(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552499
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】改良された流れを有する熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28D 9/02 20060101AFI20190722BHJP
F28F 3/04 20060101ALI20190722BHJP
F28F 3/08 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
F28D9/02
F28F3/04 B
F28F3/08 301Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-536119(P2016-536119)
(86)(22)【出願日】2014年11月28日
(65)【公表番号】特表2016-540181(P2016-540181A)
(43)【公表日】2016年12月22日
(86)【国際出願番号】EP2014075956
(87)【国際公開番号】WO2015086343
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2017年11月16日
(31)【優先権主張番号】1351472-4
(32)【優先日】2013年12月10日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】502298310
【氏名又は名称】スウェップ インターナショナル アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】アンデション スヴェン
【審査官】
庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−517764(JP,A)
【文献】
実開昭57−154872(JP,U)
【文献】
欧州特許出願公開第02267391(EP,A2)
【文献】
特開昭54−059656(JP,A)
【文献】
特開昭63−025494(JP,A)
【文献】
特開2000−097581(JP,A)
【文献】
特表平01−503254(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0031598(US,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第02233873(EP,A1)
【文献】
中国実用新案第2886491(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 3/04,3/08
F28D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタックに積み重ねられた多くの同一の熱交換器プレート(110)を備える熱交換器(100)であり、他の全ての熱交換器プレートは、それの隣接プレートと関連してその平面において180°回転され、各熱交換器プレートは、少なくとも4つのポート開口(130、140、150、160)、および押圧された隆起(R)および溝(G)を含む杉綾模様を備え、前記隆起および溝は、流路の形成の下で互いに間隔を置いてプレートを保つのに適しており、前記ポート開口から前記流路への選択的な流れが達成されるように、前記ポート開口のまわりの領域は、異なるレベルに配置される、熱交換器(100)であって、2つの隣接するポート開口(130、140;150、160)のまわりに設けられるへこみ(D)によって特徴づけられ、前記2つの隣接するポート開口(130、140;150、160)のうちの1つの付近の前記へこみ(D)は、前記隆起(R)に置かれて、隆起(R)の表面から内部へ没する凹部であり、前記2つの隣接するポート開口(130、140;150、160)のうちの他の付近の前記へこみ(D)は、前記溝(G)に置かれて、溝(G)の深さを浅くする突起である、熱交換器(100)。
【請求項2】
前記へこみは、前記スタックにおける前記隣接プレートの前記隆起(R)と溝(G)との間の接触点が前記へこみによって影響を受けないように配置される、請求項1に記載の熱交換器(100)。
【請求項3】
