(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の荷電粒子は、前記電気泳動媒体が0℃の温度にあるとき、300kV/mの電界内で50μm/秒を上回る速度で前記非極性流体を通して移動する、請求項11に記載の電気泳動媒体。
複数の第2の荷電粒子および複数の第3の荷電粒子をさらに備え、前記第1、第2、または第3の荷電粒子は、赤色、緑色、青色、シアン色、黄色、またはマゼンタ色である、請求項1に記載の電気泳動媒体。
請求項1に記載の電気泳動媒体を備える、電子書籍リーダ、ポータブルコンピュータ、タブレットコンピュータ、携帯電話、スマートカード、標識、腕時計、棚ラベル、フラッシュドライブ、窓、または窓フィルム。
【背景技術】
【0002】
粒子ベースの電気泳動ディスプレイは、長年、精力的な研究および開発の対象となっている。そのようなディスプレイでは、複数の荷電粒子(顔料粒子とも称される)が、電場の影響下で流体を通して移動する。電場は、典型的には、伝導性フィルムまたは電界効果トランジスタ等のトランジスタによって提供される。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較して、良好な輝度およびコントラスト、広視野角、状態双安定性、および低電力消費を有する。しかしながら、そのような電気泳動ディスプレイは、LCDディスプレイより低速の切替速度を有し、電気泳動ディスプレイは、典型的には、遅すぎて、リアルタイムビデオを表示することができない。加えて、電気泳動ディスプレイは、流体の粘度が電気泳動粒子の移動を限定するため、低温で不活発となり得る。これらの欠点にもかかわらず、電気泳動ディスプレイは、電子書籍(電子リーダ)、携帯電話および携帯電話カバー、スマートカード、標識、腕時計、棚ラベル、およびフラッシュドライブ等の日常の製品に見出され得る。
【0003】
多くの商業用電気泳動媒体は、本質的に、2つの色のみを表示し、「グレースケール」として知られる黒色および白色極限間の勾配を伴う。そのような電気泳動媒体は、第1の色を有する単一タイプの電気泳動粒子を第2の異なる色を有する着色流体中で使用するか(その場合、第1の色は、粒子がディスプレイの視認表面に隣接してあるときに表示され、第2の色は、粒子が視認表面から離間されるときに表示される)、または異なる第1および第2の色を有する第1および第2のタイプの電気泳動粒子を非着色流体中で使用するかのいずれかである。後者の場合、第1の色は、第1のタイプの粒子がディスプレイの視認表面に隣接してあるときに表示され、第2の色は、第2のタイプの粒子が視認表面に隣接してあるときに表示される。典型的には、2つの色は、黒色および白色である。
【0004】
フルカラーディスプレイが、所望される場合、カラーフィルタアレイが、モノクロ(黒色および白色)ディスプレイの視認表面にわたって堆積されてもよい。カラーフィルタアレイを伴うディスプレイは、色刺激を生成するために、面積共有および色混成に依拠する。利用可能なディスプレイ面積は、赤色/緑色/青色(RGB)または赤色/緑色/青色/白色(RGBW)等の3原色または4原色間で共有され、フィルタが、1次元(ストライプ)または2次元(2×2)反復パターンで配列され得る。原色の他の選択肢または3つを上回る原色もまた、当技術分野において公知である。3つ(RGBディスプレイの場合)または4つ(RGBWディスプレイの場合)のサブピクセルが、意図される視認距離において、均一色刺激(「色混成」)を伴ってそれらが視覚的にともに単一ピクセルに混成するように十分に小さいように選定される。面積共有の固有の不利点は、着色剤が常時存在し、色が、下層モノクロディスプレイの対応するピクセルを白色または黒色に切り替える(対応する原色をオンまたはオフに切り替える)ことによってのみ変調され得ることである。例えば、理想的RGBWディスプレイでは、赤色、緑色、青色、および白色原色はそれぞれ、ディスプレイ面積の1/4(4つのうちの1つのサブピクセル)を占有し、白色サブピクセルは、下層モノクロディスプレイ白色と同程度の明るさであって、着色サブピクセルはそれぞれ、モノクロディスプレイ白色の1/3より明るくない。全体としてディスプレイによって示される白色の輝度は、白色サブピクセルの輝度の1/2を上回り得ない(ディスプレイの白色面積は、各4つのうちの1つの白色サブピクセルを表示することによって生産され、加えて、その着色形態における各着色サブピクセルは、白色サブピクセルの1/3と同等であって、したがって、組み合わせられた3つの着色サブピクセルは、1つの白色サブピクセルにわずかしか寄与しない)。色の輝度および飽和は、黒色に切り替えられる色ピクセルとの面積共有によって低下される。面積共有は、黄色を混合するときに特に問題となり、これは、黄色が、等しい輝度の任意の他の色より明るく、飽和した黄色が、白色とほぼ同程度に明るいためである。青色ピクセル(ディスプレイ面積の1/4)から黒色への切替は、黄色を暗くしすぎる。
【0005】
単純そうに見えるが、電気泳動媒体および電気泳動デバイスは、複雑な挙動を呈する。例えば、単純「オン/オフ」電圧パルスは、電子リーダ内で高品質テキストを達成するために不十分であることが発見されている。むしろ、複雑な「波形」が、状態間で粒子を駆動し、新しい表示されるテキストが前のテキストのメモリ、すなわち、「ゴースト」を留保しないことを確実にするために必要とされる。例えば、米国特許出願第20150213765号を参照されたい。電場の複雑性と併せて、内相、すなわち、粒子(顔料)と流体の混合物も、電場の印加に応じた荷電種と周囲環境(カプセル化媒体等)との間の相互作用に起因して、予期しない挙動を呈し得る。加えて、予期しない挙動は、流体、顔料、またはカプセル化媒体中の不純物から生じ得る。故に、電気泳動ディスプレイがどのように内相組成物内の変動に応答するであろうかを予測することは困難である。
【0006】
本発明者らは、カプセル化された電気泳動および他の電気光学媒体において使用される種々の技術を説明する、Massachusetts Institute of Technology(MIT)およびE Ink Corporationに譲渡された、またはその名義下における多くの特許および出願を認識している。そのようなカプセル化された媒体は、多数の小カプセルを含み、それ自体はそれぞれ、電気泳動的移動性粒子を流体媒体中に含有する内相と、内相を囲繞するカプセル壁とを備える。典型的には、カプセル自体は、ポリマー結合剤内に保持され、2つの電極間に位置付けられるコヒーレント層を形成する。これらの特許および出願に説明される技術は、以下を含む。
(a)電気泳動粒子、流体、および流体添加物(例えば、米国特許第7,002,728号および第7,679,814号参照)
(b)カプセル、接着剤、およびカプセル化プロセス(例えば、米国特許第6,922,276号および第7,411,719号参照)
(c)電気光学材料を含むフィルムおよびサブアセンブリ(例えば、米国特許第6,982,178号および第7,839,564号参照)
(d)バックプレーン、接着剤層、および他の補助層、およびディスプレイに使用される方法(例えば、米国特許第7,116,318号および第7,535,624号参照)
(e)色形成および色調節(例えば、米国特許第6,017,584号、第6,664,944号、第6,864,875号、第7,075,502号、第7,167,155号、第7,667,684号、第7,791,789号、第7,839,564号、第7,956,841号、第8,040,594号、第8,054,526号、第8,098,418号、第8,213,076号、および第8,363,299号、および米国特許出願公開第2004/0263947号、第2007/0223079号、第2008/0023332号、第2008/0043318号、第2008/0048970号、第2009/0004442号、第2009/0225398号、第2010/0103502号、第2010/0156780号、第2011/0164307号、第2011/0195629号、第2011/0310461号、第2012/0008188号、第2012/0019898号、第2012/0075687号、第2012/0081779号、第2012/0134009号、第2012/0182597号、第2012/0212462号、第2012/0157269号、および第2012/0326957号参照)
