【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の課題は、そのような測定方法の基礎を築くことができる測定セルを提供することである。
【0013】
本発明の一般的な説明
上述のタイプの測定セルから出発して、この課題は、本発明によれば、測定セルが、光線を誘導するための光学的な導波管として構成されており、この導波管が、屈折率n
Kを有しているコアを含んでおり、このコアが、導波管の長手方向軸線に沿って延在しており、その長手方向軸線に対して垂直な横断面において80μm
2よりも小さい横断面積A
Kを有しており、且つ、n
Kよりも低い屈折率を有しているクラッドによって取り囲まれており、キャビティが、長手方向軸線に沿って延在している管路を形成しており、コアの内側に形成されているか、又はコアと接触するように形成されており、且つ、0.2μm
2よりも小さい開口面積A
Hを有している少なくとも1つの開口端部を備えている、ことによって解決される。
【0014】
管路は、光ファイバ、例えばステップインデックス型又はグレーデッドインデックス型のファイバ、若しくは、その他の導波管構造、例えばエッチングプロセス及び堆積プロセスによって作製された半導体マイクロチップに形成されている。光学的な導波管の導光は、コアの屈折率とクラッドの屈折率との差によって達成される。中空管路は、分析されるべき試料粒子を含んでいる流体媒体を収容するために用いられる。流体媒体は、ここでは、中空管路に封入されているか、又は、中空管路を流れることによって、中空管路を通って誘導される。流体媒体に含まれている試料粒子は、中空管路の長手方向軸線に沿って移動することができるが、しかしながら、長手方向軸線に対して垂直な方向における試料粒子の動きは管路の幅の寸法によって制限されている。これに関して、管路の幅の寸法は、横方向における試料粒子の移動の経路を空間的に所定の角度に制限する。このために、中空管路が、0.2μm
2よりも小さい開口面積によって画定されている幅に制限される。円形の横断面を有している管路では、これは500nmよりも小さい直径に対応する。簡潔な光学顕微鏡の焦点深度は、この範囲内の試料粒子を検出するには十分である。しかしながら、好適には、中空管路はより一層小さい。つまり、中空管路は、長手方向軸線に対して垂直な横断面が円形である場合には、例えば、20nmから500nmまでの範囲の直径を有しており、好適には50nmから300nmまでの範囲の直径を有している。本発明による「測定セル」は、コアと、そのコアに形成されている中空管路と、を有している光ファイバを含んでおり、中空管路は、試料粒子を含んでいる流体媒体を収容するように適合されており、また、管路は、0.2μm
2よりも小さい開口面積によって画定されている幅を有しており、その結果、幅は、横方向における試料粒子の移動の経路を、それらの試料粒子の顕微鏡検出を実現する程度に空間的に制限するには十分に小さくなっている。
【0015】
前側においてコアに結合される励起放射に関して光が空間的に封入されることが一層明白になり、また、コアにおいて誘導される光の強度は、コアの横断面積が小さくなるほど高くなる。コアの小さい横断面積は、短波励起放射の場合であっても、また、コアの屈折率とクラッドの屈折率との差が大きい場合であっても、シングルモードの導光の実現を容易にする。これは、中空管路に進入する放射エネルギの増大を支援し、またそれによって、管路の照明の改善も支援する。このために、コアは、長手方向軸線に対して垂直な横断面において、80μm
2よりも小さい横断面積A
Kを有している。円形の横断面を有しているコアでは、これは10μmよりも小さい直径に対応する。しかしながら、好適には、コア直径はより一層小さい。つまり例えば、コアは、長手方向軸線に対して垂直な横断面が円形である場合には、3μmよりも小さい直径を有している。1μmよりも小さいコア直径は、実際の観点から好適なものではない。
【0016】
管路は、コアの内側において又はコアと接触して、長手方向軸線に沿って、光学的な導波管内に延在している。接触面はコアと共通である。長手方向軸線に対して垂直な横断面(表記を簡潔にするために、以下では、簡潔に「半径方向の横断面」とも記すが、横断面を円形に限定することは意図していない)を見ると、管路は、コアの直ぐ近傍に延在しているか、コアと接触して延在しているか、若しくは、部分的に、又は好適には完全にコア内に延在している。いずれにしても、中空管路は、少なくとも部分的に、好適には完全に、コア材料によって画定されている。
