(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552616
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】圧力波過給機
(51)【国際特許分類】
F02B 33/42 20060101AFI20190722BHJP
【FI】
F02B33/42
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-524107(P2017-524107)
(86)(22)【出願日】2015年7月24日
(65)【公表番号】特表2017-521607(P2017-521607A)
(43)【公表日】2017年8月3日
(86)【国際出願番号】EP2015066983
(87)【国際公開番号】WO2016012585
(87)【国際公開日】20160128
【審査請求日】2018年7月12日
(31)【優先権主張番号】14178435.5
(32)【優先日】2014年7月24日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】14180557.2
(32)【優先日】2014年8月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517025567
【氏名又は名称】アントロヴァ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Antrova AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マリオ スコピル
【審査官】
北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭31−008055(JP,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0037907(US,A1)
【文献】
米国特許第02759660(US,A)
【文献】
英国特許出願公告第00680358(GB,A)
【文献】
特開2011−174378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 33/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関用の新気(2a)を圧縮する圧力波過給機(1)であって、
低温ガスケーシング(6)と、
高温ガスケーシング(7)と、
両前記ガスケーシング(6,7)間に配置されるロータケーシング(11)と、
を備え、前記ロータケーシング(11)内には、回転可能なセルロータ(8)が配置されており、前記セルロータ(8)は、複数のロータセル(10)を有し、前記ロータセル(10)は、前記セルロータ(8)の延在方向で延在し、流体を導く接続を形成し、前記高温ガスケーシング(7)は、高圧排ガス通路(4)及び低圧排ガス通路(5)を有し、前記低温ガスケーシング(6)は、新気通路(2)及び給気通路(3)を有し、前記高圧排ガス通路(4)、前記低圧排ガス通路(5)、前記新気通路(2)及び前記給気通路(3)は、流体を導くように前記セルロータ(8)に接続されており、前記低温ガスケーシング(6)は、セルロータ軸受(14)を有し、前記セルロータ(8)は、ロータ軸(12)に結合されており、前記ロータ軸(12)は、前記セルロータ軸受(14)内で支持されており、前記セルロータ(8)は、前記ロータ軸(12)の延在方向で分割されており、少なくとも第1のセルロータ部分(8a)及び第2のセルロータ部分(8b)を有し、前記第1及び第2のセルロータ部分(8a,8b)は、前記ロータ軸(12)の延在方向で相互に離間して、間隙(18)を形成しており、前記間隙(18)が開いていることで、前記第1のセルロータ部分(8a)から前記第2のセルロータ部分(8b)にかけて前記ロータ軸(12)の延在方向で並んで位置する複数のロータセル(10)は、開いた前記間隙(18)を介して流体を導くように互いに接続されている、
ことを特徴とする圧力波過給機。
【請求項2】
前記間隙(18)は、最大0.5mmの幅を有する、請求項1に記載の圧力波過給機。
【請求項3】
前記セルロータ(8)は、前記ロータ軸(12)の延在方向で中央にて分割されている、請求項1又は2に記載の圧力波過給機。
【請求項4】
前記高温ガスケーシング(7)は、第2のセルロータ軸受(13)を有し、かつ前記セルロータ(8)の前記ロータ軸(12)は、前記低温ガスケーシング(6)内に設けられた前記第1のセルロータ軸受(14)内でも、前記高温ガスケーシング(7)内に設けられた前記第2のセルロータ軸受(13)内でも支持されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載の圧力波過給機。
【請求項5】
前記第1のセルロータ部分(8a)及び/又は前記第2のセルロータ部分(8b)は、堅固に前記ロータ軸(12)に結合されている、請求項1から4までのいずれか1項に記載の圧力波過給機。
【請求項6】
前記第1のセルロータ部分(8a)及び前記第2のセルロータ部分(8b)は、前記ロータ軸(12)の延在方向で移動可能に前記ロータ軸(12)上に配置されている、請求項1から4までのいずれか1項に記載の圧力波過給機。
【請求項7】
前記第1及び第2のセルロータ部分(8a,8b)間に、両前記セルロータ部分(8a,8b)に対して互いに突き放す力を発生させるばね(28)が配置されている、請求項1から6までのいずれか1項に記載の圧力波過給機。
【請求項8】
前記高温ガスケーシング(7)の端面(7f)と前記第1のセルロータ部分(8a)の第1の端面(8c)との間の所定の間隙幅(16)を保証すべく、前記ロータ軸(12)に堅固にストッパ(12c)が結合されており、前記ストッパ(12c)に前記第1のセルロータ部分(8a)が当接する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の圧力波過給機。
