特許第6552602号(P6552602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6552602動力式工具を用いる拡張アンカの最適化された取付方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552602
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】動力式工具を用いる拡張アンカの最適化された取付方法
(51)【国際特許分類】
   B25B 28/00 20060101AFI20190722BHJP
   B25B 21/02 20060101ALI20190722BHJP
   E04B 1/41 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   B25B28/00
   B25B21/02 F
   E04B1/41 503G
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-507399(P2017-507399)
(86)(22)【出願日】2015年8月11日
(65)【公表番号】特表2017-526541(P2017-526541A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(86)【国際出願番号】EP2015068420
(87)【国際公開番号】WO2016023886
(87)【国際公開日】20160218
【審査請求日】2018年2月9日
(31)【優先権主張番号】14180636.4
(32)【優先日】2014年8月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】ガウル, ハンス−ディーター
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−324264(JP,A)
【文献】 特開2014−020120(JP,A)
【文献】 特開2010−247289(JP,A)
【文献】 特開2013−188812(JP,A)
【文献】 特開2006−315125(JP,A)
【文献】 特開2012−111035(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0222876(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/14
E04B 1/41
B25B 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力式工具(20)、特にインパクトドライバを用いて拡張アンカ(1)を取り付ける方法であって、
前記動力式工具(20)で発生して前記拡張アンカ(1)に加えられる締付トルクが予め定めた閾値となるまで、前記動力式工具(20)で発生する第1回転速度に応じ、前記拡張アンカ(1)の拡張スリーブ(3)を拡張させるべく、前記動力式工具(20)を用い、前記拡張アンカ(1)に回転打撃を加える工程と、
前記動力式工具(20)で発生する第1回転速度に応じ、前記拡張アンカ(1)の拡張スリーブ(3)を拡張させるべく、前記動力式工具(20)を用い、予め定めた回数の回転打撃を前記拡張アンカ(1)に加える工程と、
前記第1回転速度より低速で前記動力式工具(20)で発生する第2回転速度に応じ、前記拡張アンカ(1)の拡張スリーブ(3)を拡張させるべく、前記動力式工具(20)を用い、予め定めた期間(t)に、前記拡張アンカ(1)に回転打撃を加える工程と
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法を実行するための動力式工具(20)、特にインパクトドライバであって、
前記拡張アンカ(1)の形式または前記拡張アンカ(1)に適用する締付トルクを入力するための入力部(30)と、
前記拡張アンカ(1)との間で伝達可能な回転打撃を生成する打撃部(21)と、
前記動力式工具(20)の締付トルクを検出する検出部(39)と、
制御部(35)とを備えた動力式工具(20)において、
前記制御部(35)は、
