持するために安定装置を用いてシャフトを少なくとも部分的に取り囲む段階とを含むことができる。この方法は、構造104などの凝血塊捕捉要素を用いても用いなくても実施され得、また任意特定の安定装置構造にこだわらずに実施され得る。上で述べたように、設計選択によっては、本開示のいくつかの実施例が、係合要素102を血管内の中央に配置したときに係合要素102を回転させることの恩恵を受けることができる。これにより血管壁に作用する圧力を最小にすることができ、同時に、凝血塊を取り囲むための血管の長手方向における係合要素102の動きを最大化できる。係合要素(例えば102)を回転させるシャフト(例えばシャフト116)を血管の中央の方に向かって安定させることにより、長手方向の動きを最大化できる。したがってこの安定化は、シャフト116と巻線108とが交差する近傍のロケーションでシャフト116を血管の中央付近に概ね維持する任意の構造を用いてシャフト116を取り囲むことによってなされ得る。
【0073】
図9〜12が別の実施例を示す。血管分岐部(合流点)で凝血塊が捕らえられる傾向があることが観察された。合流点を過ぎた血管の直径は合流点より手前の親血管の直径より小さい可能性があることから、このようなロケーションに凝血塊が留められる可能性がある。
図9〜12の実施例では、コイル200の形態の係合要素がシャフト202に接続される。コイル200は上述した実施例に関連して説明したものに実質的に類似していてよい。ここで示される実施例では、コイル200の遠位端部204が、シャフト202及びコイル200の主軸線220の一方の側に変位された(displaced)端部形成物206を有し得る。
図10は、コイル200の遠位端部204で少なくとも2つのカーブ(208及び209)から形成される端部形成物206の2つの実施例を示しており、ここでは2つのカーブ208及び209の各々が、0度から90度以下の間で全体的な角度逸脱(angular deviation)を有する。一実施例では、遠位端部204が、(主軸線220からの)第1のカーブ208と(第2の軸線222からの)第2のカーブ209とを呈する。この効果は、コイルの最終端点が主軸線220に対して90度から180度の間の角度逸脱を呈し、コイルの先端部分210を、すなわちデバイスを凝血塊のところまで前進させるときに血管の壁に接触することになる部分が湾曲しており、血管を損傷させにくい、ということである。
図10のもう一方の実施例では、遠位端部204が、実質的直線部分によって分離された2つのカーブ212、214を有する。すなわち、主軸線220からの第1のカーブ212と、第2の軸線222からの第2のカーブ214とが存在し、これらの2つの部分の間に実質的直線部分が存在する。他の湾曲形態及びカーブの組合せが使用されてもよい。
図11の実施例では、遠位端部204が、コイル200の一方の側に位置する、ボール状形成物の形態の特大端部分216を備える。この実施例のコイルは湾曲していない(すなわち主軸線220からの全体としての逸脱が存在しない)が、この特大端部分216は、
図9に示されるような湾曲する遠位端部204と共に使用されることもできる。特大端部216はPTFEなどの摩擦低減材料で被覆されてよい。
図12A及び12Bの実施例は、遠位端部244が特大端部分216の近傍のコイルにピッチP及び/又は半径の明白な変動(変化)を有し得る点を除いて、
図11の実施例に類似するものである。
【0074】
遠位端部204及び遠位端部244を主長手方向軸線220から変位させることにより、血管を通してデバイスを前進させるときにデバイスを操作するのに使用され得るシステム構成に非対称性が導入される。主軸線を中心としてデバイスを回転させることにより、遠位端部が所望の方向に配置され得、その結果、デバイスをさらに前進させることで、デバイスが所望の方向に曲折されるようになる。例えば、デバイスが血管内の合流点に到達するとき、デバイスを回転させることで、遠位端部を所望の血管枝(blood vessel branch)の方へ向けることが可能となる。デバイスをさらに前進させることにより遠位端部が所望の血管に入り、デバイスがさらに前進して凝血塊に接触することができる。凝血塊捕捉要素の構成などのデバイスの他の観点は上述した通りであってよい。
【0075】
別の実施例では、角度付きの先端部403を備えるコイル400と、コイル400を使用して血管1002から凝血塊1000を除去するための手当とが
図13A〜13Dに示される。これらの図に示されるように、カテーテル500が、血管1002内の凝血塊部位のところまで送達され得る。カテーテル500を送達することには、患者の脈管内でカテーテル500を凝血塊1000の近傍のロケーションまで挿入することが含まれていてよい。いくつかの実施例では、カテーテル500を凝血塊1000のところまで送達するとき、コイル400がカテーテル500のルーメン(図示せず)内に配置され得る。他の実施例では、カテーテル500が凝血塊1000の近傍に配置された後、コイル400がカテーテル500のルーメン内に挿入され得る。
【0076】
カテーテル500を凝血塊部位の近傍のロケーションまで送達した後、デバイス・オペレータがカテーテル500から血管1002内へとコイル400を配備させることができる。コイル400の角度付き先端部403が(
図13Bでは矢印で示されるように)主軸線を中心として回転させられ得、その結果、角度付き先端部403(コイル400の遠位端部のところ)が所望の方向に方向付けられ得る。上で考察したように、角度付き先端部403を備えるコイル400は、血管1002に沿ってコイル400をさらに前進させることにより、コイル400の角度付き先端部403を所望の方向に曲折させることができるように構成され得る。例えば、デバイスが血管1002内の合流点に到達するとき、コイル400が回転させられ得、それにより角度付き先端部403が所望の血管枝の方を向くように方向付けられ得る。コイル400をさらに前進させることにより、コイル400の角度付き先端部403を凝血塊1000に接触させることができる。
【0077】
コイル400を使用することに加えて、デバイス・オペレータは、カテーテル500の遠位端部に吸引力を加えるために、カテーテル500の近位端のところで吸引デバイスを使用することができる。吸引デバイスは、例えば、カテーテル500の近位端に結合されるポンプ又はシリンジであってよい。吸引力は、凝血塊1000の完全性を維持するため及びオペレータが凝血塊1000をカテーテル500内へと後方に引き入れるのを補助するために、手当の前若しくは手当の後に断続的に、又は手当の間ずっと加えられてもよい。
【0078】
特定の実施例では、吸引力は、コイル400を配備する前に加えられてよい。これらの実施例では、凝血塊1000を引いてカテーテル500に入れるために吸引力が加えられてもよい。次いでコイル400がカテーテル500内に配備されて凝血塊1000に接触することができ、またカテーテル500を患者の脈管から引き抜くときにカテーテル500内で凝血塊1000を保持することができる。
【0079】
本明細書を考察すること、及び本明細書で開示される本発明を実施することにより、当業者には本開示の他の実施例が明らかとなろう。本明細書及び実例は単に例示であるとみなされることを意図され、真の範囲は以下の特許請求の範囲によって示される。