(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記切削工程は、1つのワークに対して前記第1の工程を実施する工程と、前記1つのワークを工作機械から取り外す工程と、他のワークを前記工作機械に取り付ける工程と、前記他のワークに対して前記第2の工程を実施する工程とを含む、請求項2に記載の加工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
工作機械にて加工するワークの種類によっては、ワークの外側の表面を切削するのではなく、ワークの内側の表面を切削する場合がある。工作機械にてワークを加工する場合に、ワークの外側の表面は容易に加工することができる。ところが、ワークの内側の表面を加工する場合には、工作機械にて高品位に切削することは難しい場合がある。
【0007】
例えば、円筒状のワークの内面に、細長く伸びる溝部を形成する場合には、工具としてエンドミル等を用いることができる。エンドミルは、中心軸線の周りに
連続的に回転する回転工具である。エンドミルを用いて溝部を形成した場合に、加工面に円形の筋目が発現する。溝部の表面には、様々な方向に細かい凹凸が形成される。例えば、溝部の内部に密閉部材が配置されて、シール部が形成される場合がある。溝部の表面がシール面として用いられる場合には、溝部の幅方向において気体が漏れやすい。
【0008】
このために、エンドミルにて加工を行った後には、研磨が必要であった。例えば、作業者は、流体研磨または電解研磨等の研磨を行う必要があった。または、作業者は、手磨きで溝部の表面を研磨する必要があった。更に、流体研磨、電解研磨、または手磨き等を実施すると、角部が丸くなったり、寸法精度が悪化したりする場合があった。
【0009】
本発明は、筒状のワークの内面またはワークの穴部の内面を精度よく加工できる加工方法および工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の加工方法は、2つの直線送り軸および1つの回転送り軸を含む工作機械にて筒状のワークの内面またはワークの穴部の内面を切削する加工方法である。2つの直線送り軸は、
主軸の軸線に対して平行な方向
に延びる
Z軸および
主軸の軸線に対して垂直な方向に延びる
Y軸である。
1つの回転送り軸は、主軸の延びる方向に平行な軸線の周りのC軸である。ワークを切削する工具はバイトである。
主軸と工具とを連結する連結装置を工作機械に配置する。連結装置は、主軸に連結され、Z軸に平行な軸線の周りに回転する入力シャフトと、工具が連結され、Z軸に垂直な軸線の周りの工具回転送り軸に沿って回転する出力シャフトと、入力シャフトの回転力を出力シャフトに伝達する機構とを有する。工具回転送り軸の軸線に沿って工具が延びるように出力シャフトに工具を連結し、出力シャフトが回転することにより工具回転送り軸の軸線を中心とした円周上の工具の向きが変化する。加工方法は、ワークの内部に工具を配置する工程と、ワークまたは工具を
Y軸に沿って移動して工具をワークに押圧する工程と、ワークまたは工具を
C軸に沿って回転させながら、ワークまたは工具を
Z軸に沿って移動して、ワークの内面または穴部の内面を切削する切削工程とを含む。切削工程は、ワークを切削すると共に工具回転送り軸に沿って工具
の向きを変化させることにより、ワークの内面または穴部の内面に沿う工具経路
の延びる方向に対して
予め設定された向きに工具の向きを調整する工程を含む。
調整する工程は、主軸の回転角
を制御することにより工具回転送り軸における工具の回転角を制御する。
【0014】
本発明の第2の加工方法は、2つの直線送り軸および1つの回転送り軸を含む工作機械にて筒状のワークの内面またはワークの穴部の内面を切削する加工方法である。2つの直線送り軸は、
主軸の軸線に対して平行な方向
に延びる
Z軸および
主軸の軸線に対して垂直な方向に延びる
Y軸である。
1つの回転送り軸は、主軸の延びる方向に平行な軸線の周りのC軸である。ワークを切削する工具はバイトである。
主軸と工具とを連結する連結装置を工作機械に配置する。連結装置は、主軸に連結され、Z軸に平行な軸線の周りに回転する入力シャフトと、工具が連結され、Z軸に垂直な軸線の周りの工具回転送り軸に沿って回転する出力シャフトと、入力シャフトの回転力を出力シャフトに伝達する機構とを有する。工具回転送り軸の軸線に沿って工具が延びるように出力シャフトに工具を連結し、出力シャフトが回転することにより工具回転送り軸の軸線を中心とした円周上の工具の向きが変化する。加工方法は、ワークの内部に工具を配置する工程と、ワークまたは工具を
Y軸に沿って移動して工具をワークに押圧する工程と、ワークまたは工具を
C軸に沿って回転させながら、ワークまたは工具を
Z軸に沿って移動して、ワークの内面または穴部の内面を切削する切削工程とを含む。
ワークの内面または穴部の内面に沿う第1の工具経路と、ワークの内面または穴部の内面に沿って、第1の工具経路の延びる方向と異なる方向に延びる第2の工具経路とが予め定められている。切削工程は、
第1の工具経路の延びる方向に対して予め設定された工具の向きになるように、工具回転送り軸
における工具の回転角を第1の回転角に維持しながら切削を行う第1の工程と、
