特許第6552753号(P6552753)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6552753チャネル推定を実行する方法及びデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552753
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】チャネル推定を実行する方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20190722BHJP
   H04B 7/005 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   H04L27/26 412
   H04B7/005
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-546060(P2018-546060)
(86)(22)【出願日】2017年7月6日
(65)【公表番号】特表2019-511169(P2019-511169A)
(43)【公表日】2019年4月18日
(86)【国際出願番号】JP2017025470
(87)【国際公開番号】WO2018012560
(87)【国際公開日】20180118
【審査請求日】2018年8月31日
(31)【優先権主張番号】16179086.0
(32)【優先日】2016年7月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】カステラン、ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】松木 優治
【審査官】 吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−259189(JP,A)
【文献】 特開2009−111973(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/125599(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0128995(US,A1)
【文献】 特表2007−515138(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2487851(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/26
H04B 7/005
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信元と受信機との間のチャネルのチャネル推定を実行する方法であって、周波数依存分散を有する雑音が、前記送信元から前記チャネルを通じて前記受信機によって受信されるシンボルのストリームに加えられ、前記受信機は、周波数領域において復調を実行し、該方法は、
前記受信されたシンボルのストリームから、パイロット位置においてシンボルを抽出するステップと、
パイロット位置における雑音分散を推定するステップと、
パイロット位置において抽出された前記シンボルから粗チャネル推定値を求めるステップと、
前記推定された雑音分散から重み付け係数を求めるステップと、
前記求められた重み付け係数によって前記粗チャネル推定値を重み付けするステップと、
前記重み付き粗チャネル推定値を所定の係数を用いてフィルタリングするステップであって、少なくとも1つの所定の係数は他の所定の係数と異なり、前記所定の係数は定雑音分散について求められる、ステップと、
前記求められた重み付け係数及び前記所定のフィルター係数から正規化係数を求めるステップと、
前記フィルタリングされた重み付き粗チャネル推定値を前記求められた正規化係数を用いて正規化するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記方法は、復調されたシンボルと、雑音電力推定値と、前記正規化された、フィルタリングされた重み付き粗チャネル推定値とを用いて、前記チャネルを等化するステップを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記重み付け係数は、
【数1】
に等しく、kはパイロット位置インデックスであり、σは、パイロット位置インデックスkの雑音プラス干渉体分散であり、σは、定雑音分散であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記所定の係数aikは、所定の行列Abasicの形態でグループ化され、該行列は、以下のように求められ、
【数2】
ここで、Σ(・)は、チャネルベクトルの相関行列を表し、Iは単位行列であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記正規化係数λは、以下のように求められ、
【数3】
