(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸線の方向の先端側に向けて外径が小さくなる縮外径部と、前記縮外径部から前記先端側の部分である脚部と、を有し、前記軸線の方向に延びる貫通孔を形成する絶縁体と、
前記貫通孔の前記先端側に少なくとも一部が挿入される中心電極と、
前記絶縁体の径方向の周囲に配置され、前記先端側に向けて内径が小さくなる縮内径部を有し、前記脚部の外周面との間で環状の間隙を形成する主体金具と、
前記主体金具に電気的に接続され、前記中心電極との間でギャップを形成する接地電極と、
前記絶縁体の前記縮外径部と前記主体金具の前記縮内径部との間に配置されるパッキンと、
を備えるスパークプラグであって、
前記パッキンと前記主体金具との接触部分のうちの最も先端側の位置を接触端位置とし、
前記絶縁体の前記脚部の外周面と前記主体金具の内周面との間の径方向の距離を間隙距離とし、
前記環状の間隙のうち前記間隙距離が最大である最大部分の後端の位置を最大端位置とした場合に、
前記主体金具の先端における前記間隙距離は、前記中心電極と前記接地電極との間の前記ギャップの距離よりも大きく、
前記主体金具は、前記接触端位置よりも前記先端側において、前記軸線の方向の後端側に向けて内径が大きくなる拡内径部を含み、
前記最大端位置は、前記接触端位置と前記主体金具の先端との間の前記軸線の方向の距離を2等分する位置である中央位置よりも前記後端側に位置し、
前記最大部分の前記間隙距離は、前記主体金具の前記先端における前記間隙距離よりも大きい、
スパークプラグ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.実施形態:
図1は、スパークプラグの一実施形態の断面図である。図中には、スパークプラグ100の中心軸CLが示されている(「軸線CL」とも呼ぶ)。図示された断面は、中心軸CLを含む断面である。以下、中心軸CLに平行な方向を「軸線CLの方向」、または、単に「軸線方向」または「前後方向」とも呼ぶ。中心軸CLを中心とする円の径方向を、単に「径方向」とも呼び、中心軸CLを中心とする円の円周方向を「周方向」とも呼ぶ。中心軸CLに平行な方向のうち、
図1における下方向を先端方向Df、または、前方向Dfと呼び、上方向を後端方向Dfr、または、後方向Dfrとも呼ぶ。先端方向Dfは、後述する端子金具40から電極20、30に向かう方向である。また、
図1における先端方向Df側をスパークプラグ100の先端側と呼び、
図1における後端方向Dfr側をスパークプラグ100の後端側と呼ぶ。
【0018】
スパークプラグ100は、絶縁体10と、中心電極20と、接地電極30と、端子金具40と、主体金具50と、導電性の第1シール部60と、抵抗体70と、導電性の第2シール部80と、先端側パッキン8と、タルク9と、第1後端側パッキン6と、第2後端側パッキン7と、を有している。
【0019】
絶縁体10は、中心軸CLに沿って延びて絶縁体10を貫通する貫通孔12(以下「軸孔12」とも呼ぶ)を有する略円筒状の部材である。絶縁体10は、アルミナを焼成して形成されている(他の絶縁材料も採用可能である)。絶縁体10は、先端側から後方向Dfrに向かって順番に並ぶ、脚部13と、第1縮外径部15と、先端側胴部17と、第3縮外径部14と、鍔部19と、第2縮外径部11と、後端側胴部18と、を有している。鍔部19は、絶縁体10のうちの外径が最も大きい部分である(大径部19とも呼ぶ)。第1縮外径部15の外径は、後端側から先端側に向かって、徐々に小さくなる。絶縁体10の第1縮外径部15の近傍(
図1の例では、先端側胴部17)には、後端側から先端側に向かって内径が徐々に小さくなる第1縮内径部16が形成されている。第2縮外径部11の外径は、先端側から後端側に向かって、徐々に小さくなる。第3縮外径部14の外径は、後端側から先端側に向かって、徐々に小さくなる。
【0020】
図1に示すように、絶縁体10の軸孔12の先端側には、中心電極20が挿入されている。中心電極20は、中心軸CLに沿って延びる棒状の軸部27と、軸部27の先端に接合された第1チップ29と、を有している。軸部27は、先端側から後方向Dfrに向かって順番に並ぶ、脚部25と、鍔部24と、頭部23と、を有している。脚部25の先端(すなわち、軸部27の先端)に、第1チップ29が接合されている(例えば、レーザ溶接)。本実施形態では、第1チップ29の少なくとも一部は、絶縁体10の先端側で、軸孔12の外に露出している。鍔部24の前方向Df側の面は、絶縁体10の第1縮内径部16によって、支持されている。また、軸部27は、外層21と芯部22とを有している。外層21は、芯部22よりも耐酸化性に優れる材料(例えば、ニッケルを含む合金)で形成されている。芯部22は、外層21よりも熱伝導率が高い材料(例えば、純銅、銅合金、等)で形成されている。また、第1チップ29は、軸部27よりも放電に対する耐久性に優れる材料(例えば、イリジウム(Ir)、白金(Pt)等の貴金属、タングステン(W)、それらの金属から選択された少なくとも1種を含む合金)を用いて形成されている。
【0021】
絶縁体10の軸孔12の後端側には、端子金具40の一部が挿入されている。端子金具40は、導電性材料(例えば、低炭素鋼等の金属)を用いて形成されている。
【0022】
絶縁体10の軸孔12内において、端子金具40と中心電極20との間には、電気的なノイズを抑制するための略円柱形状の抵抗体70が配置されている。抵抗体70は、例えば、導電性材料(例えば、炭素粒子)と、セラミック粒子(例えば、ZrO
2)と、ガラス粒子(例えば、SiO
2−B
2O
3−Li
2O−BaO系のガラス粒子)と、を含む材料を用いて形成されている。抵抗体70と中心電極20との間には、導電性の第1シール部60が配置され、抵抗体70と端子金具40との間には、導電性の第2シール部80が配置されている。シール部60、80は、例えば、抵抗体70の材料に含まれるものと同じガラス粒子と、金属粒子(例えば、Cu)と、を含む材料を用いて、形成されている。中心電極20と端子金具40とは、抵抗体70とシール部60、80とを介して、電気的に接続されている。
【0023】
主体金具50は、中心軸CLに沿って延びて主体金具50を貫通する貫通孔59を有する略円筒状の部材である。主体金具50は、低炭素鋼材を用いて形成されている(他の導電性材料(例えば、金属材料)も採用可能である)。主体金具50の貫通孔59には、絶縁体10が挿入されている。主体金具50は、絶縁体10の外周に固定されている。主体金具50の前方向Df側では、絶縁体10の先端(本実施形態では、脚部13の先端側の部分)が、貫通孔59の外に露出している。すなわち、絶縁体10の先端は、主体金具50の先端よりも前方向Df側に位置している。主体金具50の後端側では、絶縁体10の後端(本実施形態では、後端側胴部18の後端側の部分)が、貫通孔59の外に露出している。