前記スタックにおける前記熱交換器プレートは、ろう付けでつながれる、請求項1または2に記載の熱交換器(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタックに積み重ねられた多くの同一の熱交換器プレートを備える熱交換器であって、他の全ての熱交換器プレートは、それの隣接プレートと関連してその平面において180°回転され、各熱交換器プレートは、少なくとも4つのポート開口、および押圧された隆起および溝を含む杉綾模様を備え、隆起および溝は、流路の形成の下で互いに間隔を置いてプレートを保つのに適しており、ポート開口から流路への選択的な流れが達成されるように、ポート開口のまわりの領域は、異なるレベルに配置される、熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器の最も一般的なタイプは、多くの同一の熱交換器プレートを備え、その各々はポート開口を備え、それを囲んでいる領域は、隣接する熱交換器プレートの隆起と溝との押圧パターン間の相互作用によって配置される流路への選択的な流体連通のために配置するように異なる高さに位置する、熱交換器のタイプである。
【0003】
熱交換器の当業者によく知られるように、上記のタイプの熱交換器には、同一でないプレートから作られる熱交換器と比較して、1つの小さな欠点がある。すなわち、1つの流体のための入口および出口ポート開口は、熱交換器の軸線の一側に配置される一方、他の流体のための開口は、軸線の他側に配置されることである。
【0004】
これは、熱を交換するために流体のわずかな不均衡配分に至る。というのは、流体がポート開口からポート開口まで直線に進行するために、より短い経路(そしてそれ故、より少ない抵抗)があるからである。各流体の大多数の流れは、それ故、熱交換器の軸線と比較して、熱交換器の一側の方へシフトされて流れる。明らかに、最適配分は、隣接プレートによって配置される流路の両方の流体の均一な流れである。
【0005】
不均衡配分の課題は、その長さと比較してかなりの幅を有する熱交換器にとってさえより言及される。古い「経験則」は、受け入れ可能な熱交換器効率を得るために好ましくは長さが幅の1.7倍でなければならないことを示す。
【0006】
特許文献1では、横の不均衡配分の課題は、その中の流体の流れが流れの直線方向と比較して横の方向により大きい流動抵抗を有するように、隣接プレート間に接触点を提供することによって対処される。おそらく、これは、よりポジティブな方向において流れて、それ故、不均衡配分の課題を減らすことを、流体に強いる。
【0007】
特許文献2には、流路を流れる流体と周囲空気との間で熱を交換するためのラジエータ・タイプのプレート熱交換器が開示されている。ポート開口の背後の停滞した流れを回避するために、ポート開口の側方に設けられるフローガイド構造は、流動抵抗を減少させるように調整される。そうすると、ポート開口のまわりの停滞した領域は、回避される。流れの横の不均衡配分は言及されず、そして、この文書の設計も横の不均衡配分に影響を及ぼさない。というのは、ポート開口の両側が同一のフローガイド構造を備えているからである。
【0008】
本発明は、同一の熱交換器プレートからなされる熱交換器の流動分布を改良することを目的する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0107890号
【特許文献2】欧州特許出願公開第2420791号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、いずれかのポート開口の付近で隆起および溝に配置されるへこみの付加的な特徴を有する、前述のタイプの熱交換器を提供することによって、上記および他の課題を解決する。へこみは、前記流路のより均一な流動分布を促進するために流動抵抗を増加させるように調整される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態において、前記へこみは、スタックにおける隣接プレートの隆起と溝との間の接触点がへこみによって影響を受けないように配置される。これは、熱交換器の強さを増加させる。
【0012】
流動分布に対する充分な効果が上記構成によって達成されない場合には、へこみは、2つの隣接するポート開口のまわりに設けられてもよく、隣接するポート開口のうちの1つの付近のへこみは、隆起に置かれ、2つの隣接するポート開口のうちの他の付近のへこみは、溝に置かれる。
【0013】
コスト効率的な熱交換器を達成するために、スタックにおける熱交換器プレートは、ろう付けでつながれてもよい。
【0014】
以下、本発明は、添付図面を参照して記載される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、6つの同一の熱交換器プレートを備える熱交換器の分解斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の熱交換器プレートの1つを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に関して、本発明による熱交換器100は、多くの同一の熱交換器プレート110を備える。熱交換器プレート110の各々は、4つのポート開口130、140、150および160を備える。開口130、150は、それぞれ、第1の流体用の入口開口および出口開口であり、開口160、140は、それぞれ、第1の流体と熱交換する第2の流体用の入口開口および出口開口である。
