(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552502
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】籾殻燃焼灰の無害化方法および籾殻の燃焼設備
(51)【国際特許分類】
F23G 5/00 20060101AFI20190722BHJP
B09B 3/00 20060101ALI20190722BHJP
F23G 5/033 20060101ALI20190722BHJP
F23J 1/00 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
F23G5/00 115Z
B09B3/00 303L
B09B3/00 303Z
B09B3/00 ZZAB
F23G5/033 A
F23J1/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-538381(P2016-538381)
(86)(22)【出願日】2015年7月29日
(86)【国際出願番号】JP2015071460
(87)【国際公開番号】WO2016017669
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2016年11月7日
【審判番号】不服2018-5262(P2018-5262/J1)
【審判請求日】2018年4月17日
(31)【優先権主張番号】特願2014-155924(P2014-155924)
(32)【優先日】2014年7月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504100802
【氏名又は名称】近藤 勝義
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】特許業務法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勝義
(72)【発明者】
【氏名】道浦 吉貞
(72)【発明者】
【氏名】霜村 潤
(72)【発明者】
【氏名】笹内 謙一
(72)【発明者】
【氏名】友澤 健一
(72)【発明者】
【氏名】丁 驍騰
【合議体】
【審判長】
紀本 孝
【審判官】
槙原 進
【審判官】
藤原 直欣
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−192811(JP,A)
【文献】
特開平9−150191(JP,A)
【文献】
特開平8−94056(JP,A)
【文献】
特開2003−74830(JP,A)
【文献】
特開2014−81187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/00 - 5/033
B09B 3/00
F23J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電のための燃料として籾殻を用意する工程と、
前記籾殻を燃焼させ、燃焼熱を利用して発電する工程と、
前記籾殻の燃焼によって生成する粒径数mm〜10mmのクリストバライト化した多孔質の籾殻燃焼灰を回収する工程と、
回収した前記籾殻燃焼灰を粉砕して、粒径が15μm以下の微粒粉にする工程と、
前記微粒粉を、内壁温度が1100℃以上である炉内の火炎中に噴射して溶融させることにより、前記籾殻燃焼灰の微粒粉を非晶質化する工程とを備え、
前記火炎処理時の支燃ガス中の酸素濃度が40体積%以上であり、
前記火炎の温度は1750℃〜2500℃であり、
前記火炎処理後の微粒粉の非晶質化率が80%以上である、籾殻燃焼灰の無害化方法。
【請求項2】
前記火炎処理時の支燃ガス中の酸素濃度が60体積%以上である、請求項1に記載の籾殻燃焼灰の無害化方法。
【請求項3】
前記火炎処理後の非晶質化した微粒粉の粒径は20μm以下である、請求項1または2に記載の籾殻燃焼灰の無害化方法。
【請求項4】
燃焼熱を利用して発電するために、籾殻を燃焼させる燃焼炉と、
前記燃焼炉での燃焼後に回収される粒径数mm〜10mmのクリストバライト化した多孔質の籾殻燃焼灰を粒径15μm以下の微粒粉になるまで粉砕する粉砕機と、
