特許第6552606号(P6552606)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6552606ファイバコアの中心に沿って、試料を収容するための中空管路を備えている光ファイバ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552606
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】ファイバコアの中心に沿って、試料を収容するための中空管路を備えている光ファイバ
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/05 20060101AFI20190722BHJP
   G01N 21/53 20060101ALI20190722BHJP
   G01N 15/14 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   G01N21/05
   G01N21/53 Z
   G01N15/14 P
【請求項の数】16
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-513490(P2017-513490)
(86)(22)【出願日】2015年9月8日
(65)【公表番号】特表2017-532545(P2017-532545A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(86)【国際出願番号】EP2015070461
(87)【国際公開番号】WO2016038015
(87)【国際公開日】20160317
【審査請求日】2018年7月18日
(31)【優先権主張番号】14184150.2
(32)【優先日】2014年9月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507332918
【氏名又は名称】ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヴァイトリヒ
(72)【発明者】
【氏名】クレメンス シュミット
(72)【発明者】
【氏名】イェアク ヴェアナー
(72)【発明者】
【氏名】マークス シュミット
(72)【発明者】
【氏名】イェンス コーベルケ
【審査官】 伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0037261(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第0433240(EP,A2)
【文献】 特開2010−164323(JP,A)
【文献】 特表2007−506978(JP,A)
【文献】 特開平08−240544(JP,A)
【文献】 特表2014−504154(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0252957(US,A1)
【文献】 特開2010−054392(JP,A)
【文献】 国際公開第85/05680(WO,A1)
【文献】 国際公開第01/69202(WO,A2)
【文献】 中国特許出願公開第103063645(CN,A)
【文献】 LI,Zhi-Li et al. ,Highly efficient fluorescence detection using a simplified hollow core,Applied Physics Letters,2013年,102,11136-1-4,https://aip.scitation.org/doi/10.1063/1.4775378
【文献】 BERNINI,R. et al.,Development and characterization of an integrated silicon micro flow cytometer,Anal Bioanal Chem,2006年,386,1267-1272
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/958
G01N 15/00−15/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローサイトメトリにおける使用のための測定セルであって、検査試料を収容するためのキャビティを備えている測定セルにおいて、
前記測定セルは、光線を誘導するための光学的な導波管として構成されており、
前記導波管(1)は、屈折率nKを有しているコア(3)を含んでおり、前記コア(3)は、前記導波管(1)の長手方向軸線(9)に沿って延在しており、前記長手方向軸線(9)に対して垂直な横断面において80μm2よりも小さい横断面積AKを有しており、且つ、nKよりも低い屈折率を有しているクラッド(2)によって取り囲まれており、
前記キャビティは、前記長手方向軸線(9)に沿って延在している管路(4)を形成しており、前記コア(3)の内側に形成されているか、又は、前記コア(3)と接触するように形成されており、且つ、0.2μm2よりも小さい開口面積AHを有している少なくとも1つの開口端部を備えており、
前記コア(3)及び前記クラッド(2)は、塊状の固体材料から形成される、
ことを特徴とする、測定セル。
【請求項2】
前記コア(3)の屈折率と前記クラッド(2)の屈折率との差、前記コア(3)の横断面積及び誘導される前記光線の波長が調整され、それによって、前記光線の基本モード及び20を上回らない別のモードが伝播される、
請求項1に記載の測定セル。
【請求項3】
前記コア(3)及び前記クラッド(2)は、高度の珪質ガラスから構成されている、
請求項1又は2に記載の測定セル。
【請求項4】
前記コア(3)は、酸化ゲルマニウムでドープされている石英ガラスから成り、
前記クラッド(2)は、非ドープの石英ガラス、又は、石英ガラスの屈折率を低下させることができる成分で、特にフッ素でドープされている石英ガラスから成る、
請求項3に記載の測定セル。
【請求項5】
前記コア(3)は、非ドープの石英ガラスから成り、
前記クラッド(2)は、屈折率nCを有しており、且つ、石英ガラスの屈折率を低下させることができる成分でドープされている石英ガラスから成る、
請求項3に記載の測定セル。
【請求項6】
差nK−nCは、少なくとも16×10-3ある、
請求項5に記載の測定セル。
【請求項7】
差nK−nCは、少なくとも20×10-3である、
請求項6に記載の測定セル。
【請求項8】
前記長手方向軸線に対して垂直な横断面において、前記管路(4)は、円形であり、且つ、20nmから500nmまでの範囲の直径を有している、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の測定セル。
【請求項9】
前記管路(4)は、50nmから300nmまでの範囲の直径を有している、
請求項8に記載の測定セル。
【請求項10】
前記長手方向軸線に対して垂直な横断面において、前記コア(3)は、円形であり、且つ、10μmよりも小さい直径、及び、前記管路(4)の各横断面領域の内側に位置しているコア中心点を有している、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の測定セル。
【請求項11】
前記コア(3)は、3μmよりも小さい直径を有している、
請求項10に記載の測定セル。
【請求項12】
前記管路(4)は、前記コア(3)の内側全体に延在しており、
比率AK/AHは、4より大きい、
請求項10又は11に記載の測定セル。
【請求項13】
前記比率AK/AHは、20より大きい、
請求項12に記載の測定セル。
【請求項14】
前記コア(3)、前記クラッド(2)及び前記管路(4)は、相互に同軸に延在している、
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の測定セル。
【請求項15】
前記光学的な導波管は、前記管路(4)を有しているステップインデックス型のファイバ(1)として構成されており、
前記管路(4)は、誘導されるべき前記光線の波長よりも小さい開口幅を有している、
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の測定セル。
【請求項16】
前記光学的な導波管は、円形の横断面を有している光ファイバ(1)として構成されており、
前記クラッド(2)は、150μmから300μmまでの範囲の外径を有している、
請求項1乃至15のいずれか1項に記載の測定セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査試料を収容するためのキャビティを備えている測定セルに関する。
【背景技術】
【0002】
媒体、特に流体媒体における試料のキャラクタリゼーションに関する種々の分析技術が公知である。
【0003】