【0017】
プレートはまた、杉綾模様に配列されて、流路の形成の下で互いに間隔を置いてプレートを保つのに適した隆起Rおよび溝Gを備える。ポート開口のまわりの領域は、流路に選択的な流動を許容するために、異なる高さに配置される。ポート開口130および150のまわりの領域は、同じ高さ(例えば隆起Rの高さ)に設けられる一方、ポート開口140、150のまわりの領域は、別の高さ(例えば溝Gの高さ)に設けられる。
【0018】
2枚の隣接したプレートは、平面内を常に相互に180°回転される。すなわち、ポート開口130および160が互いに隣接するように、そしてポート開口150および140が互いに隣接するように、相互に回転される。上述したように、ポートを囲んでいる領域が異なる高さに配置されることは、プレートの軸線の一側上に位置する一対のポート開口は隣接するプレートによって配置される流路への流動を許容する一方、他の一対のポート開口は閉じる、すなわち同じ流路への流動を許容しないことを意味する。しかしながら、同じ一対のポート開口は、次の隣接する熱交換器プレートによって配置される流路と流体連通する。
【0019】
さらに、熱交換器プレートは、プレート110の周辺のまわりに延びる裾部190を備える。隣接するプレートの裾部は、流路をシールするように配置される。そうすると、流路へのおよび流路からの漏出は、許容されない。
【0020】
最後に、エンドプレート170、180は、熱交換器プレートのスタックの外側に配置される。エンドプレートの目的は、強さ、すなわち熱交換器の圧力性能を増加させることである。圧力要件が低いならば、エンドプレートは、省略することができる。
【0021】
図2は、熱交換器プレート110のうちの1つを示す。この図において、それぞれ隆起Rおよび溝Gを含む杉綾模様の若干の不規則性は、ポート開口130および140の付近に示される。
図3には、この領域(
図2の領域Bで示す)がより詳細に示される。ポート開口150および160の付近では、杉綾模様は、不規則ではない。
【0022】
図3で分かるように、隆起Rおよび溝Gを含む杉綾模様は、へこみDによって中断される。ポート開口130の付近では、へこみDは、溝Gに配置される一方、ポート開口140の付近では、へこみDは、隆起Rに配置される。
【0023】
上記したように、熱交換器プレートは、互いに積み重ねられる。そして、各々他のプレートは、その隣接プレートに対して180°回転される。
図3に部分的に示されるプレートの上に配置されて、このプレートと比較して180°回転しているプレート110を人が想像する場合、ポート開口130は、これら2枚のプレートによって区切られる流路に開いている一方、ポート開口140は、閉じている。
【0024】
ポート130の付近の溝GにおけるへこみDは、流れボリュームを減少させて、それ故、ポート開口130の付近における圧力降下を増大させる一方、ポート開口140の付近の隆起RにおけるへこみDは、流れボリュームを増加させて、それ故、流路を進行している流体のための圧力降下を減少させる。ポート開口130が入口開口であると考慮すると、流体は、それ故、ポート開口140が位置する熱交換器プレートの軸線のその側の方向を目指す。
【0025】
同一のプレートが
図3に示すプレートの下に配置される場合、ポート開口140は、これら2枚のプレートによって区切られる流路へと流れる流体のために開いている。そして、ポート開口130が位置する熱交換器プレートの軸線のその側の経路の方向を、流れは目指す(というよりは促される)。しかしながら、誰でも2つの入口開口を互いに次に配置することは、むしろありそうにない。
【0026】
しかしながら、同一のプレートに起因して、圧力への影響は低下する。そしてそれ故、流動分布は、ポート開口150、160にとって等しい。
【0027】
上で、本発明は、1つの単一実施形態に関して記載された。そしてそれは、結果として、同一の熱交換器プレートの積み重ねからなされるプレート熱交換器の流動分布の重要な改善になる。そして、他の全てのプレートは、それの隣接プレートと比較して平面において180°回転される。示された実施形態では、へこみDを有する位置に接触することにより互いに間隔を置いてプレートを保っている杉綾模様の隆起および溝の両方を設けることによって、これは、達成される。しかしながら、例えば、へこみを有するポート開口130の付近に溝Gを設けることだけ、またはへこみDを有するポート開口140の付近に隆起Rを設けることだけによって、同じ結果を達成することができる。
【0028】
へこみを有する両方のポート開口130および150の付近に溝Gを、そしてへこみを有する両方のポート開口140、160の付近に隆起Rを設けることもできる。
【0029】
本発明は、ろう付けされた熱交換器のために、そして、パックされた熱交換器(すなわち縁部分およびポート開口のまわりにガスケットによりシーリングが設けられた熱交換器)のために、用いられることができる。