(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記二酸化ケイ素が5〜100nmの粒径を有し、上記酸化アルミニウムが12〜100nmの粒径を有することを特徴とする、請求項1に記載の電子ビーム硬化性塗料。
上記アクリレートプレポリマーが脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、オルガノシリコンアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、ポリアクリル酸アクリレートおよびアクリレートオリゴマーのうちの一つまたは複数から選択され;上記多官能性モノマーが多官能性アクリレートであることを特徴とする、請求項1に記載の電子ビーム硬化性塗料。
上記電子ビーム硬化性塗料が平滑化潤滑剤(leveling lubricant)、消泡剤、顔料またはナノ抗菌剤をさらに含み;上記顔料が0.1〜10重量部の量で含有されることを特徴とする、請求項1に記載の電子ビーム硬化性塗料。
上記電子ビーム硬化のための装置が低エネルギー電子ビーム装置であり;上記電子ビーム硬化の線量が5〜100kGyであり、電子ビーム硬化の速度が100〜1000m/分であることを特徴とする、請求項6に記載の作製法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のさらなる理解のために、本発明の好ましい実施形態を例と共に以下に記載する。しかし、これらの記載が、本発明の特徴および利点をさらに例示するためにのみ提供され、本発明の請求の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0020】
本発明の実施形態は、
以下を含み、
無機ナノ材料
(分散
液中) 5〜50重量部;
無機紫外線ナノ吸収剤
(分散
液中) 1〜10重量部;
多官能性モノマー 2〜30重量部;
アクリレートプレポリマー 20〜50重量部;
無機ナノ材料の分散
液が以下の工程によって調製され、
A)無機ナノ材料の溶液を有機溶剤と混合することで混合溶液を得て、混合溶液のpHを調整する工程;
B)工程A)で得られた溶液、アクリレートモノマー、をシランカップリング剤と反応させて、無機ナノ材料の分散
液を得る工程;
無機紫外線吸収剤の分散
液が以下の工程によって調製され、
A)無機紫外線ナノ吸収剤の溶液を有機溶剤と混合することで混合溶液を得て、混合溶液のpHを調整する工程;
B)工程A)で得られた溶液、アクリレートモノマー、をシランカップリング剤と反応させて、無機紫外線ナノ吸収剤の分散
液を得る工程;
無機ナノ材料が二酸化ケイ素および酸化アルミニウムのうちの1つまたは2つであり;
無機紫外線ナノ吸収剤が二酸化チタンまたは酸化亜鉛である、
電子ビーム硬化性コーティングを開示する。
【0021】
本願は、無機ナノ材料の分散
液、無機紫外線吸収剤の分散
液、多官能性モノマーおよびアクリレートプレポリマーを含む電子ビーム硬化性塗料を提供する。無機ナノ材料および無機紫外線吸収剤は凝集することなくアクリレートモノマー中にそれぞれ均一に分散しており、これにより、コーティングの性質に対する影響が回避され、コーティングがより良好な耐摩耗性および耐候性を有することを有することが可能となる。
【0022】
電子ビーム硬化性塗料において、無機ナノ材料の分散
液は、二酸化ケイ素の分散
液および酸化アルミニウムの分散
液のうちの1つまたは2つである。本願記載の電子ビーム硬化性塗料への二酸化ケイ素の分散
液の追加は、電子ビーム硬化性コーティングの材料としての電子ビーム硬化性塗料が、コーティングにより良好な硬度を与えることを可能にし;また酸化アルミニウムの分散
液の追加も、コーティングがより高い硬度を有することを可能にする。電子ビーム硬化性塗料への二酸化ケイ素の分散
液および酸化アルミニウムの分散
液の両方の追加は、コーティングがより高い硬度を有しより良好な耐摩耗性を有することを可能にする。二酸化ケイ素および酸化アルミニウムは、高い極性をもたらす多数のヒドロキシル基をそれらの表面上に含有しているため、有機モノマーおよび有機プレポリマーと相溶性が悪い。従って、二酸化ケイ素および酸化アルミニウムをそれぞれ有機モノマーおよび有機溶媒中に分散させることが必要となる。しかし、二酸化ケイ素および酸化アルミニウムのナノ粒子は、容易に凝集して二次粒子を形成し、それによりコーティングの性質に影響を与える。電子ビーム硬化性コーティングの性質を向上させるために、本願は、無機ナノ材料の作製法を提供する。前記無機ナノ材料は、二酸化ケイ素および酸化アルミニウムのうちの1つまたは2つである。
無機ナノ材料の作製法は以下の工程を含み、
A)無機ナノ材料の溶液を有機溶剤と混合することで混合溶液を得て、混合溶液のpHを調整する工程;
B)工程A)で得られた溶液、アクリレートモノマー、をシランカップリング剤と反応させて、無機ナノ材料の分散
液を得る工程;
無機ナノ材料の調製中、二酸化ケイ素および酸化アルミニウムは、有機モノマー中に均一に分散して安定で透明または半透明な分散
液を形成可能となるように、本願における表面処理を受ける。これにより、二酸化ケイ素または酸化アルミニウムの分散
液は、電子ビーム硬化性塗料の一構成要素として、電子ビーム硬化性塗料がより良好な性質を有することを可能にする。
【0023】
本願の無機ナノ材料は二酸化ケイ素および酸化アルミニウムである。まず、無機ナノ材料の溶液が有機溶剤と混合されて、混合溶液が得られる。無機ナノ材料の溶液は、シリカゲルおよびアルミニウムゾル等の、水中に分散した無機ナノ材料のヒドロゾルであることが好ましい。二酸化ケイ素ナノ粒子は、静電反発力により水中で容易に分散して安定な分散
液を形成する。二酸化ケイ素のヒドロゾル、すなわちシリカゲルは、非常に経済的な、環境に配慮した材料として現在使用されている。シリカゲルのサイズは主に5nm、7nm、12nm、20nmおよび50nmであり、そのpHは好ましくは2〜12である。いくつかの市販シリカゲルは以下の通りであるが、これらに限定はされない:Ludox(DuPont社)、NexSil(NYACOL Technologies, Inc.)、CAB−O−SPERSE(CABOT Corporation)、Bindzil and Levasil(AkzoNobel)、AERODISP(EVONIK Industries)、HTSi−11L(Nanjing Haitai Nano株式会社)、VK−Sシリーズ(Hangzhou Wanjing New Material株式会社)。
【0024】
アルミニウムゾルは、酸化アルミニウムの分散
