特許第6552634号(P6552634)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6552634オレフィンポリマーを反応物と混合するためのプロセス
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  • 特許6552634-オレフィンポリマーを反応物と混合するためのプロセス 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552634
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】オレフィンポリマーを反応物と混合するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C08F 255/00 20060101AFI20190722BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   C08F255/00
   C08F2/44 C
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-549625(P2017-549625)
(86)(22)【出願日】2016年4月8日
(65)【公表番号】特表2018-510942(P2018-510942A)
(43)【公表日】2018年4月19日
(86)【国際出願番号】EP2016057684
(87)【国際公開番号】WO2016162453
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2017年11月14日
(31)【優先権主張番号】15163194.2
(32)【優先日】2015年4月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】レギーロ カルモナ レベカ
(72)【発明者】
【氏名】カルテンバッハー ザシャ
(72)【発明者】
【氏名】クリムケ カトヤ
(72)【発明者】
【氏名】ムスター ウド
(72)【発明者】
【氏名】プロクシ ヘルマン
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/016205(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/016206(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 255/00
C08F 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性オレフィンポリマーを生成するためのプロセスであって、(A)官能性不飽和化合物を含むストリームとフリーラジカル発生剤を含むストリームとを接触させ、混合流体ストリームを生成し、そして前記混合流体ストリームは静的混合機に通されるステップと、(B)オレフィンポリマーの粒子を含む別のストリームを押出機に導入するステップと、(C)前記混合流体ストリームを前記押出機に別途導入するステップと、(D)前記押出機において前記オレフィンポリマーの粒子を含む前記ストリームを溶融させて、溶融ストリームを生成するステップと、(E)前記フリーラジカル発生剤の分解温度および前記オレフィンポリマーの溶融温度より高いが、前記オレフィンポリマーの分解温度より低い温度で前記溶融ストリームを押出し、これにより前記変性オレフィンポリマーを生成するステップとを含む、プロセス。
【請求項2】
前記ステップ(A)を気−液吸収器または液−液吸収器において行うステップを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記オレフィンポリマーの前記粒子を含む前記ストリームを前記混合流体ストリームと接触させるステップは、前記押出機のフィードゾーンで行われる、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記混合流体ストリームは、霧化ノズルにより前記押出機の前記フィードゾーン内に噴霧される、請求項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記混合流体ストリームを前記押出機の溶融ゾーンまたは混合ゾーンに導入するステップを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記混合流体ストリームを前記押出機の溶融ゾーンに導入するステップを含む、請求項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記混合流体ストリームを前記押出機の混合ゾーンに導入するステップを含む、請求項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性オレフィンポリマーを生成するための改良されたプロセスに関する。特に、本発明は、粒状形態のオレフィンポリマーに反応物を浸漬するための改良されたプロセスに関する。特に、本発明は、官能性不飽和化合物をフリーラジカル発生剤と液相で混合してから、液体混合物をオレフィンポリマーと接触させるための連続プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
解決されるべき問題
高溶融強度ポリプロピレン(HMS−PP:High melt strength polypropylene)は、従来技術において一般に公知である。しかし、既知のプロセスは、溶融強度が高く、溶融延伸性が高く、ゲル含有量が少ないポリプロピレンを得るためにいくつかの単位操作(多段階プロセス)が必要である。
【0003】
特許文献1は、ペルオキシド等の熱分解可能フリーラジカル形成剤および不飽和モノマーの両方がガス状態で重合反応炉の下流に供給され、その後固体のポリオレフィン粒子に収着された、多段階プロセスを開示する。その後、熱分解可能ペルオキシドおよび官能性モノマーを含む反応性粉末混合物が、例えば押出機において反応段階に通された。熱フリーラジカル発生剤の所望の分解は、加熱デバイスの傍の追加的な高周波(HF−)および/またはマイクロ波(MW−)電界の印加により支持されうる。
【0004】
特許文献2は、固体ポリプロピレン粉末、ペルオキシカーボネートおよびブタジエンを連続運転混合機において約10分の平均的滞留時間にわたり混合し、その後反応性粉末混合物を押出機に移すことにより変性ポリプロピレンが生成されたプロセスを開示する。
【0005】
特許文献3は、(1)固体ポリプロピレン粒子を少なくとも一つの固体有機ベースのペルオキシカーボネートと、さらに追加のカップリング剤の不存在下で混合し、(2)反応性粉末混合物を、例えば押出機において150〜300℃の間の温度で加熱することによる、二段階プロセスでポリプロピレンの溶融強度を強化するためのプロセスに関する。ペルオキシカーボネートは、少なくとも120℃、好ましくは少なくとも150℃の温度で元の含量の50%より多く存在しなければならず、80%存在するのが好ましい。
