特許第6552506号(P6552506)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552506
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】ゴマ油及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C11B 1/10 20060101AFI20190722BHJP
   A23D 9/02 20060101ALI20190722BHJP
   A23L 33/115 20160101ALI20190722BHJP
【FI】
   C11B1/10
   A23D9/02
   A23L33/115
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-545328(P2016-545328)
(86)(22)【出願日】2015年1月8日
(65)【公表番号】特表2017-505363(P2017-505363A)
(43)【公表日】2017年2月16日
(86)【国際出願番号】KR2015000207
(87)【国際公開番号】WO2015105359
(87)【国際公開日】20150716
【審査請求日】2016年7月7日
【審判番号】不服2018-7788(P2018-7788/J1)
【審判請求日】2018年6月6日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0002390
(32)【優先日】2014年1月8日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0002733
(32)【優先日】2015年1月8日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】507406611
【氏名又は名称】シージェイ チェルジェダン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】セオ,ヤンウォン
(72)【発明者】
【氏名】イ,キュウン
(72)【発明者】
【氏名】キム,チョルジン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン,ドンチョル
(72)【発明者】
【氏名】ムン,ジュンヒ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ユンヒ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジェファン
【合議体】
【審判長】 冨士 良宏
【審判官】 蔵野 雅昭
【審判官】 日比野 隆治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−210018号公報
【文献】 特開2009−144123号公報
【文献】 特開2000−159787号公報
【文献】 特開2000−290679号公報
【文献】 特開2009−144123号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B1/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臨界流体を利用してゴマからゴマ抽出物を抽出する工程と、
抽出されたゴマ抽出物に含まれている超臨界流体を分離する工程と、
超臨界流体が分離されたゴマ抽出物から、0を超え10以下のS/F比での第1の分画操作によって前半部分画物を得る工程と
前半部分画物が分離されたゴマ抽出物から、10を超え30以下のS/F比での第2の分画操作によって後半部分画物を得る工程と、
前記前半部分画物と前記後半部分画物を70:30から80:20の混合比で混合する工程とを含むゴマ油の製造方法であって
前記超臨界流体が二酸化炭素であり、
前記超臨界流体を利用してゴマからゴマ抽出物を抽出する工程が0を超え30以下のS/F比で行われ、
前記前半部分画物と前記後半部分画物の混合物のトコフェロール含量が300ppm〜700ppmであり、
前記前半部分画物と前記後半部分画物の混合物を含むゴマ油のリグナン含量が15000ppm以上であり、酸価が4.0以下であるゴマ油の製造方法。
【請求項2】
前記前半部分画物と前記後半部分画物を混合する前に、前記前半部分画物に、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム及び水酸化ナトリウムから選ばれる1つ以上の遊離脂肪酸除去剤を添加して遊離脂肪酸を除去する工程をさらに含む、請求項1に記載のゴマ油の製造方法。
【請求項3】
前記遊離脂肪酸除去剤が、ケイ酸マグネシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる1つ以上である、請求項2に記載のゴマ油の製造方法。
【請求項4】
前記抽出工程が、120〜700bar、40〜90℃の条件で行われる、請求項1又は2に記載のゴマ油の製造方法。
【請求項5】
前記分離工程が、40〜70bar、20〜50℃の条件で行われる、請求項1又は2に記載のゴマ油の製造方法。
【請求項6】
前記ケイ酸マグネシウム又は酸化マグネシウムの添加量が、ゴマ油又はゴマ抽出物の重量に対して0.5〜4.0重量%である、請求項2に記載のゴマ油の製造方法。
【請求項7】
前記水酸化ナトリウムの添加量が、ゴマ油又はゴマ抽出物の重量に対して0.1〜0.4重量%である、請求項2に記載のゴマ油の製造方法。
【請求項8】
遊離脂肪酸を1.0〜3.0重量%含有する、請求項1〜3のいずれかに記載のゴマ油の製造方法。
【請求項9】
前記後半部分画物が、3000ppm以下のリグナンを含有し、0〜1.0の酸価を有する、請求項に記載のゴマ油の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴマ油及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴマやゴマ油に含有されている重要な成分であるリグナンは、生体外及び生体内(in vitro/in vivo)において抗酸化作用を有し、また血圧低下作用、血中脂質低下作用、脂質過酸化抑制作用、アルコール分解促進作用を有する。
【0003】
今日まで食用としてよく利用されているゴマ油の一般的な製造方法は、適切な焙煎処理を行ったゴマの種子又はゴマの粉末を圧搾する方法と、超臨界二酸化炭素を利用して抽出する方法とが知られている。
【0004】