液であってもよいし、あるいは、酸化アルミニウム修飾シリカゲル、例えば、アルミニウムゾル(Shandong Shanda Colloid Material株式会社)、XZ−1128(Hefei Xiangzheng Chemical Technology株式会社) A−10(Dalian Sinuo Chemical New Materials Science and Technology株式会社)、VK−L30W(Hangzhou Wanjing New Material株式会社)、Al−2255(NanoPhase社)等であってもよい。
【0025】
粒子の小ささおよび表面積の大きさから、ナノ二酸化ケイ素はその表面上に多数のヒドロキシル基を含有しており、ヒドロキシル密度は約4.6/nm2である。このケイ素ヒドロキシル(silicon hydroxyl)は、pH2以上で水素イオンを失い、ケイ素酸素陰イオン(silicon oxygen anion)を生産することができるため、水中の安定な分散
液が容易に得られる。しかし、有機溶剤または有機モノマー中では、ヒドロキシル基間の強い水素結合のために、二酸化ケイ素粒子は、容易に凝集して、沈殿する大きな凝集体を形成し、安定な分散
液を形成することができない。従って、本願では、有機溶剤および有機モノマーとの親和性を増加させるために、シランカップリング剤を用いて、二酸化ケイ素の表面を処理し、ヒドロキシル基の濃度を減少させ、極性を下げる。
【0026】
しかし、ごく少数が水に可溶性であることを除き、シランカップリング剤のほとんどは水溶性が非常に低い。従って、水溶性溶剤を加えて、水性シリカゾル溶液中のシランの溶解性を増加させることが必要である。有機溶剤には低沸点のアルコール類、エーテル類およびケトン類のうちの一つまたは複数が含まれ、アルコール類はメタノール、エタノール、イソプロパノールおよびブタノールのうちの一つまたは複数であり;エーテル類はテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルおよびプロピレングリコールモノブチルエーテルのうちの一つまたは複数であり;ケトン類はアセトンおよびブタノンのうちの1つまたは2つである。他の溶媒としては、アセトニトリルおよびジメチルホルムアミド等も挙げられる。上記の有機溶剤は、シリカゲルの50重量%〜500重量%、より好ましくは50重量%〜300重量%の量で加えられることが好ましい。
【0027】
シランの反応はpHおよび温度に大きく影響を受ける。酸性条件下では加水分解してケイ素ヒドロキシル基を生成し易く;アルカリ性条件下では縮合反応が起こりやすく;中性条件下では、加水分解および縮合反応は共にゆっくりとしたものである。温度の上昇は加水分解および縮合反応に寄与する。従って、上記混合溶液のpHは本願において調整される。pHは、酸、例えばギ酸、酢酸、塩酸および硝酸のうちの一つもしくは複数、または塩基、例えば水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムのうちの一つもしくは複数を用いて調整してもよく、pHは2〜6であることが好ましい。
【0028】
本願において、pH調整後の溶液は次にアクリレートモノマーおよびシランカップリング剤と反応する。無機ナノ粒子二酸化ケイ素との加水分解後のシランカップリング剤の表面反応により、二酸化ケイ素の油溶性が増加し、次いでアクリレートモノマー中に溶解されることで、無機ナノ材料の分散
液が得られる。反応温度は好ましくは30℃〜100℃、より好ましくは50℃〜80℃であり、反応時間は好ましくは1時間〜24時間、より好ましくは2時間〜12時間、最も好ましくは2時間〜6時間である。
【0029】
本願におけるシランカップリング剤は、電子ビーム照射によりラジカルを生成可能である基またはラジカル架橋を引き起こす基を含有することが好ましく、上記の基としては、(メチル)アクリレート、(メチル)アクリルアミド、ビニル、アミノ、エポキシ、メルカプトまたはハロアルキルが挙げられる。本願におけるシランカップリング剤は、ハロアルキル基を含有するシランカップリング剤であることが好ましい。シランカップリング剤:二酸化ケイ素の質量比は、好ましくは1:100〜10:1、より好ましくは5:100〜5:1、最も好ましくは1:10〜1:1である。使用されるシランカップリング剤の量は二酸化ケイ素の粒径または比表面積と関連し、粒子が小さいほど、必要なシランカップリング剤の量は多くなり、逆の場合も同じである。使用されるアクリレートモノマーの量は、重量で、二酸化ケイ素の重量の0.5〜10倍、好ましくは1〜8倍、より好ましくは2〜5倍である。
【0030】
架橋反応に関与し得るシランカップリング剤は、(メチル)アクリレート基、(メチル)アクリルアミド基、ビニル基、アミノ基およびエポキシ基を含有する。
【0031】
(メチル)アクリレート基を含有するシランは、構造式CH
2=CR
1−CO−O−R
2SiR
3m(OR
4)
3−mで表される場合があり、式中、mは0〜2であり、R
1はHまたはCH
3であり、R
2は1〜5の炭素鎖を含有するアルキル基であり、R
3およびR
4は1〜3の炭素鎖を含有するアルカンであり、R
3およびR
4は同じであっても異なっていてもよい。(メチル)アクリレート基を含有するシランは、γ−(メチル)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メチル)アクリロイルオキシプロピル−トリエトキシシラン、γ−(メチル)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−(メチル)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メチル)アクリロイルオキシプロピル−メチルジエトキシシラン、γ−(メチル)アクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシランおよびγ−(メチル)アクリロイルオキシプロピルジメチルエトキシシランのうちの一つまたは複数であることが好ましい。
【0032】
アクリルアミド基を含有するシランは、構造式CH
2=CR
5−CO−NH−R
6SiR
7n(OR
8)
3−nで表される場合があり、式中、nは0〜2であり、R
5はHまたはCH
3であり、R
6は1〜5の炭素鎖を含有するアルキル基であり、R
7およびR
8は1〜3の炭素鎖を含有するアルカンであり、R
7およびR
