【文献】
WU QINGGUO et al.,Blue-Luminescent/Electroluminescent Zn(II) Compounds of 7-Azaindole and N-(2-Pyridyl)-7-azaindole: Zn(7-azaindole)2(CH3COO)2, Zn(NPA)(CH3COO)2, and Zn(NPA)((S)-(+)-CH3CH2CH(CH3)COO)2 (NPA=N-(2-Pyridyl)-7-azaindole),Inorganic Chemistry,2000年11月13日,Vol. 39, No. 23,p. 5248-5254
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記亜鉛錯体は、少なくとも2つの配位子Lを含有する多核金属錯体であり、配位子Lの少なくとも一方は、2つの金属原子と配位結合し、少なくとも1つの他方の配位子Lは、前記亜鉛錯体の金属中心に終端として結合している、請求項1から10までのいずれか1項に記載の素子。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電子マトリックス材料用のp型ドーパントとしての亜鉛錯体の使用に関する。
【0002】
有機電子工学では主に2つの重要な商業的技術分野を際立たせることができる。第1の技術分野は、光から電流への変換及びその逆の変換のための有機マトリックス材料の適用を取り扱い、他の分野は、有機半導体材料を用いた電気素子の構成に焦点を当てている。第1に挙げたカテゴリーの例は、例えば、
図1に略示的に示した、光を電気信号又は電流に変換する受光器及び有機太陽電池、及び有機電子材料を用いて光を作り出すことができる有機発光ダイオード(OLED)(
図2参照)である。第2の技術分野では、例えば、
図3に略示的に示した、ドーピングが電極と半導体材料との間の接触抵抗を低減する有機電界効果トランジスタ、又は例えば独国特許出願公開第102010041331号明細書(DE 10 2010 041 331 A1)に詳細に記載されているバイポーラトランジスタが該当する。
【0003】
全ての適用は、主な機能性の構成要素として、組成に依存して多様な伝導メカニズムを示す電気的な輸送層を含むことが共通している。一般に、有機材料の固有のp型(正孔)伝導性又はn型(電子)伝導性が区別される。これらの種類の有機物質の電気特性は、頻繁に、素子の有効な利用にとって不十分であるため、これらの種類の有機物質に、層の電気特性を改善するといわれる付加的な化合物が添加される。通常では、これは、金属化合物又は他の有機化合物によるドーピングによって行われる。伝導性の有意な改善を達成するための発端は、金属錯体の添加である。
【0004】
例えば、国際公開第2005086251号(WO 2005 086251 A2)は、とりわけ次の構造も示すことができるn型伝導性の層を製造するためのドーパントを記載している:
【化1】
【0005】
この種の化合物の構造を、文献では「パドルホイール型錯体(paddle wheel complex)」ともいう。殊に、この刊行物は、有機半導体マトリックス材料の電気特性を変更するための、有機半導体マトリックス材料のドーピングのためのn型ドーパントとしての金属錯体の使用を記載している。これらの紹介された化合物は、マトリックス材料に関して、n型ドーパントとして使用可能であるとされている。
【0006】
独国特許出願公開第102012209520号明細書(DE 10 2012 209 520 A1)は、有機電子素子用のp型ドーピング材として5〜7族の金属錯体を請求していて、かつこの関連で、二核金属錯体としてパドルホイール構造を形成する、クロム及びモリブデンを基礎とする錯化合物を記載している。
【0007】
同様に、国際公開第2008/154915号(WO 2008/154915 A1)にロジウムを基礎とするp型ドーピング材の例として紹介された、テトラ−トリフルオロ酢酸二ロジウム錯体も、パドルホイール構造を基礎とする。
【0008】
国際公開第2013/182389号(WO 2013/182389 A2)は、p型ドーパントとしての、13〜15族の金属錯体の使用を記載している。ここでは、殊に、酸化数III及びVのビスマスを含むビスマス錯体が紹介されている。これらの示された錯体は、それぞれ、単独の中心原子を有しているだけである。
【0009】
国際公開第2011/033023号(WO 2011/033023 A1)は、p型ドーピング材としての、多核であってよい銅錯体、とりわけCu(I)錯体を記載している。多核銅錯体は、この場合、常に偶数の銅原子、例えば2、4又は6の銅原子により特徴付けられている。
【0010】
本発明の課題は、有機電子マトリックス材料、殊に正孔輸送体中でp型ドーパントとして適していて、かつこの層を備えた素子の効率を高める更なる材料を見つけ出すことである。
【0011】
この課題は、請求項1に記載の有機電子素子により解決される。
【0012】
したがって、マトリックスを備えた有機電子素子において、このマトリックスは、p型ドーパントとして亜鉛錯体を含み、この亜鉛錯体は、また、次の構造:
【化2】
[式中、R
1及びR
2は、互いに無関係に、酸素、硫黄、セレン、NH又はNR
4であることができ、ここで、R
4は、アルキル又はアリールを含む群から選択されていて、かつR
3と結合されていてよく;かつ
R
3は、アルキル、長鎖アルキル、シクロアルキル、ハロゲンアルキル、アリール、アリーレン、ハロゲンアリール、ヘテロアリール、ヘテロアリーレン、ヘテロシクロアルキレン、ヘテロシクロアルキル、ハロゲンヘテロアリール、アルケニル、ハロゲンアルケニル、アルキニル、ハロゲンアルキニル、ケトアリール、ハロゲンケトアリール、ケトヘテロアリール、ケトアルキル、ハロゲンケトアルキル、ケトアルケニル、ハロゲンケトアルケニル、ハロゲンアルキルアリール、ハロゲンアルキルヘテロアリールを含む群から選択されていて、ここで、適切な基の場合、1つ又は複数の隣接しないCH
2基は、互いに無関係に、−O−、−S−、−NH−、−NR°°°−、−SiR°R°°−、−CO−、−COO−、−COR°OR°°−、−OCO−、−OCO−O−、−SO
2−、−S−CO−、−CO−S−、−O−CS−、−CS−O−、−CY1=CY2又は−C≡C−により置き換えられていてよいが、ただしO及び/又はS原子は、互いに直接結合されていておらず、同様に、任意に、好ましくは1〜30のC原子を含むアリール又はヘテロアリールにより置き換えられている(末端のCH
3基は、CH
2−Hの意味で、CH
2基と同様であると解釈される)]の少なくとも1つの配位子Lを含む、マトリックスを備えた有機電子素子が提案される。
【0013】
R°、R°°、Y1及びY2は、例えば、それぞれ互いに無関係に、水素、アルキル又はアリールからなる群から選択されていてよい。R°°°は、例えば、アルキル及びアリールからなる群から選択されていてよい。
【0014】
意外にも、記載された形の亜鉛錯体は、有機電子素子中でのマトリックス材料用のp型ドーパントとして使用することができることが明らかとなった。
【0015】
本願発明の発明者は、記載された形の亜鉛錯体が、p型ドーピングのために利用される、上述の金属原子(元素周期表の5〜7、13〜15族並びにCuなど)の、配位子Lとの従来型の金属錯体よりも、その構造においてはるかに高い多様性を許容することを知見した。
【0016】
亜鉛錯体についてのいくつかの例は、
図5〜8に示されている。
【0017】
例えば、亜鉛を用いて、単核錯体も、多核錯体も同じように形成可能である。例えば、亜鉛と上記の配位子との多核錯体は、パドルホイール構造にも、金属中心の偶数の数にも限定されない。構造のこの種の多彩さは、金属原子と記載された形の配位子(配位子L)との以前に調査された組み合わせのいずれにも観察されていなかった。
【0018】
発明者は、この多彩さが、亜鉛錯体を、有機電子素子中のマトリックス材料用に特に適したp型ドーパントにすることを確認した。
【0019】
意外にも、本発明による亜鉛錯体によって、この亜鉛錯体の昇華温度とは十分に無関係に、有機電子素子のマトリックス中のドーピング強度を調節することが可能である。ドーピング強度と金属錯体の昇華温度とのこの種の明らかな無関係化は、本発明による亜鉛錯体にとって特徴的である。
【0020】
ドーピング強度は、例えば、多くの従来型のドーピング材の場合よりも簡単にそれぞれのマトリックスに合わせることもできる。更に、記載された材料は、簡単に製造可能であり、かつ手間のかかる製造方法を必要としない。更に、亜鉛錯体は、多様なソースから、マトリックス材料と共に同時蒸発によって簡単に析出することができるので、十分に定義された組成を示すドープされたマトリックス層が形成され、ここで伝導性をドーピング材の濃度によってそれぞれの必要条件に合わせることができる。
【0021】
次に、いくつかの概念の定義を簡単に示す:
本発明の意味において、「水素」の概念は、水素(
1H)だけに限定されず、殊に水素の他の全ての同位体、殊に重水素(
2H若しくはD)を含む。
【0022】
本発明の意味において、「有機電子素子」の表記は、殊に有機トランジスタ、有機発光ダイオード、発光電気化学セル、有機太陽電池、フォトダイオード及び有機光起電力素子の全般を意味し、かつ/又はこれらを含む。
【0023】
本発明の意味において、「p型ドーパント」の表記は、殊に、ルイス酸性度を示し、かつ/又はマトリックス材料と錯体を形成することができる材料を含むか又はこの材料を意味し、ここでこの材料は(形式的な場合であっても)ルイス酸性に作用する。
【0024】
この種の亜鉛錯体−マトリックス材料(正孔導体)は、例えば次の構造を示すことができる:
【化3】
【0025】
この場合、例えば、NPB(N,N′−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N′−ビス(フェニル)−ベンジジン)の使用下での正孔生成及び正電荷の非局在化が示されている。この場合、亜鉛錯体の場合には、簡素化して亜鉛中心原子だけが示されている。共鳴混成体−極限構造の数は、示された共鳴混成体−極限構造の数よりもはるかに多い。全ての極限構造の表示について、単にスペースの理由から省略した。
【0026】
電荷は、「ホッピング」によって、1つの正孔輸送分子から最も近い正孔輸送分子へと伝わることができる。この場合、伝導経路は、電荷輸送にとっては役立つが必要ではない。
【0027】
一般的な基の定義:明細書及び特許請求の範囲内では、例えばアルキル、アルコキシ、アリール等のような一般的な基が、請求され、かつ記載されている。他に記載されていない場合には、好ましくは、一般的に記載された基の中で次の基が、本発明の範囲内で使用される:
アルキル:線状及び分枝状のC
1〜C
8−アルキル、
長鎖アルキル:線状及び分枝状のC
5〜C
20−アルキル
アルケニル:C
2〜C
6−アルケニル