(f)ディスプレイを駆動するための方法(例えば、米国特許第5,930,026号、第6,445,489号、第6,504,524号、第6,512,354号、第6,531,997号、第6,753,999号、第6,825,970号、第6,900,851号、第6,995,550号、第7,012,600号、第7,023,420号、第7,034,783号、第7,116,466号、第7,119,772号、第7,193,625号、第7,202,847号、第7,259,744号、第7,304,787号、第7,312,794号、第7,327,511号、第7,453,445号、第7,492,339号、第7,528,822号、第7,545,358号、第7,583,251号、第7,602,374号、第7,612,760号、第7,679,599号、第7,688,297号、第7,729,039号、第7,733,311号、第7,733,335号、第7,787,169号、第7,952,557号、第7,956,841号、第7,999,787号、第8,077,141号、第8,125,501号、第8,139,050号、第8,174,490号、第8,289,250号、第8,300,006号、第8,305,341号、第8,314,784号、第8,384,658号、第8,558,783号、および第8,558,785号、および米国特許出願公開第2003/0102858号、第2005/0122284号、第2005/0253777号、第2007/0091418号、第2007/0103427号、第2008/0024429号、第2008/0024482号、第2008/0136774号、第2008/0291129号、第2009/0174651号、第2009/0179923号、第2009/0195568号、第2009/0322721号、第2010/0220121号、第2010/0265561号、第2011/0193840号、第2011/0193841号、第2011/0199671号、第2011/0285754号、および第2013/0194250号(これらの特許および出願は、以降、MEDEOD(MEthods for Driving Electro−optic Displays)出願と称され得る)参照)
(g)ディスプレイの適用(例えば、米国特許第7,312,784号および第8,009,348号参照)
(h)非電気泳動ディスプレイ(米国特許第6,241,921号、第6,950,220号、第7,420,549号、および第8,319,759号、および米国特許出願公開第2012/0293858号参照)
【0007】
前述の特許および特許出願は全て、参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
前述のように、本発明は、電気泳動媒体の改良された調合物を提供する。媒体は、ディスプレイの中に、すなわち、バックプレーンに結合され、ディスプレイを作製する、フロントプレーンラミネートまたは反転フロントプレーンラミネートの中に組み込まれてもよい。調合物は、非極性流体と、非極性流体中に分散される複数の第1の荷電粒子とを含み、第1の荷電粒子は、第四級アミンおよび少なくとも10個の炭素原子の長さのモノマーを含む不飽和ポリマー尾部を含む、電荷制御剤と錯体を形成する。調合物は、低温(すなわち、約0℃)において改良された切替速度およびダイナミックレンジを示す。
【0014】
本明細書において、グレー状態という用語は、結像技術分野におけるその従来的な意味で使用され、2つの極端なピクセルの光学的状態の中間の状態を指し、必ずしも黒色と白色とのこれらの2つの極端な状態の間の遷移を意味するわけではない。例えば、下記に参照されるいくつかのE Inkの特許および公開された出願は、極端な状態が白色および濃青色であり、中間のグレー状態が実際には薄青色になる電気泳動ディスプレイを説明している。実際、すでに述べたように、光学的状態の変化は、色の変化では全くない場合もある。黒色および白色という用語は、以下において、ディスプレイの2つの極端な光学的状態を指すように以下で使用される場合があり、例えば、前述の白色および濃青色状態等の厳密には黒色および白色ではない極端な光学的状態を通常含むものとして理解されるべきである。
【0015】
本明細書において、双安定および双安定性という用語は、当該技術分野におけるそれらの従来的な意味で使用され、少なくとも1つの光学的特性の異なる第1および第2のディスプレイ状態を有するディスプレイ要素を含み、したがって、任意の所与の要素が有限間隔のアドレス指定パルスによって駆動されて、その第1または第2のディスプレイ状態のいずれかになった後、アドレス指定パルスが終了した後に、その状態が少なくとも複数回、例えば、少なくとも4回、ディスプレイ要素の状態を変化させるのに必要な最小のアドレス指定パルスの間隔の間、持続することになる、ディスプレイを指す。グレースケールが可能ないくつかの粒子ベース電気泳動ディスプレイは、それらの極端な黒色および白色状態においてのみではなく、また同様に、それらの中間のグレー状態においても安定しており、同じことが他の種類の電気光学ディスプレイにも当てはまることが米国特許第7,170,670号に示されている。この種類のディスプレイは、双安定というよりもむしろ多安定と呼ぶのが適切であるが、便宜上、双安定という用語は、本明細書において双安定および多安定ディスプレイの両方を網羅するように使用されてもよい。
【0016】
本明細書において、インパルスという用語は、電気泳動ディスプレイの駆動に言及して使用されるとき、ディスプレイが駆動される期間中の時間についての印加電圧の積分を指すように使用される。
【0017】
本明細書において、広帯域または選択される波長のいずれかにおいて光を吸収、散乱、または反射する粒子は、着色または顔料粒子と称される。色素または光結晶等、顔料以外の光を吸収または反射する種々の材料(不溶性着色材料を意味する用語の厳密な意味における)もまた、本発明の電気泳動媒体およびディスプレイにおいて使用されてもよい。
【0018】
前述の特許および出願の多くは、カプセル化された電気泳動媒体内の離散マイクロカプセルを囲繞する壁が連続相によって置換され、したがって、いわゆるポリマー分散電気泳動ディスプレイを生産し得、電気泳動媒体が電気泳動流体の複数の離散液滴およびポリマー材料の連続相を含み、そのようなポリマー分散電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体の離散液滴が、離散カプセル膜が各個々の液滴と関連付けられないとしても、カプセルまたはマイクロカプセルと見なされ得ることを認識する。例えば、米国特許第6,866,760号を参照されたい。故に、本願の目的のために、そのようなポリマー分散電気泳動媒体は、カプセル化された電気泳動媒体の亜種と見なされる。
【0019】
関連タイプの電気泳動ディスプレイは、いわゆるマイクロセル電気泳動ディスプレイである。マイクロセル電気泳動ディスプレイでは、荷電粒子および流体は、マイクロカプセル内にカプセル化されず、代わりに、担体媒体、典型的には、ポリマーフィルム内に形成される複数の空洞内に保定される。例えば、米国特許第6,672,921号および第6,788,449号(両方ともSipix Imaging, Inc.に譲渡されている)を参照されたい。
【0020】
上述のように、電気泳動媒体は、流体の存在を必要とする。殆どの先行技術の電気泳動媒体では、この流体は、液体であるが、電気泳動媒体は、ガス状流体を使用して生産され得る(例えば、Kitamura, T., et al. Electrical toner movement for electronic paper−like display, IDW Japan, 2001, Paper HCS1−1、およびYamaguchi, Y., et al., Toner display using insulative particles charged triboelectricaily, IDW Japan, 2001, Paper AMD4−4号参照)。同様に、米国特許第7,321,459号および第7,236,291号も参照されたい。そのようなガスベース電気泳動媒体は、例えば、媒体が垂直プレーンに配置される看板内等、媒体がそのような沈降を可能にする配向で使用されるときに、粒子沈降のために液体ベース電気泳動媒体と同じ種類の問題の影響を受けやすいと考えられる。実際、粒子沈降は、電気泳動粒子のより高速の沈降を可能にする流体の粘度と比較して、ガス状懸濁流体のより低い粘度のため、液体ベース電気泳動媒体よりもガスベース電気泳動媒体において深刻な問題であると考えられる。
【0021】
カプセル化された電気泳動ディスプレイは、典型的には、従来的な電気泳動機器のクラスタ化および沈降故障モードに悩まされることがなく、多様な柔軟性および剛性基材上にディスプレイを印刷またはコーティングする能力等のさらなる利点を提供する。(印刷という語の使用は、全ての形態の印刷およびコーティングを含むことが意図され、限定ではないが、前計量コーティング、例えば、パッチダイコーティング、スロットまたは押出コーティング、スライドまたはカスケードコーティング、カーテンコーティング等、ロールコーティング、例えば、ナイフオーバーロールコーティング、フォワードおよびリバースロールコーティング等、グラビアコーティング、浸漬コーティング、吹き付けコーティング、メニスカスコーティング、スピンコーティング、ブラシコーティング、エアナイフコーティング、シルクスクリーン印刷プロセス、静電気印刷プロセス、熱印刷プロセス、インクジェット印刷プロセス、電気泳動析出(米国特許第7,339,715号参照)、および他の同様の技術が挙げられる。)したがって、得られるディスプレイは、柔軟性であり得る。さらに、ディスプレイ媒体は(種々の方法を使用して)印刷され得るため、ディスプレイ自体は、安価に作製され得る。
【0022】
