特許第6552647号(P6552647)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6552647レーザー誘起紫外線蛍光分光法を使用した原油のキャラクタリゼーション
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552647
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】レーザー誘起紫外線蛍光分光法を使用した原油のキャラクタリゼーション
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20190722BHJP
   G01N 33/28 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   G01N21/64 Z
   G01N33/28
【請求項の数】13
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2017-563566(P2017-563566)
(86)(22)【出願日】2016年6月10日
(65)【公表番号】特表2018-524570(P2018-524570A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】US2016036929
(87)【国際公開番号】WO2016201254
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2018年2月5日
(31)【優先権主張番号】62/173,558
(32)【優先日】2015年6月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】コセオグル,オメル,レファ
(72)【発明者】
【氏名】アル−ハッジ,アドナン
(72)【発明者】
【氏名】ヘガジー,エザット
【審査官】 吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0106031(US,A1)
【文献】 特表平08−505221(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0132568(US,A1)
【文献】 特表2008−533247(JP,A)
【文献】 特表2008−513785(JP,A)
【文献】 米国特許第05684580(US,A)
【文献】 特表平08−503075(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0112611(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0141459(US,A1)
【文献】 特表2009−522541(JP,A)
【文献】 米国特許第06663767(US,B1)
【文献】 特開平03−115837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62−74
G01N 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未キャラクタリゼーションの原油試料の選択された特性の値を決定するための方法であって、
標準的な分析法を使用して複数の原油の選択された特性の複数の値を得ることと、
前記複数の原油の密度の複数の値を得ることと、
レーザー誘起紫外線(UV)蛍光分光計を使用して前記複数の原油の散乱スペクトルの複数のデータセットを得ることと、
前記複数の原油の前記散乱スペクトルの前記複数のデータセットから前記複数の原油の複数のレーザー誘起紫外線(UV)蛍光指数を計算することと、
前記レーザー誘起紫外線(UV)蛍光分光計を使用して前記未キャラクタリゼーションの原油試料の散乱スペクトルを得ることと、
前記未キャラクタリゼーションの原油試料の前記散乱スペクトルに基づいて前記未キャラクタリゼーションの原油試料のレーザー誘起紫外線(UV)蛍光指数を計算することと、
前記未キャラクタリゼーションの原油の前記選択された特性の値を決定する多項式の定数を決定することであって、前記未キャラクタリゼーションの原油試料は、前記複数の原油の1つではなく、前記多項式が、前記未キャラクタリゼーションの原油試料の密度およびレーザー誘起紫外線(UV)蛍光指数の関数であり、前記多項式の複数の定数が、前記複数の原油の数以下であり、前記多項式の前記定数が、前記複数の原油の前記選択された特性の前記複数の値を前記複数の原油の前記密度の複数の値と前記複数の原油の前記複数のレーザー誘起紫外線(UV)蛍光指数に当てはめるためのフィッティング法を使用して決定されることと、
記多項式を使用して前記未キャラクタリゼーションの原油試料の前記選択された特性の値を計算することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記未キャラクタリゼーションの原油試料と前記複数の原油の前記選択された特性が、ガスオイル留分のセタン価、流動点、曇点およびアニリン点、ナフサ留分のオクタン価ならびに原油の芳香族化合物含量からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガスオイル留分が、約180〜370℃の沸点範囲を有し、前記ナフサ留分が、約36〜180℃の沸点を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の原油の前記セタン価が、ASTM D613を使用して得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の原油の前記流動点が、ASTM D7346を使用して得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の原油の前記曇点が、ASTM