シクロアルキル:C
3〜C
8−シクロアルキル、更にアダマンチル及びデカヒドロナフチル
アルキレン:次のものを含む群から選択される:
メチレン;1,1−エチレン;1,2−エチレン;1,1−プロピリデン;1,2−プロピレン;1,3−プロピレン;2,2−プロピリデン;ブタン−2−オール−1,4−ジイル;プロパン−2−オール−1,3−ジイル;1,4−ブチレン;シクロヘキサン−1,1−ジイル;シクロヘキサン−1,2−ジイル;シクロヘキサン−1,3−ジイル;シクロヘキサン−1,4−ジイル;シクロペンタン−1,1−ジイル;シクロペンタン−1,2−ジイル;及びシクロペンタン−1,3−ジイル
アリール:300Da未満の分子量を示す芳香族化合物から選択される。
【0028】
アリーレン:次のものを含む群から選択される:
1,2−フェニレン;1,3−フェニレン;1,4−フェニレン;1,2−ナフチレン;1,3−ナフタレニレン;1,4−ナフチレン;2,3−ナフチレン;1−ヒドロキシ−2,3−フェニレン;1−ヒドロキシ−2,4−フェニレン;1−ヒドロキシ−2,5−フェニレン;及び1−ヒドロキシ−2,6−フェニレン、
ヘテロアリール:次のものを含む群から選択される:
ピリジニル;ピリミジニル;ピラジニル;トリアゾリル;ピリダジニル;1,3,5−トリアジニル;キノリニル;イソキノリニル;キノキサリニル;イミダゾリル;ピラゾリル;ベンゾイミダゾリル;チアゾリル;オキサゾリジニル;ピロリル;チオフェニル;カルバゾリル;インドリル;及びイソインドリル、ここで、ヘテロアリールは、選択されたヘテロアリールの環中の全ての原子を介して化合物と結合されていてよい。
【0029】
ヘテロアリーレン:次のものを含む群から選択される:
ピリジンジイル;キノリンジイル;ピラゾジイル;ピラゾールジイル;トリアゾールジイル;ピラジンジイル;チオフェンジイル;及びイミダゾールジイル、ここで、ヘテロアリーレンは、化合物中で、選択されたヘテロアリールの環中の任意の原子を介して架橋として機能し、特に好ましくは、ピリジン−2,3−ジイル;ピリジン−2,4−ジイル;ピリジン−2,5−ジイル;ピリジン−2,6−ジイル;ピリジン−3,4−ジイル;ピリジン−3,5−ジイル;キノリン−2,3−ジイル;キノリン−2,4−ジイル;キノリン−2,8−ジイル;イソキノリン−1,3−ジイル;イソキノリン−1,4−ジイル;ピラゾール−1,3−ジイル;ピラゾール−3,5−ジイル;トリアゾール−3,5−ジイル;トリアゾール−1,3−ジイル;ピラジン−2,5−ジイル;及びイミダゾール−2,4−ジイル、チオフェン−2,5−ジイル、チオフェン−3,5−ジイル;次のものを含む群から選択される−C
1〜C
6−ヘテロシクロアルキル:ピペリジニル;ピペリジン;1,4−ピペラジン、テトラヒドロチオフェン;テトラヒドロフラン;1,4,7−トリアザシクロノナン;1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン;1,4,7,10,13−ペンタアザシクロペンタデカン;1,4−ジアザ−7−チア−シクロノナン;1,4−ジアザ−7−オキサ−シクロノナン;1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン;1,4−ジオキサン;1,4,7−トリチア−シクロノナン;ピロリジン;及びテトラヒドロピラン、ここで、ヘテロアリールは、選択されたヘテロアリールの環中の全ての原子を介してC
1〜C
6−アルキルと結合されていてよい。
【0030】
ヘテロシクロアルキレン:次のものを含む群から選択される:
ピペリジン−1,2−イレン;ピペリジン−2,6−イレン;ピペリジン−4,4−イリデン;1,4−ピペラジン−1,4−イレン;1,4−ピペラジン−2,3−イレン;1,4−ピペラジン−2,5−イレン;1,4−ピペラジン−2,6−イレン;1,4−ピペラジン−1,2−イレン;1,4−ピペラジン−1,3−イレン;1,4−ピペラジン−1,4−イレン;テトラヒドロチオフェン−2,5−イレン;テトラヒドロチオフェン−3,4−イレン;テトラヒドロチオフェン−2,3−イレン;テトラヒドロフラン−2,5−イレン;テトラヒドロフラン−3,4−イレン;テトラヒドロフラン−2,3−イレン;ピロリジン−2,5−イレン;ピロリジン−3,4−イレン;ピロリジン−2,3−イレン;ピロリジン−1,2−イレン;ピロリジン−1,3−イレン;ピロリジン−2,2−イリデン;1,4,7−トリアザシクロノナ−1,4−イレン;1,4,7−トリアザシクロノナ−2,3−イレン;1,4,7−トリアザシクロノナ−2,9−イレン;1,4,7−トリアザシクロノナ−3,8−イレン;1,4,7−トリアザシクロノナ−2,2−イリデン;1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカ−1,4−イレン;1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカ−1,8−イレン;1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカ−2,3−イレン;1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカ−2,5−イレン;1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカ−1,2−イレン;1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカ−2,2−イリデン;1,4,7,10−テトラアザシクロドデカ−1,4−イレン;1,4,7,10−テトラアザシクロドデカ−1,7−イレン;1,4,7,10−テトラアザシクロドデカ−1,2−イレン;1,4,7,10−テトラアザシクロドデカ−2,3−イレン;1,4,7,10−テトラアザシクロドデカ−2,2−イリデン;1,4,7,10,13−ペンタアザシクロペンタデカ−1,4−イレン;1,4,7,10,13−ペンタアザシクロペンタデカ−1,7−イレン;1,4,7,10,13−ペンタアザシクロペンタデカ−2,3−イレン;1,4,7,10,13−ペンタアザシクロペンタデカ−1,2−イレン;1,4,7,10,13−ペンタアザシクロペンタデカ−2,2−イリデン;1,4−ジアザ−7−チア−シクロノナ−1,4−イレン;1,4−ジアザ−7−チア−シクロノナ−1,2−イレン;1,4−ジアザ−7−チア−シクロノナ−2,3−イレン;1,4−ジアザ−7−チア−シクロノナ−6,8−イレン;1,4−ジアザ−7−チア−シクロノナ−2,2−イリデン;1,4−ジアザ−7−オキサ−シクロノナ−1,4−イレン;1,4−ジアザ−7−オキサ−シクロノナ−1,2−イレン;1,4−ジアザ−7−オキサ−シクロノナ−2,3−イレン;1,4−ジアザ−7−オキサ−シクロノナ−6,8−イレン;1,4−ジアザ−7−オキサ−シクロノナ−2,2−イリデン;1,4−ジオキサン−2,3−イレン;1,4−ジオキサン−2,6−イレン;1,4−ジオキサン−2,2−イリデン;テトラヒドロピラン−2,3−イレン;テトラヒドロピラン−2,6−イレン;テトラヒドロピラン−2,5−イレン;テトラヒドロピラン−2,2−イリデン;1,4,7−トリチア−シクロノナ−2,3−イレン;1,4,7−トリチア−シクロノナ−2,9−イレン;及び1,4,7−トリチア−シクロノナ−2,2−イリデン、
ヘテロシクロアルキル:次のものを含む群から選択される:
ピロリニル;ピロリジニル;モルホリニル;ピペリジニル;ピペラジニル;ヘキサメチレンイミン;1,4−ピペラジニル;テトラヒドロチオフェニル;テトラヒドロフラニル;1,4,7−トリアザシクロノナニル;1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカニル;1,4,7,10,13−ペンタアザシクロペンタデカニル;1,4−ジアザ−7−チアシクロノナニル;1,4−ジアザ−7−オキサ−シクロノナニル;1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル;1,4−ジオキサニル;1,4,7−トリチアシクロノナニル;テトラヒドロピラニル;及びオキサゾリジニル、ここで、ヘテロシクロアルキルは、選択されたヘテロシクロアルキルの環中の全ての原子を介して化合物と結合されていてよい。
【0031】
アミン:基−N(R)
2、ここで、各Rは、水素;C
1〜C
6−アルキル;C
1〜C
6−アルキル−C
6H
5;及びフェニルから無関係に選択されていて、ここで、双方のR′が、C
1〜C
6−アルキルである場合、双方のR′は、−NC
3〜NC
5の複素環式の環を形成することができ、ここで、残りのアルキル鎖は、複素環式の環のアルキル置換基を形成する。
【0032】
ハロゲン:F;Cl;Br及びIを含む群から選択される。
【0033】
ハロゲンアルキル:モノハロゲン化、ジハロゲン化、トリハロゲン化、ポリハロゲン化及びペルハロゲン化された線状及び分枝状のC
1〜C
8−アルキル、特に好ましくは−CF
3を含む群から選択される。
【0034】
擬ハロゲン:−CN、−SCN、−OCN、N
3、−CNO、−SeCNを含む群から選択される。
【0035】
カルボキシラート:基−C(O)OR、ここで、Rは、次のものから選択されている:水素;C
1〜C
6−アルキル;フェニル;C
1〜C
6−アルキル−C
6H
5、
カルボニル:基−C(O)R、ここで、Rは次のものから選択されている:
水素;C
1〜C
6−アルキル;フェニル;C
1〜C
6−アルキル−C
6H
5及び次の群から選択されるアミン:−NR′
2、ここで、各R′は、次のものから無関係に選択されている:水素;C
1〜C
6−アルキル;C
1〜C
6−アルキル−C
6H
5;及びフェニル、ここで、双方のR′が、C
1〜C
6−アルキルである場合、双方のR′は、−NC
3〜NC
5の複素環式の環を形成することができ、ここで、残りのアルキル鎖は、複素環式の環のアルキル置換基を形成する。
【0036】
他に言及されていない限り、次の基が、一般的な基の定義中の更に好ましい基である:
アルキル:線状及び分枝状のC
1〜C
6−アルキル、
長鎖アルキレン:線状及び分枝状のC
5〜C
10−アルキル、好ましくはC
6〜C
8−アルキル、
アルケニル:C
3〜C
6−アルケニル、
シクロアルキル:C
6〜C
8−シクロアルキル、
アルキレン:次のものを含む群から選択される:
メチレン;1,2−エチレン;1,3−プロピレン;ブタン−2−オール−1,4−ジイル;1,4−ブチレン;シクロヘキサン−1,1−ジイル;シクロヘキサン−1,2−ジイル;シクロヘキサン−1,4−ジイル;シクロペンタン−1,1−ジイル;及びシクロペンタン−1,2−ジイル、
アリール:次のものを含む群から選択される:
フェニル;ビフェニル;ナフタレニル;アントラセニル;及びフェナントレニル、
アリーレン:次のものを含む群から選択される:
1,2−フェニレン;1,3−フェニレン;1,4−フェニレン;1,2−ナフチレン;1,4−ナフタレニレン;2,3−ナフチレン及び1−ヒドロキシ−2,6−フェニレン、
ヘテロアリール:次のものを含む群から選択される:
ピリジニル;ピリミジニル;キノリニル;ピラゾリル;トリアゾリル;イソキノリニル;イミダゾリル;及びオキサゾリジニル、ここで、ヘテロアリールは、選択されたヘテロアリールの環中の全ての原子を介して化合物と結合されていてよい。
【0037】
ヘテロアリーレン:次のものを含む群から選択される:
ピリジン−2,3−ジイル;ピリジン−2,4−ジイル;ピリジン−2,6−ジイル;ピリジン−3,5−ジイル;キノリン−2,3−ジイル;キノリン−2,4−ジイル;イソキノリン−1,3−ジイル;イソキノリン−1,4−ジイル;ピラゾール−3,5−ジイル;及びイミダゾール−2,4−ジイル、
ヘテロシクロアルキル:次のものを含む群から選択される:
ピロリジニル;モルホリニル;ピペリジニル;ピペリジニル;1,4−ピペラジニル;テトラヒドロフラニル;1,4,7−トリアザシクロノナニル;1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカニル;1,4,7,10,13−ペンタアザシクロペンタデカニル;1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル;及びピペラジニル、ここでヘテロアリールは、選択されたヘテロアリールの環中の全ての原子を介して化合物と結合されていてよい。
【0038】
ヘテロシクロアルキレン:次のものを含む群から選択される:
ピペリジン−2,6−イレン;ピペリジン−4,4−イリデン;1,4−ピペラジン−1,4−イレン;1,4−ピペラジン−2,3−イレン;1,4−ピペラジン−2,6−イレン;テトラヒドロチオフェン−2,5−イレン;テトラヒドロチオフェン−3,4−イレン;テトラヒドロフラン−2,5−イレン;テトラヒドロフラン−3,4−イレン;ピロリジン−2,5−イレン;ピロリジン−2,2−イリデン;1,4,7−トリアザシクロノナ−1,4−イレン;1,4,7−トリアザシクロノナ−2,3−イレン;1,4,7−トリアザシクロノナ−2,2−イリデン;1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカ−1,4−イレン;1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカ−1,8−イレン;1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカ−2,3−イレン;1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカ−2,2−イリデン;1,4,7,10−テトラアザシクロドデカ−1,4−イレン;1,4,7,10−テトラアザシクロドデカ−1,7−イレン;1,4,7,10−テトラアザシクロドデカ−2,3−イレン;1,4,7,10−テトラアザシクロドデカ−2,2−イリデン;1,4,7,10,13−ペンタアザシクロペンタデカ−1,4−イレン;1,4,7,10,13−ペンタアザシクロペンタデカ−1,7−イレン;1,4−ジアザ−7−チア−シクロノナ−1,4−イレン;1,4−ジアザ−7−チア−シクロノナ−2,3−イレン;1,4−ジアザ−7−チエインシクロノナ−2,2−イリデン;1,4−ジアザ−7−オキサ−シクロノナ−1,4−イレン;1,4−ジアザ−7−オキサ−シクロノナ−2,3−イレン;1,4−ジアザ−7−オキサ−シクロノナ−2,2−イリデン;1,4−ジオキサン−2,6−イレン;1,4−ジオキサン−2,2−イリデン;テトラヒドロピラン−2,6−イレン;テトラヒドロピラン−2,5−イレン;及びテトラヒドロピラン−2,2−イリデン、−C
1〜C
6−アルキル−ヘテロシクロアルキル、ここで、ヘテロシクロアルキルは、次のものを含む群から選択される:ピペリジニル;1,4−ピペラジニル;テトラヒドロフラニル;1,4,7−トリアザシクロノナニル;1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカニル;1,4,7,10,13−ペンタアザシクロペンタデカニル;1,4,7,10−テトラアザシクロドデカニル;及びピロリジニル、ここで、ヘテロシクロアルキルは、選択されたヘテロシクロアルキルの環中の全ての原子を介して化合物と結合されていてよい。
【0039】
アミン:基−N(R)
2、ここで、各Rは、次のものから無関係に選択されている:水素;C
1〜C
6−アルキル;及びベンジル、
ハロゲン:次のものを含む群から選択される:F及びCl、
カルボキシラート:基−C(O)OR、ここで、Rは、水素;C
1〜C
6−アルキル;及びベンジルから選択されている。
【0040】
カルボニル:基:−C(O)R、ここで、Rは、次のものから選択されている:水素;C
1〜C
6−アルキル;ベンジル及び次の群から選択されるアミン:−NR′
2、ここで、各R′は、次のものから無関係に選択される:水素;C
1〜C
6−アルキル;及びベンジル。
【0041】
本発明の好ましい実施形態の場合に、R
3は、ハロゲンアルキル、特に好ましくは1〜8の炭素原子、更に好ましくは1〜4の炭素原子を含むペルフルオロアルキル、ハロゲンアリール、特に好ましくはペルフルオロアリール、ハロゲンアルキルアリール、特に好ましくは(ペル)フルオロアルキルアリール及びハロゲンヘテロアリール、特に好ましくはペルフルオロヘテロアリールである。
【0042】
更に、例えば、配位子Lとして好ましくは次のものが挙げられる:フッ化された安息香酸、例えば2−(トリフルオロメチル)安息香酸;3,5−ジフルオロ安息香酸;3−ヒドロキシ−2,4,6−トリヨード安息香酸;3−フルオロ−4−メチル安息香酸;3−(トリフルオロメトキシ)安息香酸;4−(トリフルオロメトキシ)安息香酸;4−クロロ−2,5−ジフルオロ安息香酸;2−クロロ−4,5−ジフルオロ安息香酸;2,4,5−トリフルオロ安息香酸;2−フルオロ安息香酸;4−フルオロ安息香酸;2,3,4−トリフルオロ安息香酸;2,3,5−トリフルオロ安息香酸;2,3−ジフルオロ安息香酸;2,4−ビス(トリフルオロメチル)安息香酸;2,4−ジフルオロ安息香酸;2,5−ジフルオロ安息香酸;2,6−ビス(トリフルオロメチル)安息香酸;2,6−ジフルオロ安息香酸;2−クロロ−6−フルオロ安息香酸;2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)安息香酸;2−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)安息香酸;2−フルオロ−6−(トリフルオロメチル)安息香酸;3,4,5−トリフルオロ安息香酸;3,4−ジフルオロ安息香酸;3,5−ビス(トリフルオロメチル)安息香酸;3−(トリフルオロメチル)安息香酸;3−クロロ−4−フルオロ安息香酸;3−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)安息香酸;3−フルオロ安息香酸;4−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)安息香酸;4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)安息香酸;5−フルオロ−2−メチル安息香酸;2−(トリフルオロメトキシ)安息香酸;2,3,5−トリクロロ安息香酸;4−(トリフルオロメチル)安息香酸;ペンタフルオロ安息香酸;2,3,4,5−テトラフルオロ安息香酸、
フッ化された又はフッ化されていないフェニル酢酸、例えば2−フルオロ−フェニル酢酸;3−フルオロ−フェニル酢酸;4−フルオロ−フェニル酢酸;2,3−ジフルオロ−フェニル酢酸;2,4−ジフルオロ−フェニル酢酸;2,6−ジフルオロ−フェニル酢酸;3,4−ジフルオロ−フェニル酢酸;3,5−ジフルオロ−フェニル酢酸;ペンタフルオロ−フェニル酢酸;2−クロロ−6−フルオロ−フェニル酢酸;2−クロロ−3,6−ジフルオロ−フェニル酢酸;3−クロロ−2,6−ジフルオロ−フェニル酢酸;3−クロロ−4−フルオロ−フェニル酢酸;5−クロロ−2−フルオロ−フェニル酢酸;2,3,4−トリフルオロ−フェニル酢酸;2,3,5−トリフルオロ−フェニル酢酸;2,3,6−トリフルオロ−フェニル酢酸;2,4,5−トリフルオロ−フェニル酢酸;2,4,6−トリフルオロ−フェニル酢酸;3,4,5−トリフルオロ−フェニル酢酸;3−クロロ−2−フルオロ−フェニル酢酸;α−フルオロ−フェニル酢酸;4−クロロ−2−フルオロ−フェニル酢酸;2−クロロ−4−フルオロ−フェニル酢酸;α,α−ジフルオロ−フェニル酢酸;エチル2,2−ジフルオロ−2−フェニルアセタート;及びフッ化された又はフッ化されていない酢酸、例えばメチル−トリフルオロアセタート;アリル−トリフルオロアセタート;エチル−トリフルオロアセタート;イソプロピル−トリフルオロアセタート;2,2,2−トリフルオロエチル−トリフルオロアセタート;ジフルオロ酢酸;トリフルオロ酢酸;メチル−クロロジフルオロアセタート;エチル−ブロモジフルオロアセタート;クロロジフルオロ酢酸;エチル−クロロフルオロアセタート;エチル−ジフルオロアセタート;(3−クロロフェニル)−ジフルオロ酢酸;(3,5−ジフルオロフェニル)−ジフルオロ酢酸;(4−ブチルフェニル)ジフルオロ酢酸;(4−tert−ブチルフェニル)ジフルオロ酢酸;(3,4−ジメチルフェニル)−ジフルオロ酢酸;(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−ジフルオロ酢酸;(4−クロロフェニル)−ジフルオロ酢酸;2−ビフェニル−3′,5′−ジフルオロ酢酸;3−ビフェニル−3′,5′−ジフルオロ酢酸;4−ビフェニル−3′,5′−ジフルオロ酢酸;2−ビフェニル−3′,4′−ジフルオロ酢酸;3−ビフェニル−3′,4′−ジフルオロ酢酸;4−ビフェニル−3′,4′−ジフルオロ酢酸及び2,2−ジフルオロ−プロピオン酸、又はこれらの比較的高い同族体。配位子Lが酸性基を含む場合、これらの基は、好ましい実施形態において脱プロトンされて存在してよい。
【0043】
フッ素のようなハロゲンは、その高い電気陰性度に基づいて強い電子求引性作用を示す。これは、錯体の電子特性の適合のために重要な意味がある。殊に、電子求引性基は、亜鉛錯体のルイス酸性度を強め、それと共に亜鉛錯体のp型ドーパントとしての作用を強めることができる。更に、ハロゲン及びハロゲンアルキルのような電子求引性基は、本発明による亜鉛錯体に関する安定化作用を示す。
【0044】
これとは別の好ましい実施形態は、配位子Lの基R
3が、次のものを含む群から選択されている亜鉛錯体を含む本発明による有機電子素子である:
【化4】
[式中、Y
1〜Y
5は、互いに無関係に、C−H、C−D、C−F、C−NO
2、C−CN、C−ハロゲン、C−擬ハロゲン、N又はC−C
nF