第1の工程の切削が終了した後に、第2の工具経路の延びる方向に対して予め設定された工具の向きになるように、工具回転送り軸
における工具の回転角を第2の回転角に維持しながら切削を行う第2の工程とを含む。主軸の回転角
を制御することにより工具回転送り軸における工具の回転角を制御する。
【0015】
上記発明においては、切削工程は、1つのワークに対して第1の工程および第2の工程を実施する工程を含むことができる。
【0016】
上記発明においては、切削工程は、1つのワークに対して第1の工程を実施する工程と、1つのワークを工作機械から取り外す工程とを含むことができる。切削工程は、他のワークを工作機械に取り付ける工程と、他のワークに対して第2の工程を実施する工程とを含むことができる。
【0017】
本発明の
第1の工作機械は、主軸を含む主軸ヘッドを備える。工作機械は、2つの直線送り軸および1つの回転送り軸を含む送り軸にて工具に対するワークの相対位置を変更する移動装置と、移動装置を制御する制御装置とを備える。2つの直線送り軸は、
主軸の軸線に対して平行な方向
に延びる
Z軸および
主軸の軸線に対して垂直な方向に延びる
Y軸である。
1つの回転送り軸は、主軸の延びる方向に平行な軸線の周りのC軸である。工具は、ワークを切削するバイトである。移動装置は、主軸を回転させる主軸モータと、
主軸と工具とを連結する連結装置とを含む。
連結装置は、主軸に連結され、Z軸に平行な軸線の周りに回転する入力シャフトと、工具が連結され、Z軸に垂直な軸線の周りの工具回転送り軸に沿って回転する出力シャフトと、入力シャフトの回転力を出力シャフトに伝達する機構とを有する。工具は、工具回転送り軸の軸線に沿って工具が延びるように出力シャフトに連結され、出力シャフトが回転することにより工具回転送り軸の軸線を中心とした円周上の向きが変化する。制御装置は、筒状のワークの内面またはワークの穴部の内面を切削する加工プログラムに基づいて、ワークの内面または穴部の内面に沿う工具経路
の延びる方向に対して
予め設定された向きに工具の向きを調整する制御と、ワークまたは工具を
Y軸に沿って移動して工具をワークに押圧する制御と、ワークまたは工具を
C軸に沿って回転させながら、ワークまたは工具を
Z軸に沿って移動する制御とを実施することにより、ワークの内面または穴部の内面を切削する。
本発明の第3の加工方法は、2つの直線送り軸および1つの回転送り軸を含む工作機械にて筒状のワークの内面またはワークの穴部の内面を切削する加工方法である。2つの直線送り軸は、主軸の軸線に対して平行な方向に延びるZ軸および主軸の軸線に対して垂直な方向に延びるY軸である。1つの回転送り軸は、主軸の延びる方向に対して傾斜する軸線の周りのC軸である。ワークを切削する工具はバイトである。主軸と工具とを連結する連結装置を工作機械に配置する。連結装置は、主軸に連結され、Z軸に平行な軸線の周りに回転する入力シャフトと、工具が連結され、Z軸に対して傾斜する軸線の周りの工具回転送り軸に沿って回転する出力シャフトと、入力シャフトの回転力を出力シャフトに伝達する機構とを有する。工具回転送り軸の軸線に沿って工具が延びるように出力シャフトに工具を連結し、出力シャフトが回転することにより工具回転送り軸の軸線を中心とした円周上の工具の向きが変化する。加工方法は、ワークの内部に工具を配置する工程と、ワークおよび工具のうち少なくとも一方をY軸およびZ軸に沿って移動して工具をワークに押圧する工程と、ワークまたは工具をC軸に沿って回転させながら、ワークおよび工具のうち少なくとも一方をZ軸およびY軸に沿って移動して、ワークの内面または穴部の内面を切削する切削工程とを含む。切削工程は、ワークを切削すると共に工具回転送り軸に沿って工具の向きを変化させることにより、ワークの内面または穴部の内面に沿う工具経路の延びる方向に対して予め設定された向きに工具の向きを調整する工程を含む。調整する工程は、主軸の回転角を制御することにより工具回転送り軸における工具の回転角を制御する。
本発明の第4の加工方法は、2つの直線送り軸および1つの回転送り軸を含む工作機械にて筒状のワークの内面またはワークの穴部の内面を切削する加工方法である。2つの直線送り軸は、主軸の軸線に対して平行な方向に延びるZ軸および主軸の軸線に対して垂直な方向に延びるY軸である。1つの回転送り軸は、主軸の延びる方向に対して傾斜する軸線の周りのC軸である。ワークを切削する工具はバイトである。主軸と工具とを連結する連結装置を工作機械に配置する。連結装置は、主軸に連結され、Z軸に平行な軸線の周りに回転する入力シャフトと、工具が連結され、Z軸に対して傾斜する軸線の周りの工具回転送り軸に沿って回転する出力シャフトと、入力シャフトの回転力を出力シャフトに伝達する機構とを有する。工具回転送り軸の軸線に沿って工具が延びるように出力シャフトに工具を連結し、出力シャフトが回転することにより工具回転送り軸の軸線を中心とした円周上の工具の向きが変化する。加工方法は、ワークの内部に工具を配置する工程と、ワークおよび工具のうち少なくとも一方をY軸およびZ軸に沿って移動して工具をワークに押圧する工程と、ワークまたは工具をC軸に沿って回転させながら、ワークおよび工具のうち少なくとも一方をZ軸およびY軸に沿って移動して、ワークの内面または穴部の内面を切削する切削工程とを含む。ワークの内面または穴部の内面に沿う第1の工具経路と、ワークの内面または穴部の内面に沿って、第1の工具経路の延びる方向と異なる方向に延びる第2の工具経路とが予め定められている。切削工程は、第1の工具経路の延びる方向に対して予め設定された工具の向きになるように、工具回転送り軸における工具の回転角を第1の回転角に維持しながら切削を行う第1の工程と、第1の工程の切削が終了した後に、第2の工具経路の延びる方向に対して予め設定された工具の向きになるように、工具回転送り軸における工具の回転角を第2の回転角に維持しながら切削を行う第2の工程とを含む。主軸の回転角を制御することにより工具回転送り軸における工具の回転角を制御する。