8は同じであっても異なっていてもよい。このようなシランは、(メチル)アクリルアミドプロピルトリメトキシシラン、(メチル)アクリルアミドプロピルトリエトキシシラン、(メチル)アクリルアミドプロピルトリイソプロポキシシラン、(メチル)アクリルアミドプロピルメチルジメトキシシラン、(メチル)アクリルアミドプロピルメチルジエトキシシラン、(メチル)アクリルアミドプロピルジメチルメトキシシラン、(メチル)アクリルアミドプロピルジメチルエトキシシラン、(メチル)アクリルアミド(2−メチル)プロピルトリメトキシシラン、(メチル)アクリルアミド(2−メチル)エチルトリメトキシシラン、(メチル)アクリルアミド(2−メチル)プロピルトリエトキシシラン、(メチル)アクリルアミド(2−メチル)エチルトリエトキシシラン、N−[2−(メチル)アクリルアミドエチル]アミンプロピルトリメトキシシラン、N−[2−(メチル)アクリルアミドエチル]アミンプロピルトリ−エトキシシラン、3−(メチル)アクリルアミドプロピルトリアセトキシシラン、(メチル)アクリルアミドエチルトリメトキシシラン、(メチル)アクリルアミドエチルトリエトキシシラン、(メチル)アクリルアミドメチルトリメトキシシランおよび(メチル)アクリルアミドメチルトリエトキシシランのうちの一つまたは複数であることが好ましい。
【0033】
ビニル基を含有するシラン は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリtertブトキシシラン、ビニルトリ−(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジビニルテトラメチルジシロキサンおよびテトラビニルテトラメチルシクロテトラポリシロキサンのうちの一つまたは複数であることが好ましい。
【0034】
エポキシ基を含有するシラン は、3−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピルトリイソプロポキシシラン、3−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピルメチルジエトキシシラン、3−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピルジメチルメトキシシラン、3−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピルジメチルモノキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランおよび2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランのうちの一つまたは複数であることが好ましい。
【0035】
アミノ基を含有するシラン は、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、N−メチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アニリンプロピルトリメトキシシラン、N−アニリンプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランおよびN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシランのうちの一つまたは複数であることが好ましい。
【0036】
電子ビーム下でラジカルを生成し易いシランは、構造式XR
9SiR
11p(OR
12)
3−pで表される場合があり、式中、pは0〜2であり、R
9は1〜5の炭素鎖を含有するアルキル基であり、R
11およびR
12は1〜3の炭素鎖を含有するアルカンであり、R
11およびR
12は同じであっても異なっていてもよく、XはCl、Br、IまたはSH等である。このようなシランは、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメチルエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、3−クロロプロピルジメチルメトキシシラン、3−クロロプロピルジメチルエトキシシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリエトキシシラン、3−ブロモプロピルメチルジメトキシシラン、3−ブロモプロピルメチルジエトキシシラン、3−ブロモプロピルジメチルメトキシシラン、3−ブロモプロピルジメチルエトキシシラン、3−ヨードプロピルトリメトキシシラン、3−ヨードプロピルトリエトキシシラン、3−ヨードプロピルメチルジメトキシシラン、3−ヨードプロピルメチルジエトキシシラン、3−ヨードプロピルジメチルメトキシシランおよび3−ヨードプロピルジメチルエトキシシランのうちの一つまたは複数であることが好ましい。
【0037】
本願では、コーティングを迅速に硬化させるために、低電子ビーム放射エネルギーにおいてラジカルを生成するハロゲン含有シランカップリング剤を用いて、二酸化ケイ素を修飾することが好ましい。
【0038】
本願におけるアクリレートモノマーは単官能モノマー、二官能モノマー、多官能モノマーである場合があり、本願では特に限定はされない。単官能モノマーは、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、テトラデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−ジメチルアミノエチルアクリレート、2−ジイソプロピルアミノエチルアクリレート、メタクリレートホスフェート、エトキシエトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフランメタノールアクリレート(tetrahydrofuran methanolic acrylate)、フェノキシエチルアクリレート、ヘキサンジオールメトキシモノアクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールメトキシモノアクリレート、ポリエチレングリコールメトキシモノアクリレート(種々の異なる分子量を有する)、2,3−エポキシプロピルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートおよび1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレートのうちの一つまたは複数であることが好ましい。
【0039】
二官能アクリレートモノマーは、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(種々の異なる分子量を有する)、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシルネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシネオペンチルグリコールジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ジアクリル酸亜鉛およびジエタノールジアクリレートフタレートのうちの一つまたは複数であることが好ましい。