D2500を使用して得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の原油の前記アニリン点が、ASTM D611を使用して得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の原油の前記オクタン価が、モーターオクタン、リサーチオクタンおよびこれらの組合せのための試験の少なくとも1つを使用して得られ、前記モーターオクタンの値が、ASTM D2700を使用して得られ、前記リサーチオクタンの値が、ASTM D2699を使用して得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記未キャラクタリゼーションの原油試料と前記複数の原油の前記芳香族化合物含量が、ASTM5292を使用して得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の原油の前記散乱スペクトルの複数のデータセットから出した前記複数のレーザー誘起紫外線(UV)蛍光指数が、蛍光強度(FI)と、前記レーザー誘起UV蛍光分光計のUV検出器によって検出されたUV光の波長とを対比させたプロットより下の、ある面積の指標値(IN)から計算される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ある面積のINが、
によって計算され、ωが、UV光の波長であり、ω1が、UV光の開始波長であり、ω2が、UV光の終了波長であり、前記UV光の開始波長および終了波長が、FIのバックグラウンドノイズより大きいFI値のところに位置するように選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ある面積のINが、FIと、UV光の開始波長からUV光の終了波長に至るまでで前記レーザー誘起UV蛍光分光計の前記UV検出器によって検出されたUV光の波長との前記プロットより下の面積を積分することによって計算され、前記UV光の開始波長および終了波長が、前記FIのバックグラウンドノイズより大きいFI値のところに位置するように選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記多項式が、PROP=K+X×D+X×D+X×D+X×IN+X×IN+X×IN+X×D×INであり、式中、PROPが、前記未キャラクタリゼーションの原油試料の前記選択された特性の計算値であり、KおよびXが、前記複数の原油のそれぞれの前記選択された特性に固有でi=1〜7の定数であり、Dが前記未キャラクタリゼーションの原油試料の密度であり、INが前記未キャラクタリゼーションの原油試料のスペクトル指数である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、原油のキャラクタリゼーションに関する。より具体的には、本明細書の開示は、原油および原油留分に関する選択された化学的特性および物理的特性を測定するための、分光測定および物理化学的測定の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
原油の効率的な生産および精製は、ある種の世界的なエネルギー需要を満たすために必須である。様々な原油の組成および特性における大きなバラつきが、こうした効率に影響を与える可能性がある。坑井内掘削および回収操作によって得られた原油は、不定の特性および比率を有する数千種の炭化水素種から構成された原油を生じさせ得る。これらの炭化水素種は、ガソリン、ディーゼル油、ジェット燃料、ポリマーフィードストックおよび商業的に重要な他の炭素質生成物を含み得る。一般的に、様々な炭化水素留分の分析およびキャラクタリゼーションは、比較的大量の原油の蒸留および分留を行い、得られた蒸留および/または分留された炭化水素に個別的な解析的分析および物理化学的分析を施すことを含む、時間がかかる技法およびアッセイを伴う。これらの手順は、初期量として最大20リットルの原油を必要とすることもある。これらの手順は十分に確立されており、石油産業の当業者に幅広く理解されているが、化学的分離法を用いない場合は、試料サイズをより小さくして原油試料全体を分析することが有利なこともあり、理由として、これにより、小さな試料をさらにいっそう迅速にキャラクタリゼーションするための手順を提供できるという点が挙げられる。
【発明の概要】
【0003】
本明細書において開示された様々な実施形態は、原油試料の特性とスペクトル指数および密度との相関関係を使用して、原油試料の特性を決定するための方法に関し得る。様々な実施形態において、本方法は、標準的な分析法を使用して複数の原油の特性の値を得ることを含んでもよい。様々な実施形態において、本方法は、複数の原油の密度の値を得ることをさらに含んでもよい。様々な実施形態において、本方法は、複数の原油の散乱スペクトルのデータセットを得ることをさらに含んでもよい。様々な実施形態において、本方法は、複数の原油の散乱スペクトルのデータセットからスペクトル指数を計算することをさらに含んでもよい。様々な実施形態において、本方法は、特性に関する多項式の定数を決定することであって、多項式が、未キャラクタリゼーションの原油の密度およびスペクトル指数の関数であり、多項式の複数の定数が、複数の原油の数以下であり、定数が、複数の原油の特性の値を多項式から出した計算値に当てはめるためのフィッティング法を使用して決定されることをさらに含んでもよい。様々な実施形態において、本方法は、未キャラクタリゼーションの原油試料の散乱スペクトルおよび密度を得、多項式を使用して未キャラクタリゼーションの原油試料のスペクトル指数および特性の値を計算することであって、未キャラクタリゼーションの原油試料は、複数の原油のうちの1つではない。
【0004】