【請求項9】
前記セルロータ(8)は、前記ロータ軸(12)の延在方向で並んで配置されている多数のセルロータ部分(8a,8b)を有し、多数とは、3乃至30の範囲にある、請求項1から8までのいずれか1項に記載の圧力波過給機。
【請求項10】
前記第1のセルロータ部分(8a)及び前記第2のセルロータ部分(8b)は、異なる材料からなり、前記第1のセルロータ部分(8a)の材料は、前記第2のセルロータ部分(8b)の材料より高い耐熱性を有する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の圧力波過給機。
【請求項11】
前記第1のセルロータ部分(8a)は、高熱剛性、耐熱性の鋼からなる、請求項10に記載の圧力波過給機。
【請求項12】
前記第2のセルロータ部分(8b)は、プラスチックからなる、請求項10又は11に記載の圧力波過給機。
【請求項13】
前記第1のセルロータ部分(8a)及び前記第2のセルロータ部分(8b)は、前記ロータ軸(12)の延在方向で並んで配置されており、移行部を有し、前記移行部にラビリンスシール(26)が配置されている、請求項1から12までのいずれか1項に記載の圧力波過給機。
【請求項14】
前記第1のセルロータ部分(8a)及び前記第2のセルロータ部分(8b)は、前記ロータ軸(12)の延在方向で並んで配置されており、前記第2のセルロータ部分(8b)と、前記ロータケーシング(11)の、前記第2のセルロータ部分(8b)を包囲する区域(11a)とは、前記第2のセルロータ部分(8b)と前記包囲する区域(11a)とが相互にラビリンスシール(26)を形成するように、相互に調整されて構成されている、請求項1から11までのいずれか1項に記載の圧力波過給機。
【請求項15】
前記高温ガスケーシング(7)は、熱交換器(7c)を有し、前記熱交換器(7c)は、前記高圧排ガス通路(4)が冷却可能に構成されている、請求項1から14までのいずれか1項に記載の圧力波過給機。
【請求項16】
前記熱交換器(7c)は、先に前記第2のセルロータ軸受(13)が冷却され、次に前記高圧排ガス通路(4)が冷却されているように構成されている、請求項14に記載の圧力波過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力波過給機に関する。
【0002】
従来技術
内燃機関により運転される車両に対し、法規は、有害物質排出を一層削減することと、特に燃料消費量を低減することを求めている。その際、燃料のエネルギを機械エネルギに変換するプロセスは、観念的なカルノーサイクルに依拠しているので、内燃機関の効率は、最大約40%に制限されている。燃料中に含まれる残余のエネルギは、損失熱として内燃機関のエンジンブロックを介して又は排ガスを介して放出されてしまう。内燃機関の効率をさらに高めるために、内燃機関は過給される。過給時、燃焼プロセスのために必要な、吸い込んだフレッシュエアあるいは新鮮空気(新気)は、圧縮され、その結果、ガス交換プロセスに際し、シリンダのより高い充填効率が達成される。シリンダにおける新気のより高い充填効率は、内燃機関の摩擦損失は同じまま、燃料のより高い供給量、例えば噴射量、ひいては、燃焼サイクル毎の燃焼出力の向上を可能にする。これにより、内燃機関の実効出力は、向上するので、提供可能な出力は同じまま、行程容積のより小さいエンジンを使用し、ひいては、燃料消費量及びCO
2排出量を減らすことができる。
【0003】
内燃機関を過給する圧縮機として、特に圧力波過給機が好適である。圧力波過給機、例えば欧州特許出願公開第0235609号明細書において公知である圧力波過給機は、その際、直接的なガス接触を介して、吸い込んだ新気を圧縮するのに排ガスの流動エネルギを利用しており、最も頻繁に見られる構造形態にあっては、回転するセルロータを備えて形成される。内燃機関の実効効率向上を達成するには、圧力波過給機による過給プロセスが同じく高い効率で実施されることが、特に重要である。
【0004】
公知の圧力波過給機は、圧力波過給機の運転中、回転するセルロータの機械的損傷を回避するために、回転するセルロータと固定部との間の間隙が比較的大きくとられているという欠点を有している。この比較的大きな間隙は、運転中、ただし、とりわけコールドスタート中、効率の低下を結果として伴う。独国特許出願公開第102012101922号明細書は、間隙幅を減じた圧力波過給機を開示している。この装置における欠点は、噛んで動かなくなってしまう傾向がこの装置にはあり、噛んだ後に間隙幅を減じることがもはや不可能である点にある。
【0005】
発明の概要
本発明の課題は、効率を高めた圧力波過給機を形成することである。
【0006】
この課題は、請求項1の特徴を有する圧力波過給機により解決される。従属請求項2乃至16は、さらなる有利な構成に関する。
【0007】
上記課題は、特に、内燃機関用の新気を圧縮する圧力波過給機であって、低温ガスケーシングと、高温ガスケーシングと、両ガスケーシング間に配置されるロータケーシングと、を備え、ロータケーシング内には、回転可能なセルロータが配置されており、セルロータは、複数のロータセルを有し、ロータセルは、セルロータの延在方向で延在し、流体を導く接続を形成し、高温ガスケーシングは、高圧排ガス通路及び低圧排ガス通路を有し、低温ガスケーシングは、新気通路及び給気通路を有し、高圧排ガス通路、低圧排ガス通路、新気通路及び給気通路は、流体を導くようにセルロータに接続されており、低温ガスケーシングは、セルロータ軸受を有し、セルロータは、ロータ軸に結合されており、ロータ軸は、セルロータ軸受内で支持されており、セルロータは、ロータ軸の延在方向で分割されており、少なくとも第1のセルロータ部分及び第2のセルロータ部分を有し、第1及び第2のセルロータ部分は、ロータ軸の延在方向で相互に離間して、間隙を形成しており、間隙が開いていることで、第1のセルロータ部分から第2のセルロータ部分にかけてロータ軸の延在方向で並んで位置する複数のロータセルは、開いた間隙を介して流体を導くように互いに接続されている、圧力波過給機により解決される。