前記動力式工具(20)で発生する第1回転速度を設定することにより、前記動力式工具(20)で発生して前記拡張アンカ(1)に加えられる締付トルクが予め定めた閾値となるまで、前記拡張アンカ(1)の拡張スリーブ(3)を拡張させるべく、前記第1回転速度に応じた回転打撃を前記拡張アンカ(1)に印加可能とし、
前記動力式工具(20)で発生する前記第1回転速度に応じ、前記拡張アンカ(1)の前記拡張スリーブ(3)を拡張させるべく、前記動力式工具(20)により、予め定めた回数の回転打撃を前記拡張アンカ(1)に加えるように、前記動力式工具(20)を制御し、
前記制御部(35)が、前記動力式工具(20)で発生し前記第1回転速度より低速となる第2回転速度を設定することにより、前記拡張アンカ(1)の前記拡張スリーブ(3)を拡張させるべく、予め定めた期間(t)に、前記第2回転速度に応じた回転打撃を前記拡張アンカ(1)に印加可能とする
ことを特徴とする動力式工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力式工具、特にインパクトドライバを用いて拡張アンカを取り付ける方法に関する。また、本発明は、この方法を実行するための動力式工具、特にインパクトドライバであって、拡張アンカの形式または拡張アンカに適用する締付トルクを入力するための入力部と、拡張アンカとの間で伝達可能な回転打撃を生成する打撃部と、動力式工具の出力軸の回転角を検出する検出部と、制御部とを備えた動力式工具に関する。
【背景技術】
【0002】
拡張アンカは、予めドリル加工された穴に挿入された後、トルクレンチを用い、この穴の中に緊締されるのが一般的である。作業者は、拡張アンカが穴の中で適正に拡張しているか、即ち適正に取り付けられているか否かを確認することができないので、トルクレンチを使用する必要があることが判っている。このことに関し、拡張アンカに生じうる疲労のため、過剰な拡張だけでなく、拡張が不十分であることで基材内の固定部分における耐荷重が低下するという、2つの点で問題が生じる。このため、拡張アンカの製造者は、取り付けの際にトルクレンチに対して調整すべき締付トルクを提示している。
【0003】
先行技術による拡張アンカの取付方法、及び拡張アンカを取り付けるためのインパクトドライバは、例えば特許文献1に記載されている。この特許文献1には、インパクトドライバを用いた拡張アンカの取付方法が記載されており、この方法においては、拡張アンカに対して回転打撃が繰り返し加えられる。回転打撃の繰り返し頻度は、拡張アンカの拡張スリーブを拡張させるために予め定められた締付トルクに応じて調整される。インパクトドライバは、拡張アンカのナットにおける平均回転速度が閾値を下回ると、回転打撃の印加を調整する。
【0004】
拡張アンカの緩みの挙動は、その拡張アンカを対象素材(例えば鉱物の基材)に取り付ける際の締結速度に依存することが、一連の試験で判った。この場合、緩みとは、緊締作用によって対象素材に取り付けられた拡張アンカのプレストレス力が、徐々に失われることをいう。
【0005】
高い締結速度で取り付けられた拡張アンカの場合には、取付作業完了後の最初の数分間で、対象素材に取り付けられた拡張アンカのプレストレス力に非常に大きな低下が観測された。トルクレンチを用いた一般的な取付方法の場合(即ち、手作業で対象素材に拡張アンカを取り付ける場合)には、プレストレス力の損失が減少した。プレストレス力における損失の増大は、拡張アンカで達成しうる耐荷重を減少させ、拡張アンカの適用範囲を制限することになる。
【0006】
プレストレス力の損失は、非常に高速での締結作業によって生じるものと考えられる。手作業による締結の場合(即ち、手作業によって対象素材に拡張アンカを取り付ける場合)、約20秒の期間内に数回にわたってトルクが与えられるのが一般的である。このとき各回の合間には、トルクレンチを元の位置に復帰させる動作が行われ、対象素材(例えばコンクリート)における局部応力のピークは、既に分散されている可能性がある。トルクレンチの復帰動作や締結動作が更になされる際には、生じたプレストレス力の損失が補われる。
【0007】