フローサイトメトリは、医学及び生物学の基礎研究活動において使用されており、またクリニックでの多くの医療分野における日常的診断法として使用されている。このフローサイトメトリでは、流体がキュベットを通過し、またその流体に含まれている分子又はコロイド状の物質が、そのサイズ、質量又は構造に関して分析される。光学的な分析では、光線の焦点が流体に合わせられ、それによって、個々の分子を分析することができる。この方法を用いることによって、単位時間あたりに多くの測定回数(毎秒1,000回を上回る測定結果)を達成することができ、従って、試料に関して統計学的に信頼できる結果を高速に得ることができる。
【0004】
そのような散乱光測定装置及び上述のタイプの測定セルは、例えば、独国特許出願公開第102013210259号明細書(DE102013210259A1)から公知である。中心に長い孔を備えている、石英ガラス製の中空シリンダの形態のフロー測定セルが、クロマトグラフシステムに接続されている。キャラクタリゼーションされるべき粒子を含んでいる流体が、その孔を通過し、また、中空シリンダ状のクラッドを介して導入されたレーザビームに曝される。散乱光を受光する検出器は、シリンダ状の測定セルの周囲に、それぞれ異なる角度で配置されている。測定セルの石英ガラスにおける不純物による散乱又は表面における散乱に起因する検出エラーを最小限にするために、測定セルをその長手方向軸線を中心にして回転させることが提案されている。フローセルの代わりに、バッチ測定のためにもキュベットが使用される。
【0005】
この方法は、測定セルに導入されるレーザビームの焦点を小さい空間領域内にしか合わせられず、これによって、正確に測定できる試料体積が制限されるという欠点を有している。更に、背景放射線から分離することができるより強い信号を取得するために、散乱光の代わりに蛍光を検査することが頻繁に行われている。しかしながら、極僅かな試料粒子しか自然蛍光を示さない。その原因は、そのような場合に、蛍光基によって拡張された試料の標本が必要になることにある。
【0006】
ナノ粒子トラッキング解析法(NTA:nanoparticle tracking analysis)を基礎とする測定装置も市販されている。この測定方法においても、試料粒子を測定セルにおける液体に供給し、レーザ光をそれらの試料粒子に照射するということを基本原理としている。一般的に、散乱光は顕微鏡のもとで位置検出型のチップを用いて評価及び解析され、それによって、原則として拡散及び輸送運動を表すことができる。
【0007】
NTA技術の欠点の1つとして、光が試料粒子だけでなく、測定セルの壁部においても散乱することに起因して、信号対雑音比が低くなり、それによって不所望な背景放射線が生じることが挙げられる。また別の欠点として、測定に関して、励起レーザの焦点を有限領域にある試料にしか合わせられないという事実(この場合、スポットサイズは、励起光の波長の振幅のオーダにある)に起因して測定時間が制限されることが挙げられる。試料粒子が、その運動に起因して励起領域を通過すると、その試料粒子はもはや検出されない。
【0008】
「抵抗パルスセンシング法(RPS:Resistive Pulse Sensing)」による測定原理では、電流の変化を測定することによって、ナノ開口を通過する粒子が検出される。これによって、試料粒子のサイズを求めることができる。
【0009】
「表面増強ラマン散乱法(SERS:Surface Enhanced Raman Scattering)」は、分子のラマン散乱の検出を基礎としており、それらの分子が金属表面の近くに位置している場合には、それによってラマン信号が非常に大きく増幅される。国際公開第2011/037533号(WO2011/037533A1)には、この方法のための測定セルが記載されており、そこでは、コアと、そのコアを包囲するクラッドと、を備えている光ファイバが提供されており、この光ファイバにおいて、前端部は、いわゆる「SERS表面」として使用されており、そのために金ナノ粒子で覆われており、また他方のファイバ端部は、ラマン分光計に接続されている。金ナノ粒子をより良好に固着させるために、クラッドは、対応するファイバ端部において、コアの前面よりも数マイクロメートル突出しており、それによってナノ粒子が固着される内壁を有しているキャビティが形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
時間分解能に関して制限が課されることなく、またそれと同時に、試料粒子の周囲に実際の変化が生じることなく(例えば試料粒子が空間的に定着することなく)、流体媒体(液体、エアロゾル、気体)内の小さい粒子又は分子を検出することができ、また、その特性、例えばサイズ及び拡散速度に関する結論を導き出すことができる、単純で廉価な測定方法が所望されている。
【0011】
フローサイトメトリ測定法では、粒子において散乱した光が分析される。このフローサイトメトリ測定法は、装置に関して僅かな労力しか必要とせず、従って、原則として、経済的な分析論に使用することができる。しかしながら、小さい粒子の散乱強度は、粒子径の6乗に比例して減少し、これによって、検査試料の検出可能な粒子寸法が制限され、特に、高い背景信号が信号対雑音比を低下させる場合には更に制限される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の課題は、そのような測定方法の基礎を築くことができる測定セルを提供することである。
【0013】
本発明の一般的な説明
上述のタイプの測定セルから出発して、この課題は、本発明によれば、測定セルが、光線を誘導するための光学的な導波管として構成されており、この導波管が、屈折率nKを有しているコアを含んでおり、このコアが、導波管の長手方向軸線に沿って延在しており、その長手方向軸線に対して垂直な横断面において80μm2よりも小さい横断面積AKを有しており、且つ、nKよりも低い屈折率を有しているクラッドによって取り囲まれており、キャビティが、長手方向軸線に沿って延在している管路を形成しており、コアの内側に形成されているか、又はコアと接触するように形成されており、且つ、0.2μm2よりも小さい開口面積AHを有している少なくとも1つの開口端部を備えている、ことによって解決される。
【0014】
管路は、光ファイバ、例えばステップインデックス型又はグレーデッドインデックス型のファイバ、若しくは、その他の導波管構造、例えばエッチングプロセス及び堆積プロセスによって作製された半導体マイクロチップに形成されている。光学的な導波管の導光は、コアの屈折率とクラッドの屈折率との差によって達成される。中空管路は、分析されるべき試料粒子を含んでいる流体媒体を収容するために用いられる。流体媒体は、ここでは、中空管路に封入されているか、又は、中空管路を流れることによって、中空管路を通って誘導される。流体媒体に含まれている試料粒子は、中空管路の長手方向軸線に沿って移動することができるが、しかしながら、長手方向軸線に対して垂直な方向における試料粒子の動きは管路の幅の寸法によって制限されている。これに関して、管路の幅の寸法は、横方向における試料粒子の移動の経路を空間的に所定の角度に制限する。このために、中空管路が、0.2μm2よりも小さい開口面積によって画定されている幅に制限される。円形の横断面を有している管路では、これは500nmよりも小さい直径に対応する。簡潔な光学顕微鏡の焦点深度は、この範囲内の試料粒子を検出するには十分である。しかしながら、好適には、中空管路はより一層小さい。つまり、中空管路は、長手方向軸線に対して垂直な横断面が円形である場合には、例えば、20nmから500nmまでの範囲の直径を有しており、好適には50nmから300nmまでの範囲の直径を有している。本発明による「測定セル」は、コアと、そのコアに形成されている中空管路と、を有している光ファイバを含んでおり、中空管路は、試料粒子を含んでいる流体媒体を収容するように適合されており、また、管路は、0.2μm2よりも小さい開口面積によって画定されている幅を有しており、その結果、幅は、横方向における試料粒子の移動の経路を、それらの試料粒子の顕微鏡検出を実現する程度に空間的に制限するには十分に小さくなっている。
【0015】
前側においてコアに結合される励起放射に関して光が空間的に封入されることが一層明白になり、また、コアにおいて誘導される光の強度は、コアの横断面積が小さくなるほど高くなる。コアの小さい横断面積は、短波励起放射の場合であっても、また、コアの屈折率とクラッドの屈折率との差が大きい場合であっても、シングルモードの導光の実現を容易にする。これは、中空管路に進入する放射エネルギの増大を支援し、またそれによって、管路の照明の改善も支援する。このために、コアは、長手方向軸線に対して垂直な横断面において、80μm2よりも小さい横断面積AKを有している。円形の横断面を有しているコアでは、これは10μmよりも小さい直径に対応する。しかしながら、好適には、コア直径はより一層小さい。つまり例えば、コアは、長手方向軸線に対して垂直な横断面が円形である場合には、3μmよりも小さい直径を有している。1μmよりも小さいコア直径は、実際の観点から好適なものではない。
【0016】
