(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
サファイアを含む物品であって、該物品が、各欠陥線が少なくとも250μm延びる一続きの欠陥線を有するエッジを含み、前記欠陥線の直径が5μm未満であり、前記エッジがRa<0.5μmの表面粗さを有し、前記エッジの表面下損傷が<100μmであることを特徴とする物品。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示の実施形態は、サファイアを含有する基体から、任意の形状を精密に切断および分離するためのレーザ処理を提供する。サファイア含有基体は、純粋なサファイア、サファイアと1以上の他の材料との複合材料、サファイアを混合した材料、サファイアでコーティングされた材料、およびサファイアを一体化させた材料であり得る。一実施形態において、サファイア含有基体は、サファイア層が取り付けられた、接着された、積層された、またはコーティングされたガラスである。本明細書において、サファイア、サファイア基体等という場合、それらは一般的にサファイア含有基体まで及ぶものと見なされる。本処理は、部品強度を保持するために、部品を、無視できるデブリ、最小の欠陥、およびエッジに対する低い表面下損傷を有する制御可能な方法で分離する。このレーザ切断方法は、選択されたレーザ波長に対して透明な材料によく適している。好ましくは、材料は、選択されたレーザ波長に対して略透明(即ち、材料深さ1μm当たり約10%未満、好ましくは約1%未満の吸収)であるべきである。0.55mm厚の両面を研磨されたC軸切断サファイアシートを用いて、本方法を実演した。
【0024】
本処理の基本的な工程は、超短レーザパルスを用いて、分離される部品の所望の形状の輪郭を描く断層線を生じることである。断層線は、クラックの伝搬のための、よって、基体マトリクスから形状を分離して切り離すための、抵抗が最も低い経路を確立する。本レーザ分離方法は、元の基体からのサファイアの形状の手作業による分離、部品的な分離、または完全な分離を可能にするよう調整され、構成され得る。
【0025】
以下に記載されるレーザ方法によれば、レーザを用いて、1回の通過で、基体または材料を貫通する高度に制御された完全な線の穿孔を生じることができ、これに伴う表面下損傷(<75μm、しばしば<50μm)およびデブリの発生は非常に僅かである。これは、ガラスの厚さを完全に貫通するにはしばしば複数回の通過が必要となり、溶発処理から大量のデブリが生じ、より大きな表面下損傷(>100μm)およびエッジの欠けが生じる、材料を溶発させるための典型的なスポット集光レーザの使用とは対照的である。
【0026】
本明細書において用いられる表面下損傷とは、本開示によるレーザ処理を受けた基体または材料から分離される部品の周囲の面における構造的不完全の最大サイズ(例えば長さ、幅、直径)を指す。構造的不完全は周囲の面から延びるので、表面下損傷は、本開示によるレーザ処理による損傷が生じる周囲の面からの最大深さとも見なされ得る。分離された部品の周囲の面は、本明細書においては、分離された部品のエッジまたはエッジ面と称され得る。構造的不完全はクラックまたは隙間であり得、基体または材料から分離される部品の破砕または破壊を促進する機械的脆弱性の点を表し得る。本方法は、表面下損傷のサイズを最小化することにより、分離された部品の構造的一体性および機械的強度を向上させる。表面下損傷は、深さ100μm以下、深さ75μm以下、深さ60μm以下、または深さ50μm以下程度までに限定され得るものであり、切断によって生じるデブリは僅かであり得る。
【0027】
従って、1以上の高エネルギーパルスまたは高エネルギーパルスの1以上のバーストを用いて、透明材料内に顕微鏡的な(即ち、直径が<0.5μm且つ>100nmの)細長い欠陥線(本明細書においては穿孔または損傷進路とも称する)を生成することが可能である。この穿孔は、レーザによって変性された基体材料の領域を表す。このレーザによって生じる変性は、基体材料の構造を破壊し、機械的脆弱性の部位を構成する。構造的破壊は、圧縮、溶融、材料の除去、転位、および結合開裂を含む。穿孔は、基体材料の内部へと延び、レーザの断面形状(一般的に円形)と一致する断面形状を有する。穿孔の平均直径は、0.1μm〜50μmの範囲内、1μm〜20μmの範囲内、2μm〜10μmの範囲内、または0.1μm〜5μmの範囲内であり得る。一部の実施形態では、穿孔は、基体材料の上部から底部まで延びる孔または開いたチャネルである“貫通孔”である。一部の実施形態では、穿孔は連続的に開いたチャネルでなくてもよく、レーザによって基体材料から除去された固体材料の部分を含んでもよい。除去された材料は、穿孔によって画成される空間を塞ぐ、または部分的に塞ぐ。1以上の開いたチャネル(塞がれていない領域)が、除去された材料の部分間に分散され得る。開いたチャネルの直径は、<1000nm、<500nm、<400nm、<300nm、10nm〜750nmの範囲内、または100nm〜500nmの範囲内であり得る。本明細書において開示される実施形態において、孔の周囲の材料の破壊または変性された(例えば、圧縮、溶融、または別様で変化させられた)領域は、<50μm(例えば、<10μm)の直径を有するのが好ましい。
【0028】
個々の穿孔は、数百キロヘルツ(例えば1秒当たり数十万個の穿孔)の速度で生成できる。従って、レーザ源と材料とを相対移動させることにより、複数の穿孔を互いに隣接させて配置できる(空間的分離は所望に応じて1マイクロメートル未満から数マイクロメートルまで様々である)。この空間的分離は、切断を容易にするよう選択される。
【0029】
最初の工程において、サファイア基体、またはサファイア層を有するガラス基体に、基体の厚さを貫通する、またはガラスおよびその上に存在するサファイア層の厚さを貫通する高アスペクト比の線焦点に集光された超短パルスレーザビームが照射される。ガラス基体上にサファイア層が取り付けられている場合には、ガラス基体の厚さは例えば100μm〜1mmになり得、サファイアの厚さは薄いコーティングからより厚い600μmの層までの範囲になり得る。サファイア層の厚さが600μmより大きいと、過剰に脆くなることが予想され得る。超短パルスレーザビームによって生じるこの高エネルギー密度の体積内において、材料が非線形効果によって変性される。非線形効果は、垂直な欠陥線の形成を可能にするために、レーザビームから基体へとエネルギーを転移させる機構を提供する。この高い光学強度が無ければ、非線形吸収はトリガされないことに留意することが重要である。この非線形効果のための強度閾値より低いと、材料はレーザ放射に対して透明であり、その元の状態のままとなる。所望の線または経路にわたってレーザを走査することにより、基体から分離される部品の周囲または形状を定める(複数の垂直な欠陥線で構成された数マイクロメートル幅の)狭い断層線が生成される。
【0030】
高強度のレーザビームによって生じる非線形効果は、透明材料内における多光子吸収(MPA)を含む。MPAは、より低いエネルギー状態(通常は接地状態)からより高いエネルギー状態(励起状態)まで材料を励起するための、同一または異なる周波数の複数の(2以上の)光子の同時吸収である。励起状態は、励起された電子状態または電離された状態であり得る。材料のより高いエネルギー状態とより低いエネルギー状態との間のエネルギー差は、2以上の光子のエネルギーの合計に等しい。MPAは、一般的に線形吸収より数桁弱い非線形のプロセスである。これは、MPAの強度が光強度の二乗またはそれ以上に依存するという点で、線形吸収とは異なり、従って、これを非線形の光学プロセスとしている。普通の光強度においては、MPAは無視できるものである。例えばレーザ源(特にパルスレーザ源)の焦点領域等の、光強度(エネルギー密度)が非常に高い場合には、MPAは感知できるものとなり、光源のエネルギー密度が十分に高い領域内の材料内における測定可能な効果につながる。焦点領域内では、エネルギー密度は電離を生じるのに十分に高いものであり得る。
【0031】
原子レベルでは、個々の原子の電離は個別のエネルギー要件を有する。ガラスで一般的に用いられている幾つかの元素(例えば、Si、Na、K)は、比較的低い電離エネルギー(約5eV)を有する。MPAの現象が生じないと、約5eVで線形電離を生じるには約248nmの波長が必要となる。MPAが生じると、約5eVで、エネルギー的に分離した状態間の電離または励起を248nmより長い波長で達成できる。例えば、532nmの波長を有する光子は、約2.33eVのエネルギーを有するので、例えば532nmの波長の2つの光子は、2光子吸収(TPA)において、約4.66eVで、エネルギー的に分離した状態間の遷移を生じることができる。従って、レーザビームのエネルギー密度が、例えば必要な励起エネルギーの半分を有するレーザ波長の非線形TPAを生じるのに十分に高い材料の領域内において、原子および結合を選択的に励起または電離させることができる。
【0032】