前述の米国特許第6,982,178号は、電気泳動ディスプレイ(カプセル化された電気泳動ディスプレイを含む)を組み立てる方法を説明している。本質的に、この特許は、光透過性導電性層、導電性層と電気接点を有する固体電気光学媒体の層、接着剤層、および剥離シートを順に備える、いわゆるフロントプレーンラミネート(FPL)を説明している。典型的には、光透過性導電性層は、光透過性基材上に担持され、好ましくは、基材が永久的な変形を伴わずに、(例えば)直径10インチ(254mm)のドラムの周囲に手で巻き付けられ得るという意味で柔軟性である。この出願および本明細書において、光透過性という用語は、そのように指定される層が、その層を通して見ている観察者が、電気光学媒体のディスプレイ状態の変化を観察することを可能にするために十分な光を透過させ、通常、導電性層および隣接する基材(存在する場合)を通して見られることを意味するように使用され、電気光学媒体ディスプレイが非可視波長における反射率において変化する場合、光透過性という用語は、当然ながら、関連する非可視波長の透過に関して解釈されるべきである。基板は、典型的には、ポリマーフィルムであって、通常、約1〜約25ミル(25〜634μm)、好ましくは、約2〜約10ミル(51〜254μm)の範囲内の厚さを有するであろう。導電性層は、便宜上、例えば、アルミニウムまたはインジウムスズ酸化物(ITO)の薄い金属または金属酸化物層である、または伝導性ポリマーであってもよい。アルミニウムまたはITOでコーティングされたポリ(エチレンテレフタレート)(PET)フィルムは、例えば、E.I. du Pont de Nemours & Company(Wilmington DE)からのアルミ被覆Mylar(Mylarは、登録商標である)として商業上利用可能であって、そのような商業上の材料は、フロントプレーンラミネートにおける良好な結果と併用され得る。
【0023】
そのようなフロントプレーンラミネートを使用した電気光学ディスプレイの組立は、剥離シートをフロントプレーンラミネートから除去し、接着剤層をバックプレーンに接着させるのに効果的な条件下で接着剤層をバックプレーンに接触させ、それによって、接着剤層、電気光学媒体の層、および導電性層をバックプレーンに固定することによって達成されてもよい。このプロセスは、フロントプレーンラミネートが、典型的にはロールからロールへのコーティング技術を使用して大量生産され、次に、特定のバックプレーンとの使用に必要とされる任意のサイズの片に切断され得るため、大量生産に非常に適している。
【0024】
米国特許第7,561,324号は、いわゆる二重剥離シートを説明しており、これは、本質的には、前述の米国特許第6,982,178号のフロントプレーンラミネートの単純化された変形である。二重剥離シートの1つの形態は、2つの接着剤層間に挟まれた固体電気光学媒体の層を備え、接着剤層の一方または両方は、剥離シートによって被覆される。二重剥離シートの別の形態は、2つの剥離シート間に挟まれた固体電気光学媒体の層を備える。二重剥離フィルムのどちらの形態も、すでに説明されたフロントプレーンラミネートから電気光学ディスプレイを組み立てるためのプロセスに概して類似するプロセスにおける使用を意図されるが、2つの分離したラミネート加工を含み、典型的には、第1のラミネート加工において、二重剥離シートは、フロント電極にラミネート加工されて、フロントプレーンサブアセンブリを形成し、次に、第2のラミネート加工において、フロントプレーンサブアセンブリは、バックプレーンにラミネート加工されて、最終的なディスプレイを形成するが、但し、これらの2つのラミネート加工の順序は所望により逆転され得る。
【0025】
米国特許第7,839,564号は、いわゆる反転されたフロントプレーンラミネートを説明しており、これは、前述の米国特許第6,982,178号に説明されるフロントプレーンラミネートの変形である。この反転されたフロントプレーンラミネートは、光透過性保護層および光透過性導電性層のうちの少なくとも1つ、接着剤層、固体電気光学媒体の層、および剥離シートを順に備える。この反転されたフロントプレーンラミネートは、電気光学層とフロント電極またはフロントプレーン基材との間にラミネート加工接着剤の層を有する電気光学ディスプレイを形成するために使用され、第2の典型的には薄い接着剤の層が、電気光学層とバックプレーンとの間に存在してもよい、または存在しなくてもよい。そのような電気光学ディスプレイは、良好な解像度と良好な低温性能とを組み合わせることができる。
【0026】
多積層電気泳動ディスプレイは、当該技術分野において公知である。例えば、J. Heikenfeld, P. Drzaic, J−S Yeo and T. Koch, Journal of the SID, 19(2), 2011, pp. 129−156を参照されたい。そのようなディスプレイでは、周辺光は、従来のカラー印刷と同様に3つの減法混色の原色のそれぞれにおいて画像を通過する。米国特許第6,727,873号は、切替可能なセルの3つの層が反射性背景上に設置された積層電気泳動ディスプレイを説明している。着色粒子が、横方向に移動される(国際出願第WO2008/065605号参照)か、または縦および横方向の動きの組み合わせを使用してマイクロピット内に隔離される、類似のディスプレイが公知である。どちらの場合においても、各層は、着色粒子をピクセルベースで集中または分散させるように働く電極とともに提供され、その結果、3つの層はそれぞれ、薄膜トランジスタ(TFT)の層(TFTの3つの層のうちの2つは実質的に透明でなければならない)と光透過性対電極とを必要とする。そのような電極の複雑な配列は、製造費用がかかり、当該技術分野の現在の状況では、ピクセル電極の適切に透明なプレーンを提供することは、特に、ディスプレイの白色状態が電極の複数の層を通して視認されなければならないため、困難である。多層ディスプレイはまた、ディスプレイの積層の厚さがピクセルサイズに近づくか、またはそれを超過するため、視差の問題を有する。
【0027】
米国出願公開第2012/0008188号および第2012/0134009号は、独立してアドレス指定可能なピクセル電極と共通の光透過性フロント電極とを備える単一のバックプレーンを有する、多色電気泳動ディスプレイを説明している。バックプレーンとフロント電極との間に、複数の電気泳動層が配置される。これらの出願に説明されるディスプレイは、任意のピクセル場所で原色(赤色、緑色、青色、シアン色、マゼンタ色、黄色、白色、および黒色)のいずれかをレンダリングすることが可能である。しかしながら、1セットのアドレス指定電極間に設置される複数の電気泳動層の使用に対して不利点が存在する。特定の層内の粒子が経験する電場は、同一の電圧でアドレス指定される単一の電気泳動層の場合よりも低い。それに加えて、視認表面に最近傍の電気泳動層における光学的損失(例えば、光の散乱または不要な吸収によって引き起こされる)は、その下部の電気泳動層に形成される画像の外観に影響を及ぼす場合がある。
【0028】
単一の電気泳動層を使用するフルカラー電気泳動ディスプレイを提供する試みが行われてきた。例えば、米国特許出願公開第2013/0208338号は、クリアかつ無色または着色溶媒中に分散された1つまたは2つのタイプの顔料粒子を含む電気泳動流体を備え、電気泳動流体が共通電極と複数の駆動電極との間に狭入される、カラーディスプレイについて説明している。駆動電極は、背景層を暴露するために、ある距離に保たれる。米国特許出願公開第2014/0177031号は、反対電荷極性を担持し、2つの対比色の2つのタイプの荷電粒子を含む電気泳動流体で充填された、ディスプレイセルを駆動するための方法について説明している。2つのタイプの顔料粒子は、着色溶媒または非荷電または若干荷電された着色粒子がその中に分散された溶媒中に分散される。本方法は、完全駆動電圧の約1〜約20%の駆動電圧を印加することによって、ディスプレイセルを駆動し、溶媒の色または非荷電または若干荷電された着色粒子の色を表示するステップを含む。米国特許出願公開第2014/0092465号および第2014/0092466号は、電気泳動流体と、電気泳動ディスプレイを駆動するための方法とについて説明している。流体は、第1、第2、および第3のタイプの顔料粒子を備え、全て、溶媒または溶媒混合物中に分散される。第1および第2のタイプの顔料粒子は、反対電荷極性を担持し、第3のタイプの顔料粒子は、第1または第2のタイプの電荷レベルの約50%未満である電荷レベルを有する。3つのタイプの顔料粒子は、異なるレベルの閾値電圧、または異なるレベルの移動性、または両方を有する。
【0029】
米国特許出願公開第2007/0031031号は、各ピクセルが白色、黒色、および1つの他の色を表示可能である、ディスプレイ媒体上に画像を表示するために、画像データを処理するための画像処理デバイスについて説明している。米国特許出願公開第2008/0151355号、第2010/0188732号、および第2011/0279885号は、可動粒子が多孔性構造を通して移動する、カラーディスプレイについて説明している。米国特許出願公開第2008/0303779号および第2010/0020384号は、異なる色の第1、第2、および第3の粒子を備える、ディスプレイ媒体について説明している。第1および第2の粒子は、凝集体を形成することができ、より小さい第3の粒子は、凝集された第1の粒子と第2の粒子との間に残された開口を通して移動することができる。米国特許出願公開第2011/0134506号は、一対の基板の間に封入された複数のタイプの粒子を含む、電気泳動ディスプレイ要素であって、基板のうちの少なくとも1つが、半透明であって、個別の複数のタイプの粒子がそれぞれ、同一極性で荷電され、光学特性が異なり、かつ移動するための移動速度および/または電場閾値のいずれかが異なり、半透明ディスプレイ側電極が、半透明基板が配置される、基板側に提供され、第1の裏側電極が、ディスプレイ側電極に面する他方の基板側に提供され、第2の裏側電極が、ディスプレイ側電極に面する他方の基板側に提供される、電気泳動ディスプレイ要素と、複数のタイプの粒子からの最速移動速度を有する粒子のタイプまたは複数のタイプの粒子からの最低閾値を有する粒子のタイプが、異なるタイプの粒子のそれぞれずつ順に、第1の裏側電極または第2の裏側電極に移動され、次いで、第1の裏側電極に移動される粒子が、ディスプレイ側電極に移動されるように、ディスプレイ側電極、第1の裏側電極、および第2の裏側電極に印加される電圧を制御する、電圧制御区分とを含む、ディスプレイデバイスについて説明している。