【0006】
特許文献4は、ポリプロピレンがペルオキシドおよびブタジエンまたはジビニルベンゼンと混合機において滞留時間を約4分として混合されたプロセスを開示する。ペルオキシドおよび二官能性モノマーを含浸した粉末が、変性ポリプロピレンを生成するために押出機に通された。
【0007】
特許文献5および対応する特許文献6は、ポリプロピレン粉末、フリーラジカル発生剤および多官能性モノマーを押出機のフィードポートへの導入の前に混合するための連続予混合機を有するプロセスを図1に開示する。このようにして形成された混合物に対し、押出機においてポリプロピレンの溶融温度より高い温度で変性反応が行われ、最終的に長鎖分岐ポリプロピレンが得られた。
【0008】
特許文献7は、ポリプロピレンフォームを生成するためにポリプロピレン、1,3−ブタジエンおよびフリーラジカル発生剤の混合物が二軸スクリュ押出機において押出されたプロセスを開示する。本文献は、成分をどのように押出機に導入したかについては開示していない。
【0009】
上述の従来のプロセスの一つの問題は、成分をどのようにして互いに接触させるべきかを提案していない点、または成分を劣った順序で接触させることを提案している点である。したがって、従来のプロセスは、官能性不飽和化合物の最適な効率に達しない。
【0010】
従来のプロセスに関連するもう一つの問題は、プロセスにおいて官能性不飽和化合物の一部が失われることである。高温では、官能性不飽和化合物が押出機の溶融ゾーンにおいてポリマー粒子から蒸発し、フィードホッパを通る逆流により失われる。これにより、効率が低くなる。
【0011】
このように当技術分野においては、特許文献6およびその他の先行技術文献のプロセスにより達成されるHMS−PPの品質特性と比較して品質が一貫したおよび/または改良された高溶融強度ポリプロピレン(HMS−PP)を生成するための改良された方法が必要とされている。
【0012】
本発明は、従来のプロセスの欠点を克服し、従来のプロセスより投資および運転コストが低く、環境への化学物質の排出が低減されたプロセスを提供することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許出願公開第792894(A)号
【特許文献2】欧州特許出願公開第1174261(A)号
【特許文献3】国際公開第99/27007(A)号
【特許文献4】米国特許第6077907号
【特許文献5】米国特許第6204348(B)号
【特許文献6】欧州特許出願公開第0879830(A)号
【特許文献7】特開平09−278917号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、変性オレフィンポリマーを生成するためのプロセスを提供し、前記プロセスは、(A)官能性不飽和化合物を含むストリームとフリーラジカル発生剤を含むストリームとを接触させ、これにより混合流体ストリームを生成するステップと、(B)オレフィンの粒子を含むストリームを押出機に導入するステップと、(C)混合流体ストリームを押出機に導入するステップと、(D)押出機においてオレフィンポリマーの粒子を含むストリームを溶融させて、溶融ストリームを生成するステップと、(E)フリーラジカル発生剤の分解温度およびオレフィンポリマーの溶融温度より高いが、オレフィンポリマーの分解温度より低い温度で溶融ストリームを押出し、これにより変性オレフィンポリマーを生成するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】変性ポリオレフィンを生成するための特許文献5による先行技術のプロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、変性オレフィンポリマーを生成する方法を扱う。変性オレフィンポリマーは、直鎖状オレフィンポリマー骨格に結合した(attached)長鎖分岐を有する。このため、「変性オレフィンポリマー」および「長鎖分岐オレフィンホモポリマーまたはコポリマー」という用語は、本出願においては同義的に使用される。
【0017】
オレフィンポリマー
本発明のプロセスにおいて原材料として用いられるオレフィンポリマーは、2〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンの任意のホモポリマーまたはコポリマーおよびそれらの混合物でありうる。オレフィンポリマーは、エチレンのホモポリマーおよび3〜10個の炭素原子を有する一つ以上のα−オレフィンとのエチレンのコポリマー;プロピレンのホモポリマーならびにエチレンおよび4〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンより選択される一つ以上のコモノマーとのプロピレンのコポリマー;1−ブテンのホモポリマーならびにエチレン、プロピレンおよび6〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンより選択される一つ以上のコモノマーとの1−ブテンのコポリマー;ならびに4−メチル−1−ペンテンのホモポリマーならびにエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンおよび8〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンより選択される一つ以上のコモノマーとの4−メチル−1−ペンテンのコポリマー、ならびにこれらの混合物からなる群より選択されるのが好ましい。特に、オレフィンポリマーは、プロピレンのホモポリマー、もしくはエチレンおよび4〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンより選択される一つ以上のコモノマーとのプロピレンのコポリマーまたはこれらの混合物であるのが好ましい。
【0018】
本発明のプロセスにおいて原材料として用いられるオレフィンポリマーは通常、基本的に直鎖状のポリマーである。「基本的に直鎖状」とは、オレフィンポリマーが、最大8個の炭素原子、好ましくは最大6個の炭素原子、例えば1〜4個の炭素原子等の長さを有する短鎖分岐を含みうることを意味する。しかし、長鎖分岐は原材料中に実質的に存在しない。長鎖分岐の存在は、レオロジーを用いて、NMRにより長鎖分岐の含量を分析することによって、およびGPCにより長鎖分岐パラメータg’を測定することによってなど、当該技術分野で公知の方法にしたがって検出されうる。例えば、少なくとも0.97または少なくとも0.98等、少なくとも0.96のg’の値は、長鎖分岐が存在しないことを示す。一方で、0.9以下のg’の値は、ポリマーが長鎖分岐を含むことを示す。技術的には、オレフィンポリマーが長鎖分岐を含んでも不利益はない。
【0019】
オレフィンポリマーのメルトフローレートは、比較的広い範囲で選択されうる。オレフィンポリマーがプロピレンのホモポリマーまたはプロピレンのコポリマーであるとき、メルトフローレートMFRは0.1〜50g/10分であるのが好ましく、0.5〜40g/10分であるのがより好ましい。ポリプロピレンのメルトフローレートMFRは、ISO1133にしたがい2.16kgの荷重下で230℃の温度で測定される。