MPAは、励起された原子または結合の局所的な再配置、および隣接する原子または結合からの分離を生じることができる。その結果、結合または構造内に生じる変性は、MPAが生じた材料領域からの物質の非熱的溶発および除去を生じさせることができる。この物質の除去は、材料を機械的に脆弱にして、機械的または熱的応力が加えられた際にクラックまたは破砕を生じやすくする構造的欠陥(例えば、欠陥線、損傷線、または“穿孔”)を生成する。穿孔の配置を制御することにより、それに沿ってクラックが生じる輪郭または経路を正確に定めることができ、材料の正確な微細加工を達成できる。一続きの穿孔によって定められる輪郭は、断層線として見なされ得るものであり、材料内の構造的脆弱性の領域に対応する。一実施形態において、微細加工は、レーザによって処理された材料からの部品の分離を含み、この場合、部品は、レーザによって生じるMPA効果によって形成された複数の穿孔の閉じた輪郭によって決定される正確に定められた形状または周囲を有する。本明細書において用いられる閉じた輪郭という用語は、レーザラインによって形成された穿孔の経路を指し、経路は一部の位置においてはそれ自体と交差している。内部輪郭とは、得られる形状が、材料の外側の部分によって完全に囲まれている場合に形成される経路である。
【0033】
垂直な欠陥を有する断層線が生成されたら、1)断層線上またはその周囲に手作業でまたは機械的に応力を加えることによって(この応力または圧力は、断層線の両側を分離するよう引っ張って、依然として結合している領域を破る張力を生じるべきである)、2)垂直な欠陥線を張力下に置くよう断層線の周囲に応力ゾーンを生じる熱源を用いて、部分的な完全な自己分離を生じさせることによって、分離を行うことができる。いずれの場合にも、分離は、レーザ走査速度、レーザ出力、レンズのパラメータ、パルス幅、繰り返し率等の処理パラメータに依存する。
【0034】
本願は、サファイアまたは他の基体から任意の形状を、デブリが無視できるものとなると共に分離された部品のエッジに対する損傷が最小限となるよう、制御可能に精密に切断および分離するためのレーザ方法および装置を提供する。分離された部品のエッジに対する損傷は、従来技術の切断処理の一般的な特徴であり、分離された部品の脆弱化につながる。本方法は、分離された部品の強度を保持するためにエッジの損傷を回避する。
【0035】
開発されたレーザ方法は、出力の線形レジーム(低レーザ強度)におけるレーザ波長に対する基体材料の透明性に依拠する。透明性は、基体の表面に対する損傷、および集光されたレーザビームによって定められる高強度領域から離れた部分の表面下損傷を低減または防止する。この処理の1つの特徴は、超短パルスレーザによって生成される欠陥線(本明細書においては、穿孔または損傷進路とも称する)の高アスペクト比である。これは、基体材料の上面から底面まで延びる欠陥線の生成を可能にする。欠陥線は、単一のパルスまたはパルスの単一のバーストによって生成でき、所望であれば、影響を受ける領域の範囲(例えば深さおよび幅)を増加させるために、更なるパルスまたはバーストを用いることができる。
【0036】
図1A〜
図1Cに示されているように、このサファイアを切断および分離する方法は、本質的に、超短パルスレーザ140を用いて、基体材料130内に複数の垂直な欠陥線120で形成された断層線110を生成することに基づくものである。材料特性(吸収、CTE、応力、組成等)および材料130を処理するために選択されたレーザパラメータによっては、断層線110の生成のみでも十分に自己分離を生じさせることができる。この場合には、張力/曲げ力、加熱、またはCO
2レーザ等の二次的な分離処理は必要無い。
【0037】
幾つかのケースでは、生成された断層線は、部品を自発的に分離させるのに十分ではなく、二次的な工程が必要になり得る。そのように所望される場合には、それを分離するための熱応力を生成するために、例えば第2のレーザを用いることができる。サファイアの場合には、分離は、断層線の生成の後、機械的な力を加えることによって、または熱応力を生じて部品を基体から分離させるために熱源(例えば赤外線レーザ、例えばCO
2レーザ)を用いることによって、達成できる。別の選択肢は、CO
2レーザには単に分離を開始させ、分離を手作業で完了させることである。必要に応じて用いられるCO
2レーザ分離は、例えば、10.6μmで発光し、デューティサイクルを制御することによって調節された出力を有する、デフォーカスされたcwレーザを用いて達成される。フォーカスの変更(即ち、デフォーカスされた状態から、集光されたスポット径までを含む)を用いて、スポット径を変えることにより、生じる熱応力を変える。デフォーカスされたレーザビームは、ほぼレーザ波長のサイズの回折が制限された最小スポット径より大きいスポット径を生じるレーザビームを含む。例えば、例えば約7mm、2mm、および20mmのデフォーカスされたスポット径が、10.6μmの発光波長を所与として、回折が制限されたスポット径がそれより遙かに小さいCO
2レーザについて用いられ得る。断層線110の方向に沿った隣接する欠陥線120間の距離は、例えば、0.25μm〜50μmの範囲内、0.50μm〜約20μmの範囲内、0.50μm〜約15μmの範囲内、0.50μm〜10μmの範囲内、0.50μm〜3.0μmの範囲内、または3.0μm〜10μmの範囲内であり得る。
【0038】
欠陥線を生成するための幾つかの方法がある。線焦点を形成する光学的方法は、ドーナツ形状のレーザビームと、球面レンズ、アキシコンレンズ、回折要素、または高強度の線形領域を形成するための他の方法とを用いた複数の形態を取り得る。集光領域において、非線形光学効果による基体材料(例えばサファイア、またはサファイア層を有するガラス)の破壊を生じるのに十分な光学強度に到達する限り、レーザのタイプ(ピコ秒、フェムト秒等)および波長(IR、緑色、UV等)も変更され得る。サファイア層は、例えばガラス基体に接着され得る。ガラス基体は、コーニング社のEagleX6(登録商標)等の高性能ガラス、または例えばソーダライムガラス等の安価なガラスを含み得る。
【0039】
本願においては、一貫した制御可能な再現可能な方法で高アスペクト比の垂直な欠陥線を生成するために、超短パルスレーザが用いられる。この垂直な欠陥線の生成を可能にする光学設定の詳細を以下で説明すると共に、これは2013年1月15日に出願された米国特許出願第61/752,489号明細書に記載されており、その内容の全体を参照して、本明細書において完全に述べられているかのごとく、本明細書に組み込む。この概念の本質は、超短(ピコ秒またはフェムト秒の持続時間の)ベッセルビームを用いて、高アスペクト比の領域、即ちテーパの無い微細チャネルを生成するために、光学レンズアセンブリにおいてアキシコンレンズ要素を用いることである。換言すれば、アキシコンは、レーザビームを、基体材料内の円柱形状の高アスペクト比(長い長さおよび小さい直径)の高強度領域内へと集光する。集光されたレーザビームを用いて生じる高い強度により、レーザの電磁場と基体材料との非線形相互作用が生じ、レーザエネルギーが基体へと転移して、断層線の構成要素となる欠陥の形成が行われる。しかし、レーザエネルギー強度が高くない材料の領域(例えば、基体表面、中心の輻輳線を囲む基体の体積)においては、材料はレーザに対して透明であり、レーザから材料へとエネルギーを転移させる機構は存在しないことを理解することが重要である。その結果、レーザ強度が非線形閾値より低い場合には、基体には何も生じない。
【0040】
図2Aおよび
図2Bに移ると、材料にレーザで穴をあける方法は、ビーム伝搬方向に沿って見た場合に、パルスレーザビーム2をレーザビーム焦線2b内に集光することを含む。レーザビーム焦線2bは、幾つかの方法、例えば、照射野の外形が典型的にはガウス関数よりも横方向(即ち伝搬方向)によりゆっくりと減衰する特殊関数によって与えられる、ベッセルビーム、エアリービーム、ウェーバー(Weber)ビーム、およびマシュー(Mathieu)ビーム(即ち、非回折ビーム)で生成できる。
図3Aに示されているように、レーザ3(図示せず)は、光学アセンブリ6に入射する部分2aを有するレーザビーム2を発する。光学アセンブリ6は、入射レーザビームを、ビーム方向(焦線の長さl)に沿った定められた拡張範囲にわたる出力側のレーザビーム焦線2b内に向ける。平面状の基体1は、レーザビーム2のレーザビーム焦線2bに少なくとも部分的に重なるようビーム経路内に配置される。参照符号1aは、光学アセンブリ6またはレーザ側を向いた平面状の基体の表面を示し、参照符号1bは、基体1の反対側の表面を示す。(この実施形態では平面1aおよび1bに対して垂直、即ち、基体平面に対して垂直に測定された)基体または材料の厚さは、dでラベリングされている。
【0041】
図2Aに示されているように、基体1(またはサファイア基体材料を上に有するガラス層)は、ビームの縦軸に対して略垂直に位置合わせされ、従って、光学アセンブリ6によって生じる同焦線2bの後方に位置合わせされる(基体は図面の平面に対して垂直である)。ビーム方向に沿って見ると、基体は、焦線2bに対して、焦線2bが基体の表面1aより前で開始し、基体の表面1bより前で止まるよう、即ち、焦線2bが依然として基体内で終端し、表面1bを越えて延びないよう配置される。このレーザビーム焦線2bが基体1と重なる領域内、即ち、焦線2bによってカバーされる基体材料内では、(長さlの部分、即ち、長さlの線焦点上にレーザビーム2を集光することによって確保される、レーザビーム焦線2bに沿った適切なレーザ強度を想定すると、)レーザビーム焦線2bは、(ビームの縦方向に沿って位置合わせされた)部分2cを生じ、これに沿って基体材料内で誘起吸収が生じる。誘起吸収は、部分2cに沿った基体材料内に欠陥線を形成させる。欠陥線の形成は局所的のみならず、誘起吸収の部分2cの全長にわたって延びる。(レーザビーム焦線2bが基体1と重なる長さに対応する)部分2cの長さは、参照符号Lでラベリングされている。誘起吸収の部分2cの平均直径または範囲(または基体1の材料内の欠陥線の形成を受ける部分)は、参照符号Dでラベリングされている。この平均の範囲Dは、基本的に、レーザビーム焦線2bの約0.1μm〜約5μmの範囲内の平均直径δ、即ち平均スポット径に対応する。