【0040】
多官能アクリレートモノマーは、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エトキシ化グリセロールトリアクリレート、プロポキシ化グリセロールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリ−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレートおよびジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレートのうちの一つまたは複数であることが好ましい。
【0041】
上記モノマーのメタクリレート化合物も適用可能である。
【0042】
本発明は酸化アルミニウムの分散
液の調製法も提供し、使用される調製法および原料は二酸化ケイ素のものと同じであり、本明細書でさらなる説明はなされない。
【0043】
本願は、紫外線吸収剤の分散
液、すなわち、二酸化チタンの分散
液および酸化亜鉛の分散
液の調製法も提供する。本願において、ナノ二酸化チタンまたはナノ酸化亜鉛は、有機モノマー中に分散されて、それぞれ、安定で透明な分散
液または安定で半透明な分散
液を形成する。ナノ二酸化チタンおよびナノ酸化亜鉛は、可視光線を通す良好な無機紫外線吸収剤であるが、光触媒特性を有しており、有機物を分解し易い。本願において、二酸化チタンおよび酸化亜鉛はシランカップリング剤で処理され、シランカップリング剤は、一方ではモノマーとのそれらの相溶性を増加させ、他方では、ナノ二酸化チタン粒子およびナノ酸化亜鉛粒子の表面を無機二酸化ケイ素層で被覆して、それらの光触媒特性を低減し得る。
【0044】
本発明によれば、無機紫外線吸収剤である二酸化チタンおよび酸化亜鉛の分散
液の原料は、二酸化チタンおよび酸化亜鉛の溶液であり、アルコール等の有機溶剤中の酸化チタンおよび酸化亜鉛の溶液であってもよく、あるいは水溶液であってもよい。二酸化チタンの水溶液および酸化亜鉛の水溶液が本願では好ましい。本願における二酸化チタンの分散
液および酸化亜鉛の分散
液の調製法は、無機ナノ材料の分散
液の調製法と同じであり、本明細書でさらなる説明はなされない。
【0045】
無機ナノ材料の分散
液および無機紫外線吸収剤の分散
液は、本願におけるそれらの調製後に、電子ビーム硬化性塗料の構成成分として使用される。
【0046】
本願において提供される電子ビーム硬化性塗料は、無機ナノ材料の分散
液、無機紫外線吸収剤の分散
液、多官能性モノマーおよびアクリレートプレポリマーを含む。上記成分の中で、無機ナノ材料および無機紫外線吸収剤は多官能性モノマーおよびアクリレートプレポリマーとの混和性が乏しいため、シランカップリング剤でそれらを修飾して、それらの間の親和性を増加させることが必要となる。無機ナノ材料および無機紫外線吸収剤は、それら自体、塗膜形成能が乏しいか、あるいは膜を全く形成することができず、そのため、膜形成のための基剤として多官能性モノマーおよびアクリレートプレポリマーを使用することが必要となる。従って、本願の電子ビーム硬化性塗料中の成分は互いに相補的且つ相乗的である。
【0047】
電子ビーム硬化性塗料としての無機ナノ材料二酸化ケイ素はコーティングの硬度を増加させ得るが、必要となる量が多い。少量の酸化アルミニウムを加えた場合、硬度を向上させつつ、コーティングの耐摩耗性を著しく向上させることができる。しかし、二酸化ケイ素および酸化アルミニウムはコーティングの耐候性を向上させることができない。少量の二酸化チタンまたは酸化亜鉛の追加は、太陽光中のコーティングの害になる紫外線を選択的に吸収および除去することができ、コーティングの耐候性を増加させる。しかし、二酸化チタンおよび酸化亜鉛の単独使用では、コーティングの硬度および耐摩耗性を向上させることができない。従って、本願では、電子ビーム硬化性塗料によって形成されるコーティングがより良好な硬度および耐候性を有するように、無機ナノ材料を二酸化ケイ素および酸化アルミニウムのうちの1つまたは2つから選択し、無機紫外線吸収剤を二酸化チタンまたは酸化亜鉛から選択する。好ましい実施形態として、本願では、電子ビーム硬化性塗料の成分として二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタンおよび酸化亜鉛から3つの無機材料を選択することが好ましい。これらの例では、電子ビーム硬化性塗料が二酸化ケイ素の分散
液、酸化アルミニウムの分散
液および二酸化チタンの分散
液および酸化亜鉛の分散
液のうちの1つを含む場合に、電子ビーム硬化性塗料は最良の特性を有し、これにより、コーティングがより良好な硬度、耐摩耗性および耐候性を同時に有することが可能となる。
【0048】
アクリレートプレポリマーはコーティング全体において非常に重要な役割を担っており、適切なプレポリマーの選択によって、コーティングの硬度、耐摩耗性および耐候性を向上させることが可能である。アクリレートプレポリマーは複数の(メチル)アクリレート官能基を含有し、(メチル)アクリレート官能基としては、脂肪族および芳香族のウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、オルガノシリコンアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、ポリアクリル酸アクリレートおよびアクリレートオリゴマーのうちの一つまたは複数が挙げられ、この中では、芳香族基を含有せず、且つより良好な耐候性を有することから、脂肪族のウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレートおよびポリアクリル酸アクリレートが好ましい。硬化後の架橋密度を増加させるために、アクリレートプレポリマーは3つ以上の官能基を含有することが好ましい。脂肪族ウレタンアクリレートとしては、Cytec社製の264、4866、821、8301、8402、8411等のEBECRYL;Sartomer社製のCN9006NS、CN9010NS、CN9013NS、CN9110NS、CN970A60NS、CN971A80NS、CN975NS、CN989NS等;Dymax Oligomers & Coatings社製のBR−144、BR−302、BR−582E8、BR−582H15、BRC−443、BRC−841、BRC−843、BRC−970BT、BRC−990等;Changqing社製の6103、6130B−80、6134B−80、6145−100、6150−100、6158B−80、6170、6195−100、6196−100、6197、5105A、DR−U011、DR−U012、DR−U024、DR−U052、DR−U053、DR−U095、DR−U110、DR−U129、DR−U591等が挙げられる。
