特許第6552575号(P6552575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552575
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】極低温液体膨張タービン
(51)【国際特許分類】
   F01D 11/04 20060101AFI20190722BHJP
   F01D 25/16 20060101ALI20190722BHJP
   F01K 25/10 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   F01D11/04
   F01D25/16 J
   F01K25/10 W
【請求項の数】21
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-206983(P2017-206983)
(22)【出願日】2017年10月26日
(62)【分割の表示】特願2014-536345(P2014-536345)の分割
【原出願日】2012年10月15日
(65)【公開番号】特開2018-31381(P2018-31381A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2017年10月31日
(31)【優先権主張番号】11352010.0
(32)【優先日】2011年10月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599067318
【氏名又は名称】クライオスター・ソシエテ・パール・アクシオンス・サンプリフィエ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100093089
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 滋
(72)【発明者】
【氏名】ズガンバーティ,ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンゼル,フランク
【審査官】 家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/088371(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/061142(WO,A1)
【文献】 特開平04−050405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 23/00 − 27/02
F01D 11/10 − 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温液体膨張タービンであって、回転シャフト(8)に取り付けられているタービンホイール(6)と、当該膨張タービン中に膨張させる極低温液体のための少なくとも1つの半径方向入口(78)と、前記回転シャフト(8)のための少なくとも1つの軸受と、前記回転シャフト(8)に沿った前記タービンホイール(6)と前記軸受の間の位置の少なくとも1つの乾性ガス封止手段(36、38)及び少なくとも1つのラビリンスシール(52、82)と、を有する極低温液体膨張タービンにおいて、
前記タービンホイール(6)と、前記乾性ガス封止手段(36)及びラビリンスシール(82)との間に、前記回転シャフト(8)外周から所定寸法だけ半径方向外方へ離間した位置から前記乾性ガス封止手段(36)を収納するハウジング(74)の最大内径の部分まで半径方向に伸びる中実の環状体であって且つ低熱伝導材料からなる熱的バリア部材(70)が設けられ、前記熱的バリア部材(70)の前記乾性ガス封止手段(36)側にガス室(76)が設けられ、前記ガス室(76)への極低温ガスのための入口(12)が設けられている、ことを特徴とする極低温液体膨張タービン。
【請求項2】
請求項1に記載の極低温液体タービンにおいて、前記乾性ガス封止手段(36、38)は、前記極低温ガスのための入口(78)に加え、乾性非極低温ガスのための入口(33)を有している、極低温液体タービン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の極低温液体タービンにおいて、前記タービンホイール(6)は、略円錐形状の前方回転面(14)を有する、極低温液体タービン。
【請求項4】