【0024】
主体金具50は、先端側から後端側に向かって順番に並ぶ、胴部55と、座部54と、変形部58と、工具係合部51と、加締部53と、を有している。座部54は、鍔状の部分である。胴部55は、座部54から中心軸CLに沿って前方向Dfに向かって延びる略円筒状の部分である。胴部55の外周面には、内燃機関の取付孔にねじ込むためのねじ山52が形成されている。座部54とねじ山52との間には、金属板を折り曲げて形成された環状のガスケット5が嵌め込まれている。
【0025】
主体金具50は、変形部58よりも前方向Df側に配置された縮内径部56を有している。縮内径部56の内径は、後端側から先端側に向かって、徐々に小さくなる。主体金具50の縮内径部56と、絶縁体10の第1縮外径部15と、の間には、先端側パッキン8が挟まれている。先端側パッキン8は、鉄製でO字形状のリングである(他の材料(例えば、銅等の金属材料)も採用可能である)。
【0026】
工具係合部51は、スパークプラグ100を締め付けるための工具(例えば、スパークプラグレンチ)と係合するための部分である。加締部53は、絶縁体10の第2縮外径部11よりも後端側に配置され、主体金具50の後端(すなわち、後方向Dfr側の端)を形成する。加締部53は、径方向の内側に向かって屈曲されている。加締部53の前方向Df側では、主体金具50の内周面と絶縁体10の外周面との間に、第1後端側パッキン6とタルク9と第2後端側パッキン7とが、前方向Dfに向かってこの順番に、配置されている。本実施形態では、これらの後端側パッキン6、7は、鉄製でC字形状のリングである(他の材料も採用可能である)。
【0027】
スパークプラグ100の製造時には、加締部53が内側に折り曲がるように加締められる。そして、加締部53が前方向Df側に押圧される。これにより、変形部58が変形し、パッキン6、7とタルク9とを介して、絶縁体10が、主体金具50内で、先端側に向けて押圧される。先端側パッキン8は、第1縮外径部15と縮内径部56との間で押圧され、そして、主体金具50と絶縁体10との間をシールする。以上により、主体金具50が、絶縁体10に、固定される。
【0028】
接地電極30は、本実施形態では、棒状の軸部37と、軸部37の先端部31に接合された第2チップ39と、を有している。軸部37の後端は、主体金具50の先端57の面(すなわち、前方向Df側の面57。「先端面57」とも呼ぶ)に接合されている(例えば、抵抗溶接)。軸部37は、主体金具50の先端面57から前方向Dfに向かって延び、中心軸CLに向かって曲がって、先端部31に至る。先端部31は、中心電極20の前方向Df側に配置されている。先端部31の表面のうち中心電極20側の表面に、第2チップ39が接合されている(例えば、レーザ溶接)。第2チップ39は、軸部37よりも放電に対する耐久性に優れる材料(例えば、イリジウム(Ir)、白金(Pt)等の貴金属、タングステン(W)、それらの金属から選択された少なくとも1種を含む合金)を用いて形成されている。中心電極20の第1チップ29と接地電極30の第2チップ39とは、火花放電のためのギャップgを形成する。接地電極30は、ギャップgを隔てて中心電極20の先端部に対向している。
【0029】
接地電極30の軸部37は、軸部37の表面の少なくとも一部を形成する外層35と、外層35内に埋設された芯部36と、を有している。外層35は、耐酸化性に優れる材料(例えば、ニッケルとクロムとを含む合金)を用いて形成されている。芯部36は、外層35よりも熱伝導率が高い材料(例えば、純銅)を用いて形成されている。
【0030】
図2は、スパークプラグ100の前方向Df側の一部分を示す概略図である。図中には、中心軸CLが示されている。中心軸CLの左側には、主体金具50と絶縁体10との断面と、接地電極30の外観とが示されている。図中では、絶縁体10の貫通孔12と貫通孔12の内部との構成の図示が省略されている。中心軸CLの右側には、スパークプラグ100の外観が示されている。
【0031】
先端側パッキン8よりも前方向Df側では、主体金具50の胴部55の内周面55iと、絶縁体10の脚部13の外周面13oと、の間に間隙310が形成されている。この間隙310は、中心軸CLを中心とする環状の間隙である。以下、環状の間隙310の径方向の距離802、すなわち、主体金具50の内周面55iと絶縁体10の外周面13oとの間の径方向の距離802を、「間隙距離802」と呼ぶ。間隙距離802は、中心軸CLに平行な方向の位置に応じて変化し得る。図中の先端間隙距離812は、主体金具50の先端57(すなわち、間隙310の開口310o)における間隙距離である。
図2の実施形態では、先端間隙距離812は、中心電極20と接地電極30とによって形成されるギャップgの距離811よりも、大きい。ギャップgの距離811は、ギャップgの最短距離である。
【0032】
主体金具50の胴部55のうち縮内径部56よりも前方向Df側の部分は、前方向Df側から後端方向Dfrに向かって並ぶ3つの部分511、512、513に区分される。第1部分511は、先端57を含む部分である。第1部分511の内径は、主体金具50の先端57から後方向Dfr側に向けて徐々に大きくなる(以下、第1部分511を「拡内径部511」とも呼ぶ)。
図2の実施形態では、中心軸CLを含む断面上で、第1部分511の内周面は、直線で表される。
【0033】
第2部分512の内径は、後方向Dfr側に向けて徐々に小さくなる。
図2の実施形態では、第2部分512の内径は、径方向の外側に向かって凸な曲線に沿って小さくなっている。換言すれば、中心軸CLを含む断面上で、中心軸CLに平行な方向の位置の変化量に対する内径の変化量の割合の絶対値(すなわち、中心軸CLに対する内周面55iの傾き)は、後方向Dfr側に向けて徐々に大きくなる。ここで、内周面55iが中心軸CLに平行である場合、中心軸CLに対する内周面55iの傾きは、ゼロ度である。内周面55iが中心軸CLに垂直である場合、中心軸CLに対する内周面55iの傾きは、90度である。
図2の実施形態では、第2部分512において中心軸CLに対する内周面55iの傾きは、後方向Dfr側に向けて、45度未満の角度から、45度を超える角度まで、大きくなっている。
【0034】
第3部分513の内径は、中心軸CLに平行な方向の位置に依らず、一定である。第3部分513の後方向Dfr側には、縮内径部56が接続されている。以下、第3部分513のように、中心軸CLに平行な方向の位置に依らず内径が一定である部分を、「定内径部」とも呼ぶ。
【0035】