本発明の第2の工作機械は、主軸を含む主軸ヘッドを備える。工作機械は、2つの直線送り軸および1つの回転送り軸を含む送り軸にて工具に対するワークの相対位置を変更する移動装置と、移動装置を制御する制御装置とを備える。2つの直線送り軸は、主軸の軸線に対して平行な方向に延びるZ軸および主軸の軸線に対して垂直な方向に延びるY軸である。1つの回転送り軸は、主軸の延びる方向に対して傾斜する軸線の周りのC軸である。工具は、ワークを切削するバイトである。移動装置は、主軸を回転させる主軸モータと、主軸と工具とを連結する連結装置とを含む。連結装置は、主軸に連結され、Z軸に平行な軸線の周りに回転する入力シャフトと、工具が連結され、Z軸に対して傾斜する軸線の周りの工具回転送り軸に沿って回転する出力シャフトと、入力シャフトの回転力を出力シャフトに伝達する機構とを有し、工具は、工具回転送り軸の軸線に沿って工具が延びるように出力シャフトに連結され、出力シャフトが回転することにより工具回転送り軸の軸線を中心とした円周上の向きが変化し、制御装置は、筒状のワークの内面またはワークの穴部の内面を切削する加工プログラムに基づいて、ワークの内面または穴部の内面に沿う工具経路の延びる方向に対して予め設定された向きに工具の向きを調整する制御と、ワークおよび工具のうち少なくとも一方をY軸およびZ軸に沿って移動して工具をワークに押圧する制御と、ワークまたは工具をC軸に沿って回転させながら、ワークおよび工具のうち少なくとも一方をZ軸およびY軸に沿って移動する制御とを実施することにより、ワークの内面または穴部の内面を切削する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、筒状のワークの内面またはワークの穴部の内面を精度よく加工できる加工方法および工作機械を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1から
図9を参照して、実施の形態における加工方法および工作機械について説明する。本実施の形態においては、数値制御式の工作機械を例示して説明する。
【0021】
図1は、本実施の形態における第1の工作機械の概略正面図である。第1の工作機械11は、基台となるベッド13と、ベッド13の上面に立設されたコラム15とを備える。ベッド13の上面においてコラム15の前方には、キャリッジ27が配置されている。キャリッジ27の上面には、ワーク1を回転させる回転テーブル35が配置されている。回転テーブル35には、保持部材を介してワーク1が固定される。
【0022】
コラム15の前面には、サドル17が配置されている。さらに、サドル17の前面には、主軸を含む主軸ヘッド21が配置されている。主軸ヘッド21には、主軸の延びる方向と異なる方向に工具を保持する連結装置41が連結されている。工具は、
ワーク1の表面をはぎ取るように切削するバイトである。本実施の形態では、工具としてヘールバイト51を用いている。
【0023】
本実施の形態の工具は、刃部の先端が直線状のヘールバイトであるが、この形態に限られず、任意のバイトを使用することができる。例えば、所望の形状の刃部を有する総形バイトが使用されていても構わない。また、工具としては、旋盤で用いられる旋盤バイト等のバイトを採用しても構わない。ヘールバイトは、線状にワークに接触する一方で、旋盤バイトは点状にワークに接触する。
【0024】
主軸ヘッド21は、鉛直方向に移動可能に形成されている。第1の工作機械11には、主軸ヘッド21がサドル17に対して移動する方向にZ軸が設定されている。また、第1の工作機械11には、X軸およびY軸が設定されている。X軸およびY軸は水平方向に延び、互いに直交する軸である。サドル17は、主軸ヘッド21と一体的にX軸方向に移動する。キャリッジ27は、回転テーブル35と一体的にY軸方向に移動する。
【0025】
図2に、本実施の形態における第1の工作機械のブロック図を示す。
図1および
図2を参照して、工作機械11は、連結装置41に連結されたヘールバイト51に対するワーク1の相対位置を変更する移動装置30を備える。移動装置30は、それぞれの移動軸に沿ってワーク1または工具を移動する。移動装置30は、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に工具とワーク1とを相対的に移動させることができる。さらに、本実施の形態における移動装置30は、回転テーブル35を含む。回転テーブル35がC軸に沿ってワーク1を回転することにより、ヘールバイト51に対してワーク1を相対的に回転移動させることができる。第1の工作機械11の移動装置30は、各軸サーボモータ75を含む。