請求項3に記載の極低温液体タービンにおいて、前記タービンホイール(6)はスカラップ状をしている、極低温液体タービン。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の極低温液体タービンにおいて、前記ガス室(76)は、前記ガス室(76)から前記タービンホイール(6)へ至る、極低温ガスのための第1出口経路を有している、記載の極低温液体タービン。
【請求項6】
請求項5に記載の極低温液体タービンにおいて、前記第1出口経路は、更なるラビリンスシールを備える、極低温液体タービン。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の極低温液体タービンにおいて、前記ガス室(76)は、前記ガス室(76)から、前記少なくとも1つのラビリンスシール(82)を介して前記乾性ガス封止手段(36)と連通する、極低温ガスのための第2出口経路を有している、極低温液体タービン。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の極低温液体タービンにおいて、前記乾性ガス封止手段(36、38)は、乾性ガスシールである、極低温液体タービン。
【請求項9】
請求項8に記載の極低温液体タービンにおいて、前記乾性ガス封止手段(36、38)は、タンデム型乾性ガスシールである、極低温液体タービン。
【請求項10】
請求項8に記載の極低温液体タービンにおいて、前記乾性ガス封止手段(36、38)は、単一型乾性ガスシールである、極低温液体タービン。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の極低温液体タービンにおいて、フレア又は外部雰囲気又はガス回収手段と連通する、前記乾性ガス封止手段(36)からの第1脱気孔(50)が設けられている、極低温液体タービン。
【請求項12】
請求項11に記載の極低温液体タービンにおいて、外部雰囲気と連通する、前記乾性ガス封止手段(38)からの第2脱気孔(48)が設けられている、極低温液体タービン。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか1項に記載の極低温液体タービンにおいて、前記軸受はオイル軸受又はガス軸受であり、前記乾性ガス封止手段(36、38)は、複数の軸方向に離間されたカーボンリング(56、58)を備える更なるシャフト封止手段(36、38)によってオイル蒸気から防護されている、極低温液体タービン。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか1項に記載の極低温液体タービンにおいて、前記軸受はオイル軸受である、極低温液体タービン。
【請求項15】
請求項13に記載の極低温液体タービンにおいて、前記カーボンリング(56、58)間の空間は乾性非極低温ガスの供給源と連通している、極低温液体タービン。
【請求項16】
請求項1乃至15の何れか1項に記載の極低温液体タービンにおいて、発電機又は制動手段へ連結されているものとしての、極低温液体タービン。
【請求項17】
請求項1乃至16の何れか1項に記載の極低温液体タービンを動作させる方法において、前記極低温液体の一部を気化させて前記極低温ガスを形成している、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、5バールから10バールの範囲の圧力が前記ガス室(76)中に維持されている、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法おいて、前記極低温ガスの温度は、前記ガス室(76)中に単一の気相を維持するように調整されている、方法。
【請求項20】
請求項17から19の何れか1項に記載の方法において、前記極低温液体は、天然ガス、液体窒素、又は液体空気である、方法。
【請求項21】
請求項17から20の何れか1項に記載の方法において、前記極低温ガスの少なくとも90%が前記タービンホイール(6)へと前記ガス室(76)を出てゆく、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温液体膨張タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
極低温液体タービンは、極低温工学の技術分野では、或る種の状況でのジュールトムソン弁の代替物又は補助物として知られている。