一般に圧搾による方法が広く使用されているが、この方法は、収率の向上のために抽出中に高温を加えなければならないという欠点があり、この過程において食味特性が変化したり、ベンゾピレンなどの有害物質が発生したりする可能性がある。一方、超臨界流体による抽出は、超臨界状態の流体が有する多くの利点を利用した技術である。超臨界状態の流体は、液体の溶解性と気体の浸透性とを併せ持ち、試料によく浸透するため抽出効率が高く、拡散係数が大きいため抽出速度が速く、比較的低温で抽出可能なため熱による栄養成分の破壊を避けることができ、また、試料と超臨界流体との密度差が大きくかつ超臨界流体の粘度が低いため、残留抽出物と溶媒との分離が容易であるなどの多くの利点がある。
【0005】
超臨界二酸化炭素を利用して抽出する場合、超臨界特性を利用し、圧力と温度条件を変化させることによって、所望の物質を高含量で抽出することができる。
【0006】
これに関連して、ゴマ油に含まれるリグナンの一種であるセサモールの含量を増加させるための超臨界抽出法が知られているが(韓国登録特許第10−0481648号)、この先行技術では、高温条件で焙煎と抽出を行うため、有害物質が発生する可能性が増加し、これによってゴマ油の品質が低下する。
【0007】
また、超臨界抽出法では、減圧の際に抽出効率が低下する問題を解決するため補助溶媒として水を使用しているが、水を使用した場合、最終抽出物に水分が残りゴマ油の品質を低下させてしまうため、数日間の静置又は遠心分離工程によって水分を除去しなければならないという欠点がある。
【0008】
通常、原料の保存状態が悪い場合や保存期間が長い場合にゴマの遊離脂肪酸は増加するが、遊離脂肪酸の量は産地の作況や品種によっても異なってくる。保存状態が悪かったため酸価が高くなった原料は使用しない方が好ましい。しかし、特に問題のない原料を使用した場合であっても、一般的な圧搾搾油方法においてはゴマ油の製造工程でリグナンを濃縮する際に遊離脂肪酸も同時に濃縮されるため、これを考慮すると、低酸価の原料を部分的に使用する必要がある。低酸価の原料は高価であり、時期によっては供給が不可能な場合もあるため、低酸価の原料を用いると原料競争力が落ちてしまう。
【0009】
また、超臨界分画工程によってリグナンを高含量に濃縮することができるにもかかわらず、遊離脂肪酸の含量も高くなるため、得られたリグナン高含量分画にリグナン含量の低い分画を混合することが必要となり、リグナン含量の高いゴマ油を生産することができなくなる。
【0010】
したがって、超臨界抽出法を利用した抽出工程において抽出効率を低下させずに得られたゴマ抽出物を使用して、有用な成分が濃縮された高品質なゴマ油を製造する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、抽出効率を向上させるとともにゴマ油の品質を低下させることなく得られた、リグナン及びトコフェロールの含量が高くかつ遊離脂肪酸の含量が低いゴマ油、並びにその製造方法を提供することである。
【0012】
また、本発明は、水分除去工程などの追加や工程条件の変更を行わずに、超臨界流体抽出法において流体の流量に応じて抽出された分画を得ることによってより効率的に製造された、リグナン及びトコフェロールの含量が高いゴマ油、並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、超臨界流体抽出法において流体の流量に応じて抽出された分画を得た後、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム又は水酸化ナトリウムを用いて脱酸処理を行うことによってより効率的に製造された、リグナン及びトコフェロールの含量が高くかつ遊離脂肪酸の含量が低いゴマ油、並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様によれば、リグナンの含量が7800ppm以上であり、トコフェロール含量が300ppm〜700ppmである、リグナンの含量が高いゴマ油が提供される。
【0015】
また、本発明の別の一態様によれば、リグナンの含量が7800ppm以上であり、遊離脂肪酸の含量が1.0〜3.0重量%である、リグナンの含量が高くかつ遊離脂肪酸の含量が低いゴマ油が提供される。
【0016】
本発明の別の一態様によれば、超臨界流体を利用してゴマからゴマ抽出物を抽出する工程と、前記超臨界流体及び前記ゴマ抽出物の混合物から前記超臨界流体を分離する工程と、分離した混合物を分画し第1のゴマ油及び第2のゴマ油を得る工程とを含む、ゴマ油の製造方法が提供される。
【0017】
本発明の別の一態様によれば、超臨界流体を利用してゴマからゴマ抽出物を抽出する工程と、前記超臨界流体及び前記ゴマ抽出物の混合物から前記超臨界流体を分離する工程と、得られた前記ゴマ抽出物に、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム及び水酸化ナトリウムから選ばれた1つ以上の遊離脂肪酸除去剤を添加して遊離脂肪酸を除去する工程とを含む、ゴマ油の製造方法が提供される。
【0018】
より具体的には、本発明の別の一態様によれば、超臨界流体を利用してゴマからゴマ抽出物を抽出する工程と、前記超臨界流体及び前記抽出物の混合物から前記超臨界流体を分離し、前記ゴマ抽出物を分画して第1のゴマ油及び第2のゴマ油を得る工程と、得られた前記第1のゴマ油にケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム及び水酸化ナトリウムから選ばれた1つ以上の遊離脂肪酸除去剤を添加して遊離脂肪酸を除去する工程とを含む、ゴマ油の製造方法が提供される。
【0019】
本発明の別の一態様によれば、得られた前記第1のゴマ油及び第2のゴマ油を混合したゴマ油が提供される。
【0020】
本発明のさらに別の一態様によれば、本発明の一態様によるリグナン及びトコフェロールの含量が高いゴマ油を含む油脂類が提供される。
【0021】
本発明のさらに別の一態様によれば、本発明の一態様によるリグナンの含量が高くかつ遊離脂肪酸の含量が低いゴマ油を含む油脂類が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、抽出の過程で各物質の超臨界流体に対する溶解度の差を利用して抽出効率とゴマ油の品質を改善することによって、多量のリグナンが含有されたゴマ油を製造し、リグナンの含量が高いゴマ油及びその製造方法を提供することができる。
【0023】