【0049】
アクリレートプレポリマーは様々な分子量および粘度を有するが、その全体粘度は、配合物が形成される際にコーティングが影響を受けるほど大き過ぎないようにするべきである。アクリレートプレポリマーの分子量は、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは1,000〜5,000、最も好ましくは1,000〜3,000である。アクリレートプレポリマーの含量は、好ましくは10重量部〜80重量部、より好ましくは10重量部〜60重量部、最も好ましくは20重量部〜50重量部である。
【0050】
本願における多官能性モノマーは上記の多官能性アクリレートのうちの一つまたは複数であることが好ましく、多官能性モノマーの含量は2〜30重量部、好ましくは5〜20重量部である。本願における電子ビーム硬化性塗料は、平滑化剤、消泡剤および顔料等の他の助剤(aid)も含み、これらを配合物に加えることで、表面の湿潤性増加、泡の生成減少、装飾性の増加等、コーティング工程中の問題を解消することができる。平滑化湿潤剤(leveling wetting agent)としては、BYK社製のBYK−UV3500、BYK−UV3535、BYK−377;EVONIK INDUSTRIES製のTEGO(登録商標)RAD2010、TEGO(登録商標)RAD2011、TEGO(登録商標)RAD2100、TEGO(登録商標)RAD2250、TEGO(登録商標)RAD2300、TEGO(登録商標)RAD2500、TEGO(登録商標)RAD2600、TEGO(登録商標)RAD2700、TEGO(登録商標)Wet270;Dow Corning社製のDow Corning28、57、67、730、930、8211、XIAMETER OFXシリーズが挙げられる。消泡剤としては、BYK社製のBYK−067A、BYK−088、BYK−1790、BYK−1791、BYK−A535;EVONIK INDUSTRIES製のTEGO(登録商標)Airex900、TEGO(登録商標)Airex920、TEGO(登録商標)Airex950、TEGO(登録商標)Airex962、TEGO(登録商標)Airex990;Guangzhou Sinuoke Chemical株式会社製のSilok4010、4012、4020、4050、4070、4500、4920等;Dow Corning社製の54、710、810、910、1500等が挙げられる。
【0051】
顔料を電子ビーム硬化性塗料に加えることで、コーティングの色を変化させて、その硬化性に影響を与えることなくその装飾性を強めることができる。顔料は好ましくは0.1重量部〜10重量部、より好ましくは0.2重量部〜5重量部、最も好ましくは1重量部〜3重量部である。顔料としては、カーボンブラック、コバルトブルー、酸化鉄レッド、酸化鉄イエロー、ニッケルチタンイエローおよび有機顔料等が挙げられる。
【0052】
本願は、無機ナノ材料の分散
液、無機紫外線ナノ吸収剤の分散
液、多官能性モノマーおよびアクリレートプレポリマーを含み、無機ナノ材料の分散
液が二酸化ケイ素の分散
液または酸化アルミニウムの分散
液のうちの1つまたは2つから選択され、無機紫外線ナノ吸収剤の分散
液が二酸化チタンの分散液または酸化亜鉛の分散液から選択される、電子ビーム硬化性塗料を提供する。さらに本願において、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン及び酸化亜鉛は、それらが凝集することなくアクリレート中に均一に分散され得るように表面修飾され、電子ビーム硬化性塗料の性質を向上させる。 本願において、電子ビーム硬化性塗料は、無機ナノ材料の分散
液および無機紫外線ナノ吸収剤の分散
液の追加によって、コーティングとして、より良好な硬度および耐候性を有することが可能となる。
【0053】
また、本願は
以下の工程を含み、
5〜50重量部の無機ナノ材料の分散液、1〜10重量部の無機紫外線ナノ吸収剤の分散液、5〜20重量部の多官能性モノマー、および10〜80重量部のアクリレートプレポリマーを混合して塗料を得る工程;
塗料を基材に塗布した後、電子ビームにより硬化して、電子ビーム硬化性コーティングを得る工程;
無機ナノ材料の分散
液の作製法が以下の工程を含み、
A)無機ナノ材料の溶液を有機溶剤と混合することで混合溶液を得て、混合溶液のpHを調整する工程;
B)工程A)で得られた溶液、アクリレートモノマー、をシランカップリング剤と反応させて、無機ナノ材料の分散
液を得る工程;
無機紫外線吸収剤の分散
液の作製法が以下の工程を含み、
A)無機紫外線ナノ吸収剤の溶液を有機溶剤と混合することで混合溶液を得て、混合溶液のpHを調整する工程;
B)工程A)で得られた溶液、アクリレートモノマー、をシランカップリング剤と反応させて、無機紫外線ナノ吸収剤の分散
液を得る工程;
無機ナノ材料が二酸化ケイ素および酸化アルミニウムのうちの1つまたは2つであり;
無機紫外線ナノ吸収剤が二酸化チタンまたは酸化亜鉛である、
保護コーティングの作製法を提供する。
【0054】
本願は保護コーティングの作製法も提供する。本願では、保護コーティングの作製中、まず無機ナノ材料の分散
液、無機紫外線ナノ吸収剤の分散
液、多官能性モノマーおよびアクリレートプレポリマーを混合することで塗料を得て、前記塗料を基材に被覆した後、電子ビーム硬化にかけることで、電子ビーム硬化性コーティングを得る。
【0055】
上記のコーティング作製中、無機ナノ材料の分散
液および無機紫外線吸収剤の分散
液の調製法は、上記の通りであり、本明細書でさらなる説明はなされない。
【0056】
上記コーティング法は、ブラシコーティング、ローラーコーティング、スプレーコーティングおよびカーテンコーティング等、当業者に周知であり、本願では特に限定はされない。塗料に電子ビームを照射されることで、硬化塗膜が得られる。電子ビーム硬化に使用される装置は、高エネルギー、中または低エネルギーの電子ビーム、好ましくは低エネルギー電子ビームを放射することが可能であり、加速電圧は50〜250kVであることが好ましい。照射室は、酸素濃度が500mg/L未満、好ましくは300mg/L未満となるように、窒素またはアルゴン等の不活性ガスで保護される。硬化線量は、好ましくは5〜100kGy、より好ましくは10〜80kGy、最も好ましくは10〜50kGyであり、硬化速度は、好ましくは100〜1000m/分、より好ましくは300〜1000m/分、最も好ましくは500〜1000m/分である。
【0057】
得られる電子ビーム硬化性塗膜の厚さは、好ましくは1μm〜2mm、より好ましくは10μm〜1mm、最も好ましくは10μm〜100μmである。