【0020】
上述のように、オレフィンポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。オレフィンポリマーがコポリマーである場合、0.1〜10モル%のコモノマー(類)を含むのが好ましい。例えば、オレフィンポリマーがプロピレンのコポリマーである場合、プロピレンに由来する単位を90〜99.9モル%含むのが好ましく、92〜99.5モル%含むのがより好ましく、コモノマー(類)に由来する単位を0.1〜10モル%含み、0.5〜8モル%含むのがより好ましい。
【0021】
オレフィンポリマーは、弾性コポリマーで構成されるアモルファス相が半結晶性プロピレンホモポリマーまたはコポリマー等の半結晶性オレフィンホモポリマーまたはコポリマーにより形成されるマトリックス相に分散された、プロピレンの異相コポリマー等の異相コポリマーでもよい。
【0022】
オレフィンポリマーは、粒子またはペレットの形であってもよい。オレフィンポリマーは、粒子の形であるのが好ましい。粒子は通常、オレフィンがオレフィン重合触媒の存在下で重合される、スラリー重合プロセスまたは気相重合プロセス等の重合プロセスにおいて形成される。粒子が重合反応炉から回収されたあと、減圧およびパージのステップが行われてポリマーから残留炭化水素が除去される。
【0023】
ポリマーの粒子サイズは、押出機における適切な溶融を確保するために大きすぎず、粉末のバルク密度は、許容可能なスループットを確保するために適度に高いことが望ましい。中央粒径は、50〜2000μmであるのが適切であり、100〜1500μmであるのが好ましい。さらに、ASTM D1895にしたがって測定した粉末のバルク密度が少なくとも300kg/mであるのが好ましく、少なくとも350kg/mであるのがより好ましく、特に少なくとも400kg/mであるのが好ましい。ここで粒径とは、特に明記しない限り通常は比表面積平均径を意味する。
【0024】
フリーラジカル発生剤
フリーラジカル発生剤は、フリーラジカルを生成することができる化合物である。通常、フリーラジカル発生剤は分解し、分解生成物はフリーラジカルである。一般にペルオキシドが、熱分解フリーラジカル発生剤として使用される。フリーラジカル発生剤は、アシルペルオキシド、アルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルエステル、ペルオキシカーボネートおよびこれらの混合物を含む群より選択されるのが好ましい。以下に列挙されるペルオキシドが特に好ましい。
a)アシルペルオキシド(ACPER:acyl peroxide):ベンゾイルペルオキシド、4−クロロベンゾイルペルオキシド、3−メトキシベンゾイルペルオキシドおよび/またはメチルベンゾイルペルオキシド。
b)アルキルペルオキシド(ALPER:alkyl peroxide):アリルt−ブチルペルオキシド、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシブタン)、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、ジイソプロピルアミノメチル−t−アミルペルオキシド、ジメチルアミノメチル−t−アミルペルオキシド、ジエチルアミノメチル−t−ブチルペルオキシド、ジメチルアミノメチル−t−ブチルペルオキシド、1,1−ジ−(t−アミルペルオキシ)シクロヘキサン、t−アミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、t−ブチルペルオキシドおよび/または1−ヒドロキシブチルn−ブチルペルオキシド。
c)ペルエステルおよびペルオキシカーボネート(PER:perester and peroxy carbonate):ブチルペルアセテート、クミルペルアセテート、クミルペルプロピオネート、シクロヘキシルペルアセテート、ジ−t−ブチルペルアジペート、ジ−t−ブチルペルアゼレート、ジ−t−ブチルペルグルタレート、ジ−t−ブチルペルサレート(perthalate)、ジ−t−ブチルペルセバケート、4−ニトロクミルペルプロピオネート、1−フェニルエチルペルベンゾエート、フェニルエチルニトロ−ペルベンゾエート、t−ブチルビシクロ−(2,2,1)ヘプタンペルカルボキシレート、t−ブチル−4−カルボメトキシペルブチレート、t−ブチルシクロブタンペルカルボキシレート、t−ブチルシクロヘキシルペルオキシカルボキシレート、t−ブチルシクロペンチルペルカルボキシレート、t−ブチルシクロプロパンペルカルボキシレート、t−ブチルジメチルペルシンナメート、t−ブチル−2−(2,2−ジフェニルビニル)ペルベンゾエート、t−ブチル−4−メトキシペルベンゾエート、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルカルボキシシクロヘキサン、t−ブチルペルナフトエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルトルエート、t−ブチル−1−フェニルシクロプロピルペルカルボキシレート、t−ブチル−2−プロピルペルペンテン−2−オエート、t−ブチル−1−メチルシクロプロピルペルカルボキシレート、t−ブチル−4−ニトロフェニルペルアセテート、t−ブチルニトロフェニルペルオキシカルバメート、t−ブチル−N−スクシイミドペルカルボキシレート、t−ブチルペルクロトネート、t−ブチルペルマレイン酸、t−ブチルペルメタクリレート、t−ブチルペルオクトエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルイソブチレート、t−ブチルペルアクリレートおよび/またはt−ブチルペルプロピオネート。
【0025】
以上に列挙したこれらのフリーラジカル形成剤の混合物も企図される。したがって例えば以下の組み合わせが可能である。
i)ACPERおよびALPER
ii)ACPERおよびPER
iii)ALPERおよびPER
iv)ACPERおよびALPERおよびPER
【0026】
本発明による反応変性プロセスの間に熱分解する適切な熱分解フリーラジカル形成剤をどのように選択するかは、当業者に周知である。
【0027】
変性オレフィンポリマーの生成のための本発明による反応変性プロセスにおいては、オレフィンポリマーが、100重量部のオレフィンポリマーあたり0.1〜2.00重量部(ppw:parts per weight)のフリーラジカル発生剤と適切に混合され、100重量部のオレフィンポリマーあたり0.300〜1.5重量部(ppw)のフリーラジカル発生剤と混合されるのが好ましく、100重量部のオレフィンポリマーあたり0.50〜1.0重量部(ppw)のフリーラジカル発生剤と混合されるのがより好ましい。好ましい作業方法においては、オレフィンポリマーは、100重量部のオレフィンポリマーあたり0.250〜1.00重量部(ppw)のアシルペルオキシド、アルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルエステルおよび/またはペルオキシカーボネートと混合され、100重量部のオレフィンポリマーあたり0.250〜1.00重量部(ppw)のアシルペルオキシド、アルキルペルオキシド、ペルエステルおよび/またはペルオキシカーボネートと混合されるのが好ましい。フリーラジカル発生剤の量は、オレフィンポリマーの総量に基づいて計算される。
