(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552646
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】冷媒圧縮機用の電気制御弁
(51)【国際特許分類】
F04B 27/18 20060101AFI20190722BHJP
F04B 27/12 20060101ALI20190722BHJP
F16K 37/00 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
F04B27/18 A
F04B27/12 H
F16K37/00
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-561628(P2017-561628)
(86)(22)【出願日】2016年5月27日
(65)【公表番号】特表2018-519459(P2018-519459A)
(43)【公表日】2018年7月19日
(86)【国際出願番号】EP2016062089
(87)【国際公開番号】WO2016193178
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2017年12月11日
(31)【優先権主張番号】102015007032.0
(32)【優先日】2015年5月29日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102015213230.7
(32)【優先日】2015年7月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】ドムケ,ダニエル
【審査官】
井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2003/0029180(US,A1)
【文献】
特開2010−078002(JP,A)
【文献】
特開平10−078004(JP,A)
【文献】
特開2006−266172(JP,A)
【文献】
特開2002−070732(JP,A)
【文献】
特開2006−243932(JP,A)
【文献】
特開2001−013025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 27/18
F04B 27/12
F16K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御弁を通って高圧領域からクランクケース室圧力領域内へ流れる冷媒流を制御する冷媒圧縮機用の電気制御弁(100)であって、
前記電気制御弁(100)は、
吸引圧力領域、前記高圧領域、および前記クランクケース室圧力領域のためのコネクタを有するバルブハウジング(102)と、
前記バルブハウジング(102)内の2つの位置間で変位可能になるように配置され、前記位置に応じて前記高圧領域および前記クランクケース室圧力領域を相互に接続または分離する弁体(104)と、
前記弁体(104)を変位させる電動駆動装置(110)と、
前記弁体(104)の前記位置を判定する手段(112)と、
前記吸引圧力領域内の吸引圧力の値を判定する第1の圧力センサ(114)と、
前記吸引圧力領域内で判定される前記吸引圧力の前記値に応じて、前記高圧領域から前記クランクケース室圧力領域内へ流れる前記冷媒流を制御する電気制御手段(116)と、
前記第1の圧力センサ(114)によって判定される前記吸引圧力領域内の前記吸引圧力の前記値を読み取ることができ、前記電動駆動装置(110)、前記第1の圧力センサ(114)、および前記電気制御手段(116)を電源に接続することができる電気インターフェース(118)と、を備えており、
前記電気制御手段(116)は、前記第1の圧力センサ(114)によって判定された前記吸引圧力の前記値を取得し、取得した前記判定された吸引圧力が所定の閾値を下回った場合、前記弁体(104)が前記高圧領域を前記クランクケース室圧力領域に接続するように、前記電動駆動装置(110)を使用して前記弁体(104)を変位させることによって、前記高圧領域から前記クランクケース室圧力領域内へ流れる前記冷媒流を制御する、制御弁。