様々な実施形態において、特性は、ガスオイル留分のセタン価、流動点、曇点およびアニリン点、ナフサ留分のオクタン価ならびに原油のガスオイル留分の芳香族化合物含量からなる群より選択される。様々な実施形態において、ガスオイル留分は、約180〜370℃の沸点範囲を有し得る。様々な実施形態において、ナフサ留分は、約36〜180℃の沸点を有し得る。様々な実施形態において、セタン価は、ASTM D613を使用して得ることができる。様々な実施形態において、流動点は、ASTM D7346を使用して得ることができる。様々な実施形態において、曇点は、ASTM D2500を使用して得ることができる。様々な実施形態において、アニリン点は、ASTM D611を使用して得ることができる。様々な実施形態において、オクタン価は、モーターオクタン、リサーチオクタンおよびこれらの組合せを対象にした試験の少なくとも1つを使用して得ることができ、モーターオクタンの値は、ASTM D2700を使用して得られ、リサーチオクタンの値は、ASTM D2699を使用して得られる。様々な実施形態において、芳香族化合物含量は、任意のASTM試験または他の適切な試験により得ることができる。様々な実施形態において、密度は、ASTM D5002を使用して得ることができる。
【0005】
様々な実施形態において、散乱スペクトルは、レーザー誘起紫外線(UV)蛍光分光計を使用して得ることができる。様々な実施形態において、複数の原油の散乱スペクトルから出したスペクトル指数は、蛍光強度(FI)と、レーザー誘起UV蛍光分光計のUV検出器によって検出されたUV光の波長とを対比させたプロットより下の、ある面積の指標値(IN)から計算されていてもよい。様々な実施形態において、ある面積のINは、

によって計算することができ、ωが、UV光の波長であり、ω1が、UV光の開始波長であり、ω2が、UV光の終了波長であり、UV光の開始波長および終了波長が、FIのバックグラウンドノイズより大きなFI値のところに位置するように選択することができる。様々な実施形態において、ωは、総和式中で1波長ずつ増分することができる。
【0006】
様々な実施形態において、ある面積のINは、FIと、UV光の開始波長からUV光の終了波長に至るまででレーザー誘起UV蛍光分光計のUV検出器によって検出されたUV光の波長とを対比させたプロットより下の面積を積分することによって計算することができ、UV光の開始波長および終了波長が、FIのバックグラウンドノイズより大きなFI値のところに位置するように選択することができる。様々な実施形態において、散乱スペクトルは、吸収分光法、ラマン分光法、共鳴ラマン分光法、透過分光法、紫外可視反射分光法およびこれらの組合せからなる群より選択される分光法を使用して得ることができる。様々な実施形態において、多項式は、PROP=K+X×D+X×D+X×D+X×IN+X×IN+X×IN+X×D×INであってよく、式中、PROPが、特性の計算値であり、KおよびXiが、それぞれの特性に特有のi=1〜7の定数であり、Dが密度であり、INがスペクトル指数である。様々な実施形態において、選択された特性に関するXは、0であってよい。
【0007】
実施形態は、下記の詳細な記述を添付図面と組み合わせることによって容易に理解される。この詳細な記述を円滑にするために、ある方法において、同様の参照番号は、同様の構造要素または手順を表している。添付図面の図において、実施形態は、限定ではなく例示として示されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】様々な実施形態による、原油試料の特性とスペクトル指数および密度との相関関係を使用して、原油試料の特性を決定するための方法を概略的に示している図。
【0009】
図2】様々な実施形態による、レーザー誘起式の紫外線(UV)蛍光分光法による実験機構の描画を概略的に示している図。
【0010】
図3】相異なるAmerican Petroleum Institute(API)比重値を有する原油試料を対象にした、レーザー誘起UV蛍光スペクトルを概略的に示している図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施形態は、散乱分光法のデータ、原油の密度のデータおよび標準試験のデータを使用して原油および原油留分をキャラクタリゼーションして、選択された特性と、分光法による指数および原油の密度との相関関係を作り出すための方法を記述している。これらの相関関係を使用して、未キャラクタリゼーションの原油の値を予測することができる。さらなる実施形態も本明細書において記述および開示され得る。
【0012】
下記の記述においては、様々な実施形態を十分に理解するために、数多くの具体的な詳細が記載されている。他の例において、周知のプロセスおよび方法は、本明細書において記述された実施形態を不必要に分かりにくくしないようにすべく、特に詳細に記述されていないこともある。さらに、本明細書の実施形態の説明は、本明細書において記述された実施形態を分かりにくくしないようにすべく、特定の特徴および/または詳細を省略していることもある。
【0013】
下記の詳細な記述における一部をなす添付図面が参照されるが、この詳細な記述を通して、同様の数値は、同様の要素を表しており、本開示の主題が実施され得る実施形態が例示として示されている。他の実施形態が採用されてもよいし、本開示の範囲から逸脱することなく必然的な変更がなされてもよい。したがって、下記の詳細な記述は、限定的な意味に解釈されるべきではない。
【0014】
下記の詳細な記述は、「様々な実施形態において」、「様々な実施形態において」、「一実施形態において」または「複数の実施形態において」という語句を使用していることがあるが、これらの語句は、それぞれ同じまたは異なる実施形態の1つ以上を指し得る。さらに、「備える(comprising)」、「含む(including)」および「有する(having)」等という用語は、本開示の実施形態に関して使用されているとき、同義である。
【0015】