米国特許出願公開第2011/0175939号、第2011/0298835号、第2012/0327504号、および第2012/0139966号は、複数の粒子の凝集および閾値電圧に依拠にする、カラーディスプレイについて説明している。米国特許出願公開第2013/0222884号は、荷電基含有ポリマーおよび着色剤を含有する着色粒子と、着色粒子に付着され、共重合成分として、反応性モノマーおよびモノマーの具体的基から選択された少なくとも1つのモノマーを含有する、分岐型シリコーンベースのポリマーとを含有する、電気泳動粒子について説明している。米国特許出願公開第2013/0222885号は、分散媒体と、分散媒体中に分散され、電場内を移動する、着色電気泳動粒子群と、移動せず、電気泳動粒子群のものと異なる色を有する、非電気泳動粒子群と、中性極性基および疎水性基を有し、分散液体全体に基づいて、約0.01〜約1質量%の比率で分散媒体中に含有される、化合物とを含有する、電気泳動ディスプレイのための分散液体について説明している。米国特許出願公開第2013/0222886号は、着色剤および親水性樹脂を含むコア粒子と、コア粒子のそれぞれの表面を被覆し、7.95(J/cm
3)
1/2またはそれを上回る溶解度パラメータに差異を伴う疎水性樹脂を含有する、シェルとを含有する、浮遊粒子を含む、ディスプレイのための分散液体について説明している。米国特許出願公開第2013/0222887号および第2013/0222888号は、規定された化学組成物を有する電気泳動粒子について説明している。最後に、米国特許出願公開第2014/0104675号は、電場に応答して移動する第1および第2の着色粒子と、分散媒体とを含み、第2の着色粒子が、第1の着色粒子より大きい直径および第1の色粒子の荷電特性と同一の荷電特性を有し、ディスプレイの単位面積あたりの第1の着色粒子の電荷量Csと第2の着色粒子の電荷量Clとの比(Cs/Cl)が5未満またはそれに等しい、粒子分散について説明している。前述のディスプレイのうちのいくつかは、フルカラーを提供するが、その代わり、長期かつ煩雑な対処方法を要求する。
【0030】
米国特許出願公開第2012/0314273号および第2014/0002889号は、絶縁液体中に含まれる複数の第1および第2の電気泳動粒子を含み、第1および第2の粒子が、相互と異なる異なる荷電特性を有する、電気泳動デバイスであって、さらに、絶縁液体内に含まれ、線維構造から形成される、多孔性層を備える、デバイスについて説明している。
【0032】
本プロセスによって粒子上に形成されるポリマーは、荷電または荷電可能基を含むことが好ましく、これは、そのような基が電気泳動粒子上の電荷を制御する際に有用であるためである。電気泳動粒子上の電荷は、通常、電荷制御剤(CCA)を電気泳動媒体に添加することによって制御される。多くの実施形態では、CCAは、粒子に吸着し、その上の電荷を変動させる、界面活性剤である。しかしながら、本発明は、吸着されるCCAに限定されず、荷電粒子および所望の性能を与えるCCAを含む、任意の混合物が、好適である。例えば、CCAは、粒子の中に吸着された荷電粒子と錯体を形成してもよい、またはそれらは、粒子の表面に共有結合されてもよい。粒子およびCCAは、電荷錯体中に存在する、またはファンデルワールス力を介して緩く関連付けられてもよい。
【0033】
電荷制御剤は、多くの場合、あまり良く理解されていない非制御プロセスによって、粒子を荷電させ、電気泳動媒体の望ましくない高伝導性につながり得る。また、電荷制御剤は、粒子上に物理的にのみ吸着され、そこに結合されないため、条件の変化は、粒子からの電荷制御剤の部分的または完全な脱着を生じさせ、粒子の電気泳動特性における結果として生じる望ましくない変化を伴い得る。脱着された電荷制御剤は、電気泳動媒体内で他の表面上に再吸着し得、そのような再吸着は、付加的問題を生じさせる潜在性を有する。
【0034】
電荷制御剤の使用は、電荷制御剤が一方または両方のタイプの電気泳動粒子の表面上に吸着し得る、二重粒子電気泳動媒体では、特に困難である。実際、本発明者らは、2つのタイプの粒子が反対極性の電荷を担持するタイプであることが意図される、二重粒子電気泳動媒体への電荷制御剤の添加が、一方のタイプのいくつかの粒子が正に荷電され、同一タイプの他の粒子が負に荷電される結果をもたらし、したがって、媒体を本質的に、その意図される目的のために役に立たなくする場合を観察している。カプセル化された二重粒子電気泳動媒体の場合、また、電荷制御剤がカプセル壁上に吸着されることも可能性として考えられる。荷電基を結合されたポリマー内に提供することは、これらの荷電基が粒子上に固定されたままであって、本質的に、脱着傾向を伴わない(ポリマー鎖自体が、すでに議論されたように、脱着可能にされない限り)ことを確実にする。
【0035】
前述のように、第四級アミンおよび少なくとも10個の炭素原子の長さのモノマーを含む不飽和ポリマー尾部を含む、電荷制御剤が、好ましい。第四級アミンは、有機分子、例えば、アルキル基またはアリール基に結合される第四級アンモニウムカチオン[NR
1R
2R
3R
4]
+を含む。第四級アミン電荷制御剤は、典型的には、商標名ARQUAD下でAkzo Nobelによって供給される脂肪酸第四級アミン系等の荷電アンモニウムカチオンに付着された長い非極性尾部を含む。第四級アミン電荷制御剤は、精製形態で購入されてもよい、または電荷制御剤は、第四級アミン電荷制御剤を形成した反応生成物として購入されてもよい。例えば、SOLSPERSE17000(Lubrizol Corporation)が、12−ヒドロキシ−オクタデカン酸ホモポリマーとN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミンおよび重硫酸メチルの反応生成物として購入されてもよい。
【0036】
好ましい実施形態では、第四級アミン電荷制御剤の非極性尾部は、不飽和である、すなわち、それらは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する。予想外にも、不飽和第四級アミン電荷制御剤が、電気泳動媒体の中に組み込まれると、媒体は、特に、低温において、切替速度を改良した。いくつかの実施形態では、第四級アミン電荷制御剤の非極性尾部は、ポリエステル等のポリマーまたはオリゴマー化合物から形成される。いくつかの事例では、ポリエステルは、カルボン酸、例えば、第二級アミンを有する脂肪酸の縮合反応を介して形成されてもよい。そのような事例では、縮合反応は、飽和または不飽和であり得る、反復ペンダント炭素鎖を伴う、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合(すなわち、不飽和)を有する反復単位をもたらすであろう。そのような不飽和ポリマー第四級アミン電荷制御剤は、商標名SOLSPERSE19000およびSOLSPERSE16000下でLubrizolから市販されている。尾部が形成されるモノマーの全長は、少なくとも10個の炭素原子の長さ、例えば、14個の炭素原子の長さ、例えば、18個の炭素原子の長さである。電荷制御剤は、全100gの荷電粒子に対して1gを上回る電荷制御剤の濃度で電気泳動媒体に添加されてもよい。例えば、電荷制御剤と荷電粒子との比は、1:30(重量/重量)、例えば、1:25(重量/重量)、例えば、1:20(重量/重量)であってもよい。電荷制御剤は、12,000グラム/モルを上回る、例えば、13,000グラム/モルを上回る、例えば、14,000グラム/モルを上回る、例えば、15,000グラム/モルを上回る、例えば、16,000グラム/モルを上回る、例えば、17,000グラム/モルを上回る、例えば、18,000グラム/モルを上回る、例えば、19,000グラム/モルを上回る、例えば、20,000グラム/モルを上回る、例えば、21,000グラム/モルを上回る平均分子量を有してもよい。例えば、電荷制御剤の平均分子量は、14,000グラム/モル〜22,000グラム/モル、例えば、15,000グラム/モル〜20,000グラム/モルであってもよい。いくつかの実施形態では、電荷制御剤は、約19,000グラム/モルの平均分子量を有する。
【0037】
付加的電荷制御剤が、良好な電気泳動移動性を電気泳動粒子に提供するために、ポリマーコーティング内に荷電基を伴って、または伴わずに、使用されてもよい。安定化剤が、電気泳動粒子の凝集を防止し、かつ電気泳動粒子がカプセル壁上に不可逆的堆積することを防止するために使用されてもよい。いずれの成分も、広範囲の分子量(低分子量、オリゴマー、またはポリマー)に及ぶ材料から構築されることができ、単一純化合物または混合物であってもよい。随意の電荷制御剤または電荷指向剤が、使用されてもよい。これらの成分は、典型的には、低分子量界面活性剤、重合剤、または1つまたはそれを上回る成分の混成物から成り、電気泳動粒子上の電荷の符号および/または大きさを安定化または別様に修正する役割を果たす。関連し得る、付加的顔料性質は、粒子サイズ分布、化学組成、および耐光性である。
【0038】
