特許第6552534号(P6552534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6552534ノズル駆動ピーク電力を低減する印字タイミング制御方法および工業用印字装置。
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552534
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】ノズル駆動ピーク電力を低減する印字タイミング制御方法および工業用印字装置。
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20190722BHJP
   B41J 2/145 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   B41J2/01 203
   B41J2/01 401
   B41J2/01 451
   B41J2/145
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-41433(P2017-41433)
(22)【出願日】2017年3月6日
(65)【公開番号】特開2017-165098(P2017-165098A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2018年5月10日
(31)【優先権主張番号】特願2016-48899(P2016-48899)
(32)【優先日】2016年3月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390002808
【氏名又は名称】マークテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 直樹
【審査官】 村石 桂一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−198893(JP,A)
【文献】 特開2000−043347(JP,A)
【文献】 特開2010−083026(JP,A)
【文献】 特開平09−262974(JP,A)
【文献】 特開2002−137388(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0022575(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字ヘッドに配置された複数のノズルから塗料を断続的に吐出して、前記ノズルに対して相対的に動いている対象材に文字または図柄を描く印字装置における印字タイミング制御方法であって、該複数のノズルは複数のグループに分けられ、1のグループに属するノズルの吐出タイミングは、他のグループに属するノズルの吐出タイミングと重なることがないように、各ノズルは吐出タイミングをずらされ、かつ前記吐出タイミングのずれに対応してノズルの印字ヘッド上の配置が調整され、前記ノズルの印字ヘッド上の配置の位置は、或る1のノズルを基準にして印字方向に対してc*x+n*x/g(cは整数、xはドット間隔、gはグループ数、nは整数)であり、前記印字すべき文字または図柄をメモリ上に展開したビットパターンにおいて、ドット間にg−1個の空白に対応するビット情報を挿入し、対応するノズルごとにc*g+nだけビットをシフトし、かつビットパターンを読み込むクロック周期をg倍にすることを特徴とする、印字タイミング制御方法。
【請求項2】
印字ヘッドに配置された複数のノズルから塗料を断続的に吐出して、前記ノズルに対して相対的に動いている対象材に文字または図柄を描く印字装置であって、該複数のノズルは複数のグループに分けられ、異なるグループ間で該塗料の吐出タイミングが重なることがないように吐出タイミング時間をずらすことのできる制御機構を有し、塗料を吐出するノズル間の印字ヘッド上の間隔が印字方向に対してc*x+n*x/g(cは整数、xは印字方向のドット間隔、gはグループ数、nは整数)であり、前記印字すべき文字または図柄をメモリ上に展開したビットパターンにおいて、ドット間にg−1個の空白に対応するビット情報を挿入し、対応するノズルごとにc*g+nだけビットをシフトし、かつビットパターンを読み込むクロック周期をg倍にすることを特徴とする、印字装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用オンデマンド型印字装置に関し、特に電磁弁式ノズルを同時に吐出駆動することによる駆動ピーク電力を抑制する印字タイミング制御方法、およびそのような印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用オンデマンド型印字装置は、塗料吐出ノズルを複数個配置した印字ヘッドを用いて、対象材に文字または図柄を描く。このような印字装置は、印字ヘッドおよび/または対象材を動かしながら、描こうとする文字または図柄にあわせて適切なタイミングで各ノズルから断続的に塗料を吐出して図1に示すようなドットパターンの集合で図柄を描く。以下、従来の複数ノズルの印字ヘッド上の配置とその吐出制御について述べる。