2n+1(ここで、n=1〜10)、殊にC−CF
3(つまりn=1)を含む群から選択されている]。
【0045】
この種の亜鉛錯体は、特に安定であり、したがって、特にp型ドーパントとして利用するために良好に適している。
【0046】
別の実施形態の場合に、R
3は、次のものを含む群から選択されている:
【化5】
[式中、Y
1〜Y
7は、互いに無関係に、C−H、C−D、C−F、C−NO
2、C−CN、C−ハロゲン、C−擬ハロゲン、N又はC−C
nF
2n+1(ここで、n=1〜10)、殊にC−CF
3(つまりn=1)を含む群から選択されている]。
【0047】
好ましい実施形態の場合に、R
3は、次のものを含む群から選択されている:
【化6】
[式中、Y
1〜Y
7は、互いに無関係に、C−H、C−D、C−F、C−NO
2、C−CN、C−ハロゲン、C−擬ハロゲン、N又はC−C
nF
2n+1(ここで、n=1〜10)、殊にC−CF
3(つまりn=1)を含む群から選択されている]。
【0048】
好ましい実施形態の場合に、R
3は、次のものを含む群から選択されている:
【化7】
【0049】
本発明の別の態様の場合に、R
3は、ハロゲン化された、好ましくはペルハロゲン化された及び/又は擬ハロゲン化されたプテリジン、イソプテリジン、ナフチリジン、キノキサリン、アザキノキサリンを含む群から選択されている。
【0050】
別の実施形態の場合に、金属錯体(マトリックス材料の不存在で)は、ルイス酸性であり、つまりこの金属錯体は、電子対アクセプターとして作用する。このことは、マトリックス材料との相互作用のために特に好ましいことが明らかになった。
【0051】
本発明の他の好ましい態様の場合に、金属錯体(マトリックス材料の不存在で)は、少なくとも1つの空いた又は部分的に利用可能な配位サイトを有する。このことも、同様に、マトリックス材料との相互作用のために特に好ましいことが明らかになった。
【0052】
本発明の特に好ましくい実施形態は、亜鉛錯体の配位子Lの双方の基R
1及びR
2が、それぞれ酸素原子である本発明による有機電子素子に関する。この場合、配位子Lはカルボキシラート配位子である。
【0053】
本発明の発明者は、カルボキシラートの亜鉛錯体が安定であり、かつ同時に特に有効なp型ドーパントであることを知見した。カルボキシラート配位子は、更に、容易に入手可能であり、かつ安価である、というのもそれぞれの所属するカルボン酸は広く普及されていてかつ低コストであるためである。
【0054】
別の好ましい実施形態の場合に、金属錯体は、置換されていない、部分的にフッ化された又は過フッ化された有機カルボン酸の群から選択される少なくとも1つの配位子Lを含むことができる。有機カルボン酸は、一般に、脂肪族飽和モノカルボン酸;脂肪族不飽和モノカルボン酸;脂肪族飽和ジカルボン酸;脂肪族飽和トリカルボン酸;脂肪族不飽和ジカルボン酸;芳香族カルボン酸;複素環式カルボン酸;脂肪族不飽和環式モノカルボン酸の群から選択されてよい。特に好ましい部分的にフッ化された又は過フッ化された配位子Lは、酢酸、フェニル酢酸及び/又は安息香酸の置換された又は非置換の化合物から選択され、かつこれらは例示的に先に挙げられている。フッ化されていない、部分的にフッ化された又は過フッ化された酢酸が特に好ましい。
【0055】
これらの配位子は、その電子求引性置換基に基づいて、特に良好に適したカルボキシラート配位子である、というのも、これらは、特に、亜鉛錯体の高いルイス酸性度を可能にするためである。
【0056】
本発明の別の態様の場合に、亜鉛錯体は、ヘテロレプティック錯体である。1つだけより多くの配位子形態を利用することにより、より大きな多彩さが可能となる。更に、錯体の1つ以上の亜鉛原子のルイス酸性度はより良好に制御でき、それにより特に有効なp型ドーパントを達成することができる。
【0057】
本発明の1の実施形態においては、亜鉛錯体が、配位子Lの他に、これとは異なる、結合原子(Haftatom)を介して亜鉛錯体の亜鉛中心原子に結合している少なくとも1つの配位子を含む本発明による素子に関する。結合原子は、例えば酸素であってよい。よって、配位子はアルコラートである。
【0058】
本発明の特に好ましい態様は、亜鉛錯体が、配位子Lの他に、炭素原子を介して亜鉛中心原子と結合している少なくとも1つの他の配位子L
Cを含む本発明による素子に関する。この亜鉛錯体は、つまり、少なくとも1つの亜鉛−炭素結合を含む。この形態の亜鉛錯体は、配位子Lを含む公知のp型ドーパントの構造を更に上回る、亜鉛錯体の構造の特に際だった多彩さを可能にする。
【0059】
少なくとも1つの他の配位子L
Cは、互いに無関係に、例えば置換された又は非置換の、分枝状又は線状の、及び環状のアルキルであってよい。同様に、置換された又は非置換のアリール又はヘテロアリールであってよい。例えば、本発明をこれらに限定するものではないが、メチル配位子、エチル配位子、プロピル配位子、イソプロピル配位子、ブチル配位子、イソブチル配位子、tert−ブチル配位子、ペンチル配位子、ヘキシル配位子、フェニル配位子、ベンジル配位子、ナフチル配位子、シクロヘキシル配位子、アダマンチル配位子、又は亜鉛の公知の有機金属錯体の他の典型的な配位子が、配位子L
Cとして機能することができる。
【0060】
発明者は、これらの錯体が、上記の配位子Lとの組み合わせで、亜鉛の配位幾何学において比類のない多彩さを許容することを知見した。殊に、発明者は、双方の種類の配位子L及びL
Cを有する亜鉛錯体が、意外にも優れたp型ドーパントであり、この亜鉛錯体は、有機電子素子中でのマトリックス材料のドーピングのために使用できることを確認した。殊に、この亜鉛錯体の構造的な多彩さは、冒頭に述べた特許文献に示された金属錯体よりもはるかに大きい。このことが、ドーピング強度及び温度安定性の観点での亜鉛錯体の適合に関して新たな可能性を許容する。
【0061】
好ましい実施形態の場合に、L
Cは、ハロゲンアルキルであってよい。このような錯体は、比較的高いルイス酸性度を示す。これは、ハロゲンがフッ素である場合に殊に当てはまる。
【0062】
特に好ましい実施形態の場合に、配位子L
Cは、少なくとも1つのフッ素原子を含んでよい。殊に、少なくとも1つの配位子L
Cは、互いに無関係に、フッ化された、分枝状又は線状の、及び環状のアルキレンの群から選択されていてよい。同様に、L
Cは、フッ化されたアリール又はヘテロアリールであってよい。例えば、本発明をこれらに限定するものではないが、これらの置換基の、メチル配位子、エチル配位子、プロピル配位子、イソプロピル配位子、ブチル配位子、イソブチル配位子、tert−ブチル配位子、ペンチル配位子、ヘキシル配位子、フェニル配位子、ベンジル配位子、ナフチル配位子、シクロヘキシル配位子、アダマンチル配位子、又は亜鉛の公知の有機金属錯体の他の典型的な配位子は、これらがフッ化により変性されている場合、つまり1つ以上の水素原子がフッ素原子に置き換えられた場合も、配位子L
Cとして機能することができる。例えば、類似の過フッ化された置換基を、配位子L
Cとして使用することもできる。
【0063】
本発明の発明者は、フッ化された配位子L
Cの使用により、亜鉛錯体のルイス酸性度を、フッ化されていない配位子L
Cと比べて更に高めることができ、これがドーピング材作用の更なる改善を引き起こすことを確認した。フッ素原子の数が高くなればそれだけ、この効果はより顕著になる。
【0064】
本発明の別の実施形態は、亜鉛が配位数4、5及び6を示すことができる亜鉛錯体を含む本発明による有機電子素子に関する。例えば、亜鉛は、多彩に四面体及び八面体に配位されている。
【0065】
発明者は、亜鉛の多様な配位の可能性が、亜鉛錯体を基礎とするp型ドーパントの多彩さを作り出すために役立つことも知見した。
【0066】
本発明の特に好ましい実施形態の場合に、亜鉛は、酸化数IIを示す。酸化数IIの亜鉛は、特に高いルイス酸性度を示し、したがって特にp型ドーパントとして適している。
【0067】
別の好ましい実施形態の場合に、亜鉛錯体は、単核錯体ではなく、多核金属錯体である。例えば、この金属錯体は、2、3、4、5、6又はそれ以上の金属原子を含んでいてよい。
【0068】
他の実施形態の場合に、亜鉛錯体は、三核金属錯体又は五核金属錯体である。亜鉛は、配位子Lを備えた他の金属錯体とは反対に、単核錯体、二核錯体、四核錯体及び六核錯体に限定されず、奇数の中心原子を備えた多核の亜鉛錯体の形成も可能にする。例えば、3又はそれどころか5つの亜鉛原子が錯体中に存在することができる。3つの亜鉛原子が存在する場合、これらはほぼ線状の配置で、例えば配位子Lによって架橋されて存在してもよい。
【0069】
三核亜鉛錯体を示すこの種の構造は、例えば
図6に示されている。
図7は、五核錯体の例を示す。
【0070】
この構造は、亜鉛錯体にとって特有である。発明者は、亜鉛錯体化学のこの多彩性がドーピングの際の新たな柔軟性を可能にすることを知見した。殊に、ルイス酸性度に対して多様な多くの中心を備えた考えられる錯体構造の多様性により、ドーピング強度の意図した適合を達成することができる。
【0071】
本発明の一実施形態の場合に、少なくとも1つの配位子Lは、亜鉛原子に終端として結合している。
【0072】
この際、本発明による好ましい実施形態の場合に、少なくとも1つの配位子Lは1つの結合原子とだけで、つまり双方の原子団R
1又はR
2の一方とだけで、亜鉛に配位することが可能である。
【0073】
これは、略示的に次のように表すことができる:
【化8】
【0074】
この例について、Lはカルボキシラート配位子であり、つまり、配位子Lは、R
1もR
2も酸素原子であり、つまりこの双方の酸素原子の一方だけが亜鉛原子に結合している。
【0075】
他の実施形態の場合に、亜鉛錯体は、少なくとも1つの配位子Lを含み、この配位子Lは、双方の結合原子によって同じ亜鉛に配位する。これは、略示的に次のように表すことができる:
【化9】
【0076】
この例について、Lはカルボキシラート配位子であり、つまり配位子Lは、R
1もR
2も酸素原子であり、つまり、両方の酸素原子が亜鉛原子と結合している。
【0077】
本発明の他の態様は、亜鉛錯体が、多核金属錯体であり、かつこの場合、同時に配位子Lの少なくとも1つが2つの金属原子に配位結合する本発明による有機電子素子に関する。
【0078】
理論により拘束されることなしに、多核錯体の場合に、亜鉛錯体の配位子Lによって、少なくとも2つの金属原子の間の架橋の可能性が生じる。この場合、例えば、金属原子の二座配位又は三座配位が行われてよい。
【0079】
これは、略示的に次のように表すことができる:
【化10】
【0080】
本発明の他の態様の場合に、亜鉛錯体は、少なくとも2つの配位子Lを含む多核金属錯体であり、ここで、配位子Lの少なくとも1つが、2つの金属原子と配位結合し、少なくとも1つの他方の配位子Lが、亜鉛錯体の1つの金属中心に終端として結合している。
【0081】