絶縁体10の脚部13は、前方向Df側から後端方向Dfrに向かって並ぶ4つの部分111、112、113、114に区分される。第1部分111は、絶縁体10の先端を含む部分である。第1部分111の外径は、先端の角を除いて、中心軸CLに平行な方向の位置に依らず、一定である。
【0036】
第2部分112の外径は、後方向Dfr側に向けて徐々に大きくなる。
図2の実施形態では、中心軸CLを含む断面上で、第2部分112の外周面は、直線で表される。また、絶縁体10の第2部分112は、主体金具50の第1部分511に対向している。そして、第2部分112の外周面は、主体金具50の第1部分511の内周面に、平行である。
【0037】
第3部分113の外径は、後方向Dfr側に向けて徐々に大きくなる。また、第3部分113は、主体金具50の第2部分512に対向している。
【0038】
第4部分114の外径は、中心軸CLに平行な方向の位置に依らず、一定である。絶縁体10の第4部分114は、主体金具50の第3部分513に対向している。第4部分114の後方向Dfr側には、第1縮外径部15が接続されている。
【0039】
図中の部分315は、間隙310のうちの最大の間隙距離802を有する部分である。以下、この部分315を、最大間隙部分315とも呼ぶ。
図2の実施形態では、最大間隙部分315は、主体金具50の第1部分511と絶縁体10の第2部分112とに挟まれた部分である。図中の位置317は、最大間隙部分315の後端の位置を示している(以下「最大端位置317」とも呼ぶ)。
【0040】
図中の3つの位置711、712、713は、それぞれ、中心軸CLに平行な方向の位置を示している。第1位置711は、主体金具50の先端57の位置を示している。第3位置713は、主体金具50と先端側パッキン8との接触部分のうちの最も前方向Df側の位置である(以下「接触端位置713」とも呼ぶ)。第2位置712は、第1位置711と第3位置713との間の中心軸CLに平行な方向の距離を2等分する位置である(「中間位置712」とも呼ぶ)。
図2の実施形態では、最大間隙部分315の後端317は、中間位置712よりも後方向Dfr側に位置している。最大間隙部分315は、間隙310の中間位置712よりも前方向Df側から、中間位置712よりも後方向Dfr側まで、延びている。以下、間隙310のうち、中間位置712よりも前方向Df側の部分を「前部分間隙311」と呼び、中間位置712よりも後方向Dfr側の部分を「後部分間隙312」とも呼ぶ。
【0041】
B.第1評価試験:
スパークプラグ100のサンプルを用いた第1評価試験について説明する。第1評価試験では、耐汚損性が評価された。この評価試験では、スパークプラグ100(
図1、
図2)のサンプルに加えて、第1参考例のスパークプラグのサンプルも評価された。
図3は、第1参考例のスパークプラグ100Bの概略図である。図中には、
図2と同様に、スパークプラグ100Bの前方向Df側の一部分の断面と外観とが示されている。図中の中心軸CLは、スパークプラグ100Bの中心軸である。中心軸CLの左側には、主体金具50Bと絶縁体10Bとの断面と、接地電極30の外観とが示されている。図中では、絶縁体10Bの内部の構成の図示が省略されている。中心軸CLの右側には、スパークプラグ100Bの外観が示されている。
図1、
図2の実施形態との差異は、主体金具50Bの胴部55Bの内周面55Biの断面形状と、絶縁体10Bの脚部13Bの外周面13Boの断面形状とが、
図2の対応する形状とそれぞれ異なっている点である。スパークプラグ100Bの他の部分の構成は、
図1、
図2のスパークプラグ100の対応する部分の構成と同じである(対応する要素と同じ要素には、同じ符号を付して、説明を省略する)。
【0042】
先端側パッキン8よりも前方向Df側では、主体金具50Bの胴部55Bの内周面55Biと、絶縁体10Bの脚部13Bの外周面13Boとの間に、中心軸CLを中心とする環状の間隙320が形成されている。主体金具50Bの先端における先端間隙距離822(すなわち、間隙320の開口320oでの間隙距離)は、中心電極20と接地電極30とによって形成される間隙の距離821よりも、大きい。なお、第1参考例のサンプルの先端間隙距離822は、実施形態のサンプルの先端間隙距離812(
図2)と、同じであった。
【0043】
主体金具50Bの胴部55Bのうち縮内径部56よりも前方向Df側の部分は、前方向Df側から後端方向Dfrに向かって並ぶ5つの部分521、522、523、524、525に区分される。第1部分521は、先端面57Bを含む部分である。第1部分521の内径は、中心軸CLに平行な方向の位置に依らず、一定である。このように、第1参考例の主体金具50Bは、先端部を形成する定内径部521を有している。
【0044】
第2部分522の内径は、後方向Dfr側に向けて徐々に大きくなる。中心軸CLを含む断面上で、第2部分522の内周面は、直線で表される。第3部分523の内径は、中心軸CLに平行な方向の位置に依らず、一定である。第4部分524の内径は、後方向Dfr側に向けて徐々に小さくなる。中心軸CLを含む断面上で、第4部分524の内周面は、直線で表される。第5部分525の内径は、中心軸CLに平行な方向の位置に依らず、一定である。第5部分525の後方向Dfr側には、縮内径部56が接続されている。
【0045】
絶縁体10Bの脚部13Bは、前方向Df側から後端方向Dfrに向かって並ぶ3つの部分121、122、123に区分される。第1部分121は、絶縁体10Bの先端を含む部分である。第1部分121の外径は、先端の角を除いて、中心軸CLに平行な方向の位置に依らず、一定である。第1部分121は、主体金具50Bの第1部分521と第2部分522との全体と第3部分523の前方向Df側の一部分に対向している。第2部分122の外径は、後方向Dfr側に向けて徐々に大きくなる。中心軸CLを含む断面上で、第2部分122の外周面は、直線で表される。第2部分122は、主体金具50Bの第3部分523の後方向Dfr側の一部分と第4部分524の全体とに、対向している。第3部分123の外径は、中心軸CLに平行な方向の位置に依らず、一定である。第3部分123は、主体金具50Bの第5部分525に対向している。
【0046】
図中の部分325は、間隙320のうちの最大の間隙距離を有する部分である。以下、この部分325を、最大間隙部分325とも呼ぶ。
図3の第1参考例では、最大間隙部分325は、主体金具50Bの第3部分523と絶縁体10Bの第1部分121とに挟まれた部分である。図中の位置327は、最大間隙部分325の後端の位置を示している。
【0047】
図中には、中心軸CLに平行な方向の3つの位置721、722、723が示されている。第1位置721は、主体金具50Bの先端の位置を示している。第3位置723は、主体金具50Bと先端側パッキン8との接触部分のうちの最も前方向Df側の位置である。第2位置722は、第1位置721と第3位置723との間の中心軸CLに平行な方向の距離を2等分する位置である(「中間位置722」とも呼ぶ)。