【0042】
図2Aに示されているように、(レーザビーム2の波長λに対して透明な)基体材料は、焦線2b内のレーザビームの高い強度と関連付けられた非線形効果(例えば2光子吸収、多光子吸収)から生じる焦線2bに沿った誘起吸収により、加熱される。
図2Bは、加熱された基体材料が最終的に膨張し、それに対応して生じた、表面1aにおいて最も高い張力を有する張力が、微細クラックの形成につながることを示す。
【0043】
焦線2bを生じるために適用され得る代表的な光学アセンブリ6、および、これらの光学アセンブリが適用され得る代表的な光学系設定を以下に説明する。全てのアセンブリまたは設定は、上記説明に基づくものであり、機能が等しい同一の構成要素または特徴には同一の参照符号が用いられる。従って、以下では違いのみを説明する。
【0044】
それに沿って分離が生じる分離された部品の表面の(破壊強度、幾何学的精密さ、粗さ、および再加工の必要性の回避に関する)高品質を確保するために、分離の線に沿って基体表面に配置された個々の焦線は、以下に述べる光学アセンブリを用いて生成されるべきである(以下、光学アセンブリをレーザ光学系とも称する)。分離された表面(分離された部品の周囲の面)の粗さは、主に焦線のスポットサイズまたはスポット径によって決定される。表面の粗さは、例えば、ASME B46.1標準によって定義されるRa表面粗さパラメータによって特徴づけることができる。ASME B46.1に記載されているように、Raは、評価の長さ以内において記録された、表面外形高さの平均線からのずれの絶対値の算術的な平均である。換言すれば、Raは、表面の個々の特徴(ピークおよびバレー)の1組の高さの絶対値の、平均に対するずれの平均である。
【0045】
例えば、レーザ3の所与の波長λ(基体1の材料との相互作用)の場合において、0.5μm〜2μmの小さいスポット径を達成するには、通常、レーザ光学系6の開口数に対して特定の要件が課される。これらの要件は、以下に説明するレーザ光学系6によって満たされる。必要な開口数を達成するために、光学系は、一方で、公知のアッベ式(N.A.=n sin(θ)(ここで、nは加工される材料の屈折率であり、θは開口角の半分であり、θ=arctan(D
L/2f)であり、D
Lは開口径であり、fは焦点距離である))に従った、所与の焦点距離に必要な開口を設けなければならない。他方で、レーザビームは、光学系を必要な開口部まで照射しなければならず、これは、典型的にはレーザと集光光学系との間で拡大望遠鏡を用いてビームを広げることによって達成される。
【0046】
スポット径は、焦線に沿った均一な相互作用の目的で、過剰に強く変化すべきでない。これは、例えば、ビーム開口、およびそれに従って開口数の割合の変化が僅かになるよう、小さい円形領域のみにおいて集光光学系を照射することによって確実にすることができる(以下の実施形態を参照)。
【0047】
図3Aによれば(レーザ放射2のレーザビーム光束における中心ビームの水準において基体平面に対して垂直な部分、ここではレーザビーム2は(光学アセンブリ6に入る前に)基体平面に垂直に入射し、即ち入射角θは0°であり、焦線2bまたは誘起吸収の部分2cは基体の垂線に対して平行となる)、レーザ3によって発せられたレーザ放射2aは、まず、用いられるレーザ放射に対して完全に不透明な円形の開口部8に向けられる。開口部8はビームの縦軸に対して垂直に配向され、図示されているビーム光束2aの中心ビームに中心合わせされる。開口部8の直径は、ビーム光束2aの中心付近のビーム光束、即ち中心ビーム(ここでは2aZでラベリングされている)が開口部に当たって、開口部によって完全に吸収されるように選択される。ビーム光束2aの外周範囲内のビーム(ここでは2aRでラベリングされている周辺光線)のみは、ビーム直径と比べて小さい開口部サイズに起因して吸収されないが、開口部8を横方向に通過して、光学アセンブリ6の、この実施形態では球面にカットされた両凸レンズ7として設計されている集光光学要素の周辺領域に当たる。
【0048】
レンズ7は中心ビームに中心合わせされ、一般的な球面にカットされたレンズの形態である補正されていない両凸集光レンズとして設計されている。このようなレンズの球面収差は有利であり得る。その代わりに、理想的な焦点を形成せず、定められた長さのはっきりと細長い焦線を形成する、理想的に補正された系から逸脱した非球面レンズ系または多レンズ系(即ち、単一の焦点を持たないレンズまたは系)も用いることができる。従って、レンズのゾーンは、レンズの中心からの距離の影響を受ける焦線2bに沿って集光される。ビーム方向を横断する開口部8の直径は、(ビームの強度がピーク強度の1/e
2まで減少するのに必要な距離によって定められる)ビーム光束の直径の約90%であり、光学アセンブリ6のレンズ7の直径の約75%である。従って、収差補正されていない球面レンズ7の、中心においてビーム光束を遮断することによって生じる焦線2bが用いられる。
図3Aは、1つの平面内の中心ビームを通る部分を示しており、図示されているビームを焦線2b周りに回転されると完全な三次元光束が見られる。
【0049】
図3Aに示されているレンズ7および系によって形成されるこのタイプの焦線の1つの潜在的な短所は、焦線に沿って(従って、材料内の所望の深さに沿って)条件(スポット径、レーザ強度)が変化し得ることであり、従って、所望のタイプの相互作用(溶融を生じず、誘起吸収、クラック形成までの熱可塑性変形)は、焦線の選択された部分のみにおいて生じる可能性がある。これは、ひいては、基体材料によって所望の方法で吸収されるのは入射レーザ光の一部のみである可能性があることを意味する。このようにして、処理の効率(所望の分離速度に必要な平均レーザ出力)が損なわれ得ると共に、レーザ光が望ましくない領域(基体または基体保持具に付着した部分または層)へと伝達されて、それらと望ましくない方法で相互作用(例えば、加熱、拡散、吸収、望ましくない変性)し得る。
【0050】
図3B−1〜
図3B−4は、(
図3Aの光学アセンブリについてだけではなく、他の任意の適用可能な光学アセンブリ6についても)レーザビーム焦線2bの位置は、光学アセンブリ6を基体1に対して適切に配置および/または位置合わせすると共に、光学アセンブリ6のパラメータを適切に選択することによって制御できることを示している。
図3B−1に図示されるように、焦線2bの長さlは、基体の厚さdを超える(ここでは2倍となる)よう調節され得る。基体1が(ビームの縦方向に見て)焦線2bに対して中心合わせして配置される場合には、誘起吸収の部分2cは基体の厚さ全体にわたって生じる。レーザビーム焦線2bは、例えば約0.1mm〜約100mmの範囲内、約0.1mm〜約10mmの範囲内、約0.1mm〜約1mmの範囲内の長さlを有し得る。様々な実施形態は、例えば約0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.7mm、1mm、2mm、3mm、または5mmの長さlを有するよう構成され得る。
【0051】
図3B−2に示されているケースでは、多かれ少なかれ基体の厚さdに対応する長さlの焦線2bが生じる。基体1は線2bに対して、線2bが基体の外側の点で開始するよう配置されるので、誘起吸収の部分2cの長さL(ここでは基体表面から定められた基体深さまで延びているが、反対側の表面1bまでは延びていない)は、焦線2bの長さlより小さい。
図3B−3は、(ビーム方向に沿って見たときに)基体1が焦線2bの開始点より上に配置され、
図3B−2に示されるように、線2bの長さlが基体1内の誘起吸収の部分2cの長さLより大きくなっているケースを示す。従って、焦線は基体内で開始し、反対側の(離れた)表面1bを越えて延びる。
図3B−4は、焦線の長さlが基体の厚さdよりも小さいケースを示しており、入射方向に見たときに基体が焦線に対して中心合わせされて配置されるケースにおいては、焦線は基体内の表面1a付近で開始して、基体内の表面1b付近で終わる(例えばl=0.75・d)。
【0052】
誘起吸収の部分2cが基体の少なくとも一方の表面上で開始するよう、表面1a、1bの少なくとも一方が焦線によってカバーされるように、焦線2bを配置するのが特に有利である。このようにして、表面における溶発、毛羽立ち、および粒子発生を回避しつつ、実質的に理想的な切断を達成することが可能になる。
【0053】
図4は、別の適用可能な光学アセンブリ6を示す。基本的な構成は
図3Aに記載されているものに従うため、以下では違いのみを説明する。図示されている光学アセンブリは、定められた長さlの焦線が形成されるような形状の焦線2b生じるために、非球面の自由表面を有する光学系の使用に基づく。この目的で、光学アセンブリ6の光学要素として非球面が用いられ得る。
図4では、例えば、しばしばアキシコンとも称される、いわゆる円錐プリズムが用いられる。アキシコンは、円錐状にカットされた特殊なレンズであり、光軸に沿った線上にスポット源を構成する(または、レーザビームをリング状に変換する)。そのようなアキシコンのレイアウトは、一般的に当業者に知られており、この例では円錐角は10°である。ここでは参照符号9でラベリングされているアキシコンの頂点は、入射方向に向けられ、ビームの中心と中心合わせされている。アキシコン9によって生じる焦線2bは、その内部で開始するので、基体1(ここではビーム主軸に対して垂直に位置合わせされている)は、ビーム経路上のアキシコン9の直後に配置され得る。