管路は、コアの内側において又はコアと接触して、長手方向軸線に沿って、光学的な導波管内に延在している。接触面はコアと共通である。長手方向軸線に対して垂直な横断面(表記を簡潔にするために、以下では、簡潔に「半径方向の横断面」とも記すが、横断面を円形に限定することは意図していない)を見ると、管路は、コアの直ぐ近傍に延在しているか、コアと接触して延在しているか、若しくは、部分的に、又は好適には完全にコア内に延在している。いずれにしても、中空管路は、少なくとも部分的に、好適には完全に、コア材料によって画定されている。
【0017】
励起放射は、光学的な導波管のコア/クラッド構造を介して長手方向軸線に沿って誘導され、且つ、測定区間に沿って中空管路において誘導される。光線光学的な観点から、導光は、nK>nM(ナトリウムランプのD線の波長での屈折率)の条件下での全反射に基づく。ここでは、コアにおいて誘導される光は管路に進入することができ、また中空管路を「照明」することができる。コアから中空管路へのこの光強度の伝送は、点又は場所に制限されないが、しかしながら、極めて長い区間にわたり、例えばコアと管路の接触表面全体に沿って行われる。従って、管路に進入した光を、散乱を励起させるための放射として使用することができるか、又は、管路に存在する試料粒子のその他の状態を励起させるための放射として使用することができる。つまり、光をより大きい区間にわたり使用することができ、これによって、より長い区間にわたる試料粒子の運動のモニタリングが実現される。中空管路の制限された開口幅は、試料粒子が励起光フィールドから移動することを阻止する。
【0018】
これは、管路における強度分布が可能な限り大きく、且つ、半径方向においても軸線方向においても均一である場合に、試料粒子の効率的な照明にとって有利である。管路に到達する放射強度の伝播を、測定セル設計の適切さの尺度として使用することができる。この点に関して、管路における強度最小値と、コアにおける強度最大値との比率が、測定値とみなされる。この測定値は、少なくとも1%であるべきであり、好適には30%以上である。
【0019】
公知のように、ステップインデックス型の光学的な導波管における光伝播のモード数は、所定の波長では、コアの屈折率とクラッドの屈折率との差及びコア直径に実質的に依存している。誘導される励起光の中空管路への再現可能な伝達に関して、本発明の測定セルの1つの実施の形態によれば、好適には、コアの屈折率とクラッドの屈折率との差、コアの横断面積及び誘導される光線の波長が調整され、それによって、光線の基本モード及び20を上回らない別のモードを伝播させることができる。
【0020】
マルチスペクトルの励起放射の場合、導光についてのこの条件がスペクトルの最短波長に対して満たされていれば有利である。
【0021】
いわゆるシングルモードファイバが用いられる場合のように、1つのシングルモードだけが、即ち基本モードだけが形成される実施の形態はそれ自体で特に好適なものである。この場合、誘導される光強度は専ら基本モードによって伝達され、このことは、管路への可能な限り高い光強度の伝達を容易にする。種々のモードが構成されると、光強度がそれらのモードにわたり分散される。これによって、一方では、コア及び中空管路における強度最大値が低くなる。また他方では、個々のモードにわたるエネルギ分布を求めることは困難なので、マルチモードの励起放射の場合、キャビティにおける実際の強度分布を規定する精度は、シングルモード放射の場合において規定するよりも低くなり、これによって、散乱放射の評価が一層困難になる。コア(コア直径)が小さくなるほど、その他の条件が同じ場合に、実現される光モードは少なくなる。従って、確かに、コア(コア直径)のサイズが十分小さく設定されることによって、光伝送のシングルモードの状態を原則として保証することができる。しかしながら、小さいコアサイズによって、作製及び調整に関する労力も必然的に生じることになる。コアが小さくなるほど、前記のコアへの光の伝送はより複雑になる。実際には、事前に定められたコア直径を正確に選択すること、また、測定セルの全長にわたりそのコア直径を維持することはより困難である。従って、他方では、可能な限り大きいコア直径が最適であると考えられるが、その場合、光伝送のシングルモードの状態は殆ど保証されない。更に、管路は、光モードの生成の基礎をなす境界条件(マックスウェルの方程式に関する境界条件)を変化させるので、その結果、特にシングルモードの光伝播に関してほぼカットオフの設計の場合(いわゆるほぼカットオフ周波数の場合)には、より高次のモードが生じやすくなる可能性がある。従って、基本モードは別として、所定数の高次モードは、その数が20モードを上回らない限りは、許容できるものであるとみなされる。
【0022】
コア及びクラッドが高度の珪質ガラスから構成されている測定セルが有用であることが分かった。
【0023】
「高度の珪質ガラス」とは、少なくとも60重量%であるSiO2含有量を有している光学的に透明なガラスを表す。
【0024】
この関係において、コアが、酸化ゲルマニウムでドープされている石英ガラスから成り、また、クラッドが、非ドープの石英ガラス、又は、石英ガラスの屈折率を低下させることができる成分で、特にフッ素でドープされている石英ガラスから成る測定セルは好適である。
【0025】
石英ガラスは、実質的に、約150nmから3,000nmまでの間の広範な波長領域にわたり透明である。従って、測定セルは、紫外線から赤外線までの範囲の波長を有している励起放射を許容することができ、測定セル自体の壁が散乱に関与することも少ない。更に、材料としての石英ガラスは、熱間変形を実施することができる比較的大きい温度間隔によって、特に小さい、例えば100nmよりも小さい開口横断面の管路の実現を支援する。
【0026】
酸化ゲルマニウムによって、石英ガラスの屈折率が高まる。コアにおいて誘導される光の強度が高くなるほど、従ってまた中空管路に進入する強度が高くなるほど、コアの屈折率とクラッドの屈折率との差が大きくなることが分かった。コアが酸化ゲルマニウムでドープされており、またそれと同時にクラッドがフッ素でドープされている場合には、コアとクラッドの境界において、特に大きい屈折率の差を確立することができる。この差は、好適には少なくとも8×10-3である。
【0027】
酸化ゲルマニウムでコアガラスをドープすることは、ゲルマニウムが高温プロセスステップの間に蒸発し、それによって屈折率の半径方向プロフィールが変化する可能性があるという欠点を有している。従って、本発明によるセルの別の好適な実施の形態においては、コアが、非ドープの石英ガラスから成り、また、クラッドが、屈折率nCを有しており、且つ、石英ガラスの屈折率を低下させることができる成分で、特にフッ素でドープされている石英ガラスから成る。
【0028】
非ドープの石英ガラスは、高い光透過率と、ドープされている石英ガラスよりも高い粘性と、を有している。コアガラスの高い粘性は、より低い粘性を有している石英ガラスと比較して、コア領域の内側における管路が非常に小さい場合であっても、その維持を容易にする。
【0029】
小さいコア直径及び大きい屈折率差のいずれも、コアから管路へと進入する放射の高い強度に寄与することが分かった。この点に関して、コアガラスが、非ドープの石英ガラスから成り、また、差nK−nCが、少なくとも16×10-3、好適には少なくとも20×10-3である場合には有利である。
【0030】
コア及びクラッドが、塊状の固体材料から形成される場合には有用であることが分かった。
【0031】
コア及びクラッドのいずれも固体で塊状のバルク材料から成る。コア及びクラッドはいずれも、半径方向の横断面において、公称的に均一な屈折率プロフィールを示す。製造プロセス中の拡散プロセス及び高温プロセスに起因する屈折率の局所的な変化を殆ど阻止することはできない。しかしながら、クラッドは、内部境界を有しておらず、例えば別のコア又は別の管路を有していない。同様に、単一の中空管路及び単一のクラッドとの接触領域を除いて、コアは別の境界を有していない。境界が存在しない場合、測定セルにおいて、境界に関連する散乱は実質的に生じない。つまり、測定セルは、特に散乱が生じないクラッドを有している。
【0032】
更に、モードのエネルギが別のモードに結合される、いわゆるモード結合の作用が回避される。この作用は、異なる導光領域が存在する場合、例えば光学的な導波管に幾つかのコアが存在する場合に生じる可能性がある。モード結合は、光のエネルギが周期的に、異なる導光領域間で交換される作用を有している。しかしながら、このことは、光学的な導波管の長手方向軸線に沿った散乱率が変化するという作用を有している。従って、光フィールドが周期的に変化する場合、ファイバの種々の位置に依存して、試料粒子が軸線方向において種々の度合いで散乱する可能性がある。この作用は、中空管路がコアの内側に形成されておらず、その代わりにコアから離れて形成されている場合にも起こり得る。好適な実施の形態においては、そのようなモード結合は完全に排除されているので、光の強度((無視できる)減衰は除く)は軸線方向において独立している。
【0033】
