特許第6552615号(P6552615)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552615
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】印刷デバイス
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20190722BHJP
【FI】
   B41J2/14 611
   B41J2/14 201
【請求項の数】15
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-521129(P2017-521129)
(86)(22)【出願日】2014年10月27日
(65)【公表番号】特表2017-530889(P2017-530889A)
(43)【公表日】2017年10月19日
(86)【国際出願番号】US2014062438
(87)【国際公開番号】WO2016068853
(87)【国際公開日】20160506
【審査請求日】2017年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】ガードナー,ジェイムス,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,ダリル,イー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,エリック,ティー
【審査官】 村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−326935(JP,A)
【文献】 特開2002−337342(JP,A)
【文献】 特開2003−054097(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0226054(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷デバイスの回路トポロジーであって、
多数のプリントヘッドを噴射するために使用される多数の高電圧デバイスに接続された高電圧電源(VPP)と、
前記印刷デバイスに対する電力の喪失を検出するための電力喪失検出デバイスと、
電力喪失保護供給(VDD_plp)電圧を生成するために入力電圧を調整するための電圧調整器とを含み、前記電力喪失検出デバイスが前記印刷デバイスに対する電力の喪失を検出する場合、VDD_plp電圧が、前記高電圧デバイス内の電流を制御するためのプリントヘッド噴射制御回路に供給され、
前記プリントヘッド噴射制御回路を用いて前記高電圧デバイス内の電流を制御することは、VPP又はVPPに関連したVPP論理回路電源(VPP_logic)が放電閾値未満になるまで、全プリントヘッド噴射制御回路に電力供給することを含む、回路トポロジー。
【請求項2】
前記VDD_plp電圧が、プリントヘッドダイ上で生成される、請求項1に記載の回路トポロジー。
【請求項3】
前記VDD_plp電圧は、VPPから及び/又はVPPに関連したVPP論理回路電源(VPP_logic)から導出されている、請求項1又は2に記載の回路トポロジー。
【請求項4】
多数の低電圧回路に電力供給するために使用されるVDD電源が第1の閾値よりも下がり、且つVPP又はVPPに関連したVPP論理回路電源(VPP_logic)が第2の閾値を上回ることを前記電力喪失検出デバイスが検出した際に、電力の喪失が起きたと判断される、請求項1から3の何れかに記載の回路トポロジー。
【請求項5】
前記VDD_plp電圧が、外部電圧電源(VDD)を用いて生成され、
前記外部電圧電源VDDが第1の閾値よりも下がり、且つVPP又はVPPに関連したVPP論理回路電源(VPP_logic)が第2の閾値を上回ることを前記電力喪失検出デバイスが検出した際に、電力損失が起きたと判断される、請求項1又は2に記載の回路トポロジー。
【請求項6】
前記外部電圧電源VDDが第1の閾値よりも下がり、且つVPP又はVPPに関連したVPP論理回路電源(VPP_logic)が第2の閾値を上回ることを前記電力喪失検出デバイスが検出する場合、前記電圧調整器によって、前記VPP及び/又はVPPに関連したVPP論理回路電源(VPP_logic)を用いて前記VDD_plpを生成する、請求項に記載の回路トポロジー。
【請求項7】
前記プリントヘッド噴射制御回路が、前記高電圧デバイスの制御を維持するために使用される回路のみを含む、請求項1からの何れかに記載の回路トポロジー。
【請求項8】
印刷デバイスであって、
多数のプリントヘッドであって、各プリントヘッドが、
多数の抵抗インク噴射要素と、
前記抵抗インク噴射要素を駆動するための多数の高電圧回路とを含む、多数のプリントヘッドと、
前記プリントヘッドに電力供給するための高電圧電源(VPP)と、
前記高電圧回路に多数の噴射制御信号を供給するための多数の低電圧回路と、
入力電圧を調整するための電圧調整器によってもたらされ、前記低電圧回路に電力を供給するために前記低電圧回路に接続されている低電圧源(VDD_plp)と、
前記印刷デバイスに対する電力の喪失を検出するための電力喪失検出デバイスとを含む、印刷デバイス。
【請求項9】
前記印刷デバイスが、前記プリントヘッドのダイ上で前記VDD_plp電圧を生成する、請求項に記載の印刷デバイス。
【請求項10】
前記VDD_plp電圧は、VPPから及び/又はVPPに関連したVPP論理回路電源(VPP_logic)から導出されている、請求項8又は9に記載の印刷デバイス。
【請求項11】
前記印刷デバイスが、外部電圧電源(VDD)を用いて前記VDD_plp電圧を生成し、
前記外部電圧電源VDDが第1の閾値よりも下がり、且つVPP又はVPPに関連したVPP論理回路電源(VPP_logic)が第2の閾値を上回ることを前記電力喪失検出デバイスが検出した際に、電力の損失が起きたと判断され、
前記電力の喪失が検出された場合、前記電圧調整器によって、前記VPPを用いて及び/又は前記VPPに関連したVPP論理回路電源(VPP_logic)を用いて前記VDD_plpを生成する、請求項又はに記載の印刷デバイス。
【請求項12】
前記低電圧回路に電力を供給することは、VPP又はVPPに関連したVPP論理回路電源(VPP_logic)が放電閾値未満になるまで、全低電圧回路に電力供給することを含む、請求項から11の何れかに記載の印刷デバイス。
【請求項13】
前記VPP及び/又は前記VPP_logicを用いて前記電圧調整器に電力供給するために、前記電圧調整器のフロントエンドに結合されたスタートアップ回路を更に含み、
前記スタートアップ回路が前記VPP及び/又は前記VPP_logicを検出する場合、デジタル制御信号が前記電圧調整器において受け取られることができるように、前記電圧調整器に電力を供給する、請求項11、又は請求項11を引用する請求項12に記載の印刷デバイス。
【請求項14】
電力喪失事象中に印刷デバイスを動作させる方法であって、
電力喪失検出デバイスを用いて、多数の高電圧デバイスに対する制御されていない電力喪失を検出し、
プリントヘッド噴射制御回路に結合された電圧調整器を用いて、前記高電圧デバイスに対する高電圧源(VPP)又はVPPに関連したVPP論理回路電源(VPP_logic)が放電閾値電圧よりも下がるまで、前記プリントヘッド噴射制御回路に対する電力喪失保護供給電圧(VDD_plp)を維持することを含む、方法。
【請求項15】
外部電圧電源(VDD)を用いてプリントヘッドのダイ上で前記VDD_plp電圧を生成することを更に含み、
多数の高電圧デバイスに対する制御されていない電力喪失を検出することが、
前記外部電圧電源VDDが第1の閾値よりも下がり、且つVPP又はVPPに関連したVPP論理回路電源(VPP_logic)が第2の閾値を上回るかどうかを判定することを含み、
電力喪失が検出された場合、前記電圧調整器によって、前記VPPを用いて及び/又は前記VPPに関連したVPP論理回路電源(VPP_logic)を用いて前記VDD_plpを生成する、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
印刷デバイスは、プリントヘッドからインクを吐出する際に使用される回路を含む。印刷デバイスのプリントヘッドに電流を印加することにより、インク滴は、噴射チャンバのインク供給部内に位置する抵抗素子を加熱することによって吐出される。この抵抗加熱により、気泡(バブル)がインクに形成され、結果として生じる圧力上昇により、インク滴は、噴射チャンバに流体結合されたノズルから押し出される。
【0002】
添付図面は、本明細書で説明される原理の様々な例を示し、明細書の一部である。示された例は、単に例示のために与えられており、特許請求の範囲の範囲を制限しない。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1A】本明細書で説明される原理の一例による、電力喪失保護回路を組み込む印刷デバイスの図である。
図1B】本明細書で説明される原理の別の例による、電力喪失保護回路を組み込む印刷デバイスの図である。