「セタン価」は「セタン点」、「セタンレーティング」または「セタン指数」とも呼ばれ、ディーゼル油燃料または一般にC10〜C15の範囲の関連する炭化水素の燃焼速度または燃焼プロセスを指す。セタン価は、0(メチルナフタレンの場合の基準値)から100((ヘキサデカン)の場合の基準値)の間の値に対応する。ディーゼル油燃料の一般的なCNは、約40〜約60までの範囲であり得る。CNは、150〜400℃の間またはこの温度範囲の部分範囲で沸騰する炭化水素留分を対象にして測定することができる。
【0016】
「流動点」という用語は、その温度より低いときに液体または流体が流動できない、液体または流体の温度を指す。流動点は、液体または流体が「半固体」になる温度であると考えることもできる。例えば、炭化水素(例えば、原油または原油留分等)の流動点において、炭化水素は、可塑化された状態であるように見えることもあるし、または、炭化水素が極度に粘着性を有し、容易に流動しないようなプラスチック状の組成物の形態であるように見えることもある。
【0017】
「曇点」という用語は、その温度より低いときに留分の置換基が曇っている、または不透明な外観を示す、ディーゼル油、ワックス、アスファルテン、樹脂および/またはこれらの組合せ等の炭化水素留分の温度を指す。置換基は、ワックス置換基またはワックス状置換基と呼ばれることがある。曇点は、ワックス出現温度またはワックス析出温度とも呼ばれることがある。
【0018】
「アニリン点」という用語は、ある規定された体積の原油または原油留分等の液体炭化水素が、等しい体積のアニリン(アミノベンゼンおよびフェニルアミンとしても知られる)と混和する、最低温度を指す。関連分野において周知の特定のアッセイにおいて、n−ヘプタン等の1種以上のさらなる化学物質を、アニリンと液体炭化水素との混合物にさらに添加してもよい。
【0019】
「オクタン価」および「オクタンレーティング」という用語は、石油、原油、灯油ならびに関連するナフサ由来の蒸留物および凝縮物等、可燃性の炭化水素種または可燃性の燃料の性能特性を定量的に説明する数値を指す。オクタン価は、大抵の場合、ASTM International D2699またはD2700標準試験法等、当技術分野において周知の標準的なアッセイを使用して測定され、燃料が火花点火式エンジン内でのデトネーションを防止することができる尺度として表示されることもある。大抵の場合、この値は、可変圧縮比エンジンを採用した標準的な単一のシリンダーを使用して測定され、一次標準燃料を使用して比較またはベンチマーク評価が行われる。あるいは、オクタン価は、リサーチオクタン価として表示されてもよく、リサーチオクタン価は、大抵の場合、穏やかなエンジン動作条件下でのオクタン価の表示に使用される。さらに、モーターオクタン価を使用して、より過酷な動作条件下でエンジンを動作させる場合のオクタン価を表示することができる。商業用途において、または現地法の要求により、アンチノックインデックスとして公知の関連値は、大抵の場合、リサーチオクタン価および/またはモーターオクタン価と関連付けられている。アンチノックインデックスは、リサーチオクタン価とモーターオクタン価の算術平均、すなわち、(R+M)/2を計算することによって決定される。アンチノックインデックスを使用して、「ロードオクタン価」を概算することができ、ロードオクタン価は、平均的な自動車が(炭化水素)燃料源に応じてどのくらい性能を発揮するかの尺度である。
【0020】
「レーザー誘起蛍光分光法」、「LED誘起蛍光」および「LIF」という用語は、パルスレーザー放射源または連続レーザー放射源を使用して試料を光化学的作用により励起して、時間分解および波長分解された試料の蛍光スペクトルを生成する分光法を指す。様々な実施形態において、放射源は、紫外線放射源であってよい。様々な実施形態において、レーザー誘起蛍光分光法を使用し、炭化水素種および/または炭化水素ではない汚染物質の濃度を測定して、原油試料の特性を評価することができる。様々な実施形態において、レーザー誘起蛍光分光法を使用して、原油試料の二次元画像および/または三次元画像を生成することができる。本明細書の様々な実施形態の広がりまたは範囲を限定するわけではないが、原油等の液体炭化水素のキャラクタリゼーションのためのレーザー誘起蛍光分光法の使用はHegaziらの米国特許第6,633,043号においてすでに記述されている。
【0021】
本明細書において開示された方法は、不定の原油および原油留分をキャラクタリゼーションする必要性に関連する石油産業において頻繁に直面することになる、いくつかの周知の課題に対処する。例えば、原油の物理的特性および化学的特性は、地域ごと、さらには隣接または比較的近い油田どうしでさえ著しく異なる可能性がある。したがって、原油の生産および原油から製造される製品を最適化するためには、相異なる原油のそれぞれの物理的特性および化学的特性を測定する必要がある。本明細書において開示された方法は、分光法および物理化学的測定を有利に利用することによって、様々な原油および原油留分のキャラクタリゼーションに伴う課題に対処する。様々な実施形態において、本方法を使用して、原油および選択された原油留分の特性を正確に決定することができる。様々な実施形態において、炭化水素構成要素がキャラクタリゼーションされ得るが、炭化水素構成要素には、限定されるわけではないがアルカン、アルケン、パラフィン、シクロパラフィン、ナフテン、芳香族化合物および多核芳香族炭化水素を挙げることができる。様々な実施形態において、本明細書において開示された方法を使用して、限定されるわけではないが硫黄、窒素、ニッケルおよびバナジウムが挙げられる炭化水素ではない原油の構成要素をキャラクタリゼーションすることができる。さらに、本明細書において開示された方法は、当業者に周知の従来のアッセイおよび技法に比較して、対象とする原油試料または留分の化学的組成を迅速に査定し、定量的に分析することができる。
【0022】