【0008】
さらに上記課題は、特に、内燃機関用の新気を圧縮する圧力波過給機であって、低温ガスケーシングと、高温ガスケーシングと、両ガスケーシング間に配置されるロータケーシングと、を備え、ロータケーシング内には、回転可能なセルロータが配置されており、高温ガスケーシングは、高圧排ガス通路及び低圧排ガス通路を有し、低温ガスケーシングは、新気通路及び給気通路を有し、高圧排ガス通路、低圧排ガス通路、新気通路及び給気通路は、流体を導くようにセルロータに接続されており、低温ガスケーシングは、セルロータ軸受を有し、セルロータは、ロータ軸に結合されており、ロータ軸は、セルロータ軸受内で支持されており、セルロータは、ロータ軸の延在方向で分割されており、少なくとも第1のセルロータ部分及び第2のセルロータ部分を有する、圧力波過給機により解決される。
【0009】
圧力波過給機、特に圧力波過給機のセルロータは、高い温度変動時にも確実かつ高信頼性の運転が保証されているように構成されていなければならない。而るに圧力波過給機の温度は、例えば自動車の始動時、周囲温度と同じである。内燃機関からセルロータに流入すべき排ガスは、例えばガソリンエンジンの場合、運転中、約1050℃までの排ガス温度を有している。このことは、熱に起因したセルロータの長さ膨張を結果として伴う。
【0010】
本発明に係る圧力波過給機は、ロータ軸の延在方向で分割されて少なくとも第1のセルロータ部分及び第2のセルロータ部分を有するセルロータを備えており、その結果、第1及び第2のセルロータ部分間には、ロータ軸の延在方向で間隙が形成されている。間隙は、有利な一構成において、周囲温度にあるとき、最大0.5mmの幅を有している。有利な一構成において、間隙は、セルロータの中央に配置されている。
【0011】
本発明に係るセルロータは、温度に起因した長さ膨張に伴い、前記間隙が温度上昇中縮小するあるいは温度低下中拡大するように構成されている。このように構成されたセルロータを備える圧力波過給機は、特に有利な一構成において、セルロータの端面と高温ガスケーシングの端面との間の間隙が、温度にかかわらず同じ又は略同じ間隙幅を有し、この間隙幅を、有利には、極めて小さく維持、好ましくは0.05乃至0.2mmの範囲、好ましくは約0.1mmとすることができるという特性を有している。この小さな間隙幅は、セルロータの端面と高温ガスケーシングの端面との間の領域で、圧力損失が生じないか、又は僅かにしか生じないことを結果として伴う。このような圧力波過給機1は、例えば、エンジンの温度が低くても、過給圧を極めて迅速に高めることができるので、良好なコールドスタート特性を有している。
【0012】
有利な一構成において、セルロータのロータ軸は、低温ガスケーシング内で第1の軸受により片側でしか支持されていない。このような配置は、セルロータの片持ち式の支持ともいう。別の有利な一構成において、ロータ軸は、両側で、つまり低温ガスケーシング内で支持されていると同時に、高温ガスケーシング内に設けられた第2の軸受によっても支持されている。
【0013】
別の有利な一構成において、セルロータは、長手方向で並んで配置される多数のセルロータ部分、例えば3乃至30個のセルロータ部分からなり、隣り合って配置されるセルロータ部分は、好ましくは、間隙を介して相互に離間している。しかし、間隙は、隣り合って配置されるセルロータ部分が、特に高温状態において、相互に接触するように、狭く構成されていてもよい。高温ガスケーシング側の第1のセルロータ部分は、耐熱性の金属、好ましくは耐熱性の鋼からなる。その後のセルロータ部分は、もはや、それほど高い耐熱性を必要としないので、これらのセルロータ部分は、例えばプラスチックからなっていてもよい。
【0014】
別の有利な一構成において、圧力波過給機は、熱交換器を備えており、熱交換器は、高温ガスケーシング内に配置されるセルロータ用の第2の軸受を少なくとも冷却するように配置され、構成されている。加えて、特に有利な一構成において、高温ガスケーシング内で、内燃機関から流れ来る高圧排ガス流が冷却される。高温ガスケーシング内で、流れ来る排ガス流を冷却することは、高温ガスケーシングがより低い温度を有し、排ガス流がより低い温度でセルロータに流入し、その結果、セルロータもより低い運転温度を有することを結果として伴う。このことは、高温ガスケーシング及びセルロータが、温度上昇中、より僅かにしか膨張しないこと、あるいは温度低下中、より僅かにしか収縮しないことを結果として伴う。冷却は、セルロータ用の第2の軸受を高温ガスケーシング内に配置することを可能にする。これにより、セルロータを第2の軸受内で支持することが可能であるので、セルロータの端面は、所定の位置を有し、これにより、セルロータの端面と高温ガスケーシングの端面との間の間隙を、小さく維持することができる。最も有利な構成において、セルロータは、両側で、高温ガスケーシング内に設けられた第2の軸受及び低温ガスケーシング内に設けられた第1の軸受内で支持されている。加えて有利な一構成において、第1の軸受及び/又は第2の軸受は、潤滑、特にオイル潤滑又はグリース潤滑されている。セルロータの両側の支持は、セルロータの従来公知の片持ち式の支持から脱却することを可能にする。片持ち式の支持には、高温及び高回転数時にロータのトランペット状の変形が生じるという欠点があった。
【0015】
本発明に係る圧力波過給機は、セルロータのトランペット状の変形が、もはや生じないか、仮に生じても僅かであるという利点を有している。本発明に係る圧力波過給機は、セルロータと高温ガスケーシングとの間の冷間遊びを極めて小さく維持することを可能にし、間隙幅が、好ましくは0.05乃至0.2mmの範囲、好ましくは約0.1mmにあるという利点を有している。本発明に係る圧力波過給機は、この小さな間隙幅に基づいて、コールドスタート特性が大幅に改善されているという利点を有している。これは、圧力波過給機が、小さな間隙幅に基づいて、既にコールドスタート期間中、十分に高い過給圧を発生し得ることによる。本発明に係る圧力波過給機は、温度が例えば約200℃の範囲にあるときに既に、十分に高い過給圧を発生する。