図2】本明細書で説明される原理の一例による、電力喪失の事象中に最小数の噴射回路に電力を供給するためのオンダイのVDD_plp電圧調整器(レギュレータ)ブロックを含む、図1A及び図1Bの印刷デバイスの電力喪失保護回路の図である。
図3】本明細書で説明される原理の一例による、電力喪失の事象中に全ての噴射回路に電力を供給するためのオンダイのVDD_plp電圧調整ブロック及びオンダイで生成されたVDD_plpを含む、図1A及び図1Bの印刷デバイスの電力喪失保護回路の図である。
図4】本明細書で説明される原理の一例による、電力喪失の事象が発生した場合に多数の噴射回路に電力を供給するためのオンダイのVDD_plp電圧調整器ブロックを含む、図1A及び図1Bの印刷デバイスの電力喪失保護回路の図である。
図5】本明細書で説明される原理の一例による、多数の噴射回路に電力を供給するためのオンダイのVDD_plp電圧調整器ブロック、及び組み合わされたVPP及びVPP_logic線を含む、図1A及び図1Bの印刷デバイスの電力喪失保護回路の図である。
図6】本明細書で説明される原理の別の例による、多数の噴射回路に電力を供給するためのオンダイのVDD_plp電圧調整器ブロック、及び組み合わされたVPP及びVPP_logic線を含む、図1A及び図1Bの印刷デバイスの電力喪失保護回路の図である。
図7】本明細書で説明される原理の一例による、プリンタの制御されたパワーダウンのシーケンスを示すグラフである。
図8】本明細書で説明される原理の一例による、図2図6の電力喪失保護回路を備えていない印刷デバイスの制御されていないパワーダウンのシーケンスを示すグラフである。
図9】本明細書で説明される原理の一例による、図2図6の電力喪失保護回路の1つを備えた印刷デバイスの制御されていないパワーダウンのシーケンスを示すグラフである。
図10】本明細書で説明される原理の一例による、電力喪失の事象中に印刷デバイスを動作させる方法を示す流れ図である。
図11】本明細書で説明される原理の別の例による、電力喪失の事象中に印刷デバイスを動作させる方法を示す流れ図である。
【0004】
図面の全体にわたって、同じ参照符号は、類似するが、必ずしも同じではない要素を示す。
【0005】
詳細な説明
噴射チャンバ内のインク供給部内に位置する抵抗素子は、過剰な電流が抵抗素子に印加される場合、破壊される又はそうでなければ動作不能にされる可能性がある。従って、印刷デバイスに対する電力の予想外の又は制御されていない喪失による印刷デバイスの多数の回路の制御不能は、プリントヘッドからインクを吐出するために使用される抵抗素子を破壊する可能性がある。
【0006】
本明細書で説明された例は、印刷デバイスの多数の高電圧回路におけるプリントヘッド抵抗素子および他の能動デバイス内で、当該抵抗素子および他の能動デバイスを動作不能にする可能性がある制御されていない高電圧消失の可能性を低減または取り除く回路トポロジーを提供する。プリントヘッドからインクを吐出するために使用される抵抗を含む抵抗における過剰なエネルギーの印加は、抵抗を破壊する可能性がある。抵抗が金属皮膜、ワイヤ、ガラス、ガラスセラミック、又は別の抵抗材料から作成されていることにかかわらず、その材料は、高過ぎる電圧の印加に起因して溶解する。結果として生じる高い温度は、抵抗器材料を破壊する。
【0007】
印刷デバイスへの電力が予想外に失われる場合、印刷デバイスは、多数の高電圧回路に噴射制御信号を供給する多数の低電圧回路の制御を失う。プリントヘッドのノズルからのインクの噴射を制御するノズル噴射電界効果トランジスタ(FET)のような高電圧回路は、低電圧回路からの信号に基づいてイネーブル又はディスエーブルにされる。低電圧回路から高電圧回路への制御信号の喪失は、高電圧回路の制御の喪失という結果になり、それにより、プリントヘッド内の抵抗および他の能動デバイスに対する損傷またはそれらの破壊という結果になる可能性がある。これは、ページワイドアレイ又は他の固定の業務用サイズの印刷デバイスを駆動する印刷システムにおいて悪化させる可能性がある。その理由は、これらのより大きい印刷デバイスの路内に蓄積されたエネルギーの量が、幾つかの要因により遙かに大きいからである。
【0008】
本願の回路トポロジーは、噴射抵抗に電力を供給する供給電圧(VPP)又は噴射抵抗にVPPを接続する多数の電界効果トランジスタ(FET)を切り替えるための供給電圧(VPP_logic supply)から補足的な又は専用の供給電圧(VDD)源の生成を利用する。一例において、VDD電圧生成またはVDD_plp電圧生成は、オンダイの場所に移動する。VDD_plpは、本願の回路トポロジーにより生成された「電力喪失保護された」供給電圧のVDDを表し、VPPが制御されていない状態で噴射抵抗をオンに切り替えることを防止するために印刷デバイスおよびプリントヘッドダイの中の回路に提供される。
【0009】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される限り、用語「電力喪失」、「制御されていない電力喪失」又は類似の用語は、印刷デバイス内のあらゆる数の回路に対する何らかの電源喪失として広く理解されるべきであることが意図されている。
【0010】
更に、明細書および添付の特許請求の範囲において使用される限り、用語「多数の」又は類似の用語は、1〜無限大を含む任意の正数(ゼロは数ではないが、数がない)として広く理解されるべきであることが意図されている。
【0011】
以下の説明において、説明の目的で、本システム及び方法の完全な理解を提供するために、多くの特定の細部が記載される。しかしながら、当業者には明らかなように、本装置、システム及び方法は、これら特定の細部を用いずに実施され得る。明細書において「例」又は類似の用語に対する言及は、その例に関連して説明された特定の特徴、構造または特性が説明されたように含まれるが、他の例において含まれることができないことを意味する。
【0012】
さて、図面を参照すると、図1Aは、本明細書で説明される原理の一例による、電力喪失保護回路を組み込む印刷デバイス(100)の図である。印刷デバイス(100)は、多数のプリントヘッド(110)を含むことができる。各プリントヘッドは、多数の抵抗インク噴射要素(120)及び当該抵抗インク噴射要素(120)を駆動するための多数の高電圧回路(121)を含む。高電圧源(VPP)は、プリントヘッド(110)に電気結合されて、プリントヘッドの高電圧回路(121)に電力を供給する。
【0013】
多数の低電圧回路(123)が高電圧回路(121)に結合されて、多数の噴射制御信号を高電圧回路に提供する。電圧調整器(124)によりもたらされる低電圧電源(VDD_plp)(125)は、入力電圧を調整するために設けられる。VDD_plpは、低電圧回路(123)に接続されて、低電圧回路(123)に電力を供給する。電力喪失検出デバイス(126)が、印刷デバイス(100)に対する電力喪失を検出するために設けられる。さて、これら様々な要素が、図1B図11に関連して、より詳細に説明される。
【0014】
図1Bは、本明細書で説明される原理の一例による、電力喪失保護回路(112)を組み込む印刷デバイス(100)の図である。印刷デバイス(100)は、電子デバイスにおいて実施され得る。印刷デバイス(100)は、スタンドアローンのハードウェア、モバイルアプリケーション、コンピューティングネットワーク経由、又はそれらの組み合わせを含む任意のデータ処理状況で利用され得る。更に、印刷デバイス(100)は、コンピューティングネットワーク、パブリックなクラウド化ネットワーク、プライベートなクラウド化ネットワーク、ハイブリッドのクラウド化ネットワーク、他の形態のネットワーク、又はこれらの組み合わせにおいて使用され得る。
【0015】
一例において、印刷デバイス(100)により提供される方法は、例えばサードパーティによるネットワークを介したサービスとして提供される。この例において、当該サービスには、例えば、以下のものが含まれることができ、即ち、多数のアプリケーションをホスティングするサービス型ソフトウェア(Software as a Service:SaaS);例えば数ある中でもオペレーティングシステム、ハードウェア、及び記憶装置を含むコンピューティングプラットフォームをホスティングするPaaS(Platform as a Service);例えば数ある中でもサーバ、記憶コンポーネント、ネットワーク、及びコンポーネントのような機器をホスティングするIaaS(Infrastructure as a Service);APIaaS(Application Program Interface(API) as a Service);他の形態のネットワークサービス、又はそれらの組み合わせである。本システムは、1つ又は複数のハードウェアプラットフォームで実施されることができ、この場合、システムのモジュールは、1つのプラットフォームで又は複数のプラットフォームを横切って実行され得る。係るモジュールは、クラウド技術およびハイブリッドクラウド技術の、又はクラウド上で又はクラウドから離れて実施され得るSaaS(Software as a Service)として提供される様々な形態で実行することができる。別の例において、印刷デバイス(100)により提供される方法は、ローカルアドミニストレータにより実行される。