【0028】
官能性不飽和化合物
官能性不飽和化合物は、
a)二官能性不飽和モノマーおよび/もしくはポリマー、または
b)多官能性不飽和モノマーおよび/もしくはポリマー、あるいは
c)(a)および(b)の混合物より選択されうる。
【0029】
上で使用されるところの「二官能性不飽和または多官能性不飽和」とは、それぞれ二つ以上の非芳香族二重結合の存在を意味する。通常、フリーラジカルの助けを借りて重合されうる二官能性または多官能性不飽和化合物だけが使用される。二官能性不飽和モノマーは、
− 例えばジビニルアニリン、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン、ジビニルペンタンおよびジビニルプロパン等のジビニル化合物;
− 例えばアリルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルメチルマレエートおよびアリルビニルエーテル等のアリル化合物;
− 例えば1,3−ブタジエン、クロロプレン、シクロヘキサジエン、シクロペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、ヘプタジエン、ヘキサジエン、イソプレンおよび1,4−ペンタジエン等のジエン類;
− 芳香族および/または脂肪族ビス(マレイミド)、ビス(シトラコンイミド);
− ならびにこれらの不飽和モノマーのいずれかの混合物
より選択されるのが好ましい。
【0030】
特に好適な二官能性不飽和モノマーは、1,3−ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエンおよびジビニルベンゼンである。二官能性不飽和ポリマーは、上述の二官能性不飽和モノマーのうちの少なくとも一つを含むポリマーであるのが好ましい。多官能性不飽和ポリマーは、上述の不飽和モノマーを二つ以上含む。オリゴマーを含むこのようなポリマーの例は、
− ポリブタジエン、特にポリマー鎖の異なるミクロ構造すなわち1,4−シス、1,4−トランスおよび1,2−(ビニル)が主に1,2−(ビニル)構造である場合、
− ポリマー鎖に1,2−(ビニル)を有するブタジエンおよびスチレンのコポリマー
である。
【0031】
好ましいポリマーは、ポリブタジエンであり、特に1,2−(ビニル)構造のブタジエンを50.0重量%より多く有するポリブタジエンである。1,2−(ビニル)構造は、Hおよび13C NMR分光法によって決定される。
【0032】
官能性不飽和化合物は、二官能性不飽和モノマーまたは多官能性不飽和モノマーであるのが好ましい。
【0033】
変性オレフィンポリマーの生成のための本発明による反応変性プロセスにおいては、少なくとも一つの熱分解フリーラジカル形成剤の次に少なくとも一つの官能性不飽和化合物が任意に使用される。通常は、三つより多い異なる官能性不飽和化合物は使用されず、本発明による反応変性プロセスでは一つの官能性不飽和化合物が使用されるのが好ましい。
【0034】
「官能性不飽和化合物」という用語は、先に定義した官能性不飽和化合物を意味する。一般に、官能性不飽和化合物は、100重量部のオレフィンホモポリマーおよび/またはコポリマーあたり0.05〜2.5重量部(ppw)の官能性不飽和化合物の濃度で使用でき、100重量部のオレフィンホモポリマーおよび/またはコポリマーあたり0.05〜1.5重量部(ppw)の官能性不飽和化合物の濃度で使用されるのが好ましく、100重量部のオレフィンホモポリマーおよび/またはコポリマーあたり0.1〜1.0重量部(ppw)の官能性不飽和化合物の濃度で使用されるのがより好ましい。官能性不飽和化合物の量は、オレフィンホモポリマーおよび/またはコポリマーの総量に基づいて計算される。
【0035】
流体混合物の調製
本発明のプロセスによれば、官能性不飽和化合物およびフリーラジカル発生剤が、混合流体ストリームに合わせられる。混合流体ストリームは、官能性不飽和化合物とフリーラジカル発生剤とを変性オレフィンポリマーを生成するために所望の含量で含む。加えて、混合流体ストリームは、官能性不飽和化合物およびフリーラジカル発生剤を適切な濃度に希釈するために、飽和炭化水素等の一つ以上の不活性化合物を含みうる。不活性化合物は、5〜20個、好ましくは5〜15個の炭素原子を有するアルカンもしくはシクロアルカン、または6〜20個、好ましくは6〜15個の炭素原子を有するアリール、アルキルアリールもしくはアリールアルキル化合物等、混合流体ストリームの温度および圧力で液体である飽和炭化水素であるのが適切である。
【0036】
混合流体ストリームは、当該技術分野で公知の任意の適切な方法により生成されうる。一つのかかる方法によれば、官能性不飽和化合物およびフリーラジカル発生剤のストリームが、静的混合機の入口に、好ましくは液性状態で通され、静的混合機の出口から混合流体ストリームが取り出される。
【0037】
別の方法によれば、官能性不飽和化合物およびフリーラジカル発生剤のストリームが、気−液吸収器または液−液吸収器に通される。吸収器から、混合流体ストリームがさらに静的混合機に通されうる。
混合流体ストリームの圧力および温度は、ストリームが一つの相にとどまるものであり、液相にとどまるものであるのが好ましい。
【0038】
混合流体ストリームは、それから適切な手段により、例えば遠心ポンプまたはピストンポンプを用いて送られて、オレフィンポリマーの粒子のストリームと接触させられうる。接触の結果、混合粒状ストリームが形成される。あるいは、混合流体ストリームが直接押出機へ送られてもよい。
【0039】
押出機
本発明によるプロセスは、当業者に公知の溶融混合機器において適切に実行される。押出機または混練機が使用されるのが好ましい。
【0040】
押出機は、当該技術分野で公知の任意の押出機でありうる。したがって押出機は、一軸スクリュ押出機、同方向回転二軸スクリュ押出機もしくは逆回転二軸スクリュ押出機等の二軸スクリュ押出機、またはリング押出機等の多軸スクリュ押出機であってもよい。押出機は、同方向回転二軸スクリュ押出機であるのが特に好ましい。このような押出機は当該技術分野で公知であり、例えばCoperion、日本製鋼所、Krauss Maffei BerstorffまたはLeisteritzにより供給される。
【0041】
押出機は通常、フィードゾーン、溶融ゾーン、混合ゾーンおよびダイゾーンを含む。さらに、ダイを通して押圧された溶融物は通常凝固させられ、ペレタイザでペレットに切断される。
【0042】
押出機は通常、長さ直径比L/Dが約6:1〜約65:1であり、約8:1〜60:1であるのが好ましい。当技術分野で公知のように、同方向回転二軸スクリュ押出機は通常、逆方向二軸スクリュ押出機よりL/Dが大きい。
【0043】