インパクトドライバを用いて取り付けを行う場合、拡張アンカの取付作業は、全体として約2秒で完了する。この結果、各締結処理の合間に局部応力のピークを分散させるほどの時間はない。このため、現行の取付作業が完了するまで、更なる締結処理がなされることはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102011005079号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、上述した問題を解決し、動力式工具、特にインパクトドライバを用いて拡張アンカを取り付ける方法に加え、この方法を実行するための動力式工具、特にインパクトドライバを提供することにある。拡張アンカの取付作業は、この方法及びこの方法を実行するための動力式工具によって最適化され、拡張アンカは、最大限の引張荷重に耐えることが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、請求項1及び2の主題からなる発明によって達成される。
【0011】
目的を達成するため、動力式工具、特にインパクトドライバを用いて拡張アンカを取り付ける方法が実施可能となる。
【0012】
この方法は、
前記動力式工具(20)で発生して前記拡張アンカ(1)に加えられる締付トルクが予め定めた閾値となるまで、前記動力式工具(20)で発生する第1回転速度に応じ、前記拡張アンカ(1)の拡張スリーブ(3)を拡張させるべく、前記動力式工具(20)を用い、前記拡張アンカ(1)に回転打撃を加える工程と、
前記動力式工具(20)で発生する第1回転速度に応じ、前記拡張アンカ(1)の拡張スリーブ(3)を拡張させるべく、前記動力式工具(20)を用い、予め定めた回数の回転打撃を前記拡張アンカ(1)に加える工程と、
前記第1回転速度より低速で前記動力式工具(20)で発生する第2回転速度に応じ、前記拡張アンカ(1)の拡張スリーブ(3)を拡張させるべく、前記動力式工具(20)を用い、予め定めた期間(t)に、前記拡張アンカ(1)に回転打撃を加える工程と
を備えることを特徴とする。
【0013】
既に取り付けられている拡張アンカに対し、低下させた回転速度で更なる回転打撃を加えることにより、拡張アンカに増し締めを生じさせることができ、拡張アンカにおけるプレストレス力の更なる増大を必要とせずに、緊締作用を補うことが可能となる。
【0014】
更に、この方法を実行するための動力式工具、特にインパクトドライバであって、拡張アンカの形式または前記拡張アンカに適用する締付トルクを入力するための入力部と、前記拡張アンカとの間で伝達可能な回転打撃を生成する打撃部と、前記動力式工具の締付トルクを検出する検出部と、制御部とを備えた動力式工具が使用可能となる。
【0015】
本発明によれば、この動力式工具は、前記制御部が、
当該動力式工具で発生する第1回転速度を設定することにより、前記動力式工具で発生して前記拡張アンカに加えられる締付トルクが予め定めた閾値となるまで、前記拡張アンカの拡張スリーブを拡張させるべく、前記第1回転速度に応じた回転打撃を前記拡張アンカに印加可能とし、
前記動力式工具で発生する前記第1回転速度に応じ、前記拡張アンカの拡張スリーブを拡張させるべく、前記動力式工具により、予め定めた回数の回転打撃を前記拡張アンカに加えるように、前記動力式工具を制御し、
前記制御部が、前記動力式工具で発生し前記第1回転速度より低速となる第2回転速度を設定することにより、前記拡張アンカの拡張スリーブを拡張させるべく、予め定めた期間に、前記第2回転速度に応じた回転打撃を前記拡張アンカに印加可能とする
ことを特徴とする。
【0016】
これにより、拡張アンカに増し締めを生じさせることができ、拡張アンカにおけるプレストレス力の更なる増大を必要とせずに、緊締作用を補うことが可能となる。
【0017】
更なる利点は、図面に基づく以下の説明によって明らかとなる。本発明の様々な実施の形態が図面に示されている。図面、明細書、及び特許請求の範囲は、様々な特徴を組み合わせた状態で包含している。当業者は、必要に応じ、これらの特徴を個別に検討し、また組み合わせて更なる有用なものとしうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】穴内にある拡張アンカを示す図である。