図4に示されているように、アキシコンの光学特性により、基体1を、焦線2bの範囲内に留めつつビーム方向に沿ってシフトさせることも可能である。従って、基体1の材料内の誘起吸収の部分2cは、基体の深さd全体にわたって延びる。
【0054】
しかし、図示されているレイアウトは以下の制約を受ける。アキシコン9によって形成される焦線2bの領域はアキシコン9内で開始するので、アキシコン9と基体材料とが離間されている状況では、レーザエネルギーのかなりの部分が、材料の内部に位置する焦線2bの誘起吸収の部分2cに集光されない。更に、焦線2bの長さlは、アキシコン9の複数の屈折率および円錐角を通るビーム直径に関係する。これが、比較的薄い材料(数ミリメートル)の場合には、合計の焦線が基体の厚さよりも遙かに長く、レーザエネルギーの大半が材料内に集光されないという効果を有する理由である。
【0055】
この理由から、アキシコンおよび集光レンズの両方を有する光学アセンブリ6を用いるのが望ましい場合がある。
図5Aはそのような光学アセンブリ6を示しており、(ビーム方向に沿って見たときに、)レーザビーム焦線2bを形成するよう設計された非球面の自由な表面を有する第1の光学要素が、レーザ3のビーム経路上に配置されている。
図5Aに示されているケースでは、この第1の光学要素は、5°の円錐角を有するアキシコン10であり、ビーム方向に対して垂直に配置され、レーザビーム3に中心合わせされている。アキシコンの頂点はビーム方向に向けて配向されている。ここでは平凸レンズ11である第2の集光光学要素(その曲率はアキシコンに向けて配向されている)が、ビーム方向にアキシコン10から距離z1に配置されている。このケースでは約300mmである距離Z1は、アキシコン10によって形成されるレーザ放射が、レンズ11の半径方向外側部分に円形に入射するように選択される。レンズ11は、この円形放射を、出力側の距離Z2(このケースではレンズ11から約20mm)にある定められ長さ(このケースでは1.5mm)の焦線2b上に集光する。この実施形態では、レンズ11の実効焦点距離は25mmである。アキシコン10によるレーザビームの円形変形は、参照符号SRでラベリングされている。
【0056】
図5Bは、
図5Aに従った基体1の材料内における焦線2bまたは誘起吸収2cの形成を詳細に示す。両方の要素10、11の光学特性およびそれらの配置は、ビーム方向における焦線の2b長さlが、基体1の厚さdと正確に同一となるよう選択される。その結果、
図5Bに示されているように、基体1の2つの表面1aおよび1b間に焦線2bを正確に配置するために、基体1のビーム方向に沿った正確な配置が必要となる。
【0057】
従って、焦線がレーザ光学系から特定の距離に形成され、レーザ放射のより大きい部分が焦線の所望の端部まで集光されれば、有利である。上述のように、これは、主たる集光要素11(レンズ)を特定の半径方向外側領域にわたって円形に(環状に)のみ照射することによって達成でき、これは、一方では、必要な開口数、およびそれに従って必要なスポット径を実現するよう働き、他方では、しかし、スポットの中心における非常に短い距離にわたる必要な焦線2bが基本的に円形のスポットとして形成された後には、拡散の円の強度が弱まる。このようにして、欠陥線の形成は、必要な基体深さ内の短い距離以内で止まる。アキシコン10と集光レンズ11との組合せはこの要件を満たすものである。アキシコンには、2つの異なる作用がある。即ち、アキシコン10により、通常は丸いレーザスポットがリングの形状で集光レンズ11に送られ、アキシコン10の非球面性により、レンズの焦点面内の焦点ではなく、焦点面を越えた焦線が形成されるという効果を有する。焦線2bの長さlは、アキシコン上のビーム直径によって調節できる。他方、焦線に沿った開口数は、距離Z1(アキシコン−レンズ間の離間)およびアキシコンの円錐角によって調節できる。このようにして、全レーザエネルギーを焦線に集中させることができる。
【0058】
欠陥線の形成が、基体の裏側まで連続することが意図される場合には、円形(環状)の照射は依然として、(1)大半のレーザ光が焦線の必要な長さに集中されたままになるという意味で、レーザ出力が最適に用いられる、および、(2)他の光学関数を用いて設定された所望の収差と併せて、円形に照射されたゾーンにより、焦線に沿って均一スポット径を達成することが可能になり、従って、基体からの部品の焦線に沿った均一な分離が可能になるという長所を有する。
【0059】
図5Aに示されている平凸レンズの代わりに、集光メニスカスレンズ、または他のより高度に補正された集光レンズ(非球面、多レンズ系)を用いることも可能である。
【0060】
図5Aに示されているアキシコンとレンズとの組合せを用いて非常に短い焦線2bを生じるために、アキシコンに入射するレーザビームの非常に小さいビーム径を選択することが必要となる。これは、アキシコンの頂点に対するビームの中心合わせを非常に正確に行わなければならず、その結果はレーザの方向的なばらつきの影響を非常に受けやすい(ビームドリフト安定性)という、実用上の短所を有する。更に、厳密にコリメートされたレーザビームは非常に発散する、即ち、光の偏向に起因して、ビーム光束が短い距離でぼやける。
【0061】
図6に示されているように、光学アセンブリ6に別のレンズ、即ちコリメートレンズ12を含むことにより、両方の影響を回避することができる。この更なる正レンズ12は、集光レンズ11の円形照射を非常に厳密に調節する役割をする。コリメートレンズ12の焦点距離f’は、f’と等しいアキシコンからコリメートレンズ12までの距離Z1aによって、所望の円の直径drが生じるよう選択される。リングの所望の幅brは、(コリメートレンズ12から集光レンズ11までの)距離Z1bによって調節できる。純粋な幾何学の問題として、円形照射幅が小さいと、焦線は短くなる。最小値は、距離f’において達成され得る。
【0062】
従って、
図6に示されている光学アセンブリ6は、
図5Aに示されているものに基づくものであり、以下では違いのみを説明する。ここでは(ビーム方向に向いた曲率を有する)平凸レンズとしても設計されるコリメートレンズ12が、一方の側の(頂点をビーム方向に向けた)アキシコン10と他方の側の平凸レンズ11との間のビーム経路に中心合わせして、更に配置される。アキシコン10からコリメートレンズ12までの距離は参照符号Z1aで示されており、コリメートレンズ12から集光レンズ11までの距離はZ1bで示されており、集光レンズ11から焦線2bまでの距離はZ2で示されている(常にビーム方向に見た場合)。
図6に示されているように、アキシコン10によって形成される、コリメートレンズ12に円の直径drで発散して入射する円形放射SRは、集光レンズ11において少なくともほぼ一定の円の直径drとするために、距離Z1bに沿って必要な円の線幅brに合わせて調節される。図示されているケースでは、レンズ12における約4mmの円の線幅br(この例では円の直径drは22mm)が、レンズ12の集光特性によって、レンズ11において約0.5mmまで縮小されるよう、非常に短い焦線2bが生じることが意図される。
【0063】
図示されている例では、2mmの典型的なレーザビーム直径、焦点距離f=25mmを有する集光レンズ11、焦点距離f’=150mmを有するコリメートレンズを用い、距離Z1a=Z1b=140mmおよびZ2=15mmを選択することによって、0.5mm未満の焦線の長さlを達成することが可能である。
【0064】
図7A〜
図7Cは、異なるレーザ強度レジームにおけるレーザと物質との相互作用を示す。
図7Aに示されている第1のケースでは、非集光レーザビーム710は、透明基体720に何も変性を生じることなく透明基体720を通過する。この特定のケースでは、レーザエネルギー密度(またはビームによって照射される単位面積当たりのレーザエネルギー)が非線形効果を生じるのに必要な閾値よりも低いので、非線形効果は存在しない。エネルギー密度が高いほど、電磁場の強度が高くなる。従って、
図7Bに示されているように、レーザビームが球面レンズ730によってより小さいスポット径に集光される場合には、
図7Bに示されているように、照射される領域が縮小されてエネルギー密度が増加し、材料を変性させる非線形効果がトリガされて、条件が満たされた体積内のみにおいて断層線の形成が可能になる。このようにして、集光されたレーザのビームウエストが基体の表面に位置する場合には、表面の変性が生じる。それとは対照的に、集光されたレーザのビームウエストが基体の表面より下に位置する場合には、エネルギー密度が非線形光学効果の閾値より低いと、表面においては何も起こらない。しかし、基体720のバルク内に位置する焦点740においては、レーザ強度は多光子非線形効果をトリガするのに十分高く、従って、材料に対する損傷を生じる。最後に、
図7Cに示されているように、アキシコンのケースでは、
図7Cに示されているように、アキシコンレンズ750或いはフレネルアキシコンの回折パターンは、ベッセル形状の強度分布(高強度の円柱760)を生じる干渉を生じ、その体積内のみにおいて、強度が材料720に対する非線形吸収および変性を生じるのに十分高くなる。
【0065】