【0017】
励起放射は、光学的な導波管のコア/クラッド構造を介して長手方向軸線に沿って誘導され、且つ、測定区間に沿って中空管路において誘導される。光線光学的な観点から、導光は、n
K>n
M(ナトリウムランプのD線の波長での屈折率)の条件下での全反射に基づく。ここでは、コアにおいて誘導される光は管路に進入することができ、また中空管路を「照明」することができる。コアから中空管路へのこの光強度の伝送は、点又は場所に制限されないが、しかしながら、極めて長い区間にわたり、例えばコアと管路の接触表面全体に沿って行われる。従って、管路に進入した光を、散乱を励起させるための放射として使用することができるか、又は、管路に存在する試料粒子のその他の状態を励起させるための放射として使用することができる。つまり、光をより大きい区間にわたり使用することができ、これによって、より長い区間にわたる試料粒子の運動のモニタリングが実現される。中空管路の制限された開口幅は、試料粒子が励起光フィールドから移動することを阻止する。
【0018】
これは、管路における強度分布が可能な限り大きく、且つ、半径方向においても軸線方向においても均一である場合に、試料粒子の効率的な照明にとって有利である。管路に到達する放射強度の伝播を、測定セル設計の適切さの尺度として使用することができる。この点に関して、管路における強度最小値と、コアにおける強度最大値との比率が、測定値とみなされる。この測定値は、少なくとも1%であるべきであり、好適には30%以上である。
【0019】
公知のように、ステップインデックス型の光学的な導波管における光伝播のモード数は、所定の波長では、コアの屈折率とクラッドの屈折率との差及びコア直径に実質的に依存している。誘導される励起光の中空管路への再現可能な伝達に関して、本発明の測定セルの1つの実施の形態によれば、好適には、コアの屈折率とクラッドの屈折率との差、コアの横断面積及び誘導される光線の波長が調整され、それによって、光線の基本モード及び20を上回らない別のモードを伝播させることができる。
【0020】
マルチスペクトルの励起放射の場合、導光についてのこの条件がスペクトルの最短波長に対して満たされていれば有利である。
【0021】
いわゆるシングルモードファイバが用いられる場合のように、1つのシングルモードだけが、即ち基本モードだけが形成される実施の形態はそれ自体で特に好適なものである。この場合、誘導される光強度は専ら基本モードによって伝達され、このことは、管路への可能な限り高い光強度の伝達を容易にする。種々のモードが構成されると、光強度がそれらのモードにわたり分散される。これによって、一方では、コア及び中空管路における強度最大値が低くなる。また他方では、個々のモードにわたるエネルギ分布を求めることは困難なので、マルチモードの励起放射の場合、キャビティにおける実際の強度分布を規定する精度は、シングルモード放射の場合において規定するよりも低くなり、これによって、散乱放射の評価が一層困難になる。コア(コア直径)が小さくなるほど、その他の条件が同じ場合に、実現される光モードは少なくなる。従って、確かに、コア(コア直径)のサイズが十分小さく設定されることによって、光伝送のシングルモードの状態を原則として保証することができる。しかしながら、小さいコアサイズによって、作製及び調整に関する労力も必然的に生じることになる。コアが小さくなるほど、前記のコアへの光の伝送はより複雑になる。実際には、事前に定められたコア直径を正確に選択すること、また、測定セルの全長にわたりそのコア直径を維持することはより困難である。従って、他方では、可能な限り大きいコア直径が最適であると考えられるが、その場合、光伝送のシングルモードの状態は殆ど保証されない。更に、管路は、光モードの生成の基礎をなす境界条件(マックスウェルの方程式に関する境界条件)を変化させるので、その結果、特にシングルモードの光伝播に関してほぼカットオフの設計の場合(いわゆるほぼカットオフ周波数の場合)には、より高次のモードが生じやすくなる可能性がある。従って、基本モードは別として、所定数の高次モードは、その数が20モードを上回らない限りは、許容できるものであるとみなされる。