【0016】
その所望の機能を達成するために、印刷デバイス(100)は、様々なハードウェア構成要素(コンポーネント)を含む。これらハードウェア構成要素の中で、多数のプロセッサ(101)、多数のデータ記憶デバイス(102)、多数の周辺デバイスアダプター(103)、及び多数のネットワークアダプター(104)が存在できる。これらハードウェア構成要素は、多数のバス及び/又はネットワーク接続の使用を通じて相互接続され得る。一例において、プロセッサ(101)、データ記憶デバイス(102)、周辺デバイスアダプター(103)、及びネットワークアダプター(104)は、バス(105)を介して通信可能に結合され得る。
【0017】
プロセッサ(101)は、データ記憶デバイス(102)から実行可能コードを取り出して、当該実行可能コードを実行するためのハードウェアアーキテクチャを含むことができる。ここで説明される本明細書の方法に従って、プロセッサ(101)により実行される場合、実行可能コードにより、プロセッサ(101)は、多数の高電圧デバイスに対する制御されていない電力喪失を検出し、プリントヘッドの噴射制御回路に結合された電圧調整器を用いて、高電圧デバイスに対する高電圧源(VPP)が閾値電圧よりも下がるまで、プリントヘッド噴射制御回路に対する電力喪失保護供給電圧(VDD_plp)を維持することができる。コードの実行中、プロセッサ(101)は、多数の残りのハードウェアユニットから入力を受け取り、それらへ出力を提供することができる。
【0018】
データ記憶デバイス(102)は、プロセッサ(101)又は他の処理デバイスにより実行される実行可能プログラムコードのようなデータを格納することができる。説明されるように、データ記憶デバイス(102)は特に、本明細書で説明された機能を少なくとも実施するようにプロセッサ(101)が実行する多数のアプリケーションを表すコンピュータコードを格納することができる。
【0019】
データ記憶デバイス(102)は、揮発性および不揮発性メモリを含む様々なタイプのメモリモジュールを含むことができる。例えば、本例のデータ記憶デバイス(102)は、ランダムアクセスメモリ(RAM)(106)及び読み出し専用メモリ(ROM)(107)を含む。また、多くの他のタイプのメモリも利用されることができ、本明細書は、本明細書で説明された原理の特定の応用形態に適合することができるように、データ記憶デバイス(102)において多くの様々なタイプ(単数または複数)のメモリの使用を企図している。特定の例において、データ記憶デバイス(102)における異なるタイプのメモリは、異なるデータ記憶の要求(ニーズ)に使用され得る。例えば、特定の例において、プロセッサ(101)は、読み出し専用メモリ(ROM)(107)からブート(起動)することができ、ランダムアクセスメモリ(RAM)(106)に格納されたプログラムコードを実行することができる。
【0020】
データ記憶デバイス(102)は、数ある中でも、コンピュータ可読媒体、コンピュータ可読記憶媒体、又は持続性コンピュータ可読媒体を含むことができる。例えば、データ記憶デバイス(102)は、以下に限定されないが、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線、又は半導体のシステム、装置、又はデバイス、或いは上記の任意の適切な組み合わせとすることができる。コンピュータ可読記憶媒体の具体的な例は、例えば以下のものを含むことができ、即ち、多数のワイヤを有する電気接続、携帯用コンピュータのディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、消去可能PROM(EPROM又はフラッシュメモリ)、ポータブルCD−ROM、光学式記憶装置、磁気記憶装置、又は上記の任意の適切な組み合わせである。本明細書の文脈において、コンピュータ可読記憶媒体は、命令実行システム、装置、又はデバイスにより又はそれらに関連して使用するためのコンピュータ使用可能プログラムコードを含む又は格納することができる任意の有形媒体とすることができる。別の例において、コンピュータ可読記憶媒体は、命令実行システム、装置、又はデバイスにより又はそれらに関連して使用するためのプログラムを含む又は格納することができる任意の持続性媒体とすることができる。
【0021】
印刷デバイス(100)におけるハードウェアのアダプター(103、104)により、プロセッサ(101)が、印刷デバイス(100)の外部および内部にある様々な他のハードウェア要素と接続して機能することが可能になる。例えば、周辺デバイスアダプター(103)は、例えばユーザインターフェース(109)、マウス、又はキーボードのような入力/出力デバイスに対するインターフェースを提供することができる。また、周辺デバイスアダプター(103)は、外部記憶デバイス、例えばサーバ、交換機およびルータのような多数のネットワークデバイス、クライアントデバイス、他のタイプのコンピューティングデバイス、及びそれらの組み合わせのような他の外部デバイスに対するアクセスを提供することができる。
【0022】
ユーザインターフェース(109)は、印刷デバイス(100)のユーザが印刷デバイス(100)の機能と相互作用する及び当該機能を実施することを可能にするために設けられ得る。また、周辺デバイスアダプター(103)は、プロセッサ(101)とユーザインターフェース(109)、別の印刷デバイス又は他の媒体出力デバイスとの間のインターフェースを形成することができる。ネットワークアダプター(104)は、例えばネットワーク内の他のコンピューティングデバイスに対するインターフェースを提供することができ、それにより印刷デバイス(100)とネットワーク内に位置する他のデバイスとの間でデータの伝送が可能になる。
【0023】
印刷デバイス(100)は、プロセッサ(101)により実行される場合、データ記憶デバイス(102)に格納された多数のアプリケーションを表す実行可能プログラムコードに関連した多数のグラフィカルユーザインターフェース(GUI)をユーザインターフェース(109)に表示することができる。GUIは例えば、多数のユーザ対話型印刷オプションを表示することができる。
【0024】
印刷デバイス(100)は更に、印刷媒体上へインクを吐出するために使用される多数のプリントヘッド(110)を含む。プリントヘッド(110)は、コンピューティングデバイスから送られた印刷ジョブ内に含まれる命令に基づいて動作する。印刷ジョブは、例えばドキュメントを印刷するための命令を含む。プロセッサ(101)は、印刷ジョブを解釈し、印刷ジョブに含まれるドキュメントが印刷媒体上に描かれるように、プリントヘッド(110)が印刷媒体上にインクを吐出するようにする。
【0025】
多数のプリントヘッド(110)のそれぞれは、プリントヘッドダイ(111)を含む。プリントヘッドダイ(111)は、本明細書で説明された機能回路が製造される半導体材料のブロックから作成され得る。一例において、プリントヘッドダイ(111)は、フォトリソグラフィーのようなプロセスを通じて電子グレードシリコン(EGS)又は他の半導体のウェハー上に製造される。
【0026】
印刷デバイス(100)は更に、各プリントヘッド(110)のプリントヘッドダイ(111)の中へ製造された電力喪失保護回路(112)を含む。電力喪失保護回路(112)は、印刷デバイスに対する電力の予想外の又は制御されていない喪失によるプリントヘッドダイ(111)の多数の回路の制御において印刷デバイスを支援することができる。本明細書で説明されるように、印刷デバイスに対する電力の予想外の又は制御されていない喪失は、プリントヘッド(110)からインクを吐出するために使用される抵抗素子、又はプリントヘッドのプリントヘッドダイ(111)内に含まれる他の要素を破壊する可能性がある。
【0027】
一例において、電力喪失保護回路(112)は、VDD_plp電圧調整ブロック(図2図6、212)を含むことができる。一例において、VDD_plp電圧調整ブロック(図2図6、212)は、電力喪失の事象が発生する前、発生中、及び発生後に、多数の高電圧回路の噴射を制御する多数の低電圧回路にVDD_plpを連続して供給することができる。この例において、VDD_plp電圧調整ブロック(図2図6、212)は、低電圧回路にVDD_plpを連続して供給することができる。制御されていない電力喪失の事象が発生する場合、VDD_plp電圧調整ブロック(図2図6、212)は、高電圧回路またはその関連した論理線(VPP_logic)に印加される高電圧電源(VPP)が閾値よりも下がるまで、低電圧回路に対するVDD_plpを維持する。
【0028】