長手軸線方向に対して垂直な横断面において、コアは、円形であり、10μmよりも小さい直径と、中空管路の各横断面領域の内側に位置しているコア中心点と、を有している場合には有利であることも分かった。
【0034】
管路は、好適には、コア外の光の進入に関する条件が最適となる位置に設けられている。理想的には、この位置はコア中心点にある。しかしながら、管路をそこから横方向に延ばすこともできる。本発明による測定セルの最も単純なケースにおいては、コア、クラッド及び中空管路が、光学的な導波管において、相互に相対的に同軸で延在している。ここでは、中空管路及びコアが、半径方向の横断面において円形であり、且つ、相互に相対的に同心である。測定条件及び測定結果が測定装置内での測定セルの空間的な向きに依存しない限りにおいて、本発明による測定セルの回転対称性は使用に際し有利である。コア直径は、好適には小さく、10μmよりも小さく、特に好適には3μmよりも小さい。小さいコア直径の利点は、本発明によるコアの小さい半径方向の横断面に関連させて上記において説明した通りである。
【0035】
一方で、高い放射エネルギがコアにおいて誘導され、この放射エネルギが、他方では、可能な限り効率的に管路に進入できる場合には有利である。この点において、測定セルの1つの実施の形態によれば、好適には、管路がコアの内側全体に延在しており、長手方向軸線に対して垂直な横断面において、コアがAKの横断面積を有しており、管路がAHの横断面積を有しており、比率AK/AHが4よりも大きく、好適には20よりも大きい。
【0036】
この場合、半径方向の横断面で見た中空管路は、完全にコアの内側に延在している。中空管路は、その長さにわたりコア材料によって取り囲まれているので、コアにおいて誘導される放射エネルギは、中空管路に効率的に進入することができる。しかしながら、この場合、(半径方向の横断面で見た)中空管路の開口面積は、コアの横断面積を完全に犠牲にしている。コアの内側において十分に高い放射エネルギを供給できるようにするために、管路の横方向の寸法(例えば管路の内径)は、好適には、コアの残りの横断面積が依然として中空管路の開口面積よりも少なくとも4倍大きく、好適には20倍大きくなるように調整されている。
【0037】
ここで好適には、光学的な導波管は、管路を備えているステップインデックス型のファイバとして構成されており、管路は、光学的な導波管において誘導されるべき光線の波長よりも小さい開口幅を有している。
【0038】
測定セルの特に好適な構成においては、光学的な導波管が、円形の横断面積を有している光ファイバとして構成されており、クラッドが150μmから300μmまでの範囲の外径を有している。
【0039】
この太さのファイバは、一方では依然として可撓性であり、従って、より太い固いファイバよりも割れにくい傾向にある。他方では、その太さは、シングルモードの標準的な光ファイバよりも大きいので、より容易に取り扱うことができる。付加的に、クラッドに保護カバーを設けることができる。
【0040】
本発明による測定セルの重要な利点として以下の点が挙げられる。
1.試料材料が空間的に封入されること。
2.バックグラウンド信号が低いこと。
3.非常に小さい粒子/分子を測定できること。
4.測定装置を、既存の普及している市販の測定機器に容易に組み込むことができ、従って、取得コストを低く抑えることができ、またそれと共に光学的な導波管を廉価に製造できること。
【0041】
本発明による測定セルは、医学又は生物学のコンテキストにおいて個々の分子を検出するためのフローサイトメトリにおける使用に適している。これとは別に、測定セルは、フローサイトメトリに基づいたナノ粒子の分類の分野又は環境測定(エアロゾル)の分野における考えられる用途、又は光化学作用プロセスのためのマイクロリアクタのための考えられる用途を提供する。
【0042】
本発明による測定セルの好適な実施の形態は、プリフォームを引き延ばすことによって得られ、測定セルは、導光中空管路を備えている光ファイバの形態として存在している。中空管路は、半径方向の横断面において、光ファイバのコアの内側に完全に延在している。中空管路はその長さにわたりコア材料によって取り囲まれており、その結果、放射エネルギは管路に効率的に進入し、その放射エネルギはコアにおいて誘導される。コアにおいて十分に大きい量の放射エネルギを供給できるようにするために、管路の横方向の寸法(例えば管路の内径)は、好適には、コアの残りの横断面積が依然として管路の横断面積よりも少なくとも4倍大きく、好適には20倍大きくなるように調整されなければならない。
【0043】
最も単純なケースでは、縮尺通り忠実に光ファイバへと延伸されるプリフォームにおけるこの比率が既に事前に定められている。
【0044】
本発明による半完成品の有利な発展形態は、従属請求項より明らかになる。従属請求項に記載されている半完成品の設計が、本発明による測定セルに関する従属請求項において言及されている実施の形態を複製する限りにおいて、対応する請求項についての上述のコメントを、補足的な説明のために参照する。
【0045】
本発明による測定セルは、下記において説明する粒子検出装置における使用に適している。測定セルは、管路に光を導入することができる導入口及び少なくとも1つの管路壁を含んでいる中空管路を提供することによって、検出装置に寄与し、前記の管路壁又は各管路壁は、光を伝播させることができる管路経路を画定するように配置されており、光源は、導入口を介して光を管路に導入するように構成されており、管路は、管路経路に存在する1つ又は複数の粒子を照明するために、管路経路に沿って光を誘導しながら伝播させる形状を有しており、モニタリング装置は、誘導光による前記の粒子又は各粒子の照明によって生じ、且つ、前記の管路壁又は各管路壁を通過することによって管路から放出された散乱光を検出するように構成されている。
【0046】
粒子検出装置によって、管路経路に存在する流体(例えば液体又は気体)中を自由に拡散している粒子の光学的な検出が実現される。特に、粒子検出装置のこの構成によって、非常に小さい粒子、特にサブ100nmの範囲の粒子を検出するために、コヒーレント及び/又はインコヒーレントな散乱光を使用することができる。
【0047】
上述のように管路及びモニタリング装置を構成することによって、前記の粒子又は各粒子によって散乱されない光は、管路経路に沿って誘導され続けるので、その結果、散乱光だけがモニタリング装置によって検出される。このことは、例えば、前記の管路壁又は各管路壁を介して、誘導光の誘導方向に対して0とは異なる角度で管路から放出される散乱光によって達成することができる。これによって、良好な信号対バックグラウンド比及び信号対雑音比が提供され、またそれによって、前記の粒子又は各粒子の検出の品質が向上し、従って、照明を行う誘導光の残存散乱が直接的に検出されることによって、検出された散乱光が埋もれることが回避される。
【0048】
更に、粒子検出装置のこの構成によって、管路経路における前記の粒子又は各粒子を、誘導光によって照明し続けることができ、またそれによって、粒子を撮影面に留まらせることができ、更には、拡散によって焦点が合わなくなることもなくなる。誘導光の照明面に前記の粒子又は各粒子を留まらせることによって、例えばクライオ電子顕微鏡において実施されているような、限定的な体積における粒子の固定化が不要になり、またそれによって、粒子検出装置が簡潔且つ廉価になるだけでなく、延長された検出期間も提供され、それによって、前記の粒子又は各粒子のリアルタイム追跡の品質が向上し、また、前記の粒子又は各粒子に関して取得可能な情報量も増加する。
【0049】
更に、粒子検出装置のこの構成によって、複数の粒子のコヒーレントな照明が実現され、その結果、複数の粒子が相互に接近した際には、結果として生じるいずれかの近傍干渉効果によって、粒子検出装置の検出感度が向上する。
【0050】
上述の粒子検出装置の改善された検出能力は、前記の粒子又は各粒子を検出するための専用のモニタリング装置を不要にし、またそれによって、より簡潔でより廉価なモニタリング装置、例えば光学顕微鏡、スマートフォンカメラ又はより簡潔な光検出電子装置の使用を可能にするだけでなく、クライオ電子顕微鏡によって要求されるような特別な条件の代わりに、周囲条件下での前記の粒子又は各粒子の検出も可能にする。
【0051】
散乱光を検出し、前記の粒子又は各粒子を種々のやり方で、例えば以下に記載するようなやり方で調査するように、モニタリング装置を構成することができる。
【0052】
散乱光のコヒーレントな散乱強度、散乱光のインコヒーレントな散乱強度、散乱光のスペクトル、複数の方向にわたる散乱光の分布、及び/又は、1つ又は複数の粒子の動的な運動、好適にはストークス−アインシュタインの式による、前記の粒子又は各粒子の拡散定数を測定するように、モニタリング装置を構成することができる。
【0053】
散乱光の散乱強度を測定することによって、粒子の相互作用を調査することができる。例えば、散乱光の散乱強度を測定することによって、散乱強度における2次変化、前記の粒子又は各粒子のスペクトル応答若しくは前記の粒子又は各粒子の拡散定数の検出を介して、粒子結合イベント及び粒子結合解除イベントを調査することができる。
【0054】