【0026】
本実施の形態における移動装置は、Y軸移動装置を含む。Y軸移動装置は、ベッド13の上面に配置されている一対のY軸レール29を含む。キャリッジ27は、Y軸レール29に沿って往復移動が可能に形成されている。Y軸移動装置は、Y軸送りモータを駆動することにより、キャリッジ27を移動させる。回転テーブル35およびワーク1は、キャリッジ27と共にY軸方向に移動する。
【0027】
本実施の形態における移動装置は、X軸移動装置を含む。X軸移動装置は、コラム15の前面に形成されている一対のX軸レール19を含む。サドル17は、X軸レール19に沿って往復移動が可能に形成されている。X軸移動装置は、X軸送りモータを駆動することにより、サドル17を移動させる。主軸ヘッド21および工具は、サドル17と共にX軸方向に移動する。
【0028】
本実施の形態における移動装置は、Z軸移動装置を含む。Z軸移動装置は、サドル17の前面に形成されている一対のZ軸レール23を含む。主軸ヘッド21は、Z軸レール23に沿って往復移動が可能に形成されている。Z軸移動装置は、Z軸送りモータを駆動することにより、主軸ヘッド21を移動させる。工具は、主軸ヘッド21と共にZ軸方向に移動する。
【0029】
本実施の形態における移動装置は、C軸移動装置を含む。C軸移動装置は、回転テーブル35を含む。回転テーブル35の内部には駆動モータが配置されている。回転テーブル35は、駆動モータが駆動することによりC軸に沿ってワーク1を回転するように形成されている。
【0030】
工作機械11は、各送り軸の移動装置30の制御を行う制御装置70を備える。制御装置70は、例えば、バスを介して互いに接続されたCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)等を含む演算処理装置にて構成されている。
【0031】
制御装置70は、入力部71、読取解釈部72、補間演算部73、およびサーボ制御部74を含む。数値制御式の工作機械にて加工する場合には、加工プログラム76を予め準備する。加工プログラム76は、ワークの目標形状に基づいてCAM(Computer Aided Manufacturing)装置等にて作成することができる。ワークの目標形状は、例えば、CAD(Computer Aided Design)装置にて作成することができる。
【0032】
入力部71には、加工プログラム76が入力される。加工プログラム76には、ワークに対する工具の相対移動の情報が含まれている。なお、制御装置70の情報制御部81において作業者が新規に作成したり編集したりした加工プログラムが入力部71に入力されても構わない。
【0033】
読取解釈部72は、入力部71から加工プログラム76を読み込む。読取解釈部72は、移動指令を補間演算部73に送出する。補間演算部73は、補間周期毎の位置指令値を演算する。例えば、補間演算部73は、移動指令に基づいて設定された時間間隔ごとの移動量を算出する。補間演算部73は、位置指令値をサーボ制御部74に送出する。サーボ制御部74は、位置指令値に基づいてX軸およびY軸などの各送り軸の移動量を算出し、各軸サーボモータ75を駆動する。
【0034】
本実施の形態の制御装置70は、ワークの加工に関連する情報を制御する情報制御部81を含む。制御装置70は、作業者が加工に関連する情報を入力する操作部84と、加工に関連する情報を表示する表示部85とを含む。操作部84は、キーボード等を有し、作業者の手動操作により加工情報を入力できるように形成されている。表示部85は、加工に関する情報を表示する。制御装置70は、加工に関する情報を記憶する記憶部83を含む。記憶部83は、前述のROMやRAMの他に、通信インターフェイスを介して接続されたメモリーカードまたはハードディスクなどの記憶装置であっても構わない。
【0035】
本実施の形態の移動装置30は、主軸を中心軸の周りに回転させる主軸モータ77を含む。主軸モータ77は、主軸ヘッド21の内部に配置されている。本実施の形態の主軸モータ77は、工具の中心軸の周りに工具を連続的に回転させるのではなく、工具の向きを変更する。サーボ制御部74は、ヘールバイト51を回転させ
て向きを変える主軸モータ77の回転角を制御する。サーボ制御部74は、加工プログラム76にて指定される主軸モータ77の回転角に基づいて電流指令値を主軸モータ77に送出する。
【0036】
各軸サーボモータ75には、各軸サーボモータ75の回転角を検出する回転角検出器78が取り付けられている。演算処理部82は、回転角検出器78の出力に基づいて、それぞれの移動軸における位置を検出することができる。主軸モータ77には、主軸モータ77の回転角を検出する回転角検出器79が取り付けられている。後述するように、回転角検出器79の出力に基づいて、工具の向きを検出することができる。
【0037】
情報制御部81は、加工に関する情報の演算や処理を行う演算処理部82を含む。演算処理部82は、回転角検出器78,79の出力を受信して、各軸サーボモータ75の動作および主軸モータ77の動作を補正する指令を読取解釈部72に送出することができる。