レーザおよび光学系
サファイアの切断の目的で、1064nmのピコ秒レーザを線焦点ビーム形成光学系と組み合わせて用いて、基体内に欠陥線を生成する処理を開発した。0.55mmの厚さを有するサファイア基体を、上記の光学系によって生じる焦線の領域内になるよう配置した。約1mmの長さを有する焦線、および材料において測定された約24W以上の出力(パルスモードにおいて約120μJ/パルス、またはバーストモードにおいて約120μJ/バースト)を200kHzの繰り返し率で生じるピコ秒レーザを用いて、焦線領域における光学強度を、容易に、サファイアまたはサファイア含有基体材料内で非線形吸収を生じるのに十分高くすることができる。高強度の線形領域にほぼ従うサファイア基体内の損傷、溶発、蒸発、または別様で変性された材料の領域が生成された。
【0066】
超短(数十ピコ秒台またはより短いパルス持続時間)レーザを、パルスモードまたはバーストモードで動作させることができる。パルスモードでは、一続きのノミナルで同一の単一のパルスがレーザから発せられて、基体に向けられる。パルスモードでは、レーザの繰り返し率は、パルス間の時間間隔によって決定される。バーストモードでは、レーザからパルスのバーストが発せられ、各バーストは(等しいまたは異なる振幅の)2以上のパルスを含む。バーストモードでは、1つのバースト内のパルスは、(そのバーストのパルス繰り返し率を定める)第1の時間間隔だけ分離され、複数のバーストは、(バースト繰り返し率を定める)第2の時間間隔だけ分離され、第2の時間間隔は、典型的には、第1の時間間隔よりも遥かに長い。本明細書において(パルスモードまたはバーストモードのいずれの文脈においても)用いられる時間間隔とは、パルスまたはバーストの対応する部分間(例えば前縁間、ピーク間、または後縁間)の時間差を指す。パルス繰り返し率およびバースト繰り返し率は、レーザの設計によって制御され、典型的には、限度内において、レーザの動作条件を調節することによって調節できる。典型的なパルス繰り返し率およびバースト繰り返し率は、kHz〜MHzの範囲内である。(パルスモードにおける、またはバーストモードにおける1つのバースト内のパルスの)レーザパルス持続時間は、10
−10秒以下、10
−11秒以下、10
−12秒以下、または10
−13秒以下であり得る。本明細書に記載される例示的な実施形態では、レーザパルス持続時間は10
−15より大きい。
【0067】
より具体的には、
図8Aに示されているように、本明細書に記載される選択された実施形態によれば、ピコ秒レーザは、パルス500Aの「バースト」500(「バーストパルス」とも称する)を生じる。バーストは、パルスの発光が均一且つ安定した流れではなく、パルスの密集したクラスタである、1つのタイプのレーザ動作である。各「バースト」500は、100ピコ秒まで(例えば、0.1ピコ秒、5ピコ秒、10ピコ秒、15ピコ秒、18ピコ秒、20ピコ秒、22ピコ秒、25ピコ秒、30ピコ秒、50ピコ秒、75ピコ秒、またはそれらの間)の非常に短い持続時間T
dの複数のパルス500A(例えば2つのパルス、3つのパルス、4つのパルス、5つのパルス、10個、15個、20個、またはそれ以上)を含み得る。パルス持続時間は、一般的に、約1ピコ秒〜約1000ピコ秒の範囲内、約1ピコ秒〜約100ピコ秒の範囲内、約2ピコ秒〜約50ピコ秒の範囲内、または約5ピコ秒〜約20ピコ秒の範囲内である。単一のバースト500内のこれらの個々のパルス500Aは、それらが複数のパルスの単一のバースト内で生じるという事実を単に示した「サブパルス」とも称され得る。バースト内の各レーザパルス500Aのエネルギーまたは強度は、バースト内の他のパルスと等しくなくてもよく、バースト500内の複数のパルスの強度分布は、レーザ設計によって支配される時間における指数関数的減衰に従い得る。好ましくは、本明細書に記載される例示的な実施形態のバースト500内の各パルス500Aは、バースト内の後続のパルスから時間において1ナノ秒〜50ナノ秒(例えば10〜50ナノ秒、10〜40ナノ秒、または10〜30ナノ秒であり、時間はレーザキャビティの設計によってしばしば支配される)の持続時間T
pだけ分離される。所与のレーザについて、バースト500内の各パルス間の時間の分離T
p(パルスとパルスとの間の分離)は比較的均一(±10%)である。例えば、一部の実施形態では、各パルスは、後続のパルスから約20ナノ秒だけ時間的に分離される(50MHzのパルス繰り返し周波数)。例えば、約20ナノ秒のパルス間分離T
pを生じるレーザでは、バースト内のパルス間分離T
pは約±10%以内に維持される、または約±2ナノ秒である。各「バースト」間の時間(即ち、バースト間の時間的分離T
b)は、それより遥かに長くなる(例えば0.25≦Tb≦1000マイクロ秒、例えば1〜10マイクロ秒、または3〜8マイクロ秒)。例えば、本明細書に記載されるレーザの例示的な一部の実施形態では、約200kHzのレーザ繰り返し率または周波数に対して、5マイクロ秒前後である。レーザ繰り返し率は、本明細書においてはバースト繰り返し周波数またはバースト繰り返し率とも称され、バースト内の最初のパルスと後続のバースト内の最初のパルスとの間の時間として定められる。他の実施形態では、バースト繰り返し周波数は、約1kHz〜約4MHzの範囲内、約1kHz〜約2MHzの範囲内、約1kHz〜約650kHzの範囲内、または約10kHz〜約650kHzの範囲内である。各バースト内の最初のパルスと後続のバースト内の最初のパルスとの間の時間T
bは、0.25マイクロ秒(4MHzのバースト繰り返し率)〜1000マイクロ秒(1kHzのバースト繰り返し率)、例えば0.5マイクロ秒(2MHzのバースト繰り返し率)〜40マイクロ秒(25kHzのバースト繰り返し率)、または2マイクロ秒(500kHzのバースト繰り返し率)〜20マイクロ秒(50kHzのバースト繰り返し率)であり得る。正確なタイミング、パルス持続時間、および繰り返し率は、レーザ設計およびユーザが制御可能な動作パラメータに応じて変わり得る。高い強度の短いパルス(T
d<20ピコ秒、および好ましくはT
d≦15ピコ秒)が良好に働くことが示されている。
【0068】
材料を変性するのに必要なエネルギーは、バーストエネルギー、即ち(各バースト500が一続きのパルス500Aを含む)1つのバースト内に含まれるエネルギーに関して、または(その多くがバーストを構成し得る)単一のレーザパルスに含まれるエネルギーに関して説明できる。これらの用途では、(切断される材料の1ミリメートル当たりの)エネルギー/バーストは、10〜2500μJ、20〜1500μJ、25〜750μJ、40〜2500μJ、100〜1500μJ、200〜1250μJ、250〜1500μJ、または250〜750μJであり得る。バースト内の個々のパルスのエネルギーはそれより低く、
図8Aに示されているように、正確な個々のレーザパルスエネルギーは、バースト500内のパルス500Aの数およびレーザパルスの経時的な減衰率(例えば、指数関数的減衰率)に応じで異なる。例えば、一定のエネルギー/バーストについて、1つのパルスバーストが10個のレーザパルス500Aを含む場合、各レーザパルス500Aは、2個のレーザパルスのみを有する同じバーストパルス500の場合よりも低いエネルギーを含む。
【0069】
そのようなパルスバーストを発生するレーザの使用は、透明材料(例えばガラス)を切断または変性するのに有利である。単一パルスレーザの繰り返し率によって時間的に離間された単一のパルスの使用とは対照的に、バースト500内の高速パルスシーケンスにわたってレーザエネルギーを広げるバーストパルスシーケンスの使用は、単一パルスレーザで可能なものよりも大きな時間スケールでの材料との高強度の相互作用を利用することを可能にする。エネルギー保存の法則から、単一パルスを時間的に延ばすことも可能であるが、パルス内の強度はパルス幅に対しておよそ1桁低下せざるを得ない。よって、10ピコ秒の単一パルスが10ナノ秒のパルスまで延ばされると、強度はおよそ3桁低下する。そのような低下は、光学強度を、非線形吸収がもはや有意でない点まで下げ、光と材料との相互作用はもはや切断を可能にするのに十分に強いものではなくなる。これとは対照的に、バーストパルスレーザでは、バースト500内の各パルスまたはサブパルス500Aの持続時間における強度は非常に高いままとすることができ、例えば、約10ナノ秒の分離T
pによって時間的に離間された10ピコ秒のパルス持続時間T
dを有する3つのパルス500Aでも、依然として、10ピコ秒の単一パルスより約3倍高い各パルス内の強度を可能にし、レーザは3桁大きい時間スケールにわたって材料と相互作用することができる。従って、このバースト内の複数のパルス500Aの調節は、既存のプラズマプルームとのより大きいまたは小さい光の相互作用、最初または以前のレーザパルスによって既に励起されている原子および分子を有する材料とのより大きいまたは小さい光の相互作用、並びに、材料内の欠陥線(穿孔)の制御された成長を促進し得るより大きいまたは小さい加熱効果を容易にし得るように、レーザと材料との相互作用の時間スケールを操作することを可能にする。材料を変性するのに必要なバーストエネルギーの量は、基体材料の組成、および基体と相互作用するために用いられる線焦点の長さに依存する。相互作用領域が長いほど、エネルギーがより大きく広がり、より高いバーストエネルギーが必要となる。
【0070】