原油アッセイは、ベンチマーク評価を目的とする、原油の特性を測定する従来の方法である。例えば、原油アッセイは、大抵の場合は、数リットルの原油を確保し、原油に真沸点(TBP)蒸留および/または分留を施して、原油中に存在する沸点留分を測定するものである。原油蒸留および/または分留は、原油蒸留物を対象にしたAmerican Standard Testing Association(ASTM)Method D2892等の当業者に知られた任意の標準法を使用して実施することができる。一般的な原油の炭化水素留分および当該炭化水素留分の公称沸点が、表1に示される。表2は、原油アッセイから得られた典型的な収率、組成、物理的特性および指標的特性の情報を示す。
【表1】

【表2】
【0023】
様々な実施形態において、有利なことに、本明細書において開示された方法は、必要な試料サイズの体積の著しい低減によって原油分析をさらに単純化しながら、時間をかけて原油を蒸留および/または分留する必要をなくすことができる。例えば、本明細書において開示された方法を1ミリリットル(ml)という小さな原油試料のサイズで実施して、原油試料の特性および様々な原油試料の留分の特性を迅速に測定してもよい。様々な実施形態において、留分は、ナフサおよびディーゼル油/ガスオイル留分を含んでもよい。さらに、本明細書において開示された様々な実施形態は、原油または原油留分の様々な特性を測定するための、原油の加熱および/または冷却を必要としないことがある。このような特性は、曇点(一般的に、ASTM D2500を使用して得られる)、流動点(一般的に、ASTM D97を使用して測定される)およびアニリン点(一般的に、ASTM D611を使用して測定される)を含み得る。
【0024】
様々な実施形態において、原油または原油留分に関する選択された特性は、本明細書において開示された方法を使用して決定することができる。有利なことに、蒸留および/または分留等のコストおよび時間がかかる分離法を原油を対象に実施して、様々な試験法のために選択された原油留分を得なくても、選択された特性を測定することができる。例えば、セタン価、流動点、曇点およびアニリン点は、分離法によって原油からガスオイル留分を分離する必要なく、原油のガスオイル留分を対象にした本明細書の方法を使用して決定することができる。別の例として、原油のガスオイル留分の芳香族化合物の重量百分率は、分離法によって芳香族留分を分離する必要なく、またはASTM試験もしくは関連の試験を行うことなく、本明細書の方法を使用して決定することができる。別の例として、原油のナフサ留分のオクタン価は、分離法によって原油からナフサ留分を分離する必要とすることなく、本明細書の方法を使用して決定することができる。
【0025】
有利なことに、本明細書において開示された様々な実施形態の方法および技法は、1種以上の原油および原油留分の評価に伴う試料サイズ、時間、コストおよび労力を、本明細書において開示された分光法および解析法によって低減することができる。例えば、様々な実施形態により、原油試料(分析時間)を分析するのに必要な時間を、20%〜100%短縮することができる。様々な実施形態において、分析時間は、少なくとも25%短縮することができる。様々な実施形態において、分析時間は、少なくとも50%短縮することができる。様々な実施形態において、分析時間は、25%〜75%短縮することができる。様々な実施形態において、分析時間は、30〜50%短縮することができる。分析時間の短縮は、現在利用可能なアッセイおよび方法に比較しての短縮である。
【0026】
図1は、様々な実施形態による、原油試料の特性とスペクトル指数および密度との相関関係を使用して、原油試料の特性を決定するための方法100を概略的に示している。様々な実施形態において、方法100は、パーソナルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、携帯式またはモバイル型コンピュータデバイスまたは任意の種類のコンピュータデバイス等のコンピュータデバイスによって実施することができる。
【0027】
方法100の102において、方法100は、標準的な分析法を使用して複数の原油の特性の値を得ることを含んでもよい。様々な実施形態において、標準的な分析法は、原油および石油関連製品を試験するための様々なASTM方法を含んでもよい。様々な実施形態において、特性は、ガスオイル留分のセタン価、流動点、曇点およびアニリン点、ナフサ留分のオクタン価ならびに原油のガスオイル留分の芳香族化合物含量からなる群より選択される。様々な実施形態において、ガスオイル留分は、約180〜370℃の沸点範囲を有し得る。様々な実施形態において、ナフサ留分は、約36〜180℃の沸点を有し得る。様々な実施形態において、セタン価の値は、ASTM D613を使用して得ることができる。様々な実施形態において、流動点の値は、ASTM D7346を使用して得ることができ、様々な実施形態において、曇点の値は、ASTM D2500を使用して得ることができる。様々な実施形態において、アニリン点の値は、ASTM D611を使用して得ることができる。様々な実施形態において、オクタン価の値は、モーターオクタン、リサーチオクタンおよびこれらの組合せを対象にした試験の少なくとも1つより得ることができ、モーターオクタンの値が、ASTM D2700を使用して得られ、リサーチオクタンの値が、ASTM D2699を使用して得られる。様々な実施形態において、芳香族化合物含量の値は、適切な任意のASTM試験または他の試験により得ることができる。
【0028】
方法100の104において、方法100は、複数の原油の密度の値を得ることを含んでもよい。様々な実施形態において、密度の値は、ASTM D5002を使用して得ることができる。密度の値は、任意の単位によって表すことが可能であり、限定されるわけではないが、石油産業において一般的に使用されている単位が挙げられる。
【0029】
方法100の106において、方法100は、複数の原油の散乱スペクトルのデータセットを得ることを含んでもよい。本明細書においてさらに記述されており、図2および図3においても示されているように、様々な実施形態において、散乱スペクトルは、レーザー誘起紫外線(UV)蛍光分光計を使用して得ることができる。様々な実施形態において、散乱スペクトルは、吸収分光法、ラマン分光法、共鳴ラマン分光法、透過分光法、紫外可視反射分光法およびこれらの組合せからなる群より選択される分光法を使用して得ることができる。