タービンは極低温の温度で作動しているとしても、機械は典型的には雰囲気温度又はそれより上で作動する軸方向配置の構成要素、具体的にはタービンホイールが取り付けられている回転シャフトを支持するための単数又は複数の軸受、を有している。理論上、熱力学的に最も効率のよい極低温液体膨張タービンは半径方向流体流入を採用しているタービン類である。但し実用上は、フラッシュの結果として、又は極低温の温度にある部品とより高い温度にある部品の間の軸受の速やかで適切な封止を実現し損ねた結果として、望ましからざる熱の流れ又は第2気相の形成の様な影響が出る傾向があり、膨張タービンの代替形態又はジュールトムソン弁が半径方向吸込液体膨張タービンの代わりに選定される事態を招いている。
【発明の概要】
【0003】
本発明により、極低温液体膨張タービンであって、回転シャフトに取り付けられているタービンホイールと、膨張タービン中に膨張させる極低温液体のための少なくとも1つの半径方向入口と、回転シャフトのための少なくとも1つの軸受と、回転シャフトに沿ったタービンホイールと当該軸受の間の位置の乾性ガス封止手段と、を有する極低温液体膨張タービンにおいて、タービンホイールと乾性ガス封止手段の間に熱的バリア部材が設けられ、熱的バリア部材の乾性ガス封止手段側にガス室が設けられ、当該ガス室への極低温ガスのための入口が設けられている、ことを特徴とする極低温液体膨張タービンが提供されている。
【0004】
乾性ガス封止手段は、典型的には、前記極低温ガスのための入口に加え、乾性非極低温ガスのための入口を有している。
タービンホイールは、極低温液体がその膨張中にフラッシュするのを許容するように適合されていてもよい。
【0005】
本発明によるフラッシュ式極低温液体タービンでは、タービンホイールの前方面は典型的にはスカラップ状をしている。タービンホイールのその様な構成は、ホイールへの液体摩擦を低減するものと確信される。
【0006】
ガス室は、典型的には、タービンホイールへの極低温ガスのための第1出口を有している。
当該第1出口は、典型的には、ガスの流通が制限されるように第1ラビリンスシールを通っている。
【0007】
ガス室は、典型的には、更に、第2ラビリンス状シールを介して乾性ガス封止手段と連通する、極低温ガスのための第2出口を有している。
乾性ガス封止手段は、典型的には、乾性ガスシールであり、例えば単一型乾性ガスシール又はタンデム型乾性ガスシールである。
【0008】
典型的には、フレアと連通する、乾性ガス封止手段からの第1脱気孔が設けられている。代わりに、第1脱気孔は、外部雰囲気又はガス回収手段と連通していてもよい。加えて
、外部雰囲気と連通する、乾性ガス封止手段からの第2脱気孔が設けられていてもよい。
【0009】
1つの好適な実施形態では、軸受はオイル軸受であり、乾性ガス封止手段は、複数の軸方向に離間されたカーボンリングを備える更なるシャフト封止手段によってオイル蒸気から防護されている。当該カーボンリング間の空間は、典型的には、乾性非極低温ガスの供給源と連通している。他の実施形態では、軸受はガス軸受又は磁気軸受である。
【0010】
本発明による極低温液体タービンは、発電機又は機械式ブレーキへ連結されていてもよい。機械式ブレーキは、何らかの都合のよい形態とすることができ、例えばコンプレッサホイール又はオイルブレーキとすることができる。
【0011】
本発明は、更に、前記極低温液体タービンを動作させる方法を提供しており、本方法では、極低温液体の一部を気化させて前記極低温ガスを形成している。
典型的には5バールから10バールの範囲の圧力がガス室中に維持されている。
【0012】
極低温液体は、典型的には、天然ガスであるが、代わりに、液体窒素又は液体空気の様な別の極低温液体とすることもできる。
極低温液体が天然ガスである場合は、マイナス100℃からマイナス150℃の範囲の温度が、典型的に、ガス室中に維持されている。温度は、室の作動圧力で室中の流体が完全にガス状になる最小値又は当該最小値より僅かに上になるように調整されていてもよい。
【0013】
典型的には、前記極低温ガスの少なくとも90%がタービンホイールへとガス室を出てゆく。
これより、本発明による極低温液体膨張タービンを、一例として、添付図面を参照しながら説明してゆく。
【0014】
図面は縮尺合わせされていない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明によるフラッシュ式極低温液体膨張タービンの部分断面概略側面図である。
図2図1に示されているタービンの封止部配列のより詳細な図である。