図3の第1参考例では、最大間隙部分325の後端327は、中間位置722よりも前方向Df側に位置している。このように、最大間隙部分325の全体は、間隙320の中間位置722よりも前方向Df側に位置している。中間位置722よりも後方向Dfr側では、間隙距離は、最大間隙部分325の間隙距離よりも短い。第1参考例では、中間位置722よりも前方向Df側の位置から後方向Dfrに向かって間隙距離が小さくなる。以下、間隙320のうち、中間位置722よりも前方向Df側の部分を「前部分間隙321」と呼び、中間位置712よりも後方向Dfr側の部分を「後部分間隙322」とも呼ぶ。
【0048】
図4(A)、
図4(B)は、実施形態のサンプルの試験結果を示すグラフであり、
図5(A)、
図5(B)は、第1参考例のサンプルの試験結果を示すグラフである。
図4(A)、
図5(A)では、横軸は、試験運転のサイクル数NCを示し、縦軸は、絶縁抵抗Ra(単位は、MΩ)を示している。縦軸の目盛りは、対数目盛である。絶縁抵抗Raは、端子金具40と主体金具50、50Bとの間の電気抵抗である。グラフ中では、10000MΩの目盛りは、絶縁抵抗Raが10000MΩ以上であることを示している。
図4(B)、
図5(B)では、横軸は、試験運転のサイクル数NCを示し、縦軸は、リーク発生率RT(単位は、%)を示している。なお、縦軸の上方向は、リーク発生率RTが小さくなる方向である。
【0049】
本評価試験において、リーク放電は、電極20、30のギャップgではなく、中心電極20から絶縁体10、10Bの外周面を通って主体金具50、50Bの内周面に至る経路を通る放電である。リーク発生率RTは、高電圧印加に対するリーク放電が発生した回数の割合である。なお、本評価試験では、実施形態の4個のサンプルと、第1参考例の4個のサンプルとが、試験された。絶縁抵抗Raは、4個のサンプルの絶縁抵抗のうちの最小値である。リーク発生率RTは、4個のサンプルのリーク発生率のうちの最大値である。
【0050】
試験運転は、以下の通りである。摂氏−10度の低温試験室内のシャシダイナモメータ上に、排気量が1500ccである4気筒エンジンを有する試験用自動車を置いた。この試験用自動車のエンジンに、スパークプラグの4個のサンプルを、各気筒に対応して組み付けた。そして、第1運転と、第1運転に続く第2運転と、で構成される運転を、1サイクルの試験運転として行った。第1運転は、「3回の空吹かし」と、「3速、35km/hでの40秒間の走行」と、「90秒間のアイドリング」と、「3速、35km/hでの40秒間の走行」と、「エンジンの停止」と、「冷却水の温度が摂氏−10度になるまでの自動車の冷却」とを、この順番に行う運転である。第2運転は、「3回の空ふかし」と、「30秒間のエンジン停止を挟みつつ、1速、15km/hでの15秒間の走行を3回行うこと」と、「エンジンの停止」と、「冷却水の温度が摂氏−10度になるまでの自動車の冷却」とを、この順番に行う運転である。第1運転は、第2運転と比べて、高負荷運転である。第1運転では、第2運転と比べて、スパークプラグの温度が高くなり易い。
【0051】
このような第1運転と第2運転とで構成される試験運転を、10回(10サイクル)繰り返した。そして、各サイクルの第1運転の終了時と第2運転の終了時とに、スパークプラグのサンプルをエンジンから取り外して、絶縁抵抗Raを測定した。また、各サイクルの第1運転でのリーク発生率RTと第2運転でのリーク発生率RTとを測定した。第1運転でのリーク発生率RTについては、以下の通りである。第1運転での全ての高電圧印加時の電圧の波形を解析し、総放電回数に対する異常な波形の放電(すなわち、リーク放電)の回数の割合を、第1運転でのリーク発生率RTとして算出した。同様に、第2運転でのリーク発生率RTは、第2運転での総放電回数に対する異常な波形の放電(すなわち、リーク放電)の回数の割合である。
【0052】
図中のグラフでは、各サイクル数NCの左側のデータが、第1運転の終了時の絶縁抵抗Raと第1運転でのリーク発生率RTとの測定結果を示し、各サイクル数NCの右側のデータが、第2運転の終了時の絶縁抵抗Raと第2運転でのリーク発生率RTとの測定結果を示している。図示するように、第2運転の終了時には絶縁抵抗Raが低下するが、次の第1運転の終了時には、絶縁抵抗Raが回復している。この理由は、以下の通りである。第2運転では、エンジンの回転速度が低いので、エンジンの燃焼室内の温度が低く、絶縁体10、10Bの外周面にカーボンが付着し易い。第1運転では、エンジンの回転速度が速いので、燃焼室内の温度が高く、絶縁体10、10Bの外周面に付着したカーボンが焼失する。
【0053】
図4(A)に示すように、実施形態のスパークプラグ100を用いる場合、第2運転によって絶縁抵抗Raが低下するものの、第1運転によって絶縁抵抗Raが10000MΩ以上に回復した。このような第1運転による絶縁抵抗Raの回復は、10サイクルに亘って定常的に進行した。サイクル数NCが10を超える場合も、同様に、第1運転によって絶縁抵抗Raが10000MΩ以上に回復し得ると推定される。
【0054】
図5(A)に示すように、第1参考例のスパークプラグ100Bを用いる場合、第1運転による10000MΩ以上の絶縁抵抗Raの回復を継続することができなかった。また、サイクル数NCの増大に応じて、絶縁抵抗Raが徐々に低下した。
【0055】
また、
図4(B)に示すように、実施形態のスパークプラグ100を用いる場合、リーク発生率RTは、10サイクルに亘って、ゼロ%であった。一方、
図5(B)に示すように、第1参考例のスパークプラグ100Bを用いる場合、第1運転でのリーク発生率RTが、第2運転でのリーク発生率RTよりも高い傾向にあった。この理由は、以下の通りである。第2運転の最中には、絶縁体10Bの外周面に付着したカーボンの量が徐々に増加する。従って、次の第1運転の開始時には、カーボンの付着量が多いので、リーク放電が発生し易い。また、第1運転の最中には、絶縁体10Bの外周面に付着したカーボンの量が、焼失等によって徐々に減少する。従って、次の第2運転の開始時には、カーボンの付着量が少ないので、リーク放電が発生しにくい。また、第1運転は、高負荷運転であるので、第1運転では、リーク放電が発生し易い。一方、第2運転は、低負荷運転であるので、第2運転では、リーク放電が発生しにくい。以上により、第1運転と第2運転とを繰り返す場合、第1運転でのリーク発生率RTが高くなり得、第2運転でのリーク発生率RTが低くなり得る。
【0056】
第1運転でのリーク発生率RTが高いことは、絶縁体の外周面が汚損し易いことを示し、第1運転でのリーク発生率RTが低いことは、絶縁体の外周面が汚損しにくいことを示している。