【0016】
有利な一構成において、熱交換器の冷却出力は、コールドスタート中、圧力波過給機ができる限り短時間で例えば約200℃の必要な運転温度に達するように、低い冷却出力でしか冷却されないか、又はまったく冷却されないように制御される。冷却出力は、ある特定の運転温度、例えば300℃から、流入する排ガスを冷却すべく高められる。
【0017】
加えて、特に有利な一構成において、熱交換器は、圧力波過給機から流出する排ガス流も、好ましくは低圧排ガス通路を冷却することで、冷却するように構成されている。
【0018】
本発明に係る圧力波過給機は、排気装置内において未燃の炭化水素の後着火がもはや生じないか、又は殆ど生じないという別の利点を有しており、これは、排気装置に導かれる排ガス流の温度が明らかに減じられ、かつ好ましくは、高温ガスケーシングの温度も明らかに減じられていることによる。而して、高温ガスケーシングを後にした排ガス流の温度は、例えば約700℃又は700℃未満であり得る。高温ガスケーシングの表面温度は、例えば約120℃であり得る。有利には、熱交換器は、高温ガスケーシング内を延在する通路として構成されており、通路を通して冷却媒体として水が流れている。このように構成された熱交換器は、高温ガスケーシングを冷却するのに特に好適であるので、例えば高温ガスケーシングをアルミニウム、アルミニウム合金又は軽合金から形成することが可能である。この種の金属から製造される高温ガスケーシングは、この金属が高い熱伝導性を有するため、運転中、熱損傷を受けず、かつ高温ガスケーシングは、過熱が生じないように冷却される。
【0019】
加えて本発明に係る圧力波過給機は、排ガス流の冷却により排ガスの体積流量が減じられるという利点を有している。このことは、圧力波過給機内の排ガス管路の寸法を小さくすることができること、あるいは既存の圧力波過給機を、排ガス圧送容量を高めて運転することができることを結果として伴う。
【0020】
加えて本発明に係る圧力波過給機は、圧力波過給機、特に高温ガスケーシング及び低温ガスケーシングを、ただしセルロータも、比較的温度耐性の低い素材、ひいては比較的安価な素材により形成することができるという利点を有している。特に有利な一構成において、少なくとも高温ガスケーシングは、重量に関して比較的軽い高温ガスケーシングを形成すべく、かつ好ましくは、高温ガスケーシングを、熱伝導性を高めて形成すべく、アルミニウム、アルミニウム合金その他の軽合金から構成される。このような圧力波過給機は、特に軽量に構成されているという利点と、排ガス流を特に効率的に冷却することができるという利点とを有している。アルミニウム又は相応の合金からなる高温ガスケーシングは、高温ガスケーシングが極めて迅速に昇温され、その結果、圧力波過給機が、コールドスタート時、極めて短時間で必要な運転温度を有するという利点を有している。これにより、本発明に係る圧力波過給機を装備した内燃機関は、有利なコールドスタート特性を示す。このことは、圧力波過給機が、例えば小さな行程容積を有するガソリンエンジンにおいて、極めて迅速にコールドスタート後に作用を発現することを結果として伴う。このことは、例えばより良好な加速挙動と、より低い有害物質排出とを結果として伴う。
【0021】
熱交換器は、有利には、水冷部、特に高温ガスケーシング内に冷却通路が配置され、冷却通路を通って冷却水が流動するようにした水冷部を有している。
【0022】
セルロータは、有利には、能動的に駆動、例えばベルトドライブ又は特に電気モータ、有利には低温ガスケーシング内に配置されている電気モータにより駆動されている。
【0023】
図面は、実施例の説明に供されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】部分的に略示した圧力波過給機の縦断面図である。
【
図5】分割式のセルロータの別の実施例の縦断面図である。
【
図6】分割式のセルロータの別の実施例の縦断面図である。
【
図7】部分的に略示した圧力波過給機の別の実施例の縦断面図である。
【
図10】
図9に示した切断線A−Aに沿った圧力波過給機の断面図である。
【
図11】圧力波過給機の別の実施例の縦断面図である。
【
図14】分割式のセルロータの別の実施例の縦断面図である。
【0025】
原則、図中、同じ部材には同じ符号を付した。
【0026】
発明を実施するための形態
図1は、図示しない内燃機関用の新気2aを圧縮する圧力波過給機1を部分的に略示している。内燃機関には、圧縮した新気(給気3aともいう)が供給される。圧力波過給機1は、低温ガスケーシング6と、高温ガスケーシング7と、両ガスケーシング6,7間に配置されるロータケーシング11とを備えており、ロータケーシング11内には、回転可能なセルロータ8が配置されている。セルロータ8は、第1及び第2のセルロータ部分8a,8bを有しており、第1及び第2のセルロータ部分8a,8bは、相互に離間し、間隙18を形成している。セルロータ8は、ロータ軸12を有しているか、又はロータ軸12に結合されており、ロータ軸12は、両端部においてそれぞれ1つの第2あるいは第1の軸受13,14内で回転可能に支持されている。第2の軸受13は、高温ガスケーシング7内に配置されているのに対して、第1の軸受14は、低温ガスケーシング6内に配置されている。高温ガスケーシング7は、1つの高圧排ガス通路4及び1つの低圧排ガス通路5を有しており、エンジンから流入する高圧排ガス流4aが高圧排ガス通路4に供給され、低圧排ガス通路5から流出する低圧排ガス流5aが排気部に導かれる。低温ガスケーシング6は、1つの新気通路2及び1つの給気通路3を有している。低温ガスケーシング6は、別の一実施の形態において、複数の新気通路2及び複数の給気通路3、好ましくは両通路2,3を2つずつ有していてもよい。高温ガスケーシング7は、別の一実施の形態において、複数の高圧排ガス通路4及び複数の低圧排ガス通路5、好ましくは両通路4,5を2つずつ有していてもよい。