【請求項2】
前記弁体(104)の前記位置は、電気位置センサを使用して判定される、
請求項1に記載の制御弁。
【請求項3】
前記弁体(104)の前記位置は、前記電動駆動装置(110)内に存在する1つまたは複数の制御変数に応じて判定される、
請求項1に記載の制御弁。
【請求項4】
前記弁体(104)の前記位置は、基準付けを使用することによって、弁の遊びおよび弁の摩耗とは関係なく判定される、
請求項1に記載の制御弁。
【請求項5】
前記冷媒流を制御する前記電気制御手段(116)は、前記バルブハウジング(102)の外側に配置され、前記制御弁(100)の他の構成要素から空間的に分離して配置されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の制御弁。
【請求項6】
前記電気制御手段(116)は、前記第1の圧力センサ(114)によって判定される前記吸引圧力領域内の前記吸引圧力の前記値を読み込み、前記値を処理し、前記電気インターフェース(118)を介して、前記値を読み取ることを可能にする、
請求項1から5のいずれか一項に記載の制御弁。
【請求項7】
前記電動駆動装置(110)は、前記バルブハウジング内で前記高圧領域内に配置されている、
請求項1から6のいずれか一項に記載の制御弁。
【請求項8】
前記電気制御手段(116)は、前記バルブハウジング(102)内で前記高圧領域内に配置されている、
請求項1から7のいずれか一項に記載の制御弁。
【請求項9】
前記高圧領域は、
ベローズシール、および/または
前記電動駆動装置(110)内に設けられるカプセル化、および/または
前記電気インターフェース(118)のための封止デバイスを使用して気密封止されている、
請求項1から8のいずれか一項に記載の制御弁。
【請求項10】
前記電動駆動装置(110)は、前記電気制御手段によって事前に決定されたステップで前記弁体を変位させる、
請求項1から9のいずれか一項に記載の制御弁。
【請求項11】
前記高圧領域内の高圧の値を判定する第2の圧力センサ(120)をさらに含んでいる、
請求項1から10のいずれか一項に記載の制御弁。
【請求項12】
前記吸引圧力領域内の温度の値を判定する第1の温度センサをさらに含んでいる、
請求項11に記載の制御弁。
【請求項13】
前記高圧領域内の温度の値を判定する第2の温度センサをさらに含んでいる、
請求項11または12に記載の制御弁。
【請求項14】
前記第1の圧力センサおよび前記第1の温度センサ、ならびに/または、前記第2の圧力センサおよび前記第2の温度センサは、一体化された圧力・温度センサとして形成されている、
請求項12または13に記載の制御弁。
【請求項15】
さらに、
前記第2の圧力センサ(120)によって判定される前記高圧領域内の前記高圧の前記値、および/または、さらに
前記第1の温度センサによって判定される前記吸引圧力領域内の前記温度の前記値、および/または、さらに
前記第2の温度センサによって判定される前記高圧領域内の前記温度の前記値は、
前記電気インターフェース(118)を介して読み取ることができる、
請求項11から14のいずれか一項に記載の制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒圧縮機、特に自動車用の冷媒圧縮機内で使用するための電気制御弁に関する。電気制御弁は、冷媒圧縮機の高圧領域からクランクケース室圧力領域内へ流れる冷媒流を制御する。
【背景技術】
【0002】
冷媒圧縮機の構造と動作モードはどちらも、たとえばDE102011117354A1から、当業者には知られている。
【0003】
冷媒圧縮機のクランクケース内には、冷媒を高圧室内へ汲み上げるために複数のピストンが配置される。これらのピストンの運動は、以下の説明から明らかになるように、回転する揺動板(wobble plate)によって案内される。
【0004】
たとえばベルト駆動装置によって回転している揺動板の傾斜角がゼロ以外である場合、揺動板がその回転軸の周りで回転するにつれて、ピストンの軸方向の行程運動(stroke movement)が生じる。したがって冷媒は、冷媒圧縮機の吸引室から吸い上げられて圧力室内へ注入される。