前記籾殻燃焼灰の微粒粉を火炎中に噴射して溶融させることにより、籾殻燃焼灰の微粒粉の非晶質化率を80%以上にする火炎処理機とを備え、
前記火炎処理機は、内壁温度が1100℃以上にされた火炎処理炉と、前記火炎処理炉内に酸素濃度が40体積%以上の支燃ガスを供給して前記火炎の温度を1750℃〜2500℃にする支燃ガス供給手段とを含む、籾殻の燃焼設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、有機系廃棄物の燃焼灰の処理方法に関するものであり、特に発電用の燃料として使用される有機系廃棄物の燃焼灰の無害化方法および有機系廃棄物の燃焼設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
籾殻等の有機系廃棄物(バイオマス)を燃焼させて、その燃焼熱を利用して発電するシステムが注目されている。
【0003】
例えば、特開2014−81187号公報(特許文献1)は、籾殻燃焼装置を用いて燃焼熱を発生させ、この燃焼熱を用いて水を加熱して蒸気にし、蒸気用タービンまたは蒸気用水車を回転させる発電方法を開示している。
【0004】
特開2014−114427号公報(特許文献2)は、小型火力発電所用の燃料として、農産物および農業廃棄物を有効利用することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−81187号公報
【特許文献2】特開2014−114427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
籾殻等の有機系廃棄物は今後のバイオマスエネルギーの一つとして期待し得るが、大量の燃焼灰の処理が問題になっている。有機系廃棄物を燃焼させた灰は、残留炭素を約2%含むものの純度92質量%以上の高結晶性のクリストバライト(高結晶性シリカ)である。
【0007】
国際がん研究機関(IARC:International Agency for Research on Cancer)によれば、不溶性の結晶性シリカの一種であるクリストバライトは発がん性があると指摘されている。そのため、発電のための燃料として有機系廃棄物を利用した場合、その燃焼灰の処理が問題となる。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、有機系廃棄物の燃焼灰を無害化する方法および有機系廃棄物の燃焼設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に従った有機系廃棄物の燃焼灰の無害化方法は、以下の工程を備える。
(a)有機系廃棄物を燃焼させてクリストバライト化した燃焼灰を回収する工程。
(b)回収した有機系廃棄物の燃焼灰を粉砕して微粒粉にする工程。
(c)微粒粉を炉内の火炎中に噴射して溶融させることにより、燃焼灰の微粒粉を非晶質化する工程。
【0010】
好ましくは、上記の火炎処理時の支燃ガス中の酸素濃度が40体積%以上である。より好ましくは、火炎処理時の支燃ガス中の酸素濃度が60体積%以上である。
【0011】
火炎処理時の炉の内壁の温度は、好ましくは1100℃以上である。好ましい火炎の温度は1750℃〜2500℃である。
【0012】
粉砕後に得られる有機系廃棄物の微粒粉の粒径は、好ましくは15μm以下である。また、火炎処理後の非晶質化した微粒粉の粒径は、好ましくは20μm以下である。
【0013】
好ましくは、火炎処理後の微粒粉の非晶質化率は80%以上である。
【0014】
好ましい実施形態では、有機系廃棄物の燃焼工程は、発電のための燃料として有機系廃棄物を用意すること、および有機系廃棄物を燃焼させ、燃焼熱を利用して発電することを含む。
【0015】
有機系廃棄物は、好ましくは、籾殻、稲わら、米ぬか、麦わら、木材、間伐材、建設廃材、おが屑、樹皮、バガス、トウモロコシ、サトウキビ、サツマイモ、大豆、落花生、キャッサバ、ユーカリ、シダ、パイナップル、竹、ゴム、古紙からなる群から選ばれたいずれかである。
【0016】