【0058】
本発明は、自動車の内装または化粧板における電子ビーム硬化性コーティングの用途も提供する。
【0059】
化粧板はプラスチックであってよく、プラスチックは、純粋ポリマー材料であってもよく、あるいは無機充填剤と混合されていてもよく、薄膜であってもよく、あるいは板であってもよい。これらのプラスチック材料としては、ポリオレフィン、ポリスチレン、発泡ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、ポリエステル、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリホルムアルデヒド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチルエーテル、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、セルロースアセテート、デンプン、キチン、ゼラチン、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカン酸、ポリカプロラクトン、ポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)、ポリプロピレンカーボネート、ポリ(シクロヘキセンカーボネート)等が挙げられる。ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー等の一般的なプラスチック、およびポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカン酸、ポリカプロラクトン、ポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)、ポリプロピレンカーボネート、ポリ(シクロヘキセンカーボネート)等の生分解性プラスチックが、本発明においては好ましい。
【0060】
本願では電子ビーム硬化性コーティングの特性が検出される。硬化後のコーティングの硬度、耐摩耗性および耐候性等は標準方法で検出することができる。塗膜の硬度測定はASTM D3363−74を参照することができ、 コーティングを有するパネルが固定水平面に設置され、鉛筆が5〜10cm/秒の速度で、コーティングから45度の角度で、10mm押し出され、試料の表面に引っ掻き傷ができるかどうかが肉眼で観察される。試験は、鉛筆の先端がコーティング表面に引っ掻き傷を全くつけないようになるまで、鉛筆硬度の順に、硬い鉛筆から柔らかい鉛筆へと段階的に実行される。鉛筆硬度用の試験鉛筆は1H〜9Hであり、値が大きくなるほど硬度が高くなる。
【0061】
塗膜の基材との親和性は、GB/T9286−1998の格付け手法である膜に対するクロスカット試験を参照し得る。6本の平行な切断線(間隔はコーティングの厚さおよび基材の硬度によって決定され、1〜3mmの範囲である)を、用意された規定の試験盤上に垂直に交差するように垂直および水平に、刃具で付ける。透明なテープを用いて、コーティングが切断された場所に接着させ、テープを均一に引き剥がす。切断面を4×拡大鏡で調べる。分類0は最良の接着を示し、切断縁が完全に滑らかであり、格子の剥がれが1つもない;分類1は切り込みの交差点におけるコーティングの小さな剥がれを示すが、交差切断部分に対する影響は5%を上回らない;分類2以上は要求を満たしていない。
【0062】
耐摩耗性はASTM4060に従いテーバー磨耗装置を用いて測定される。試験試料は10cmの直径を有する。砥石モデルは、1kgの負荷重量および2000の摩耗サイクルを有するCalibrase cs−10である。摩耗前後の試験試料の重量が記録され、重量減少がミリグラム単位で表される。
【0063】
耐候性は加速劣化試験機QUVによって測定される。QUV試験機のUVA−340ランプは、365nmから太陽遮断波長295nmまでの範囲の極めて重要な短波長を含む、最良の擬似太陽スペクトルを提供可能である。340nmにおける最大照射強度は0.68W/cm
2であり、試験温度は50℃であり、8時間の光照射とその後の4時間の結露の条件を有する。試験は全体として1920時間(80日間)継続される。試験後の試料表面の色の変化はCIE L
*a
*b
*色空間で表され、L
*値は色の明度を表し、a
*値は色の緑色〜赤色値を表し、b
*値は色の青色〜黄色値を表す。色収差は以下の式で表される。
【0065】
本発明のさらなる理解のために、本発明により提供される電子ビーム硬化性塗料およびコーティングの作製法が、実施例と組み合わせて以下で詳細に説明されるが、本発明の範囲は以下の実施例に限定されない。
【実施例】
【0066】
Nexsil12は、Nyacol Nano Technologies社によって生産された、30%の濃度、12nmの粒径およびpH9.3を有する水中の二酸化ケイ素の分散
液である。
【0067】
NanoArc(登録商標)Al−2255は、Nanophase Technologies社によって生産された、30%の濃度を有する水中の20nm酸化アルミニウムの分散
液である。
【0068】
VK−T32は、Hangzhou Wanjing New Material社によって生産された、20%の濃度および10nmの粒径を有する水中のアナターゼ型二酸化チタンの分散
液である。
【0069】
NanoBYK−3840は、Altana社によって生産された、40%の酸化亜鉛含量および20nmの粒径を有する水中の酸化亜鉛の分散
液である。
【0070】
オルガノシランγ−(メチル)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよび3−クロロプロピルトリエトキシシランは全て、Gelest社から入手される。
【0071】
多官能性モノマーであるペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)および1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)はSartomer社から入手される。
【0072】
アクリレートプレポリマーであるDR−U011、6150−100および6195−100脂肪族ウレタンアクリレートは、Taiwan Changxing Materials Industry社から購入される。
【0073】
ポリ塩化ビニルおよびポリプロピレンシートはFoshan Tianan Plastic社によって生産される。
【0074】
実施例1
