【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によるシステムおよび方法の提示を明瞭にするために、幾つかの用語を用いている。
・透過性放射線源は、放射性物質(Co60またはSe75等)の天然源、X線発生器または線形加速器(LINAC)または固形培地内の他の透過性放射線源であり得る、電離放射線源を指す。天然源を用いる場合、放射性物質の選定は、所望される侵入深さ、およびスキャンが行われる現場における利用可能な排除区域のサイズに依存して行われるものとする。
・走査フレームは、透過性放射線源、およびこの場合は航空機であるスキャンされる物体が通っていく予め規定された距離で位置決めされた放射線検出器のアレイ、より成るアセンブリを指す。
・検出器のアレイは、一列または複数列に位置合わせされる一連の透過性放射線検出器を指す。
・検出モジュールアセンブリは、前後に位置合わせされた複数の等しい検出器アレイの集合体を指す。
【0018】
非侵入的な検査システムは2つ以上の検出器アレイの照射を含意し、典型的にはその1つは航空機滑走路上に位置決めされ、かつ第2のアレイは略垂直な支持体上に位置決めされる。検出器により生成される電気信号は、アナログ/デジタル式に処理されてX線画像が生成され、これがワークステーションのモニタに現れる。通常は数千である多数の検出器から生成される情報の処理は、複雑な電子ブロック、およびブームとX線画像を生成するサブシステムとの間に多数の平行接続部を有するワイヤネットワークを含意する。
【0019】
本発明による航空機の完全かつ非侵入的な検査システムは、上に検査システムのコンポーネントを運搬する金属製上部構造物が据え付けられるトラックシャーシであり得るモバイル・スキャナ・ユニットと、可動式航空機牽引ユニットと、放射線検出器アレイにより提供されるデータを捕捉し、処理しかつ表示するため並びにプロセス制御をスキャンするためのコンピュータシステムと、略垂直な投射により検査対象航空機のX線画像を得るために使用される第1の走査フレームと、略水平な投射により検査対象航空機のX線画像を得るために使用される第2の走査フレームと、可動走査ユニットへ接続される、上に放射線検出器アレイが搭載される1つまたは複数のセグメントより成る機械的ブームであって、走査中、放射線検出器アレイは、可動走査ユニットのフレームに沿って検査対象航空機の側面まで拡張される位置に存在する機械的ブームと、その放射ビームが機械的ブームへ方向づけられて放射線検出器アレイが暴露されるように、検査対象航空機の機械的ブームとは反対側の側面に位置合わせされるリロケートされる放射線源と、で構成される。
【0020】
略垂直の投射(上方からの視点)を生成する走査フレームは、1つまたは複数のセグメントで構成される機械的ブームであって、一方の端が可動走査ユニットへ接続されかつもう一方の端に、走査モードにおいて検査対象航空機の上に位置合わせされる透過性放射線源を搭載している、よって、放射線源によって発せられる放射ビームが略垂直面内で地面へと方向づけられる、機械的ブームと、地上に据え付けられる検出器アレイであって、検出器が、検査対象航空機が可動ユニットに牽引されてその上を通過する放射線源ビームに暴露されるように、検査対象航空機の下へ位置合わせされる検出器アレイと、から成る。
【0021】
略水平の投射(側面図)を生成する走査フレームは、可動走査ユニットへ接続される1つまたは複数のセグメントで構成される、上に別の放射線検出器アレイが搭載されかつ走査プロセスでは検査対象航空機の側面上で略垂直位置を有する別の機械的蝶番アームと、その放射ビームが機械的ブームへと方向づけられて放射線検出器アレイを暴露するように、機械的ブームとは反対側の検査対象航空機の側面に置かれるリロケート可能放射線源と、から成る。
【0022】
システムの作動において、牽引デバイスは、2つの走査フレームを介して検査対象航空機を引っ張り、その動作は、異なる視点から航空機の少なくとも2つのX線画像を得るように、透過性放射線源の開始および放射線検出器からのデータ捕捉と同期される。