具体的には、各分画を抽出する時点又は各分画の成分含量比を調節することによって、所望の特性に応じて複数に分画されたゴマ油を調製することで、単回の抽出工程のみで遊離脂肪酸の含量を調節して酸価を低下させることができるため、食品基準に一層適合し風味が向上したゴマ油及びその製造方法を提供することができる。
【0024】
また、各分画を抽出する時点又は各分画の成分含量比を調節した抽出工程と、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム又は水酸化ナトリウムを利用した脱酸工程とにより所望の特性に応じて複数に分画されたゴマ油を調製することで、リグナン及びトコフェロールの含量を増加させ、かつ遊離脂肪酸の含量を調節して酸価を下げることができるため、食品基準に一層適合し風味が向上したゴマ油及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施例に係る、リグナンの含量が高いゴマ油の製造方法を示した模式図である。
【0026】
図2】本発明の一実施例に係る、リグナンの含量が高くかつ遊離脂肪酸の含量が低いゴマ油の製造方法を示した模式図である。
【0027】
図3】本発明の一実施例に係る、S/F比とゴマ油の抽出率(%)に関するグラフを示す。
【0028】
図4】本発明の一実施例に係る、S/F比とリグナン含量(ppm)に関するグラフを示す。
【0029】
図5】本発明の一実施例に係る、S/F比と酸価に関するグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明についてより詳細に説明する。本明細書に記載していない事項は、本発明の技術分野又は類似の分野に精通した者であれば十分に認識して類推できるものとして記載を省略している。
【0031】
本発明の一態様は、リグナンを豊富に含有するゴマ油を提供する。
【0032】
リグナンは、パラヒドロキシフェニルプロパン(p-hydroxyphenylpropane)化合物がカップリングした構造を有する低分子天然物の総称であり、例えば、セサミン、エピセサミン、セサモリン、セサモール、セサモリノール、セサミノール、エピセサミノールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
本発明に係るゴマ油は、リグナンの含量が7800ppm以上、具体的には10000〜20000ppm、より具体的には14000ppm〜16000ppmであってもよい。
【0034】
また、本態様において、ゴマ油はトコフェロールの含量が300ppm〜700ppm、具体的には500ppm〜700ppm、より具体的には600ppm〜700ppmであってもよい。
【0035】
トコフェロールは、脂溶性ビタミンの一種であるビタミンEを指し、例えば、トコフェロール類(tocopherol:α、β、γ、δ)と4種類のトコトリエノール(tocotrienol:α、β、γ、δ)などが挙げられる。本態様において、ゴマ油に含有されているトコフェロールは、例えば、γ−トコフェロールであってもよい。γ−トコフェロールは、抗酸化作用を奏するとともに、ゴマに含有されているリグナンの一種であるセサモールと相乗作用を起こすことができる。
【0036】
トコフェロールはほとんどが輸入品であり、高価であるため、より効率的なトコフェロールの抽出方法及びトコフェロールを含む組成物への要望が高まっている。
【0037】
前記の範囲内でリグナン及びトコフェロールを含むゴマ油はリグナン及びトコフェロールを豊富に含有するため、抗酸化作用に優れたゴマ油を提供することができ、さらに、抗酸化作用によりゴマ油の長期保存が可能になるという利点がある。
【0038】
また、本態様に係るゴマ油は、遊離脂肪酸の含量が1.0〜3.0重量%、具体的には1.0〜2.0重量%、より具体的には1.0〜1.5重量%であってもよい。
【0039】
さらに、本態様に係るゴマ油は、酸価が0〜4.0、具体的には3.5以下、より具体的には0.6〜3.5であってもよい。例えば、1.5〜3.5、又は2.0〜3.0であってもよい。
【0040】
本明細書において「酸価」は、脂肪1gに存在する遊離脂肪酸を中和するに必要なKOHのmg数であり、脂肪の酸敗度(rancidity)を測定するために使用され、数値が低いほど食品として適する。
【0041】
前記範囲内の酸価を有するゴマ油は、韓国食品公典(Korean Food Standards Codex)で定められたゴマ油の酸価の範囲(4.0以下)を満たすため、食品への使用に適する。
【0042】
本発明の別の態様によれば、超臨界流体を利用することによってリグナン及びトコフェロールの含量が高いゴマ油が提供される。
【0043】
本発明の更に別の態様によれば、超臨界流体を利用することによってリグナン及びトコフェロールの含量が高いゴマ油の製造方法が提供される。
【0044】
本発明の更に別の態様によれば、超臨界流体を利用することによってリグナン及びトコフェロールの含量が高くかつ遊離脂肪酸の含量が低いゴマ油の製造方法が提供される。
【0045】
ゴマ油の一般的な抽出方法としては圧搾法が用いられるが、この方法は、収率の向上のために抽出中に高温を加えなければならないという欠点があり、この過程において食味特性が変化したり、ベンゾピレンなどの有害物質が発生したりする可能性がある。
【0046】
本態様に係るゴマ油の製造方法は、超臨界状態の流体が有する様々な利点を利用して、リグナンの含量が高いゴマ油を製造するためのより効率的な方法を提供することができる。
【0047】
本明細書において「超臨界流体」とは、臨界温度及び臨界圧力を超えた状態の流体であり、流体の溶解力を強調する意味で「濃縮気体」とも呼ばれる。一般的に物質は、温度と圧力の変化に応じて、固体、液体、気体の三つの相を有するが、液体と気体の二つの状態が区別できなくなる臨界温度と臨界圧力を超えた状態においては、それ以上温度と圧力が変化したとしても、固体にも液体にも気体にもならない第4の状態、即ち、超臨界状態に達する。
【0048】
超臨界流体を利用した超臨界抽出法(Supercritical Fluid Extraction、以下「SFE」という)は、2004年5月に韓国食品医薬品安全庁の改正告示第2004−41号の規定により、国民に安全な食品を提供するとともに、新技術の導入によって食品産業界の発展への貢献を目的として、食用油脂などの抽出に認可された。
【0049】
超臨界流体による抽出は、蒸留(distillation)と抽出(extraction)の原理が同時に適用された複合技術的な特性を有するため、様々な長所がある。
【0050】