単一のパルスバーストがガラス上の実質的に同じ位置に当たると、材料内に欠陥線または孔が形成される。即ち、単一のバースト内の複数のレーザパルスは、ガラス内に単一の欠陥線または孔の位置を生じ得る。当然ながら、(例えば、一定速度で移動する台によって)ガラスが平行移動される場合、またはビームがガラスに対して相対移動される場合には、バースト内の個々のパルスは、ガラス上の正確な同じ空間的位置にあることはできない。しかし、それらは互いに1μm以内にあり、即ち、実質的に同じ位置においてガラスに当たる。例えば、パルスは、互いから0<sp≦500nmの間隔spでガラスに当たり得る。例えば、ガラスの或る位置に20個のパルスのバーストが当たると、バースト内の個々のパルスは互いから250nm以内でガラスに当たる。従って、一部の実施形態では1nm<sp<250nmである。一部の実施形態では1nm<sp<100nmである。
【0071】
穿孔形成
基体が十分な応力を有する場合(例えばイオン交換ガラスを用いた場合)には、部品は、レーザ処理によってトレースされた断層線に沿って自発的に基体から分離する。しかし、基体に内在する応力が多くない場合は、ピコ秒レーザは基体内に単に欠陥線を形成する。これらの欠陥線は、一般的に、約0.5〜1.5μmの範囲内の内部寸法(直径)を有する孔の形態をとる。
【0072】
各孔または欠陥線は、材料の全厚さを貫通してもまたはしなくてもよく、材料の深さにわたって連続した開口であってもまたはなくてもよい。
図8Bは、550μm厚のサファイア基体の全厚さを延びる欠陥線の例を示す。これらの欠陥線は、劈開されたエッジの側から観察されたものである。材料を通る欠陥線は必ずしも貫通孔でなくてもよく、孔を塞ぐ材料の領域が存在してもよいが、それらは一般的にマイクロメートル台の小さいサイズである。なお、部品を分離する際に、欠陥線に沿って破砕が生じ、周囲の面(エッジ)に欠陥線に由来する特徴を有する部品が設けられる。分離前は、これらの欠陥線は一般的に円柱形状である。部品が分離されると、欠陥線は破砕し、欠陥線の残部が、分離された部品の周囲の面の輪郭に現れる。理想的なモデルにおいては、欠陥線は分離の際に半分に劈開され、分離された部品の周囲の面は半円柱形に対応する鋸歯状部を含む。実際には、分離は理想的なモデルから逸脱し得るものであり、周囲の面の鋸歯状部は、元の欠陥線の形状の任意の断片であり得る。特定の形状に関わらず、周囲の面の特徴は、それらの存在の由来を示すために欠陥線として参照される。
【0073】
図9は、同じ基体から切り出された6mmおよび10mmの直径を有する小さな円板の例を示す。一部の円板は機械的に分離されたものであり、一部はCO
2レーザを用いて分離されたものであり、一部はCO
2レーザおよび基体からの機械的な切り離しを用いて分離されたものである。
【0074】
上述のように、スタックされたシート材料に穿孔することも可能である。このケースでは、焦線長さはスタック高さより長い必要がある。
【0075】
孔(穿孔、欠陥線)間の横方向の間隔(ピッチ)は、集光されたレーザビームの下で基体が平行移動される際のレーザのパルス速度によって決定される。通常は、1つの孔全体を形成するのに単一のピコ秒レーザパルスまたはバーストが必要であるが、所望であれば複数のパルスまたはバーストを用いてもよい。複数の孔を異なるピッチで形成するには、レーザはより長いまたはより短い間隔で発射するようトリガされ得る。切断動作のために、レーザのトリガは、レーザパルスが一定の間隔(例えば1μm毎、または5μm毎等)でトリガされるように、ビームの下で台によって駆動される基体の動きと同期されるのが一般的である。隣接する穿孔間の正確な間隔は、基体内の応力レベルを所与として、穿孔された孔間のクラックの伝搬を容易にする材料特性によって決定される。しかし、基体の切断ではなく、材料に穿孔するためだけに同じ方法を用いることも可能である。本明細書に記載される方法では、孔はより大きい間隔(例えば7μm以上のピッチ)で分離されてもよい。
【0076】
レーザ出力およびレンズの焦点距離(これは焦線長さを決定し、従ってパワー密度を決定する)は、基体の完全な貫通並びに低い表面損傷および表面下損傷を確実にするために特に重要なパラメータである。
【0077】
一般的に、利用可能なレーザ出力が高いほど、上述の処理で材料をより速く切断できる。本明細書において開示される処理は、ガラスを0.25m/秒またはそれ以上の切断速度で切断できる。切断速度(または切断する速度)は、レーザビームが複数の欠陥線の孔を生じつつ基体材料(例えばガラス)の表面に対して相対移動する速度である。製造のための設備投資を最小限にするために、および設備の稼働率を最適化するために、例えば400mm/秒、500mm/秒、750mm/秒、1m/秒、1.2m/秒、1.5m/秒、2m/秒、または3.4m/秒〜4m/秒等の高い切断速度がしばしば所望される。レーザ出力は、レーザのバーストエネルギー×バースト繰り返し周波数(率)に等しい。一般的に、ガラス材料を高い切断速度で切断するために、欠陥線は典型的には1〜25μm離間され、一部の実施形態では、この間隔は好ましくは3μm以上(例えば3〜12μm、または例えば5〜10μm)である。
【0078】
例えば、300mm/秒の直線切断速度を達成するために、3μmの孔のピッチは、少なくとも100kHzのバースト繰り返し率を有するパルスバーストレーザに対応する。600mm/秒の切断速度については、3μmのピッチは、少なくとも200kHzのバースト繰り返し率を有するバーストパルスレーザに対応する。200kHzで少なくとも40μJ/バーストを生じ、600mm/秒の切断速度で切断するパルスバーストレーザは、少なくとも8ワットのレーザ出力を有する必要がある。従って、より高い切断速度は、より高いレーザ出力を必要とする。
【0079】
例えば、3μmのピッチおよび40μJ/バーストでの0.4m/秒の切断速度は、少なくとも5Wのレーザを必要とし、3μmピッチおよび40μJ/バーストでの0.5m/秒の切断速度は、少なくとも6Wのレーザを必要とする。従って、パルスバーストピコ秒レーザのレーザ出力は6W以上であるのが好ましく、少なくとも8W以上であるのがより好ましく、少なくとも10W以上であるのが更に好ましい。例えば4μmピッチ(欠陥線間隔、または損傷進路間隔)および100μJ/バーストで0.4m/秒の切断速度を達成するには、少なくとも10Wのレーザが必要となり、4μmのピッチおよび100μJ/バーストで0.5m/秒の切断速度を達成するには、少なくとも12Wのレーザが必要となる。例えば、3μmのピッチおよび40μJ/バーストで1m/秒の切断速度を達成するには、少なくとも13Wのレーザが必要となる。また、例えば、4μmのピッチおよび400μJ/バーストでの1m/秒の切断速度は、少なくとも100Wのレーザを必要とする。
【0080】
欠陥線(損傷進路)間の最適なピッチおよび正確なバーストエネルギーは、材料に依存し、経験的に決定され得る。しかし、レーザパルスエネルギーを上げる、または損傷進路をより近いピッチにすることは、必ずしも、基体材料がより良好に分離されるまたは改善されたエッジ品質を有する条件ではないことに留意すべきである。欠陥線(損傷進路)間のピッチが小さ過ぎると(例えば<0.1マイクロメートル、一部の例示的な実施形態では<1μm、または他の実施形態では<2μm)、隣接した後続の欠陥線(損傷進路)の形成を阻害することがあり、穿孔された輪郭の周囲の材料の分離をしばしば阻害し得る。また、ピッチが小さ過ぎると、ガラス内における望ましくない微小クラックの増加が生じ得る。ピッチが長過ぎると(例えば>50μm、および一部のガラスでは>25μmまたは>20μm)、「制御されていない微小クラック」を生じ得る。即ち、微小クラックが、意図される輪郭に沿って欠陥線から欠陥線へと伝搬せず、異なる経路に沿って伝搬し、ガラスに、意図される輪郭から離れた異なる(望ましくない)方向へのクラックを生じさせる。これは、残った微小クラックがガラスを脆弱化する傷を構成するので、最終的に、分離された部品の強度を低下させ得る。欠陥線を形成するためのバーストエネルギーが高過ぎると(例えば、>2500μJ/バースト、および一部の実施形態では>500μJ/バースト)、以前に形成された欠陥線の「ヒーリング」または再溶融が生じて、ガラスの分離を阻害し得る。従って、バーストエネルギーは<2500μJ/バースト、例えば、≦500μJ/バーストであるのが好ましい。また、高過ぎるバーストエネルギーを用いると、非常に大きな微小クラックの形成を生じて、分離後の部品のエッジ強度を低下させ得る構造的不完全を生じ得る。バーストエネルギーが低過ぎると(例えば<40μJ/バースト)、ガラス内に感知可能な欠陥線が形成されないことがあり得、よって、特に高い分離力が必要となり得るか、または、穿孔された輪郭に沿った分離が全くできなくなり得る。
【0081】