【0005】
吸引室は、吸引圧力側に位置する冷媒圧縮機のコネクタに接続されており、このコネクタは、自動車内に取り付けられたとき、空調システムの吸引圧力領域、言い換えれば特に蒸発器の出力に接続される。圧力室は、高圧側に位置する冷媒圧縮機の出力に接続されており、この出力は、空調システムの高圧領域によって、特に熱交換器(復水器)および膨張弁を介して、蒸発器の入力に接続される。
【0006】
出し容積(delivery volume)を調整するため、特に冷媒流を制御するために、冷媒圧縮機内で揺動板の傾斜角を変動させることがすでに知られている。たとえば、冷媒圧縮機が、最大出し容積に合わせて事前に設定されている場合、揺動板を逆旋回させることで、冷媒圧縮機のピストンの軸方向の行程運動が減少し、したがって出し容積が低減される。
【0007】
制御弁を使用して冷媒流のこのタイプの制御を行うことも、さらに知られている。この場合、高圧領域とクランクケース室圧力領域との間を流れる冷媒流は、制御弁によって制御される。
【0008】
制御弁は、バルブハウジング内に3つのコネクタを備えている。これら3つのコネクタは、冷媒圧縮機の高圧領域、吸引圧力領域、およびクランクケース室圧力領域に接続される。制御弁は、高圧領域とクランクケース室圧力領域との間を流れる冷媒流を制御する。
【0009】
たとえば、1つの位置で、制御弁が冷媒圧縮機の高圧領域とクランクケース室圧力領域との間の接続を開いた場合、冷媒流は、制御弁を通って高圧領域からクランクケース室圧力領域内へ流れ、この結果、クランクケース室圧力領域内の圧力が上昇する。
【0010】
さらなる位置で、制御弁が冷媒圧縮機の高圧領域とクランクケース室圧力領域との間の接続を閉じた場合、冷媒流は、冷媒圧縮機内に設けられた常時開いている通路を通って、クランクケース室圧力領域から吸引圧力領域内へ流れ、この結果、クランクケース室圧力領域内の圧力が降下する。
【0011】
クランクケース室圧力領域内で制御弁によって圧力上昇がもたらされると、その結果、揺動板は、逆旋回させられる。これにより、冷媒圧縮機のピストンの軸方向の行程運動が減少し、冷媒圧縮機の出し容積が低減する。その結果、空調システムの高圧領域内の圧力は、これ以上増大しない。
【0012】
クランクケース室圧力領域内で制御弁によって圧力降下がもたらされると、その結果、揺動板は、外へ旋回させられる(言い換えれば、傾斜させられる)。これにより、冷媒圧縮機のピストンの軸方向の行程運動が増大し、冷媒圧縮機の出し容積が増大する。その結果、空調システムの高圧領域内の圧力は、さらに増大する。
【0013】
通常、揺動板は、ばね張力によって、傾斜した最初の位置で保持されており、したがって、後にクランクケース室圧力領域内で圧力降下が生じた場合、揺動板は、逆旋回して最初の位置に戻り、冷媒圧縮機内の出し容積に対する初期設定を確保する。
【0014】
従来、冷媒圧縮機内には保護機構が組み込まれており、客室内へ流れる空気流を低減または妨害しうる冷媒蒸発器の凍結を防止する。冷媒蒸発器は、吸引圧力が特定の圧力を下回るとすぐに凍結し始める。
【0015】
このタイプの保護機構の例示的な実施形態には、ベローズが含まれる。ベローズは、好ましくは金属から構成されており、冷媒圧縮機を減速させることができるように、制御弁内に組み込まれて制御弁内に配置されている。この目的で、ベローズは、特定の圧力の混合ガスで充填されている。
【0016】
制御弁の吸引圧力領域内で優勢な圧力が、実質上ベローズの充填圧力を下回った場合、ベローズ内の混合ガスの体積は、相対的に増大する。次いでベローズは、その構造の結果、蛇腹式の形状で広げられ、したがってより長くなる。
【0017】
逆に、制御弁の吸引圧力領域内で優勢な圧力が、実質上ベローズの充填圧力を超過した場合、ベローズ内の混合ガスの体積は、相対的に減少する。次いでベローズは、その構造の結果、蛇腹式の形状で折り畳まれ、したがってより短くなる。
【0018】