電荷補助剤もまた、添加されてもよい。これらの材料は、電荷制御剤または電荷指向剤の有効性を増加させる。電荷補助剤は、ポリヒドロキシ化合物またはアミノアルコール化合物であってもよく、好ましくは、重量あたり少なくとも2%の量で懸濁流体中に可溶性である。少なくとも2個のヒドロキシル基を含有する、ポリヒドロキシ化合物の実施例として、限定ではないが、エチレングリコール、2,4,7,9−テトラメチルデカン−4,7−ジオール、ポリ(プロピレングリコール)、ペンタエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、ペンタエリスリトール、グリセロールトリ(12−ヒドロキシステアレート)、プロピレングリセロールモノヒドロキシステアレート、およびエチレングリコールモノヒドロキシステアレートが挙げられる。同一分子中に少なくとも1個のアルコール官能基と1個のアミン官能基を含有するアミノアルコール化合物の実施例として、限定ではないが、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、エタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール、o−アミノフェノール、5−アミノ−1−ペンタノール、及びテトラ(2−ヒドロキシエチル)エチレン−ジアミンが挙げられる。電荷補助剤は、好ましくは、粒子質量の約1〜約100ミリグラム/グラム(「mg/g」)、より好ましくは、約50〜約200mg/gの量で懸濁流体中に存在する。
【0039】
上記に説明される不飽和電荷制御剤の使用に加え、一方が、荷電または荷電可能基(または最終的に所望の荷電または荷電可能基を生産するように処理されるであろう基)を担持し、他方が、重合可能または重合開始基を担持する、2つの試薬の混合物を用いて粒子を処理することが非常に便宜的であり得る(シリカコーティング等の任意の予備処理後)。望ましくは、2つの試薬は、反応条件にわずかな変動が生じる場合、試薬が粒子と反応する相対的率が類似様式で変化し、荷電または荷電可能基の数と重合可能または重合開始基の数との間の比が実質的に一定のままであろうように粒子表面と反応する、同一または本質的に同一官能基を有する。この比は、変動し、混合物中で使用される2つの(またはそれを上回る)試薬の相対的モル量を変動させることによって制御されることができることを理解されたい。電荷可能部位を提供するが、重合可能または重合開始基を提供しない、試薬の実施例として、3−(トリメトキシシリル)プロピルアミン、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ジエチレントリアミン、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレン、および1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ウレアが挙げられる。全てのこれらのシラン試薬は、United Chemical Technologies, Inc.(Bristol, Pa., 19007)から購入され得る。すでに述べられたように、重合可能基を提供するが、荷電または荷電可能基を提供しない、試薬の実施例は、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートである。
【0040】
形成される荷電粒子CCA錯体は、前述の全てのタイプの電気泳動ディスプレイ(すなわち、単一粒子、反対電荷二重粒子、同一極性二重粒子、およびポリマー分散)における利点と併用されてもよい。しかしながら、本発明の荷電粒子CCA錯体は、すでに述べられたように、反対極性の2つのタイプの粒子が、本質的に、相互に向かって誘引され、故に、凝集体を形成する強い傾向を有し、ディスプレイの電気泳動動作に干渉し得るため、安定化させることが特に困難である、反対電荷二重粒子電気泳動ディスプレイにおいて特に有用である。説明される荷電粒子CCA錯体は、可変透過性窓において使用されるような1つのみのタイプの粒子を有する、電気泳動媒体を構築するために使用されてもよい。説明される荷電粒子CCA錯体は、黒色/白色ディスプレイ、すなわち、黒色粒子および白色粒子を含むものにおいて使用されるように電気泳動媒体を構築するために使用されてもよい。説明される荷電粒子CCA錯体は、すなわち、例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つの異なるタイプの粒子を含む、カラーディスプレイにおいて使用されるように電気泳動媒体を構築するために使用されてもよい。例えば、粒子が、黒色、白色、および赤色または黒色、白色、および黄色を含む、ディスプレイが、構築されてもよい。代替として、ディスプレイは、赤色、緑色、および青色粒子、またはシアン色、マゼンタ色、および黄色粒子、または赤色、緑色、青色、および黄色粒子を含んでもよい。
【0041】
顔料粒子上へのポリマーの提供は別として、本発明の電気泳動媒体は、前述のMassachusetts Institute of TechnologyおよびE Ink Corporation特許および出願におけるものと同一構成要素および製造技法を採用してもよい。
【0043】
すでに示されたように、粒子を含有する懸濁流体は、密度、屈折率、および溶解度等の性質に基づいて選定されるべきである。好ましい懸濁流体は、低誘電定数(約2)、高体積抵抗率(約1015ohm−cm)、低粘度(5センチストーク(「cst」)未満)、低毒性および環境影響、低水溶度(10百万分率(「ppm」)未満)、高比重(1.5を上回る)、高沸点(90℃を上回る)、および低屈折率(1.2未満)を有する。
【0044】
非極性流体の選択肢は、化学的不活性、電気泳動粒子に合致する密度、または電気泳動粒子および境界カプセル(カプセル化された電気泳動ディスプレイの場合)の両方との化学的適合性の懸念に基づいてもよい。流体の粘度は、粒子の移動が所望されるときは低くあるべきである。懸濁流体の屈折率はまた、粒子のものに実質的に合致してもよい。本明細書で使用されるように、懸濁流体の屈折率は、その個別の屈折率間の差異が約ゼロ〜約0.3、好ましくは、約0.05〜約0.2である場合、粒子のものに「実質的に合致」する。
【0045】
ハロゲン化有機溶媒、飽和直鎖または分鎖炭化水素、シリコーン油、および低分子量ハロゲン含有ポリマー等の非極性有機溶媒は、いくつかの有用な非極性流体である。非極性流体は、単一流体を含んでもよい。しかしながら、非極性流体は、多くの場合、その化学および物理的性質を調整するために、1つを上回る流体の混成物であろう。さらに、非極性流体は、電気泳動粒子または境界カプセルの表面エネルギーまたは電荷を修飾するための付加的表面修飾剤を含有してもよい。マイクロカプセル化プロセスのための反応物または溶媒(例えば、油溶性モノマー)もまた、懸濁流体中に含有されることができる。付加的電荷制御剤もまた、懸濁流体に添加されることができる。
【0046】
有用な有機溶媒として、限定ではないが、エポキシド、例えば、デカンエポキシドおよびドデカンエポキシド、ビニルエーテル、例えば、シクロヘキシルビニルエーテルおよびDecave(International Flavors & Fragrances, Inc.(New York, N.Y.)の登録商標)、および芳香族炭化水素、例えば、トルエンおよびナフタレンが挙げられる。有用なハロゲン化有機溶媒として、限定ではないが、テトラフルオロジブロモエチレン、テトラクロロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、1,2,4−トリクロロベンゼン、四塩化炭素が挙げられる。これらの材料は、高密度を有する。有用な炭化水素として、限定ではないが、ドデカン、テトラデカン、Isopar(登録商標)シリーズ(Exxon, Houston, TX)、Norpar(登録商標)(一連の通常のパラフィン液体)、Shell−Sol(登録商標)(Shell, Houston, TX)、およびSol−Trol(登録商標)(Shell)における脂肪族炭化水素、ナフサ、および他の石油溶媒が挙げられる。これらの材料は、通常、低密度を有する。シリコーン油の有用な実施例として、限定ではないが、オクタメチルシクロシロキサンおよび高分子量環状シロキサン、ポリ(メチルフェニルシロキサン)、ヘキサメチルジシロキサン、およびポリジメチルシロキサンが挙げられる。これらの材料は、通常、低密度を有する。有用な低分子量ハロゲン含有ポリマーとして、限定ではないが、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)ポリマー(Halogenated Hydrocarbon Inc., River Edge, NJ)、Galden(登録商標)(Ausimont, Morristown, NJからのパーフルオロ化エーテル)、またはdu Pont(Wilmington, Del)からのKrytox(登録商標)が挙げられる。好ましい実施形態では、懸濁流体は、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)ポリマーである。特に好ましい実施形態では、本ポリマーは、約2〜約10の重合度を有する。前述の材料の多くは、ある範囲の粘度、密度、および沸点において利用可能である。
【0047】