100gのNexsil12(30%二酸化ケイ素、12nm、を含有)を100gのエタノールに加え、pHを塩酸で3〜4に調整した。次に、60gのペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)を加え、最後に、15gのγ−(メチル)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランを加えた。この混合溶液を60℃に加熱し、温度を一定に保ちながら6時間撹拌した。溶媒であるエタノールおよび水を、60℃を超えない温度でロータリーエバポレーターを用いて真空下で除去し、粘稠性で透明な、PETA中の二酸化ケイ素の分散
液を得た。
【0075】
実施例2
200gのNexsil12(30%二酸化ケイ素、12nm、を含有)を200gのエタノールに加え、pHを塩酸で3〜4に調整した。次に、120gのペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)を加え、最後に、15gのγ−(メチル)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランおよび15gのビニルトリエトキシシランを加えた。この混合溶液を60℃に加熱し、温度を一定に保ちながら6時間撹拌した。溶媒であるエタノールおよび水を、60℃を超えない温度でロータリーエバポレーターを用いて真空下で除去し、粘稠性で透明な、PETA中の二酸化ケイ素の分散
液を得た。
【0076】
実施例3
200gのNexsil12(30%二酸化ケイ素、12nm、を含有)を200gのエタノールに加え、pHを塩酸で3〜4に調整した。次に、120gのペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)を加え、最後に、15gのγ−(メチル)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランおよび15gの3−クロロプロピルトリエトキシシランを加えた。この混合溶液を60℃に加熱し、温度を一定に保ちながら6時間撹拌した。溶媒であるエタノールおよび水を、60℃を超えない温度でロータリーエバポレーターを用いて真空下で除去し、粘稠性で透明な、PETA中の二酸化ケイ素の分散
液を得た。
【0077】
実施例4
200gのAl−2255(30%酸化アルミニウム、20nm、を含有)を400gのエタノールに加えた。次に、120gのペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)を加え、最後に、15gのγ−(メチル)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランおよび15gの3−クロロプロピルトリエトキシシランを加えた。この混合溶液を60℃に加熱し、温度を一定に保ちながら6時間撹拌した。溶媒であるエタノールおよび水を、60℃を超えない温度でロータリーエバポレーターを用いて真空下で除去した。粘稠性で透明な、PETA中の酸化アルミニウムの分散
液を得た。
【0078】
実施例5
300gのVK−T32(20%アナターゼ型二酸化チタン、10nm、を含有)を600gのエタノールに加え、pHを塩酸で3〜4に調整した。次に、120gのペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)を加え、最後に、15gのγ−(メチル)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランおよび15gの3−クロロプロピルトリエトキシシランを加えた。この混合溶液を60℃に加熱し、温度を一定に保ちながら6時間撹拌した。溶媒であるエタノールおよび水を、60℃を超えない温度でロータリーエバポレーターを用いて真空下で除去し、粘稠性で半透明な、PETA中の二酸化チタンの分散
液を得た。
【0079】
実施例6
150gのNanoBYK−3840(40%酸化亜鉛、20nm、を含有)を150gの水および600gのエタノールに加え、pHを塩酸で3〜4に調整した。次に、120gのペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)を加え、最後に、15gのγ−(メチル)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランおよび15gの3−クロロプロピルトリエトキシシランを加えた。この混合溶液を60℃に加熱し、温度を一定に保ちながら6時間撹拌した。溶媒であるエタノールおよび水を、60℃を超えない温度でロータリーエバポレーターを用いて真空下で除去し、粘稠性で半透明な、PETA中の酸化亜鉛の分散
液を得た。
【0080】
実施例7
200gのNexsil12(30%二酸化ケイ素、12nm、を含有)を200gのエタノールに加え、pHを塩酸で3〜4に調整した。次に、120gのペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)を加え、最後に、7.5gのγ−(メチル)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランおよび22.5gの3−イルトリエトキシシラン を加えた。この混合溶液を60℃に加熱し、温度を一定に保ちながら6時間撹拌した。溶媒であるエタノールおよび水を、60℃を超えない温度でロータリーエバポレーターを用いて真空下で除去し、粘稠性で透明な、PETA中の二酸化ケイ素の分散
液を得た。
【0081】
実施例8
200gのNexsil12(30%二酸化ケイ素、12nm、を含有)を200gのエタノールに加え、pHを塩酸で3〜4に調整した。次に、120gのペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)を加え、最後に、30gの3−クロロプロピルトリエトキシシランを加えた。この混合溶液を60℃に加熱し、温度を一定に保ちながら6時間撹拌した。溶媒であるエタノールおよび水を、60℃を超えない温度でロータリーエバポレーターを用いて真空下で除去し、粘稠性で透明な、PETA中の二酸化ケイ素の分散
液を得た。
【0082】
実施例9
200gのAl−2255(30%酸化アルミニウム、20nm、を含有)を400gのエタノールに加えた。次に、120gのペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)を加え、最後に、30gの3−クロロプロピルトリエトキシシランを加えた。この混合溶液を60℃に加熱し、温度を一定に保ちながら6時間撹拌した。溶媒であるエタノールおよび水を、60℃を超えない温度でロータリーエバポレーターを用いて真空下で除去し、粘稠性で透明な、PETA中の酸化アルミニウムの分散
液を得た。
【0083】
実施例10