図4(B)と
図5(B)とを比較すると、実施形態のスパークプラグ100(
図4(B))の第1運転でのリーク発生率RTは、第1参考例のスパークプラグ100B(
図5(B))の第1運転でのリーク発生率RTよりも、低かった。
【0057】
このように、実施形態のスパークプラグ100の耐汚損性は、第1参考例のスパークプラグ100Bの耐汚損性と比べて、良好である。この理由は、以下のように推定される。実施形態のスパークプラグ100では、間隙310(
図2)の先端間隙距離812は、電極20、30のギャップgの距離811よりも、大きい。また、主体金具50は、接触端位置713よりも前方向Df側において、後方向Dfr側に向けて内径が大きくなる第1部分511を含んでいる。さらに、最大間隙部分315の後端317が中間位置712よりも後方向Dfr側に位置している、すなわち、最大間隙部分315が中間位置712よりも後方向Dfr側まで延びている。以上により、後部分間隙312、ひいては、間隙310において、燃焼ガスの流動のし易さが、向上する。これにより、後部分間隙312内で燃焼ガスが滞留することが抑制される。従って、後部分間隙312内に、ひいては、間隙310内にカーボンが蓄積することが抑制される。また、高温の燃焼ガスが間隙310内で流動し易いので、絶縁体10の外周面に付着したカーボンの焼失を促進できる。また、燃焼ガスが後部分間隙312に流入する場合、燃焼ガスは、後部分間隙312から、ひいては、間隙310から、容易に外に流出できる。従って、絶縁体10の外周面13oにカーボンが堆積することを抑制できる。また、絶縁体10の外周面13oに付着したカーボンの焼失を促進できる。以上の結果、リーク放電を抑制できる。また、絶縁抵抗の低下を抑制できる。
【0058】
一方、第1参考例(
図3)では、最大間隙部分325の後端327は、中間位置722よりも前方向Df側に位置している。従って、後部分間隙322において、間隙距離が短くなり、燃焼ガスが滞留し易い。この結果、後部分間隙322内で、絶縁体10Bの外周面上にカーボンが堆積し易い。また、間隙距離が短い後部分間隙322内で絶縁体10Bの外周面にカーボンが堆積するので、リーク放電が生じ易い。
【0059】
C.第2評価試験:
第2評価試験では、主体金具の先端部に形成され主体金具の内径を先端部で小さくする定内径部(例えば、
図3の第1部分521)と、環状の間隙における燃焼ガスの流動のし易さと、の関係が評価された。
図6は、第2参考例のスパークプラグ100Cの概略図である。第2評価試験では、
図3に示す第1参考例のスパークプラグ100Bのサンプルと、
図6に示す第2参考例のスパークプラグ100Cのサンプルと、が評価された。
【0060】
図6のスパークプラグ100Cの主体金具50Cは、
図3の主体金具50Bの第5部分525よりも前方向Df側の部分521〜524を、
図6の第1部分531と第2部分532に置換して得られる。第1部分531は、先端面57Cから、第5部分525の近傍まで、延びている。第1部分531の内径は、中心軸CLに平行な方向の位置に依らず、一定である。第1部分531の内径は、
図3の主体金具50Bの第1部分521の内径よりも、大きい。また、主体金具50Cの先端における先端間隙距離832(すなわち、間隙330の開口330oでの間隙距離)は、中心電極20と接地電極30とによって形成される間隙の距離821よりも、大きい。
【0061】
第2部分532の内径は、後方向Dfr側に向けて徐々に小さくなる。中心軸CLを含む断面では、第2部分532の内周面は、直線で表される。第2部分532の後方向Dfr側には、第5部分525が接続されている。主体金具50Cの先端面57Cの径方向の幅は、
図3の主体金具50Bの先端面57Bの径方向の幅よりも、小さい。接地電極30Cの軸部37Cの厚さは、主体金具50Cの先端面57Cの幅に合わせて、小さく調整されている。
図6のスパークプラグ100Cの他の部分の構成は、
図3のスパークプラグ100Bの対応する部分の構成と同じである(対応する要素と同じ要素には、同じ符号を付して、説明を省略する)。例えば、絶縁体10Bの構成は、
図3のスパークプラグ100Bと
図6のスパークプラグ100Cとの間で、同じである。
【0062】
図7は、熱価の測定結果を示すグラフである。図中には、
図3のスパークプラグ100Bのサンプルの熱価と、
図6のスパークプラグ100Cのサンプルの熱価とが、示されている。横軸は、熱価を示している(右方向に向かって熱価が大きくなる)。熱価は、熱の逃げ易さを示している。大きい熱価は、スパークプラグの種類が「冷え型」であること、すなわち、スパークプラグが冷えやすく、スパークプラグの温度上昇が抑制されることを示している。小さい熱価は、スパークプラグの種類が「焼け型」であること、すなわち、スパークプラグの冷却が抑制され、スパークプラグの温度が高くなり易いことを示している。図中の範囲R7は、7番の熱価に対応する範囲を示している。
【0063】
図示するように、第1参考例のスパークプラグ100Bのサンプルの熱価は、第2参考例のスパークプラグ100Cのサンプルの熱価よりも、小さかった。すなわち、スパークプラグ100Bのサンプルでは、スパークプラグ100Cのサンプルと比べて、温度低下が抑制された。
【0064】
スパークプラグは、主体金具と絶縁体との間の間隙(例えば、
図2、
図6の間隙320、330)に流入した高温の燃焼ガスによって、加熱される。間隙内の高温の燃焼ガスが間隙の外に流出することが抑制される場合、スパークプラグが燃焼ガスによって加熱され続けるので、スパークプラグが冷めにくく、熱価が小さくなる。間隙内の高温の燃焼ガスが間隙の外に流出し易い場合、スパークプラグが冷めやすく、熱価が大きくなる。第1参考例(
図3)と第2参考例(
図6)との間では、主体金具50B、50Cの胴部55B、55Cの内周面の形状が異なっている。このような形状の差異によって、間隙320、330からの燃焼ガスの流出のし易さに、差異が生じる。
図7に示す熱価の差異は、間隙320、330からの燃焼ガスの流出のし易さの差異によって引き起こされると、推定される。
【0065】
具体的には、
図3のスパークプラグ100Bの主体金具50Bの内周面55Biを後方向Dfr側から前方向Dfに向けて辿る場合に、第2部分522によって内径が低減され、そして、第1部分521によって小さい内径が維持される。間隙320は、開口320oを含む部分(第1部分521によって形成される部分)において、小さく絞られている。従って、第2部分522よりも後方向Dfr側に流入した燃焼ガスが、第1部分521によって形成される狭い間隙を通って間隙320の外に流出することが抑制されると推定される。上述の通り、間隙320からの燃焼ガスの流出が抑制される場合、スパークプラグは冷えにくい(熱価が小さくなる)。第1参考例のスパークプラグ100Bでは、間隙320からの燃焼ガスの流出が抑制されるという推定は、