本発明の他の態様の場合に、亜鉛錯体は、少なくとも2つの亜鉛原子を含む。この錯体は、例えば、正確に2つの亜鉛原子を含むことができるが、この錯体は3、4、5又は6の亜鉛原子又は更に多くの亜鉛原子を含んでいてもよい。
【0082】
発明者は、1つだけより多くの亜鉛原子は、相応する錯体がルイス酸中心よりも多くの亜鉛原子を提供し、それと共にp型ドーパントとして特に有効な作用を発揮するという利点を提供することを知見した。
【0083】
本発明の他の態様は、亜鉛錯体が、亜鉛の他に、亜鉛とは異なる少なくとも1つの別の金属を含む本発明による有機電子素子に関する。
【0084】
多核錯体の構築のために異なる金属原子を考慮する場合、ヘテロ二金属錯体が生じる。
【0085】
この場合でも、配位子Lは架橋するように作用することができ、これを略示的に次のように示すことができる:
【化11】
Mは、この場合、亜鉛錯体の他の中心原子を形成する、亜鉛とは異なる金属原子である。
【0086】
本発明の別の実施形態は、亜鉛とは異なる金属が、Mn、Mg、Ca、Sr、Ba、Cuを含む群から選択されている、上記に記載されたような本発明による素子に関する。本発明の発明者は、亜鉛並びに上述の群の金属を含む錯体が、安定なp型ドーパントを形成し、このp型ドーパントは、有効なドーパントとして作用するために、十分に高いルイス酸性度を示し、かつ良好な伝導性を達成することを知見した。
【0087】
別の好ましい実施形態の場合に、化合物は、これらの気相の形でも、液相の形でも加工することができる。気相堆積の場合には、ドーピング剤もマトリックス材料も、共通して、好ましくは異なるソースから高真空で蒸発させ、層として堆積させる。液相から加工する場合、金属錯体及びマトリックス材料を溶媒中に溶かし、印刷技術、スピンコーティング、ブレードコーティング、スロットコーティングなどを用いて堆積させる。仕上がった層は、溶媒の蒸発により得られる。この場合、金属錯体のマトリックス材料に対する多様な質量比率により、任意のドーピング比率を調節することができる。
【0088】
特に好ましくは、溶媒プロセスを用いて、次の正孔導体を加工することができる:
【化12】
【0089】
更に、溶媒プロセスを用いて、特に好ましくは「小分子(small molecules)」といわれるマトリックス材料を加工することができる。この種の物質は、当業者に公知であり、かつこれには、例えば、スピロ−TAD(2,2′,7,7′−テトラキス(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9′−スピロビフルオレン)及びスピロ−TTB(2,2′,7,7′−テトラキス(N,N′−ジ−p−メチルフェニルアミノ)−9,9′−スピロビフルオレン)及び本出願においてマトリックス材料として挙げられているような他の材料が含まれる。
【0090】
他の好ましい実施形態の場合に、本発明による有機電子素子のマトリックス材料は、例えば正孔輸送層中に使用することができる次の材料の1つ以上を含む:
NPB(N,N′−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N′−ビス(フェニル)−ベンジジン)、
β−NPB(N,N′−ビス(ナフタレン−2−イル)−N,N′−ビス(フェニル)−ベンジジン)、
TPD(N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ビス(フェニル)−ベンジジン)、
スピロ−TPD(N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ビス(フェニル)−ベンジジン)、
スピロ−NPB(N,N′−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N′−ビス(フェニル)−スピロ)、
DMFL−TPD(N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ビス(フェニル)−9,9−ジメチル−フルオレン)、
α−NPD N,N′−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N′−ビス(フェニル)−2,2−ジメチルベンジジン、
N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ビス(フェニル)−9,9−スピロフルオレン、
N,N′−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N′−ビス(フェニル)−9,9−スピロフルオレン、
N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ビス(フェニル)−2,7−ジアミノ−9,9−スピロフルオレン、
N,N′−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N′−ビス(フェニル)−2,7−ジアミノ−9,9−スピロフルオレン、
DMFL−NPB(N,N′−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N′−ビス(フェニル)−9,9−ジメチル−フルオレン)、
DPFL−TPD(N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニル−フルオレン)、
DPFL−NPB(N,N′−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N′−ビス(フェニル)−9,9−ジフェニル−フルオレン)、
スピロ−TAD(2,2′,7,7′−テトラキス(N,N−ジフェニルアミノ)−9,9′−スピロビフルオレン)、
9,9−ビス[4−(N,N−ビス−ビフェニル−4−イル−アミノ)フェニル]−9H−フルオレン、
NPAPF 9,9−ビス[4−(N,N−ビス−ナフタレン−2−イル−アミノ)フェニル]−9H−フルオレン、
NPBAPF 9,9−ビス[4−(N−ナフタレン−1−イル−N−フェニルアミノ)−フェニル]−9H−フルオレン、
9,9−ビス[4−(N,N′−ビス−ナフタレン−2−イル−N,N′−ビス−フェニル−アミノ)−フェニル]−9H−フルオレン、
PAPB N,N′−ビス(フェナントレン−9−イル)−N,N′−ビス(フェニル)−ベンジジン、
2,7−ビス[N,N−ビス(9,9−スピロ−ビフルオレン−2−イル)−アミノ]−9,9−スピロ−ビフルオレン、
2,2′−ビス[N,N−ビス(ビフェニル−4−イル)アミノ]−9,9−スピロ−ビフルオレン、
2,2′−ビス(N,N−ジ−フェニル−アミノ)−9,9−スピロ−ビフルオレン、
ジ−[4−(N,N−ジトリル−アミノ)−フェニル]シクロヘキサン、
2,2′,7,7′−テトラ(N,N−ジ−トリル)アミノ−スピロ−ビフルオレン、
N,N,N′,N′−テトラ−ナフタレン−2−イル−ベンジジン、
スピロ−2NPB 2,2′,7,7′−テトラキス[N−ナフタレニル(フェニル)−アミノ]−9,9−スピロビフルオレン、
スピロ−TTB(2,2′,7,7′−テトラキス−(N,N′−ジ−p−メチルフェニルアミノ)−9,9′−スピロビフルオレン)、
TiOPC チタンオキシド−フタロシアニン、
CuPC 銅−フタロシアニン、
F4−TCNQ 2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノ−キノジメタン、
4,4′,4″−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニル−アミノ)トリフェニルアミン、
4,4′,4″−トリス(N−(2−ナフチル)−N−フェニル−アミノ)トリフェニルアミン、
4,4′,4″−トリス(N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ)トリフェニルアミン、
4,4′,4″−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)トリフェニルアミン、
PPDN ピラジノ[2,3−f][1,10]フェナントロリン−2,3−ジカルボニトリル、
MeO−TPD N,N,N′,N′−テトラキス(4−メトキシフェニル)ベンジジン、
スピロ−MeOTAD N
2,N
2,N
2′,N
2′,N
7,N
7,N
7′,N
7′−オクタキス(4−メトキシフェニル)−9,9′−スピロビ[9H−フルオレン]−2,2′,7,7′−テトラミン。
【0091】
しかしながら、考えられるマトリックス材料は、上述の材料に限定されるものではない。例えばMerck社、Novaled社及びHodogaya社の商品名HTM014、HTM081、HTM163、HTM222、NHT5、NHT49、NHT51、EL-301、EL-22Tで市場で入手可能なマトリックス材料のような他のマトリックス材料も特に良好に適している。しかしながら、同等の市場で入手可能な材料も使用することができる。
【0092】
これらの材料は、有機電子素子中のマトリックス材料として実証されている。
【0093】
本発明の好ましい実施形態の場合に、1molのマトリックス材料を基準としてmolで示す金属錯体のドーピング度は、≧0.1%〜≦50%である。これは合理的であることが判明した。好ましくは、ドーピング度は、≧0.5%〜≦15%、更に好ましくは≧1%〜≦5%である。
【0094】
本発明による有機電子素子の亜鉛錯体は、本発明の他の実施形態の場合に、この亜鉛錯体が、少なくとも部分的に導電性材料と一緒に同時蒸発される場合、更に、電子遮断層中でも使用することができる。典型的な導電性材料は、この場合、次のものである:
2,2′,2″−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)
2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール
2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン
8−ヒドロキシキノリノラト−リチウム
4−(ナフタレン−1−イル)−3,5−ジフェニル−4H−1,2,4−トリアゾール
1,3−ビス[2−(2,2′−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン
4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン
3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−tert−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール
ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト)アルミニウム