本発明に従った有機系廃棄物の燃焼設備は、有機系廃棄物を燃焼させる燃焼炉と、燃焼炉から回収したクリストバライト化した有機系廃棄物の燃焼灰を粉砕して微粒粉にする粉砕機と、微粒粉を火炎中に噴射して溶融させることにより、この燃焼灰の微粒粉を非晶質化する火炎処理機とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、クリストバライト化した燃焼灰を火炎処理によって非晶質化しているので、燃焼灰の処理を安全に行うことができる。また、必要に応じて、火炎処理後の非晶質化したシリカ粉を種々の用途に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る方法の各ステップを示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る有機系廃棄物の燃焼装置を示す図である。
【
図3】粒径5μmの籾殻灰に対する支燃ガス中の酸素濃度と平均粒径との関係を示す図である。
【
図4】粒径5μmの籾殻灰に対する支燃ガス中の酸素濃度と非晶質化率との関係を示す図である。
【
図5】粒径5μmの籾殻灰に対するX線回折結果(XRD)を示す図である。
【
図6】粒径10μmの籾殻灰に対する支燃ガス中の酸素濃度と平均粒径との関係を示す図である。
【
図7】粒径10μmの籾殻灰に対する支燃ガス中の酸素濃度と非晶質化率との関係を示す図である。
【
図8】粒径10μmの籾殻灰に対するX線回折結果(XRD)を示す図である。
【
図9】粒径15μmの籾殻灰に対する支燃ガス中の酸素濃度と平均粒径との関係を示す図である。
【
図10】粒径15μmの籾殻灰に対する支燃ガス中の酸素濃度と非晶質化率との関係を示す図である。
【
図11】粒径15μmの籾殻灰に対するX線回折結果(XRD)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る方法の処理工程を順に示している。本発明の実施形態に係る方法は、まず、有機系廃棄物を準備し、この有機系廃棄物を燃焼させて燃焼灰を回収する。回収した燃焼灰を粉砕して微粒粉にした後に、微粒粉を火炎処理して非晶質化する。
【0020】
図2は、本発明の実施形態に係る有機系廃棄物の燃焼装置の図解図である。燃焼装置1は、籾殻等の有機系廃棄物を燃焼させる燃焼炉10と、燃焼炉10から回収したクリストバライト化した有機系廃棄物の燃焼灰を粉砕して微粒粉にする粉砕機20と、微粒粉を火炎中に噴射して溶融させることにより、燃焼灰の微粒粉を非晶質化する火炎処理機30とを備える。
【0021】
以下、各工程について詳しく説明する。
【0022】
[有機系廃棄物の準備]
有機系廃棄物は、好ましくは、籾殻、稲わら、米ぬか、麦わら、木材、間伐材、建設廃材、おが屑、樹皮、バガス、トウモロコシ、サトウキビ、サツマイモ、大豆、落花生、キャッサバ、ユーカリ、シダ、パイナップル、竹、ゴム、古紙からなる群から選ばれるが、典型的には籾殻である。籾殻は、広範囲な地域で入手可能である。本発明者らは、有機系廃棄物の代表例として、入手し易く、かつ取り扱いが容易な籾殻を使用して本発明の実験を行ったが、他の有機系廃棄物を使用しても同様の作用効果を期待できる。
【0023】
[有機系廃棄物の燃焼および燃焼灰の回収]
籾殻は、例えば発電のための燃料として用いられる。籾殻を燃焼させて、燃焼熱を利用して発電し、燃焼後の籾殻灰を回収する。籾殻の燃焼温度は750℃〜1300℃であり、燃焼後の徐冷によって燃焼灰となる。その燃焼灰は純度92質量%以上のシリカであるが、クリストバライト化している。そのため、クリストバライト化した燃焼灰をそのまま廃棄したり、他の用途に使用したりすると、人体に対する悪影響が懸念される。
【0024】
[燃焼灰の粉砕]
そこで、本発明の実施形態に係る方法では、まず、燃焼灰を粉砕して微粒粉にする。粉砕前の籾殻の燃焼灰の粒径(最大長さ)は、原料籾殻の粒径(最大長さ)に対応するものであり、数mm〜10mm程度である。また、籾殻灰は多孔質であることから、15μm以下の微粒子を得るまでの粉砕に要するエネルギーは非常に小さい。籾殻灰を15μm程度以下の微粒粉にするのは、後工程の火炎処理の際に火炎中に噴射して即座に溶融させることを考慮したためである。
【0025】
[微粒粉の火炎処理および非晶質化]
この微粒粉を炉内の火炎中に噴射して溶融させることにより、微粒粉を非晶質化する。炉内の酸素濃度が低く、炉内温度が低いと、非晶質化率が低くなる。良好な非晶質化率を得るには、炉内の酸素濃度を高くして炉内温度を高くし、急冷する必要がある。
【0026】