【0030】
方法100の108において、方法100は、複数の原油の散乱スペクトルのデータセットからスペクトル指数を計算することを含んでもよい。様々な実施形態において、複数の原油の散乱スペクトルから出したスペクトル指数は、蛍光強度と、レーザー誘起UV蛍光分光計のUV検出器によって検出されたUV光の波長とを対比させたプロットより下の、ある面積の指標値から計算されていてもよい。様々な実施形態において、ある面積の指標値(IN)は、式
を使用して計算することができ、式中、FIが、蛍光強度であり、ωが、UV光の波長であり、ω1が、UV光の開始波長であり、ω2が、UV光の終了波長であり、UV光の開始波長および終了波長が、FIのバックグラウンドノイズより大きいFI値のところに位置するように選択することができる。様々な実施形態において、任意の開始波長および終了波長が、総和式のために選択され得る。様々な実施形態において、ある面積の指標値は、蛍光強度(FI)と、UV光の開始波長からUV光の終了波長に至るまででレーザー誘起UV蛍光分光計のUV検出器によって検出されたUV光の波長とを対比させたプロットより下の面積を積分することによって計算することができ、UV光開始波長および終了波長が、FIのバックグラウンドノイズより大きいFI値のところに位置するように選択される。様々な実施形態において、任意の開始波長および終了波長が、総和および/または積分のために選択され得る。
【0031】
方法100の110において、方法100は、特性に関する多項式の定数を決定することを含んでもよく、多項式が、原油の密度および原油のスペクトル指数の関数であり、多項式の定数の数が、複数の原油の数以下であり、定数が、複数の原油の特性の値を多項式から出した計算値に当てはめるフィッティング法を使用して決定することができる。様々な実施形態において、最小二乗法方法を使用して、定数を決定することができる。様々な実施形態において、回帰法を使用して、定数を決定してもよい。様々な実施形態において、多項式は、PROP=K+X×D+X×D+X×D+X×FI+X×FI+X×FI+X×D×FIであってよく、式中、PROPが、特性の計算値であり、KおよびXが、それぞれの特性に固有でi=1〜7の定数であり、Dが密度であり、FIがスペクトル指数である。様々な実施形態において、定数の数は、8種であってよく、複数の原油の数は、9種であってよい。
【0032】
方法100の112において、未キャラクタリゼーションの原油試料の散乱スペクトルおよび密度を得、多項式を使用して未キャラクタリゼーションの原油試料のスペクトル指数および特性の値を計算することを含む方法100において、未キャラクタリゼーションの原油試料は、複数の原油の1つではない。
【0033】
図2は、様々な実施形態による、レーザー誘起紫外線(UV)蛍光分光法システム200を概略的に示している。システム200は、レーザー光202.1を放出するレーザー202を含んでもよい。システム200は、第1の鏡204からのレーザー光202.1を誘導して、第1の反射光204.1を第2の鏡206に供給するための、第1の鏡204を備えてもよい。第2の鏡206は、第1の反射光204.1を反射して、第2の反射光206.1を原油試料入りのキュベット208に供給することができる。キュベット208内の原油試料は、レンズ系210に向かうように誘導可能な蛍光208.1を放出することができ、レンズ系210は、蛍光210.1を収束させて、スペクトログラフ212に供給することができる。スペクトログラフ212は、増感電荷結合素子(ICCD)214に連結されていてもよい。ICCD214をコンピュータシステム216に連結220して、キュベット208内の試料からのUV蛍光分光法データを記録してもよい。システム200は、反射光208.2を受け入れるためのビームダンプ218を備えてもよい。
【0034】
キュベット208は、4つの長方形の窓または面を備えることが可能であり、標準的なUV石英キュベットであってよい。キュベット208は、約2ミリリットルの原油試料を受け入れるようにサイズ調整することができる。第1の鏡204、第2の鏡206およびキュベット208は、キュベット208の一面に対して約45度の角度で第2の反射光206.1を供給するように構成されていてもよい。
【0035】
レーザー202は、波長が約266nmでビーム径が約0.5mmのQスイッチ式UVレーザービームとして、レーザー光202.1を供給することができる。レーザー202のQスイッチは、パルスごとに6ナノ秒の期間にわたって、1パルス当たり約35ミルジュールのエネルギーパルスを生成することができる。他のレーザー光の波長を使用して、キュベット208内の試料から蛍光応答を誘起してもよい。レーザー光は、より高いまたはより低いエネルギーパルスを有してもよいし、より長いまたはより短いパルスを有してもよい。
【0036】
レンズ系210は、蛍光発光208.1をスペクトログラフ212の入口スリットに集束させるように揃えられた、2個以上の石英レンズを備えてもよい。ICCDは、高速ゲート型ICCDであってよく、得られた蛍光強度の発光スペクトルを波長に応じて生成することができる。得られた蛍光スペクトルは、約1.5nmの分解能を有し得る。スペクトルは、コンピュータシステム216のシミュレーション用ソフトウェアを使用して復元することができる。
【0037】
図3は、様々な実施形態による、異なるAmerican Petroleum Institute (API)比重値を有する9種の異なる原油試料のレーザー誘起UV蛍光スペクトルを概略的に示している。各スペクトルは、それぞれのAPI比重値が表記される。スペクトルは、蛍光強度(任意の単位、a.u.)と、波長(ナノメートル、nm)とを対比させたプロットとして示されている。
【0038】
様々な実施形態において、レーザー誘起UV蛍光指数(「IN」)は、図2に示すように、原油のスペクトルから計算することができる。様々な実施形態において、INは、下記の式1に従って計算することができる。