ここで、iは、前記フィルタリングの第iの出力のインデックスであり、μは、所定の値であるか又は前記係数aikの和であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
複数の所定の行列が記憶され、前記方法は、前記推定された雑音分散及び/又はチャネルベクトルの相関行列Σに関連したパラメーターの推定値に従って、前記複数の所定の行列のうちの1つを選択するステップを更に含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記復調は、OFDM復調又はSC−FDMA復調又はSC−OFDM復調であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
送信元と受信機との間のチャネルのチャネル推定を実行するデバイスであって、周波数依存分散を有する雑音が、前記送信元から前記チャネルを通じて前記受信機によって受信されるシンボルのストリームに加えられ、前記受信機は、周波数領域において復調を実行し、該デバイスは、
前記受信されたシンボルのストリームから、パイロット位置においてシンボルを抽出する手段と、
パイロット位置における雑音分散を推定する手段と、
パイロット位置において抽出された前記シンボルから粗チャネル推定値を求める手段と、
前記推定された雑音分散から重み付け係数を求める手段と、
前記求められた重み付け係数によって前記粗チャネル推定値を重み付けする手段と、
前記重み付き粗チャネル推定値を所定の係数を用いてフィルタリングする手段であって、少なくとも1つの所定の係数は他の所定の係数と異なり、前記所定の係数は定雑音分散について求められる、手段と、
前記求められた重み付け係数及び前記所定のフィルター係数から正規化係数を求める手段と、
前記フィルタリングされた重み付き粗チャネル推定値を前記求められた正規化係数を用いて正規化する手段と、
を備えることを特徴とする、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、送信元と受信機との間のチャネルのチャネル推定を実行する方法及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
無線電気通信では、地上通信又は衛星通信のいずれにおいても、従来から、チャネル推定が、パイロットシンボル、すなわち、幾つかの状況において異なる信号対雑音比を受ける受信パイロットから行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
OFDM、SC−OFDM及びSC−FDMAのように、復調が周波数領域において行われるシステムでは、送信は、有色雑音、すなわち、周波数依存分散を有する雑音を受けるおそれがある。
【0004】
雑音のこの周波数依存性は、狭帯域干渉体若しくは隣接する干渉体、又は任意の種類の干渉体に起因している可能性がある。
【0005】
従来から、そのようなチャネル推定は、一般に受信パイロットに基づいており、パイロット位置に対するチャネル相関を考慮に入れた雑音低減及び補間フィルターを含む。雑音低減及び補間フィルターは、受信パイロットシンボルに影響を及ぼす信号対雑音比に依存する。そのようなフィルターを計算する、例えばMMSE/ウィナーフィルターのような解決策が存在する。しかしながら、その結果もたらされるフィルター係数計算は、かなり複雑であり、有色雑音分散を事前に知ることができないことから、リアルタイムで行われることになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、良好なチャネル推定性能を維持しながら、そのようなフィルター係数計算の複雑度を低減することを可能にする方法及びデバイスを提供することを目的とする。
【0007】
このために、本発明は、送信元と受信機との間のチャネルのチャネル推定を実行する方法であって、周波数依存分散を有する雑音が、送信元からチャネルを通じて受信機によって受信されるシンボルのストリームに加えられ、受信機は、周波数領域において復調を実行し、この方法は、
受信されたシンボルのストリームから、パイロット位置においてシンボルを抽出するステップと、
パイロット位置における雑音分散を推定するステップと、
パイロット位置において抽出されたシンボルから粗チャネル推定値を求めるステップと、
推定された雑音分散から重み付け係数を求めるステップと、
求められた重み付け係数によって粗チャネル推定値を重み付けするステップと、
重み付き粗チャネル推定値を所定の係数を用いてフィルタリングするステップであって、少なくとも1つの所定の係数は他の所定の係数と異なり、所定の係数は定雑音分散について求められる、ステップと、
求められた重み付け係数及び所定のフィルター係数から正規化係数を求めるステップと、
フィルタリングされた重み付き粗チャネル推定値を求められた正規化係数を用いて正規化するステップと、
を含むことを特徴とする、方法に関する。
【0008】
また、本発明は、送信元と受信機との間のチャネルのチャネル推定を実行するデバイスであって、周波数依存分散を有する雑音が、送信元からチャネルを通じて受信機によって受信されるシンボルのストリームに加えられ、受信機は、周波数領域において復調を実行し、このデバイスは、