【0003】
複数のノズルの印字ヘッド上への配置は、図1に示す縦方向のドット間隔(ドットピッチy)でノズルを配置できるのであれば、すなわちノズル径がドットピッチyより小さければ、図2Aに示すようにノズルを縦一列(y軸方向)に配置するのが簡単である。この場合、ノズルの吐出制御は、印字ヘッドあるいは対象材がドットピッチx(図1参照)が動く毎に同期して、印字すべきパターンに合わせておこなう。図2Aでは、矢印の向きに、例えば印字対象材が移動する場合を示している。この吐出制御タイミングを示したのが図2Bであり、縦軸にノズル番号、横軸に時間(ドットピッチxが動くに要する時間を単位とする)をとり、黒丸(●)で吐出したノズルとその時の時間位置を示している。これは、図1と比較すれば分かるように、印字すべきパターンそのものである。また、図3は、このときの吐出タイミングを示している。図中、各行の■が左端に書かれた数字のノズル毎の吐出タイミングをあらわしている。従来技術ではこのように各瞬間(図中四角で囲んだ部分)において全てのノズルが同時に駆動する可能性を持っている。言い換えればヘッド上の全てのノズルに共通の1つの吐出タイミングを用いている。
【0004】
ノズル径がドットピッチyよりも大きな場合(ノズルの吐出電磁弁用のソレノイドコイルの径が大きいような場合等)、図2Aのようなノズル配置はノズル同士が衝突してできない。このような場合、換言すればノズル間の距離がドットピッチyよりも大きくなる場合は、図4Aに示すようにノズルを横(x)方向にずらすことによってノズル間隔を空ける斜角と呼ばれる配置方法が知られている。この図ではノズルが点線の円で、ノズル吐出孔が小さな円で表示されており、横方向に3*x(xはドットピッチ)ずつずらされていることを示している。このようなノズル配置でも、吐出タイミングを工夫すれば、図2Aに示した配置と同様に印字ヘッドの横方向への相対的な移動によって図柄が印字できる。図4Bは、この場合の吐出制御タイミングを示し、ノズルの位置が進んだ分だけ吐出制御を遅らせる必要があることが分かる。しかし、この場合もノズルの吐出タイミングは、ヘッド上の全てのノズルで共通となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−80133
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ノズルから塗料を吐出させるには、ノズル毎に何らかの方法で電力を供給する必要がある。例えば、印字ヘッド内に加圧したい塗料を入れておき電磁弁を使用してこの加圧された塗料をノズルから吐出させる方法をとる場合、ノズル毎に電磁弁を駆動するための電流を供給する必要がある(特許文献1参照)。上記のように複数のノズルを配置した印字ヘッドを使用する場合、描こうとする文字や図柄によっては同時に全てのノズルを駆動する必要がある場合が存在する。例えば、図2Aに示すように縦一列に8個のノズルを配置した場合、図2Bに示すように縦の直線を描く場合8個のノズルを同時に駆動しなければならない。また図4Aのような「斜角」の配置の場合であっても、例えば図1の四角形を描く場合、図4Bに示されるように吐出制御タイミングの24番目などで6つのノズルを同時に駆動しなければならない。また図1の四角形がさらに横に長い場合を考えると、図4Bの各ノズルの駆動状態も更に右側へ延びるので、図4Aの配置であっても全てのノズルが同時に駆動される状況が出現する。このように全てのノズルを同時が駆動される場合には,瞬間的に大きな電力を必要とし、そのため電源容量に余裕がない場合には、同時に駆動するノズルの数によりドット径が変化したり、全てのノズルの同時駆動時に電磁弁の誤動作などにより印字品質の劣化が生じるという問題が発生する。しかしながら文字を印字する装置にあっては、このように全てのノズルを同時に駆動する必要がある場合はまれであり、このようなまれな状態のために同時駆動に必要な電力供給容量の電源を設けることは経済性の点でも問題を抱えていた。
【0007】