押出機は、押出機からガス状成分を除去するための一つ以上の排出ポートまたはベントポートを有しうる。このようなガス状成分は、未反応官能性不飽和化合物、未反応フリーラジカル発生剤またはその分解生成物を含みうる。このような排出ポートは、フリーラジカル発生剤および官能性不飽和化合物のオレフィンポリマーとの反応時間が十分になるように、十分に下流の位置に置かれなければならない。排出ポートは、溶融ゾーンの下流端内または混合ゾーン内に適切に位置しうる。
【0044】
水、水蒸気または窒素等のストリッピング剤が、ポリマー溶融体から未反応官能性不飽和化合物等の揮発成分を除去するのを助けるため、押出機に適切に加えられる。このようなストリッピング剤は、使用される場合には、排出ポートの上流、または複数の排出ポートがある場合には最も下流の排出ポートの上流に加えられる。
【0045】
押出機は、押出機にポリマー、添加剤などのさらなる成分を供給するための一つ以上のフィードポートも有しうる。このような追加のフィードポートの位置は、ポートを通して加えられる材料のタイプによる。
【0046】
フィードゾーン
ポリマーは、フィードゾーンを通して押出機に導入される。フィードゾーンは、粒状ポリマーを溶融ゾーンに導く。通常フィードゾーンは、フィードホッパとホッパを溶融ゾーン内へと接続する接続パイプとで形成される。通常ポリマーは、重力の作用下で、すなわち概ね下方へとフィードゾーンを通って流れる。フィードゾーンにおけるポリマー(および他の成分)の滞留時間は通常短く、普通は30秒以下であり、10秒以下等、20秒以下であることのほうが多い。滞留時間は典型的に、1秒等、少なくとも0.1秒である。
【0047】
出機のフィードゾーンが混合流体ストリームおよびオレフィンポリマーの粒子のストリームが接触させられる位置として機能しうる。押出機のフィードゾーンがストリームを接触させるために機能する場合には、オレフィンポリマーの粒子および混合流体ストリームがフィードホッパに導入されるのが好ましい。
【0048】
溶融ゾーン
混合粒状ストリームは、フィードゾーンから溶融ゾーンへ通る。溶融ゾーンで粒状ポリマーが溶融する。固体ポリマー粒子は、回転スクリュにより生じる牽引により運ばれる。その後温度が摩擦熱の散逸を通じてスクリュの長さに沿って上昇し、ポリマーの溶融温度より高いレベルまで上昇する。これにより、固体粒子は溶融し始める。
【0049】
溶融ゾーンのスクリュは、溶融ゾーンのスクリュが完全に満たされるように設計されることが好ましい。これにより、固体粒子が溶融ゾーンにおいて緻密層を形成する。これは、スクリュチャネルに十分な圧力生成があり、スクリュチャネルが完全に満たされたときに生じる。通常溶融ゾーンのスクリュは、実質的な逆流を伴わない要素の運搬を含む。しかし、緻密層を達成するために、例えば溶融ゾーンの下流端の付近などの適切な位置にバリアまたはバックミキシング要素が設置される必要がありうる。緻密粒子層を得るためのスクリュ設計は、押出機産業では周知である。この問題は、とりわけChris Rauwendaal:「Polymer Extrusion」、Carl Hanser Verlag、1986年ミュンヘンの7.2.2および8.6.2段落で議論される。
【0050】
混合流体ストリームを溶融ゾーンに直接導入することが可能である。ストリームは、液体形態のストリームを溶融ゾーン内に噴霧することにより溶融ゾーンに導入されるのが適切である。フリーラジカル発生剤または官能性不飽和モノマーを溶融ゾーン内に噴霧する際には、噴霧ノズルが使用されるのが適切である。
【0051】
摩擦熱により、スクリュの長さに沿って温度が上昇し、ポリマーが溶融を開始する。溶融挙動は、例えば前述のChris Rauwendaalの書の7.3段落、特に7.3.1.1および7.3.2で議論される。
【0052】
混合ゾーン
溶融ゾーンの後、ポリマーは混合ゾーンに通る。混合ゾーンのスクリュは通常、ある程度の逆流を提供するスクリュ要素を含む一つ以上の混合セクションを含む。混合ゾーンにおいては、ポリマー溶融体が混合されて均質混合物が達成される。混合ゾーンは、スロットルバルブまたはギアポンプ等の追加要素も含んでもよい。
【0053】
混合ゾーンの温度は、オレフィンポリマーの溶融温度より高い。さらに、温度は、フリーラジカル発生剤の分解温度より高いことが必要である。温度は、オレフィンポリマーの分解温度より低いことが必要である。温度は、オレフィンポリマーの溶融温度より約5℃高い温度から、好ましくはオレフィンポリマーの溶融温度より約10℃高い温度から好ましくは約300℃、より好ましくは約280℃および特に好ましくは240℃の温度であるのが適切である。例えば、一部のプロピレンホモポリマーでは、温度は少なくとも165℃であるのが好ましく、少なくとも170℃であるのがより好ましい。
【0054】
混合流体ストリームを混合ゾーンに直接導入することも可能である。ストリームは、液体状態のストリームを混合ゾーン内に噴霧することにより混合ゾーンに導入されるのが適切である。フリーラジカル発生剤または官能性不飽和モノマーを混合ゾーン内に噴霧する際には、噴霧ノズルが使用されるのが適切である。混合流体ストリームはその後、混合ゾーンの上流端に適切に導入される。
【0055】
フリーラジカル発生剤の分解は、フリーラジカル発生剤が溶融ゾーンに存在する場合には溶融ゾーンで開始し、混合ゾーンで継続する。このようにして形成されたフリーラジカルは、ポリマー鎖および特にその中の第三級炭素原子および二重結合と反応して、ポリマーラジカルを生じる。これらのポリマーラジカルは、官能性不飽和化合物の二重結合と反応して、二重結合を有するポリマー鎖を生じうる。ポリマー鎖のこれらの二重結合は、他のポリマーラジカルとさらに反応して、長鎖分岐ポリマーを形成しうる。
【0056】
押出機の溶融ゾーンおよび混合ゾーンを合わせた全体の平均滞留時間は、好ましくは少なくとも約25秒でなければならず、より好ましくは少なくとも約30秒でなければならない。通常、平均滞留時間は60秒を超えず、55秒を超えないのが好ましい。平均滞留時間が30〜45秒の範囲内のときに良い結果が得られている。
【0057】
上述のように、一つ以上の排出ポートまたは別名ベントポートを介してガス状材料を押出機から除去するのが好ましい。ガス状材料は、典型的には未反応官能性不飽和化合物またはフリーラジカル発生剤の分解生成物である。押出機からのガス状材料の排気は当産業で周知であり、例えば前述のChris Rauwendaalの書の8.5.2および8.5.3段落において議論される。
【0058】
一つ以上の排出ポートを使用することが可能である。例えば、粗脱気のための上流ポートと、残る揮発性材料を除去するための下流ポートとの二つのポートが存在してもよい。このような配置は、押出機に大量のガス状材料が存在する場合に有利である。
【0059】
ベントポートは、混合ゾーンに位置するのが適切である。しかしベントポートは、溶融ゾーンの下流端に位置してもよい。特に複数のベントポートがある場合には、最上流のポートを溶融ゾーンに、後のポート(単数または複数)を混合ゾーンに有することが有利なこともある。
【0060】