6,6′−ビス[5−(ビフェニル−4−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−2−イル]−2,2′−ビピリジル
2−フェニル−9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)−アントラセン
2,7−ビス[2−(2,2′−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]−9,9−ジメチルフルオレン
1,3−ビス[2−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン
2−(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン
2,9−ビス(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン
トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3−イル)フェニル)ボラン
1−メチル−2−(4−(ナフタレン−2−イル)フェニル)−1H−イミダゾ[4,5−f][1,10]フェナントロリン。
【0095】
電子の流れを遮断すること及び制限することは、例えば高効率有機発光ダイオード(OLED)のために、大きな意味がある。
【0096】
本発明による有機電子素子は、他の実施形態の場合に、有機電子素子中に通常使用されるような一連の他の層を備えていてよい。以後、これについていくつかの可能性を示すが、これらは、本発明を限定するものとは見なされない。
【0097】
実施態様の場合に、本発明による素子は、例えば正孔遮断層(英語:hole blocking layers、略してHBL)を備えていてよい。正孔遮断層のための材料は、
2,2′,2″−(1,3,5−ベンゼントリイル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)、
2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、
2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)、
8−ヒドロキシキノリノラト−リチウム、
4−(ナフタレン−1−イル)−3,5−ジフェニル−4H−1,2,4−トリアゾール、
1,3−ビス[2−(2,2′−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン、
4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BPhen)1
3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−tert−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール、
ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム、
6,6′−ビス[5−(ビフェニル−4−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−2−イル]−2,2′−ビピリジル、
2−フェニル−9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)−アントラセン、
2,7−ビス[2−(2,2′−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]−9,9−ジメチルフルオレン、
1,3−ビス[2−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン、
2−(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、
2,9−ビス(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、
トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3−イル)フェニル)ボラン、
1−メチル−2−(4−(ナフタレン−2−イル)フェニル)−1H−イミダゾ[4,5−f][1,10]フェナントロリン、
フェニル−ジピレニルホスフィンオキシド、
ナフタレンテトラカルボン酸二無水物及びそのイミド
ペリレンテトラカルボン酸二無水物及びそのイミド
シラシクロペンタジエン単位を有するシロールを基礎とする材料、
及びこれらの混合物を含む群から選択されていてよい。
【0098】
他の実施形態の場合に、本発明による有機電子素子は、電子注入層を備えていてよい。電子注入層用の材料は、NET-18、NET-218(それぞれNovaled社の商品名)、ET093(Idemitsu Kosan社の商品名)、ETM020、ETM033、ETM034、ETM036(それぞれMerck社の商品名)及び同等の市販の材料、及び
2,2′,2″−(1,3,5−ベンゼントリイル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)、
2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、
2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)、
8−ヒドロキシキノリノラト−リチウム、
4−(ナフタレン−1−イル)−3,5−ジフェニル−4H−1,2,4−トリアゾール、
1,3−ビス[2−(2,2′−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン、
4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BPhen)、
3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−tert−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール、
ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム、
6,6′−ビス[5−(ビフェニル−4−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−2−イル]−2,2′−ビピリジル、
2−フェニル−9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)−アントラセン、
2,7−ビス[2−(2,2′−ビピリジン−6−イル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]−9,9−ジメチルフルオレン、
1,3−ビス[2−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾ−5−イル]ベンゼン、
2−(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、
2,9−ビス(ナフタレン−2−イル)−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、
トリス(2,4,6−トリメチル−3−(ピリジン−3−イル)フェニル)ボラン、
1−メチル−2−(4−(ナフタレン−2−イル)フェニル)−1H−イミダゾ[4,5−f][1,10]フェナントロリン、
フェニル−ジピレニルホスフィンオキシド、
ナフタレンテトラカルボン酸二無水物及びそのイミド、
ペリレンテトラカルボン酸二無水物及びそのイミド
シラシクロペンタジエン単位を有するシロールを基礎とする材料、及び先に挙げた材料の混合物を含む群から選択されていてよい。
【0099】
電子注入層は、n型ドーピング材を含んでいてもよい。n型ドーピング材としては、NDN-1、NDN-26(それぞれNovaled社の商品名)、Na、Ca、Mg、Ag、Cs、Li、Mg、Yb、Cs
2CO
3及びCs
3PO
4又はこれらの混合物を含む群から選択されている1つ以上の材料を挙げることができる。
【0100】
他の実施形態の場合に、本発明による有機電子素子は、エミッタ層を備えていてよい。エミッタ層は、蛍光を発する及び/又は燐光を発する材料である有機材料を含んでいてよい。例えば、有機材料として、ポリフルオレン、ポリチオフェン及びポリフェニレンの誘導体のような有機又は有機金属化合物、例えば2−置換又は2,5−置換されたポリ−p−フェニレンビニレン)及び/又は金属錯体、例えばイリジウム錯体、例えば青色の燐光を発するFIrPic(ビス(3,5−ジフルオロ−2−(2−ピリジル)フェニル−(2−カルボキシピリジル)−イリジウム III)、緑色の燐光を発するIr(ppy)
3(トリス(2−(フェニルピリジン)イリジウム III)及び/又は赤色の燐光を発するRu(dtb−bpy)
3・2(PF
6)(トリス[4,4′−ジ−tert−ブチル−(2,2′)−ビピリジン]ルテニウム(III)錯体)、及び青色の蛍光を発するDPAVBi(4,4−ビス[4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]ビフェニル)、緑色の蛍光を発するTTPA(9,10−ビス[N,N−ジ−(p−トリル)−アミノ]アントラセン)及び/又は赤色の蛍光を発するDCM2(4−ジシアノメチレン)−2−メチル−6−ジュロリジル−9−エニル−4H−ピラン)が非ポリマーエミッタとして使用される。
【0101】
少なくとも1つの実施形態の場合に、有機電子素子は基板を備える。殊に、基板上に電極の1つが配置されている。基板は、例えば、ガラス、石英、プラスチック、金属、ケイ素、ウェハから選択されている1種以上の材料を、層、プレート、シート又はラミネートの形で備えていてよい。殊に、基板はガラスを備えているか又はガラスからなる。
【0102】
本発明は、更に、亜鉛錯体の、電子素子のマトリックス材料用のp型ドーピング剤としての使用に関する。
【0103】
この場合、亜鉛錯体は、次の構造の少なくとも1つの配位子Lを含む:
【化13】
式中、R
1及びR
2は、互いに無関係に、酸素、硫黄、セレン、NH又はNR
4であることができ、ここで、R
4は、アルキル又はアリールを含む群から選択されていて、かつR
3と結合することができ;かつ
R
3は、アルキル、長鎖アルキル、シクロアルキル、ハロゲンアルキル、アリール、アリーレン、ハロゲンアリール、ヘテロアリール、ヘテロアリーレン、ヘテロシクロアルキレン、ヘテロシクロアルキル、ハロゲンヘテロアリール、アルケニル、ハロゲンアルケニル、アルキニル、ハロゲンアルキニル、ケトアリール、ハロゲンケトアリール、ケトヘテロアリール、ケトアルキル、ハロゲンケトアルキル、ケトアルケニル、ハロゲンケトアルケニル、ハロゲンアルキルアリール、ハロゲンアルキルヘテロアリールを含む群から選択されていて、ここで、適切な基の場合、1つ又は複数の隣接しないCH