したがって、本発明は、上記問題点に鑑み、どのようなパターンの印字に際しても少なくとも全ノズルが同時に吐出駆動されることのない印字制御方法、ひいては印字品質の向上および電源容量を減らした印字装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、印字ヘッドに配置された複数のノズルから塗料を断続的に吐出して、前記ノズルに対して相対的に動いている対象材に文字または図柄を描く印字装置において、該複数のノズルは複数のグループに分けられ、1のグループに属するノズルの吐出タイミングは、他のグループに属するノズルの吐出タイミングと重なることがないように、グループ間で吐出タイミングがずれるよう制御され、かつ前記タイミングのずれに対応してノズルの印字ヘッド上の配置が調整されていることを特徴とする、印字タイミング制御方法を用いる。
【0009】
これにより、印字ヘッド上の異なるグループに属するノズルの電磁弁コイルが同時に駆動されることはなくなり、ノズル駆動用のピーク電力が抑えられて、印字品質の向上ひいてはノズル駆動用電源の小容量化、経済化が図られる。
【0010】
上記印字タイミング制御方法において、前記吐出タイミングのずれは、ノズル吐出制御信号の吐出タイミングの最小時間間隔tを前記グループの数gで割った時間だけ、前記グループ間の吐出タイミングが順次ずらされたことを特徴とする。
【0011】
ここで、ノズル吐出制御信号の最小時間間隔tは、ドット間隔x、搬送速度vとの間に、t=x/vの関係がある。ドット間隔xは通常、印字品質等から印字システムによって与えられる所定値であり、搬送速度vが一定とすれば、最小時間間隔tも一定となる。また、搬送速度vが変化するような場合は、印字品質を一定に維持する観点から、ドット間隔xを一定に保つように、vの変化に応じて最小時間間隔tも変化させてもよい。
【0012】
また上記印字タイミング制御方法において、前記ノズルの印字ヘッド上の配置の間隔は、印字方向に対してc*x+n*x/g(cは整数、xは印字方向のドット間隔、gはグループ数、nは整数)であることを特徴とする。
【0013】
前記印字すべき文字等の図柄をメモリ上に展開したビットパターンでドット間にg−1個の空白に対応するビット情報を挿入した後、対応するノズルごとにc*g+nだけビットをシフトし、かつビットパターンを読み込むクロック周期をg倍することを特徴とする。
【0014】
クロック周期tをグループ数gで割った値にm(mは0からg−1の整数)をかけた値だけ位相が異なるg個のクロック信号を持ち、c*x+n*x/gだけ配置がずらされたノズルに対応するビットパターンの読み出しにgを法としてnと合同となるmを使用した前記位相ずれクロックを使用することを特徴とする。
【0015】
印字ヘッドに配置された複数のノズルから塗料を断続的に吐出して、前記ノズルに対して相対的に動いている対象材に文字等の図柄を描く印字装置であって、該複数のノズルは複数のグループに分けられ、異なるグループ間で該塗料の吐出タイミングが重なることがないように吐出タイミング時間をずらすことのできる制御機構を有し、塗料を吐出するノズル間の印字ヘッド上の間隔が印字方向に対してc*x+n*x/g(cは整数、xは印字方向のドット間隔、gはグループ数、nは整数)であることを特徴とする。
【0016】
上記制御機構は、印字すべき文字等の図柄をビットパターンとして記憶させる第1メモリ、前記第1メモリに記憶された前記ビットパターンから前記ノズル配置、前記クロックの数、および前記グループ分けの情報に基づいて、ノズルの吐出状態に対応するビットパターンを作成し、対応づけられたクロックと該ビットパターンに基づきノズル吐出制御をおこなう機構を備えている。
【0017】
(定義)
「吐出タイミング」とは、ここではあるノズルがドットを吐出する可能性のある吐出制御信号の特定の時点(例えば、立ち上がり時点)を指すものとする。
「吐出制御タイミング」とは、ある吐出タイミングとノズル配置において、ある特定のパターンを描こうとする場合に、ノズルの吐出制御を行うタイミングをあらわすものとする。
「ノズルのグループ」とは、ノズル吐出制御信号のタイミングが同一か否かで類別されたノズルの集合をいう。従って異なるグループに属するノズルの吐出タイミングは、ずれており、同一グループに属するノズルの吐出タイミングは一致している。
「最小時間間隔t」とは、最小ドット間隔xと搬送速度vで決まるノズル吐出制御信号の最短の繰り返し周期、または最短時間間隔である。最小ドット間隔xで印字するときのノズルの吐出時間間隔でもある。