図7で示されたスパークプラグ100Bの小さい熱価と、整合する。間隙320からの燃焼ガスの流出が抑制される場合、燃焼ガスに含まれるカーボンが間隙320内に残留し易い。従って、
図3のスパークプラグ100Bでは、
図6のスパークプラグ100Cと比べて、絶縁体10Bの外周面が汚損し易いと推定される。
【0066】
図6のスパークプラグ100Cでは、間隙330の開口330oの近傍で主体金具50Cの内径を絞る部分(例えば、
図3の第1部分521)は、省略されている。従って、間隙330に流入した燃焼ガスは、容易に、間隙330の外に流出できると推定される。上述の通り、間隙330から燃焼ガスが容易に流出できる場合、スパークプラグは冷え易い(熱価が大きくなる)。第2参考例のスパークプラグ100Cでは、間隙330から燃焼ガスが流出し易いという推定は、
図7で示されたスパークプラグ100Cの大きい熱価と、整合する。間隙330から燃焼ガスが流出し易い場合、燃焼ガスに含まれるカーボンが間隙320内に残留することを抑制できる。従って、
図6のスパークプラグ100Cでは、
図3のスパークプラグ100Bと比べて、絶縁体10Bの外周面の汚損が抑制されると推定される。
【0067】
図2のスパークプラグ100についても、
図3のスパークプラグ100Bと比べて、絶縁体10の外周面の汚損が抑制されると推定される。この理由は、以下の通りである。
図2の主体金具50は、
図3の主体金具50Bの第2部分522のように、前方向Dfに向けて内径が小さくなる第1部分511を有している。しかし、
図2の主体金具50は、主体金具の先端から後方向Dfrに向けて小さい内径を維持する部分(例えば、
図3の第1部分521)を、
図6の主体金具50Cと同様に有していない。
図2の主体金具50の第1部分511では、主体金具50の先端57から後方向Dfrに向けて内径が大きくなる。従って、
図2のスパークプラグ100では、
図6のスパークプラグ100Cと同様に、
図3のスパークプラグ100Bと比べて、間隙310に流入した燃焼ガスは、間隙310の外に流出し易いと推定される。従って、
図2のスパークプラグ100では、絶縁体10の外周面13oにカーボンが堆積することが抑制されると推定される。
【0068】
D.第3評価試験:
第3評価試験では、試験運転によって絶縁体の脚部の外周面にカーボンが付着した状態で、絶縁抵抗が測定された。第3評価試験では、
図2に示す実施形態のスパークプラグ100のサンプルと、
図6に示す主体金具50Cと接地電極30Cとを有する参考例のスパークプラグ100Dのサンプルとが、評価された。参考例のスパークプラグ100Dの主体金具50Cと接地電極30Cと以外の部分は、
図1、
図2のスパークプラグ100の対応する部分と同じである。評価試験では、スパークプラグ100、100Dのサンプルが組み付けられたエンジンを、所定条件下で運転した。その後に、スパークプラグ100、100Dの絶縁体10を主体金具50、50Cから取り外した。そして、端子金具40に第1プローブを固定し、絶縁体10の脚部13の外周面に第2プローブを接触させた。これらのプローブの間の電気抵抗、すなわち、第2プローブから、脚部13の外周面を通って中心電極20に至り、中心電極20から絶縁体10の貫通孔12内を通って端子金具40に至る経路の電気抵抗を、絶縁抵抗として測定した。脚部13の外周面上の第2プローブの接触位置としては、脚部13の先端からの距離が0mmから12mmまでの範囲のうち1mm間隔で選択された13個の位置が用いられた。
【0069】
図8は、スパークプラグ100のサンプルの試験結果を示すグラフであり、
図9は、スパークプラグ100Dのサンプルの試験結果を示すグラフである。横軸は、絶縁体10の先端を基準とする後方向Dfrの位置Dpを示している。位置Dpは、絶縁体10の先端10fからの後方向Dfrの距離によって、表されている(単位は、mm)。右側の縦軸は、絶縁抵抗Rbを示している(単位は、MΩ)。右側の縦軸の目盛りは、対数目盛である。無限大の記号は、絶縁抵抗Rbが10000MΩ以上であることを示している。データ点ma、mbは、第2プローブの接触位置の位置Dpと、絶縁抵抗Rbの測定結果と、の関係を示している。
【0070】
左側の縦軸は、外径Doと内径Diとを示している(単位は、mm)。外径Doは、脚部13の外周面13oの外径であり、内径Diは、主体金具50、50Cの内周面55i、55Ciの内径である。
図8、
図9には、位置Dpと、脚部13の外周面13oの外径Doと、の関係が示され、また、位置Dpと、主体金具50、50Cの内周面55i、55Ciの内径Diと、の関係が示されている。
図9中の間隙340は、主体金具50Cの内周面55Ciと絶縁体10の外周面13oとの間の間隙である。
【0071】
図8に示すように、径方向の外側に向かって凸な曲線状の内周面を有する第2部分512は、8mmから9mmまでの位置Dpの範囲内に、配置されている。また、
図8と
図9との両方において、9mm以上の位置Dpの範囲内では、間隙距離が0.5mm未満であった。従って、燃焼ガスは、主に9mm以下の位置Dpの範囲内で、流動すると推定される。また、図示を省略するが、接触端位置(例えば、
図2の接触端位置713)は、11mmから12mmまでの位置Dpの範囲内に配置されていた。
【0072】
脚部13の外周面13oに付着したカーボンの量が多い場合には、外周面13oの電気抵抗が小さくなる。従って、絶縁抵抗Rbが小さいことは、外周面13oに付着したカーボンの量が多いことを示している。また、図示するように、絶縁抵抗Rbは、位置Dpが先端10fに近いほど、すなわち、第2プローブが中心電極20に近いほど、小さかった。
【0073】
図8に示す測定結果によれば、4mm以上9mm以下の位置Dpの範囲内では、位置Dpが先端10fに近いほど絶縁抵抗Rbが小さかった。4mm以下の位置Dpの範囲内では、絶縁抵抗Rbは、位置Dpに依らず、おおよそ一定であった。そして、6mm以上の位置Dpの範囲内では、絶縁抵抗Rbは、10MΩよりも大きく、7mm以上の位置Dpの範囲内では、絶縁抵抗Rbは、100MΩよりも大きかった。
【0074】
図9に示す測定結果によれば、8mm以上9mm以下の位置Dpの範囲内で、位置Dpが先端10f、10Bfに近づくことによって、絶縁抵抗Rbが10000MΩ以上から10MΩ未満まで急激に減少した。位置Dpが8mmの位置から5mmの位置に移動することによって、絶縁抵抗Rbは、更に小さくなった。5mm以下の位置Dpの範囲内では、絶縁抵抗Rbは、位置Dpに依らず、おおよそ一定であった。
【0075】
このように、