ベローズのこの構造に基づく動作モードは、吸引圧力領域内の臨界圧力を下回った場合、冷媒圧縮機が減速される位置へ弁体を機械的に移送するように、ベローズが弁体と協働することから、制御弁に対する安全機構によって利用される。
【0019】
制御弁の構築中、ベローズ内の充填圧力および混合ガスのタイプは、制御弁の吸引圧力領域内で最小圧力を下回った場合、高圧領域がクランクケース室圧力領域に接続される位置へベローズが弁体を動かすように、具体的に選択される。
【0020】
ベローズによってクランクケース室圧力領域内の圧力上昇がもたらされると、揺動板は逆旋回する。その結果、冷媒圧縮機のピストンの軸方向の行程運動および冷媒圧縮機の出し容積が低減され、冷媒圧縮機は減速される。その結果、冷媒圧縮機の吸引領域内の圧力は限界値を下回らず、冷媒蒸発器の凍結が防止される。
【0021】
しかし、このタイプのベローズは、機械的に動作する構成要素であり、その構造の結果として遅く、また経年劣化過程の影響を受けやすい。したがって、たとえばベローズの蛇腹式の形状を頻繁に広げて後に折り畳むと、その結果、材料の疲労が生じる。さらに、状況により、混合ガスで充填されたベローズが、そのサービス寿命全体を通して密閉され続けることを保証できない可能性がある。したがって、改善形態がさらに必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
根底にある発明の目的は、冷媒流の制御に急速かつ正確に干渉し、冷媒流が止まる確実な位置へと弁体を動かす安全機構を有する制御弁を提供することである。
【0023】
さらに、本発明の目的は、様々な冷媒圧縮機および/または空調システムとともに使用するための安全機構の簡単で費用効果の高い調整を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前述の目的の少なくとも1つは、独立請求項に開示する本発明によって実現される。有利な発展形態は、従属請求項に記載する。
【0025】
根底にある発明は、制御弁を通って高圧領域からクランクケース室圧力領域内へ流れる冷媒流を制御する特に冷媒圧縮機用の電気制御弁を提案する。
【0026】
制御弁は、吸引圧力領域、高圧領域、およびクランクケース室圧力領域のためのコネクタを有するバルブハウジングと、バルブハウジング内の2つの位置間で変位可能になるように配置された弁体とを含む。弁体は、その位置に応じて高圧領域およびクランクケース室圧力領域を相互に接続または分離する。
【0027】
さらに、弁体を変位させる電動駆動装置と、弁体の位置を判定する手段と、吸引圧力領域内の吸引圧力の値を判定する第1の圧力センサとが含まれる。
【0028】
さらに、吸引圧力領域内で判定される吸引圧力の値に応じて、判定された吸引圧力が所定の閾値を下回った場合、弁体が高圧領域をクランクケース室圧力領域に接続するように、電動駆動装置を使用して弁体を変位させることによって、高圧領域からクランクケース室圧力領域内へ流れる冷媒流を制御する電気制御手段が含まれる。
【0029】
また、第1の圧力センサによって判定される吸引圧力領域内の吸引圧力の値を読み取ることができ、電動駆動装置、第1の圧力センサ、および電気制御手段を電源に接続することができる電気インターフェースが含まれる。
【0030】
有利には、このタイプの電気制御手段によって、冷媒流の制御に急速かつ正確に干渉し、冷媒圧縮機内の凍結を抑制する安全機構が実施される。この文脈において、冷媒流は、吸引圧力センサによって正確に判定される吸引圧力領域内の吸引圧力の値を使用して制御され、その結果、吸引圧力が閾値を下回った場合、急速かつ正確な干渉を確実にすることができる。
【0031】
さらに、所定の閾値は、電気制御システム内に事前に記憶されており、冷媒または空調システムに応じて調整することができることが有利である。したがって、異なる冷媒および/または空調システムに対する安全機構の簡単で費用効果の高い調整が可能になる。
【0032】