2基は、互いに無関係に、−O−、−S−、−NH−、−NR°°°−、−SiR°R°°−、−CO−、−COO−、−COR°OR°°−、−OCO−、−OCO−O−、−SO
2−、−S−CO−、−CO−S−、−O−CS−、−CS−O−、−CY1=CY2又は−C≡C−により置き換えられていてよいが、ただしO及び/又はS原子は、互いに直接結合されていておらず、同様に、任意に、好ましくは1〜30のC原子を含むアリール又はヘテロアリールにより置き換えられている(末端のCH
3基は、CH
2−Hの意味で、CH
2基と同様であると解釈される)。
【0104】
上述の、並びに特許請求の範囲及び実施例に記載された、本発明により使用されるべき素子は、そのサイズ、形状、材料選択及び技術的コンセプトに関して特別な例外条件が課されていないので、この適用分野において公知の選択基準を無限定で適用することができる。
【0105】
本発明の主題の更なる詳細、特徴及び利点は、従属請求項から、並びに図面及び所属する一般的な製造方法及び具体的な実施例の次の記載から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【
図1】有機発光ダイオード(10)の構造の略図を示す。
【
図2】光(21)を電流に変換する、PIN構造(20)を備えた有機太陽電池の構造の略図を示す。
【
図3】有機電界効果トランジスタ(30)の考えられる略示断面図を示す。
【
図8】実施例I、Zn3について、ドープされていないマトリックス材料(HTM014、Merck KGaA)及びZn3でドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度を示す。
【
図9】実施例II、Zn8について、ドープされていないマトリックス材料(HTM014)及びZn8でドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度を示す。
【
図10】実施例III、Zn(3,5)について、ドープされていないマトリックス材料(HTM014)及びZn(3,5−tfmb)でドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度を示す。
【
図11】、実施例IV、Zn(tfa)について、ドープされていないマトリックス材料(HTM014)及びZn(tfa)でドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度を示す。
【
図12A】実施例IV、Zn(tfa)について、電圧に対する電流密度を示す。
【
図12B】実施例IV、Zn(tfa)について、電圧に対する電流密度を示す。
【
図13A】有機発光ダイオードとして仕上げられた本発明による有機電子素子の一実施形態の構造の略図を示す。
【
図13B】
図13Aで表された有機発光ダイオードに関する試験によって得られた試験データを示す。
【
図14】本発明による亜鉛錯体でドーピングされた層の吸収スペクトルを示す。
【0107】
図1は、有機発光ダイオード(10)の構造の略図を示す。発光ダイオードは、次の層を含むか又は次の層からなる:ガラス層(1);透明な導電性酸化物(TCO、つまり透明な導電性酸化物)層又はPEDOT:PPS層又はPANI層(2);正孔注入層(3);正孔輸送層(HTL)(4);エミッタ層(EML)(5);正孔遮断層(HBL)(6);電子輸送層(ETL)(7);電子注入層(8)及びカソード層(9);
図2は、光(21)を電流に変換する、PIN構造(20)を備えた有機太陽電池の構造の略図を示す。太陽電池は、酸化インジウム錫からなる層(22);p型にドープされた層(23);吸収層(24);n型にドープされた層(25)及び金属層(26)を含むか又はこれらの層からなる;
図3は、有機電界効果トランジスタ(30)の考えられる略示断面図を示す。基板(31)上に、ゲート電極(32)、ゲート誘電体(33)、ソース及びドレインコンタクト(34+35)並びに有機半導体(36)が設けられている。ハッチングを施された箇所は、コンタクトドーピングが役立つ箇所を示す。
【0108】
図4は、Zelenak et al.、「Preparation, characterisation and crystal structure of two zinc (II) benzoate complexes with pyridine-based ligands nicotinamide and methyl-3-pyridylcarbamate」、Inorganica Chimica Acta 357 (2004) 2049-2059に記載された単核亜鉛錯体を示す。
【0109】
図5は、William Clegg et al.、「Zinc Carboxylate Complexes: Structural Characterisation of some Binuclear and Linear Trinuclear Complexes」、J. Chem. Soc. Dalton Trans. 1986、1283に記載された、パドルホイール構造を示す二核亜鉛錯体を示す。配位子として、キノリンの他に、殊にクロトン酸のカルボキシラートが機能する。
【0110】
図6は、同様に、William Clegg et al.、「Zinc Carboxylate Complexes: Structural Characterisation of some Binuclear and Linear Trinuclear Complexes」、J. Chem. Soc. Dalton Trans. 1986、1283に記載された三核亜鉛錯体を示す。
【0111】
図7は、Katherine L. Orchard et al.、「Pentanuclear Complexes for a Series of Alkylzinc Carboxylates」、Organometallics 2009、28、5828-5832に記載された、エチル単位を含む五核亜鉛錯体を示す。高い構造的な多彩さは、この錯体がカルボキシラート配位子の他にアルキル配位子を含み、このアルキル配位子は合成の範囲内でカルボキシラート配位子により完全には置き換えられないことから生じる。
【0112】
図8は、実施例I、Zn3について、ドープされていないマトリックス材料(HTM014、Merck KGaA)及びZn3でドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度を示す。亜鉛錯体とマトリックス材料との同時蒸発は、この場合、169〜182℃の温度範囲で行われる。得られた層に関するHTM014の割合は、85体積パーセントである。このドーピング材の極めて良好なドーピング材作用が観察される。
【0113】
図9は、実施例II、Zn8について、ドープされていないマトリックス材料(HTM014)及びZn8でドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度を示す。亜鉛錯体とマトリックス材料との同時蒸発は、この場合、230〜231℃の温度範囲で行われる。得られた層に関するHTM014の割合は、85体積パーセントである。良好なドーピング材特性を、このグラフから明らかに確認することができる。ガス発生は観察されない。
【0114】
実施例IIの場合は、実施例Iの場合よりも明らかに高い昇華温度が観察される。つまりこれらは同じ化合物ではない。
【0115】
図10は、実施例III、Zn(3,5)について、ドープされていないマトリックス材料(HTM014)及びZn(3,5−tfmb)でドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度を示す。亜鉛錯体とマトリックス材料との同時蒸発は、この後者の場合、258〜275℃の温度範囲で行われる。ドーピングされた層に関するHTM014の割合は、85体積パーセントである。ドーピング作用は観察されなかった。
【0116】
図11は、実施例IV、Zn(tfa)について、ドープされていないマトリックス材料(HTM014)及びZn(tfa)でドープされたマトリックス材料についての電圧に対する電流密度を示す。ドーピングされた層に関するHTM014の割合は、85体積パーセントである。極めて良好なドーピング作用が観察される。
【0117】
図12Aは、実施例IV、Zn(tfa)について、電圧に対する電流密度を示す。この場合、市場で入手可能なNovalent社のマトリックス材料NHT49を、Zn(tfa)でドーピングした。この電流−電圧曲線は、本発明による亜鉛錯体の卓越したp型ドーピング材作用を証明する。
【0118】
図12Bは、実施例IV、Zn(tfa)について、電圧に対する電流密度を示す。この場合、市場で入手可能なMerck社のマトリックス材料HTM081を、Zn(tfa)でドーピングした。この電流−電圧曲線は、ここでも、卓越したp型ドーピング材作用を示した。
【0119】
図12A及び12Bは、多様なマトリックス材料に対して、本発明による亜鉛錯体の幅広い使用性及び良好なp型ドーピング材作用を明確に示す。更に、双方の場合に、多様なp型ドーピング材濃度が試験された。全体のp型にドーピングされた層についてp型ドーパントの3〜15体積%の間の測定が、双方のグラフに示されている。本発明による亜鉛錯体は、ドーピングされた層内で、多様な濃度の幅広い範囲内で使用可能である。特に良好な値が、亜鉛錯体1〜25体積%の間で達成され、この場合、3〜15体積%の範囲が更に好ましい。後者に挙げた範囲を、図中にそれぞれ示した。最良の値は、それぞれ、p型にドーピングされた有機範囲又はp型にドーピングされた有機層を基準として、亜鉛錯体の、境界値を含めて5〜10体積%の間で達成される。
【0120】
図13Aは、有機発光ダイオードとして仕上げられた本発明による有機電子素子の一実施形態の構造の略図を示す。これは、p型ドーパントとしての本発明による亜鉛錯体を含むマトリックスを備えた素子のオプトエレクトロニクス特性の決定のための試験装置である。
【0121】
図13AのOLEDは、130nmの厚みを示す酸化インジウム錫(ITO)からなるアノードを使用する。このアノードに、p型ドーパントとしての試験されるべき亜鉛錯体を含む正孔注入層が続く。この正孔注入層は、70nmの層厚を示す。正孔注入層の正孔導体マトリックスとして、例示的に、Novaled社のマトリックス材料NHT49を選択した。記載された体積パーセントで示した、多様なp型ドーパント濃度について試験を行った。試験されるべき亜鉛錯体でドーピングされた素子の他に、使用されたp型ドーピング材及びその濃度が単に異なる素子も製造した。対照としてのp型ドーピング材は、この場合、Novaled社の通常の市販のp型ドーピング材NDP9を使用した。正孔注入層に、電子遮断層(「electron blocking layer」、略してEBL)が続く。OLEDの他の層として、発光層(「emitting layer」、省略してEML)、正孔遮断層(「hole blocking layer」、省略してHBL)、電子注入層(「electron injection layer」、省略してEIL)及び最後にアルミニウムを含むか又はアルミニウムからなるカソードが続く。