【0022】
コア及びクラッドが高度の珪質ガラスから構成されている測定セルが有用であることが分かった。
【0023】
「高度の珪質ガラス」とは、少なくとも60重量%であるSiO
2含有量を有している光学的に透明なガラスを表す。
【0024】
この関係において、コアが、酸化ゲルマニウムでドープされている石英ガラスから成り、また、クラッドが、非ドープの石英ガラス、又は、石英ガラスの屈折率を低下させることができる成分で、特にフッ素でドープされている石英ガラスから成る測定セルは好適である。
【0025】
石英ガラスは、実質的に、約150nmから3,000nmまでの間の広範な波長領域にわたり透明である。従って、測定セルは、紫外線から赤外線までの範囲の波長を有している励起放射を許容することができ、測定セル自体の壁が散乱に関与することも少ない。更に、材料としての石英ガラスは、熱間変形を実施することができる比較的大きい温度間隔によって、特に小さい、例えば100nmよりも小さい開口横断面の管路の実現を支援する。
【0026】
酸化ゲルマニウムによって、石英ガラスの屈折率が高まる。コアにおいて誘導される光の強度が高くなるほど、従ってまた中空管路に進入する強度が高くなるほど、コアの屈折率とクラッドの屈折率との差が大きくなることが分かった。コアが酸化ゲルマニウムでドープされており、またそれと同時にクラッドがフッ素でドープされている場合には、コアとクラッドの境界において、特に大きい屈折率の差を確立することができる。この差は、好適には少なくとも8×10
-3である。
【0027】
酸化ゲルマニウムでコアガラスをドープすることは、ゲルマニウムが高温プロセスステップの間に蒸発し、それによって屈折率の半径方向プロフィールが変化する可能性があるという欠点を有している。従って、本発明によるセルの別の好適な実施の形態においては、コアが、非ドープの石英ガラスから成り、また、クラッドが、屈折率n
Cを有しており、且つ、石英ガラスの屈折率を低下させることができる成分で、特にフッ素でドープされている石英ガラスから成る。
【0028】
非ドープの石英ガラスは、高い光透過率と、ドープされている石英ガラスよりも高い粘性と、を有している。コアガラスの高い粘性は、より低い粘性を有している石英ガラスと比較して、コア領域の内側における管路が非常に小さい場合であっても、その維持を容易にする。
【0029】
小さいコア直径及び大きい屈折率差のいずれも、コアから管路へと進入する放射の高い強度に寄与することが分かった。この点に関して、コアガラスが、非ドープの石英ガラスから成り、また、差n
K−n
Cが、少なくとも16×10
-3、好適には少なくとも20×10
-3である場合には有利である。
【0030】
コア及びクラッドが、塊状の固体材料から形成される場合には有用であることが分かった。
【0031】
コア及びクラッドのいずれも固体で塊状のバルク材料から成る。コア及びクラッドはいずれも、半径方向の横断面において、公称的に均一な屈折率プロフィールを示す。製造プロセス中の拡散プロセス及び高温プロセスに起因する屈折率の局所的な変化を殆ど阻止することはできない。しかしながら、クラッドは、内部境界を有しておらず、例えば別のコア又は別の管路を有していない。同様に、単一の中空管路及び単一のクラッドとの接触領域を除いて、コアは別の境界を有していない。境界が存在しない場合、測定セルにおいて、境界に関連する散乱は実質的に生じない。つまり、測定セルは、特に散乱が生じないクラッドを有している。
【0032】
更に、モードのエネルギが別のモードに結合される、いわゆるモード結合の作用が回避される。この作用は、異なる導光領域が存在する場合、例えば光学的な導波管に幾つかのコアが存在する場合に生じる可能性がある。モード結合は、光のエネルギが周期的に、異なる導光領域間で交換される作用を有している。しかしながら、このことは、光学的な導波管の長手方向軸線に沿った散乱率が変化するという作用を有している。従って、光フィールドが周期的に変化する場合、ファイバの種々の位置に依存して、試料粒子が軸線方向において種々の度合いで散乱する可能性がある。この作用は、中空管路がコアの内側に形成されておらず、その代わりにコアから離れて形成されている場合にも起こり得る。好適な実施の形態においては、そのようなモード結合は完全に排除されているので、光の強度((無視できる)減衰は除く)は軸線方向において独立している。