300gのVK−T32(20%アナターゼ型二酸化チタン、10nm、を含有)を600gのエタノールに加え、pHを塩酸で3〜4に調整した。次に、120gのペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)を加え、最後に、30gの3−クロロプロピルトリエトキシシランを加えた。この混合溶液を60℃に加熱し、温度を一定に保ちながら6時間撹拌した。溶媒であるエタノールおよび水を、60℃を超えない温度でロータリーエバポレーターを用いて真空下で除去し、粘稠性で半透明な、PETA中の二酸化チタンの分散
液を得た。
【0084】
実施例11
150gのNanoBYK−3840(40%酸化亜鉛、20nm、を含有)を150gの水および600gのエタノールに加え、pHを塩酸で3〜4に調整した。次に、120gのペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)を加え、最後に、30gの3−クロロプロピルトリエトキシシランを加えた。この混合溶液を60℃に加熱し、温度を一定に保ちながら6時間撹拌した。溶媒であるエタノールおよび水を、60℃を超えない温度でロータリーエバポレーターを用いて真空下で除去し、粘稠性で半透明な、PETA中の酸化亜鉛の分散
液を得た。
【0085】
実施例12
この実施例では、表1の処方に従って、ウレタンアクリレートプレポリマーを1,6−ヘキサンジオールジアクリレート中に溶解させた。次に、適量の二酸化ケイ素モノマーの分散
液を加えた。最後に、適量の平滑化剤TEGO(登録商標)RAD2500および消泡剤TEGO(登録商標)Airex900を加えた。平滑化剤および消泡剤の総量は1%である。得られた塗料を無処理ポリ塩化ビニルシートまたはコロナ処理ポリプロピレンシート上にロール塗布法で塗布して、約10ミクロンのコーティングを得た。コーティングを、窒素保護下の電子ビーム照射室内で、150KVの照射電圧および40KGyの照射線量を用いて硬化させた。シートへのコーティングの接着力は分類0〜1である。二酸化ケイ素の追加はコーティングの透明度に影響しないが、コーティングの硬度を有意に向上させ得る。
【0086】
【表1】
【0087】
実施例13
この実施例では、表2の処方に従って、ウレタンアクリレートプレポリマー6195−100を1,6−ヘキサンジオールジアクリレート中に溶解させた。次に、適量の二酸化ケイ素モノマーの分散
液を加えた。最後に、適量の平滑化剤TEGO(登録商標)RAD2500および消泡剤TEGO(登録商標)Airex900を加えた。平滑化剤および消泡剤の総量は1%である。得られた塗料を無処理ポリ塩化ビニルシートまたはコロナ処理ポリプロピレンシート上にロール塗布法で塗布して、約10ミクロンのコーティングを得た。コーティングを、窒素保護下の電子ビーム照射室内で、150KVの照射電圧において硬化させた。照射線量はコーティングが5Hを達成するのに必要な最小線量である。シートへのコーティングの接着力は分類0〜1である。
【0088】
【表2】
【0089】
実施例14
この実施例では、表3の処方に従って、ウレタンアクリレートプレポリマー6195−100を1,6−ヘキサンジオールジアクリレート中に溶解させた。次に、実施例3の二酸化ケイ素モノマーの分散
液および実施例4の酸化アルミニウムを加えた。最後に、適量の平滑化剤TEGO(登録商標)RAD2500および消泡剤TEGO(登録商標)Airex900を加えた。平滑化剤および消泡剤の総量は1%である。得られた塗料を無処理ポリ塩化ビニルシートまたはコロナ処理ポリプロピレンシート上にロール塗布法で塗布して、約10ミクロンのコーティングを得た。コーティングを、窒素保護下の電子ビーム照射室内で、150KVの照射電圧および25KGyの照射線量を用いて硬化させた。シートへのコーティングの接着力は分類0〜1である。
【0090】
【表3】
【0091】
実施例15
この実施例では、表4の処方に従って、ウレタンアクリレートプレポリマー6195−100を1,6−ヘキサンジオールジアクリレート中に溶解させた。次に、実施例8で合成した二酸化ケイ素モノマーの分散
液、実施例9で合成した酸化アルミニウムの分散
液、および実施例10または11の二酸化チタンまたは酸化亜鉛の分散
液を加えた。最後に、適量の平滑化剤TEGO(登録商標)RAD2500および消泡剤TEGO(登録商標)Airex900を加えた。平滑化剤および消泡剤の総量は1%である。得られた塗料を無処理ポリ塩化ビニルシートまたはコロナ処理ポリプロピレンシート上にロール塗布法で塗布して、約10ミクロンのコーティングを得た。コーティングを、窒素保護下の電子ビーム照射室内で、150KVの照射電圧および25KGyの照射線量を用いて硬化させた。シートへのコーティングの接着力は分類0〜1である。二酸化チタンまたは酸化亜鉛の追加は照射線量に影響を与えない。
【0092】
【表4】
【0093】
実施例16
表5の処方に従って、ウレタンアクリレートプレポリマー6195−100を1,6−ヘキサンジオールジアクリレート中に溶解させた。次に、実施例8で合成した二酸化ケイ素モノマーの分散
液または実施例9で合成した酸化アルミニウムの分散
液、および実施例10で合成した二酸化チタンの分散
液または実施例11で合成した酸化亜鉛の分散
液を加えた。最後に、適量の平滑化剤TEGO(登録商標)RAD2500および消泡剤TEGO(登録商標)Airex900を加えた。平滑化剤および消泡剤の総量は1%である。得られた塗料を無処理ポリ塩化ビニルシートまたはコロナ処理ポリプロピレンシート上にロール塗布法で塗布して、約20ミクロンのコーティングを得た。コーティングを、窒素保護下の電子ビーム照射室内で、150KVの照射電圧および25KGyの照射線量を用いて硬化させた。シートへのコーティングの接着力は分類0〜1である。二酸化チタンまたは酸化亜鉛の追加は照射線量に影響を与えない。
【0094】
【表5】
【0095】
上記実施例の説明は、本発明の方法およびその核となる概念の理解を助けるためだけのものである。なお、当業者は本発明の原理から逸脱することなくいくつかの改善および修正を本発明に実施することができ、これらの改善形態および修正形態も本発明の特許請求の範囲に包含される。
【0096】
開示された実施例についての上記の説明は、当業者が本発明を達成または使用することを可能にするであろう。これらの実施例に対する種々の修正は当業者には明らかであり、本明細書において定義される一般原則は、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、他の実施例においても実施することができる。従って本発明は、本明細書で例示した実施例に限定されるものではなく、本明細書で開示した原理および新規の特徴に合致する最も広い範囲を与えられるべきである。