高圧排ガス通路4、低圧排ガス通路5、新気通路2及び給気通路3は、圧力波過給機において一般的な、ただし概略的にのみ示した配置において、流体を導くようにセルロータ8に接続されており、セルロータ8は、複数のロータセル10を有している。ロータセル10は、セルロータ8の延在方向で一貫した、流体を導く接続を形成しており、この接続は、セルロータ8の第1の端面8cから第2の端面8dまで延在し、これにより、吸い込んだ新気2aを高圧排ガス流4aにより圧縮し、給気3aとして内燃機関に供給することができる。高温ガスケーシング7は、セルロータ8に向かって方向付けられた端面7fに入口開口7h及び出口開口7gを有している。この端面7fとセルロータ8との間には、間隙16が存在する。間隙16は、好ましくは0.05乃至0.2mmの範囲の幅、特に約0.1mmの幅を有している。低温ガスケーシング6は、セルロータ8に向かって方向付けられた端面6cに入口開口6d及び出口開口6eを有している。この端面6cとセルロータ8との間には、間隙17が存在する。セルロータ8は、ロータセル10を画定するセルロータ外壁8eを有している。
【0027】
高温ガスケーシング7は、部分的に略示した熱交換器7cを有しており、熱交換器7cは、少なくとも第2の軸受13が冷却されるように構成されている。有利には、高温ガスケーシング7は、軸受座壁7nを有している。軸受座壁7nは、第2の軸受13に面した側において第2の軸受13用の軸受座7oとして構成されている。第2の軸受13は、軸受座7o内に配置されている。軸受座壁7nは、第2の軸受13から背離した側において熱交換器7cの冷却通路7dの冷却通路外壁7pの一部を形成している。
【0028】
特に有利には、熱交換器7cは、高圧排ガス通路4も冷却可能に、ひいては、高圧排ガス通路4を通って流動する高圧排ガス流4aも冷却されるように構成されている。有利には、熱交換器7cは、高圧排ガス通路4を少なくとも1つの冷却区域4bに沿って完全に包囲する冷却通路7eを有しているので、高圧排ガス通路4の外壁は、同時に冷却通路外壁7pの一部を形成している。
【0029】
冷却流は、好ましくは、冷却媒体がまず第2の軸受13を冷却し、その後、高圧排ガス通路4へと導かれ、これにより高圧排ガス通路4を冷却することができるように、熱交換器7c内を導かれている。冷却媒体は、好ましくは、高圧排ガス通路4の外壁内に存在する複数の冷却通路内を流動する。別の好ましい一構成において、熱交換器7cは、加えて低圧排ガス通路5も冷却可能であり、その結果、この通路を通って流動する低圧排ガス流5aも冷却されるように構成されている。冷却媒体として好ましくは水が使用される。有利な一構成において、冷却通路は、内燃機関の水回路に接続されているので、水回路は、冷却水を供給し、循環を引き起こす。ロータ軸12は、図示の実施例において、低温ガスケーシング6内に配置される電気モータ15により駆動されている。ロータ軸12は、例えばベルトドライブにより駆動されていてもよい。
【0030】
有利な一構成において、圧力波過給機1内には、高圧排ガス流4aの温度、低圧排ガス流5aの温度又はこれら温度と関連したパラメータを検出するセンサ21が配置されている。センサ21は、信号を伝送するように制御装置23に接続されている。熱交換器7cは、流体を導くように、図示しない放熱装置に接続されているので、水回路が形成される。水回路は、図示しない循環ポンプも有している。好ましい一構成において、循環ポンプは、制御装置23により制御可能であり、その結果、熱交換器7cの冷却出力は、制御可能、好ましくはセンサ21により測定された温度に応じて制御可能である。
【0031】
有利な一方法において、コールドスタート中、熱交換器7cの冷却は、実施されないか、又は減じられて実施されるにすぎない。そのため、第1のスタート期間S1中、圧力波過給機1、特に高圧排ガス流又は低圧排ガス流が、最低温度T
minを有するまでは、冷却が実施されないか、又は減じられて実施されるだけであり、最低温度T
minに達した後、熱交換器7cの冷却出力は高められる。この方法は、圧力波過給機がコールドスタート中、迅速に昇温され、それゆえ迅速に必要な加圧出力を提供するという利点を有している。別の有利な一方法において、コールドスタート時、予め定めたスタート時間T
st中、熱交換器の冷却出力は減じられるか、又は熱交換器7cは停止され、熱交換器7cの冷却出力は、スタート時間T
stの経過後、高められる。
【0032】
図2は、原理図において、間隙18を有する分割式のセルロータ8を備える圧力波過給機1内のガス案内を示している。セルロータ8は、回転方向Dで回転可能に支持されている。セルロータ8は、回転方向Dで離間して配置される複数のセル壁9を有している。セル壁9は、ロータセル10を画定している。セルロータ8あるいはロータセル10は、中央において間隙18により中断されており、
図1に示したように、延在方向で第1あるいは第2の端面8c,8dにおいて終端している。ロータセル10は、間隙18の領域で相互に整合して一直線に並ぶように配置されており、ロータセル10は、セルロータ8あるいはロータ軸12の延在方向で一貫して構成されており、これにより、セルロータ8あるいはロータ軸12の延在方向で一貫した、障害なく流体を導く接続を、第1及び第2の端面8c,8d間に形成することができる。これにより圧力波は、妨げられることなくロータセル10を通して伝播可能である。回転するセルロータ8内には、新気通路2を通して吸い込んだ新気2aが流入するとともに、高圧排ガス通路4を通して燃焼サイクル由来の排ガス4aが流入する。吸い込んだ新気2aは、排ガス4aの圧力により圧縮され、続いて給気通路3を介して内燃機関の吸気側に供給され、その後、ガス交換プロセスが行われるシリンダ内に流入し、シリンダ内で燃料と混合され、燃焼される。燃焼に続いて、排ガス4aは、高圧排ガス通路4を通して圧力波過給機1に再び供給される。新気2aを排ガス4aにより圧縮した後、もはや不要となった排ガス5aは、セルロータ8により低圧排ガス通路5に放出され、後続の排ガス系統に供給される。
【0033】