図9の参考例では、位置Dpが9mmの位置から8mmの位置に移動することによって、絶縁抵抗Rbが10000MΩ以上から10MΩ未満に急激に減少した。一方、
図8の実施形態では、位置Dpが9mmの位置から8mmの位置に移動することによって絶縁抵抗Rbが減少するものの、8mmの位置Dpでは、500MΩを超える絶縁抵抗Rbを維持できた。このように、8mmと9mmとの2つの位置Dpの間での絶縁抵抗Rbの挙動は、
図8の実施形態と
図9の参考例との間で大きく異なっていた。また、
図8の実施形態と
図9の参考例との間では、絶縁体10の形状はおおよそ同じであるものの、8mmと9mmとの2つの位置Dpの間で、主体金具50、50Cの内周面55i、55Ciの形状が異なっている。従って、絶縁抵抗Rbの挙動の差異は、主に、主体金具50、50Cの内周面55i、55Ciの形状の差異に起因すると推定される。
【0076】
図9の参考例の主体金具50Cの8mmと9mmとの2つの位置Dpの間の部分は、第1部分531によって形成されている。
図5で説明したように、第1部分531の内径は、中心軸CLに平行な方向の位置に依らず、一定である。従って、8mmと9mmとの2つの位置Dpの間において、
図8の実施形態と比べて、間隙距離が小さくなる。これにより、燃焼ガスの流動が抑制される。そして、8mmと9mmとの2つの位置Dpの間、ひいては、8mmよりも先端10fに近い位置の範囲において、絶縁体10の脚部13の外周面13o上に、
図8の実施形態と比べて、カーボンが堆積し易い。以上の
図9の参考例の説明は、
図9の測定結果において、位置Dpが9mmの位置から8mmの位置に移動することによって絶縁抵抗Rbが急激に減少し、そして、8mm以下の位置Dpの範囲において絶縁抵抗Rbが小さかったことと、整合している。
【0077】
図8の実施形態の主体金具50は、8mmと9mmとの2つの位置Dpの間に、第2部分512を有している。
図2で説明したように、第2部分512の内径は、後方向Dfr側に向けて徐々に小さくなる。また、第2部分512の内径は、径方向の外側に向かって凸な曲線に沿って小さくなっている。従って、8mmと9mmとの2つの位置Dpの間において、
図9の参考例と比べて、間隙距離を大きくすることができる。これにより、燃焼ガスの流動のし易さを向上できる。また、中心軸CLを含む断面上で第2部分512の内周面が曲線で表されるので、内周面が直線、または、折れ線で表される場合と比べて、燃焼ガスの流れる方向は内周面に沿って滑らかに変化可能である。従って、燃焼ガスの流動のし易さを向上できる。また、第2部分512は、最大間隙部分315(
図2)の最大端位置317よりも後方向Dfr側に設けられている。従って、最大端位置317よりも後方向Dfr側において、燃焼ガスの流動のし易さを向上できる。以上により、第2部分512の近傍、ひいては、間隙310内で、燃焼ガスが滞留することが抑制される。従って、第2部分512の近傍、ひいては、間隙310内において、絶縁体10の外周面13oに、
図9の参考例と比べて、カーボンが堆積することを抑制できる。以上の
図8の実施形態に関する説明は、
図8の測定結果において、8mmと9mmとの2つの位置Dpの間で、ひいては、6mm以上の位置Dpの範囲内で、大きな絶縁抵抗Rb(例えば、10MΩ以上の絶縁抵抗Rb)を実現できたことと、整合している。
【0078】
E.変形例:
(1)主体金具の構成としては、上記の構成に限らず、他の種々の構成を採用可能である。例えば、主体金具の先端を形成する部分が、後方向Dfrに向けて一定の内径を維持する定内径部であってもよい。また、主体金具の先端を形成する部分が、主体金具の先端から後方向Dfrに向けて内径が小さくなる部分であってもよい。
【0079】
また、最大間隙部分(例えば、
図2の最大間隙部分315)と、径方向の外側に向かって凸な曲線に沿って内径が小さくなる部分(例えば、
図2の第2部分512)と、の間に、他の部分が形成されてもよい。例えば、定内径部と、後方向Dfrに向けて内径が小さくなる部分と、の少なくとも一方が形成されてもよい。
【0080】
また、最大間隙部分よりも後方向Dfr側において後方向Dfrに向けて内径が小さくなる部分の内周面の形状としては、
図2の第2部分512のように曲線状の形状に代えて、他の任意の形状を採用可能である。例えば、径方向の内側に向かって凸な曲線状の形状を採用してもよい。また、中心軸CLを含む断面上での内周面の形状が、直線と折れ線と曲線との少なくとも1つで表される形状であってもよい。また、後方向Dfrの位置の変化に対してステップ状に内径が変化してもよい。
【0081】
また、最大間隙部分の後端から中心軸CLに垂直に内径が小さくなってもよい。
図10は、別の実施形態のスパークプラグ100Eの前方向Df側の一部分を示す概略図である。
図2のスパークプラグ100との差異は、以下の通りである。主体金具50Eの胴部55Eのうち縮内径部56よりも前方向Df側の部分は、前方向Df側から後端方向Dfrに向かって並ぶ3つの部分551、552、513に区分される。第1部分551は、
図2の第1部分511を、第3部分513の前方向Df側の端に対向する位置まで延長して得られる部分である。第2部分552は、中心軸CLに垂直な面であり、第1部分551の後方向Dfr側の端と、第3部分513の前方向Df側の端とを、接続している。スパークプラグ100Eの他の部分の構成は、
図1、
図2のスパークプラグ100の対応する部分の構成と同じである(対応する要素と同じ要素には、同じ符号を付して、説明を省略する)。間隙350は、主体金具50Eの内周面55Eiと絶縁体10の外周面13oとの間の間隙である。最大間隙部分355は、間隙350のうちの最大の間隙距離を有する部分である。最大端位置357は、最大間隙部分355の後端の位置を示している。最大端位置357は、中間位置712よりも後方向Dfr側に位置している。また、主体金具50Eの先端57(すなわち、間隙350の開口350o)における先端間隙距離812は、
図2の先端間隙距離812と同じであり、ギャップgの距離811よりも大きい。このようなスパークプラグ100Eも、絶縁体10の外周面13oにカーボンが堆積することを抑制できると推定される。
【0082】
また、中心軸CLを含む断面上で、主体金具の先端の面と、主体金具の内周面のうちの後方向Dfrに向けて内径が大きくなる部分である拡内径部から前方向Df側の部分とは、1個以上の角部を形成ししてもよい。
図11は、別の実施形態のスパークプラグ100Fの前方向Df側の一部分を示す概略図である。図中には、
図2の断面と同じく、中心軸CLを含む平らな断面が示されている。
図2のスパークプラグ100との差異は、主体金具50の先端面57と拡内径部511の内周面とがなす角部が面取りされて面取部511aが形成されている点だけである。