本発明をより良く理解するために、本発明について、以下の図面に示す実施形態によってより詳細に説明する。同様の部分には、同じ参照番号および同様の構成要素名を提供する。さらに、図示および開示する実施形態からの個々の特徴または特徴の組合せもまた、独立した発明の解決策または本発明による解決策を単独で形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】一実施形態による高圧領域からクランクケース室圧力領域内へ流れる冷媒流を制御する冷媒圧縮機用の本発明による制御弁の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、
図1を参照して、高圧領域からクランクケース室圧力領域内へ流れる冷媒流を制御する特に冷媒圧縮機用の電気制御弁100の発明の一般原理について、最初により詳細に説明する。
【0035】
図1は、第1の実施形態の冷媒圧縮機用の本発明による制御弁を示す。制御弁の発展形態および制御弁の個々の構成要素の実施形態について、本説明に関連してより詳細に説明する。制御弁100は、冷媒圧縮機(図示せず)の高圧領域からクランクケース室圧力領域内へ流れる冷媒流を制御する。この目的で、制御弁100は、冷媒圧縮機の高圧領域への接続用のコネクタPdと、冷媒圧縮機のクランクケース室圧力領域への接続用のコネクタPcと、冷媒圧縮機の吸引圧力領域への接続用のコネクタPsとを有するバルブハウジング102を含む。
【0036】
制御弁100は、バルブハウジング102内の2つの異なる位置間で変位可能な弁体104をさらに含む。したがって、これらの2つの位置はそれぞれ、バルブハウジング102内の制御弁100の弁体104に対する端位置を形成する。
【0037】
2つの異なる位置のうちの第1の位置において、バルブハウジング102内の弁体104は、高圧領域をクランクケース室圧力領域に接続する。2つの異なる位置のうちの第2の位置において、弁体104は、高圧領域をクランクケース室圧力領域から分離する。
【0038】
制御弁100の有利な発展形態では、弁体104はまた、バルブハウジング102内で端位置間のさらなる位置をとることもできる。その結果、弁体104は、高圧領域およびクランクケース室圧力領域が相互に接続または分離される2つの位置だけでなく、高圧領域およびクランクケース室圧力領域が相互に接続されているが流量が制限されるさらなる位置もとる。
【0039】
一実施形態では、弁体104は作動棒106を含む。さらにこの実施形態では、弁体104は、板状、ピストン状、円錐状、または球状に形成された遮断体(または封止体)108を含む。このタイプの弁体104は、単体としてまたは複数の部品から形成される。
【0040】
制御弁100の有利な発展形態では、バルブハウジング102は、2つの端位置間の弁体104の運動をもたらすように形成される。この目的で、たとえばガイドレールまたはねじ山の形態の横方向ガイドをバルブハウジング102内に設けることができ、この横方向ガイドは、たとえば弁体104上、好ましくは作動棒106上のスライドまたはねじ山の形態の対応する相手側と協働する。
【0041】
制御弁100は、本発明に関連して、高圧領域からクランクケース室圧力領域内への通路がそれぞれ開放および閉鎖される2つの位置に弁体104を位置決めすることによって制御される。この通路は、弁体104の位置および形状によって決まり、高圧領域からクランクケース室圧力領域内へ流れる冷媒の流量に影響する。
【0042】
本発明による制御弁100内にさらに含まれる電動駆動装置110は、バルブハウジング102内の2つの位置間で弁体104を変位させる。電動駆動装置110の実施形態には、ステッパモータ、DCモータ、サーボモータ、および圧電駆動装置が含まれる。
【0043】
電動駆動装置110は、回転または並進によって2つの位置間で弁体104を変位させる。この場合、電動駆動装置110の回転運動は、弁体104を角度的に正確に位置決めすることができるため、特に有利である。
【0044】
制御弁100の有利な発展形態では、電動駆動装置110は、2つの異なる位置間で弁体を連続して変位させる。したがって、制御弁100を通って高圧領域からクランクケース室圧力領域内へ流れる冷媒流の連続制御が可能になる。
【0045】
制御弁100は、バルブハウジング102内で電気モータ110によって変位させられる弁体104の位置を判定する手段112をさらに含む。