高温ガスケーシング7内には、セルロータ8への供給を行う高圧排ガス通路4が延在している。加えて高温ガスケーシング7内には、熱交換器7cが配置されており、熱交換器7cは、図示の実施例において、水通路7dとして構成されている。水通路7dは、高圧排ガス通路4を取り巻いており、これにより、高圧排ガス通路4の内壁を冷却し、ひいては、通流している高圧排ガス流4aを冷却することができる。図示の実施例において、熱交換器7cあるいは水通路7dは、高温ガスケーシング7の一部である。好ましい、図示しない一構成において、水通路7dは、まず、高温ガスケーシング7の、第2の軸受13が配置されている領域に導かれており、これにより、まず、第2の軸受13を冷却し、その後、高温ガスケーシング7の、高圧排ガス通路4を包囲する部分を冷却することができる。有利な、図示しない一実施の形態において、低圧排ガス通路5の領域にも、熱交換器7c、特に水通路7dが配置されていてもよく、これにより、低圧排ガス流5aも冷却することができる。
【0034】
図3は、分割式のセルロータ8の側面図を示している。この分割式のセルロータ8は、ロータ軸12の延在方向で2つの部分から構成されており、第1のセルロータ部分8aと、第2のセルロータ部分8bとを有している。セルロータ部分8a,8bは、両者が温度上昇時に中央に向かってのみ膨張運動8c,8dを示し、その結果、間隙幅18が減少するようにロータ軸12に結合されている。好ましくは、ロータ軸12に関するセルロータ部分8a,8bの位置は、セルロータ8の端面8c,8dに対して変化せず、その結果、高温ガスケーシング7の端面7fとセルロータ8との間において、一定又は略一定の間隙幅16,17が保証されている。
【0035】
図4は、第1の軸受部分8hを有する第1のセルロータ部分8aと、第2の軸受部分8iを有する第2のセルロータ部分8bとを有するセルロータ8を示しており、両セルロータ部分8a,8bあるいは両軸受部分8h,8iは、相互に間隙18を形成している。軸受部分8h,8iは、ロータ軸12に関して移動可能に支持されている。軸受部分8h,8iは、空所を有しており、空所内には、付勢されたばね28が配置されている。ばね28は、両軸受部分8h,8i、ひいては両セルロータ部分8a,8bを互いに押し離し、その結果、セルロータ部分8a,8bは、その端面でもって高温ガスケーシング7の端面7fあるいは低温ガスケーシング6の端面6cに殆ど当接し、その結果、それらの間には、小さな間隙16しか形成されていない。セルロータ8の温度が上昇することは、セルロータ部分8a,8bが膨張し、その結果、間隙18が縮小することを結果として伴う。セルロータ8の温度が低下することは、間隙18が拡大することを結果として伴う。
図4に示した実施の形態は、温度上昇に基づいて生じるセルロータ部分8aの長さの変化が、間隙18の幅に作用するため、高温ガスケーシング7の端面7fと第1のセルロータ部分8aとの間の間隙16が、セルロータ部分8aの温度にかかわらず、一定又は略一定にとどまるという利点を有している。
【0036】
有利な一構成において、第1のセルロータ部分8aは、第2のセルロータ部分8bよりも耐熱性の高い材料、例えば鋼又は鋳鉄からなる。圧力波過給機1の運転中、第1のセルロータ部分8aは、例えば約800℃の温度を有することがあるのに対し、第2のセルロータ部分8bの温度は、約200℃にすぎない。間隙18が、セルロータ8の延在方向で一貫した熱伝導を阻止するので、セルロータ部分8a,8bは、著しく異なる温度を有し得る。それゆえ第2のセルロータ部分8bを、耐熱性を下げた材料、例えばプラスチックから製造することも可能である。このようなセルロータ18は、比較的低コストであり、好ましくは比較的軽量でもある。
【0037】
図5は、セルロータ8の別の実施例を示している。このセルロータ8は、
図4に示した実施例とは異なり、ストッパ12c,12dを有している。ストッパ12c,12dは、堅固にロータ12に結合されているので、ロータ12の延在方向での両セルロータ部分8a,8bの最大可能移動距離は、ストッパ12c,12dにより制限されている。両セルロータ部分8a,8bは、可能な一実施例において、間隙18に向かって、ロータ12の延在方向で相互にオーバラップすることでシールを形成する端部区域を有していてもよい。このシールは、例えばラビリンスシールとして構成されていてもよい。本明細書において説明するセルロータ8のすべての実施例も、このように構成されていてもよい。これとは異なり、
図11に示すように、ロータケーシング11内にシール、特にラビリンスシール26が配置されていてもよい。
【0038】
図6は、セルロータ8の別の実施例を示している。このセルロータ8は、ロータ軸12の延在方向で少なくとも2つの部分から構成されており、第1のロータ部分軸12aを有する第1のセルロータ部分8aと、第2のロータ部分軸12bを有する第2のセルロータ部分8bとを有しており、両セルロータ部分8a,8bあるいは両ロータ部分軸12a,12bは、クラッチ19を介して互いに結合されている。両セルロータ部分8a,8bは、ロータ間隙18を有している。両ロータ部分軸12a,12bは、クラッチ19内で相互に移動可能に支持されているので、セルロータ8の温度変化は、間隙幅18の変化を結果として伴うことがある。
【0039】
図7は、片持ち式に支持されるセルロータ8を備える圧力波過給機1の実施例を示している。
図1に示した圧力波過給機1とは異なり、
図7に示した圧力波過給機の場合、ロータ軸12は、右側でのみ、低温ガスケーシング6内に設けられた第1の軸受14内で支持されている。ロータ軸12は、左側では支持されていない。
【0040】
圧力波過給機1は、第2のセルロータ部分8bと、ロータケーシング11の、第2のセルロータ部分8bを包囲する区域11aとが、
図11に示すように相互にラビリンスシール26を形成するように相互に調整されて構成されているように、構成されていてもよい。
【0041】
別の可能な一実施の形態において、