具体的には、超臨界流体は圧力と温度を操作することによって、高密度状態あるいは低密度状態などのいかなる条件をも設定することができるため、分画や分離などにおける選択性に優れている。そのため、高純度の製品を得ることができ、抽出溶媒を損失することなくほぼ完全に回収することができ、残存溶媒を含まない精製物を得ることができる。
【0051】
また、超臨界流体は粘度が低く、試料によく浸透性するため抽出効率が高く;拡散係数(diffusion coefficient)が大きいため抽出速度が速く;比較的低温で抽出可能なため熱による栄養成分の破壊を避けることができ;試料と超臨界流体との密度差が大きくかつ超臨界流体の粘度が低いため、残留抽出物と溶媒との分離が容易であるなどの多くの利点を有する。
【0052】
しかし、高圧装置を使用する必要があるため、施設費と維持費が高いという欠点があり、超臨界流体を利用する抽出は経済的に効率よく行う必要があることが知られている。
【0053】
本態様に係る超臨界流体としては、特に限定されないが、例えば、二酸化炭素を用いることができる。二酸化炭素の臨界圧力は73.8barであり、臨界温度は31℃であることから、他の流体と比べて比較的低く、超臨界条件を実現することが容易であり、さらに毒性がなく経済的であるという利点がある。
【0054】
超臨界二酸化炭素は非極性溶媒であり、油脂などの極性の低い物質の抽出に広く使用されている。例えば、アルコールなどの極性物質を一部添加することで超臨界流体の極性変化を容易に誘導することができ、溶解力を適切に調節することができるため、様々な油脂成分の抽出にも活用することができるという利点がある。
【0055】
また、超臨界条件でも温度と圧力の条件に応じて超臨界流体の性質を変化させることができる。例えば、超臨界二酸化炭素の条件を低圧にして抽出すると、中性脂質に対する溶解性が低くなり、抽出物中のリグナンの濃度が高くなる。また、中性脂質の抽出条件に適した高圧条件で抽出すると、抽出前期に分離された抽出分画は、抽出後期に得られた抽出物に比べてリグナンの濃度が高い。このような抽出方法では、分画する時点を調整することで遊離脂肪酸の含量とリグナンの含量を調節することができる。遊離脂肪酸の含量が低い、即ち、酸価が低い抽出物を得るためには、遊離脂肪酸の含量が低い原料又は中性脂質の含量が高い原料から得た分画と、抽出前期に得られた抽出物とを混合して、リグナン濃縮を断念する方法がある。
【0056】
原料中の遊離脂肪酸の含量は、原産地の作況によって差が生じ、通常、低酸価の原料は高価であるため原料競争力が落ちる。しかも、遊離脂肪酸を含まない原料は存在せず、リグナンが濃縮される分画では遊離脂肪酸も濃縮されるため、低酸価の原料を使用する条件を設定して製品を製造したとしても、ある濃度以上のリグナン含量を満たしながら酸価の規格をも満たすことは容易ではない。そのため、超臨界二酸化炭素を利用して高濃度のリグナン分画物を製造する工程を工業的に安定して実施するには、リグナン濃縮分画物から遊離脂肪酸を除去する技術が必要となる。
【0057】
超臨界抽出方法では抽出条件と分画する時点とによって成分の含量が異なってくるが、これは超臨界条件によって各物質の溶解度が異なるためである。しかし、類似の溶解力を有する物質は、抽出条件や分画する時点などを変更しても類似の傾向で抽出されるため、条件や分画する時点によってある程度の差は生じるものの、このような物質を完全に分離することは難しい。
【0058】
中性脂質、リグナン及び遊離脂肪酸はゴマ油の品質に影響を与える。中性脂質は油脂の基本となる物質であり、リグナンはゴマ油の固有成分であって抗酸化機能を発揮する。これに対し、遊離脂肪酸は油脂の酸敗の程度を示す物質であり、油の種類毎に含量が規定及び管理されている。
【0059】
本発明は、リグナンの含量を最大としかつ遊離脂肪酸の含量を低下させることで、食品規格に適合した機能性ゴマ油を製造することを特徴とする。
【0060】
中性脂質、リグナン及び遊離脂肪酸はいずれも超臨界流体に溶解する成分であり、超臨界条件に応じて中性脂質、リグナン及び遊離脂肪酸の溶解力に差が生じ、その他の条件が同一であっても抽出の前期と後期とでこれらの含有割合は異なってくる。低密度の超臨界条件に設定すると、リグナン及び遊離脂肪酸が抽出物中に比較的高い割合で抽出されるが、これによって全体的な抽出効率が低下してしまうため抽出効率の点では好ましくない。油脂を抽出する際に前期と後期とに分けて抽出する場合、抽出前期にはリグナンと遊離脂肪酸とが濃縮されるため、分画する時点を調整することによって食品規格に適合した濃縮リグナンを含有するゴマ油を製造することができる。
【0061】
分画物中の遊離脂肪酸の含量を減らすためには、リグナン含量の低い分画物と混合することが必須であるため、遊離脂肪酸の多い原料を使用する場合やリグナンの含量を高濃縮しようとする場合には、分画する時点を調整することによって食品規格に適合した分画を設定することが難しくなる。
【0062】
そのため、リグナンの濃縮と遊離脂肪酸の除去とを別々に行わなければならない場合が発生するが、このような場合、遊離脂肪酸は除去できるがリグナンには損失を与えず、かつ食味に影響を与えない後処理工程が必要となる。このような後処理工程として、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム及び水酸化ナトリウムから選ばれた1つ以上の遊離脂肪酸除去剤を使用して遊離脂肪酸を除去する濾過工程が好ましく、より優れたゴマ油の食味を提供できるという点で、ケイ酸マグネシウム及び酸化マグネシウムから選ばれた1つ以上の遊離脂肪酸除去剤を使用することがさらに好ましい。
【0063】
水酸化ナトリウムを使用した脱酸工程を行う場合、水酸化ナトリウムと反応した鹸化物及び反応後に残存する水酸化ナトリウムを除去するために複数回の水洗工程が必要である。
【0064】
前記遊離脂肪酸除去剤のうち、ケイ酸マグネシウムまたは酸化マグネシウムの含量は、ゴマ油又はゴマ抽出物の重量に対して、0.5重量%〜4.0重量%であることが好ましく、1.0重量%〜4.0重量%であることがより好ましい。前記遊離脂肪酸除去剤のうち、水酸化ナトリウムの含量は、ゴマ油又はゴマ抽出物の重量に対して、0.1重量%〜0.4重量%であることが好ましく、0.2重量%〜0.3重量%であることがより好ましい。これは、ほとんどの原料において遊離脂肪酸の含量はリグナンの濃縮工程後1.5〜2.3重量%を示し、この遊離脂肪酸を除去するためには油脂中の該遊離脂肪酸の含量の2倍程度の量のケイ酸マグネシウムまたは酸化マグネシウムを混合すれば十分であり、水酸化ナトリウムを使用する場合は0.25倍程度の量を使用すれば十分であるからである。
【0065】