押出機に水、水蒸気、COまたはN等のストリッピング剤を加えることも可能である。このようなストリッピング剤は、使用される場合には、ベントポートの上流に導入され、または複数のベントポートがあるときには最も下流のベントポートの上流および上流ベントポートの下流に導入される。ストリッピング剤は通常、混合ゾーン内に、または溶融ゾーンの下流端で導入される。ストリッピングは、とりわけChris Rauwendaalの書の8.5.2.4段落において議論される。
【0061】
ダイゾーン
ダイゾーンは通常ダイプレートを含み、ダイプレートはブレーカプレートと呼称される場合もあり、複数の穴を有する厚い金属ディスクである。穴は、スクリュ軸と平行である。溶融オレフィンポリマーは、ダイプレートを通して押圧される。溶融ポリマーは、このようにして多数のストランドを形成する。ストランドはその後、ペレタイザに通される。
【0062】
ダイプレートの機能は、ポリマー溶融体の螺旋状運動を止め、一方向に流れさせることである。
【0063】
ダイゾーンは、ダイプレートで典型的に支えられた一つ以上のスクリーンも含みうる。スクリーンは、ポリマー溶融体から外来物質を除去するため、またポリマーからゲルを除去するためにも用いられる。ゲルは通常、非分散高分子量ポリマー、例えば架橋ポリマーである。
【0064】
ペレタイザ
溶融ポリマーのストランドは、ダイプレートを通してペレタイザ内に通される。通常、ペレタイザは、ダイプレートに隣接する水槽および一組の回転ナイフを含む。ストランドは水中で冷却されて凝固し、回転ナイフがストランドをペレットに切断する。ペレットの寸法は、適切なナイフ数および適切な回転速度を選択することにより調節されうる。
【0065】
ペレタイザの水温は、通常20〜90℃であり、30〜70℃であるのが好ましい。ペレットが懸濁された水のストリームが、ペレタイザから取り出される。ペレットは水ストリームから分離された後、乾燥され、回収される。水ストリームは冷却ステップに通され、ペレタイザ内に戻される。任意に、損失を補うために水ストリームに真水が加えられる。
【0066】
図面
図1は、変性ポリオレフィンを生成するために用いられる従来の方法を開示する。この図1の参照番号は、以下の意味を有する。
1 オレフィンポリマー用の中間貯蔵ビン
2 製品移送チューブ
3 固体用の計量デバイス
4 連続加熱可能フロースルー混合機
5 ラジカル発生剤用のドージングポンプ
6 ガス圧力制御部
7 二軸スクリュ押出機
8 モノマー計量の量制御
9 造粒機器(ペレタイザ)
10 廃ガス浄化
11 ガス供給用の接続ピースを備えた専用ハウジング
12 押出機(フィードホッパ)への粉末状反応混合物の供給用の接続ピースを備えた専用ハウジング
13 脱気用の接続ピースを備えた専用ハウジング(排出ポートまたはベントポート)
14 同伴剤(entraining agent)の計量投入用の接続ピースを備えた専用ハウジング
15 最終脱気用の接続ピースを備えた専用ハウジング(排出ポートまたはベントポート)
16 追加材料の計量用の接続ピースを備えた専用ハウジング
【0067】
オレフィンポリマーは、中間貯蔵ビン(1)から製品移送チューブ(2)および固体計量デバイス(3)を通して連続加熱可能フロースルー混合機(4)へ進み、この混合機はポリプロピレン粒子の任意に加えられた熱分解フリーラジカル発生剤との混合の間に高い均質化効果を有する。
【0068】
フリーラジカル発生剤は計量ポンプ(5)によって液体を霧化する装置に輸送され、フロースルー混合機(4)内でポリマー粉末を機械的に混合することにより生じる流動層上に噴霧され、気相の二官能性不飽和モノマーがオレフィンポリマー粒子によって吸収される。
【0069】
官能性不飽和化合物を含む気体混合物は量コントローラ(6)により計量されるが、この量コントローラの設定値は、質量圧力またはメルトインデックスの関数として固定される。気体の官能性不飽和化合物は、二軸スクリュ押出機(7)の粉末状反応混合物用のフィードホッパ(12)の上流の専用ハウジング(11)に通され、フィードホッパ(12)を通って連続加熱可能スルーフロー混合機(4)内へと粉末に対して向流的に流れる。フロースルー混合機(4)の添加パイプ(2)および計量デバイス(3)において、官能性不飽和化合物が粉末中に含まれる不活性ガスもしくは酸素または不活性ガス/酸素混合物と混合する。気体混合物は、圧力制御部(6)を廃ガス浄化システム(10)へと流れる。
【0070】
官能性不飽和化合物を含む気体混合物は、コンプレッサ循環ポンプによって任意に循環させられうる。
【0071】
二軸スクリュ押出機(7)は、ガス供給用の接続ピースを備えた専用ハウジング(11)で取り付けられ、接続ピース(12)を通じて供給される接続ピース(12)と(13)との間の変性オレフィンポリマーを官能性不飽和化合物の存在下で加熱および溶融することを可能にする。
【0072】
接続ピース(13)は、変性オレフィンポリマーからガスのほとんどを除去するために働く。二軸スクリュ押出機は、同伴剤の計量投入用の接続ピース(14)を備える。接続ピース(14)の下流に脱気用の第二接続ピース(15)があり、残る未反応官能性不飽和化合物が押出機(7)から取り出される。任意に、添加剤等のさらなる補助剤がフィードポート(16)を通じて加えられうる。下流の造粒機器(9)は、溶融物押出物の粉砕をもたらす。
【0073】
測定方法
以上の本発明の一般的説明および以下の実施例には、別段の定めがない限り、以下の用語の定義および決定方法があてはまる。
【0074】
メルトフローレート
メルトフローレート(MFR:melt flow rate)またはメルトインデックス(MI:melt index)は、ISO1133にしたがって測定される。異なる荷重を使用できる場合、負荷は通常、例えば2.16kgの荷重を示すMFR等の下付き数字で示される。温度は、例えばポリプロピレンでは230℃およびポリエチレンでは190℃など、ISO1133にしたがって特定のポリマーにつき選択される。したがってポリプロピレンでは、MFRは230℃の温度で2.16kgの荷重下で測定される。
【0075】
SEC/VISC−LSによって決定される分子量平均、分子量分布、長鎖分岐指数(Mn、Mw、MWD、g’)
分子量平均(Mw、Mn)、分子量分布(MWD)および多分散性指数PDI=Mw/Mn(式中Mnは数平均分子量、Mwは重量平均分子量である)により表されるその幅を、ISO16014−4 2003にしたがいゲル浸透クロマトグラフィ(GPC:Gel Permeation Chromatography)により決定した。屈折率(RI:reflactive index)、オンライン4キャピラリブリッジ粘度計(PL−BV400−HT)、ならびに15°および90°角度のデュアル光散乱検出器(PL−LS15/90光散乱検出器)を備えたPL220(Polymer Laboratories)GPCを使用した。Polymer Laboratoriesからの3x Olexisおよび1x Olexis Guardカラムを固定相として、1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB、250mg/Lの2,6−ジtertブチル−4−メチル−フェノールで安定化)を移動相として160℃で、1mL/分の一定流速で適用した。分析ごとに200μLの試料溶液を注入した。対応する検出器定数および検出器間遅延容積を、132900g/molのモル質量および0.4789dl/gの粘度を有する狭いPS標準(MWD=1.01)により決定した。TCB中の使用したPS標準の対応するdn/dcは、0.053cm/gである。