この処理によって可能になる典型的な例示的な切断速度は、例えば、0.25m/秒以上である。一部の実施形態では、切断速度は少なくとも300mm/秒である。一部の実施形態では、切断速度は少なくとも400mm/秒(例えば、500mm/秒〜2000mm/秒、またはそれ以上)である。一部の実施形態では、ピコ秒(ps)レーザは、パルスバーストを用いて、0.5μm〜13μm(例えば0.5〜3μm)の周期性を有する欠陥線を生じる。一部の実施形態では、パルスレーザは10W〜100Wのレーザ出力を有し、材料および/またはレーザビームは少なくとも0.25m/秒の速度で(例えば、0.25m/秒〜0.35m/秒、または0.4m/秒〜5m/秒の速度で)互いに相対的に平行移動される。好ましくは、パルスレーザビームの各パルスバーストは、被加工物において測定される、被加工物の厚さの1ミリメートル当たり40μJ/バーストより大きい平均レーザエネルギーを有する。好ましくは、パルスレーザビームの各パルスバーストは、被加工物において測定される、被加工物の厚さの1ミリメートル当たり2500μJ/バースト未満、好ましくは被加工物の厚さの1ミリメートル当たり約2000μJ/バースト未満、および一部の実施形態では被加工物の厚さの1ミリメートル当たり1500μJ/バースト未満(例えば、被加工物の厚さの1ミリメートル当たり500μJ/バーストを超えない)平均レーザエネルギーを有する。
【0082】
本発明者らは、アルカリ含量の低いまたはアルカリを含まないアルカリ土類ボロアルミノシリケートガラスを穿孔するには、遙かに高い(5〜10倍高い)体積パルスエネルギー密度(μJ/μm
3)が必要であることを見出した。これは、例えば、少なくとも2パルス/バーストを有するパルスバーストレーザを用いて、(低アルカリまたは無アルカリの)アルカリ土類ボロアルミノシリケートガラス内における約0.05μJ/μm
3以上(例えば、少なくとも0.1μJ/μm
3、例えば0.1〜0.5μJ/μm
3)の体積エネルギー密度を提供することによって達成できる。
【0083】
従って、レーザは少なくとも2パルス/バーストのパルスバーストを発生することが好ましい。例えば、一部の実施形態では、パルスレーザは10W〜150W(例えば、10W〜100W)の出力を有し、少なくとも2パルス/バースト(例えば、2〜25パルス/バースト)のパルスバーストを発生する。一部の実施形態では、パルスレーザは25W〜60Wの出力を有し、少なくとも2〜25パルス/バーストのパルスバーストを発生し、レーザバーストによって生じる隣接する欠陥線間の周期性または距離は2〜10μmである。一部の実施形態では、パルスレーザは10W〜100Wの出力を有し、少なくとも2パルス/バーストのパルスバーストを発生し、被加工物とレーザビームとは少なくとも0.25m/秒の速度で互いに相対的に平行移動される。一部の実施形態では、被加工物および/またはレーザビームは、少なくとも0.4m/秒の速度で互いに相対的に平行移動される。
【0084】
例えば、0.7mm厚のイオン交換されていないコーニング社の製品コード2319または製品コード2320のGorilla(登録商標)ガラスを切断するには、3〜7μmのピッチで、約150〜250μJ/バーストのパルスバーストエネルギー、および2〜15の範囲のバーストパルス数、好ましくは3〜5μmのピッチおよび2〜5のバーストパルス数(パルス数/バースト)で、が良好に作用できることが観察される。
【0085】
1m/秒の切断速度では、EagleXG(登録商標)ガラスの切断は、典型的には15〜84Wのレーザ出力の使用を必要とし、しばしば30〜45Wが十分である。一般的に、様々なガラスおよび他の透明材料にわたって、出願人は、0.2〜1m/秒の切断速度を達成するには10W〜100Wのレーザ出力が好ましく、多くのガラスには25〜60Wのレーザ出力が十分(または最適)であることを見出した。0.4m/秒〜5m/秒の切断速度では、40〜750μJ/バーストのバーストエネルギー、2〜25パルス/バースト(切断される材料に依存する)、および3〜15μmまたは3〜10μmの欠陥線分離(ピッチ)で、レーザ出力は好ましくは10W〜150Wであるべきである。これらの切断速度には、ピコ秒パルスバーストレーザの使用が、高い出力および必要なパルス数/バーストを生じるので好ましい。従って、一部の例示的な実施形態によれば、パルスレーザは、10W〜100W(例えば25W〜60W)の出力を生じ、少なくとも2〜25パルス/バーストのパルスバーストを生じ、欠陥線間の距離は2〜15μmであり、レーザビームおよび/または被加工物は、少なくとも0.25m/秒の速度、一部の実施形態では少なくとも0.4m/秒(例えば0.5m/秒〜5m/秒、またはそれ以上)の速度で互いに相対的に平行移動される。
【0086】
板からの形状の切断および分離
図9に示されているように、サファイア基体からのサファイア部品の分離を可能にする複数の異なる条件が見出された。第1の方法は、ピコ秒レーザのみを用いて、貫通孔を生じ、所望の形状(このケースでは6mmおよび10mmの直径を有する円)に沿った断層線を形成する。この工程の後、機械的分離は、折り取りプライヤ、手作業で部品を曲げること、または断層線に沿った分離を開始および伝搬させる張力を生じる任意の方法を用いることによって達成できる。550μm厚のサファイアに複数の貫通孔を生成して、板から円板を機械的に分離するために、以下の光学系およびレーザパラメータについて、良好な結果が見出された。
・アキシコンレンズに対する入射ビーム径:約2mm
・アキシコン角度=10度
・最初のコリメートレンズ焦点距離=125mm
・最終の対物レンズ焦点距離=30mm
・入射ビーム輻輳角(β)=12.75度
・焦点をZ=0.75mmに設定(部品の上面より約200μm上)
・レーザ出力:約24ワット(全出力の60%)
・レーザのバースト繰り返し率=200kHz
・エネルギー/バースト=120μJ(24W/200kHz)
・4パルス/バースト
・1回の通過
第2の方法は、所望の輪郭のトレーシングを完了したピコ秒レーザに続き、周囲の基体マトリクスから部品を完全に分離するために、デフォーカスされたCO
2レーザを用いるものである。デフォーカスされたCO
2レーザによって生じる熱応力は、所望の輪郭に沿った分離を開始および伝搬させて、それをパネルから切り離すのに十分である。このケースでは、以下の光学系およびレーザパラメータについて良好な結果が見出された。
・
ピコ秒レーザ:
・アキシコンレンズに対する入射ビーム径:約2mm
・アキシコン角=10度
・最初のコリメートレンズ焦点距離=125mm
・最終の対物レンズ焦点距離=30mm
・入射ビーム輻輳角(β)=12.75度
・焦点をZ=0.75mmに設定(部品の上面より約200μm上)
・レーザ出力:約24ワット(全出力の60%)
・レーザのバースト繰り返し率=200kHz
・エネルギー/バースト=120μJ(24W/200kHz)4パルス/バースト
・10mmの直径については1回の通過、6mm直径の直径については2回の通過
・
CO2レーザ:
・レーザ平行移動速度:250mm/秒
・レーザ出力=200W
・パルス持続時間:45μ秒(95%のデューティサイクル)
・レーザ変調周波数:20kHz
・(ガラスの入射面に対する)レーザビームのデフォーカスは20mm
・10mmの直径については1回の通過、6mm直径の直径については2回の通過
最後に、調査した最後の条件は、上記の2つの方法の混合であり、所望の輪郭のトレーシングを完了したピコ秒レーザに続き、部品を周囲の基体マトリクスから部分的に分離するために、デフォーカスされたCO
2レーザを用いる。CO
2レーザによって生じる熱応力は、所望の輪郭に沿った分離を開始および部分的に伝搬させるのに十分であるが、それを周囲の基体マトリクスから切り離すには十分ではない。場合によっては、処理の便宜上または効率上、部品の切り離しを後工程まで遅らせることが望ましい。このケースでは、上記と同じピコ秒レーザ条件、並びに、求める分離の程度に応じたより低いCO
2レーザ出力またはCO
2レーザビームのより高いデフォーカス(約25mmより大きい)およびより高い平行移動速度について、最良の結果が見出された。
【0087】
図10Aおよび
図10Bは、それぞれ、ピコ秒レーザによってトレースされ、ボタンを切り離すためにCO
2レーザに露出された、例示的な穿孔を示す。CO
2レーザはデフォーカスされたCO
2レーザであってもよく、基体の遠位(または近位)エッジから基体の近位(遠位)エッジまで横断し得る。デフォーカスされたCO
2レーザによる切り離し線の導入およびトレースされた経路は、例えば以下の問題を回避するために慎重に計画されることに留意することが重要である。
【0088】
開始/停止位置の一致を回避する。一般的に、後で部品のクラックまたは破砕を生じる正確な応力源を生成するには、移動台のゆっくりとした加速/減速で十分であり得る。
【0089】
トレースされた輪郭にわたる任意のスポット上で、デフォーカスされたCO
2レーザを停止または「パーキング」させると、通常、サファイア表面の溶融および/または微小クラックが生じる。CO
2レーザの経路は、切り離される輪郭の外で開始および完了するよう計画されるべきである。
【0090】
切り離し線は、周囲の支持している基体マトリクスの早過ぎる崩壊を生じずに分離を可能にするよう計画されるべきである。
【0091】
上述の切断処理は、高められたレーザ処理能力およびコスト節約、並びに、それに従ってより低コストの製造に繋がり得る以下の利益を提供する。本実施形態において、切断処理は以下を提供する。
【0092】
低減されたレーザ出力で切断された部品の完全な分離:サファイアをクリーンで制御された方法で完全に分離または切断できる。
【0093】
低減された表面下損傷:レーザと材料との超短パルスの相互作用により、熱的相互作用はほとんどなく、従って、表面および表面下領域に望ましくない応力および微小クラックを生じ得る熱の影響を受けたゾーンが最小限になる。更に、レーザビームをサファイアまたは他の基体材料上に集光する光学系は、部品の表面に、典型的には直径が2〜5マイクロメートルの欠陥線を生成する。分離後、表面下損傷は、周囲の面から約75μm未満の距離に限られる。強度は、欠陥の数、並びにサイズおよび深さに関するそれらの統計的な分布によって支配されるので、これは、部品のエッジ強度に対する大きな影響を有する。これらの数値が高いほど、部品のエッジは脆弱になる。