これ以上の量のケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム又は水酸化ナトリウムで処理した場合、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム又は水酸化ナトリウムと混和することによってゴマ油が部分的に除去されてゴマ油の量が減少したり、ゴマ油の色が抜けたりするなど、製品への悪影響が生じる。
【0066】
前記ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム及び水酸化ナトリウムの混合比は、特に限定されない。
【0067】
ケイ酸マグネシウム及び酸化マグネシウムから選ばれた1つ以上の遊離脂肪酸除去剤を抽出物に混合して濾過工程で遊離脂肪酸を除去することによって、リグナンの含量を低下させることなく遊離脂肪酸を除去することができる。識別テストの結果、処理前のサンプルと区別できないことが確認されたことから、食味とリグナンの含量を低下させずに食品の酸価の規格を満たすことができたことが確認された。
【0068】
以下、本態様に係る超臨界流体抽出を利用したゴマ油の製造方法について図1を参照しながら具体的に説明する。図は抽出工程の一例を示す模式図であり、本態様に係る発明は図1の記載によって限定されるものではない。
【0069】
抽出器(1)にゴマを充填する。ポンプ(6)を使用し、熱交換器(7)を通して超臨界流体を抽出器(1)の下端から供給する。この態様において、抽出器(1)は2つ以上設けられてもよい。ポンプ(6)は、抽出器(1)に超臨界流体を供給するとともに、抽出器内の圧力を調節することができる。熱交換器(7)を利用して流体の温度を調節することで、抽出器(1)内の流体を超臨界状態に変化させ、かつ/又は超臨界状態に維持することができる。
【0070】
抽出器(1)に供給された超臨界流体は、充填されたゴマと接触することによりゴマからゴマ抽出物を抽出し、ゴマ抽出物を含有した状態で上昇して抽出器(1)の外に放出される。超臨界流体とゴマ抽出物の混合物は圧力調節器(2)を経由して減圧され、分離器(3)に移送される。
【0071】
分離器(3)では、抽出されたゴマ抽出物と流体とが分離され、分離された流体は冷却器(4)を経て液化され、貯蔵槽(5)に貯蔵されて再使用することができる。二酸化炭素などの流体を貯蔵する貯蔵槽(5)では、系を循環して供給される流体以外に、前の工程で発生した流体の損失を補充するために外部から同種又は異種の流体が補充され得る。貯蔵槽(5)に貯蔵された流体はポンプ(6)によって加圧されて超臨界状態に変化し、熱交換器(7)を介して再び抽出器(1)に供給され循環され得る。
【0072】
分離器(3)で分離されたゴマ抽出物は必要に応じて分画されて製品化される。このとき、2つ以上の分画貯蔵槽(8,9)を設置することができ、抽出物が流入する分画貯蔵槽(8,9)の投入口に各々バルブ(A,B)を設置してもよく、様々な条件に応じてバルブの開閉を調節することで様々な特性のゴマ油を同時に得ることができる。
【0073】
また、さらなる工程については図2を参照されたい。熟成工程を行うため、ゴマ油は分画貯蔵槽(8,9)から熟成槽(10)に送られる。熟成が終わった熟成油は、蝋分を除去するため混合器(11)に送り、酸化マグネシウム又はケイ酸マグネシウムなどの濾過助剤(12)と混合して濾過器(13)で濾過し、精製された油を精製タンク(14)に移送して保存する。混合器(11)では、熟成油の酸価に応じて適切な量の酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム又は水酸化ナトリウムなどを混合し、食品規格(酸価0以上4.0未満)に適合したゴマ油を製造することができる。
【0074】
前記工程は、ゴマから所望の特性を示すゴマ油の抽出に至るまで連続して行うことができ、前記各装置とバルブの数は必要に応じて適切に調節することができる。
【0075】
具体的には、本態様に係るゴマ油の製造方法は、超臨界流体を利用してゴマからゴマ抽出物を抽出する工程と、前記超臨界流体及び前記抽出物の混合物から前記超臨界流体を分離し、前記ゴマ抽出物を分画して第1のゴマ油及び第2のゴマ油を得る工程とを含んでいてもよい。
【0076】
本態様に係るゴマ油の製造方法は、超臨界流体を利用してゴマからゴマ抽出物を抽出する工程と、前記超臨界流体及び前記抽出物の混合物から前記超臨界流体を分離し、前記ゴマ抽出物を分画して第1のゴマ油及び第2のゴマ油を得る工程と、得られた前記第1のゴマ油にケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム及び水酸化ナトリウムから選ばれた1つ以上の遊離脂肪酸除去剤を添加して遊離脂肪酸を除去する工程とを含んでいてもよい。
【0077】
より具体的には、本態様に係るゴマ油の製造方法は、超臨界流体を利用してゴマからゴマ抽出物を抽出する工程と、前記超臨界流体及び前記抽出物の混合物から前記超臨界流体を分離し、前記ゴマ抽出物を分画して第1のゴマ油及び第2のゴマ油を得る工程と、得られた前記第1のゴマ油にケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム及び水酸化ナトリウムから選ばれた1つ以上の遊離脂肪酸除去剤を添加して遊離脂肪酸を除去する工程と、前記遊離脂肪酸が除去された第1のゴマ油を第2のゴマ油と混合する工程とを含んでいてもよい。
【0078】
以下、本発明のゴマ油の抽出方法をより具体的に説明する。
【0079】
前処理工程
本態様において、ゴマの抽出工程の前にゴマを前処理する工程を含むことができる。本態様において使用されるゴマは特に限定されず、ゴマの前処理工程には、ゴマの表面に存在する微生物、残留農薬、保存剤などの有害物質を除去するための処理、超臨界流体の接触面積を増加させるための処理、食用油脂の食味を増加させるための処理などが含まれる。
【0080】
本態様において、ゴマの前処理方法は特に限定されず、紫外線照射、熱処理、剥皮、粉砕、焙煎のうち1つ以上を使用することができる。
【0081】
ゴマ抽出物の抽出工程
続いて、ゴマ(又は前処理を行ったゴマ)を抽出器に充填し、ゴマを充填した抽出器に超臨界流体を供給して、ゴマからゴマ抽出物を抽出することができる。
【0082】
本態様に係るゴマ抽出物の抽出工程は、120〜700bar、40〜90℃の条件で行うことができ、具体的には300bar以上、より具体的には400〜500barの圧力条件で、50〜90℃、具体的には60〜70℃の温度条件で行われ、このとき、超臨界流体のS/F比(S/F ratio:抽出に使用した充填原料1kg当たりに使用した超臨界流体の量(kg)を意味する)は0を超え30以下であってもよく、具体的には0を超え20以下であってもよい。