更に、前記の粒子又は各粒子の散乱強度及びストークス−アインシュタインの式による拡散定数を同時に測定することによって、粒子の集合体と単一の比較的大きい粒子とが類似の散乱強度を示す場合であっても、それらを区別することができる。
【0055】
散乱光の検出を介して、前記の粒子又は各粒子の運動を追跡するように、モニタリング装置を構成することができる。前記の粒子又は各粒子の運動をそのように追跡することによって、前記の粒子又は各粒子の流体力学的な特性を調査することができる。
【0056】
前記の粒子又は各粒子の放射スペクトルを測定するように、モニタリング装置を構成することができる。これによって、前記の粒子又は各粒子のスペクトルの特徴に基づいて、それらの粒子を識別することができる。
【0057】
誘導光によって前記の粒子又は各粒子を照明することによって生じ、また前記の管路壁又は各管路壁を通過することによって管路から放出された蛍光を検出するように、モニタリング装置を構成することができる。
【0058】
コヒーレントに散乱した光及び/又はインコヒーレントに散乱した光を検出し、またオプションとして、誘導光によって前記の粒子又は各粒子を照明することによって生じ、また前記の管路壁又は各管路壁を通過することによって管路から放出された、コヒーレントに散乱した光のスペクトル及び/又はインコヒーレントに散乱した光のスペクトルを検出するように、モニタリング装置を構成することができる。
【0059】
オプションとして、コヒーレントに散乱した光及び/又はインコヒーレントに散乱した光の検出を介して、前記の粒子又は各粒子の運動を追跡するように、モニタリング装置を構成することができる。
【0060】
散乱光を検出するためのモニタリング装置のこの構成によって、金属、半導体又は有機の造影剤を使用して、前記の粒子又は各粒子の分極率を高めることができ、またそれによって粒子検出装置の検出感度を高めることができる。
【0061】
更に、散乱光及び蛍光の両光を検出するためのモニタリング装置のこの構成によって、例えば、段階的なブリーチングを介して蛍光粒子の数を計数するために、若しくは、前記の粒子又は各粒子の放射スペクトルを測定して、それらの粒子のスペクトル特徴に基づいて前記の粒子又は各粒子を識別するために、散乱光及び蛍光を同時に測定することができる。
【0062】
粒子検出装置において使用される管路の選択を、係数の範囲、例えば粒子サイズ、化学組成、機器の可用性等に依存して変更することができる。
【0063】
中空管路の開口幅を、検出されるべき前記の粒子又は各粒子のサイズに依存して変更することができる。例えば、誘導光の波長よりも小さい少なくとも1つの粒子を搬送するように、管路を配置することができる。
【0064】
検出されるべき前記の粒子又は各粒子のサイズの検出を実現するために、管路を種々のやり方で形成することができる。管路を、
・導波管、
・チップベースのプラットフォーム、オプションとしてリソグラフィにより形成されたチップベースのプラットフォーム、
・細管、
・光ファイバ、
に形成することができるか、又は、そのようなものとして形成することができる。
【0065】
光ファイバは、シングルモードの光ファイバであってよい。そのような光ファイバを使用することによって、管路経路に沿った光の誘導方式が改善され、またそれによって、その管路経路に存在する前記の粒子又は各粒子の結果として生じる照明及びそれに続く光の散乱も改善される。
【0066】
好適な実施の形態
以下では、実施の形態及び図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】本発明による測定セルを備えているフローサイトメトリにおける測定装置の第1の実施の形態を示す。
図2】中空管路を備えている光ファイバの形態の測定セルをファイバの前側における平面図で示す。
図3】測定セルが製造される細管の破断面の顕微鏡写真を示す(図6の参照番号89を参照されたい)。
図4】光ファイバの2つの異なる実施の形態における、誘導光の種々の波長に関する誘導光の半径方向の放射強度曲線のグラフを示す。
図5】中空管路の直径に依存して導光中空管路において測定された最大強度(ポインティングベクトル)のシミュレーションを示す。
図6】本発明による測定セルを製造するための方法ステップを示す。
図7】誘電性のラテックスナノ粒子の水性懸濁剤が図1の粒子検出装置の管路経路に沿って搬送される場合の、位置に依存する散乱強度を示す。
図8】誘電性のラテックスナノ粒子の水性懸濁剤が図1の粒子検出装置の管路経路に沿って搬送される場合の、位置に依存する散乱強度を示す。
図9】誘電性のラテックスナノ粒子の水性懸濁剤が図1の粒子検出装置の管路経路に沿って搬送される場合の、位置に依存する散乱強度を示す。
図10図1の粒子検出装置を用いた、時間にわたる、誘電性のラテックスナノ粒子及び単一ササゲクロロティックモットルウイルスの追跡を示す。
図11】異なる屈折率を有している球体の粒子及び球体の粒子集合体に関する、拡散定数に対する散乱横断面の論理的な比較を示す。
図12図1の粒子検出装置を用いた、誘電性のラテックスナノ粒子に由来する散乱光を示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1には、フローサイトメトリにおける基本的な測定装置が示されている。この測定装置は、本発明の対象ではない。
【0069】
測定原理は、試料粒子が照明された結果として生じる、散乱光、蛍光又はその他の放射光の光学的な検出を基礎としている。検出を位置選択的、周波数選択的又は強度選択的に実施することができるが、これは必須ではない。対応する評価光学系及びアルゴリズムを用いて、分析された試料粒子の特性、例えば、サイズ、形状、拡散速度、可動性、散乱断面積を記録することができる。
【0070】
図1の測定装置においては、本発明によるフロー測定セルが、コア3、クラッド2及び導光管路4を備えている光中空ファイバ1の形態で使用されている。キャラクタリゼーションされるべき試料粒子5を含んでいる液体流が、管路4を通過する。液体流及びその流れを取り囲んでいるコア3が、中空ファイバ1の前側を介して、事前に定められた励起波長の光を導入するレーザ6を用いて照明される。単色レーザ光の代わりに、多色励起放射が使用される。中空ファイバ1は、モニタリング装置に接続されている。このモニタリング装置は、カメラ8を含んでいる従来の顕微鏡システム7であってよい。カメラ8は、科学用の相補型金属酸化物半導体(sCMOS:scientific complementary metal−oxide−semiconductor)カメラであってよい。焦点面又は検出面が、中心軸線9の領域に位置しており、検査試料及びそこに含まれている試料粒子5が、この焦点面又は検出面によって、データ評価のために観察されて、またそこを通過する。ここでは弾性光散乱(レイリー散乱)が検出される。この光散乱は、励起周波数に等しい周波数の散乱光として、試料粒子から生じる。中空ファイバ1の減衰は少ないので、背景散乱がファイバ材料それ自体において展開することは殆どない。
【0071】
中空管路4を、シングルモード光ファイバ1に形成することができる。管路4は、導入口及び管路壁を含んでいる。導入口によって光を管路4及びコア3に導入することができる。中空管路4は、光が伝播することができる管路経路を画定している管状孔を包囲している。図2には、一例として、670nmの波長の光のための光ファイバ1の半径方向縦断面が示されている。
【0072】
その代わりに、光ファイバ1をポリマーから形成することができる。別の実施の形態においては、中空管路が、リソグラフィによりチップベースのプラットフォームに作製された導波管として形成されている。
【0073】
使用時には、複数の粒子5が毛管力によって、又は、外部圧力が加えられることによって、管路経路4に沿って搬送される。
【0074】
光源6は、導入口を介して管路4に光を導入するように構成されている。この実施の形態において示されているように、光源6は、レーザである。使用時には、光ファイバ1のコア/クラッド構造によって、光が誘導されて、シングルモードで管路経路4に沿って伝播し、またそれによって、管路経路4に存在する各粒子5が照明される。
【0075】
モニタリング装置8は、400xの総倍率及び200μmを上回る有効視野が生じるように構成されている対物レンズと、ダイクロイックビームスプリッタと、ナイフエッジミラーと、6×1,024ピクセル領域に対して3.5kHzの最大フレームレートを有しているsCMOSカメラ8と、を含んでいる。対物レンズは、管路壁を通過することによって管路4から放出された光を収集するために、管路壁の外側に位置決めされている。ダイクロイックビームスプリッタ及びナイフエッジミラーは、対物レンズとsCMOSカメラ8との間に位置決めされており、それによって、ダイクロイックビームスプリッタDBSは、対物レンズによって収集された光から蛍光を分離し、続けて、ナイフエッジミラーは、sCMOSカメラ8によるそれらの光の同時の撮影に先行して、対物レンズによって収集された光の残余光と蛍光とを結合させる。このようにして、モニタリング装置8は、誘導光によって各粒子5を照明することによって生じ、また管路壁を通過することによって管路4から放出された光を検出するように構成されている。