図3図1及び図2に示されているタービンのタービンホイールの概略斜視図である。
図4図1中、参照番号23で示される領域の近傍の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照すると、液体の一部を蒸気にフラッシュさせながら作動している極低温液体膨張タービンが示されている。タービンは、拡張させる極低温液体の供給源(図示せず)と連通する配管(図示せず)へ接続されている入口フランジ2を有している。タービンは、更に、膨張させた極低温流体をタービンから追い出すように出口管(図示せず)へ接続されている出口フランジ4を有している。
【0017】
膨張タービンは、回転シャフト8の一端へ取り付けられているタービンホイール6を有している。シャフト8の他端には連結部10が取り付けられており、連結部を通して、タービンは例えば発電機(図示せず)へ例えば連結されていよう。膨張性極低温液体は、タービンホイールにシャフトを高回転速度で回転させるように仕向けるものであって、例えば電気を発生させることによって実際に仕事をすることができる。膨張タービンは、極低温液体の流れを加速して膨張させるために、当技術ではよく知られている方式の入口案内羽根によって画定されている一連の半径方向入口12を有している。作動時、入口12か
らの液体の流れは、タービンホイール6の前方回転面14に亘って膨張し、面14と静止囲い板16の間に画定されているチャネルを通過して、出口フランジ4と連通する静止拡散部18に至る。入口案内羽根は、従来の方式で空気式アクチュエータ(図示せず)によってレバーシステム(図示せず)を介して動作させるようになっていてもよい。
【0018】
作動時、タービンホイール6の前方面14の上へ流れて来る極低温の液体はフラッシュさせられる。(前方面とはタービンの出口の側に在る面である。)液体は、飽和液線の圧力より下の圧力まで急速に膨張されるのでフラッシュする。フラッシュ式液体タービンは、液体をより低い圧力へ膨張させることができるという利点を提供し、及び/又は入口での極低温液体の過冷却がフラッシュ無しの液体タービン膨張部よりも少なくてすむようになる。流体から機械へ抽出される仕事は、フラッシュがタービン内部で起こる場合には目立って増加する。ガス出口温度はより低くなり、より高いパワー回収が可能になる。例えば、発電機(図示せず)を設置し、パワーが発電機の端子に回収されるようにしてもよい。
【0019】
典型的なタービンホイール6が図3に示されている。タービンホイールは、典型的には、従来の形態の静止ブレードを16枚有している。タービンホイール6の面14は、各対のブレード300の間に溝302を有している。溝302は、タービンホイール6にスカラップ状の外見を与えている。スカラップ式は、使用中のタービンホイール6の共振及び疲れ破損のリスクを低減する。スカラップ式は、2つの相が存在する場合のタービンホイール6の機械的性能を強化し、更に、設計段階で、軸スラストの値を予測可能にする。
【0020】
再度図1を参照して、オイル軸受が配置されている領域は図1に符号23で示されている。この領域は、タービンホイール6と連結部10の間の中間場所に位置する。シャフト8は、一対のオイル軸受(図示せず)と共に領域23に提供されている。一方のオイル軸受は傾斜パッドオイル軸受である。傾斜パッドオイル軸受は、長い動作寿命を有するという利点を提供する。他方のオイル軸受はテーパ設置スラストオイル軸受である。傾斜パッドオイル軸受は半径方向の軸受であり、テーパ設置スラストオイル軸受は軸方向の軸受である。オイル(又は他の潤滑剤)が軸受に注入部通路24を介し膨張タービンの外部の溜め(図示せず)から供給される。オイル注入部通路24は、タービンのハウジング28の一部を形成している軸受担持体6に形成されている。
【0021】
ガスシールが配置されている領域は図1に符号21で示されている。ガスシールは図2に示されている。図2を参照すると、タンデム型乾性ガスシール30が、シャフト8の周りに配置されていて、タービンホイール6を軸受へ塗布されるオイル又は他の潤滑剤から絶縁している。そのため、オイル蒸気又は代わりの潤滑剤はシャフト8に沿って軸受からタービンホイール6の前方面14へ渡ってゆくことができない。こうして、タンデム型乾性ガスシールは、機械の極低温部分(極低温液体を膨張させフラッシュさせる部分)を、オイルが軸受を潤滑する温暖部分から分離している。(オイル潤滑式の軸受を使用するのは必須ではない。)それらは、代わりに、ガス軸受又は磁気軸受とすることもできる。