【0083】
前記の範囲内であると、ゴマ抽出物の抽出効率が向上され得る。
【0084】
ゴマ抽出物の分離及び分画工程
続いて、超臨界流体及びゴマ抽出物の混合物を分離することができる。これは40〜70bar、20〜50℃の条件で行うことができ、具体的には50〜60bar、30〜40℃で行われる。
【0085】
分離された混合物は、所望のゴマ油の特性に応じて、ゴマ油中の成分の超臨界流体に対する溶解度の差を利用し、抽出時間に応じた複数の分画の形態で得ることができる。
【0086】
具体的には、本態様において、分離されたゴマ抽出物から、0を超え10以下のS/F比での第1の分画操作により第1のゴマ油を得ることができ、10を超え30以下のS/F比での第2の分画操作により第2のゴマ油を得ることができる。あるいは、0を超え30のS/F比で分画することもでき、0を超え30のS/F比で得られたゴマ油はリグナンの含量が7800ppm以上であり、トコフェロールの含量が300ppm〜700ppmであってもよい。
【0087】
具体的には、第1のゴマ油は0を超え10のS/F比で分画されたものであり、第2のゴマ油は10を超え30のS/F比で分画されたものであってもよい。
【0088】
以下、本態様に係る第1のゴマ油及び第2のゴマ油について具体的に説明する。
【0089】
第1のゴマ油
本態様において、第1のゴマ油はリグナンを15000ppm以上含有し、具体的には15000〜21000ppm、又は15000〜18000ppm含有していてもよい。第1のゴマ油はトコフェロールを300ppm以上、具体的には600〜700ppm、又は650〜700ppm含有していてもよい。
【0090】
本態様のゴマ油は、リグナン及びトコフェロールの含量が高いゴマ油として抽出されるが、HPLCカラムなどの化学的工程を使用せずに流体に対する溶解度の差に応じて溶解した成分を分画することによって、リグナン及びトコフェロールの含量が高いゴマ油を製造することができる。本態様の第1のゴマ油は、リグナン及びトコフェロールなどが強化されており、強い風味が合う食物に適用することができるという利点がある。
【0091】
本態様の第1のゴマ油の酸価は4.0を超えていてもよい。
【0092】
本態様ではさらなる後処理工程を行わずに食品規格(例:4.0以下)に適合したゴマ油を生産するため、特定のS/F比において分画する時点をもう少し後の時点にずらすか、あるいは第2のゴマ油又は別の分画より得た分画物などの抽出後期の分画物を第1のゴマ油に混合することによって、別の工程を行わずに酸価を低下させることが可能であるという利点がある。
【0093】
また、必要に応じて、酸価を上昇させる遊離脂肪酸を除去するためのさらなる工程を実施することができる。遊離脂肪酸を除去するためのさらなる工程は、ケイ酸マグネシウム及び酸化マグネシウムから選ばれた1つ以上の遊離脂肪酸除去剤をゴマ油又はゴマ抽出物の重量に対して0.5〜4.0重量%混合するか、又は水酸化ナトリウムをゴマ油又はゴマ抽出物の重量に対して0.1〜0.4重量%混合し、次いで濾過することによって遊離脂肪酸を除去し、その結果、酸価を低下させることができるという利点がある。
【0094】
第2のゴマ油
本態様の第2のゴマ油は3000ppm以下のリグナンを含有し、酸価が4.0以下、具体的に酸価は2.0以下、又は1.0以下であってもよい。
【0095】
本態様のゴマ油の製造方法により、酸価が低くかつさっぱりした味のゴマ油を製造することができるため、ゴマ油の強い風味のためゴマ油を使用しにくかったサラダや、精製前のゴマ油を使用しにくかったチヂミ、さらには揚げ物などにも使用することができるという利点がある。
【0096】
本態様のゴマ油の製造方法には、前記のように単一の工程において単一の抽出条件を使用することで、異なる性質を有する2種のゴマ油を同時に製造することができるという利点がある。
【0097】
本発明の更に別の態様では、本発明の態様等に係る、リグナンの含量が高くかつトコフェロールの含量が高いゴマ油を含む油脂類を提供することができる。
【0098】
本発明の更に別の態様では、本発明の一態様に係る、リグナンの含量が高くかつ遊離脂肪酸の含量が低いゴマ油を含む油脂類を提供することができる。
【0099】
具体的には、本態様の第1のゴマ油は、酸価及び風味を調節するため、本態様の第2のゴマ油と混合して使用することができ、さらに、目的に応じて、第1のゴマ油又は第2のゴマ油は、一般的な圧搾法により得られたゴマ油、一般的な超臨界抽出により得られたゴマ油及び他の油脂類のうち1つ以上の油脂類と混合して、様々な分野に適用することができる。
【0100】
本明細書において、「一般的な超臨界抽出により得られたゴマ油」は、超臨界流体抽出方法を利用して、0を超え30のS/F比で抽出されたゴマ油であり、これはゴマ抽出物を分離した後にさらなる分画工程を経なかったゴマ油を意味する。
【実施例】
【0101】
以下、実施例、比較例及び実験例を記載し、本発明をより詳細に説明する。ただし、これらの実施例、比較例及び実験例は、本発明の一例示に過ぎず、本発明の内容を限定するものではない。
【0102】
抽出方法によるリグナンの含量の比較
実施例1
超臨界流体抽出法を利用した一般的な超臨界抽出によるゴマ油の製造
抽出装置(Natex社、5リットル、SFE pilot装置)を使用し、炒りゴマ粉末(インド産のゴマを使用して品温190℃で炒った後、粉砕することにより直接製造したもの)2kgを抽出器に入れ、抽出圧力450bar、抽出温度65℃、最大S/F比30で抽出した。抽出したゴマ油は、温度35℃、圧力55barの条件で分離し、常温で一週間熟成させた後、底の沈殿物を除去しサンプルを得た。
【0103】
実施例2
超臨界流体抽出法を利用した超臨界抽出によるゴマ油の製造
抽出装置(Natex社、5リットル、SFE pilot装置)を使用し、炒りゴマ粉末(ミャンマー産、First Top社製)2kgを抽出器に入れ、抽出圧力450bar、抽出温度65℃、最大S/F比30で抽出し、各分画に分けた。抽出したゴマ油は、温度35℃、圧力55barの条件で分離し、常温で一週間熟成させた後、底の沈殿物を除去してサンプルを得た。
【0104】
実施例3
超臨界流体抽出法を利用した超臨界抽出による高濃縮リグナン含有ゴマ油の製造
抽出装置(Natex社、5リットル、SFE pilot装置)を使用し、抽出器に炒りゴマ粉末(ミャンマー産、First Top社製)2kgを入れて、抽出圧力450bar、抽出温度65℃、最大S/F比10で抽出した。抽出したゴマ油は、温度35℃、圧力55barの条件で分離し、常温で一週間熟成させた後、底の沈殿物を除去しサンプルを得た。