INは、波長ωにおける蛍光強度の尺度である。様々な実施形態において、蛍光強度は、相対蛍光単位(RFU)として測定することができる。様々な実施形態において、RFUは、ω1に等しいωを起点としてω2に等しいωに至るまでで検出されたピークに関する、原油試料の蛍光強度値として測定することができる。様々な実施形態において、ω1は、約283ナノメートルであってよく、ω2は、約600nmであってよい。様々な実施形態において、INは、例えばRFU等の蛍光強度の尺度と、検出器によって検出された光の波長とを対比させたプロットにおいて曲線より下の面積として計算することができる。曲線より下の面積は、式1に従って計算することもできるし、または、曲線より下の面積を推算するための適切な任意の方法を使用して計算してもよい。開始波長ω1および終了波長ω2の最適化により、炭化水素留分または原油の特性を推算するための、INの計算における正確性がさらに高まる。例えば、ω1は、約270nm以下〜約300nm以上までであってよい。同様に、ω2は、約550nm以下〜約620nm以上までであってよい。様々な実施形態において、ωは、式1中で1nmずつ増分することができる。様々な実施形態において、ωは、式1中で1.5nmずつ増分することができる。曲線より下の面積に関する任意の適切な尺度を使用して、適切な工学的公差に収まるようにINの値を計算するまたは概算ことができる。様々な実施形態において、INの値は、正規化された値であってもよく、このとき、正規化された値は、標準試料に関するものであり得る。正規化により、相異なる蛍光分光計の指標値の比較が可能になる。様々な実施形態において、正規化されたINが使用されてもよく、このとき、INは、指定されている。
【0039】
様々な実施形態において、INと、8種の定数を含む多項式中の原油の密度(「D」)とを組み合わせて、原油に関する選択された特性(「PROP」)を測定するための手段を提供することができる。多項式の定数は、少なくとも8種の異なる原油のIN、DおよびPROPを測定し、データの回帰分析または最小二乗法分析を実施して、8種の定数を決定することによって決定することができる。標準的な任意のフィッティング法を使用して、8種の定数を決定してもよい。様々な実施形態において、8種より多い定数を含む多項式が、使用されてもよい。様々な実施形態において、8種より少ない定数を含む多項式が、使用されてもよい。
【0040】
様々な実施形態において、多項式は、式2に示された形態を有し得る。
様々な実施形態において、PROPは、セタン価、流動点、曇点、アニリン点、オクタンまたは重量百分率芳香族化合物であってよい。PROP、DおよびINが、少なくとも8種の異なる原油および/または原油留分について測定された場合、式2の定数を決定することができる。様々な実施形態において、INは、様々な蛍光分光計に対する正規化を可能にする、正規化されたINであってもよい。様々な実施形態において、8種より多い試料を使用して、式2の定数を決定してもよい。このような場合は、系が優決定系になるため、最小二乗法分析を使用して、定数を決定してもよい。
【0041】
様々な実施形態において、セタン価(CN)は、本明細書において開示された方法を使用して、原油留分または試料を対象にして決定することができる。様々な実施形態において、CNは、下記の式3を使用して、180〜370℃までの範囲で沸騰するガスオイル留分を対象にして測定することができる。

式3において、「KCN」は、定数であり、「XnCN」は、下付き文字nが1、2、…7の定数である。
【0042】
様々な実施形態において、定数KCNおよびXnCNは、セタン、原油の密度およびINのデータを収載した原油データのデータベースの回帰分析によって決定することができる。
【0043】
様々な実施形態において、流動点(PP)は、本明細書において開示された方法を使用して、原油留分または試料を対象にして決定することができる。様々な実施形態において、PPは、下記の式4を使用して、180〜370℃までの範囲で沸騰するガスオイル留分を対象にして決定することができる。
式4において、「KPP」は、定数であり、「XnPP」は、下付き文字nが1、2、…7の定数である。
「D」および「IN」は、先述のとおりである。
【0044】
様々な実施形態において、定数KPPおよびXnPPは、流動点、原油の密度およびINのデータを収載した原油データのデータベースの回帰分析によって決定することができる。
【0045】
様々な実施形態において、曇点(CP)は、本明細書において開示された方法を使用して、原油留分または試料を対象にして決定することができる。様々な実施形態において、CPは、下記の式5を使用して、180〜370℃までの範囲で沸騰するガスオイル留分を対象にして決定することができる。
式5において、「KCP」は、定数であり、「XnCP」は、下付き文字nが1、2、…7の定数である。
「D」および「IN」は、先述のとおりである。
【0046】
様々な実施形態において、定数KCPおよびXnCPは、曇点、原油の密度およびINのデータを収載した原油データのデータベースの回帰分析によって決定することができる。
【0047】
様々な実施形態において、アニリン点(AP)は、本明細書において開示された方法を使用して、原油留分または試料を対象にして決定することができる。様々な実施形態において、APは、下記の式6を使用して、180〜370℃までの範囲で沸騰するガスオイル留分を対象にして決定することができる。

式6において、「KAP」は、定数であり、「XnAP」は、下付き文字nが1、2、…7の定数である。
「D」および「IN」は、先述のとおりである。
【0048】
様々な実施形態において、定数KAPおよびXnAPは、アニリン、原油の密度およびINのデータを収載した原油データのデータベースの回帰分析によって決定することができる。
【0049】