「クロック」とは、メモリにあるビットパターンを読み出すタイミングを表すもので、一定の時間間隔でパルスを発生させるタイマに限らず、一定の距離間隔でパルスを発生させるエンコーダ信号等をも含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ドットパターンで印字された図柄の1例を示す説明図である。
図2A】複数ノズルを印字ヘッド上に配置する場合の従来技術における1配置例を示す図である。
図2B図2Aのノズル配置で図1のパターンを印字する場合の吐出制御タイミングを示す図である。各ノズルの吐出状態(●で示す)をタイミング時間軸に沿って示している。
図3】従来技術での吐出タイミングを示す図である。
図4A】従来技術における複数ノズルの印字ヘッド上の別の配置例(「斜角」と呼ばれる)を示す図である。横軸の単位はドットピッチxである。
図4B図4Aのノズル配置で図1のパターンを印字する場合の吐出制御タイミングをしめす図である。各ノズルの吐出状態(●で示す)をタイミング時間軸に沿って示している。
図5A】本発明の第1実施態様におけるノズル配置の1実施例である。
図5B図5Aに示されたノズル配置における吐出制御状態を示す説明図である。
図5C】グループ数3とした場合の吐出タイミングの一例を示す図である。
図6A図1に示す印字すべきドットパターンのメモリ上の記憶状態を示す図である。網掛け部分の各桝目には「1」が、網掛けのない部分の各桝目には「0」が記憶されている。
図6B図5Bの吐出制御タイミングを図6Aのメモリ状態から作るための実施例1(1クロック法)の「メモリ展開」途中におけるメモリ記憶状態を示す図である。網掛け部分の各桝目には「1」が、網掛けのない部分の各桝目には「0」が記憶されている。
図6C図6Bからの最終的な「メモリ展開」した後のメモリ記憶状態を示す図である。網掛け部分の各桝目には「1」が、網掛けのない部分の各桝目には「0」が記憶されている。
図7図5Bの吐出制御タイミングを図6Aのメモリ状態から作るための実施例2(gクロック法)の最終的な「メモリ展開」後のメモリ記憶状態を示す図である。網掛け部分の各桝目には「1」が、網掛けのない部分の各桝目には「0」が記憶されている。
図8A】本発明の第2実施態様におけるノズル配置の1実施例である。
図8B図8Aに示されたノズル配置における吐出制御タイミングを示す説明図である。
図9A】本発明の第3実施態様におけるノズル配置の一実施例で、グループ数6、クロック数3の場合を示す。
図9B図9Aのノズル配置における吐出タイミングを示す図である。
図9C図9Bに示す吐出タイミングを図6Aのメモリ状態へ適用するための実施例3の「メモリ展開」途中におけるメモリ記憶状態を示す図である。網掛け部分の各桝目には「1」が、網掛けのない部分の各桝目には「0」が記憶されている。
図9D図9Cからの最終的な「メモリ展開」した後のメモリ記憶状態を示す図である。網掛け部分の各桝目には「1」が、網掛けのない部分の各桝目には「0」が記憶されている。
図10A】本発明のさらに別の実施態様におけるノズル配置の1実施例を示す図である。
図10B図10Aに示すノズル配置で、図1のパターンを印字する場合の、各ノズルの吐出状態をタイミング時間軸に沿って示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、従来技術のように印字ヘッド上の全てのノズルに共通の1つのタイミングを有するノズル吐出制御信号を用いるのではなく、ノズルまたはノズルのグループ毎に吐出タイミングが異なる(位相または遅延時間が異なる)ノズル吐出制御信号を用いる点に特徴の1つがある。図5Aは、本発明の第1実施態様のノズル配置であって、8つのノズルを使った装置の例を示している。ノズル間の距離がドットピッチyを超えない場合(従来技術の図2Aの場合に対応)の印字ヘッド上のノズル配置図である。図5Bは、図5Aに示すノズル配置を用いて、グループ数3の場合、即ち3つの吐出タイミング(図5C)を有するノズル吐出制御信号を用いて、図1に示すドットパターンを描くときの各ノズルの吐出制御タイミングを示している。先ず図5Bの吐出状態の図から説明する。縦軸をノズル、横軸を時間軸として各ノズルの吐出制御状態(●は吐出、○は非吐出を示す)を示している。従来のノズルの最小時間間隔tを3分割した単位で1、2、3と番号を付けてタイミングST1、ST2、ST3を示している。例えば、ノズル1に着目すると、タイミングST1のところでのみ吐出状態を示しており、タイミングST2、ST3では吐出していない。同様にノズル2に着目すると、タイミングST2でのみ吐出状態を示している。次にこの吐出状態を時間毎に、即ち縦方向に見ると、タイミングST1では、ノズル1、4、7が吐出し、ST2では2、5、8が、ST3では3、6が吐出していることが分かる。