非極性流体は、カプセルの形成に先立って、小液滴に形成されることが可能でなければならない。小液滴を形成するためのプロセスは、フロースルージェット、膜、ノズル、またはオリフィス、および剪断ベースの乳化スキームを含む。小液滴の形成は、電場または音場によって補助されてもよい。界面活性剤およびポリマーが、乳剤タイプカプセル化の場合における液滴の安定化および乳化を補助するために使用されることができる。本発明のディスプレイにおける使用のための1つの表面活性剤は、ドデシル硫酸ナトリウムである。
【0048】
いくつかの実施形態では、非極性流体が、光学的に吸収性の色素を含むであろう。本色素は、流体中で可溶性でなければならないが、概して、カプセルの他の成分には不溶性であろう。色素材料の選択肢には、非常に融通性がある。色素は、純化合物または黒色を含む特定の色を達成するための色素の混成物であることができる。色素は、蛍光性であることができ、蛍光性質が粒子の位置に依存するディスプレイを生産するであろう。色素は、光活性であって、可視または紫外線光のいずれかの照射に応じて、別の色に変化する、または無色になり、光学応答を得るための別の手段を提供することができる。色素はまた、例えば、熱、光化学、または化学拡散プロセスによって重合可能であって、固体吸収ポリマーを境界シェルの内側に形成し得る。
【0049】
カプセル化された電気泳動ディスプレイにおいて使用され得る、多くの色素が存在する。ここで重要な性質は、耐光性、懸濁液体中における溶解度、色、およびコストを含む。これらの色素は、概して、アゾ、アントラキノン、およびトリフェニルメタンタイプの色素の種類から選定され、油相中におけるその溶解度を増加させ、粒子表面によるその吸着度を低減させるように、化学的に修飾されてもよい。
【0050】
電気泳動ディスプレイの当業者にすでに公知のいくつかの色素は、有用であることが証明されるであろう。有用なアゾ色素として、限定ではないが、Oil Red色素およびSudan RedおよびSudan Blackシリーズの色素が挙げられる。有用なアントラキノン色素として、限定ではないが、Oil Blue色素およびMacrolex Blueシリーズの色素が挙げられる。有用なトリフェニルメタン色素として、限定ではないが、Michler’s hydrol、Malachite Green、Crystal VioletおよびAuramine Oが挙げられる。
【0051】
一般に、荷電は、連続相に存在するある部分と粒子表面との間の酸−塩基反応として生じると考えられる。したがって、有用な材料は、そのような反応または当技術分野において公知の任意の他の荷電反応に関与可能なものである。
【0052】
粒子分散安定化剤が、カプセル壁への粒子凝集または付着を防止するために添加されてもよい。電気泳動ディスプレイにおける懸濁流体として使用される典型的な高抵抗率液体に関して、非水性界面活性剤が、使用されてもよい。これらとして、限定ではないが、グリコールエーテル、アセチレン性グリコール、アルカノールアミド、ソルビトール誘導体、アルキルアミン、第四級アミン、イミダゾリン、ジアルキルオキシド、およびスルホスクシネートが挙げられる。
【0053】
双安定電気泳動媒体が所望される場合、懸濁流体中に、約20,000を超える平均分子量を有するポリマーを含むことが望ましくあり得、本ポリマーは、本質的に、電気泳動粒子上に非吸着性である。ポリ(イソブチレン)は、本目的のために好ましいポリマーである。2002年4月2日に出願された米国特許出願第10/063,236号(公開第2002/0180687号(本同時係属中の出願の全開示は、参照することによって本明細書に組み込まれる))および対応する国際出願第PCT/US02/10267号(公開第WO02/079869)を参照されたい。
【0055】
内相のカプセル化は、いくつかの異なる方法で遂行されてもよい。マイクロカプセル化のための多数の好適な手順が、Microencapsulation, Processes and Applications(I. E. Vandegaer編),Plenum Press, New York, NY(1974)およびGutcho、Microcapsules and Microencapsulation Techniques, Nuyes Data Corp., Park Ridge, N.J.(1976)の両方に詳述される。プロセスは、いくつかの一般的なカテゴリ、すなわち、界面重合、原位置重合、物理的プロセス、例えば、共押出成形および他の相分離プロセス、液体内硬化、および単純な/複雑なコアセルベーションに分類され、これらの全ては、本発明に適用され得る。
【0056】
多数の材料およびプロセスが、本発明のディスプレイの調合に有用であることが証明されるはずである。カプセルを形成する単純なコアセルベーションプロセスのための有用な材料として、限定ではないが、ゼラチン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアセテート)、およびセルロース誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースが挙げられる。複雑なコアセルベーションプロセスのための有用な材料として、限定ではないが、ゼラチン、アカシア、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、加水分解スチレン無水物コポリマー、寒天、アルギネート、カゼイン、アルブミン、メチルビニルエーテル−co−無水マレイン酸、およびセルロースフタレートが挙げられる。相分離プロセスのための有用な材料として、限定ではないが、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリブチルメタクリレート)、エチルセルロース、ポリ(ビニルピリジン)、およびポリアクリロニトリルが挙げられる。原位置重合プロセスのための有用な材料として、限定ではないが、アルデヒド、メラミン、または尿素を伴うポリヒドロキシアミドおよびホルムアルデヒド、メラミンまたは尿素とホルムアルデヒドとの縮合体の水溶性オリゴマー、およびビニルモノマー、例えば、スチレン、メチルメタクリレート(MMA)、およびアクリロニトリルが挙げられる。最後に、重合プロセスのための有用な材料として、限定ではないが、ジアシルクロリド、例えば、セバコイル、アジポイル、およびジアミンもしくはポリアミンまたはジアルコールもしくはポリアルコール、およびイソシアネートが挙げられる。有用な乳化重合材料として、限定ではないが、スチレン、ビニルアセテート、アクリル酸、ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、およびブチルメタクリレートが挙げられ得る。
【0057】
生産されたカプセルは、硬化性担体の中に分散され、従来の印刷およびコーティング技法を使用して大型かつ恣意的に成形または湾曲された表面上に印刷またはコーティングされ得る、インクをもたらしてもよい。
【0058】
本発明の文脈では、当業者は、所望のカプセル性質に基づいて、カプセル化手順および壁材料を選択するであろう。これらの性質は、カプセル半径の分布、カプセル壁の電気、機械、拡散、および光学性質、およびカプセルの内相との化学的適合性を含む。
【0059】
カプセル壁は、概して、高電気抵抗率を有する。比較的に低抵抗率を伴う壁を使用することも可能であるが、これは、比較的により高いアドレス指定電圧を要求する際に性能を限定し得る。カプセル壁はまた、機械的に強固であるべきである(但し、完成したカプセル粉末がコーティングのために硬化性ポリマー結合剤中に分散されるべき場合、機械的強度は、それほど重要ではない)。カプセル壁は、概して、多孔性であるべきではない。しかしながら、多孔性カプセルを生産するカプセル化手順を使用することを所望する場合、これらは、後処理ステップ(すなわち、第2のカプセル化)においてオーバーコーティングされることができる。さらに、カプセルが硬化性結合剤中に分散されるべき場合、結合剤は、細孔を閉鎖する役割を果たすであろう。カプセル壁は、光学的にクリアであるべきである。しかしながら、壁材料は、カプセルの内相(すなわち、懸濁流体)またはカプセルが分散されるべき結合剤の屈折率に合致するように選定され得る。いくつかの用途(例えば、2つの固定された電極間の嵌入)に関して、単分散カプセル半径が、望ましい。
【0060】
本発明に好適なカプセル化技法は、水中油滴型乳剤の水相中、負に荷電したカルボキシル置換の直鎖炭化水素高分子電解質材料の存在下での、尿素とホルムアルデヒドとの間の重合を伴う。結果として生じるカプセル壁は、尿素/ホルムアルデヒドコポリマーであって、これは、個別に内部相を取り囲む。カプセルは、クリアであって、機械的に強固であって、かつ良好な抵抗率性質を有する。
【0061】
原位置重合の関連技法は、水中油滴型乳剤を利用し、これは、電気泳動流体(すなわち、顔料粒子の懸濁液を含有する誘電性液体)を水性環境中に分散させることによって形成される。モノマーが重合すると、水性相に対してよりも内相に対してより高い親和性を伴うポリマーを形成し、したがって、乳化された油状液滴の周囲に凝縮する。1つの原位置重合プロセスでは、尿素およびホルムアルデヒドが、ポリ(アクリル酸)の存在下で凝縮する(例えば、米国特許第4,001,140号参照)。米国特許第4,273,672号に説明される他のプロセスでは、水溶液中に媒介される任意の種々の架橋剤が、微視的な油状液滴の周囲に堆積される。そのような架橋剤は、アルデヒド、特に、ホルムアルデヒド、グリオキサール、またはグルタルアルデヒド、ミョウバン、ジルコニウム塩、およびポリイソシアネートを含む。
【0062】