【0046】
有利な発展形態では、手段112は、電気位置センサを使用して弁体104の位置を判定するように形成される。この場合、位置センサは、弁体104の位置を直接検出する。位置センサの実施形態には、ホール効果センサ、磁気抵抗センサ、光センサ、容量センサ、および誘導センサが含まれ、これらのセンサはそれぞれ、対応する(基準信号)生成素子と協働する。
【0047】
代替発展形態では、電気制御手段116が、有利には、弁体104の位置を、電動駆動装置110内に存在する制御変数に応じて判定する。したがって、弁体104の位置は、電気制御手段116によって間接的に判定される。
【0048】
一実施形態では、弁体104の位置を判定することを可能にする制御変数または制御変数に依存する変数は、所定のステップ数(電動駆動装置がステッパモータとして形成される場合)、存在する電圧および/もしくは電流(電動駆動装置がDCモータ、サーボモータ、もしくは圧電駆動装置として形成される場合)、またはこれらに依存する電力消費である。
【0049】
別の代替発展形態では、電気制御手段116は、有利には、基準位置に応じて弁体104の位置を判定する。この場合、電気制御手段116は、弁体104が基準位置にあるか否かを検出する。たとえば、機械式止め具または電気スイッチングデバイスを使用して、弁体104の位置を基準付けることができる。
【0050】
たとえば、制御弁100の上記の代替発展形態では、弁体104の位置は、基準付け(referencing)を使用することによって、弁の遊びおよび弁の摩耗とは関係なく判定することができる。電気制御手段116は、たとえば冷媒圧縮機が動作しているとき、画定された位置(言い換えれば、基準位置)、たとえば制御弁が閉鎖される位置へ、弁体104を変位させるように、電動駆動装置110に定期的に作用する。この基準位置は、さらなる動作に対する新しい基準点(「ゼロ設定」)である。
【0051】
本発明による制御弁100は、吸引圧力領域内の吸引圧力の値を判定する吸引圧力センサ(または第1のセンサ)114をさらに含む。吸引圧力センサ114の実施形態には、圧電抵抗式、容量式、電磁式、および光学式の圧力センサが含まれる。
【0052】
このようにして吸引圧力を判定するために、冷媒圧縮機の吸引圧力領域への接続用のコネクタPsが、バルブハウジング102内に設けられる。吸引圧力センサ114は、バルブハウジング102内のこのコネクタPsによって、吸引圧力の値を判定する。
【0053】
一実施形態では、吸引圧力領域へのコネクタとして、バルブハウジング102内に止まり穴(blind hole)が設けられ、吸引圧力センサ114と連通する。
【0054】
本発明による制御弁100は、制御弁100を通って高圧領域からクランクケース室圧力領域内へ流れる冷媒流を制御する電気制御手段(または制御システム)116をさらに含む。この制御は、電動駆動装置110によって行われ、電動駆動装置110は、上記で開示したように、少なくとも2つの位置間で弁体104を変位させる。電気制御手段116の一実施形態には、適当な電気入力部および電気出力部を有する演算論理装置が挙げられる。
【0055】
その結果、電気制御手段116は、弁体104を変位させることによって、制御弁100を通って流れる冷媒流を制御する。この文脈では、弁体104は、高圧領域およびクランクケース室圧力領域が相互に接続される一方の位置、または高圧領域およびクランクケース室圧力領域が分離される他方の位置をとる。
【0056】
有利な発展形態では、制御弁100を通って流れる冷媒流を制御する電気制御手段116は、バルブハウジング102の外側に配置される。特に有利には、制御手段116は、制御弁100の他の構成要素から空間的に分離して、たとえば制御弁100に接続された制御デバイス内に配置することができる。
【0057】
本発明に関連して、電気制御手段116内に設けられ、冷媒流の制御に急速かつ正確に干渉し、冷媒圧縮機が減速する安全な位置へ弁体104を動かす安全機構について、以下でより詳細に論じる。
【0058】