【0076】
光ファイバ1のシリンダ状の外形によってもたらされる収差を克服するために屈折率マッチングオイルに撮影領域を浸漬させることができる。択一的に、光ファイバのクラッドの屈折率を、フラットガラススライドに整合させ、それによって、sCMOSカメラ8において、粒子5をほぼ等方性に点状に撮影することもできる。
【0077】
ファイバのコア/クラッド構造によって、導入されたレーザ光は、ファイバコア3において誘導され、また管路4においても、このキャビティに導入された試料体積を光学的に分析するには十分な強度に達する。これは、中空管路4の幅が誘導光の波長の振幅のオーダにあるか、又は、それよりも小さい場合に常に生じる。従って、中空ファイバ1の導光によって、中空管路体積を全長にわたりほぼ均一に照明することができる。その結果、顕微鏡分析のために光を検出することができる領域は、スポット領域に制限されない。
【0078】
検査試料が通過する動作の代わりに、中空管路4は、試料体積を1次元又は2次元に包含する可能性も提供し、これによって、分析されるべき試料粒子5を長期の測定期間にわたり測定領域に保持することができる。
【0079】
図2には、導光中空管路4を備えている光ファイバ1の形態の測定セルの1つの実施の形態が、ファイバの前側における平面図で概略的に示されている。コア3は、酸化ゲルマニウムでドープされている石英ガラスから成り、また、3μmの外径を有している。コア3に隣接しているクラッド2は、非ドープの石英ガラスから成り、また、200μmの外径を有している。管路4は、200nmの直径を有している。コア3の石英ガラスの屈折率とクラッド2の石英ガラスの屈折率との差は、0.008である。管路4、コア3及びクラッド2は、長手方向軸線9(図1を参照されたい)を中心にして同軸に延在しており、また、図2を示している平面において相互に同心である。中空管路4を除き、コア3及びクラッド2のいずれも、散乱を生じさせる可能性があるその他の構造的なばらつき又は不均一性は示さない。各測定に関して、ファイバの長さは数cmあれば十分である。
【0080】
従って、光ファイバ1は、石英ガラスから成り、また、その他の光学材料と比較して、例えば多成分ガラス又は光学プラスチックと比較して、紫外線波長領域から赤外線波長領域までの光に対して低い減衰を示し、従って、良好なレイリー散乱も示す。この特性によって、測定時の散乱背景放射線が最小限まで低減され、また、良好な信号対雑音比が実現される。このことは、特に、試料粒子が非常に小さい場合に重要である。何故ならば、試料粒子の散乱信号は、粒子径と線形逆数的に強く相関しているからである。従って、散乱背景放射線の上述の低減は、特に非常に小さい試料粒子5の分析においてプラスに作用すると認められる。そのような非常に小さい試料粒子5は、例えば、生物学的なプロセスにおいて見られ、またその寸法が小さいことから、これまでこの方法によっては分析できていない。ここでは、一例としてウイルスを挙げる。
【0081】
同じ理由から、多くの場合において、分析されるべき試料粒子を蛍光物質で付加的に標識することも更に可能である。散乱光の総強度は、各蛍光分子の蛍光の飽和特性とは対照的に物理的に制限されていないが、しかしながら、特に励起光の局所的な強度に依存している。励起強度を高めることができたときには、散乱光の総強度は高まっている。これによって、十分に高い散乱結果を短時間で達成することができる。これによって、考えられる中間的なステップも含めて、生化学的なプロセスを直接的に追跡することができるようになり、またそれによって、この方法により分析することができる特性を測定できるようにもなる。
【0082】
択一的に、例えばブリュアン散乱又はラマン散乱の測定若しくは蛍光測定において行われているように、周波数シフトされた光を検出することもできる。
【0083】
図3は、中間製品の破断面の顕微鏡写真である。この中間製品から、クラッド材料の量を増やす別の製造ステップの後に、縮尺通り忠実な延伸によって、コア3、クラッド2及び導光中空管路4を備えている光ファイバが得られる。中空管路4を備えている光ファイバ1は、以下のタスクのうちの1つ以上を満たすものでなければならない。
・1つ又は複数の試料粒子5を含んでいる流体を収容すること。
・試料粒子5が移動できる空間を限定すること。ここでは、試料粒子5の移動は実質的に、長手方向軸線9の方向における1次元の移動に限定されている。
・励起光を試料粒子5に伝播させること。可能であれば、管路4全体において可能な限り高い光強度を達成することが目標となる。
・特に、弾性光散乱(レイリー散乱)が検出されるべきケースにおいては、(光ファイバ用のその他の材料と比較して、石英ガラスの使用による)背景放射線散乱レベルの最小化が重要である。
【0084】
光ファイバ1の構造的な設計は、中空管路4における光強度が可能な限り高くなるように選択されている。好適な実施の形態においては、
・光ファイバが、少なくとも導光ファイバコア3、クラッド2及び中空管路4を含んでいる。
・中空管路4が、ファイバコア3内に設けられているか、又は、ファイバコア3に直接的に設けられており、それによって、ファイバコア3を介して供給される励起光の一部が中空管路4に進入する。好適には、中空管路4が、ファイバコア3によって完全に位置決めされている。
・光ファイバ1が、シングルモードファイバであるか、又は、基本モード及びその他の極少数のモードを有している(好適には、基本モード及び20よりも少ない2次モードを有している)ファイバである。
・中空管路4が、両側を開放した又は閉鎖したキャビティである(後者の場合には、例えば、中空ファイバの両端部が中空管路を備えていない別の光ファイバに接続されることによって、試料媒体が封入されている)。
・中空管路4が、半径方向の横断面で見て、円形の形状を有しており、且つ、誘導光の波長の振幅のオーダ又はそれよりも小さいオーダの直径を有している。
・光ファイバ1が、高開口数を有しており、従って、可能な限り小さいコア直径を有しており、それによって、中空管路4における光強度は最大になっている。
・光ファイバ1が、強い散乱背景放射線を阻止するために、ドープされている石英ガラス及び/又は非ドープの石英ガラスから成る。
【0085】
図4には、光ファイバにおける半径方向強度プロフィールに関するシミュレーションの結果が示されている。中空管路Kの中心(p=0)を起点とした半径方向の位置「p」(単位nm)に対する、ポインティングベクトル「I」の(長手方向ファイバ軸線9に沿った)z成分が、グラフの縦座標に(相対単位で)プロットされている。ポインティングベクトルの量は、中空管路4が水(水の屈折率は1.33)で満たされている場合の、ファイバにおいて誘導される基本モードの強度に対応する。
【0086】
曲線A500及びA1000は、図1に示したようなファイバの半径方向強度プロフィールを表しており、A500は、500nmの波長を有している誘導光をシミュレートしたものであり、A1000は、1000nmの波長を有している誘導光をシミュレートしたものである。この場合、クラッド2の屈折率とコア3の屈折率との差は、0.008である(標準的なシングルモードファイバの典型的な桁数)。従って、コアは3μmの直径を有している。
【0087】
形状変更されていないコアと比較して、中心孔4(ここでは200nm)を有しているコア3において基本モードの種々の強度曲線が得られる。強度最大値は、ファイバ中心には位置していない、しかしながら、クラッドの内壁と中空管路の壁との間のほぼ中間に位置している。水で満たされている中空管路Kにおいては、強度は極僅かにしか低下せず、最小値においてさえ、曲線全体の振幅の大きさと同じオーダにあることが見て取れる。
【0088】
中空管路K(中心)における強度最小値とコアにおける最大強度との比率は、この特別な設計においては約50%である。
【0089】
比較として、曲線B500及びB1000は、コアの屈折率とクラッドの屈折率との差が大きいファイバにおける基本モードの強度分布を示している。コアは、非ドープの石英ガラスから成り、また、1.7μmの外径を有している。クラッドは、フッ素でドープされている石英ガラスから成り、また、200μmの外径を有している。中空管路は、200nmの直径を有している。コアの石英ガラスの屈折率とクラッドの石英ガラスの屈折率との差は、ここでは0.025である。曲線B500は、500nmの波長を有している誘導光をシミュレートしたものである。曲線B1000は、1000nmの波長を有している誘導光をシミュレートしたものである。
【0090】
特に、曲線A500及びA1000と比較して屈折率の差が大きくなっていることに起因して、この測定セルでは、コア3の内側における放射の総強度のうちの、中空管路において誘導される総放射強度は、B500及びB1000の各曲線におけるものよりも大きくなっている。曲線B500の場合、中空管路4における(中心における)強度最小値とコアにおける最大強度との比率は、約60%である。
【0091】