ここで、同一のタイミング信号ST1で制御されたノズル1、4、7を第1グループ、ST2で制御されたノズル2、5、8を第2グループ、ST3で制御されたノズル3、6を第3グループと呼ぶ。すると、同一グループに属するノズルは同時に吐出しうるが、異なるグループに属するノズル同士は、異なるタイミングSTになるため同時に吐出することはない。なお、どのノズルを同一グループにするかは任意であり、例えばノズル1、2、3を同一グループ、ノズル4、5、6を同一グループなどとしてもよいが、当然ノズルの配置および吐出タイミングは異なってくる。ただし、同一グループ内のノズル数が出来るだけ均一になるようするのがピーク電力抑制上は効果的であるため、同一グループに属するノズル数を[N/g]+1を超えないようにする。ここで[ ]は商の整数部分を示すガウス記号、Nはノズル数、gはグループ数(=タイミングが異なるノズル吐出制御信号数)である。同一グループに属するノズルは同一タイミングで駆動制御されるので、印字パターンによっては同時に吐出される可能性があるが、異なるグループに属するノズルは、駆動タイミングがずれているので如何なる印字パターンであっても同時に駆動されることはない。したがって本実施態様では、同時吐出可能なノズルは8個から最多数の場合でも3個に減り、図形によっては同時吐出ノズルはこれ以下になるので最悪でもノズル駆動ピーク電力は3/8(37.5%)に減少する。
【0020】
なお、上記のノズル駆動制御のピーク電力の削減の記載は、ノズルを駆動するパルス波形が矩形であって隣接パルスの影響を受けない理想的な場合にそのまま当てはまる。しかし、例え矩形のパルス信号でノズル駆動電流のオンオフを制御しても、ノズル駆動電流自体はインダクタンスを持つコイルを駆動するため、サブタイミングの数を増やし及び/又はドット印字速度自体を速めていくと、実際には、裾を引いた「なまった」波形になり、隣接又は近接するサブタイミング時点の駆動パルスの一部が重なり、ピーク電力が理想値ほどは削減されないことが生じうる。なお、異なるタイミングを有するノズル吐出制御信号同士では、吐出状態(ON状態)は重ならないとして説明し図示しているが、ピーク電力削減効果の得られる限りノズル吐出制御信号同士の部分的な重なりは許されうる。
【0021】
図5Aに戻って、印字ヘッド上のノズル配置について説明する。ノズルは縦方向に等間隔、横方向に1ドットピッチxの1/3ずつ左側にずらされて配置されているのが特徴である。もしノズル配置が従来技術の図2Aのように縦一列のままであるとすると、例えばノズル2では、タイミングST2で駆動されるが、これはST1とは1/3最小時間間隔ずれている(遅れている)ため、ノズル1の印字ドット位置から最小ドット間隔の1/3だけずれて印字されてしまう。同様にノズル3では2/3だけずれる。そのためこのタイミング遅れを補償するため、夫々ドット間隔の1/3ずつ順次後方に(左側)にずらした位置に配置しているのである。このようなノズルの空間的位置のずらしと、吐出タイミングの時間的ずれを相殺するように構成し、制御することによって、従来と同じように印字しつつノズルの同時吐出の数を減らしピーク電力を削減しているのである。このようなノズル配置は一般的に式で表すとc*x+n*x/g(cは整数、ノズル数をNとして、nは0〜N−1の整数、xは印字方向のドット間隔、gはグループ数)で表せる。
【0022】
次に図5Bに示したような各ノズルの吐出制御タイミングを得るための2つの実施例を示す。実施例1は、1つのクロックを用いて3つの異なるタイミング(グループ数g=3)を有するノズル吐出制御信号を作る方法である。先ず、図1に示されたような印字すべきドットに対応したビットパターンがメモリに記憶されているとする(図6A)。このビットパターンにノズル毎(ビットパターンの各行毎)のビット間にグループ数g−1=2個の空白情報を挿入したビットパターンをメモリ上に作る(図6B)。次に、対応するノズル配置にあわせて各行毎にそのノズル配置のずれ(この場合、最小ドット間隔xの1/3を単位にして測った数がnとする)に対応して、そのノズルに対応するメモリの行をnだけシフトさせる(図6C)。以上の操作を、我々は「メモリ展開」と呼んでいる。一方、ビットパターンを読み出すクロックの周期は従来方式のg倍(gはグループ数)としこのクロック周波数でメモリを読み出すことで、このメモリ情報から各ノズルの吐出制御信号を作ることができる。
【0023】