【0023】
システムの輸送モードにおいて、機械的ブームおよび蝶番式ブームは、車両を公道における合法的な輸送サイズに分類できるようにする最小限の全体サイズを保証するために折り畳まれる。走査モードでは、機械的ブームが拡張して、拡張状態における可動走査ユニットのシャーシに対して走査対象航空機のサイズ(高さおよび翼長)に依存する可変角度を形成し、かつ蝶番式ブームは、軸を中心とする少なくとも90度の回転動作によって、略垂直位置にされてシャーシの後側へと方向づけられる。
【0024】
機械的ブームおよび蝶番式ブームの移動は、PLCから液圧バルブまたはコマンドコンポーネントを介して受信されるコマンドに従って、液圧シリンダ、サーボ機構または電気機械的アクチュエータにより自動的に実行される。
【0025】
可動走査ユニット(MSU)は、走査フレームからの走査対象航空機の位置監視サブシステムを装備し、これは、航空機の移動方向に第1の走査フレームの近傍における航空機の存在を検出する少なくとも1つの近接センサを含み、これは、走査開始において放射線放射を自動的に開始しかつ走査の終わりで放射線放射を停止するために使用される。
【0026】
走査システムは、可動遠隔制御センタ(MRCC)を含み、これは、排除区域の外側に位置合わせされ、かつその目的は、コンピュータシステムと相互接続されるITシステムを介する非侵入的検査に関わる全てのプロセスを無線またはケーブルにより遠隔的に管理することにある。可動遠隔制御センタの内部には、走査画像を捕捉し、処理し、記憶しかつ表示するサブシステムが存在する。走査システムは、外周防護サブシステムも含む。
【0027】
可動走査ユニット、この場合はトラックシャーシ、は、中間の変形可能な平行四辺形形状の支持システム上、または硬質の中間セグメント上に、第1の放射線源を保持するブームを搭載する補助シャーシを装備していて、これは、輸送モードでは可動ユニットのプラットフォーム上へ折り畳まれ、走査モードの間は垂直位置へと上に広げられ、よって取り付けられる機械的ブームは、航空機の走査が容易であるように適切な高さまで上昇されることが可能である。ブームは、別の実装変形例が固定構造を有し得る場合、または代替的な実装変形例において、走査対象航空機のサイズに依存して長さが伸長可能な入れ子式セクションで構成されることが可能である。
【0028】
検出器ライン(モジュール式検出アッセンブリ)は、航空機の滑走面上に位置決めされ、かつ軽量で扱いやすい合金から製造される金属ハウジング内に搭載される。可動走査ユニットのオペレータは、アセンブリ全体を容易に取り扱うことができる。
【0029】
地表面に置かれる透過性放射線の検出器ライン(モジュール式検出アセンブリ)は、中実ブロックで製造され、各モジュールは、上半分のハウジング、下半分のハウジングから製造される密封された技術的ソケット内に搭載される放射線検出器アレイで構成され、上半分および下半分のハウジング間には、接触点の支持ネットワークが存在する。
【0030】
サブシステムは相補的に組み合わされ、よって、支持点は重い航空機を支持点上で牽引できるようにするために必要な機械抵抗を保証する。一方で、遮蔽されない透過性放射線が上半分のハウジングの壁を介して放射線検出器アレイに至る通路を提供する。
【0031】
補助シャーシに沿って、軸周囲のロータリジョイントには、少なくとも2つの放射線検出器アレイを装備する蝶番式ブームが搭載される。
【0032】
輸送モードにおいて、機械的ブームおよび蝶番式ブームは、シャーシに沿って折り畳まれ、かつ透過性放射線のモジュール式検出アッセンブリ、即ちリロケート可能ソース、ならびに可動牽引デバイスは、シャーシ上、より正確には上部構造物上へ装填され、システム全体は、下記のシーケンスを辿って輸送モードから走査モードへ転換する:
・検出器ライン(モジュール式検出アセンブリ)は、シャーシから取り外され、かつ滑走路上でオペレータによりシャーシの長手軸に沿って、垂直線が機械的ブームの端に置かれた透過性放射線源から下降して検出器ライン(モジュール式検出アセンブリ)の中心に落ちるように組み立てられる。
・シャーシが、4点液圧作動式サポート、即ちアウトリガ(outriggers)を介して地面へロックされる。
・可動透過性放射線源がシャーシから取り外され、走査されるべき航空機がこれと可動放射線源とを通過できるように、可動走査ユニットから対応する距離を隔てて置かれる。
・牽引デバイスがシャーシから取り外され、走査対象航空機へ取り付けられるために、排除区域の入口近く、検出器ラインより前へ置かれる。
・機械的ブームは、倒伏位置からシャーシに沿って上方位置へとシャーシ面に対して可変角度を形成する上昇動作を実行し、角度は、走査されるべき航空機のサイズにより決定される。
・入れ子式ブームを用いる実装バージョンでは、機械的ブームは、航空機の翼長に依存して予め規定される長さまで拡張動作を実行し、ブームの折り畳みは、運転者キャビンからシャーシの後側まで少なくとも90度の回転動作を実行し、最終的に、走査されるべき航空機のサイズおよび翼長に従って便利な角度で置かれる。
【0033】
本発明による非侵入的な制御方法は、可動牽引ユニットが、適切な位置において走査エリア内へ運ばれる検査対象航空機へ結合され、適切な位置において走査エリア内へ運ばれる検査対象航空機へ結合され、2つの放射線源の開始ならびに検出器アレイからデータ補足のためのサブシステムへのデータ送信と同期される2つの走査フレームを介して追跡され、得られた検出器からのデータを処理・表示・記憶し、X 線画像を生成・表示するために処理することで、従来のシステムの欠点を排除する。
【0034】
航空機は、2つの走査フレームを介して、航空機の種類および申告された貨物に依存する推奨走査速度で牽引され、前記速度は、可動牽引デバイス上に位置決めされる速度測定サブシステムによって測定される。走査対象航空機の位置監視サブシステムは、航空機の進行方向で第1の走査フレームの近傍における航空機の存在を検出して放射線源の開始を決定する少なくとも1つの近接センサを含む。
【0035】
走査プロセスは、次のような場合に自動停止する:航空機が2つの走査フレームを完全に通過した場合、侵入者が排除区域を突破した場合、センサがトリガされて、航空機がその既定の軌跡を見失ったことがシグナリングされた場合、または、航空機が走査システムの何れかのコンポーネントに危険なほど近づいている場合、航空機の速度が、システムでは管理し得ない既定限度を外れて危険なほど変動する場合。走査プロセスの緊急停止は、走査プロセス中のいつでもオペレータにより手動で開始することができる。走査プロセスの間、オペレータの画面には、航空機の動作と同時に、かつこれに同期してX線画像が表示される。
【0036】
本発明の優位点は、下記の通りである。
・短時間で多数の航空機を検査する(毎時20機まで)。
・操縦室、機体および荷物室、翼および航空機へ取り付けられる任意のオブジェクトを含む、航空機の完全な検査。
・検査対象航空機の上部および側面に位置決めされる2つの透過性放射線源により生成される2つの異なる視点、即ち上方からの視点および横からの視点、からのX線画像を見ることにより、走査対象航空機の完全な画像を達成する。
・異なる視点から同時に、決定的でないものは一方のみであり得る2つのビューを生成することにより、発見しようとするエレメントの不利な位置により生成される決定的でないX線画像を得るという不利なケースを回避する。
・オペレータの職業的被曝のリスク、および排除区域への潜在的侵入者による偶発的被曝のリスクをなくす。
・シフトにつき一名に制限される操作要員を使用する。
・システムの可動性、フレキシブルさ、および操縦性。
・高度な自動化。
・ICT管理プロセスに起因するプロセスの自動化および不動時間の短縮による、生産性の向上、単位時間当たりの被検査航空機数の増加。