別の例において、VDD_plp電圧調整ブロック(図2図6、212)は、制御されていない電力喪失の事象が発生する場合に、低電圧回路にVDD_plpを供給するが、当該制御されていない電力喪失の事象が発生するまでイナクティブのままであることができる。この例において、プリントヘッドダイ(111)から離れて又はその上で生成されるVDD供給電圧は、制御されていない電力喪失の事象が発生するまで、デジタルの低電圧制御論理回路に電力を供給するために使用され得る。ひとたび電力喪失の事象が発生するならば、VDD_plp電圧調整ブロック(図2図6、212)は、VPP(209)及びVPP_logic(210)が閾値よりも下がるまで、低電圧回路に対するVDD_plpを維持する。
【0029】
上記の例において、VDD_plp電圧調整ブロック(図2図6、212)は、VPP又は関連した論理線(VPP_logic)からVDD_plp用の電力を得る及び導出する。このように、高電圧回路は、低電圧回路が電力供給されて高電圧回路の制御が少なくとも高電圧回路が電力供給されている間に維持されることを確実にすることにより、損傷から保護される。別の例において、VDD_plp電圧調整ブロック(図2図6、212)は、VDDと同じ電圧レベルにVDD_plpを維持する。高電圧回路は、噴射チャンバに流体結合された多数のノズルからインクが吐出されるプリントヘッド(110)の噴射チャンバのインク供給部内に位置する抵抗デバイスを含む。
【0030】
本システム及び方法の機能を使用しない場合、プリントヘッド(110)に電力供給する多数の電源は、正しいシーケンス(順序)で電源が切られない(パワーダウンされない)場合には、プリントヘッド(110)及びそれらの個々のプリントヘッドダイ(111)内の多数の回路に損傷を与える可能性がある。例えば、デジタルの低電圧制御論理回路に電力供給するために使用されるVDD供給電圧が失われるが、ノズル回路を駆動するために使用されるVPP及びVPP_logic供給電圧が依然として電力供給されている場合、プリントヘッド(110)は制御されていない噴射モードに入るかもしれない。この状況において、抵抗デバイスは、恐らく焼け切れて使用不能になり、プリントヘッド(110)を不良にし、何らかの後続の印刷において欠陥を残すであろう。また、他の回路の故障も、プリントヘッド(110)を使用不能にするかもしれない。電力喪失保護回路(112)の機能は、より詳細に後述される。
【0031】
印刷デバイス(100)は更に、本明細書で説明されたシステム及び方法の具現化形態において及びドキュメントを印刷する際に使用される多数のモジュールを含む。印刷デバイス(100)内の様々なモジュールは、独立して実行され得る実行可能プログラムコードを含む。この例において、様々なモジュールは、別個のコンピュータプログラム製品として格納され得る。別の例において、印刷デバイス(100)内の様々なモジュールは、多数のコンピュータプログラム製品内に統合されることができ、各コンピュータプログラム製品は、多数のモジュールを含む。印刷デバイス(100)は、電力喪失保護モジュール(113)を含むことができ、係る電力喪失保護モジュール(113)は、プロセッサ(101)により実行された場合、本明細書で説明されたような制御されていない電力喪失の事象が発生した際に低電圧回路に流れるVDD_plpを生成および維持する。
【0032】
印刷デバイス(100)は更に、印刷デバイス(100)、及び電力喪失保護回路(112)を含むその様々なハードウェア構成要素に電力供給するための電源(114)を含む。より詳細に後述されるように、電源(114)は、電力喪失保護回路(112)により使用される多数のタイプの電源に分割され得る。
【0033】
図2は、本明細書で説明される原理の一例による、電力喪失の事象中に最小数の噴射回路に電力を供給するためのオンダイのVDD_plp電圧調整器ブロック(212)を含む、図1の印刷デバイス(100)の電力喪失保護回路(112)の図である。電力喪失保護回路(112)の回路設計に関する幾つかの例は、図2図6に関連して説明される。図2の例は、VPPが安全な閾値電圧レベルよりも下がるまで、プリントヘッド(110)内の抵抗の噴射の制御を維持することを必要とする排他的な数の回路に対する電力を維持しようとする。
【0034】
図2の電力喪失保護回路(112)は、多数のサブ回路を含むことができる。サブ回路は、VDD_plp検出および制御回路(201)及びVDD_plp電圧調整器(202)を含むオンダイのVDD_plp電圧調整器ブロック(212)を含むことができる。電力喪失保護回路(112)のサブ回路は更に、最小噴射列論理回路(203)、レベルシフタ論理回路(204)、多数のデジタル及びアナログ制御回路(205)、デジタル制御入力(206)、他のサブ回路、及びそれらの組み合わせを含むことができる。これらサブ回路は、多数の高電圧回路(207)に直接的または間接的に結合される。図2図6の回路設計に関連して説明されるように、電力喪失保護回路(112)は、これらサブ回路の組み合わせを含むことができる。
【0035】
印刷デバイス(図1A及び図1B、100)は、主電源から電力を受け取り、当該電力を電力喪失保護回路(112)に供給する。図2に示されたように、高電圧電源(VPP)(209)、高電圧論理回路電源(VPP_logic)(210)及び低電圧源(VDD)(211)が、電力喪失保護回路(112)に供給され得る。VPP(209)は、プリントヘッド(110)の噴射チャンバ内に位置する噴射抵抗、電源パッド、信号パッド、信号受信器、及び高電圧電源を使用するプリントヘッドダイ(111)内の他の回路を含む多数の高電圧回路(207)に電力を供給するために使用される。一例において、VPP(209)は、正または負の約30Vを供給することができる。
【0036】
VPP_logic(210)は、噴射抵抗にVPP(209)を接続する多数の電界効果トランジスタ(FET)を切り替えるために使用される第2の高電圧源である。一例において、VPP_logic(210)はおおよそ、VPP(209)引く2Vだけ供給される電圧を供給することができる。別の例において、VPP_logic(210)は、正または負の約28Vを供給することができる。かくして、一例において、VPP_logic(210)は、VPP(209)より僅かに異なる電圧に設定され得る。これにより、電力喪失保護回路(112)は、システムの寄生を考慮することが可能になり、ノズルに対するエネルギー調整が行われ、その結果、サーマルインクジェット噴射事象において、同じ量のエネルギーが分散される。
【0037】
VDD(211)は、デジタル及びアナログ制御回路(205)のような多数の低電圧回路に電力を供給するために使用される。VDD(211)は、オンダイのVDD_plp電圧調整器ブロック(212)内のVDD_plp検出および制御回路(201)及びVDD_plp電圧調整器(202)に電力供給するために使用され、この場合、これら要素は、VPPが閾値よりも下がるまで、多数の低電圧回路に対するVDD_plpを維持するために使用される。VDD(211)は、高電圧回路(207)の機能を制御する、高電圧回路(207)に対するノズル噴射制御信号を伝達するために使用される低電圧回路制御論理回路およびアナログ機能に電力供給するために使用される。一例において、VDD(211)は、正または負の約5Vを供給することができる。
【0038】
低電圧回路(201、202、204、205及び206)は、印刷デバイス(図1A及び図1B、100)からデータ信号(219)を受け取り、本明細書で説明されるように、高電圧回路(207)内のノズルの噴射を制御するノズル噴射制御命令へと当該データ信号(219)を変換することができる。低電圧回路(201、202、204、205及び206)は更に、低電圧回路(201、202、204、205及び206)の動作用の電源として使用するためにVDD(211)を受け取ることができる。
【0039】
かくして、電力喪失保護回路(112)により制御されたプリントヘッドは、それ及びその様々なハードウェア構成要素に電力供給する複数の供給部を有する。しかしながら、VPP(209)及びVDD(211)が正確なシーケンス(順序)で電源が切られない場合には、高電圧回路(207)内の要素は、損傷を受けるかもしれない。例えば、VDD(211)が失われるが、VPP(209)及びVPP_logic(210)が依然として電力供給されている場合、プリントヘッドは制御されていない噴射モードに入るかもしれない。この場合、噴射抵抗が焼け切れて使用不能になる可能性があり、任意の後続の印刷において不良にする。他の回路の故障は、プリントヘッドを使用不能にする可能性がある。
【0040】
図2の電力喪失保護回路(112)は、デジタル及びアナログ制御回路(205)を含むことができる。通常動作中、VDD(211)により駆動されるデジタル及びアナログ制御回路(205)は、線215により示されたようにレベルシフタ論理回路(204)および高電圧回路(207)に噴射制御信号を供給するための論理回路および回路を含む。噴射制御信号(215)は、レベルシフタ論理回路(204)および高電圧回路(207)の様々な機能を制御し、その結果、レベルシフタ論理回路(204)および高電圧回路(207)は、安全に制御された態様でプリントヘッド(110)からのインクの吐出をもたらすことができる。また、噴射制御信号(215)は、インク噴射抵抗を含む高電圧回路(207)がプロセッサ(図1A、101)から電力損失保護回路(112)へ送られた印刷ジョブにより定義されたようにドキュメントを印刷するように、レベルシフタ論理回路(204)および高電圧回路(207)の様々な機能も制御する。