火炎は、酸素、窒素および少量のアルゴンを含む支燃ガスによって形成される。火炎処理時の支燃ガス中の酸素濃度は、好ましくは40体積%以上であり、より好ましくは60体積%以上である。また、火炎処理時の炉の内壁の温度は、好ましくは1100℃以上である。効率的に微粒粉を溶融して非晶質化するためには、火炎処理時の火炎の温度を1750℃〜2500℃にするのが好ましい。火炎処理後の微粒粉の非晶質化率は、好ましくは80%以上である。
【0027】
一般的に火炎バーナーに投入前のシリカ微粒子の平均粒径に比べて、火炎処理によって溶融球状化した球状シリカ粒子の平均粒径は増加する。平均粒径が増加する一つの理由は、複数のシリカ微粒子が静電気や分子間引力により凝集した状態で球状化するからである。平均粒径が増加すると内部まで急冷できなくなり、結晶化してしまう。ここで注目すべきは、有機系廃棄物由来のシリカ微粒子を溶融球状化した場合、鉱物由来のシリカ微粒子に比べて、粒径の増加を抑制することが認められる。その理由はまだ十分解明できていないが、有機系廃棄物由来のシリカ微粒子が多孔質であるので、表面積が大きく表面張力が高いこと、また内部に空隙があること等が考えられる。
【0028】
火炎を用いた溶融球状化処理時における粒子の平均粒径の増加を抑えることができれば、原料シリカ(粉砕シリカ)の粉砕サイズを火炎処理後の球状化品に近づけることができる。したがって、平均粒径の増加を見込んだ分まで粒子を細かく粉砕する必要がなくなる。好ましくは、火炎を用いた溶融球状化処理によって非晶質化した微粒粉の粒径は20μm以下である。
【0029】
非晶質化したシリカ微粒粉については、廃棄処分してもよいし、他の用途、例えば金属材料、ゴム、コンクリート等の補強材や、食品・薬品添加剤等に利用することもできる。
【0030】
非晶質化したシリカ微粒粉を他の用途に使用する場合には、燃焼前に籾殻等の有機系廃棄物中の不純物を取り除いておくのが好ましい。具体的には、出発原料である有機系廃棄物を、酸溶液または温水中に浸漬して撹拌することによって原料から不純物を取り除き、シリカ純度を高める。酸は、水酸基を有するカルボン酸が好ましく、より好ましくはクエン酸である。
【0031】
[粒径5μmの籾殻灰に対する火炎処理]
籾殻灰を平均粒径5.7μmになるまで粉砕し、この粉砕した籾殻微粒粉を原料として火炎処理を行った。火炎処理は、籾殻灰微粒粉を炉内の火炎中に噴射して溶融させて、球状化したシリカ粉を得るものである。実験は専用テスト炉内で行い、火炎の燃料として13A都市ガスを使用し、燃焼酸化剤として空気+酸素を使用した。
【0032】
支燃ガス中の酸素濃度および炉内温度を変更して、火炎処理後の微粒粉の平均粒径および非晶質化率を計測した。その結果を表1に示す。
【0034】
支燃ガス中の酸素濃度を変えて5回のテストを行った。
図3は、粒径5μmの籾殻灰微粒粉に対して行った火炎処理における支燃ガス中の酸素濃度と処理後の微粒粉の平均粒径との関係を示している。平均粒径は、CILAS社製1090L(レーザー回折・散乱法)粒度分布測定機を用いて測定した。溶媒に水を用い、超音波およびスターラを用いて1分間かけて分散処理させたものを試料とした。
【0035】
図4は、粒径5μの籾殻灰微粒粉に対して行った火炎処理における支燃ガス中の酸素濃度と非晶質化率との関係を示している。
図5は、原料の籾殻灰微粒粉および火炎処理後の微粒粉に対するX線回折結果(XRD)を示している。
【0036】
非晶質化率は次にように求めた。リガク社製粉末X線回折装置「Ultima IV」を用い、CuKα線の2θが3度〜90度の範囲において、試料のX線回折分析を行った。クリストバライトの場合は22.0度に主ピークが存在するが、非晶質化(無害化)が進行することにより、この位置に存在するピーク強度が徐々に弱まっていく。そこで、原料のクリストバライトのX線回折強度に対する回収粉のクリストバライトのX線回折強度の比から、クリストバライト含有率(回収粉のクリストバライトのX線回折強度/原料のクリストバライトのX線回折強度)を算出し、以下の式によって非晶質化率を求めた。
【0037】
非晶質化率(%)=(1−クリストバライト含有率)×100
なお、原料のクリストバライトのX線回折強度および回収粉のクリストバライトのX線回折強度はそれぞれピーク強度からX線回折ベース強度を引いたものである。