コアセルベーションアプローチもまた、水中油滴型乳剤を利用する。1つまたはそれを上回るコロイドが、温度、pH、および/または相対的濃度の制御を通して、水相からコアセルベート(すなわち、凝集)し、油状液滴の周囲にシェルとして堆積され、それによって、マイクロカプセルを生成する。コアセルベーションに好適な材料は、ゼラチンおよびアラビアゴムを含む。例えば、米国特許第2,800,457号を参照されたい。
【0063】
界面重合アプローチは、電気泳動組成物中の油溶解性モノマーの存在に依拠し、これは、再び、水相中の乳剤として存在する。微小な疎水性液滴中のモノマーは、水相に導入されたモノマーと反応し、液滴と周囲水性媒体との間の界面で重合し、液滴の周囲にシェルを形成する。結果として生じる壁は、比較的に薄く、浸透性であり得るが、本プロセスは、ある他のプロセスの高温特性を要求せず、したがって、誘電性液体の選定の観点からより優れた融通性をもたらす。
【0064】
付加的材料が、カプセル化された媒体に添加され、電気泳動ディスプレイの構造を改良してもよい。例えば、コーティング助剤が、コーティングされたまたは印刷された電気泳動インク材料の均一性および品質を改良するために使用されることができる。湿潤剤が、コーティング/基板界面の界面張力を調節するために、かつ液体/空気表面張力を調節するために添加されてもよい。湿潤剤として、限定ではないが、アニオン性およびカチオン性界面活性剤、および非イオン性種、例えば、シリコーンまたはフルオロポリマーベースの材料が挙げられる。分散剤が、カプセルと結合剤との間の界面張力を修飾し、凝集および粒子沈降の制御を提供するために使用されてもよい。
【0065】
他の実施形態では、電気泳動媒体は、微小加工されるセル、すなわち、商標名MICROCUP下でE Inkによって加工されるようなマイクロセル内に含有され得る。いったんマイクロセルが電気泳動媒体で充填されると、マイクロセルは、シールされ、電極(または電極アレイ)が、マイクロセルに添着され、充填されたマイクロセルは、電場で駆動され、ディスプレイを生成する。
【0066】
例えば、米国特許第6,930,818号に説明されるように、オス型金型が、伝導性基板を型押するために使用されてもよく、それに応じて、透明導体フィルムが形成される。熱可塑性または熱硬化性前駆体の層が、次いで、導体フィルム上にコーティングされた。熱可塑性または熱硬化性前駆体層は、ローラ、プレート、またはベルトの形態におけるオス型金型によって、熱可塑性または熱硬化性前駆体層のガラス遷移温度より高い温度でエンボス加工される。いったん形成されると、金型は、前駆体層が固化され、マイクロセルのアレイを露見させる間またはその後、離型される。前駆体層の固化は、冷却や、放射、熱、または湿気による架橋結合によって遂行されてもよい。熱硬化性前駆体の硬化が、UV照射によって遂行される場合、UVは、2つの図に示されるように、ウェブの底部または上部から透明導体フィルム上に照射し得る。代替として、UV灯が、金型の内側に設置されてもよい。この場合、金型は、UV光が事前にパターン化されたオス型金型を通して熱硬化性前駆体層上に照射することを可能にするために透明でなければならない。
【0067】
マイクロセルの調製のための熱可塑性または熱硬化性前駆体は、多官能性アクリレートまたはメタクリレート、ビニルエーテル、エポキシドおよびそのオリゴマー、ポリマー、および同等物であってもよい。可撓性を付与する架橋可能オリゴマー、例えば、ウレタンアクリレートまたはポリエステルアクリレートもまた、通常、エンボス加工したマイクロカップの耐屈曲性を改良するために添加される。組成物は、ポリマー、オリゴマー、モノマー、および添加剤、またはオリゴマー、モノマー、および添加剤のみを含有してもよい。
【0068】
一般に、マイクロセルは、任意の形状であることができ、そのサイズおよび形状は、変動し得る。マイクロセルは、1つのシステムにおいて実質的に均一サイズおよび形状であってもよい。しかしながら、光学効果を最大限にするために、異なる形状およびサイズの混合物を有するマイクロセルが、生産されてもよい。例えば、赤色の分散液で充填されるマイクロセルは、緑色マイクロセルまたは青色マイクロセルと異なる形状またはサイズを有してもよい。さらに、ピクセルは、異なる色の異なる数のマイクロセルから成ってもよい。例えば、ピクセルは、いくつかの小緑色マイクロセルと、いくつかの大赤色マイクロセルと、いくつかの小青色マイクロセルとから成ってもよい。3つの色に対して同一形状および数を有する必要はない。
【0069】
マイクロセルの開口部は、丸形、正方形、長方形、六角形、または任意の他の形状であってもよい。開口部間の仕切面積は、好ましくは、望ましい機械的性質を維持しながら、高色飽和およびコントラストを達成するために、小さいままである。その結果、ハニカム形状の開口部が、例えば、円形開口部より好ましい。
【0070】
反射電気泳動ディスプレイに関して、各個々のマイクロセルの寸法は、約10
2〜約5×10
5μm
2、好ましくは、約10
3〜約5×10
4μm
2の範囲内であり得る。マイクロセルの深度は、約3〜約100ミクロン、好ましくは、約10〜約50ミクロンの範囲内である。開口部と壁の比率は、約0.05〜約100、好ましくは、約0.4〜約20の範囲内である。開口部の距離は、通常、開口部の縁間で約15〜約450ミクロン、好ましくは、約25〜約300ミクロンの範囲内である。
【0071】
まとめると、多数の変更および修正が、本発明の範囲から逸脱することなく、上記に説明される本発明の具体的実施形態に行われることができることが当業者に明白となるであろう。故に、前述の説明全体は、限定的意味ではなく、例証的意味で解釈されるべきである。
【実施例】
【0072】
ここで、本発明の好ましい電気泳動媒体の詳細およびこれらの好ましい電気泳動媒体を駆動するためのプロセスを示すために実施例が、与えられるが、例証にすぎない。これらの実施例において使用される粒子は、以下の通りである。
【0073】
白色顔料(WP)は、米国特許第7,002,728号に説明されるように、メタクリル酸ラウリル(LMA)モノマーを含むポリマー材料が付着される、シラノール官能化光散乱顔料(二酸化チタン)である。他の白色(または着色)顔料も、本発明と併用されることができることを理解されたい。
【0074】
黒色顔料(BP)は、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−N′−(4−ビニルベンジル)エチレンジアミンビス塩酸塩(United Chemical Technologies)を使用し、米国特許第6,822,782号(実施例26)に説明されるものと実質的に同一手順を使用して表面官能化された亜クロム酸銅ベースの無機顔料である。他の黒色(または着色)顔料も、本発明と併用されることができることを理解されたい。
【実施例1】
【0075】
実施例1−内相調製
【0076】
100gの内相が、以下の成分をプラスチックボトル内で混合を用いて組み合わせることによって調製される。
【表1-1】
【表1-2】
【0077】
調合物S16kおよびS19kは、不飽和ポリマー尾部を有する電荷制御剤の商業用調合物(SOLSPERSE16000およびSOLSPERSE19000;Lubrizol Corporation, Wickliffe,OH)に対応する。S17k調合物1−3は、飽和ポリマー尾部を有する電荷制御剤の商業用調合物(SOLSPERSE17000;Lubrizol)に対応する。電荷制御剤は全て、顔料の表面と錯体を形成する、第四級アミン頭部基を備える。いくつかの実施形態では、第四級アミン頭部基は、顔料の表面に吸着され、いくつかの実施形態では、第四級アミン頭部基は、顔料の表面に共有結合され、いくつかの実施形態では、第四級アミン頭部基は、反対電荷に起因して、顔料と関連付けられる。表1における調合物は、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、亜硝酸塩、および/または硝酸塩等の付加的電荷安定化剤を含んでもよい。
【実施例2】
【0078】
実施例2−内相調合物の伝導性およびレオロジー
【0079】
S17k調合物#1、S16k調合物、およびS19k調合物が、粘度および伝導性に関して試験された。粘度は、液体窒素の蒸発に伴って冷却される強制対流オーブン内陥凹付き同心シリンダを使用して、Ares G2 Rheometer(TA Instruments, New Castle, DE)上で測定された。
図1におけるデータは、2℃/分の温度ランプに対応する。
図1に見られるように、調合物の粘度は、−20℃〜25℃の範囲に関して非常に類似していた。しかしながら、約−20℃を下回ると、不飽和尾部基を含むS19k調合物とは対照的に、S17k#1調合物の粘度に顕著な増加が認められた。S19k調合物と異なる重量の不飽和尾部基を含むS16k調合物もまた、約−20℃では、粘度に著しい増加を示さなかった(データは
図1に図示せず)。
【0080】
調合物の物理化学的性能は、電気泳動媒体(ISOPAR E;ExxonMobilChemicals, Spring, TX)の飽和(または不飽和)尾部基と非極性流体との間の相互作用のみに起因するわけではないと考えられた。むしろ、媒体の性能は、非極性流体、荷電粒子、および電荷制御剤間の複合的相互作用であると考えられる。
図2に示されるように、SOLSPERSE19k(不飽和尾部)を含む調合物は、類似装填レベルにおけるSOLSPERSE17k(飽和尾部)を含む調合物よりはるかに高い伝導性を有していた。類似傾向はまた、SOLSPERSE16k(不飽和尾部)でも認められた(データは