【0022】
乾性ガスシールは、噛み合い回転リングと静止している主リングを備える非接触乾式稼働機械式面シールである。作動時、回転リングの溝が流体力学的な力を生成して、静止リング(又はスリーブ)を回転リングから離れさせ、それにより、回転リングと静止リングの間にギャップを作り出す。このギャップには、窒素の様な非反応性の適したガスを充填することができる。シールの圧力が、タービンホイールへのオイル蒸気の移入を防ぐ。回転リングの溝は、ガスを内方へ溝無し部分に向けて方向付ける。図2では、個々のシール36及び38は基本的に互いに同一である。回転リング(溝は示されていない)はそれぞれ符号40及び42で指示されており、静止リングはそれぞれ符号32及び34で指示されている。シールガスは2つの異なった供給源から入来する。最初に、乾性ガス状窒素が
約大気温度(例えば20℃)で膨張タービンの外部の供給源(図示せず)からシール担持体ユニット46の内部通路33に沿って供給される。このガスは乾性ガスシール38のための封止ガスを提供する。一部のガスはシールからシール担持体ユニット46の別の通路48を介して抜かれる。シール38とは違い、乾性ガスシール36は極低温ガスを採用している。当該ガスもまた、シール36から、シール担持体ユニット46の更に別の内部通路50を介して抜かれる。通路50は、抜かれた天然ガスが安全な方式で処分されるのを可能にする外部フレア(図示せず)と連通している。通路50の上流で、天然ガスは、2つのシール36と38の中間のラビリンスシール52を通って浸透してくる、乾性ガスシール38からの窒素シールガスの一部によって希釈される。
【0023】
タンデム型乾性ガスシール30の他の部分は、基本的に従来通りの構成及び機能であり、ここでは説明されていない。
膨張タービンのシャフト8には、タンデム型乾性ガスシール30とオイル軸受20及び22の間の位置に更なるガスシール54が提供されている。更なるガスシール54は、乾性ガスシール30が失陥した場合に、極低温の温度で作動するタービン部分へのオイル蒸気の漏出を最小限に抑えることを意図したものである。更なるガスシールは、一対の軸方向に配置されているカーボンリング56及び58を備えている。リング56と58の間の半径方向空間は、典型的には約大気温度(例えば20℃)の窒素を外部供給源(図示せず)と連通しているシール担持体の通路60を介して送給される。少なくとも窒素の一部はガスシール54から通路48を介して抜かれるようになっていてもよい。
【0024】
典型的には、オイル軸受はほぼ60℃程度の温度で作動する。極低温ガスをタンデム型乾性ガスシール30へ供給することにより、極低温タービンは相対的に高い温度の軸受から熱的に絶縁され、それにより、極低温タービンの効率的作動を実現させ易くなる。機械の極低温部分と非極低温部分の熱的分離は、本発明によれば、低熱伝導度の材料の環状体の形態をしている半径方向熱的バリア部材70の存在によって強化される。熱的バリア部材70は、ボルト72又は類似部材によって、極低温乾性ガスシール36のためのハウジング74の部分へ固着されている。熱的バリア部材70は、乾性ガスシール36のための極低温ガスを通す室76の壁を形成しており、極低温ガスは、外部供給源(図示せず)からシール担持体ユニット46の別の内部通路78を介して供給されている。熱的バリア部材70の内面は、更なるラビリンスシールを通じてシャフト8上のスリーブ80の対応する面に係合する。室76へ供給される極低温ガスにとって2つの出口経路が存在する配列になっている。一方の出口は熱的バリア部材70とスリーブ80の間に提供されているラビリンスシールを通ってタービンホイール6の背後に至る。この出口経路を取ったガスはタービンホイール6の外周を通り越し、タービンの作動によって、膨張させられる極低温液体に一体に加わる。他方の出口の経路はラビリンスシール82を通って極低温乾性ガスシール36に至る。作動時、ガスシール36の圧力は、室76へ進入する極低温ガスの殆ど(典型的には約95%)が熱的バリア部材70とスリーブ80の間に提供されているラビリンスシールを介してタービンホイール6へ渡ってゆくのに十分な高さに維持される。このガスがタービン中に膨張させるプロセス液の気化によって形成されている場合、タンデム型乾性ガスシール30を通るプロセス液の蒸気の損失は低く抑えられる。典型的には、プロセス液は液化天然ガスであり、室76中の温度は、作動中、マイナス100℃からマイナス150℃の範囲の温度に維持可能である。典型的な例では、天然ガス蒸気は、ほぼマイナス145℃程度の温度で室76へ供給されている。室76からのガスの一部は、ラビリンスシール82を通って極低温乾性ガスシール36へ浸透してゆく。加圧下に室76内へ導入されるプロセスガスの圧力及び温度は、乾性ガスシール面36への損傷を回避するよう制御され露点より(僅かに)上に維持される。