曲線A500及びA1000と曲線B500及びB1000をそれぞれ比較すると、より大きい波長(1000nm)を有している誘導光では、コアの領域においても管路領域Kにおいても、強度Iのより平坦な半径方向分布プロフィールが生じていることが分かる。
【0092】
図5のグラフは、2つの特定の波長、500nm及び1,000nmに関する、中空管路の内径が、中空管路内を誘導される放射の強度に及ぼす影響を示している。図4と同様に、曲線A500及びA1000は、図1に示したファイバの半径方向強度プロフィールを表しており、曲線A500は、500nmの波長を有している誘導光をシミュレートしたものであり、曲線A1000は、1000nmの波長を有している誘導光をシミュレートしたものであり、ここでもまた、図4の曲線A500及びA1000に従って、コア3の屈折率とクラッド2の屈折率との差は0.008であり、また、コア直径は3.0μmである。曲線B500は、500nmの波長を有している誘導光をシミュレートしたものであり、曲線B1000は、1000nmの波長を有している誘導光をシミュレートしたものであり、それぞれ、0.025の屈折率の差及び1.7μmのコア直径の場合を表している。グラフの縦座標には、管路4の内側におけるポインティングベクトルのz成分の最小値と、コアにおけるポインティングベクトル「I」の最大値との比率Imin/Imax(単位%)が孔の直径d(単位nm;開口幅として)に対してプロットされている。ここで、この比率は、管路における光強度の低下量を表している。
【0093】
中空管路において誘導される放射の強度は、中空管路の内径に依存していることは明白である。直径が小さくなるほど、中空部の内側の最小値における強度値は一層高くなる。その一方で、孔が小さくなるほど、製造並びに上述の装置を用いた作業がより困難になる(孔サイズよりも小さい粒子だけが物理的に孔に入ることができることも証拠となる)。従って、要求される最小強度と最小孔直径との間のトレードオフは、実際に好適な50nmから300nmまでの孔直径をもたらす。
【0094】
中空管路4を備えている光ファイバ1は、プリフォームから延伸される。図4に示した曲線Aによって表されているファイバの屈折率の差を有している測定セルのためのプリフォームの製造を、以下では一例を参照しながら、また図6を参照しながらより詳細に説明する。
【0095】
第1の方法ステップにおいては、いわゆるサブストレート管81が準備される。サブストレート管81は、非ドープの石英ガラスから成り、また、21mmの内径及び2mmの壁厚を有している。サブストレート管81の孔の内壁には、ゲルマニウム含有石英ガラス製のコア層82が、サブストレート管の内側に堆積されている。非ドープの石英ガラスは、その後、公知のMCVD法に従い、クラッド材料として使用されることになる。コア層82のゲルマニウム含有量は、クラッド材料の非ドープの石英ガラスに関して、0.008の屈折率の差に整合するように調整されている。
【0096】
これによって内側がコーティングされているサブストレート管81は、続けて、石英ガラス管84を形成するためにコラプスされるが、その際、0.5mmの直径を有している孔85は維持される。ゲルマニウム含有層は、約3mmの外径を有している中空孔86を形成する。石英ガラス管84の外壁は、酸水素バーナによって火炎磨き加工されている。このようにしてクリーニングされた石英ガラス管84は、いずれのツールも使用しない延伸プロセスにおいて、約2mmの外径を有している細管89へと引き延ばされる。引き延ばしプロセスの間に、石英ガラス管の内孔及び引き延ばされた管素線の内孔にはそれぞれニトロゲンが流される。
【0097】
それによって得られた細い石英ガラス管89の内孔87は、100μmを僅かに下回る程度の直径を有している。石英ガラス管89は、更なる方法ステップにおいて、非ドープの石英ガラスから成る、いわゆるジャケット管91によって更に被覆される。細い石英ガラス管89は、ジャケット管の孔に挿入され、その内部で同軸となるように中心が合わせられ、また領域毎にジャケット管に接合されて、厚壁の管状のプリフォーム90を形成する。
【0098】
このようにして製造された管状のプリフォーム90は、約30mmの外径を有しており、また、半径方向の横断面においては、内孔87の同心の配置構成を示している。
【0099】
更に、プリフォーム90は、シングルモードのステップインデックス型の設計及び同軸の中心孔を有している。このプリフォーム90が、導光中空管路101を備えている光ファイバ100に延伸される。全体がコラプスされることを回避するために、内孔87は延伸プロセス中、ニトロゲンで加圧されている。その結果得られたファイバ100は、200μmの公称直径を有している。このファイバ100は、内孔101と、ゲルマニウムでドープされている石英ガラスから成るコア領域103と、非ドープの石英ガラスから成る外側クラッド領域102と、が同軸に配置されたものから形成されている。内孔101は、600nmを僅かに下回る直径を有しており、また、コア領域103は、3μmを僅かに下回る外径を有している。
【0100】
以下では、測定セルの択一的な製造プロセスを説明する。この製造プロセスは、フッ素でドープされている石英ガラスの層が、標準的なPOD(Plasma−assisted Outside Deposition)法を用いて支持管上に形成される堆積ステップを含んでいる。支持管は、非ドープの合成石英ガラスから成る。この支持管は、5mmの内径及び40mmの外径を有している。このために、SiCl4、酸素及びSF6が、プラズマバーナに供給され、プラズマバーナに属するバーナ炎におけるSiO2粒子に変換される。プラズマバーナは、一方の端部から他方の端部へと支持管に沿って後方に向かって移動されるので、SiO2粒子は、長手方向軸線を中心にして回転する支持管の外側シリンダ表面に層として堆積される。これによって、15mmの厚さを有している、フッ素でドープされている石英ガラス層の石英ガラスネットワークにおいて5重量%を上回る高いフッ素濃度と協働することができる。
【0101】
堆積プロセスに続いて、SF6の加熱エッチングガス流が支持管の中心孔に導入される。支持管は完全には取り除かれないが、しかしながら、厚さ15mmの、非ドープのシリカの層は残るように、SF6のエッチングガス流は構成されている。管状の形状(=スタータ管)の内孔の機械的な処理は必要ない。
【0102】
このようにして製造されたスタータ管は、続けて、いずれのツールも使用しない引き延ばしプロセスにおいて延伸され、非ドープのシリカから成るコア層及びフッ素でドープされている石英ガラスから成るクラッド層を有している二重壁管になる。このために、外部から加えられる外部圧力と比較して5mbarだけ上昇されている内圧が、内孔において維持される。これによって、熱間変形によって平滑化された内壁を含んでおり、且つ、特に高い表面品質及び管の全長にわたる内孔の正確な幅を有している二重壁管が得られる。
【0103】
結果として得られた二重壁管は、フッ素でドープされている石英ガラスの層を更に堆積させるために、第2のPOD堆積プロセスにおいて更に処理される。このPOD堆積プロセスは、スタータ管の作製に関して上記において説明したもの同様のプロセスである。これによって、厚壁の「母管」が得られる。
【0104】
この母管は、図4における曲線Bに参照しながら上記において説明したように、導光中空管路を備えている光ファイバを得るために引き延ばされる。同軸の内側中空管路を除いて、結果として得られたファイバはシングルモードのステップインデックス型の設計である。このファイバは、非ドープのシリカから成るコア及びフッ素でドープされているシリカから成るクラッドを有している。所望の長さを有している区間が、このようにして得られた光ファイバから製造され、それらの区間は、本発明による測定セルとして使用される。
【0105】
以下では、図1を参照しながら、粒子を検出するための測定セルの典型的な使用を説明する。
【0106】
最初に、管路経路に沿って搬送されるべき粒子5が蛍光体で標識される。管路経路に沿って搬送されるべき粒子が管路4に導入されると、粒子5は、管路経路に存在する流体(例えば液体又は気体)中を自由に拡散する。
【0107】
管路経路に沿った粒子の搬送中に、光が導入口を介して管路4に導入され、それによって管路経路に存在する各粒子5が照明される。誘導光が管路に閉じ込められることによって、また、管路4の孔の寸法がサブ波長であることによって、各粒子が照明されると、粒子のサイズ及び分極率に起因する散乱及び蛍光体の存在に起因する蛍光が生じる。粒子のサイズが誘導光の波長よりも小さい場合には、粒子が照明されると、コヒーレントな及び/又はインコヒーレントな光散乱が生じる。
【0108】
結果として生じた散乱光及び蛍光の一部は、誘導光の誘導方向に対して0とは異なる角度で管路壁を通過して管路4から放出される。対物レンズは、散乱光及び蛍光を収集し、それらは続けて、撮影のためにsCMOSカメラ8へと伝達される。続けて、sCMOSカメラ8は、検出された光を処理し、その結果、照明された各粒子の出力像が生成され、それによって、照明された各粒子5を視覚化することができる。