【0041】
図2の電力喪失保護回路(112)は更に、レベルシフタ論理回路(204)を含むことができる。図2の例は、ハイサイドのスイッチ設計として分類され得る。ハイサイドのスイッチ回路設計は、VPP(209)及びVPP_logic(210)のような外部イネーブル信号により制御される回路設計であり、高電圧回路(207)のような所与の負荷に対して電源を接続または切り離す。対照的に、ローサイドのスイッチ設計は、接地に対して負荷を接続または切り離す回路設計であり、それ故に負荷から電流をシンクする。
【0042】
図2のレベルシフタ論理回路(204)の説明を続けると、レベルシフタ論理回路(204)は、多数のトランジスタ及びそれらの関連したノズルを共用する多数のアクチュエータが噴射されるべきである際に、噴射制御信号(215)が当該トランジスタのゲートにゲート電圧を選択的に印加するスイッチング機構としての機能を果たす。デジタル及びアナログ制御回路(205)又は最小噴射列論理回路(203)からの低電圧デジタル信号を受信することに応じて、レベルシフタ論理回路(204)は、トランジスタのゲートにVPP_logic(210)を供給する。かくして、レベルシフタ論理回路(204)は、線216を介して高電圧回路(207)に送られた高電圧信号を通じてプリントヘッド内の多数のノズルを駆動する。プロセッサから送られた印刷ジョブは、デジタル及びアナログ制御回路(205)により、ノズルから吐出されるべきインクを支配する噴射制御信号(215)へと変換される。
【0043】
高電圧回路(207)は、デジタル及びアナログ制御回路(205)からの噴射制御信号(215)、及び線216を介してレベルシフタ論理回路(204)からのVPP(209)及びVPP_logic(210)を受け取り、これら信号および電圧を使用して、ノズルからインクを吐出するために使用される多数の抵抗素子を加熱する。
【0044】
図2の電力喪失保護回路(112)が電力喪失事象を除いて如何にして動作するかを説明したが、図2の電力喪失保護回路(112)は更に、VDD_plp検出および制御回路(201)及びVDD_plp電圧調整器(202)を含むオンダイのVDD_plp電圧調整器ブロック(212)、及び電力喪失事象が発生した場合に使用するための最小噴射列論理回路(203)を含むことができる。オンダイのVDD_plp電圧調整器ブロック(212)のVDD_plp検出および制御回路(201)は、低VDD(211)電圧および高VPP(209)又はVPP_logic(210)を検出するために使用される。より具体的には、VDD_plp検出および制御回路(201)は、VDD(211)が第1の閾値電圧よりも下がったか否か、VPP(209)又はVPP_logic(210)が第2の閾値電圧を上回ったままであるか否か、及びそれらの組み合わせを判定する。このように、VDD_plp検出および制御回路(201)は、印刷デバイス(図1A及び図1B、100)内で電力喪失事象が発生しているか否かを判断することができる。
【0045】
VDD_plp検出および制御回路(201)がそれぞれ、線218及び線217を介してVDD(211)及びVPP(209)又はVPP_logic(210)に電気接続されているので、VDD_plp検出および制御回路(201)は、印刷デバイス(図1A及び図1B、100)内で電力喪失事象が発生しているか否かを判断することができる。VDD_plp検出および制御回路(201)は、VDD(211)及びVPP(209)又はVPP_logic(210)を互いに及び上述した第1及び第2の閾値と比較する。図2において、VDD_plp検出および制御回路(201)は、VPP_logic(210)に結合され、VPP(209)に結合されていなように示されている。しかしながら、VDD_plp検出および制御回路(201)は、その所望の機能を達成するために、VPP_logic(210)、VPP(209)又は双方に結合され得る。
【0046】
より具体的には、VDD_plp検出および制御回路(201)が、電力喪失事象が発生していないと判断する場合、電力喪失保護回路(112)は、上述したように機能し、この場合、デジタル及びアナログ制御回路(205)及びレベルシフタ論理回路(204)が高電圧回路(207)を制御する。しかしながら、VDD_plp検出および制御回路(201)が、電力喪失事象が発生していると判断する場合、VDD_plp検出および制御回路(201)は、線213を介して、イネーブル命令をVDD_plp電圧調整器(202)に送る。このように、VDD_plp検出および制御回路(201)は、VDD_plp電圧調整器(202)をイネーブル又はディスエーブルにすることができる。
【0047】
図2の電力損失保護回路(112)は更に、VDD_plp電圧調整器(202)を含むことができる。VDD_plp電圧調整器(202)は、VDD_plp検出および制御回路(201)によりイネーブルにされた場合、VDD_plp(214、314、414、514)を生成して維持する。図2の例において、VDD_plp電圧調整器(202)は、本明細書で説明されるように、VDD_plp検出および制御回路(201)が印刷デバイス(図1A及び図1B、100)内で電力喪失事象が発生していることを検出する場合に、イネーブルにされる。VDD_plp(214、314、414、514)が、VPP(209)、VPP_logic(210)又は双方から生成される。かくして、VPP(209)、VPP_logic(210)又は双方からの電力が、VDD_plp検出および制御回路(201)及び線217を介してそれらの個々の線から引かれる。かくして、図2は、VPP_logic(210)に接続されたVDD_plp検出および制御回路(201)を示すが、他の例において、VDD_plp検出および制御回路(201)は、VPP(209)、VPP_logic(210)又は双方に接続され得る。
【0048】
図2の例において、VDD_plp電圧調整器(202)は、VDD_plp(214、314、414、514)を最小噴射列論理回路(203)に供給する。最小噴射列論理回路(203)は、VPP(209)又はVPP_logic(210)が閾値よりも下がるまで、高電圧回路(207)の制御を維持するための排他的および最小量の回路を含む。一例において、高電圧回路(207)の制御を維持するための排他的および最小量の回路は、デジタル及びアナログ制御回路(205)に類似した回路を含む。
【0049】
図2の電力喪失保護回路(112)は更に、デジタル制御入力(206)を含むことができる。デジタル制御入力(206)は、印刷デバイス(図1A及び図1B、100)からデータ信号(219)を受け取り、上述したように、電力喪失保護回路(112)が当該データ信号(219)を噴射制御信号へと処理することを可能にする。印刷デバイス(図1A及び図1B、100)に送られた印刷ジョブに基づいたノズル噴射命令の形態のデータ信号(219)は、デジタル制御入力(206)により受け取られ、印刷デバイス(図1A及び図1B、100)のプリントヘッド(図1A及び図1B、110)内の多数のノズルを駆動するために低電圧回路および高電圧回路(207)により使用される。
【0050】
一例において、VDD_plp電圧調整ブロック(図2図6、212)は、上述したように、電力喪失事象の発生前、発生中、及び発生後に多数の高電圧回路の噴射を制御する多数の低電圧回路に連続的にVDD_plpを供給することができる。別の例において、VDD_plp電圧調整ブロック(図2図6、212)は、制御されていない電力喪失事象が発生した場合に低電圧回路にVDD_plpを供給することができるが、上述したように当該制御されていない電力喪失事象が発生するまでイナクティブのままである。
【0051】
一例において、スタートアップ回路が、VDD_plp電圧調整器(202)から上流に電力喪失保護回路(112)内に含められ得る。多くの回路は、2つ以上の安定動作モードを有する。電力喪失保護回路(112)の全体が正確に機能することを保証するために、その入力の1つ又は複数が、初期化され得る。スタートアップ回路を利用することができる回路の例は、フリップフロップ、発振器、及び電流基準を含むことができる。ノード上の電圧、又は電流をブランチへ強制的に送り込むことにより、スタートアップ回路は、VDD_plp電圧調整器(202)を適切な初期状態にし、その後、通常動作を開始することができる。
【0052】
一例において、VDD_plp(214、314、414、514)が、高電圧回路(207)を制御する際に使用される全回路に供給される。この例において、電力喪失保護回路(112)は、全ての高電圧でない回路に対する電力喪失保護を行う。高電圧回路(207)を制御する際に使用される全回路にVDD_plp(214、314、414、514)を供給することは、電力喪失保護回路(112)がまるで制御されていない電力喪失事象が発生していないように機能し続けることを確実にするが、そのように行うことは、電力喪失保護回路(112)を製造するコストを増加させる可能性がある。