【0033】
長手軸線方向に対して垂直な横断面において、コアは、円形であり、10μmよりも小さい直径と、中空管路の各横断面領域の内側に位置しているコア中心点と、を有している場合には有利であることも分かった。
【0034】
管路は、好適には、コア外の光の進入に関する条件が最適となる位置に設けられている。理想的には、この位置はコア中心点にある。しかしながら、管路をそこから横方向に延ばすこともできる。本発明による測定セルの最も単純なケースにおいては、コア、クラッド及び中空管路が、光学的な導波管において、相互に相対的に同軸で延在している。ここでは、中空管路及びコアが、半径方向の横断面において円形であり、且つ、相互に相対的に同心である。測定条件及び測定結果が測定装置内での測定セルの空間的な向きに依存しない限りにおいて、本発明による測定セルの回転対称性は使用に際し有利である。コア直径は、好適には小さく、10μmよりも小さく、特に好適には3μmよりも小さい。小さいコア直径の利点は、本発明によるコアの小さい半径方向の横断面に関連させて上記において説明した通りである。
【0035】
一方で、高い放射エネルギがコアにおいて誘導され、この放射エネルギが、他方では、可能な限り効率的に管路に進入できる場合には有利である。この点において、測定セルの1つの実施の形態によれば、好適には、管路がコアの内側全体に延在しており、長手方向軸線に対して垂直な横断面において、コアがA
Kの横断面積を有しており、管路がA
Hの横断面積を有しており、比率A
K/A
Hが4よりも大きく、好適には20よりも大きい。
【0036】
この場合、半径方向の横断面で見た中空管路は、完全にコアの内側に延在している。中空管路は、その長さにわたりコア材料によって取り囲まれているので、コアにおいて誘導される放射エネルギは、中空管路に効率的に進入することができる。しかしながら、この場合、(半径方向の横断面で見た)中空管路の開口面積は、コアの横断面積を完全に犠牲にしている。コアの内側において十分に高い放射エネルギを供給できるようにするために、管路の横方向の寸法(例えば管路の内径)は、好適には、コアの残りの横断面積が依然として中空管路の開口面積よりも少なくとも4倍大きく、好適には20倍大きくなるように調整されている。
【0037】
ここで好適には、光学的な導波管は、管路を備えているステップインデックス型のファイバとして構成されており、管路は、光学的な導波管において誘導されるべき光線の波長よりも小さい開口幅を有している。
【0038】
測定セルの特に好適な構成においては、光学的な導波管が、円形の横断面積を有している光ファイバとして構成されており、クラッドが150μmから300μmまでの範囲の外径を有している。
【0039】
この太さのファイバは、一方では依然として可撓性であり、従って、より太い固いファイバよりも割れにくい傾向にある。他方では、その太さは、シングルモードの標準的な光ファイバよりも大きいので、より容易に取り扱うことができる。付加的に、クラッドに保護カバーを設けることができる。
【0040】
本発明による測定セルの重要な利点として以下の点が挙げられる。
1.試料材料が空間的に封入されること。
2.バックグラウンド信号が低いこと。
3.非常に小さい粒子/分子を測定できること。
4.測定装置を、既存の普及している市販の測定機器に容易に組み込むことができ、従って、取得コストを低く抑えることができ、またそれと共に光学的な導波管を廉価に製造できること。
【0041】
本発明による測定セルは、医学又は生物学のコンテキストにおいて個々の分子を検出するためのフローサイトメトリにおける使用に適している。これとは別に、測定セルは、フローサイトメトリに基づいたナノ粒子の分類の分野又は環境測定(エアロゾル)の分野における考えられる用途、又は光化学作用プロセスのためのマイクロリアクタのための考えられる用途を提供する。
【0042】