受信されたシンボルのストリームから、パイロット位置においてシンボルを抽出する手段と、
パイロット位置における雑音分散を推定する手段と、
パイロット位置において抽出されたシンボルから粗チャネル推定値を求める手段と、
推定された雑音分散から重み付け係数を求める手段と、
求められた重み付け係数によって粗チャネル推定値を重み付けする手段と、
重み付き粗チャネル推定値を所定の係数を用いてフィルタリングする手段であって、少なくとも1つの所定の係数は他の所定の係数と異なり、所定の係数は定雑音分散について求められる、手段と、
求められた重み付け係数及び所定のフィルター係数から正規化係数を求める手段と、
フィルタリングされた重み付き粗チャネル推定値を求められた正規化係数を用いて正規化する手段と、
を備えることを特徴とする、デバイスに関する。
【0009】
したがって、チャネル推定は、定雑音分散のみの所定の係数を用いた簡単なフィルタリングに関して、最適なフィルターのリアルタイム計算と比較して低複雑度を有するものに改善される。
【0010】
特定の特徴によれば、方法は、復調されたシンボルと、雑音電力推定値と、正規化された、フィルタリングされた重み付き粗チャネル推定値とを用いて、チャネルを等化するステップを更に含む。
【0011】
したがって、チャネル推定が改善され、全体性能が改善されるので、復調は改善される。
【0012】
特定の特徴によれば、重み付け係数は、
【数1】
に等しく、kはパイロット位置インデックスであり、σは、パイロット位置インデックスkの雑音プラス干渉体分散であり、σは、定雑音分散である。
【0013】
したがって、重み付き係数は簡単に求められ、大きな影響を受けるパイロットが他の位置におけるチャネル推定にあまり影響を及ぼさないことが保証される。
【0014】
特定の特徴によれば、所定の係数aikは、所定の行列Abasicの形態でグループ化され、この行列は、以下のように求められる。
【数2】
【0015】
ここで、Σ(・)は、チャネルベクトルの相関行列を表し、Iは単位行列である。
【0016】
したがって、基本行列は、非有色雑音について最適化され、パイロット推定方式は、雑音が有色でない場合、例えば、干渉体が存在しないときに最適である。
【0017】
特定の特徴によれば、正規化係数λは、以下のように求められる。
【数3】
【0018】
ここで、iは、フィルタリングの第iの出力のインデックスであり、μは、所定の値であるか又は係数aikの和である。
【0019】
したがって、正規化係数は簡単に求められ、その結果得られるチャネル推定値が最適なものに近い平均エネルギーを有することが保証される。
【0020】
特定の特徴によれば、複数の所定の行列が記憶され、方法は、推定された雑音分散及び/又はチャネルベクトルの相関行列Σに関連したパラメーターの推定値に従って、複数の所定の行列のうちの1つを選択するステップを更に含む。
【0021】
したがって、チャネル推定プロセスは更に改善され、所定の基本フィルターは最適なものにより近くなる。
【0022】
特定の特徴によれば、復調は、OFDM復調又はSC−FDMA復調又はSC−OFDM復調である。
【0023】
したがって、復調は、通常、周波数領域において行われ、信号を周波数領域に変換することによる複雑度は追加されない。
【0024】
更に別の態様によれば、本発明は、プログラマブルデバイス内に直接ロード可能とすることができるコンピュータープログラムであって、このコンピュータープログラムがプログラマブルデバイスにおいて実行されると本発明による方法のステップを実施する命令又はコード部を含む、コンピュータープログラムに関する。
【0025】
このコンピュータープログラムに関する特徴及び利点は、本発明による方法及び装置に関連して上記で述べたものと同じであるので、ここでは繰り返さないことにする。
【0026】
本発明の特徴は、一例示の実施形態の以下の説明を読むことによってより明らかになる。この説明は、添付図面に関して作成されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明が実施される無線システムを表す図である。
図2】本発明が実施される受信機のアーキテクチャを表す図である。
図3】受信機の無線インターフェースの構成要素のブロック図である。
図4】本発明による受信機によって実行されるアルゴリズムの一例を開示する図である。
図5】本発明が受信機において実施されたときのパケットエラーレートの進展の一例を開示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明が実施される無線システムを表している。
【0029】
本発明は、送信元Srcによって転送された信号が受信機Recに送信される一例において開示される。送信元Srcは、衛星St又は地上送信機Ttに備えることができる。
【0030】
簡潔にするために、図1には、1つの衛星St及び1つの地上送信機Stしか示されていないが、無線リンクは、これよりも多くの数の衛星St及び/又は地上送信機Stを備えることができる。