【0076】
各溶出スライスでのモル質量を、15°および90°の二つの角度(angels)の組み合わせを使用した光散乱により決定した。すべてのデータ処理および計算は、Cirrus Multi−Offline SEC−Software Version 3.2(Polymer Laboratories a Varian Inc.Company)を使用して行った。分子量は、Cirrusソフトウェアの「sample calculation options subfield slice MW data from」のフィールドの「use combination of LS angles」のオプションを用いて計算した。
【0077】
データ処理は、G.Saunders、P.A.G:Cormack、S.Graham;D.C.Sherrington、Macromolecules、2005、38、6418−6422に詳述される。その中で各スライスでのMwは、90°の角度により以下の等式により決定される:
【0078】
【数1】
【0079】
90°の角度のレイリー比R(θ)90°は、LS検出器で測定し、RはRI検出器の応答である。粒子散乱関数P(θ)は、C.JacksonおよびH.G.Barth(Handbook of Size Exclusion Chromatography and related techniques、C.−S.Wu、第2版、Marcel Dekker、New York、2004、p.103のC.JacksonおよびH.G.Barth、「Molecular Weight Sensitive Detectors」)に記載の通りに、両角度(15°および90°)の使用により決定する。LS検出器またはRI検出器のシグナルがそれぞれ少なかった低および高分子領域につき、線形近似を用いて溶出体積を対応する分子量に相関付けた。
【0080】
等式で用いられるdn/dcは、RI検出器の検出器定数、試料の濃度cおよび分析した試料の検出器応答の面積から計算する。
【0081】
分岐の相対量は、分岐ポリマー試料のg’指数を用いて決定する。長鎖分岐(LCB:long chain branching)指数は、g’=[η]br/[η]linとして定義される。g’値が増加すると、分岐含量が減少することは周知である。[η]は、ある分子量のポリマー試料のTCB中の160℃での固有粘度であり、オンライン粘度および濃度検出器により測定される。固有粘度は、Solomon−Gatesman式を用いて、Cirrus Multi−Offline SEC−Software Version 3.2のハンドブックに記載されるように測定した。
【0082】
各溶出スライスの必要な濃度は、RI検出器により決定する。
【0083】
[η]linは、直鎖状試料の固有粘度であり、[η]brは、同じ分子量および化学組成の分岐試料の粘度である。数平均g’および重量平均g’は以下のように定義される:
【0084】
【数2】
【0085】
式中、aは画分iのdW/dlogMであり、Aは画分iまでのポリマーの累積dW/dlogMである。オンライン粘度検出器を用いて、分子量に対する直鎖状基準(直鎖状アイソタクチックPP)の[η]linを測定した。logM=4.5〜6.1の分子量範囲における直鎖状基準から以下のKおよびα値を得た(K=30.6810−3およびα=0.681)。g’計算のためのスライス分子量あたりの[η]linを、以下の関係[η]lin,i=Kαによって計算した。各特定の試料の[η]br,iを、オンライン粘度および濃度検出器により測定した。
【0086】
gpcBR指数:
gpcBR指数は、以下の式を用いて計算する:
【0087】
【数3】
【0088】
式中、Mw(LS15)は、15°角度の光散乱溶出面積から、[η](バルク)は、対応する粘度検出器溶出面積から、Cirrus Multi−Offline SEC−Software Version 3.2および以下のアプローチを用いて計算される。
【0089】
【数4】
【0090】
式中、KLSは、15°角度の光散乱定数であり、dn/dcは、RI検出器の検出器定数から計算した屈折率増分であり、KIVは、粘度計の検出器定数であり、Spは、各クロマトグラフィスライスの比粘度であり、Cは、g/dl単位の対応濃度である。
【0091】
最初に直鎖状ポリプロピレン標準試料の分子量および固有粘度を、ユニバーサル較正アプローチを用い、溶出体積の関数として分子量および固有粘度の両方につき直鎖状PP(「直鎖状」)の対応するMark Houwink定数を適用して対応する等式を用いて決定する。
【0092】
【数5】
【0093】
ゲル含量
約2gのポリマー(m)を秤量し、金属のメッシュに入れ、ポリマーおよびメッシュの総重量を決定する(m+m)。メッシュ内のポリマーを、soxhlet装置において沸騰キシレンで5時間抽出する。それから溶出剤を新たなキシレンと交換し、沸騰をもう一時間継続する。その後、メッシュを乾燥し、熱キシレン不溶性ポリマー(XHU)およびメッシュの合計質量(mXHU+m)を得るために、再び秤量する。式(mXHU+m)−m=mXHUによって得たキシレン熱不溶性ポリマー(mXHU)の質量を、ポリマーの重量(m)に関連付けて、キシレン不溶性ポリマーの比率mXHU/mを得る。そしてこのキシレン不溶性ポリマーの画分をゲル含量とする。
【0094】
F30およびF200溶融強度およびv30およびv200溶融延伸性
本明細書において記載する試験は、ISO16790:2005にしたがう。ISO16790:2005の図1による装置を使用する。
【0095】
歪硬化挙動は、論文「Rheotens−Mastercurves and Drawability of Polymer Melts」、M.H.Wagner、Polymer Engineering and Sience、Vol.36、925〜935ページに記載される方法によって決定する。ポリマーの歪硬化挙動は、溶融ストランドを所定の加速度で下方に引くことにより延伸する、Rheotens装置(Goettfert製、Siemensstr.2、74711 Buchen、ドイツ)によって分析される。
【0096】
Rheotens実験は、工業紡績および押出プロセスを模倣する。原則として、溶融物が丸ダイを通して押出または押圧され、得られたストランドが引き取られる。押出物に対する応力は、溶融物特性および測定パラメータ(特に押出量(output)と引取速度との比、実際には延伸率の尺度)の関数として記録する。以下に提示する結果に関しては、材料を実験用押出機HAAKE Polylabシステムおよび円筒状ダイ(L/D=6.0/2.0mm)を備えたギアポンプにより押出した。F30溶融強度およびv30溶融延伸性を測定するためには、押出機出口(=ギアポンプ入口)の圧力を、押出されるポリマーの一部をバイパスすることにより30バールに設定する。F200溶融強度およびv200溶融延伸性を測定するためには、押出機出口(=ギアポンプ入口)の圧力を、押出されるポリマーの一部をバイパスすることにより200バールに設定する。