図2】インパクトドライバとして構成された本発明による動力式工具と、穴内の拡張アンカとを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1には、連結ロッド2と拡張スリーブ3とからなる典型的な拡張アンカ1が示されている。拡張スリーブ3は、連結ロッド2の円柱部4の周囲を取り囲んでいる。円柱部4の外径5は、拡張スリーブ3の内径6より幾分小さくなっているのが好ましく、これにより連結ロッド2が拡張スリーブ3に対して軸線方向に移動可能となっている。円柱部4は、拡張スリーブ3を拡張させるための拡張体8が形成された円錐部7と一体化している。円錐部7の最大径は、拡張スリーブ3の内径6より大きくなっているが、拡張スリーブ3の外径9よりは小さいのが好ましい。連結ロッド2にはネジ山10が設けられており、このネジ山10を介し、引張力を生成することができる。図示した拡張アンカ1の場合、ネジ山10は、荷重の保持にも用いられる。取り付けを行う際には、まず、拡張前の拡張部3の外径より幾分小さな径を有した穴内に、拡張体8と共に拡張アンカ1が挿入される。ネジ山10にナット11が螺合され、連結ロッド2が拡張体8と共に拡張スリーブ3内に引き込まれるまで、このナット11が締め込まれる。この過程で、拡張スリーブ3が、穴の壁面12に押圧される。拡張スリーブ3が径方向に一定量拡張すると、拡張アンカ1が適正に取り付けられる。作業者は、特定の締付トルクではナット11が回転しなくなったときに、このことを認識することができる。
【0020】
別の拡張アンカ(図示せず)として、例えば、連結ロッド2のネジ山10に螺合するネジ山を有したボルトを用いることもできる。取り付けを行う際、作業者は、ネジとナットとを組み付けるための締結工具をボルトに結合し、同様にして拡張体8と共に連結ロッド2を拡張スリーブ3内に引き込む。
【0021】
図示した拡張アンカ1は、適合するインパクトドライバ20を用いて取り付けることができる。このため、インパクトドライバ20で発生することが可能な締付トルクが拡張アンカ1、即ちナット11に伝達されるように、公知の方法で、インパクトドライバ20が拡張アンカ1に結合される。
【0022】
インパクトドライバ20は、回転方向Aの回転打撃を周期的に発生させる打撃部21を有する。駆動軸23には、螺旋スライダ(図示せず)を介し、ハンマ(図示せず)が取り付けられている。スプリング(図示せず)が、アンビル(図示せず)に向け、駆動軸23に沿ってハンマを押圧する。アンビルは、出力軸27に固定されている。駆動軸23と出力軸27とは、相対回転可能となっている。ハンマ及びアンビルは、駆動軸23に沿う方向に突設された突起(図示せず)を有し、この突起を介し、ハンマからアンビルにトルクを伝達することができる。駆動軸23は、ギヤ機構(図示せず)を介し、電動モータ29によって駆動される。回転打撃の1周期には、基本的に以下の段階が含まれる。ハンマの突起がアンビルに当接している。ハンマの突起がアンビルから離れるまで、回転する駆動軸23により、螺旋スライダを介し、スプリングの押圧力に抗して、ハンマがアンビルから引き離される。ハンマが、スプリングによって押圧されることにより、アンビルに向けて移動し、螺旋スライダによって回転運動が生じる。最後に、突起が接線方向にアンビルを打撃する。
【0023】
一実施形態において、インパクトドライバ20は入力部30を有し、作業者は、この入力部30を用い、拡張アンカ1の特定の締付トルクを入力できるようになっている。入力部30は、例えば、操作ボタン(図示せず)、キーボード(図示せず)、コントロールパネル(図示せず)、及び表示部(図示せず)の少なくとも1つを備える。これに代え、或いはこれに加え、入力部30は、拡張アンカに適用する締付トルクだけでなく、拡張アンカの形式を、作業者が設定できるようにしてもよい。例えば、拡張アンカの形式または型名と、拡張アンカのサイズとを選定するための、2つの操作ボタンが設けられる。選定された拡張アンカの形式及び締付トルクは、例えば、ディスプレイまたは複数個のLEDで構成される表示部に表示するようにしてもよい。
【0024】
制御部35は、入力部30または検出部33から入力された締付トルクを読み取る。検出部33は、スキャナ、検出素子、または入力フィールドなどの形態で具現化することができる。