【0031】
衛星Stは、信号をブロードキャストすることもできるし、デジタルビデオブロードキャスティング次世代ハンドヘルドブロードキャスティングシステム(DVB NGH:Digital Video Broadcasting Next Generation Broadcasting system to handheld)物理層仕様の2012年11月に公表されたDVB文書A160に開示されているような衛星通信を行うこともできる。
【0032】
地上送信機Ttは、3GPP TSG−RAN,TR25.814:「Physical Layer Aspects for Evolved UTRA」,バージョン7.1.0,2006−09の仕様に準拠した無線セルラー電気通信ネットワークの基地局とすることができる。
【0033】
本発明は、ブロードキャスト又はこれまでの通信のために、SC−FDMA、SC−OFDM及びOFDMのような変調に適用することができる。
【0034】
簡潔にするために、図1には、1つの受信機Recしか示されていないが、信号は、これよりも多くの数の受信機Recにブロードキャスト又は送信される。
【0035】
受信機Recは、モバイル端末であってもよい。
本発明によれば、受信機Recは、
受信されたシンボルのストリームから、パイロット位置においてシンボルを抽出し、
パイロット位置における雑音分散を推定し、
パイロット位置において抽出されたシンボルから粗チャネル推定値を求め、
推定された雑音分散から重み付け係数を求め、
求められた重み付け係数によって粗チャネル推定値を重み付けし、
重み付き粗チャネル推定値を所定の係数を用いてフィルタリングして、なお、少なくとも1つの所定の係数は他の所定の係数と異なり、所定の係数は定雑音分散について求められ、
求められた重み付け係数及び所定のフィルター係数から正規化係数を求め、
フィルタリングされた重み付き粗チャネル推定値を求められた正規化係数を用いて正規化する。
【0036】
図2は、本発明が実施される受信機のアーキテクチャを表す図である。
【0037】
受信機Recは、例えば、バス201によって互いに接続された構成要素と、図4に開示されるようなプログラムによって制御されるプロセッサ200とに基づくアーキテクチャを有する。
【0038】
ここで、受信機Recは、専用集積回路に基づくアーキテクチャを有することができることに留意すべきである。
【0039】
バス201は、プロセッサ200を、読み出し専用メモリROM202、ランダムアクセスメモリRAM203及び無線インターフェース205にリンクする。
【0040】
メモリ203は、変数と、図4に開示されるようなアルゴリズムに関連したプログラムの命令とを収容するように意図されたレジスタを含む。
【0041】
プロセッサ200は、無線インターフェース205の動作を制御する。
【0042】
読み出し専用メモリ202は、図4に開示されるようなアルゴリズムに関連したプログラムの命令を含む。これらの命令は、受信機Recに電源が投入されると、ランダムアクセスメモリ203に転送される。
【0043】
無線インターフェース205は、受信パイロットが種々の信号対雑音比を受けているパイロットから行われる信頼性のあるチャネル推定を実行する手段を備える。
【0044】
例えば、本発明は、OFDM及びSC−FDMA(SC−OFDM)のように、復調が周波数領域において行われるシステムに関する。送信は、有色雑音、すなわち周波数依存分散を有する雑音を受ける。
【0045】
雑音のこの周波数依存性は、狭帯域干渉体若しくは隣接する干渉体、又は任意の種類の干渉体に起因する可能性がある。
【0046】
従来、Stefan KaiserのPhDレポート「Multi−Carrier CDMA Mobile Radio Systems − Analysis and Optimization of Detection, Decoding and Channel Estimation」(January 1998, Munich)に開示されているように、幾つかのチャネル推定方式は、雑音分散が一定であると仮定している。この簡単な手法によって、通常の固定された雑音分散を前提として、フィルター係数を事前に計算することが可能になり、したがって、リアルタイム計算が回避される。
【0047】
例えば、Chang−Yi Yang及びBor−sen Chenの論文「Adaptive Channel−Tracking Method and Equalization for MC−CDMA Systems over Rapidly Fading Channel under Colored Noise」(Eurasip Journal on Advanced Signal Processing, Volume 2010)に開示されるような別の手法は、最小平均二乗誤差(MMSE)基準を最小にするフィルターを直接設計することである。この手法は、雑音が有色であり得ること、すなわち、分散がインデックスkに依存することを考慮に入れる利点を有する。
【0048】