【0038】
非晶質化率が「100%」であれば、全ての微粒粉が非晶質化していることを意味し、「95%」であれば、95%の微粒粉が非晶質化し、残りの5%が非晶質化していないことを意味する。非晶質化率が高い程、無害化率が高いということを意味する。
【0039】
表1および
図3に示す結果から、支燃ガス中の酸素濃度が高い程、火炎処理後の微粒子の平均粒径の増加が抑制されることが認められる。また、表1、
図4および
図5に示す結果から、支燃ガス中の酸素濃度が高い程、火炎処理後の微粒子の非晶質化率が高いことが認められる。
【0040】
[粒径10μmの籾殻灰に対する火炎処理]
籾殻灰を平均粒径9.4μm(テスト6)または11.1μm(テスト7〜10)になるまで粉砕し、この粉砕した籾殻灰微粒粉を原料として火炎処理を行った。火炎処理は、籾殻灰微粒粉を炉内の火炎中に噴射して溶融させて、球状化したシリカ粉を得るものである。実験は専用テスト炉内で行い、火炎の燃料として13A都市ガスを使用し、燃焼酸化剤として空気+酸素を使用した。
【0041】
支燃ガス中の酸素濃度および炉内温度を変更して、火炎処理後の微粒粉の平均粒径および非晶質化率を計測した。その結果を表2に示す。
【0043】
支燃ガス中の酸素濃度を変えて5回のテストを行った。
図6は、粒径10μmの籾殻灰微粒粉に対して行った火炎処理における支燃ガス中の酸素濃度と処理後の微粒粉の平均粒径との関係を示している。
図7は、粒径10μの籾殻灰微粒粉に対して行った火炎処理における支燃ガス中の酸素濃度と非晶質化率との関係を示している。
図8は、原料の籾殻灰微粒粉および火炎処理後の微粒粉に対するX線回折結果(XRD)を示している。
【0044】
表2および
図6に示す結果から、支燃ガス中の酸素濃度が高い程、火炎処理後の微粒子の平均粒径の増加が抑制されることが認められる。また、表2、
図7および
図8に示す結果から、支燃ガス中の酸素濃度が高い程、火炎処理後の微粒子の非晶質化率が高いことが認められる。
【0045】
[粒径15μmの籾殻灰に対する火炎処理]
籾殻灰を平均粒径15.5μm(テスト11〜13)または15.7μm(テスト14〜15)になるまで粉砕し、この粉砕した籾殻灰微粒粉を原料として火炎処理を行った。火炎処理は、籾殻灰微粒粉を炉内の火炎中に噴射して溶融させて、球状化したシリカ粉を得るものである。実験は専用テスト炉内で行い、火炎の燃料として13A都市ガスを使用し、燃焼酸化剤として空気+酸素を使用した。
【0046】
支燃ガス中の酸素濃度および炉内温度を変更して、火炎処理後の微粒粉の平均粒径および非晶質化率を計測した。その結果を表3に示す。
【0048】
支燃ガス中の酸素濃度を変えて5回のテストを行った。
図9は、粒径15μmの籾殻灰微粒粉に対して行った火炎処理における支燃ガス中の酸素濃度と処理後の微粒粉の平均粒径との関係を示している。
図10は、粒径15μの籾殻灰微粒粉に対して行った火炎処理における支燃ガス中の酸素濃度と非晶質化率との関係を示している。
図11は、原料の籾殻灰微粒粉および火炎処理後の微粒粉に対するX線回折結果(XRD)を示している。
【0049】
表3および
図9に示す結果から、支燃ガス中の酸素濃度が高い程、火炎処理後の微粒子の平均粒径の増加が抑制されることが認められる。また、表3、
図10および
図11に示す結果から、支燃ガス中の酸素濃度が高い程、火炎処理後の微粒子の非晶質化率が高いことが認められる。また、原料粉の平均粒径が15μm程度でも空冷で十分非晶質化できることが認められる。
【0050】
今回行ったテストは、籾殻灰を原料としたが、他の有機系廃棄物の燃焼灰を原料灰として用いても同様の効果を期待することができる。
【0051】
以上、この発明を実施形態に基づいて説明したが、この発明は実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の発明と同一の範囲または均等の範囲内で種々の修正や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
この発明は、特に発電用の燃料として使用される有機系廃棄物の燃焼灰の無害化方法および燃焼設備として有利に利用され得る。
【符号の説明】
【0053】
1 有機系廃棄物の燃焼設備、10 燃焼炉、20 粉砕機、30 火炎処理機。