この文脈において、冷媒流は、吸引圧力センサ114によって正確に判定される吸引圧力領域内の吸引圧力の値によって、電気制御手段116内で制御され、その結果、吸引圧力が所定の閾値を下回った場合、急速かつ正確な干渉を確実にすることができる。
【0059】
他の制御変数と同様に、電気制御手段116は、最初に、吸引圧力センサ114によって判定される吸引圧力の値を入力として読み込む。次に、電気制御手段116は、読み込んだ吸引圧力の値が所定の閾値(たとえば、最小吸引圧力)を下回るかどうかを確認する。
【0060】
この文脈において、電気制御手段116が、この値が所定の閾値を下回ると判定した場合、電気制御手段116は、弁体104が高圧領域をクランクケース室圧力領域に接続するように冷媒流を制御する。したがって、冷媒圧縮機は、制御弁100によって減速させられる。
【0061】
一実施形態では、所定の閾値は、電気制御手段116内に事前に記憶されており、有利には、冷媒または空調システムに応じて調整することができる。これにより、異なる冷媒および/または空調システムに対する安全機構の簡単で費用効果の高い調整が可能になる。
【0062】
電気制御手段116が、正確に判定された吸引圧力の値に応じて冷媒流を制御するため、吸引圧力が所定の吸引圧力を下回った場合、急速かつ正確な干渉を確実にすることができる。この値が吸引圧力に対する所定の閾値を下回った場合、電気制御手段116は、2つの位置のうち、高圧領域およびクランクケース室圧力領域が相互に接続される位置へ、弁体104を変位させる。
【0063】
言い換えれば、吸引圧力センサ114によって判定される吸引圧力の値が、所定の閾値を下回った場合、電気制御手段116は、制御弁100が開放される安全な位置へ弁体104が変位するように、冷媒流の制御に干渉する。
【0064】
電気制御手段116からのこのタイプの制御干渉は、クランクケース室圧力領域内の圧力上昇を引き起こし、これにより冷媒圧縮機内の揺動板を逆旋回させる。これは、冷媒圧縮機のピストンの軸方向の行程運動が減少し、冷媒圧縮機の出し容積が低減され、吸引圧力が上昇することを意味する。
【0065】
本発明に関連して、制御弁100は、電気インターフェース118をさらに含み、電気インターフェース118を介して、吸引圧力センサ114によって判定される吸引圧力の値を読み取ることができる。電気インターフェース118の実施形態は、シリアル周辺インターフェース(SPI)データバスを介して、集積回路間(I2C)データバスを介して、ローカル相互接続ネットワーク(LIN)データバスを介して、またはコントローラエリアネットワーク(CAN)データバスを介して、吸引圧力の値を読み取ることを可能にする構成を含む。
【0066】
制御弁100の電気インターフェース118は、少なくとも電動駆動装置110、吸引圧力センサ114、および電気制御手段116への電力供給をさらに可能にする。弁の位置を判定する手段112は、たとえば位置センサとして電気的に形成される場合、電気インターフェース118を介して電源に接続することもできる。
【0067】
別の有利な発展形態では、電気制御手段116は、吸引圧力センサ114によって判定される吸引圧力領域内の吸引圧力の値を読み込み、読み込んだ値を処理し、電気インターフェース118を介して、処理した値を読み取ることを可能にする。
【0068】
制御弁100の有利な発展形態では、電動駆動装置110は、バルブハウジング102内で高圧領域内に配置される。この場合、高圧領域は、電気インターフェース118内の封止デバイスを使用して気密封止され、封止デバイスは、バルブハウジングとともに高圧領域を密閉する。このタイプの封止デバイスの一実施形態には、電気プラグのハウジングが挙げられる。
【0069】
制御弁100の上記の有利な発展形態に対する修正形態では、吸引圧力センサ114および電気制御手段116はまた、電動駆動装置110と同様に、バルブハウジング102内で高圧領域内に配置される。
【0070】
制御弁100の代替発展形態では、電動駆動装置110は、バルブハウジング102内で高圧領域内に一部(具体的には、回転子)のみ配置される。この場合、高圧領域は、電動駆動装置内に設けられて高圧領域を密閉するカプセルを使用して気密封止される。一実施形態では、作動駆動装置の回転子は、前記作動駆動装置の固定子から回転子を分離するようにカプセルに入れられる。