【0053】
別の例において、VDD_plp(214、314、414、514)は、高電圧回路(207)を制御する際に使用される排他的な数の回路に供給される。この例において、VDD_plp(214、314、414、514)により電力供給されるように選択された回路だけが、電流をほとんど引かないそれら回路であり、安全にパワーダウンすることを確実にするのに十分である。この例は、例えばデジタル及びアナログ制御回路(205)及び最小噴射列論理回路(203)の上流にノズルデータメモリを含む、DC電流を引くアナログ回路を除外する。また、これは、電力喪失保護回路(112)内の低電圧回路で見出されるような、高周波数デジタルスイッチング回路も除外する。
【0054】
さて、電力喪失保護回路(112)に関するアーキテクチャの幾つかの異なる例が、図3図6に関連して説明される。類似した要素、及び図2に関連して上述されたそれらの説明は、図3図6の例に同様に適用される。
【0055】
図3は、本明細書で説明される原理の一例による、電力喪失の事象中に全ての噴射回路に電力を供給するためのオンダイのVDD_plp電圧調整ブロック及びオンダイで生成されたVDD_plpを含む、図1の印刷デバイス(100)の電力喪失保護回路(112)の図である。図3の例は、VDD_plp電圧調整ブロック(図2図6、212)が、「VDDinternal」(314)の形態でVDD_plpを低電圧回路に連続して供給する状況を提供する。制御されていない電力喪失事象が発生した場合、VDD_plp電圧調整ブロック(212)は、高電圧回路またはその関連した論理線(VPP_logic)に印加される高電圧電源(VPP)が閾値よりも下がるまで、低電圧回路に対するVDD_plpを、最初に生成せずに維持する。
【0056】
図3の例において、VDD_plp検出および制御回路(201)は、VPP_logic(210)から供給電圧を連続的に導出し、連続的にVPP_logic(210)をイネーブルにしてVDD_plp電圧調整器(202)に供給する。VDD_plp電圧調整器(202)は、VDDinternal(314)を、噴射制御信号(215)の生成のためにデジタル及びアナログ制御回路(205)に供給する。図3の例は、ハイサイドのスイッチ設計として分類され得るが、ローサイドのスイッチ回路設計にも適用され得る。
【0057】
図3の例において、電力喪失保護回路(112)は、電力喪失事象の発生前、発生中および発生後に同様に機能する。この専用のVDDinternal(314)供給電圧は、プリントヘッドダイ(111)上の回路をそれほど必要としないという利点を有する。これは、電力喪失保護回路(112)内で相互接続するコストを低減し、もしそうでなければ必要とされる相互接続に関連した信頼性リスクを取り除く。しかしながら、図3の例において、コストは、プリントヘッドダイ(111)並びにプリントヘッドダイ(111)上の追加の要素およびデバイスの複雑性に起因して高くなる可能性がある。
【0058】
図4は、本明細書で説明される原理の一例による、電力喪失の事象が発生した場合に多数の噴射回路に電力を供給するためのオンダイのVDD_plp電圧調整器ブロック(212)を含む、図1の印刷デバイス(100)の電力喪失保護回路(112)の図である。図4の例は、VDD_plp電圧調整ブロック(図2図6、212)が、VDD_plpを低電圧回路(205)に連続して供給するように機能することができるか、又は制御されていない電力喪失事象が発生した場合にVDD_plpを低電圧回路に供給することができるが、制御されてない電力喪失事象が発生するまでイナクティブのままである状況を提供する。
【0059】
図4に示されるように、電力喪失保護回路(112)は、線217を介してVPP_logic(210)からVDD_plp(414)を導出し、VDD_plp(414)を、VDD_plp電圧調整器(202)及び線414を介してデジタル及びアナログ制御回路(205)に供給する。VDD_plp検出および制御回路(201)はVDD(211)及びVPP_logic(210)を互いに及び上述した第1及び第2の閾値と比較するので、図4の例は、電力喪失の事象が発生し、VDD_plp検出および制御回路(201)により検出された際にアクティブになる。しかしながら、図4の例は、連続的なVDD_plp(414)生成器として利用され得る。図4の例は、ハイサイドのスイッチ設計として分類され得る。
【0060】
図2の例と図4の例との間の1つの違いは、図4の例が、最小噴射列論理回路(203)にではなくて、デジタル及びアナログ制御回路(205)に直接的にVDD_plp(414)を供給する点である。これは、電力損失保護回路(112)を簡素化し、製造する際のコストの低減という結果になることができる。
【0061】
図5は、本明細書で説明される原理の一例による、多数の噴射回路に電力を供給するためのオンダイのVDD_plp電圧調整器ブロック(212)、及び組み合わされたVPP及びVPP_logic線(209)を含む、図1の印刷デバイス(100)の電力喪失保護回路(112)の図である。図5の例は、図4の例に類似するが、図5の例は、専用のVPP_logic線(210)を含まない。この例において、VDD_plp検出および制御回路(201)が、線517を介してVPP(209)からVDD_plp(514)を導出する。
【0062】
更に、図5の例は、VPP(209)からVPP_logic線(210)を導出するレベルシフタ論理回路のVPP_logic線(519)を含む。かくして、VPP(209)は、組み合わされたVPP(209)及びVPP_logic(210)線として説明され得る。
【0063】
図6は、本明細書で説明される原理の別の例による、多数の噴射回路に電力を供給するためのオンダイのVDD_plp電圧調整器ブロック(212)、及び組み合わされたVPP及びVPP_logic線を含む、図1の印刷デバイス(100)の電力喪失保護回路(112)の図である。図6の例は、ローサイドのスイッチ設計として分類されることができ、その理由は、高電圧回路(207)内のスイッチが、例えば接地のような低電源レールに接続されるからである。
【0064】
図6の例において、噴射制御信号(215)は、レベルシフタ論理回路(204)を含まずに、デジタル及びアナログ制御回路(205)から高電圧回路(207)に直接的に送られる。更に、図6の例は、組み合わされたVPP(209)及びVPP_logic(210)線であるVPP(209)線を含む。
【0065】
図2図6の例の全体にわたって、VDD_plp(214、314、414、514)がプリントヘッドダイ(111)上で生成される。プリントヘッドダイ(111)上でVDD_plp(214、314、414、514)を生成することの1つの利点は、VDD_plp電圧調整器ブロック(212)が物理的に、より小さくなることである。プリントヘッド(110)のプリントヘッドダイ(111)上の利用可能な面積は、プリントヘッドの製造コストの重大な原動力であるかもしれない。
【0066】
更に、図2図6の例の幾つかは、VDD_plp(214、314、414、514)を受け取ることから多数の回路を除外することができる。VDD_plp(214、314、414、514)を受け取ることから多数の回路を除外する利点は、VDD_plp(214、314、414、514)がオフダイで生成されて維持される場合、それが、VDD_plp(214、314、414、514)にかかる負荷が小さい場合にプリントヘッドダイ(111)から離れてVDD_plp(214、314、414、514)の電圧を維持する排他的回路を実現するためのコスト効率もより高くすることができることである。
【0067】
更に、VDD_plp電圧調整器ブロック(212)が多数の低電圧回路に連続的にVDD_plp(214、314、414、514)を供給しないが、代わりとして、制御されていない電力喪失事象が発生した場合にアクティブになる図2図6の例の幾つかでは、VDD_plp電圧調整器(202)がVDD_plp検出および制御回路(201)から命令を受け取り、本明細書で説明されたように多数の低電圧回路にVDD_plpを供給し始める。この例において、VDD_plp電圧調整器ブロック(212)は、制御されていない電力喪失事象が発生するまで、イナクティブのままである。制御されていない電力喪失事象が発生したか否かに関係なく、VDD_plp電圧調整器ブロック(212)が連続的にVDD_plp(214、314、414、514)を多数の低電圧回路に供給する例において、VDD_plp検出および制御回路(201)は、電力喪失保護回路(112)内のオプションとすることができる。
【0068】
さて、印刷デバイス(図1A及び図1B、100)に対する電力の制御された又は制御されていない喪失、及びその電力喪失保護回路(112)に関連した潜在能力が、図7図9に関連して説明される。図7図9の数字、値、単位、曲線、直線または他の態様は、電力の制御された又は制御されていない喪失に関連したプロセスを説明する際に使用されるべき単なる例である。