図1、7及び11に示した圧力波過給機1において、高温ガスケーシング7の冷却を省略してもよい。このような実施の形態でも、間隙16を小さく維持することができることが保証されており、セルロータ8の温度上昇は、ロータ間隙幅18の変化を結果として伴う。
【0042】
図8は、高温ガスケーシング7の端面7fを示しており、端面7fには、周方向で離間して、入口開口7h、次に出口開口7g、再び入口開口7h、次に出口開口7gが相次いで配置されている。
図5に示した高温ガスケーシング7を備える圧力波過給機1は、
図2に示すような、上下に配置される2つのガス案内からなるガス案内を有するように構成されている。
【0043】
図9は、側面図において、高温ガスケーシング7と、ロータケーシング11と、低温ガスケーシング6とを備える圧力波過給機1の別の実施例を示しており、高温ガスケーシング7は、フランジ7lを有しており、フランジ7lには、高圧排ガス通路4及び低圧排ガス通路5が開口している。ロータケーシング11は、2つのフランジ11a,11bを有しており、フランジ11a,11bは、高温ガスケーシング7あるいは低温ガスケーシング6に取り付けられている。加えて冷却水入口7i及び冷却水出口7kが図示されており、冷却水入口7i及び冷却水出口7kを介して、高温ガスケーシング7内に配置される熱交換器7cとの冷却水交換がなされる。
【0044】
図10は、
図9の切断線A−Aに沿った断面図である。高圧排ガス通路4及び低圧排ガス通路5は、少なくとも部分的に、熱交換器7c内に存在するウォータジャケット7mにより取り囲まれている。水は、供給管路及び排出管路7i,7kを介して交換され、高温ガスケーシング7外にて冷却される。高温ガスケーシング7は、好ましくは部分的に二重壁に構成されており、これにより、離間した壁間に熱交換器7cを形成することができる。加えて
図7からは、2つの出口開口7gと、出口開口7gの背後に配置されるセルロータ8の一部と、セルロータ8のロータセルとが、看取可能である。
【0045】
熱交換器7cを有する冷却装置は、種々異なる形式で構成されていることができ、例えば蒸気回路として、ヒートパイプと、相変化を伴う蒸気回路とを備えて構成されていてもよい。
【0046】
図11は、縦断面図で圧力波過給機1の別の実施例を示しており、この圧力波過給機1は、分割式の、回転可能に支持されるセルロータ8を備えている。ロータケーシング11は、一体の管形のジャケットケーシングとして構成されており、フランジ11a,11bを介して高温ガスケーシング7及び低温ガスケーシング6に結合されている。高温ガスケーシング7は、アルミニウム又は軽合金から製造されている。ロータ軸12は、一貫して構成されており、第2の軸受13及び第1の軸受14内に回転可能に支持されている。鍔あるいはストッパ12cは、堅固にロータ軸12に結合されている。第1及び第2のセルロータ部分8a,8bは、軸受部分8h,8iを介してロータ軸12上に移動可能に支持されている。ばね28は、突き放す力を働かせるので、両セルロータ部分8a,8bは、付勢されて鍔12cあるいはストッパディスク29に当接する。
【0047】
図12及び13は、斜視図で、
図11に示したセルロータ部分8a,8bの前面あるいは後面を示している。両セルロータ部分8a,8bは、同一に構成されている。セルロータ部分8a,8bは、セルロータ外壁8eと、セルロータ内壁8gと、多数のセル壁9とを有しており、その結果、ロータセル10が形成されている。加えてセルロータ部分8a,8bは、ロータ軸12用の空所8k及びストッパ8fを有する第1の端面8cを有している。加えてセルロータ部分8a,8bは、軸受部分8hを有している。
【0048】
両セルロータ部分8a,8bは、ストッパ8fを介して鍔12cあるいはストッパディスク29に当接する。これらは、第1のセルロータ部分8aの第1の端面8cと高温ガスケーシング7の端面7fとの間に、所定の間隙幅を有する間隙16が生じるように調整されて配置されているとともに、第2のセルロータ部分8bの第2の端面8dと低温ガスケーシング6の端面6cとの間に、所定の間隙幅を有する間隙17が生じるように調整されて配置されている。これにより、圧力波過給機1内の温度変化は、ロータ間隙18の幅が変化する一方、間隙16及び17の幅が、温度にかかわらず一定又は略一定にとどまることを結果として伴う。このことは、この圧力波過給機1が高い効率を有する理由の1つである。
【0049】
しかし、
図11に示した圧力波過給機1は、一体に、すなわち、例えば
図1に示したようにロータ間隙18なしに構成されていてもよい。
【0050】
図11に示した圧力波過給機1は、高温ガスケーシング7内に熱交換器7cを有しており、熱交換器7cは、少なくとも第2の軸受13が冷却可能に構成されている。熱交換器7cは、高温ガスケーシング7内を延在する冷却通路7dを有している。高温ガスケーシング7は、軸受座壁7nを有しており、軸受座壁7nは、第2の軸受13に面した側において第2の軸受13用の軸受座7oとして構成されている。第2の軸受13は、軸受座7o内に配置されている。軸受座壁7nは、第2の軸受13から背離した側において熱交換器7cの冷却通路7dの冷却通路外壁7pの一部を形成している。有利には、軸受座壁7nは、端面7qを有し、端面7qから出発して中空円筒形の軸受区域7rを有している。端面7qと軸受区域7rとは、軸受座7oを形成しており、端面7qと、中空円筒形の軸受区域7rとは、冷却通路外壁7pの一部を形成している。この構成は、高温ガスケーシング7から軸受座7oへの熱流が強く減じられているため、特に有利である。これにより、有利には、第2の軸受13からセルロータ8への入熱は、阻止される。特に有利には、軸受座7oは、加えて第2の軸受13を介して熱をセルロータ8から導出することができるように強く冷却される。このようにしてセルロータ8は、特に有利には冷却可能である。有利には、軸受座壁7nは、薄肉部7sあるいはブリッジを介して残余の高温ガスケーシング7に結合されており、これにより、残余の高温ガスケーシングから軸受座壁7nへの熱流を減じることができる。
【0051】