【0025】
制御部35は、入力された締付トルクに基づき、駆動軸23の第1回転速度を定める。例えば、様々な締付トルクに関連付けて、対応する回転速度が保管部36に保管されている。操作ボタン(図示せず)を用い、作業者が電動モータ29を作動させると、制御部35は、回転速度が以前に特定されたか否か、即ち、例えば拡張アンカの形式または締付トルクを特定することによって回転速度が特定されたか否かを確認する。制御部35は、例えば、まだ締付トルクが選定されていなかった場合に、電動モータ29が作動しないようにするだけでなく、作業者に入力を促すことができるようになっている。制御部35は、選定された第1回転速度で駆動軸23が回転するよう、電動モータ29を制御する。選定された駆動軸23の第1回転速度は、回転打撃の繰り返し頻度を特定するものである。回転速度が低下する場合、拡張アンカの取り付けにとって重要ではない回転打撃頻度の減少が生じるだけではなく、各回転打撃に伴って与えられるトルクも減少することが確認された。1つのトルクが、複数の回転速度のそれぞれに割り振られ、従って、大きな許容差が与えられていることになる。一実施形態において、インパクトドライバ20は、当該インパクトドライバ20において可能な最大の回転速度で、ナット11を回し始める。入力された拡張アンカ1の形式に応じて定めるのが好ましいある期間が経過すると、インパクトドライバ20は、締付トルクに応じて予め定められた回転速度まで、駆動軸23の回転速度を低下させる。この締付トルクは、個々に用いられる拡張アンカ1に関して予め定められた締付トルクである。
【0026】
出力軸27には、インパクトドライバ20の締付トルクを検出する検出部39が設けられている。図示した実施形態において、検出部39は、インパクトドライバ20の締付トルクを検出するトルクトランスデューサによって具現化される。トルクトランスデューサ39は、インパクトドライバ20、即ち電動モータ29が発生する駆動軸27における締付トルクを検出するために用いられる。このため、トルクトランスデューサ39は、ひずみゲージと、圧電方式、電磁方式、または光学的方式による検出機能との少なくとも一方を備えて構成することができる。これに代え、或いはこれに加え、トルクトランスデューサ39は、SAW(表面弾性波)の手法を用いて作動するようにしてもよい。回転軸線R周りの出力軸27の締付トルクの検出値は、接続ケーブル40を介して制御部35に伝送される。制御部35は、トルクトランスデューサ39が検出した締付トルクを、締付トルクに関して保管部36に保管されている閾値と比較する。トルクトランスデューサ39が検出した締付トルクが閾値に達する場合、このことは、拡張アンカ1に加えられる回転打撃、即ち第1回転速度に対応して設定されて拡張アンカ1に作用する締付トルクでは拡張アンカ1が回転しなくなり、穴内に拡張アンカ1が適正にに取り付けられたことを示すものである。図示しない実施形態として、詳述はしないが、電動モータ29の回転角から、これに対応する検出部を用いて間接的に拡張アンカにおける締付トルクを検知または推定することができるので、トルクトランスデューサを設けることは、必須というわけではない。
【0027】
次に、インパクトドライバ20により、所定回数の回転打撃が拡張アンカ1に加えられる。一定の回数の回転打撃を追加することにより、拡張アンカ1の拡張スリーブ3が更に拡張することになり、これら追加の回転打撃は、第1回転速度に応じ、インパクトドライバ20において生成される。
【0028】
次に、制御部35は、第2回転速度が駆動軸23に適用されるように、電動モータ29を制御する。第2回転速度は、第1回転速度より低速の回転速度である。第2回転速度、即ち低下させた回転速度により、これに対応して減少した締付トルクを伴う回転打撃が生じ、予め定められた期間tにおいて、この回転打撃が拡張アンカ1に加えられる。これにより、拡張アンカ1に増し締めを生じさせることができ、拡張アンカ1におけるプレストレス力の更なる増大を必要とせずに、緊締作用を補うことが可能となる。
【0029】
従って、本発明に係る方法、及びこの方法を実行する動力式工具20により、拡張アンカ1の取付作業が最適化され、穴内の拡張アンカ1は、最大限の引張荷重に耐えることが可能となる。
図1
図2