【0105】
比較例1
圧搾方法を利用したゴマ油の製造
実施例1で使用したものと同一の原料を使用し、180℃に予熱した圧搾器(シンソンフードマシン、SSC100)に投入して圧搾油を得た後、常温で一週間静置し、底の沈殿物を除去してサンプルを得た。
【0106】
実験例1
実施例1及び比較例1で製造した各ゴマ油サンプル0.5gを、n−ヘキサン:IPA=98:2の溶媒に溶解し、0.45μmで濾過して分析サンプルとして使用した。
【0107】
以下の表1の条件でリグナンの機器分析を3回行い、抽出方法ごとのリグナンの含量(含量単位、ppm)を表2に示した。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
表2を参照すると、圧搾法によるゴマ油のリグナンの含量は6000ppm未満であり、超臨界流体抽出によるゴマ油のリグナンの含量は78000ppm以上であることが確認された。超臨界流体抽出を利用した場合、圧搾法に比べてリグナンの含量が約35%程度増えることが示された。
【0111】
実験例2
流体の流量に応じた抽出率、リグナン含量、ベンゾピレン含量及び酸価の分析
実施例1のゴマ油を使用して分析を行った。リグナンの分析は実験例1のリグナン分析方法と同様にHPLCを使用して確認した。酸価は韓国食品公典に記載の一般成分試験法のうち、1.1.5.3.1の酸価測定方法に従って測定した。ベンゾピレンの含量は食品中の有害物質試験法の7.8.1食用油脂のうち、ベンゾピレン分析方法に従って測定した。各々3回ずつ測定した。
【0112】
以下の表3の抽出率は以下の式1によって計算されたものである。
【0113】
[式1]
抽出率(%)=(油脂抽出量/全充填原料量)×100
【0114】
【表3】
【0115】
表3を参照すると、全ての反復実験を通して、ゴマ油の抽出量は流量に応じて一定の傾向を示した(図3)。超臨界流体抽出によりゴマ油を抽出する過程において、流体の流量毎に分画中のリグナンの含量を分析し、一定レベルの再現性のあるリグナン抽出傾向を確認した。リグナン成分の大部分は抽出の初期に抽出され、その後急激に減り、結果的にリグナン含量は抽出後期になるほど減ることが分かった。
【0116】
一方、遊離脂肪酸も初期に抽出される傾向が示された(図5)。一般的な遊離脂肪酸含量の原料で抽出を行った場合、リグナン抽出率が最も高い部分のみを分画したものは、後の工程でリグナンを分離、精製する目的で使用することはできるが、食品規格に適合したゴマ油の製造に使用することは困難であると確認された。
【0117】
ゴマ油中の含量が法的に規制されているベンゾピレンは、抽出時間に応じた傾向は見られず、抽出の始めから終わりまでほぼ変化することなく一定の水準で原料に含有されており、リグナンや遊離脂肪酸とは異なってゴマ油の抽出に伴って抽出されると考えられる。
【0118】
実験例3
流体の流量に応じたリグナン含量及びトコフェロール含量の分析
実施例1と同一の方法でゴマからゴマ抽出物を抽出及び分離した後、以下の表5のS/F比で各抽出物を分画した。
【0119】
各分画中のリグナン含量及びトコフェロール含量の分析は実験例1と同様にHPLCで定量した。試料20gを100mlのメスフラスコに入れてn−ヘキサンで100mlに定容した後、撹拌して分析試料として使用した。
【0120】
移動相及び分析条件は以下の表4の通りとし、各分画の抽出率と抽出物の成分含量を表5に示した。これを、一般的な超臨界抽出で得たゴマ油における重量に対する各分画の抽出率及び成分含量と比較し、表6に示した。
【0121】
表5において、抽出率は、以下の式2に従って全抽出量に対する各分画の抽出量の割合を百分率として算出し、表6の抽出率は実験例2の式1で算出した。
【0122】
[式2]
抽出率(%)=(各分画の抽出量/全抽出量)×100
【0123】
【表4】
【0124】
【表5】
【0125】
【表6】
【0126】
※一般的な超臨界ゴマ油として、S/F比0〜30で抽出したゴマ油を基準とした。
【0127】
表5及び表6を参照し、各分画のリグナン含量及びγ−トコフェロール含量を確認した結果、γ−トコフェロール成分も抽出初期の分画に含有されていたことが分かった(表5)。
【0128】
分析結果に基づいて各分画を抽出した時点におけるゴマ油の品質を、一般的な超臨界抽出により達成されるゴマ油の品質と比較した結果(表6)、γ−トコフェロールはリグナンに比べて濃縮率が低いが、30%以上の濃縮が可能であることが確認された。
【0129】
実験例4
流体の流量に応じた香味成分及びその含量の分析
香味成分の分析はSPME(solid phase microextraction)法を使用して表4の方法で香気を捕集し、表7の条件でGC-massを用いて分析した。各分画における香味成分の差の結果を表8に示した。
【0130】
【表7】
【0131】
【表8】
【0132】
表8は、同じ大きさのバイアルに同量のサンプルを取り、同一温度で同一時間SPMEを静置して香味成分を吸着した後、GC−MSを使用して分析した結果であり、各分画の香味成分が抽出時間の経過に伴って減少することが確認された。最後の分画物に比べて最初の分画物の2−メチルピラジン(methyl pyrazine)の量は4倍以上であり、2,5−ジメチルピラジン(dimethyl-pyrazine)の量は15倍以上であることが測定された。実際、官能的にも最初の分画物から後に行くほどマイルドになることが容易に見分けることができた。
【0133】
実験例5
各分画時点による分画物のリグナン含量及び酸価の分析
実験例3の表5で測定した抽出率とリグナンを各分画時点の前と後とに分けて、以下の表9にまとめた。各分画の前後の酸価は、実験例2と同一の方法で測定し、以下の表9にまとめた。
【0134】
【表9】
【0135】
表9を参照すると、抽出流量S/F比が8.33に達するまでの分画物を集めた場合、リグナンが最大の溶解度で抽出される区間において全抽出量の約33%まで抽出することが可能であり、実施例1の一般的な超臨界抽出で抽出されたゴマ油のリグナン含量の2倍以上(約259%)に濃縮することが可能であった。しかし、このときの品質は、酸価4.47で、食品規格を外れてしまうものであった。
【0136】
その後に抽出された分画物では、リグナンの含量が急激に低下しリグナンの含量が希釈されたが、酸価を決定する遊離脂肪酸の含量も急激に下がり、規格に適合したゴマ油を生産することが可能であった。抽出流量S/F比12.08を基準として分画した場合のリグナン含量は16711ppmであり、一般的な超臨界抽出方法に比べて1.87倍のリグナン含量が示され、酸価は3.51であり、食品規格に適合しており、抽出率も全体のほぼ半分の49.2%まで増え、生産量も増加したことが確認された。