【0122】
図13Bは、
図13Aで表された有機発光ダイオードに関する測定によって得られた試験データを示す。比較例として、Novaled社の市場で入手可能な普及したドーピング材NDP9を使用した。他の全ての測定は、p型ドーパントとして亜鉛−トリフルオロアセタート錯体、Zn(tfa)を用いて、ドープされた層を基準として3〜15体積%の質量濃度で実施した。マトリックス材料として、それぞれ、Novaled社の市場で入手可能な正孔伝導性のマトリックス材料NHT49を用いた。これらの測定をそれぞれ同じ輝度で実施し、このことから、Znドーピング材でドーピングされた素子について、NDP9でドーピングされた素子と同等の電流密度及び作動電圧が生じた。効率のパラメータの、発光効率(Peff)、電流効率(Ieff)及び外部量子効率(EQE)は、10%までの濃度範囲で本発明による亜鉛錯体を含む素子の場合、同じ色度座標Cx及びCyで、対照ドーピング材を含む素子よりも高い。したがって、有機発光ダイオードに従って従来のように構成された試験装置での測定により、本発明による亜鉛錯体の卓越したp型ドーピング材作用が確認され、及び有機電子素子中での正孔伝導性のマトリックス材料のドーピングのための使用にとって適することが確認される。最終的に、この測定は、本発明による亜鉛錯体を含むOLEDが改善された発光効率、電流効率及び外部量子効率を可能にすることを明確に示す。このことは、少なくとも部分的に、亜鉛錯体でドーピングされた層の極めて僅かな吸収に起因するものと見なされる。したがって、素子中でのドーピング材による吸収による損失は低減され、このことは、とりわけ、例えばOLEDのようなオプトエレクトロニクスの有機電子素子の場合に好ましく作用する。
【0123】
図14は、本発明による亜鉛錯体でドーピングされた層の吸収スペクトルを示す。
図14Aは、この場合、卓越した光透過性を示す石英の吸収スペクトルを、亜鉛−トリフルオロアセタート5%でドーピングされたHTM014の、200nmの厚みのドーピングされた層の吸収挙動と比較する。この測定は、通常のデュアルビーム分光光度計を用いて実施した。可視光の領域、つまり400〜700nmの領域内で、ドープされた層は、吸収についての尺度を示す吸光度について意外に低い値を示す。
図14Bは、450〜800nmの間の部分を拡大して示す。ここでは、可視領域において、ドープされた層の吸光度は、更に0.03未満であり、それどころかこの広い領域にわたり0.02未満である。この種の低い吸光度は、僅かな材料について達成されているだけであり、本発明の亜鉛錯体が、例えば有機発光ダイオード又は有機太陽電池のようなオプトエレクトロニクス装置のために卓越して適していることを示す。
【0124】
本発明による有機電子素子の亜鉛錯体は、例えば、ジ−アルキル−亜鉛又はジ−アリール−亜鉛の、相応するカルボン酸又はその誘導体との反応により得ることができる。亜鉛の出発錯体のアルキル配位子又はアリール配位子の置き換えは、この場合、複数の段階で進行し、ここで、この置き換えは不完全であってもよい。これは、次に例示的に、二段階の反応について表され、この反応を、例えば第1の段階の後で止めることもできる:
【化14】
【0125】
記号の説明:
L
Cは、この場合、上述された配位子L
Cに対応し、アルキル又はアリールである。L
C*は、L
Cとは無関係に、同様にアルキル又はアリールであり、ここで、L
C及びL
C*は、同じであっても又は異なってもよい。R
3は、例示的に記載された製造方法に対して、本発明による亜鉛錯体の配位子Lの基R
3に対応する。したがって、R
3を含むカルボキシラートは、この実施例の場合に、完成した亜鉛錯体の配位子L(つまりL=R
3COO
-)に対応する。
【0126】
更に、均化を用いて、混合したアリールカルボキシラート/アルキルカルボキシラートを得ることも可能である:
【化15】
【0127】
置換基L
Cがフッ化されている場合、この種の混合されたアルキル−亜鉛/アリール−亜鉛ドーピング材が得られる。したがって、ドーピング強度、揮発性(又は蒸発性)及び溶解度は、カルボキシラート配位子R
3COO
-によるだけでなく、付加的に配位子L
Cによって、昇華温度に無関係に広範囲に調節することができる。
【0128】
ここに形式的に示した合成による経路と同じ経路で、オリゴマー構造又はクラスターも得られる。
【0129】
実施例I
実施例Iは、亜鉛ペンタフルオロベンゾアート錯体、Zn(pfb)(以後、省略してZn3という)に関し、この錯体は、次に記載する合成経路で得られた:
ペンタフルオロ安息香酸30.59mmolをトルエン80ml中に溶かし、0℃に冷却する。ジエチル亜鉛溶液(トルエン中15%)15.29mmolを、トルエン20mLで希釈し、同様に冷却し、保護ガス下で慎重にペンタフルオロ安息香酸溶液に滴加する。撹拌しながらこの溶液を室温にもたらす。約1時間後に既にいくらか白色の沈殿物が生じる。引き続き、50℃の浴温度で15時間撹拌する。密な白色の沈殿物が得られる。溶媒を三分の一にまで濃縮し、白色生成物をP4フリットを介して吸引し、シクロヘキサンで3回洗浄し、真空中で乾燥する。収量:6.11g(82%);昇華範囲:215〜230℃/10
-5mbarである。
【0130】
実施例Iについて
図8で測定されたようなp型ドーパントを含むマトリックス層は、マトリックス材料と亜鉛錯体との同時蒸発により得られる。つまり、正孔輸送層は、気相から、これらの成分の反応により、基板上で直接達成することができる。
【0131】
この場合、測定されるべき層は次のように作製される
蒸発
ITOで予め構造化されたガラス基板を、10分間、酸素プラズマ処理に供し、引き続き、できる限り迅速に蒸発器内へ移した。この蒸発器を、酸素濃度及び水濃度が2ppm未満であるアルゴン−グローブボックス中に移した。
【0132】
全ての蒸発は、2×10
-6mbar未満の基準圧力の真空で実施した(蒸発の際に、この圧力は上昇する)。
【0133】
まず、マトリックス材料もドーピング材料も、蒸発点の直前にまで加熱し、引き続き、一定の蒸発が観察できるまで加熱した。
【0134】
全体の蒸発速度は、約1Å/sであり、この場合、マトリックス材料の蒸発速度に関してドーピング材料の蒸発速度を調節した。
【0135】
シャッターを閉じた後に、40℃に冷却し、アルゴンでパージし、マスクをカソードの堆積のために交換し、引き続き再度真空引きした。
【0136】
電極は、150nmの厚みの層のアルミニウムからなり、この層を、0.5Å/sの初期蒸発速度で被着させ、この速度をゆっくりと5Å/sに高めた。
【0137】
この同じ方法を、次の実施例の実施例II〜IVの場合にも適用する。
【0138】
図9〜11は、ドープされた及びドープされていないHTM-014(マトリックス材料、Merck KGaA社)に関する。この場合、一方で200nmの厚みの、HTM-014(Merck KGaA)の層を、他方でそれぞれ亜鉛錯体15%でドーピングされたHTM-014を、それぞれ製造した。
【0139】
実施例II:
実施例IIも、実施例Iとは異なる第2の亜鉛ペンタフルオロベンゾアート錯体Zn(pfb)(略してZn8という)の製造に関する。ペンタフルオロ安息香酸30.59mmolを、ジエチルエーテル60ml中に溶かし、0℃に冷却する。ジエチル亜鉛溶液(ヘキサン中1.0M)15.29mmolを、ジエチルエーテル20mlで希釈し、同様に冷却し、保護ガス下で慎重にペンタフルオロ安息香酸溶液に滴加する。撹拌しながらこの溶液を室温にもたらす。引き続き、30℃の浴温度で15時間撹拌する。白色の沈殿物が得られる。この白色の生成物を、P4フリットを介して吸引し、シクロヘキサンで3回洗浄し、真空中で乾燥する。収量:5.6g(75%);昇華範囲255〜270℃/10
-5mbarである。
【0140】
実施例IIで紹介した合成手法により得られた物質は、意外にも、実施例Iで紹介した方法により得られたような化合物よりも明らかに高い昇華温度を示すため、これは実施例Iで得られた物質とは異なる錯化合物であることを想定することができる。
【0141】
実施例III:
実施例IIIは、3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゾアート配位子を有する亜鉛錯体、Zn(3,5−tfmb)(略してZn(3,5)ともいう)の製造に関する。
【0142】
このために、3,5−(トリフルオロメチル)安息香酸30.59mmolを、トルエン50mlとベンゼン30mlとの混合物中に溶かし、0℃に冷却する。これに、保護ガス下で、ジエチル亜鉛溶液(トルエン中15%)15.29mmolを滴加し、トルエン10mlで希釈し、これを同様に冷却する。ゲル状の材料が生じ、これを90℃の浴温度で18時間撹拌する。その後に、軽度に濁った溶液が生じる。溶媒を、真空中で完全に取り除き、白色の粉末が残る。収量:8.39g(86%);昇華範囲:260〜280℃/10
-5mbarである。
【0143】
実施例VI:
実施例IVは、トリフルオロアセタート配位子を有する亜鉛錯体(略してZn(tfa)という)の製造に関する。トリフルオロ酢酸48.16mmolを、ベンゼン60mmolと混合し、10℃に冷却する。これに、ジエチル亜鉛溶液(トルエン中15%)22.9mmolを慎重に滴加し、これをベンゼン60mlで希釈する。これを室温で15時間撹拌し、白色の沈殿物が得られる。溶媒の三分の一を取り除き、白色の生成物をP4フリットを介して吸引し、シクロヘキサンで3回洗浄する。収量:5.55g(83%);昇華範囲163〜173℃/10
-5mbarである。
【0144】
既に言及された実施の構成要素及び特徴の個々の組み合わせは例示的なものであり;この文献中に含まれている教示を、引用された文献の他の教示と置き換える及び交換することも、同様に明確に検討される。当業者は、変形、変更及びここに記載された他の実施が、この発明思想及び発明の範囲から逸脱せずに、同様に生じることができることを認識する。
【0145】
したがって、上述の説明は例示であり、かつ本発明を制限するものとは見なされない。特許請求の範囲に使用された単語「含有する(umfassen)」は、他の構成要素又は工程を排除するものはない。不定冠詞の「ein」は、複数の意味を排除するものではない。複数の所定の基準が相互に異なる請求項において再引用されるという単なる事実は、この基準の組み合わせが好ましく利用できないことを明確に示すものではない。この発明の範囲は、次の特許請求の範囲に定義されていて、かつそれに属する等価なものを定義している。