【0071】
制御弁100の有利な代替発展形態では、バルブハウジング102内の高圧領域は、ベローズシールを使用して外側から気密封止される。この場合、ベローズシールの一方の側は、(可動の)弁体104に固定され、他方の側は、(静止した)バルブハウジング102に固定される。このようにして固定されたベローズシールは、弁体104の運動とともに伸縮する。
【0072】
さらに有利な発展形態では、制御弁100は、高圧領域内の高圧の値を判定する高圧センサ(第2の圧力センサ)120をさらに含む。したがって、制御弁100内では、吸引圧力領域内の吸引圧力が吸引圧力センサによって判定されるだけでなく、高圧領域内の高圧も、対応する高圧センサ120によって並行して判定される。
【0073】
このようにして高圧を判定するために、バルブハウジング102内に、高圧領域(たとえば、コネクタPd)と高圧センサとの間のさらなるスタブラインが設けられる。
【0074】
上記の有利な発展形態に対する追加または代替として、制御弁は、吸引圧力領域内の温度の値を判定する吸引圧力温度センサ(第1の温度センサ、図示せず)、および/または高圧領域内の温度の値を判定する高圧温度センサ(第2の温度センサ、図示せず)をさらに含む。
【0075】
吸引圧力温度または高圧温度のこのタイプの測定のために、第1の温度センサおよび/または第2の温度センサは、好ましくは、対応する吸引圧力領域および/または高圧領域内の冷媒への直接アクセスを有していなければならない。
【0076】
吸引圧力領域または高圧領域の温度を判定するために、以下の利点に留意することができる。冷媒回路内の条件が同じである場合、冷媒損失の際に平均温度が上昇するため、吸引温度(高圧温度に対する代替として)を使用することで、空調システム内の冷媒の充填レベルを監視することができる。
【0077】
制御弁100の上記の有利な発展形態に対する修正形態では、高圧センサ120、吸引圧力温度センサ、および高圧温度センサはまた、バルブハウジング102内で高圧領域内に配置される。
【0078】
さらに、制御弁100のさらに有利な発展形態では、第2の圧力センサ120によって判定される高圧領域内の高圧の値、および/または第1の温度センサによって判定される吸引圧力領域内の温度の値、および/または第2の温度センサによって判定される高圧領域内の温度の値は、電気インターフェース118によって読み取ることができる。
【0079】
上記の発展形態でも、電気インターフェース118の実施形態は、シリアル周辺インターフェース(SPI)データバスを介して、集積回路間(I2C)データバスを介して、ローカル相互接続ネットワーク(LIN)データバスを介して、またはコントローラエリアネットワーク(CAN)データバスを介して、対応する値を読み取ることを可能にする構成を含む。
【0080】
有利には、4つの値すべて、具体的には吸引圧力の値、高圧の値、吸引圧力領域内の温度の値、および高圧領域内の温度の値が、対応するセンサによって判定された場合、制御弁100に接続された制御デバイスは、冷媒回路内の質量流量を計算することができる。
【0081】
質量流量のこのタイプの計算のために、以下の利点に言及することができる。質量流量を使用することで、空調圧縮機のトルクを計算することができる。空調圧縮機の現在または今後のトルクが分かっている場合、自動車内で注入される数量をより正確に調節することができ、これにより燃料の節約、したがってCO
2の低減につながる。
【0082】
さらに、自動車内の制御されたベルトテンショナのために、分かっているトルクに対する必要に応じて、ベルト張力を設定することができる。これは、摩擦力が低減され、ベルトベアリングのサービス寿命が長くなるため、有利である。
【符号の説明】
【0083】
100 制御弁
102 バルブハウジング
104 弁体
106 作動棒
108 遮断体
110 電動駆動装置
112 弁体の位置を判定する手段
114 吸引圧力領域用の圧力センサ
116 電気制御手段
118 電気インターフェース
120 高圧領域用の圧力センサ