有利な一構成において、圧力波過給機1は、これが分割式のロータ8を有している場合、複数のラビリンスシール26を備えている。ラビリンスシール26については、例示的かつ概略的に
図11に示した。ラビリンスシール26は、例えばロータケーシング11の内面及びセルロータ外壁8eの外面に配置されており、
図11には、ロータケーシング11に配置されるラビリンスシール26しか示していない。ラビリンスシール26は、周方向で360°にわたって延びているが、簡明性のため、
図11には、ラビリンスシール26の下側しかロータケーシング11内に示していない。しかし、ラビリンスシール26は、上側でもロータケーシング11内を延在している。ラビリンスシール26は、有利には、少なくとも間隙18の領域に配置されており、これにより、間隙18とロータケーシング11との間の領域において、流体がロータセル10から間隙18を通して流出することを回避することができる。加えて、
図11に示すように、有利には、それぞれ周方向で360°にわたって延在する2つのラビリンスシール26が、さらにセルロータ8の端部領域に配置されており、これにより、流体がセルロータ外壁8eとロータケーシング11の内面との間の間隙内に浸入することを回避することができる。
【0052】
有利には、熱交換器7cは、高圧排ガス通路4を少なくとも1つの冷却区域4bに沿って完全に包囲する冷却通路7eを有しているので、高圧排ガス通路4の外壁は、同時に冷却通路外壁7pの一部を形成している。特に有利には、薄肉部7sあるいはブリッジは、
図11に示すように、両側において冷却通路外壁7pを形成しており、このことは、残余の高温ガスケーシングから軸受座壁7nへの熱流を付加的に減じる。
【0053】
加えて有利には、熱交換器7cは、低圧排ガス通路5を少なくとも1つの冷却区域5bに沿って完全に包囲する冷却通路7eを有しているので、低圧排ガス通路5の外壁は、同時に冷却通路外壁7pの一部を形成している。
【0054】
加えて、有利な一構成において、第1及び/又は第2の軸受14,13にオイルを供給すべく、オイル管路30aを有するオイル回路30が設けられていてもよい。
図11には、このために必要な、高温ガスケーシング7及び/又は低温ガスケーシング6内を延在するオイル管路を示していない。
【0055】
圧力波過給機1の冷却は、圧力波過給機1が運転中、より低い温度を有することを結果として伴う。このことは、
図11に示すように、低温ガスケーシング6とロータケーシング11との間及び/又は高温ガスケーシング7とロータケーシング11との間をシールするために、シールリング27あるいはOリングを密封のために使用することができるという利点を生じる。シールリング27は、金属又はプラスチックから、好ましくは永久弾性を有する材料、例えばシリコーンからなる。シールリング27は、周方向で360°にわたって延在している。
【0056】
図14は、セルロータ8の別の実施例を示している。このセルロータ8は、ロータ軸12の延在方向で2つの部分から構成されており、第1の軸受部分8hを有する第1のセルロータ部分8aと、第2の軸受部分8iを有する第2のセルロータ部分8bとを有している。両セルロータ部分8a,8bあるいは両軸受部分8h,8iは、相互に間隙18を形成している。その結果、両セルロータ部分8a,8bは、相互に間隙18を形成するように離間している。第1及び第2の端面8c,8d間を一貫して延在するロータセル10は、第1及び第2のセルロータ部分8a,8b間の移行部において同様に間隙18の分だけ離間している。この間隙18は、一貫して第1の端面8cから第2の端面8dへ延在する、間隙18の領域において相互に整合するロータセル10内の、流体の流れを妨げない。両セルロータ部分8a,8bは、ロータ軸12を介して互いに結合されており、同じ回転方向Dで回転する。軸受部分8h,8iは、その端部区域8l,8mにおいて堅固にロータ軸12に結合されている。セルロータ8の温度が上昇することは、セルロータ部分8a,8bが膨張し、その結果、間隙18が縮小することを結果として伴う。セルロータ8の温度が低下することは、間隙18が拡大することを結果として伴う。
図14に示した実施の形態は、温度上昇に基づいて生じるセルロータ部分8aの長さの変化が、間隙18の幅に作用するため、高温ガスケーシング7の端面7fと第1のセルロータ部分8aとの間の間隙16が、圧力波過給機1の運転中、セルロータ部分8aの温度にかかわらず、一定又は略一定にとどまるという利点を有している。有利な一構成において、間隙18の幅は、セルロータ8の冷間状態で0.4mmであり、この幅は、圧力波過給機1の運転中、セルロータ8の温度上昇に基づいて好ましくは0.2mm未満の値に縮小する。特に有利な一構成において、間隙18は、温度上昇に基づいて完全に閉鎖する。セルロータ8の温度低下中、間隙18は、再び冷間状態まで拡大する。
【0057】
圧力波過給機1の冷却は、圧力波過給機1が運転中、より低い温度を有することを結果として伴う。このことは、低温ガスケーシング6とロータケーシング11との間及び/又は高温ガスケーシング7とロータケーシング11との間をシールするために、シールリング27を密封のために使用することができるという利点を生じる。シールリング27は、金属又はプラスチックからなる。
【0058】
加えて、排ガス流れ方向で高圧排ガス通路4の上流に配置されている高圧排ガス供給管路を冷却すべく、付加的な熱交換器を配置すると、有利であることが判っている。
【0059】
本発明に係るセルロータ8は、説明した実施例において、冷却式の高温ガスケーシング7との組み合わせにおいて示されている。しかし、本発明に係るセルロータ8は、冷却式の高温ガスケーシング7を有しない圧力波過給機1にも好適である。
【0060】
方法の一例では、約1050℃の排ガス温度が、ガソリンエンジンから出て、高圧排ガス通路4内で冷却され、約850℃でセルロータに入る。加えてセルロータは、流入する約20℃の新気2aにより冷却され、その結果、第1のセルロータ部分8aは、約450℃の温度を有し、第2のセルロータ部分8bは、約200℃の温度を有する。