図11の下部には、面取部511aの近傍の拡大断面図が示されている。
図11のスパークプラグ100Fの他の部分の構成は、
図1、
図2のスパークプラグ100の対応する部分の構成と同じである(対応する要素と同じ要素には、同じ符号を付して、説明を省略する)。
【0083】
図11の実施形態では、面取部511aの内径は、後方向Dfrに向けて徐々に小さくなる。
図11に示す断面上では、面取部511aの内周面は、直線で表されている。面取部511aの後方向Dfr側には、拡内径部511bが設けられている。拡内径部511bの形状は、
図2の拡内径部511のうちの
図11の面取部511aに対応する部分を除いた残りの部分の形状と、同じである。主体金具50Fのうち面取部511a以外の部分の構成は、
図2の主体金具50の構成と同じである。例えば、主体金具50Fの胴部55Fの内周面55Fiの形状は、面取部511aの内周面を除いて、
図2の主体金具50の胴部55の内周面55iの対応する部分の形状と、同じである。
【0084】
図11に示すように、主体金具50Fの先端面57Fと面取部511aの内周面とは、第1角部C1を形成し、面取部511aの内周面と拡内径部511bの内周面とは、第2角部C2を形成している。
図11の断面上で、第1角度Ang1は、第1角部C1の角度(主体金具50Fの内部側の角度)を示し、第2角度Ang2は、第2角部C2の角度を示している。本実施形態では、これらの角度Ang1、Ang2は、いずれも、90度よりも大きい(すなわち、鈍角)。一般的に、放電は、先鋭な角部で生じ易い。仮に、主体金具の内周面が90度以下の角部を形成する場合、接地電極30と中心電極20との間ではなく主体金具のその角部と中心電極20との間で放電が生じ得る。
図11の実施形態では、主体金具50Fの先端面57Fと、主体金具50Fの内周面のうちの拡内径部511bから先端方向Df側の部分(すなわち、拡内径部511bの内周面と面取部511aの内周面)と、によって形成される2個の角部C1、C2のそれぞれの角度Ang1、Ang2は、いずれも、90度よりも大きい。従って、電極20、30のギャップgではなく主体金具50Fの角部C1、C2と中心電極20との間で放電が生じることを抑制できる。
【0085】
また、
図11のスパークプラグ100Fの構成は、面取部511aが形成されている点を除いて、
図1、
図2のスパークプラグ100の構成と同じである。例えば、主体金具50Fの胴部55Fの内周面55Fiと、絶縁体10の脚部13の外周面13oと、の間の間隙360の形状は、面取部511aによって形成される部分を除いて、
図2の間隙310の形状と同じである。そして、主体金具50Fの先端57F(すなわち、間隙360の開口360o)における先端間隙距離812Fは、ギャップgの距離811よりも大きい。以上により、
図11のスパークプラグ100Fは、
図1、
図2のスパークプラグ100と同様に、絶縁体10の外周面13oにカーボンが堆積することを抑制できる、と推定される。なお、
図11の面取部511aを、上記の他の実施形態の主体金具(例えば、
図10の主体金具50E)に適用してもよい。
【0086】
一般的には、主体金具は、接触端位置(例えば、
図2の接触端位置713)よりも前方向Df側において、後方向Dfrに向けて内径が大きくなる部分を含むことが好ましい(「拡内径部」とも呼ぶ)。主体金具が拡内径部を含む場合、間隙距離を大きくできるので、間隙(例えば、
図2の間隙310)内でのガスの流動のし易さを向上できる。拡内径部の内周面の形状としては、任意の形状を採用可能である。例えば、中心軸CLを含む断面上での内周面の形状が、直線と折れ線と曲線との少なくとも1つで表される形状であってもよい。また、後方向Dfrの位置の変化に対してステップ状に内径が変化してもよい。
【0087】
また、主体金具の先端における間隙距離は、中心電極と接地電極との間のギャップの距離よりも大きいことが好ましい。この構成によれば、中心電極から絶縁体の外周面を通って主体金具へ至る経路を通る放電が生じる可能性を抑制できる。また、主体金具の内周面と絶縁体の外周面との間の間隙(例えば、
図2の間隙310)から間隙の外への燃焼ガスの流出が容易になるので、絶縁体の外周面にカーボンが堆積することを抑制できる。
【0088】
また、最大間隙部分の後方向Dfr側の端の位置(例えば、
図2の最大間隙部分315の最大端位置317)は、接触端位置と主体金具の先端との間の軸線の方向の距離を2等分する位置である中央位置(例えば、
図2の第1位置711と接触端位置713との間の中間位置712)よりも後方向Dfr側に位置することが好ましい。この構成によれば、間隙内での燃料ガスの流動のし易さを向上できるので、間隙の内部にカーボンが残留することを抑制できる。
【0089】
また、主体金具は、「
図2の第1部分511のように、主体金具の先端から後端側に向けて内径が大きくなる部分」と、「
図2の第2部分512のように、最大端位置よりも後端側で、後端側に向かって、内径が、径方向の外側に向かって凸な曲線に沿って小さくなる部分」と、の少なくとも一方を有することが好ましい。
【0090】
また、主体金具の内周面のうち拡内径部から先端側の部分(先端側内周面とも呼ぶ)の形状としては、種々の形状を採用可能である。例えば、中心軸CLを含む断面上での先端側内周面の形状が、直線と折れ線と曲線との少なくとも1つで表される形状であってもよい。また、中心軸CLを含む断面上で、主体金具の先端の面と先端側内周面とが、1個以上の角部を形成してもよい。角部は、中心軸CLを含む断面上で2本の直線が接続された部分である。角部の総数は、1個でもよく、2個でもよく、3個以上でもよい。ここで、中心軸CLを含む断面上で、主体金具の先端の面と先端側内周面とによって形成される1個以上の角部のそれぞれの角度(主体金具の外部側ではなく内部側の角度)が、いずれも、鈍角であることが好ましい。この構成によれば、接地電極ではなく主体金具の角部で放電が生じることを抑制できる。
【0091】
(2)スパークプラグの構成としては、上記の構成に限らず、他の種々の構成を採用可能である。例えば、接地電極と主体金具との間に、他の部材が配置されてもよい。一般的には、接地電極は、直接的に、または、他の部材を介して、主体金具に電気的に接続されていればよい。また、中心電極20の第1チップ29と接地電極30の第2チップ39との少なくとも一方を省略してもよい。また、中心電極20の形状としては、
図1で説明した形状とは異なる種々の形状を採用してもよい。また、接地電極30の形状としては、
図1で説明した形状とは異なる種々の形状を採用可能である。
【0092】
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。