【0038】
図1を参照して、本実施の形態の移動装置は、連結装置41を含む。連結装置41の入力シャフトは、主軸ヘッド21の内部の主軸に連結されている。ヘールバイト51には、連結装置41の出力シャフトに連結されている。ヘールバイト51は、連結装置41を介して、主軸ヘッド21の内部の主軸の回転力が伝達される。連結装置41は、回転送り軸の軸線の延びる方向を変換するように形成されている。連結装置41は、例えばアングルヘッドにて構成されている。
【0039】
連結装置41は、任意の機構にて回転送り軸の軸線の向きを変更することができる。例えば、連結装置41は、複数の傘歯車を含み、傘歯車にて軸線の向きを変更することができる。または、連結装置41は、ユニバーサルジョイントを含み、ユニバーサルジョイントにて軸線の向きを変更することができる。
【0040】
連結装置41は、主軸ヘッド21の筐体に固定される固定部42を含む。固定部42が主軸ヘッド21に固定されることにより、連結装置41の筐体が軸線93の周りに回転することを回避することができる。
【0041】
主軸モータ77が駆動することにより、主軸は軸線93の周りの回転送り軸C
sに沿って回転する。この主軸の中心軸の周りの回転送り軸C
sは、スピンドル軸とも称される。主軸の回転は、連結装置41を介してヘールバイト51に伝達される。ヘールバイト51は、軸線94の周りの回転送り軸C
s1に沿って回転する
ことにより向きを変える。本実施の形態では、ヘールバイト51を回転させるための回転送り軸C
s1を工具回転送り軸と称する。本実施の形態のヘールバイト51は、軸線94がヘールバイト51の工具先端点を通るように、連結装置41の出力シャフトに固定されている。このように、連結装置41は、回転送り軸であるC
s軸の軸線93の向きを、回転送り軸C
s1の軸線94の向きに変換している。
【0042】
軸線93は、工作機械11のC軸の軸線92と平行である。すなわち、軸線93は、工作機械11の1つの回転送り軸
の軸線と平行になっている。第1の工作機械11では、軸線94は、C軸の軸線92に対して垂直な方向に延びる。また、軸線94は、C
s軸の軸線93に対して垂直な方向に延びる。ヘールバイト51は、軸線94に沿って延びるように保持されている。また、連結装置41は、主軸の延びる方向に対して垂直な方向にヘールバイト51を保持している。
【0043】
主軸の回転送り軸C
sの回転角は、ヘールバイト51の回転送り軸C
s1の回転角に対応する。工作機械11においては、主軸モータ77が駆動することにより、ヘールバイト51の向きが変化する。制御装置70は、主軸の回転角を設定することにより、ヘールバイト51の向き(工具回転送り軸における回転角)を調整することができる。
【0044】
また、
図2を参照して、主軸モータ77には、主軸モータ77の回転角を検出する回転角検出器79が取り付けられている。主軸の回転角を検出することにより、ヘールバイト51の回転送り軸C
s1に関する回転角を検出することができる。制御装置70は、回転角検出器79の出力に基づいて、主軸の位相を検出することができる。主軸の位相は、回転送り軸C
s1におけるヘールバイトの位相に対応する。制御装置70は、工具回転送り軸の回転角を補正する等の制御を実施することができる。
【0045】
図3に、本実施の形態における第1のワークの斜視図を示す。
図4に、本実施の形態における第1のワークの断面図を示す。
図1、
図3および
図4を参照して、工作機械11は、直線送り軸であるZ軸および回転送り軸であるC軸に沿って、ワーク1に対するヘールバイト51の相対位置を変更しながら、ワーク1の内面を切削する切削工程を実施する。工作機械11は、筒状のワーク1の内面1aを切削して内面1aに溝部5を形成する。溝部5は、内面1aの周方向に沿って延びるように形成される。本実施の形態の溝部5は、延びる方向に沿って幅が一定である。溝部5は、ワーク1の底面からの高さが周方向に沿って変化するように形成されている。溝部5は、周方向に沿って延びる向きが変化するように形成されている。
【0046】
図5に、第1のワークの内面を展開したときの展開図を示す。溝部5は、ヘールバイト51が進行する工具経路91に沿って形成される。工具経路91は、工具のツール先端点が通る軌跡に相当する。工具経路91は、ワーク1の内面1aに沿っている。工具経路91は、例えば各軸の座標値によって加工プログラム76に設定されている。展開図において、ワーク1の内面1aに沿った工具経路91は、直線ではなく曲線にて形成されている。
【0047】
図6に、本実施の形態におけるヘールバイトおよびワークの溝部の拡大斜視図を示す。ヘールバイト51は、連結装置41に保持されるシャンク部52と、ワーク1を切削する刃部54とを含む。ヘールバイトは、この形態に限られず、例えば、シャンク部は、側面視した時にU字の形状を有する弾性部を含んでいても構わない。
【0048】
刃部54のワーク1と接触する先端部54aは、直線状に延びる。本実施の形態のヘールバイト51では、先端部54aの中央部にツール先端点54bが設定されている。ヘールバイト51は、矢印99に示すように、ツール先端点54bが工具経路91に沿って移動する。
【0049】