次に実施例2によるノズル吐出制御タイミングの作成を説明する。本実施例2でも実施例1と同様に、図6Aに示されたような印字すべきビットパターンがメモリに記憶されているとする。ノズルの位置のずれ(最小ドット間隔xを単位にして測って、少数点以下は切り捨てた整数をmとする)に対応して、そのノズルに対応するメモリの行をmだけシフトさせる。図7はこのように「メモリ展開」によって作られたメモリ上のビットパターンを示している。この「メモリ展開」からも以下のように図5Bと同じ吐出制御タイミングを得ることができる。そのためには、ビットパターンを読み出す周期が従来方式と同じで、位相が120°もしくは遅延時間がt/3ずつずれた3つのクロック信号CL1、CL2,CL3を準備しておく。これら3つのクロック信号で、図7に示したようなノズル対応で、このメモリから読みだすと、図5Bに示した制御信号が得られる。例えばノズル1〜3を見ると、最初のタイミング(左端)で、それぞれCL1、CL2、CL3で読みだされるのでタイミングは最小時間間隔tの1/3ずつずれて、図5Bと同じ吐出制御タイミングが得られる。
【0024】
次に図8Aに示すようにノズルが配置された第2の実施態様について説明する。すなわち、ノズル4、7は、ノズル1と同じグループに属するので、図5Aとは異なり、それらの横方向位置がノズル1と同じ位置にあるように配置されている。ノズル5、8についても同様にノズル2と同じ横方向位置にあるように配置されている。この配置は一般的に式で表すと(n mod(g))*x/g(ノズル数をNとして、nは0〜N−1の整数、xは印字方向のドット間隔、gはグループ数)で表せる。このようなノズル配置にしたときの、吐出制御タイミングは図8Bに示されている。詳しい説明は省くが、例えばノズル4を見ると、図5Aに比べて1ドットピッチx右にシフトしているので、吐出制御タイミングの時間は図5Bに比べ1最小時間間隔だけ速められている。さらに、図示しないが、同一グループに属するノズルを連続番号1〜3、4〜6、7〜8でまとめてもよい。
【0025】
次に図9Aに示すような第3の実施態様について説明する。ここではグループ数を6とした場合の一例である。この例ではノズル配置を図9Aのように、ドット間隔よりも狭くとるものとする。このノズル配置に対して図9Bの吐出タイミングを使って図1の図柄を吐出する場合を考える。ここでクロック数は3とした場合、通常の場合と同様にクロック同士で位相が0、t/3、2t/3ずつずれるようにする。また図6Aのビットパターンでノズル毎のビット間に1個の空白情報を挿入し(図9C)。またそれにあわせてクロックの周期を2倍する。最後にビットごとに、対応するノズルとクロック信号にあわせて図9Dのようにシフトすることで吐出タイミング図9Bとノズル配置図9A図1に適用したタイミングでドットを吐出することができるようになる。
【0026】
次に、ノズル間の間隔がドットピッチyよりも大きい場合にも適用可能な別の実施態様を以下説明する。図10Aは本発明の別の実施態様のノズルの配置図である。従来技術の斜角の方法に、本願発明の特徴である時間のずれたタイミング信号を使うことからくる印字位置のずれを補償する配置をおこなったものである。斜角配置によるずれc*xを考慮して各ノズル間で順次c*x+x/g(cは整数、xはドット間隔、gはグループ数)ずつずらす配置をとる。
【0027】
図10Bは、上記別の実施態様の吐出制御状態を示した説明図である。例えば図6A〜6Cの説明でノズル配置のずれとメモリ展開(または吐出制御信号)との関係も説明したので、斜角によるノズル配置のために吐出制御タイミングが遅延される以外は図5Bと類似であるので詳細は省く。
【0028】
また、図10Aの配置も1例であって、各ノズルは、図示しないがノズル相互が衝突しないように適時x方向にずらし配置することができる。ただし、本願の特徴であるノズル駆動ピーク電力削減の目的を達成するためには、ノズルのグループに出来るだけ均等に属している必要がある。そのため、ノズル位置ずれを右端のノズルを基準にドット間隔x単位に測った場合にその余りが、0、x/g、2x/g、・・(g−1)x/gのg種類にできるだけ均等に割り振られるようノズル位置を決める必要があるという制約を伴う。
【0029】
これまで、実施態様は、説明の便宜のため、ノズルの数が8、タイミング信号数(=ノズルのグループ数)gが3の場合を主として説明してきた。これらの数字、およびノズルの番号、タイミング信号との対応付け等もあくまで説明の便宜のための例示であり、これらに限定する意図はない。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A-5B】
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B-1】
図10B-2】
図10B-3】