【0137】
実験例6
酸価が異なるゴマ粉末を原料として使用して超臨界抽出し、流量毎に分画物を得て、各分画物の酸価とリグナンの含量を測定した。各分画物の結果に基づき、各分画時点までに得た分画物を混合した場合の算出結果を表10に示した。
【0138】
【表10】
原料の酸価に応じた、抽出量、酸価及びリグナンの含量
【0139】
酸価2.11の原料で行ったテストにおいては、S/F比9.5において食品規格に適合した酸価が満たされ、酸価2.40の原料ではS/F比14.3において食品規格に適合した酸価が満たされ、酸価3.29を使用した場合では流量19.1で食品規格に適合した酸価が満たされた。ここで、ゴマ油の酸価の食品規格は4.0であり、テストに使用した全ての原料は圧搾法で抽出した場合に酸価に関して品質に問題のない原料である。
【0140】
実験例において酸価の規格に合わせて流量を調節しながらゴマ油を製造した場合のリグナンの含量を比較してみると、酸価2.11の原料は18072ppm、酸価2.40の原料は12634ppm、酸価3.29の原料は10077ppmであった。これは、原料の酸価が高いほど抽出前期の酸価が高くなり、食品規格に適合した酸価を満たすためには抽出後期のゴマ油を混合する必要があることを示している。
【0141】
実施例4及び実施例5
実施例4
ゴマ油中の遊離脂肪酸を除去するため、S/F比を12.08にして、前述の方法でリグナンの含量(実験例1の方法)と酸価(実験例2の方法)を測定した。
【0142】
実施例5
ゴマ油中のリグナン高濃縮分画を得るため、S/F比を8.33に調節し、前述の方法でリグナンの含量(実験例1の方法)と酸価(実験例2の方法)を測定した。
【0143】
各サンプルに対してリグナンの含量と酸価を分析し、各実施例1、4及び5のリグナンの含量の変化を以下の表11に示した。
【0144】
【表11】
【0145】
表11を参照すると、抽出前期の高濃縮されたリグナンを他の油種で希釈せずに使用するためには、遊離脂肪酸の除去が必要であることが分かる。
【0146】
実施例6〜9
実施例2で得られたゴマ油に、ケイ酸マグネシウム(dallas社、DalsorbTM)を該ゴマ油の重量に対して0.5重量%(実施例6)、1重量%(実施例7)、2重量%(実施例8)、又は3重量%(実施例9)の添加量で各々添加して撹拌した後、ワットマンの5C濾過紙で濾過してケイ酸マグネシウムを除去し、サンプルを得た。得られたサンプルの酸価の変化とリグナンの含量を確認し、以下の表12に示した。温度は作業性とゴマ油の風味の損失を考慮して室温で行い、処理時間は、撹拌時間が増加しても酸価が低減されない2時間に固定した。
【0147】
実施例10
実施例2で得られたゴマ油に、該ゴマ油の重量に対して0.3重量%の水酸化ナトリウムを該水酸化ナトリウムの重量の5倍の水で溶解した水溶液を添加して撹拌した後、ワットマンの5C濾過紙で鹸化物を濾過して除去し、濾過した油を層分離して下層の水溶液を除去し、得られたゴマ油と同一の重量の熱水を添加して混合した後、静置して水溶液を除去する工程を3回繰り返して鹸化物と水酸化ナトリウムを除去し、サンプルを得た。得られたサンプルの酸価の変化とリグナンの含量を確認し、以下の表12に示した。
【0148】
【表12】
【0149】
表12に示したように、ケイ酸マグネシウム又は水酸化ナトリウムで脱酸処理した本発明に係る実施例6〜10の場合は、遊離脂肪酸を除去してもリグナンの含量には影響がないことが分かった。
【0150】
実験例7
第1のゴマ油と第2のゴマ油の混合比によるリグナンの含量と酸価の変化
超臨界抽出において、S/F比10.0で分画し、その後に得られた抽出物を抽出後半として分けて分画し、各分画物に対する分析結果を表13に示した。また、リグナンの含量が高い分画物である抽出前半の分画とその後の分画物である抽出後半の分画とを混合した場合のシミュレーション結果を表14に示した。
【0151】
超臨界抽出において、リグナンの溶解度が最大であったのはS/F比8.33であった。
【0152】
【表13】
【0153】
【表14】
【0154】
表14を参照すると、各分画物の混合比を調整することによって、リグナンの含量又は酸価を目的に応じて調整することができ、これは、所望の品質の製品の生産に有利であることが分かる。
【0155】
実験例8
以下の表15では、実施例3(超臨界抽出による高濃縮リグナンの抽出方法)で得られたゴマ油に、実施例9で得られたゴマ油(実施例2で得られたゴマ油にケイ酸マグネシウム3%を混合して濾過することにより製造したサンプル)を35%又は70%の割合で混合し、ゴマ油の嗜好度の評価を行い、その結果を示した。嗜好度調査に参加したパネリストは14名であり、サンプルの試食方法は、茹でたホウレンソウを塩0.5%と各ゴマ油10%であえて調理したホウレンソウを製造して供給することにより行った。
【0156】
【表15】
【0157】
脱酸処理したゴマ油を70%混合した処理群では、嗜好度が若干低かったが、有意差のない水準であり、むしろ35%処理群は嗜好度が増加し、混合比による嗜好度の傾向はなく、結果的にケイ酸マグネシウム処理による食味減少の影響はないと判断された。
【符号の説明】
【0158】
1:抽出器:原料であるゴマの粉末を充填し、超臨界二酸化炭素と接触させることによってゴマ油を抽出する区間
2:圧力調節器:抽出器内の圧力を一定に維持する装置
3:分離器:二酸化炭素と抽出物とを分離する場所
4:冷却器:気化により分離された二酸化炭素を冷却して液化させる場所
5:二酸化炭素貯蔵槽:液化した二酸化炭素を貯蔵する場所
6:ポンプ:二酸化炭素を供給する装置
7:熱交換器:超臨界二酸化炭素の温度を調節する装置
8:分画貯蔵槽A:抽出前期の分画物を貯蔵する場所
9:分画貯蔵槽B:抽出後期の分画物を貯蔵する場所
A:分画貯蔵槽1のバルブ
B:分画貯蔵槽2のバルブ
10:熟成タンク:蝋分の静置及び油の熟成のため、超臨界抽出した油を一定温度で静置するためのタンク
11:混合器:蝋分及び遊離脂肪酸を除去するため、硅藻土及びケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム又は水酸化ナトリウムとゴマ油とを混合するための装置
12:濾過助剤:硅藻土及びケイ酸マグネシウムを適当な量投入した後、一定時間攪拌する
13:フィルタープレス:遊離脂肪酸及び蝋分とともに固化した濾過助剤を濾過する工程
14:製品タンク:製品油の保存タンク
図1
図2
図3
図4
図5