ヘールバイト51が工具経路91に沿って進行するときに、工具経路91の延びる方向に対するヘールバイト51の向きが予め定められている。
図6に示す例では、工具経路91の延びる方向に対する刃部54の先端部54aの延びる方向の角度が、ヘールバイト51の向きに相当する。ここでは、工具経路91の延びる方向に対して90°の方向に先端部54aが延びるように、ヘールバイト51の向きが制御される。ヘールバイトの向きは、工具回転送り軸の軸線94の周りの回転角に対応している。加工プログラム76には、工具回転送り軸の回転角が設定されている。
【0050】
なお、工具経路に対するヘールバイトの向きは、この形態に限られず、任意の向きを採用することができる。例えば、
図6に示す様に溝部の底面を加工する他に、溝部の側面を加工することができる。所望の側面の加工を実施できるように、軸線94の方向に平行に延びるように先端部が形成されているヘールバイトを用いることができる。この場合にも、工具経路に対するヘールバイトの向きを設定することができる。他の例としては、溝部の底面を加工する場合に、工具経路の延びる方向に対してヘールバイトの先端部の延びる方向が傾斜するように、工具の向きが設定されても構わない。または、加工を実施している期間中に、この相対的な角度を変化させても構わない。例えば、制御装置の数値制御の機能を用いて、直線送り軸および回転送り軸の動作に同期させて連続的に角度を変化させても構わない。
【0051】
図5を参照して、本実施の形態においては、展開図において工具経路91が曲線状になるために、ワーク1を切削する切削工程の期間中に、工具経路91に対するヘールバイト51の向きを変更する必要がある。例えば、工具経路91上の点91aにおいては、矢印97に示す方向が工具経路91の延びる方向になる。これに対して、工具経路91上の点91bにおいては、矢印98に示す向きが工具経路91の延びる方向になる。矢印97に示す向きと矢印98に示す向きとは、互いに平行にならずに、互いに異なる方向を向いている。
【0052】
本実施の形態においては、溝部の一方の端部から下方の端部に向かうように連続的にヘールバイト51で切削を行う。切削を行っている期間中には、ヘールバイト51の先端部の延びる方向が、工具経路91の延びる方向に対して垂直になるように制御を行う。このため、切削工程の期間中に、工具経路に対して設定された向きにヘールバイト51の向きを調整する。
【0053】
図2を参照して、制御装置70は、加工プログラム76に基づいてそれぞれの移動軸の位置を変更する。本実施の形態では、筒状のワーク1の内面を切削する加工プログラム76を予め作成することができる。加工プログラム76には、例えば、X軸、Y軸、およびZ軸の位置の情報に加えて、C軸の回転角の情報が含まれる。また、加工プログラム76には、ヘールバイト51の工具回転送り軸であるC
s1軸に関する回転角の情報が含まれる。例えば、加工プログラムには、主軸の回転角の情報が含まれる。
【0054】
制御装置70は、各軸サーボモータ75を駆動して、ワーク1の内部にヘールバイト51を配置する工程を実施する。
図1を参照して、制御装置70は、サドル17をX軸の所定の位置に配置する。制御装置70は、キャリッジ27を移動することにより、ワーク1の内部にヘールバイト51が挿入可能な位置までワーク1を移動する。
【0055】
次に、制御装置70は、主軸ヘッド21をZ軸の方向に移動して、ヘールバイト51を所定の位置に配置する。ヘールバイト51および連結装置41の一部は、ワーク1の内部に配置される。回転テーブル35は、ワーク1をC軸の方向に回転して、ワーク1を切削の開始位置に応じた位置に配置する。
【0056】
次に、制御装置70は、ヘールバイト51がワーク1の内面1aに押圧されるように、キャリッジ27をY軸方向に移動して切削を開始する。制御装置70は、C軸の方向にワーク1を回転させながら、主軸ヘッド21をZ軸の方向に移動する。更に、制御装置70は、主軸モータ77のCs軸の回転角を制御することにより、ヘールバイト51のC
s1軸の回転角を調整する。すなわち、制御装置70は、ヘールバイト51の向きを調整する。ヘールバイト51は、工具経路が延びる方向に対して予め定められた角度の方向に延びるように向きが制御される。
【0057】
本実施の形態の制御装置70は、ワーク1を切削している期間中に、回転送り軸における移動速度および直線送り軸における移動速度のうち少なくとも一方の移動速度を変化させている。そして、制御装置70は、移動速度の変化に応じてヘールバイト51に関する工具回転送り軸の回転角を制御している。
【0058】
エンドミルなどの回転工具を用いて溝部を形成した場合に、溝部の表面には、様々な方向に筋目が形成される。すなわち、溝部の表面には、様々な方向に延びる凹凸が形成される。このために、溝部にOリングのような密閉部材を配置する場合に、溝部の延びる方向に垂直な幅方向において、空気等の流体が漏れる場合がある。これに対して、本実施の形態の加工方法では、溝部5の表面には、溝部5が延びる方向にほぼ平行な筋目が形成される。このために、溝部5の延びる方向に垂直な幅方向において、空気等が漏れることを抑制することができる。
【0059】