【0069】
図7は、本明細書で説明される原理の一例による、プリンタの制御されたパワーダウンのシーケンスを示すグラフである。印刷デバイス(図1A及び図1B、100)は、制御された及び安全な方法でプリントヘッド(図1A及び図1B、110)及びそれらの個々の高電圧回路(207)をパワーダウン(電源を切る)するように設計される。この制御されたパワーダウンは、回路に損傷を与えないシーケンスで、印刷デバイス(図1A及び図1B、100)内の回路をパワーダウンするためのプロトコルを使用し、当該印刷デバイス(図1A及び図1B、100)は、VDD_plp検出および制御回路(201)及びVDD_plp電圧調整器(202)を含むVDD_plp電圧調整器ブロック(212)、最小噴射列論理回路(203)、レベルシフタ論理回路(204)、デジタル及びアナログ制御回路(205)、デジタル制御回路(206)、及び高電圧回路(207)を含む。制御されたパワーダウンは、要求がそのように行うようにされた場合、例えばユーザが印刷デバイス(図1A及び図1B、100)の電源ボタンを押す場合、行われ得る。このシーケンスは、VPP図2図6、209)、VPP_logic(図2図4、210)、及びVDD図2及び図3、211、221)のような、プリントヘッドで使用される複数の電源を、特定のシーケンスでパワーダウンすることを含むことができる。
【0070】
図2及び図6に関連して説明された例において、VDD_plp電圧調整器ブロック(212)の高電圧電源(VPP)(209)、又は高電圧論理回路電源(VPP_logic)(210)からの電力の導出は、VDD_plp検出および制御回路(201)、VDD_plp電圧調整器(202)、最小噴射列論理回路(203)、レベルシフタ論理回路(204)、デジタル及びアナログ制御回路(205)、及びデジタル制御回路(206)に供給されている電圧が、VPPが安全なレベルまで下がった後に、安全な電圧レベルに下がることを確実にする。更に、電力喪失保護回路(112)が低電圧回路(201、202、203、204、205及び206)及び高電圧回路(207)をパワーダウンする方法は、電力喪失保護回路(112)内の電源のアーキテクチャに無関係であり、且つ例えば印刷デバイス(図1A及び図1B、100)のプロセッサ(図1A、101)により提供されるファームウェアの順序制御に無関係である。
【0071】
図7に示されるように、y軸は、印刷デバイス(図1A及び図1B、100)の電力喪失保護回路(112)内の電圧レベルを表す。x軸は時間を表す。一例において、印刷デバイス(図1A及び図1B、100)及びその様々な回路をパワーダウンするのにかかる時間は、マイクロ秒またはミリ秒のオーダーとすることができる。しかしながら、本システム及び方法は、VDD_plp電圧調整器ブロック(212)が、本明細書で説明されたように、VPP(209、219)の十分な降下まで、VDD_plp(214)を供給することを確実にするので、x軸およびその時間の表示は、何らかの必要な又は所定の時間期間に無関係である。
【0072】
最初に、印刷デバイス(図1A及び図1B、100)は、ブラケット706により示されるように通常の電圧で動作している。制御されたパワーダウンのシーケンスが始まる前のこの期間中、VPP(209)は例えば、約30ボルトであることができ、VDD(211)は例えば、5ボルトであることができる。これらは電圧の例であり、VPP(209)及びVDD(211)は、印刷デバイス(図1A及び図1B、100)内の回路の電圧要件に依存して、他の電圧または電圧範囲で動作することができる。図7図9において、線702は制御されたパワーダウンの前およびその間のVPP(209)の電圧レベルを示し、線703は制御されたパワーダウンの前およびその間のVDD(211)の電圧レベルを示す。
【0073】
線701は、印刷デバイス(図1A及び図1B、100)が制御されたパワーダウンのシーケンスを開始する場合を示す。制御されたパワーダウンのシーケンスが701で開始する場合、VPP(702)は降下し始める。制御されたパワーダウンのシーケンスが生じると、高電圧回路(207)内の多数のコンデンサのような多数の回路要素が、それらの蓄積したエネルギーを放散し始める。制御されたパワーダウン中、印刷デバイス(100)は、VPP(702)が閾値電圧(705)よりも下がるまで、VDD(703)の電圧レベルを維持する。これにより、高電圧回路(207)が、高電圧回路(207)内の回路に損傷を与えずに、制御された態様で安全にパワーダウンすることが可能になる。
【0074】
一例において、閾値電圧(705)は、約12ボルトである。この例において、閾値電圧(705)は12ボルトであり、その理由は、これがVPP_logic(210)をプリントヘッド(図1A及び図1B、110)内のノズルの噴射事象へと切り替えるために使用される多数の回路が動作可能である最小電圧レベルであるからである。しかしながら、VPP_logic(210)を切り替えるために使用される回路の動作に必要な閾値電圧(705)は、任意の電圧レベルとすることができる。ひとたびVPP_logic(210)により供給され且つ高電圧回路(207)内に蓄積された電圧が閾値電圧(705)よりも下がると、高電圧回路(207)に対する損傷の可能性は、軽減または除去される。
【0075】
VDD(703)は、VDD_plp検出および制御回路(201)、VDD_plp電圧調整器(202)、最小噴射列論理回路(203)、レベルシフタ論理回路(204)、デジタル及びアナログ制御回路(205)、及びデジタル制御回路(206)、又はそれらの組み合わせを含む、高電圧回路(207)を制御するために使用される多数の回路に電力供給するのに十分な電圧レベルに維持される。一例において、VDD(703)により維持される電圧レベルは、5ボルトである。しかしながら、高電圧回路(207)を制御するために使用される回路の動作に必要な電圧レベルは、任意の電圧レベルとすることができる。
【0076】
印刷デバイス(100)が制御されたパワーダウンのシーケンス中にVDD(703)の電圧レベルを維持する期間は、ブラケット707により示される。VDD(703)をその動作電圧レベルに維持する期間(707)は、VPP(702)が閾値電圧(705)よりも下がる線704で終了することができる。また、704において、VDD(703)は、VPP(702)が降下し続けるにつれて、降下することができる。
【0077】
図8は、本明細書で説明される原理の一例による、図2図6の電力喪失保護回路(112)を備えていない印刷デバイス(図1A及び図1B、100)の制御されていないパワーダウンのシーケンスを示すグラフである。図7に関連して上述されたように、印刷デバイス(図1A及び図1B、100)は最初、ブラケット706により示されたような通常の電圧で動作する。制御されていない電力損失事象が線801で生じることができ、この場合、線803は、制御されていないパワーダウンの前およびその間のVDD(211)の電圧レベルを示す。図8の制御されていないパワーダウンのシーケンスにおいて、VDD(803)は即座に降下し始める。
【0078】
線804は、低電圧回路(201、202、203、204、205及び206)が高電圧回路(207)を制御し続けることができる最小電圧レベルを示す。低電圧回路(201、202、203、204、205及び206)がこの低電圧閾値(804)を通過して降下する場合、低電圧回路(201、202、203、204、205及び206)は、高電圧回路(207)内で有害な高電圧駆動という結果になるかもしれない未知の状態になる可能性がある。
【0079】
図8に示されるように、VDD(803)は、高電圧回路(207)内の大きなキャパシタンスに部分的に起因して、VPP(702)が降下する速さよりも速く降下する。802により示された領域内において、たとえプリントヘッドダイ(図2図6、111)が多数のリセット信号の印加によってリセットされることができたとしても、低電圧回路(201、202、203、204、205及び206)は、比較的低いVDD(803)に起因して未知の状態になる可能性がある。これは、高電圧回路(207)の制御できない噴射という結果になる可能があり、高電圧回路(207)内の抵抗および他の能動デバイスに対する損傷またはそれらの破壊という結果になる可能性がある。この損傷の可能性を克服するために、電力喪失保護回路(112)は、ここで図9に関連して説明されるように、VPP(702)が閾値電圧(705)から落ちる後まで、VDD(803)をアクティブな電圧レベルに維持する。
【0080】