【0094】
処理のクリーンさ:本明細書に記載される方法は、クリーン且つ制御されたサファイアの分離および/または切断を可能にする。従来の溶発または熱的レーザ処理は、微小クラックおよび基体を複数の小片にする断片化を生じる熱の影響を受けたゾーンをトリガする傾向があるので、それらを用いるのは非常に難しい。本開示の方法の、レーザパルスの特性および生じる材料との相互作用は、それらが非常に短い時間スケールで生じると共に、レーザ放射に対する基体材料の透明度が、生じる熱的効果を最小限にするので、これらの問題の全てが回避される。欠陥線が基体内に生成されるので、切断工程中のデブリおよび粒子状物質の存在が実質的に解消される。生成された欠陥線から生じた粒子が存在する場合には、それらは部品が分離されるまで十分に内包される。
【0095】
異なるサイズの複雑な外形および形状の切断
本レーザ処理方法は、他の競合技術の限界であった、多くの形および形状に沿ったガラス、サファイア、および他の基体の切断/分離を可能にする。本方法を用いれば、(約5mm未満の)狭い半径も切断され得るので、曲線のエッジが可能になる。より大きなサファイア基体から、他のレーザ技術では困難または不可能な5mmおよび10mmの直径の円が良好に切り出された。また、欠陥線は、任意のクラックの伝搬の位置を強く制御するので、この方法は、切断の空間的位置に対する高い制御を与え、数百マイクロメートルほどの小さい構造および特徴の切断および分離も可能にする。
【0096】
処理工程の削減
供給される基体(例えばガラスパネルまたはサファイア片)から、部品(例えばガラス板または任意の形状のサファイア部品)を最終的なサイズおよび形状に作り上げるための処理は、基体の切断、サイズに合わせた切断、仕上げおよびエッジ成形、部品の目標の厚さへの薄化、研磨、並びに幾つかのケースでは化学的強化を包含する幾つかの工程を含む。これらの工程のいずれかを削減することで、処理時間および資本経費に関する製造コストが改善される。本方法は、例えば以下によって工程数を低減し得る。
・デブリおよびエッジ欠陥の発生の低減―洗浄および乾燥ステーションの削減の可能性。
・サンプルを最終的なサイズ、形状、および厚さに直接切断する―仕上げラインの必要性をなくす。
【0097】
スタックの切断
本処理は、スタックされたガラスパネルに、上記の垂直な欠陥を有する線を生成することも可能である。スタックの高さには制限があるが、スタックされた複数の板を同時に加工することで、生産性を高めることが可能である。これは、本明細書において用いられたレーザ波長(1064nm)におけるサファイアの場合のように、材料がレーザ波長に対して透明であることを要する。
【0098】
本明細書において引用された全ての特許、公開出願、および参考文献の関連する教示を参照して、その全体を組み込む。
【0099】
本明細書に複数の例示的な実施形態を記載したが、当業者には、添付の特許請求の範囲に包含される範囲から逸脱することなく、形状および詳細に様々な変更が行われ得ることが理解されよう。
【0100】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0101】
実施形態1
材料をレーザ切断する方法であって、
パルスレーザビームをレーザビーム焦線に集光する工程と、
前記レーザビーム焦線を前記材料に向ける工程であって、前記レーザビーム焦線が前記材料内において誘起吸収を生じ、該誘起吸収が、前記材料内において前記レーザビーム焦線に沿った欠陥線を生じる上記工程と、
前記材料または前記レーザビームを互いに相対的に平行移動させることにより、前記レーザによって前記材料内に複数の前記欠陥線を形成する工程と、
IRレーザビームを複数の前記欠陥線にわたって向ける工程と
を含む方法。
【0102】
実施形態2
材料をレーザ切断する方法であって、
(i)パルスレーザビームをレーザビーム焦線に集光する工程と、
(ii)前記レーザビーム焦線を前記材料に向ける工程であって、前記レーザビーム焦線が前記材料内において誘起吸収を生じ、該誘起吸収が、前記材料内において前記レーザビーム焦線に沿った欠陥線を生じる上記工程と、
(iii)上記(i)および上記(ii)を繰り返し行って、前記材料内に、複数の前記欠陥線を含む断層線を形成する工程と、
(iv)IRレーザビームを前記断層線にわたって向ける工程と
を含む方法。
【0103】
実施形態3
サファイアを含む物品であって、前記物品が、各欠陥線が少なくとも250μm延びる一続きの欠陥線を有するエッジを含み、前記欠陥線の直径が5μm未満であり、前記エッジがRa<0.5μmの表面粗さを有し、前記ガラスエッジの表面下損傷が<100μmである物品。
【0104】
実施形態4
前記材料または物品がサファイアである、実施形態1〜3のいずれか記載の方法または物品。
【0105】
実施形態5
前記パルスレーザビームのパルス持続時間が、約1ピコ秒より大きく且つ約100ピコ秒未満の範囲内である、実施形態1〜4のいずれか記載の方法。
【0106】
実施形態6
前記パルスレーザビームのパルス持続時間が、約5ピコ秒より大きく且つ約20ピコ秒未満の範囲内である、実施形態5記載の方法。
【0107】
実施形態7
前記パルスレーザビームの繰り返し率が1kHz〜2MHzの範囲内である、実施形態1〜6のいずれか記載の方法。
【0108】
実施形態8
前記パルスレーザビームの繰り返し率が10kHz〜650kHzの範囲内である、実施形態7記載の方法。
【0109】
実施形態9
前記パルスレーザビームが或る波長を有し、前記材料が前記波長において略透明である、実施形態1〜8のいずれか記載の方法。
【0110】
実施形態10
前記レーザビーム焦線が約0.1mm〜約100mmの範囲内の長さを有する、実施形態1〜9のいずれか記載の方法。
【0111】
実施形態11
前記レーザビーム焦線が、約0.1μm〜約5μmの範囲内の平均スポット径を有する、実施形態1〜10のいずれか記載の方法。
【0112】
実施形態12
前記IRレーザを前記材料の近位エッジから接線である部品のエッジまで向けることにより、前記部品を前記材料から分離する工程を更に含む、実施形態1〜11のいずれか記載の方法。
【0113】
実施形態13
前記IRレーザビームを向ける前記工程が、CO
2レーザビームを向けることを含む、実施形態1〜12のいずれか記載の方法。
【0114】
実施形態14
前記IRレーザビームが、約2mm〜約20mmの範囲内のスポット径にデフォーカスされる、実施形態1〜13のいずれか記載の方法。
【0115】
実施形態15
前記パルスレーザビームが、前記材料において測定された、前記材料の厚さ1mm当たり40μJより大きい平均レーザ出力を有する、実施形態1〜14のいずれか記載の方法。
【0116】
実施形態16
前記パルスが、1ナノ秒〜50ナノ秒の範囲内の持続時間で分離された少なくとも2つのパルスのバーストとして生成され、バースト繰り返し周波数が約1kHz〜約2000kHzの範囲内である、実施形態1〜15のいずれか記載の方法。
【0117】
実施形態17
前記パルスが、10ナノ秒〜30ナノ秒の範囲内の持続時間で分離される、実施形態16記載の方法。
【0118】
実施形態18
前記IRレーザビームを向ける前記工程が、前記IRレーザビームを前記材料の遠位エッジから材料の近位エッジまで向けることを含む、実施形態1〜17のいずれか記載の方法。
【0119】
実施形態19
前記ガラスエッジの前記表面下損傷が<75μmである、実施形態3記載の物品。
【0120】
実施形態20
前記欠陥線が、前記材料または物品の全厚さを通って延びる、実施形態1〜19のいずれか記載の方法または物品。
【0121】
実施形態21
前記欠陥線間の距離が0.5マイクロメートルより大きく且つ約15マイクロメートル以下である、実施形態1〜20のいずれか記載の方法または物品。
【0122】
実施形態22
前記材料または物品が円板である、実施形態1〜21のいずれか記載の方法または物品。
【0123】
実施形態23
前記材料または物品が、サファイア層が取り付けられたガラス基体を含む、実施形態1〜22のいずれか記載の方法または物品。
【0124】
実施形態24
前記ガラス基体の厚さが100マイクロメートル〜1mmであり、前記サファイア層の厚さが1マイクロメートル〜600マイクロメートルである、実施形態23記載の方法または物品。
【0125】
実施形態25
前記断層線が曲線状、円形状、および直線状のうち少なくとも一つである、実施形態1〜24のいずれか記載の方法。
【0126】
実施形態26
前記IRレーザビームを向ける前記工程が、前記断層線に沿って材料を破砕する、実施形態1〜25のいずれか記載の方法。
【0127】
実施形態27
前記物品の厚さが1.5mm未満である、実施形態3または19記載の物品。
【0128】
実施形態28
前記物品が円板である、実施形態3または19記載の物品。
【0129】
実施形態29
前記物品が、サファイア層が取り付けられたガラス基体を含む、実施形態3または19記載の物品。
【0130】
実施形態30
前記ガラス基体の厚さが100マイクロメートル〜1mmであり、前記サファイア層の厚さ1マイクロメートル〜600マイクロメートルである、実施形態29記載の物品。