また、ワークに形成される溝部は、所定の部品が摺動するガイド溝として用いられる場合がある。例えば、所定の部品に形成された凸部が溝部に沿って移動する場合がある。この場合においても、バイトにより溝部を形成すると、溝部の表面に形成される筋目が溝部に沿って延びるために、所定の部品を滑らかに移動させることができる。
【0060】
このように、本実施の形態の工作機械が実施する切削工程は、ワークに対する工具の相対位置を変更すると共に、ワークの内面に沿う工具経路に対して設定された向きに工具の向きを調整する。この方法を採用することにより、筒状のワークの内面を精度よく加工することができる。
【0061】
本実施の形態の加工方法では、主軸の回転をヘールバイト51に伝達する連結装置41を工作機械11に配置している。連結装置41は、工作機械11の主軸の延びる方向と異なる方向に延びるようにヘールバイト51を保持している。また、主軸の回転角に基づいて工具回転送り軸におけるヘールバイト51の回転角を制御している。この方法を採用することにより、従来の技術において工作機械に配置されていた主軸を回転させる主軸モータ77によって、ヘールバイト51の回転角を制御することができる。工作機械としては、この形態に限られず、工具回転送り軸においてヘールバイトの回転角を変化させる任意の構成を採用することができる。例えば、連結装置は、ヘールバイトの向きを変更するモータを含んでいても構わない。
【0062】
上記の実施の形態の第1のワークは、円筒状に形成されているが、この形態に限られず、任意の断面形状を有する筒状のワークに本発明を適用することができる。たとえば、断面形状が多角形の筒状のワークの内面を加工する場合に、本発明を適用することができる。
【0063】
前述の加工方法および工作機械では、筒状の部材の内面を切削する例を取り上げたが、この形態に限られず、ワークに形成された穴部の内面を切削する場合にも、本発明を適用することができる。
【0064】
図7に、本実施の形態における第2のワークの拡大斜視図を示す。ワーク2は、例えば、直方体状に形成されている。ワーク2の予め定められた部分には、穴部6が形成されている。穴部6は、底面を有していても、ワーク2を貫通していても構わない。ここでの例では、ワーク2を貫通する穴部6の内面6aに溝部5を形成する。工具経路は、穴部6の内面6aに沿って形成されている。
【0065】
溝部5は、ワーク2の底面からの高さが周方向によって変化するように形成されている。すなわち、溝部5は、底面からの高さの変化率が周方向に沿って一定にならずに、変化するように形成されている。このために、工作機械11は、ワーク2に溝部5を形成する場合にも、切削工程の期間中に、ヘールバイト51の向きを変更する必要がある。このようにワーク2に形成された穴部6の内面6aを切削する場合にも、ワーク2の穴部6の内面6aに沿う工具経路に対して設定された向きにヘールバイト51の向きを調整することができる。この結果、工作機械11は、穴部6の内面を高精度に加工することができる。
【0066】
上記の実施の形態では、工作機械11は、2つの直線送り軸であるZ軸およびY軸と、1つの回転送り軸であるC軸と、工具回転送り軸であるC
s1軸とに基づいて切削工程を実施しているが、この形態に限られず、工作機械は、更に他の送り軸を有していても構わない。
【0067】
図8に、本実施の形態における第2の工作機械の正面図を示す。第2の工作機械12は、回転テーブル35を支持する揺動部材31と、揺動部材31を支持する支持部材32とを備える。支持部材32は、キャリッジ27に固定されている。支持部材32は、X軸方向に離間された一対の支柱を有する。支持部材32は、U字形に形成されている。揺動部材31は、X軸方向の両側の端部が支持部材32の支柱に支持されている。
【0068】
工作機械12は、1つの回転送り軸としてのC軸、工具回転送り軸としてのC
s1軸に加えて、工具に対するワーク1の向きを変更する他の回転送り軸としてのA軸を有する。揺動部材31は、A軸の軸線95の周りに揺動可能に支持されている。
【0069】
移動装置は、A軸移動装置を含む。A軸移動装置は、揺動部材31をA軸の周りに駆動するサーボモータを含む。制御装置70は、サーボモータを制御することにより、揺動部材31の軸線95の周りの回転角を制御することができる。すなわち、制御装置70は、揺動部材31の傾きを制御することができる。
【0070】
連結装置41は、主軸の延びる方向に対して傾斜する方向にヘールバイト51を保持する。または、連結装置41は、C軸の軸線92に対して傾斜する軸線94に沿って延びるようにヘールバイト51を保持している。
【0071】
第2の工作機械12においては、揺動部材31がA軸の方向に揺動することにより、ワーク1を傾けることができる。すなわち、ワーク1を加工する切削工程において、ワーク1を傾けることができる。このために、ワーク1の内面1aの延びる方向に対して傾斜する方向から連結装置41を挿入することができる。
【0072】
作業者は、ワーク1の内面1aを切削する加工プログラムを予め作成することができる。切削工程の期間中のA軸の回転角は、加工プログラムに設定されている。揺動部材31にてワーク1を傾ける角度は、軸線94の傾斜する角度に対応する。制御装置70は、ヘールバイト51が延びる方向に対応して、揺動部材31のA軸方向の回転角を設定する。本実施の形態においては、ヘールバイト51が延びる方向である軸線94と、C軸の軸線92とが垂直になるように、揺動部材31のA軸の回転角が設定されている。