【0109】
それに対し、粒子5によって散乱されなかった光は、管路経路に沿って誘導され続ける。この結果、良好な信号対バックグラウンド比及び信号対雑音比が得られ、またそれによって、照明された各粒子の検出の品質が向上し、従って、照明を行う誘導光の残留散乱が直接的に検出されることによって、検出された散乱光が埋もれることが回避される。
【0110】
粒子検出装置のこの構成によって、非常に小さい粒子、特にサブ100nmの範囲の粒子を検出するために、コヒーレント及び/又はインコヒーレントな光散乱の効果を使用することができる。
【0111】
図9から図11には、誘電性のラテックスナノ粒子の水性懸濁剤が管路経路に沿って搬送される場合の、位置に依存する散乱強度が示されている。誘電性のラテックスナノ粒子は、19nm、35nm及び51nmの公称直径を有しており、それらはそれぞれ、670nmの波長に対して0.0023nm2、0.09nm2及び0.86nm2の散乱断面積に対応している。
【0112】
図7には、1msの露光時間でのラテックスナノ粒子の例示的なRAW画像が示されており、他方、図8には、同一の画像が対数擬色(ここではグレースケール写真)で示されている。図9には、位置「p」(単位μm)に依存する、総散乱強度の対数Iの片対数プロットが示されている。粒子検出装置は、19nm、35nm及び51nmの公称直径を有している誘電性のラテックスナノ粒子を検出することができる。
【0113】
更に、粒子検出装置によって、散乱光の検出を介して、散乱強度の測定及び各粒子の運動の追跡を実現することができる。検出された各粒子の散乱強度のそのような測定及び各粒子の運動のそのような追跡は、検出された各粒子に関する情報を提供するだけでなく、熱拡散の調査も実現し、またそれによって、各粒子の流体力学的な特性の調査も実現する。
【0114】
図10には、粒子検出装置を用いた、時間t(単位:秒)にわたる、上述の誘電性のラテックスナノ粒子及び26nmの単一ササゲクロロティックモットルウイルス(CCMV:cowpea chlorotic mottle virus)の位置「p」(単位:μm)の追跡を示す。
【0115】
図10には、上述の誘電性のラテックス粒子及び26nmの単一CCMVに関する、抽出された拡散定数Dに依存する、検出された平均散乱強度「I」がプロットされており、また、追跡された粒子に関する、検出された散乱強度の対数のヒストグラムがプロットされている。図10のプロット及びヒストグラムからは、参照番号42、44、46、50、52、54によって示唆されているように、異なる公称直径を有している種々の誘電性のラテックスナノ粒子が、相互に大きく異なる散乱強度を示していることが見て取れる。従って、粒子検出によって、それらの異なる散乱断面積に基づいて、異なる公称直径を有している種々の誘電性のラテックスナノ粒子を区別することができる。
【0116】
更に、図10のヒストグラムからは、単一CCMVが、そのより低い屈折率差に起因して、誘電性のラテックスナノ粒子の散乱強度50、52、54よりも低い散乱強度56を示していることが見て取れ、従って、粒子検出装置30は、誘電性のラテックスナノ粒子と単一CCMVを区別することができる。
【0117】
更に、検出された各粒子の散乱強度の測定及びストークス−アインシュタインの式による拡散定数の測定によって、粒子の集合体と単一の比較的大きい粒子とが類似の散乱強度を示す場合であっても、それらを区別することができる。
【0118】
検出された各粒子の拡散定数及びサイズは、以下の事項を行うことによって得られる。
・各期間にわたり変位ヒストグラムを取得する。
・変位ヒストグラムがガウス分布であるかを検査する。
・変位ヒストグラムの変化を用いて、平均二乗変位(MSD:mean square displacement)を計算する。
・短い期間の時間間隔に対する、MSDの傾きに対する適合度の半分として拡散定数を計算する。
・ストークス−アインシュタインの式を用いて、検出された各粒子の流体力学的直径を計算する。
【0119】
室温にある水に関するストークス−アインシュタインの式は、以下の通りである。
流体力学的直径=4.11/(6×π×D)
ここでDは拡散定数である。
【0120】
図11には、屈折率n1及びn2が異なる球体の粒子及び粒子の集合体に関する、拡散定数D(単位:μm2/s)に対する散乱横断面シグマ(単位:nm2)の論理的な比較が示されている。
【0121】
図11における円形の点58は、複数の20nmラテックスナノ粒子の集合体の拡散定数に対する散乱断面積の論理モデルを表している。上側の直線60は、異なるサイズで屈折率n1=1.65を有している単一完全球体ラテックスナノ粒子の拡散定数に対する、散乱断面積の論理モデルを表している。下側の直線62は、異なるサイズで屈折率n2=1.4を有している単一完全球体タンパク粒子の拡散定数に対する、散乱断面積の論理モデルを表している。
【0122】
図11からは、20nmの複数のラッテクスナノ粒子の集合体に由来する散乱強度が、異なるサイズの完全球体粒子のスケーリング特性とは異なる、拡散定数を有するスケーリング特性を示していることが見て取れる。従って、スケーリング特性におけるこの差によって、粒子の集合体と単一の比較的大きい粒子とが類似の散乱強度を示す場合であっても、それらを区別することができる。
【0123】
図12には、粒子検出装置を用いた、所定の時間にわたる、単一ササゲクロロティックモットルウイルス(CCMV)の位置の追跡が示されている。所定の時間にわたり、検出された各粒子の位置を追跡するための粒子検出装置を使用することによって、そのブラウン運動を分析して、検出された各粒子の拡散定数を求めることができ、従って、本明細書の下記において説明するように、ストークス−アインシュタインの式を介してそのサイズを求めることができる。図12からは、粒子検出装置が、20nmの範囲のサイズを有している単一CCMVを追跡できることが見て取れる。
【0124】
散乱光を検出するためのモニタリング装置のこの構成によって、金属、半導体又は有機の造影剤を使用して、各粒子の分極率を高めることができ、またそれによって粒子検出装置の検出感度を高めることができる。更に、散乱光及び蛍光の両光を検出するためのモニタリング装置のこの構成によって、各粒子の放射スペクトルを測定するために、散乱光及び蛍光を同時に測定することができる。これによって、各粒子のスペクトルの特徴に基づいて、各粒子を識別することができる。
【0125】
散乱光の散乱強度を測定することによって、粒子の相互作用を調査することができる。例えば、散乱光の散乱強度を測定することによって、散乱強度における2次変化、各粒子のスペクトル応答又は各粒子の拡散定数の検出を介して、粒子結合イベント及び粒子結合解除イベントを調査することができる。
【0126】
オプションとして、複数の方向にわたる散乱光の分布及び/又は散乱光のスペクトルを測定するように、モニタリング装置を構成することができる。
【0127】
液体中の小さい粒子の熱拡散は、そのサイズに反比例し、また、水中の10nmの球体粒子に関しては数10μm2/sに達する可能性があり、従って、利用可能な検出期間は、撮影が行われる焦点が合った場所に粒子が留まる期間に制限される。
【0128】
他方、図1に示した粒子検出装置の構成によって、管路経路における粒子を、誘導光によって照明し続けることができ、またそれによって、粒子を撮影面に留まらせることができ、更には、拡散によって焦点が合わなくなることもなくなる。誘導光の照明面に粒子を留まらせることによって、例えばクライオ電子顕微鏡において実施されているような、限定的な体積における粒子の固定化が不要になり、またそれによって、粒子検出装置が簡潔且つ廉価になるだけでなく、延長された検出期間も提供され、それによって、各粒子のリアルタイム追跡の品質が向上し、また、各粒子に関して取得可能な情報量も増加する。
【0129】
散乱光の検出とは異なり、蛍光顕微鏡検査法では、速度が蛍光放出率によって制限されており、また利用可能な検出期間が蛍光のフォトブリーチングによって切り捨てられる。
【0130】
上述の粒子検出装置の改善された検出能力は、各粒子を検出するための専用のモニタリング装置を不要にし、またそれによって、より簡潔でより廉価なモニタリング装置、例えば光学顕微鏡、種々のフォト検出器、ラインCCD検出器又はスマートフォンカメラの使用を可能にするだけでなく、クライオ電子顕微鏡によって要求されるような特別な条件の代わりに、周囲条件下での各粒子の検出も可能にする。
【0131】
別の実施の形態においては、粒子検出装置が、管路経路に沿って各粒子を流すために各粒子を押し流すための押し流し機構を含むことができる。そのような押し流し機構の一例では、電極を管路4に組み込み、それによって電気泳動力を用いて、管路経路に沿って各粒子を進めることができる。
図1
図2
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図5
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図11
図12