【0025】
熱的バリア部材の存在は、極低温乾性ガスシール36から熱が奪われてゆく速度を下げ、而して、極低温乾性ガスシール36の面同士の間の極低温ガスの再凝縮を回避させる。
熱的バリア部材70は、更に、始動時の機械冷却中の冷熱ショックを制限するうえで助けとなる。
【0026】
タービンホイール6は、典型的には、適したアルミニウム合金(即ち、アルミニウムを主材とする合金)から鋳造されているが、同様に、チタン又はチタン合金で作られていてもよく、腐食のリスクがある場合又はタービンが高トルク伝達又は高レベルフラッシュで作動することになる場合には特にそうである。
【0027】
タービンホイール6は、ヒルトカップリングによってシャフト8へ接続されていてもよい。シャフト8自体は、マイナス196℃の様な遅い温度に持ち堪えるように適合されているマルテンサイト系ステンレス鋼で形成することができよう。軸受担持体26やシール担持体ユニット46及びハウジング74の様な他の構成要素は、必要な工学的強度を有し且つ使用中に晒される温度範囲に持ち堪えることのできる材料で作ることができよう。これらの構成要素の製造には、ステンレス鋼又はチタンが典型的な選択肢である。
【0028】
熱的バリア部材70は、典型的には、特に低い熱伝導度(例えば、ほぼ0.5W/m/℃程度)の材料、例えば適した機械特性及び熱特性を有するエポキシラミネート、で形成されている。代わりの材料は、低熱伝導度黒鉛含浸樹脂を含む。
【0029】
本発明による極低温液体膨張タービンは、単一膨張段を採用することができ、多くの理由で既知の複数段膨張部に勝って有利である。第1に、軸受からの熱及び他の摩擦損失はプロセス流体へ受け渡されない。この熱源の排除により、タービンからの排出温度は低くなり、概して改善された性能がもたらされる。第2に、タービンホイールは、固定又は既定の速さで回転させることができる。第3に、入口案内羽根は、合理的に高い効率を維持しつつ膨張タービンに亘る流れの広い変動を許容するように、当技術でよく知られた方式に構成することができる。第4に、膨張タービンは、多数の高い作動信頼度の標準的構成要素を採用することができる。第5に、タービンホイールは、異なった膨張比の広い範囲を扱うことができる。第6に、単一段の極低温タービンは、根本的に、複数段のものより作動効率が良く、というのも、単一段では機械を通る流路が短い結果として機能的損失が少ないからである。
【0030】
本発明による極低温液体膨張タービンは、更に、ジュールトムソン弁に比べ、前者からは仕事を回収でき後者からは容易に回収できないという点において、また極低温液体膨張タービンは所与の入り口温度についてより低い出口温度を実現するはずであるという点において、利点を有する。
【0031】
例えば天然ガス液化プラントで、所望される場合には、本発明による極低温液体膨張タービンをジュールトムソン弁と並列に動作させるようにしてもよく、そうすれば結果的に、増加したプロセス効率を手に入れることが可能になるし、タービンが発電機へ連結されている場合の電力回収が加増することとなろう。
【0032】
典型的な作動では、極低温液体は、広い範囲、例えば10バールから80バールの範囲から選択された圧力下に供給されよう。出口圧力は、入口圧力に依存して、1バールから10バールになろう。これらの範囲は典型であり、拡張され得る。
【符号の説明】
【0033】
2 入口フランジ
4 出口フランジ
6 タービンホイール
8 回転シャフト
10 連結部
12 半径方向入口
14 タービンの前方回転面
16 囲い板
18 拡散部
21 ガスシールが配置されている領域
23 オイル軸受が配置されている領域
24 オイル注入部通路
26 軸受担持体
28 ハウジング
30 タンデム型乾性ガスシール
33、48、50、60 通路
32、34 静止リング
36、38 乾性ガスシール
40、42 回転リング
46 シール担持体ユニット
52 ラビリンスシール
54 ガスシール
56、58 カーボンリング
70 半径方向熱的バリア部材
72 ボルト
74 ハウジング
76 室
78 内部通路
80 スリーブ
82 ラビリンスシール
300 ブレード
302 溝
図1
図2
図3