図9は、本明細書で説明される原理の一例による、図2図6の電力喪失保護回路(112)を備えた印刷デバイス(図1A及び図1B、100)の制御されていないパワーダウンのシーケンスを示すグラフである。図8に関連して説明されたように、線803は、制御されていないパワーダウンの前およびその間の、VDD(211)の電圧レベルを示す。VPP(702)が閾値電圧(705)から落ちる後まで、VDD(803)をアクティブな電圧レベルに維持するために、VDD_plp電圧調整ブロック(図2図6、212)は、線901により示されるように、VDD_plp(図2図6、214、314、414、514)を供給する。このように、多数の高電圧でない回路は、元のVDD(211)の代わりにVDD_plp(図2図6、214、314、414、514)を維持するためにVDD_plp電圧調整ブロック(図2図6、212)を用いることにより、VPP(702)が閾値電圧(705)から落ちる後まで、アクティブな電圧レベルに維持される。高電圧でない回路には、VDD_plp検出および制御回路(201)及びVDD_plp電圧調整器(202)を含むVDD_plp電圧調整器ブロック(212)、最小噴射列論理回路(203)、レベルシフタ論理回路(204)、デジタル及びアナログ制御回路(205)、デジタル制御回路(206)、及びそれらの組み合わせが含まれる。かくして、図9に関連して説明されたように、VDD_plp電圧調整ブロック(図2図6、212)は、印刷デバイス(図1A及び図1B、100)の多数の高電圧回路(図2図6、207)におけるプリントヘッド抵抗素子および他の能動デバイス内で制御されていない高電圧の放散の可能性を低減または除去し、係る高電圧の放散の可能性は、抵抗および他の能動デバイスを動作不能にする可能性がある。
【0081】
図10は、本明細書で説明される原理の一例による、電力喪失の事象中に印刷デバイス(図1A及び図1B、100)を動作させる方法(1000)を示す流れ図である。図10の方法(1000)は、多数の高電圧デバイス(図2図6、207)に対する制御されていない電力喪失を検出すること(ブロック1001)によって始めることができる。電力喪失の検出(ブロック1001)は、VDD_plp検出および制御回路(図2図6、201)のような電力喪失検出デバイスにより実行され得る。
【0082】
方法(1000)は、プリントヘッド噴射制御回路(図2図6、203、204、205)に結合されたVDD_plp電圧調整器(図2図6、202)を用いて、高電圧デバイス(図2図6、207)に対する高電圧源VPP(702)が閾値電圧(705)よりも下がるまで、プリントヘッド噴射制御回路に対する電力喪失保護供給電圧(VDD_plp)を維持することを更に含むことができる。噴射制御回路は、最小噴射列論理回路(203)、レベルシフタ論理回路(204)、デジタル及びアナログ制御回路(205)、及びそれらの組み合わせを含むことができる。
【0083】
このように、高電圧デバイス(図2図6、207)は、高電圧デバイス(図2図6、207)内の抵抗および他の能動デバイスに対する損傷またはそれらの破壊から保護される。このタイプの損傷は、高電圧デバイス(図2図6、207)が高電圧デバイス(図2図6、207)の噴射を制御するために使用される低電圧回路(図2図6、201、202、203、204、205及び206)及び他の回路により制御されずに噴射できるようになる場合に生じる可能性がある。
【0084】
図11は、本明細書で説明される原理の別の例による、電力喪失の事象中に印刷デバイス(図1A及び図1B、100)を動作させる方法を示す流れ図である。図11の方法は、外部電圧電源(VDD)を用いてプリントヘッドのダイ上でVDD_plp電圧を生成すること(ブロック1101)によって始めることができる。一例において、外部電源は、図2図4図5及び図6に関連して上述されたように、例えばVDDから直接的に、低電圧電源から得られることができる。別の例において、外部電源は、図3に関連して上述されたように、VPP又はVPP_logicのような高電圧電源から直接的に又は間接的に得られることができる。
【0085】
方法(1100)は、外部VDDが第1の閾値よりも下がったか否かを判定する(ブロック1102)ことを続けることができる。これは、VDD_plp検出および制御回路(図2図6、201)を用いて実行され得る。一例において、第1の閾値は、低電圧回路(201、202、203、204、205及び206)が高電圧回路(207)を制御し続けることができる任意の閾値電圧である。一例において、第1の閾値は、図8及び図9に示されるように、約3ボルトとすることができる。VDDが第1の閾値よりも下がらない場合(ブロック1102、判定NO)、方法(1100)は折り返してブロック1101に帰ることができ、VDD_plpが生成され続けることができる。
【0086】
VDDが第1の閾値よりも下がった場合(ブロック1102、判定YES)、VDD_plp検出および制御回路(図2図6、201)は、VPPが第2の閾値を上回るか否かを判定する(ブロック1103)。一例において、第2の閾値は、高電圧デバイス(図2図6、207)が機能し続けることができる任意の閾値電圧である。一例において、第2の閾値は、図7図9に示されたように約12ボルトとすることができる。VPPが第2の閾値を上回っていない場合(ブロック1103、判定NO)、高電圧デバイス(図2図6、207)が制御できずに機能し続けて、高電圧デバイス(図2図6、207)内の抵抗素子または他の回路を破壊またはそうでなければ動作不能にするかもしれない危険はない。かくして、方法(1100)は、折り返してブロック1101に帰ることができ、VDD_plpが生成され続けることができる。
【0087】
VPPが第2の閾値を上回っている場合(ブロック1103、判定YES)、高電圧デバイス(図2図6、207)が制御できずに機能し続けて、高電圧デバイス(図2図6、207)内の抵抗素子または他の回路を破壊またはそうでなければ動作不能にするかもしれない危険がある。従って、方法(1100)は、VDD_plp電圧調整器(図2図6、202)によって、VPP、又はVPPに関連したVPP論理回路電源(VPP_logic)を用いてVDD_plpを生成することができる(ブロック1104)。
【0088】
本システム及び方法の態様は、本明細書で説明される原理の例による、方法、装置(システム)及びコンピュータプログラム製品の流れ図および/またはブロック図に関連して本明細書で説明される。流れ図およびブロック図の各ブロック、及び流れ図およびブロック図のブロックの組み合わせは、コンピュータ使用可能プログラムコードにより実現され得る。コンピュータ使用可能プログラムコードは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又は他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサに提供されてマシンをもたらすことができ、その結果、コンピュータ使用可能プログラムコードは、例えば印刷デバイス(100)又は他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサ(101)を介して実行された場合、流れ図および/またはブロック図のブロック(単数または複数)に指定された機能または動作を実現する。一例において、コンピュータ使用可能プログラムコードは、コンピュータ可読記憶媒体内に埋め込まれることができ、例えばコンピュータ可読記憶媒体はコンピュータプログラム製品の一部である。一例において、コンピュータ可読記憶媒体は、持続性コンピュータ可読媒体である。
【0089】
本明細書および図面は、電力喪失事象中に印刷デバイスを動作させるためのシステム及び方法を説明する。方法は、電力喪失検出デバイスを用いて、多数の高電圧デバイスに対する制御されていない電力喪失を検出することを含むことができる。方法は更に、プリントヘッド噴射制御回路に結合された電圧調整器を用いて、高電圧デバイスに対する高電圧源(VPP)が閾値電圧よりも下がるまで、プリントヘッド噴射制御回路に対する電力喪失保護供給電圧(VDD_plp)を維持することを含む。印刷デバイスの回路トポロジーは、多数のプリントヘッドを噴射するために使用される多数の高電圧デバイスに接続された高電圧電源(VPP)を含む。当該回路トポロジーは更に、印刷デバイスに対する電力の喪失を検出するための電力喪失検出デバイス、及び電力喪失保護供給電圧(VDD_plp)を生成するために入力電圧を調整するための電圧調整器を含む。電力喪失検出デバイスが印刷デバイスに対する電力の喪失を検出する場合、VDD_plpがプリントヘッド噴射制御回路に供給される。プリントヘッド噴射制御回路は、高電圧デバイス内の電流を制御する。
【0090】
電力喪失事象中の印刷デバイスのこの動作は、多数の利点を有することができ、当該利点には、幾つかある利点の中でも特に、(1)高電圧回路内の抵抗および他の回路を、電力喪失事象に起因する損傷から保護する、(2)余分なシステムレベルの構成要素を必要としないことにより、及び既存のパワーダウン回路の考えられるコスト削減を可能にすることにより印刷デバイスの製造コストを低減する、及び(3)最小ダイ面積を用いてプリントヘッドダイ上に完全集積化電力喪失保護回路を提供することが含まれる。
【0091】
上記の説明は、説明される原理の例を例示および説明するために提供された。この説明は、網羅的にする、又はこれらの原理を開示された任意の全く同一の形態に制限することは意図されていない。上記の教示に鑑みて、多くの変更および変形が可能である。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11