様々な実施形態において、芳香族化合物(AR)の重量百分率は、本明細書において開示された方法を使用して、原油のガスオイル留分を対象として決定することができる。様々な実施形態において、ARは、下記の式7を使用して決定することができる。
式7において、「KAR」は、定数であり、「XnAR」は、下付き文字nが1、2、…7の定数である。
「D」および「IN」は、先述のとおりである。
【0050】
様々な実施形態において、定数KARおよびXnARは、芳香族化合物百分率、原油の密度およびINを収載した原油データのデータベースの回帰分析によって決定することができる。
【0051】
様々な実施形態において、本明細書において開示された方法を使用して、原油のナフサ留分のオクタン価(ON)を決定することができる。様々な実施形態において、ONは、下記の式8を使用して、約36〜180℃までの沸点を有するナフサ留分を対象にして決定することができる。
式8において、「KON」は、定数であり、「XnON」は、下付き文字nが1、2、…7の定数である。様々な実施形態において、X7ONは、0に設定されていてもよい。
「D」および「IN」は、先述のとおりである。
【0052】
様々な実施形態において、定数KONおよびXnONは、オクタン価、原油の密度およびINのデータを収載した原油データのデータベースの回帰分析によって決定することができる。
【実施例】
【0053】
様々な実施形態について本明細書において説明および記述されたように、様々な実施形態によれば、本開示は、多項式を使用して蛍光分光法データおよび原油の密度から、原油および/または原油留分の特性を決定するための方法およびシステムを記述している。
【0054】
原油試料の分光測定のさらなる一例において、図2に示されたレーザー誘起式の紫外線(UV)蛍光分光法実験システムを使用して、蛍光測定を実施した。この例において、選択された原油試料から得た2mlのアリコートを、四(4)個の長方形の窓または面を有する標準的なUV石英キュベットに移した。実験期間中に入射したレーザービームが約45度の固定角度で(4個の)キュベットの窓の1つに集束するような角度で、キュベットおよびアリコートを分光計セルホルダーに装入した。最初に波長を266ナノメートル(nm)に固定し、ビーム径を約0.5mmに固定したQスイッチ式UVレーザービームを使用して、キュベット内の原油アリコートを励起した。レーザーのQスイッチは、パルスごとに約6ナノ秒(ns)の期間にわたって、1パルス当たり約35ミルジュール(mJ)のエネルギーパルスを生成した。図2によって示されており、図2に関して本明細書において記述されたように、各原油試料について得られた蛍光は、得られた発光を、操作可能に連結されたスペクトログラフの入口スリットに集束させるために揃えられた石英レンズの組合せを使用して集めた。スペクトログラフは、得られた蛍光強度の発光スペクトルを波長に応じて生成するために、高速ゲート型増感電荷結合素子(ICCD)と連結されていた。スペクトル分解能は、約1.5nmであり、スペクトルは、シミュレーション用ソフトウェアを使用して復元した。レーザーパルスの「Qスイッチ」によってICCDを始動させたが、得られた蛍光シグナルの検出は、レーザーパルス強度の最大値を起点として測定して最初の6ナノ秒に限定した。図2は、異なるAPI比重値を有する9種の異なる原油の蛍光スペクトルを示している。
【0055】
表3に示すように、上記スペクトル分析から得られた値を使用して、原油のガスオイル留分のセタン価を決定することができる。ガスオイル留分は、180〜370℃までの沸点範囲を有する。原油は、0.883g/cmの密度を有する。計算された原油のガスオイル留分のセタン価は、59である。表3に示された8種の定数の値は、原油データのデータベースの回帰分析によって得られた。
【表3】
【0056】
表4に示すように、上記スペクトル分析から得られた値を使用して、原油のガスオイル留分の流動点を決定することができる。ガスオイル留分は、180〜370℃までの沸点範囲を有する。原油は、0.883g/cmの密度を有する。計算された原油のガスオイル留分の流動点は、−10である。表4に示された8種の定数の値は、原油データのデータベースの回帰分析によって得られた。
【表4】
【0057】
表5に示すように、上記スペクトル分析から得られた値を使用して、原油のガスオイル留分の曇点を決定することができる。ガスオイル留分は、180〜370℃までの沸点範囲を有する。原油は、0.883g/cmの密度を有する。計算された原油のガスオイル留分の曇点は、−10である。表5に示された8種の定数の値は、原油データのデータベースの回帰分析によって得られた。
【表5】
【0058】
表6に示すように、上記スペクトル分析から得られた値を使用して、原油のガスオイル留分のアニリン点を決定することができる。ガスオイル留分は、180〜370℃までの沸点範囲を有する。原油は、0.883g/cmの密度を有する。計算された原油のガスオイル留分のアニリン点は、65である。表6に示された8種の定数の値は、原油データのデータベースの回帰分析によって得られた。
【表6】
【0059】
表7に示すように、上記スペクトル分析から得られた値を使用して、原油のガスオイル留分の芳香族化合物の重量百分率を決定することができる。原油は、0.883g/cmの密度を有する。計算された原油のガスオイル留分芳香族化合物の重量百分率は、21である。表7に示された8種の定数の値は、原油データのデータベースの回帰分析によって得られた。
【表7】
【0060】
表8に示すように、上記スペクトル分析から得られた値を使用して、原油のナフサ留分のオクタン価を決定することができる。ナフサ留分は、36〜180℃までの沸点範囲を有する。原油は、0.883g/cmの密度を有する。計算されたオクタン価は、54である。表8に示された8種の定数の値は、原油データのデータベースの回帰分析によって得られた。
【表8】
【0061】
表9は、それぞれ28.8°および27.4°のAPI指数を有する2種の原油試料を対象にしたスペクトル分析および波数値を示している。
【表9】








図1
図2
図3