図2に図示せず)。飽和および不飽和電荷制御剤間の伝導性の著しい差異は、電気泳動媒体中の優勢電荷担体が全ての調合物において同じレベルで装填される荷電顔料であるため、予期されなかった。伝導性において観察された傾向は、顔料の増加した移動性が、荷電粒子と伝導性測定と関連付けられた瞬間電場の整合を促進し得るため、粘度に観察される変化(
図1)に関連し得る。根底の物理的理由にかかわらず、電気泳動媒体間の伝導性の差異は、結果として生じる電気泳動ディスプレイの安定性に影響を及ぼすであろう。故に、不飽和電荷制御剤の実際の装填は、以下に説明される分析のために低減された(飽和電荷制御剤の装填と比較して)。減少された装填は、表1に反映され、不飽和CCAは、飽和CCAの量の約半分で装填された。
【実施例3】
【0081】
実施例3−内相のカプセル化
【0082】
表1に説明される内相が、それらの米国特許第7,170,670号に説明されるものに類似する技法を使用して、ゼラチン/アカシアコアセルベート内にカプセル化された。脱イオン水(161.5g)が、循環温度制御槽を使用して25℃に保持される、500mL外被付き反応器に添加された。粉末状の酸処理されたブタ皮膚ゼラチン(10.66g)が、粉末状材料を反応器内の水の表面上に散在させることによって水和され、懸濁液が、0.5時間にわたって放置された。溶液は、1時間にわたって100rpmで撹拌された。本時間の間、温度が、プログラム可能水槽(プログラム可能コントローラを伴うHuber Ministat230)を使用して、25℃から42.5℃まで徐々に上昇された。撹拌率が、続いて、300rpmまで増加された。より高い回転速度において、162.73gの内相(実施例1)が、表面下添加漏斗を用いてゼラチン溶液に添加された。添加が、約1分の期間にわたって行われた。添加直後、撹拌率が、535rpmまで増加され、溶液が、25分にわたって撹拌された。カプセルサイズ分布(CSD)が、次いで、測定され、撹拌率が、所望に応じて、20〜70μmの分布を達成するように調節された。
【0083】
いったん所望のCSDが達成されると、377.8gの42.5℃水が、添加され、撹拌率が、675rpmまで調節され、13.7gの固体のアカシアが、添加された。ゼラチン、内相、およびアカシアを含む、完全な懸濁液が、90分にわたって675rpmで撹拌された。撹拌の完了に応じて、1.735gの10%酢酸が、反応器に添加された。次の14時間にわたって、ブログラム可能水槽が、混合物の温度を51℃まで徐々に上昇させ、次いで、それを10℃まで冷却した。いったん懸濁液が10℃に到達すると、水中4.86gの50%グルタルアルデヒド溶液が、撹拌しながら添加され、内相のカプセル化を完了した。結果として生じるカプセル化された材料は、沈殿によって単離され、脱イオン水で洗浄され、可変メッシュサイズのふるいを使用して、ふるい分けによって分類された。分布分析(Coulter Multisizer)は、結果として生じるカプセルが、約40μmの平均サイズを伴う30〜50μmの分布を有することを示した。
【実施例4】
【0084】
実施例4−試験パネル用のカプセル化された媒体のラミネート
【0085】
カプセル化された電気泳動媒体が、米国特許第8,199,395号に説明されるように、ラミネートのためにスラリーに変換された。pHが、1%水酸化アンモニウム溶液の添加に伴って8.0を上回って上昇された。カプセルスラリーが、次いで、重量結合剤あたり1部とカプセルの重量あたり8部の比率でポリウレタン結合剤と混合された。次に、水溶液中1%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)が、スラリー中0.002HPMCの所望の重量分率を伴って、増粘剤として添加された。TritonX−100(Sigma−Aldrich)が、0.001の所望の重量分率を伴って、界面活性剤として添加された。得られたスラリーは、1時間にわたって撹拌された。
【0086】
塩基性スラリーが、次いで、電極として作用するであろうインジウムスズ酸化物(ITO)でコーティングされた127μm厚のポリエステルフィルム上にバー状にコーティングされた。コーティングされたフィルムは、60℃で15分にわたってオーブンで乾燥され、本質的に単層のカプセルをITO上に含有する約30μm厚の電気泳動媒体を生産した。結果として生じるフィルムから、フロントプレーンラミネート(米国特許第6,982,178号参照)が、ドープされたポリウレタン接着剤をカプセル層上にラミネートすることによって生産された。フロントプレーンラミネートは、次いで、黒鉛の層をポリエステルフィルム上に備える区画化された黒鉛バックプレーンにラミネートされ、その電気光学性質、すなわち、
図3および4に示されるような測定のために好適な実験用電気光学ディスプレイを生産した。完成した電気光学ディスプレイは、5日にわたって温度25℃および相対湿度50%で平衡化された。
【実施例5】
【0087】
実施例5−光学状態測定
【0088】
実施例3に説明されるディスプレイの電気光学性質が、PR−650 SpectraScan Colorimeterを使用して測定された。サンプルが、種々の電圧、パルス長、および温度で駆動された。これらの試験では、ディスプレイは、その黒色および白色極限光学状態に繰り返し駆動され、次いで、その黒色または白色極限光学状態のいずれかに駆動された。光学状態の反射率が、最終駆動パルスから約3秒後(遷移効果が経過することを可能にする)、次いで、最終駆動パルスから2分後に測定され、2つの測定が、任意の画像不安定性(すなわち、画像内の双安定性を欠いている)を検出するために比較された。結果は、
図3に示される(「DS」は、暗状態を指し、「WS」は、白色状態を指す)。
図3におけるデータは、商業用調合物である、S17k調合物2および3に対応する。S16kおよびS19k調合物の性能は、類似するが、しかしながら、S19k調合物は、概して、S16kより優れていた。
【0089】
図3を見ると、不飽和電荷制御剤を含む電気泳動媒体が、飽和電荷制御剤を伴う電気泳動媒体より良好にディスプレイ性能を提供することが明白である。特に、S19k調合物は、ある範囲の温度にわたって、より明るい白色状態、より暗い暗状態、したがって、より広いダイナミックレンジを示した。加えて、白色閾値から黒色閾値への切替速度は、不飽和CCAを含む調合物でより高速であった。増加した切替速度は、特に、低温、例えば、約0℃で明白であった。全体として、55L
*ダイナミックレンジが、0℃では、15V、500ms駆動パルスを用いて達成され得る。10℃では、55L
*ダイナミックレンジが、15V、240ms駆動パルスを用いて達成され得る一方、60L
*ダイナミックレンジは、15V、500ms駆動パルスを用いて達成され得る。
【0090】
不飽和電荷制御剤を含む電気泳動媒体の改良された性能の付加的証拠が、
図4に示される。
図4は、いくつかの異なるパルス長を横断した−2℃、10℃、および25℃におけるS16k、S17k#1、およびS19k内相の電気光学性能を示す。これらの内相は、500mLスケールでカプセル化された。
図4から分かるように、−2℃では、不飽和CCA(S16k、S19k)と飽和CCA(S17k)との間の全てのパルス長を横断して暗状態性能(黒色正方形)に有意な差異が認められる。加えて、−2℃では、不飽和CCA調合物の白色状態性能(黒色円形)は、より長いパルス長において、飽和CCA調合物より明らかに良好であって、短パルス長ではほぼ同一である。不飽和および飽和CCA調合物間の差異は、10℃ではあまり顕著ではなく、25℃ではほぼ消失する。
【実施例6】
【0091】
実施例6−マイクロセルにおける光学状態測定
米国特許第7492505号に説明されるタイプの別個のマイクロセルアレイが、調製され、S19kおよびS17k(調合物#1)電気泳動媒体(実施例1に説明される)で充填され、シールされた。アレイは、上記の実施例5に説明されるように、光学性能のために評価された。試験が、20℃で行われた。マイクロセルディスプレイを15Vで5秒にわたって駆動すると、S19k電気泳動媒体を含むマイクロセルディスプレイは、S17k媒体を組み込むマイクロセルディスプレイより約15%白い(より高いL
*値)の白色状態を有することが見出された。同時に、S19k媒体を伴うマイクロセルディスプレイは、S17k調合物より約15%暗い(より低いL
*)の暗状態を呈した。故に、S19kを含むマイクロセルディスプレイのダイナミックレンジもまた、S17k調合物を含むマイクロセルディスプレイと比較して約15%改良した。本データは、不飽和電荷制御剤の組み込みを伴う電気泳動媒体の改良された性能は、使用されるカプセル化のタイプに著しく依存するものではないことを示唆する。
【0092】
本明細書に説明される電気泳動媒体内への不飽和CCAの組み込みは、これらの媒体を組み込む電気泳動ディスプレイの低温性能における有意義な改良をもたらすであろう。そのような電気泳動ディスプレイは、温帯気候における屋外用途で使用されるとき、より高速で更新し、より良好なコントラストを有するであろう。故に、不飽和CCAを含む調合物は、温帯気候におけるデジタル標識および電子リーダにおいて使用するために非常に好適であろう。そのような調合物はまた、低温(例えば、冷蔵容器)または広範囲の温度(例えば、自動車)で動作するように設計されるデバイスの中に組み込まれるディスプレイにおいて使用するためにも非常に好適であろう。