本発明による測定セルの好適な実施の形態は、プリフォームを引き延ばすことによって得られ、測定セルは、導光中空管路を備えている光ファイバの形態として存在している。中空管路は、半径方向の横断面において、光ファイバのコアの内側に完全に延在している。中空管路はその長さにわたりコア材料によって取り囲まれており、その結果、放射エネルギは管路に効率的に進入し、その放射エネルギはコアにおいて誘導される。コアにおいて十分に大きい量の放射エネルギを供給できるようにするために、管路の横方向の寸法(例えば管路の内径)は、好適には、コアの残りの横断面積が依然として管路の横断面積よりも少なくとも4倍大きく、好適には20倍大きくなるように調整されなければならない。
【0043】
最も単純なケースでは、縮尺通り忠実に光ファイバへと延伸されるプリフォームにおけるこの比率が既に事前に定められている。
【0044】
本発明による半完成品の有利な発展形態は、従属請求項より明らかになる。従属請求項に記載されている半完成品の設計が、本発明による測定セルに関する従属請求項において言及されている実施の形態を複製する限りにおいて、対応する請求項についての上述のコメントを、補足的な説明のために参照する。
【0045】
本発明による測定セルは、下記において説明する粒子検出装置における使用に適している。測定セルは、管路に光を導入することができる導入口及び少なくとも1つの管路壁を含んでいる中空管路を提供することによって、検出装置に寄与し、前記の管路壁又は各管路壁は、光を伝播させることができる管路経路を画定するように配置されており、光源は、導入口を介して光を管路に導入するように構成されており、管路は、管路経路に存在する1つ又は複数の粒子を照明するために、管路経路に沿って光を誘導しながら伝播させる形状を有しており、モニタリング装置は、誘導光による前記の粒子又は各粒子の照明によって生じ、且つ、前記の管路壁又は各管路壁を通過することによって管路から放出された散乱光を検出するように構成されている。
【0046】
粒子検出装置によって、管路経路に存在する流体(例えば液体又は気体)中を自由に拡散している粒子の光学的な検出が実現される。特に、粒子検出装置のこの構成によって、非常に小さい粒子、特にサブ100nmの範囲の粒子を検出するために、コヒーレント及び/又はインコヒーレントな散乱光を使用することができる。
【0047】
上述のように管路及びモニタリング装置を構成することによって、前記の粒子又は各粒子によって散乱されない光は、管路経路に沿って誘導され続けるので、その結果、散乱光だけがモニタリング装置によって検出される。このことは、例えば、前記の管路壁又は各管路壁を介して、誘導光の誘導方向に対して0とは異なる角度で管路から放出される散乱光によって達成することができる。これによって、良好な信号対バックグラウンド比及び信号対雑音比が提供され、またそれによって、前記の粒子又は各粒子の検出の品質が向上し、従って、照明を行う誘導光の残存散乱が直接的に検出されることによって、検出された散乱光が埋もれることが回避される。
【0048】
更に、粒子検出装置のこの構成によって、管路経路における前記の粒子又は各粒子を、誘導光によって照明し続けることができ、またそれによって、粒子を撮影面に留まらせることができ、更には、拡散によって焦点が合わなくなることもなくなる。誘導光の照明面に前記の粒子又は各粒子を留まらせることによって、例えばクライオ電子顕微鏡において実施されているような、限定的な体積における粒子の固定化が不要になり、またそれによって、粒子検出装置が簡潔且つ廉価になるだけでなく、延長された検出期間も提供され、それによって、前記の粒子又は各粒子のリアルタイム追跡の品質が向上し、また、前記の粒子又は各粒子に関して取得可能な情報量も増加する。
【0049】
更に、粒子検出装置のこの構成によって、複数の粒子のコヒーレントな照明が実現され、その結果、複数の粒子が相互に接近した際には、結果として生じるいずれかの近傍干渉効果によって、粒子検出装置の検出感度が向上する。
【0050】
上述の粒子検出装置の改善された検出能力は、前記の粒子又は各粒子を検出するための専用のモニタリング装置を不要にし、またそれによって、より簡潔でより廉価なモニタリング装置、例えば光学顕微鏡、スマートフォンカメラ又はより簡潔な光検出電子装置の使用を可能にするだけでなく、クライオ電子顕微鏡によって要求されるような特別な条件の代わりに、周囲条件下での前記の粒子又は各粒子の検出も可能にする。
【0051】
散乱光を検出し、前記の粒子又は各粒子を種々のやり方で、例えば以下に記載するようなやり方で調査するように、モニタリング装置を構成することができる。
【0052】