【0073】
第2の工作機械12においては、ワーク1を切削する切削工程は、ヘールバイト51の延びる方向に対応するように、A軸に沿ってワーク1の向きを調整する工程を含む。第2の工作機械12においても、ワーク1の内面に溝部5を形成する時に、工具経路の延びる方向に応じてヘールバイト51の向きを調整することができる。
【0074】
第2の工作機械12においては、筒状のワーク1の内面の延びる方向に傾斜する方向から連結装置41およびヘールバイト51を挿入することができる。このために、主軸ヘッド21から飛び出す連結装置41の長さを短くすることができる。すなわち、連結装置41の突出し量を短くすることができる。例えば、連結装置41の主軸の軸線93の方向の長さを短くすることができる。この結果、連結装置および工具の剛性を上げることができる。または、連結装置および工具の破損を抑制することができる。
【0075】
上記の実施の形態では、1つの溝部において溝部の延びる方向が変化する例を示したが、この形態に限られない。1つの溝部において、溝部の延びる方向が一定である場合がある。1つの溝部を形成している期間中に、工具回転送り軸におけるバイトの回転角を調整する必要がない場合がある。この場合にも、複数の溝部を形成する場合に本実施の形態の工作機械を用いることができる。
【0076】
図9に、本実施の形態における第3のワークの内面を展開したときの展開図を示す。第3のワークは、第1のワークと同様に円筒の形状を有する。ワークの内面1aに複数の溝部5a,5bが形成される。それぞれの溝部5a,5bは、展開図において、延びる方向が一定である。すなわち、展開図において、溝部5aを形成するための工具経路96aおよび溝部5bを形成するための工具経路96bは直線状である。この場合に、一つの溝部を切削している期間中は、工具経路に対する工具の向きは一定に維持される。
【0077】
一方で、複数の溝部5a,5bは、延びる方向が互いに異なる。展開図において工具経路96aと工具経路96bとは平行にならずに、異なる方向に延びている。制御装置は、溝部5aを形成する場合には、工具回転送り軸において、バイトの回転角を第1の回転角を維持する。この状態で、制御装置がワークに対する工具の相対位置を変更することにより溝部5aが形成される。また、溝部5bを形成する場合には、制御装置は、工具回転送り軸において、バイトの回転角を第1の回転角とは異なる第2の回転角に維持する。この状態で、制御装置がワークに対する工具の相対位置を変更することにより溝部5bが形成される。
【0078】
このように、切削工程は、工具回転送り軸において第1の回転角に維持しながら切削を行う第1の工程を含むことができる。第1工程では、例えば溝部5aを形成する。また、切削工程は、工具回転送り軸において第1の回転角とは異なる第2の回転角に維持しながら切削を行う第2の工程を含むことができる。第2の工程では、溝部5bを形成する。すなわち、制御装置は、1つの溝部を形成するごとに、工具回転送り軸におけるバイトの回転角を変更することができる。
【0079】
この制御により、1つのワークに対して複数の種類の加工を精度よく実施することができる。また、溝部の延びる方向に対応した複数の種類のバイトを用いる必要が無く、1つのバイトを用いて多くの種類の溝部の加工を行うことができる。
【0080】
更に、本実施の形態の1台の工作機械において、複数のワークに対して種類の異なる加工を行うことができる。例えば、1つのワークに対して
図9に示す溝部5aを形成したのちに、他のワークに対して
図9に示す溝部5bを形成することができる。この場合に、切削工程は、1つのワークに対して第1の工程を実施することにより、溝部5aを形成する工程を含む。切削工程は、加工後の1つのワークを工作機械から取り外す工程と、加工前の他のワークを同一の工作機械に取り付ける工程とを含む。切削工程は、他のワークに対して第2の工程を実施することにより、溝部5bを形成する工程を含む。
【0081】
この制御により、複数のワークに対して複数の種類の加工を精度よく実施することができる。また、溝部の延びる方向が互いに異なる複数の種類のワークを一台の工作機械にて加工することができる。溝部の延びる方向に対応した複数の種類のバイトを用いる必要が無く、1つのバイトを用いて多くの種類の溝部の加工を行うことができる。
【0082】
上記の加工方法では、ワークに溝部を形成する方法を例示して説明したが、この形態に限られない。本発明は、筒状のワークの内面またはワークの穴部の内面を切削する任意の加工に適用することができる。たとえば、筒状のワークの内面またはワークの穴部の内面に段差を形成する加工に本発明を適用することができる。
【0083】
上記の実施の形態は、適宜組み合わせることができる。上述のそれぞれの図において、同一または相等する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。また、実施の形態においては、特許請求の範囲に示される実施の形態の変更が含まれている。