【0097】
ギアポンプは5mm/秒のストランド押出速度に予め調節し、溶融温度は200℃に設定した。ダイとRheotensホイールとの間のスピンライン長は80mmであった。実験の最初に、Rheotensホイールの巻取速度を、押出されるポリマーストランドの速度に調節した(引張力ゼロ)。それから、ポリマーフィラメントが破断するまでRheotensホイールの巻取速度を徐々に上げることにより実験を開始した。ホイールの加速度は十分に小さかったため、引張力を準定常条件下で測定した。下方に引かれた溶融ストランドの加速度は、120mm/秒2である。Rheotensは、PCプログラムEXTENSと組み合わせて操作した。これは実時間データ取得プログラムであり、引張力および下方牽引速度の測定データを表示および保存する。ポリマーストランドが破断するRheotens曲線(力対滑車回転速度)の終点を、F30溶融強度およびv30溶融延伸性(extensibilty)の値、またはF200溶融強度およびv200溶融延伸性(extensibilty)の値とそれぞれみなす。
【0098】
粒子サイズおよび粒子サイズ分布
ポリマー試料にグラデーション試験を行った。ふるい分析は、以下のサイズのワイヤメッシュスクリーンを備えたふるいの入れ子状カラムを含んだ:>20μm、>32μm、>63μm、>100μm、>125μm、>160μm、>200μm、>250μm、>315μm、>400μm、>500μm、>710μm、>1mm、>1.4mm、>2mm、>2.8mm。試料を、ふるい目が最大の上部ふるいに注ぎ込んだ。カラムの下方のふるいはそれぞれ一つ上のふるいよりも目が小さい(上記のサイズ参照)。下部にレシーバがある。カラムは機械式シェーカ内に置いた。シェーカがカラムを振盪した。振盪が完了したあと、各ふるい上の材料を秤量した。その後、各ふるいの試料の重量を全重量で除算して、各ふるい上に保たれた割合を得た。
【実施例】
【0099】
実施例においては以下のペルオキシド溶液を使用した:
ペルオキシド溶液1:160℃で25〜45秒の半減期を有する75重量%のフリーラジカル発生剤(密度約0.90g/ml)。
【0100】
実施例においては以下のポリマーを使用した:
ポリマー1:MFRが0.6g/10分であり、メジアン粒子径が0.23mmである粉末形態のポリプロピレンホモポリマー
ポリマー2:MFRが0.8g/10分であり、ペレットサイズが約3.9mmであるペレット形態のポリプロピレンホモポリマー
ポリマー3:MFRが0.8g/10分であり、メジアン粒子径が1.55mmである粉末形態のポリプロピレンホモポリマー
【0101】
すべての実施例において、17重量%のCa−ステアレート、17重量%の合成ハイドロタルサイトおよび残りのIrganox B215を含む添加剤パッケージを、添加剤フィードポートに導入したポリマーと混合した。
【0102】
実施例1
L/Dが38のZSK30同方向回転二軸スクリュ押出機を、以下のように反応押出に使用した。粉末を、スクリュの上流端からL/D1.5の距離で供給した。ペルオキシドおよび/またはブタジエンのフィードポイントは、スクリュの上流端からL/D8および12であった。添加剤フィードは24L/Dであり、真空ポートは33L/Dであった。9〜24L/Dの範囲内ではスクリュは混合要素を含み、1〜9および24〜38では運搬要素を含んだ。バレル温度は溶融ゾーンの上流端で約110℃であり、混合ゾーンで180℃〜200℃であり、ダイで約220℃であった。真空は−0.25バールgに設定した。
【0103】
ポリマー3を、押出機のフィードポートに導入した。8L/Dの液体フィードポートに、1,3−ブタジエンおよび上述のペルオキシド溶液1を、ペルオキシド溶液およびブタジエンのフィード速度がプロピレンホモポリマー、ブタジエンおよびペルオキシド溶液の合計フィードの0.70重量%および0.24重量%となるようにそれぞれ導入した。ペルオキシド溶液およびブタジエンのフィードは、パイプ内の合計フィードの滞留時間が約15分となるようにフィードパイプ内で合わせられた。ポリマーのフィード速度は、8kg/時であった。結果として得られたポリマーは、MFRが3.1g/10分であり、熱キシレン不溶材料画分が0.46%であった。データを表1にまとめる。
【0104】
実施例2
ポリマー原材料としてポリマー1を使用したことを除き、実施例1の手順を繰り返した。ペルオキシド溶液1および1,3−ブタジエンのフィード速度は、表1に示す通りであった。
【0105】
実施例3
ポリマー原材料としてポリマー2を使用したことを除き、実施例1の手順を繰り返した。ペルオキシド溶液1および1,3−ブタジエンのフィード速度は、表1に示す通りであった。
【0106】
比較例1:
実施例1に記載した押出機を、以下の例外を除き実施例1に記載のように運転した。
【0107】
ポリマー3を、ペルオキシド溶液1とともに押出機のフィードポートに導入した。1,3−ブタジエンを、8L/Dで液体フィードポートに導入した。ペルオキシド溶液およびブタジエンのフィード速度はそれぞれ、プロピレンホモポリマー、ブタジエンおよびペルオキシド溶液の合計フィードの0.74重量%および0.22重量%であった。ポリマーのフィード速度は、8kg/時であった。
【0108】
結果として得られたポリマーは、MFRが1.6g/10分であり、熱キシレン不溶材料画分が0.74%であった。データを表1にまとめる。
【0109】
比較例2:
実施例1に記載した押出機を、以下の例外を除き実施例2に記載のように運転した。
【0110】
ポリマー1を押出機のフィードポートに導入した。ペルオキシド溶液1を、8L/Dで液体フィードポートに導入した。1,3−ブタジエンを、12L/Dで液体フィードポートに導入した。ペルオキシド溶液およびブタジエンのフィード速度はそれぞれ、プロピレンホモポリマー、ブタジエンおよびペルオキシド溶液の合計フィードの0.46重量%および0.43重量%であった。ポリマーのフィード速度は、8kg/時であった。データを表1にまとめる。
【0111】
比較例3:
実施例1に記載した押出機を、以下の例外を除き実施例3に記載のように運転した。
【0112】
ポリマー2を押出機のフィードポートに導入した。ペルオキシド溶液1を、8L/Dで液体フィードポートに導入した。1,3−ブタジエンを、12L/Dで液体フィードポートに導入した。ペルオキシド溶液およびブタジエンのフィード速度はそれぞれ、プロピレンホモポリマー、ブタジエンおよびペルオキシド溶液の合計フィードの0.46重量%および0.40重量%であった。ポリマーのフィード速度は、8kg/時であった。データを表1にまとめる。
【0113】
比較例4:
ペルオキシド溶液を押出機のフィードホッパに導入し、ペルオキシド溶液およびブタジエンのフィード速度を変更した点を除き、比較例3に記載した手順を繰り返した。さらに、データを表1にまとめる。
【0114】
【表1】
図1