散乱光のコヒーレントな散乱強度、散乱光のインコヒーレントな散乱強度、散乱光のスペクトル、複数の方向にわたる散乱光の分布、及び/又は、1つ又は複数の粒子の動的な運動、好適にはストークス−アインシュタインの式による、前記の粒子又は各粒子の拡散定数を測定するように、モニタリング装置を構成することができる。
【0053】
散乱光の散乱強度を測定することによって、粒子の相互作用を調査することができる。例えば、散乱光の散乱強度を測定することによって、散乱強度における2次変化、前記の粒子又は各粒子のスペクトル応答若しくは前記の粒子又は各粒子の拡散定数の検出を介して、粒子結合イベント及び粒子結合解除イベントを調査することができる。
【0054】
更に、前記の粒子又は各粒子の散乱強度及びストークス−アインシュタインの式による拡散定数を同時に測定することによって、粒子の集合体と単一の比較的大きい粒子とが類似の散乱強度を示す場合であっても、それらを区別することができる。
【0055】
散乱光の検出を介して、前記の粒子又は各粒子の運動を追跡するように、モニタリング装置を構成することができる。前記の粒子又は各粒子の運動をそのように追跡することによって、前記の粒子又は各粒子の流体力学的な特性を調査することができる。
【0056】
前記の粒子又は各粒子の放射スペクトルを測定するように、モニタリング装置を構成することができる。これによって、前記の粒子又は各粒子のスペクトルの特徴に基づいて、それらの粒子を識別することができる。
【0057】
誘導光によって前記の粒子又は各粒子を照明することによって生じ、また前記の管路壁又は各管路壁を通過することによって管路から放出された蛍光を検出するように、モニタリング装置を構成することができる。
【0058】
コヒーレントに散乱した光及び/又はインコヒーレントに散乱した光を検出し、またオプションとして、誘導光によって前記の粒子又は各粒子を照明することによって生じ、また前記の管路壁又は各管路壁を通過することによって管路から放出された、コヒーレントに散乱した光のスペクトル及び/又はインコヒーレントに散乱した光のスペクトルを検出するように、モニタリング装置を構成することができる。
【0059】
オプションとして、コヒーレントに散乱した光及び/又はインコヒーレントに散乱した光の検出を介して、前記の粒子又は各粒子の運動を追跡するように、モニタリング装置を構成することができる。
【0060】
散乱光を検出するためのモニタリング装置のこの構成によって、金属、半導体又は有機の造影剤を使用して、前記の粒子又は各粒子の分極率を高めることができ、またそれによって粒子検出装置の検出感度を高めることができる。
【0061】
更に、散乱光及び蛍光の両光を検出するためのモニタリング装置のこの構成によって、例えば、段階的なブリーチングを介して蛍光粒子の数を計数するために、若しくは、前記の粒子又は各粒子の放射スペクトルを測定して、それらの粒子のスペクトル特徴に基づいて前記の粒子又は各粒子を識別するために、散乱光及び蛍光を同時に測定することができる。
【0062】
粒子検出装置において使用される管路の選択を、係数の範囲、例えば粒子サイズ、化学組成、機器の可用性等に依存して変更することができる。
【0063】
中空管路の開口幅を、検出されるべき前記の粒子又は各粒子のサイズに依存して変更することができる。例えば、誘導光の波長よりも小さい少なくとも1つの粒子を搬送するように、管路を配置することができる。
【0064】
検出されるべき前記の粒子又は各粒子のサイズの検出を実現するために、管路を種々のやり方で形成することができる。管路を、
・導波管、
・チップベースのプラットフォーム、オプションとしてリソグラフィにより形成されたチップベースのプラットフォーム、
・細管、
・光ファイバ、
に形成することができるか、又は、そのようなものとして形成することができる。
【0065】
光ファイバは、シングルモードの光ファイバであってよい。そのような光ファイバを使用することによって、管路経路に沿った光の誘導方式が改善され、またそれによって、その管路経路に存在する前記の粒子又は各粒子の結果として生じる照明及びそれに続く光の散乱も改善される。
【0066】
好適な実施の形態
以下では、実施の形態及び図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。