フィルタリングをチャネルベクトル=(h)の直接推定によって表す場合、フィルタリング(の推定)は、行列Aによる乗算に対応する。
【数4】
ここで、は、雑音フィルタリング前のパイロット位置において取得される粗チャネル推定値である。
【0049】
次に、MMSE基準に従ってAを定義することは、以下のようにAを選択することに対応する。
【数5】
【0050】
対応する一般的なMMSE解は、以下のものであることが知られている。
【数6】
【0051】
ここで、Σ(・)は、相関行列Σ=E(xx)を表し、xはベクトルxの複素共役を表す。
【0052】
雑音及びチャネルhが独立であると仮定することによって、以下の式が得られる。
【数7】
【0053】
チャネル相関行列Σは、システム設計、特にパイロット位置と、例えば遅延スプレッドのような幾つかのチャネル特性とに依存する。以下では、このチャネル相関行列が既知であると仮定する。例えば、従来から、チャネルの遅延スプレッドは、OFDMシステム、SC−OFDMシステム又はSC−FDMAシステムのサイクリックプレフィックス継続時間に等しいと仮定される。
【0054】
異なるパイロットに影響を及ぼす雑音成分は無相関であると仮定することによって、雑音相関行列は、以下の式として得られる。
【数8】
【0055】
この手法は欠点を有する。すなわち、新たな雑音相関行列Σごとにフィルター係数を再計算しなければならず、特にフィルターサイズが大きい場合に、関連した複雑度が高い。フィルター効率は、このサイズに強く依存することを想起することにする。分散分布は、比較的高速に変化する可能性があり、過度に高速に変化すると、低複雑度でフィルター係数のリアルタイム計算が可能でなくなる可能性があることが起こり得る。本発明によれば、受信機Recは、定雑音分散σについて、すなわち、雑音分散の変動の知識を有しないで計算された登録済みのフィルター係数を有し、少なくとも1つのフィルター係数は、他のフィルター係数と異なる。例えば、MSE(平均二乗誤差)基準が用いられる場合、フィルター係数に対応する行列は以下に等しい。
【数9】
【0056】
ここで、Iは単位行列を表す。
【0057】
σは、干渉プラス熱雑音に対応する全てのσよりも小さいものと仮定することにする。これは、例えば、σが熱雑音分散に対応する場合に当てはまる。その場合、分散は、以下のように記述することができる。
【数10】
【0058】
σが熱雑音分散に対応する場合、
【数11】
値は干渉分散に対応する。そうでない場合、
【数12】
は、全体の分散σと、所定のフィルター行列Abasicの計算に用いられる所定の値σとの間の差に単に対応する。
【0059】
最適な行列Aの代わりに行列Abasicを用いることは、A=Σ(Σ+Σ−1において、ΣについてDiag(σ)をDiag(σ)に置換することに対応する。その結果得られる係数には大きな相違が生じ、したがって、性能に大きな相違が生じる。
【0060】
行列Aは、以下のように書き換えることができる。
【数13】
ここで、
【数14】
である。
【0061】
ここで、
【数15】
が非常に大きいとき、近似
【数16】
は、近似
【数17】
よりも決定的でないことに留意しなければならない。
【0062】
その上、基本行列は、以下のように書き換えることができる。
【数18】
【0063】
したがって、定雑音分散σについて計算された登録済みのフィルター係数と、σ及びσに従って計算された係数ωとを組み合わせたものである近似的に最適なフィルターAapは、以下のように表すことができる。
【数19】
【0064】
ここで、雑音相関行列Σは、上記数式の第1の部分Abasicでは近似されており、第2の部分Diag(ω)では近似されていないことに留意しなければならない。
【0065】
次に、たとえ部分的にしかすぎない場合であっても、分散が変動していることが考慮される。これは、AをAbasicに単に置換するときには該当しなかったものである。この定式化は、フィルターの入力であるベクトルを重み係数
【数20】
によって重み付けし、次に、Abasicフィルターを適用することによって解釈することができる。
【0066】
重み係数ωを計算する変形形態が幾つか存在する。上記導出において、σは、Abasicフィルターの計算に用いられるパラメーターである。これは、通常の信号対雑音比の逆数、又は小さいがゼロではない正則化パラメーター、又はσの平均に比例するパラメーターのような他の任意のパラメーターとすることができる。熱雑音分散σ及び干渉体分散
【数21】
が推定される場合、重み
【数22】
を用いることができる。
【0067】
基本フィルター係数をaikで示すと、これは、
【数23】
に等しい新たな重み付きフィルター係数を適用することと等価である。
【0068】
無線インターフェース205は、図3に開示するような構成要素を備える。
【0069】
図3は、受信機の無線インターフェースの構成要素のブロック図を開示している。
【0070】
受信機Recによって受信された信号は、復調モジュール300によって復調される。例えば、復調モジュール300は、受信信号の離散フーリエ変換(DFT)を実行する。
【0071】
復調後、すなわち周波数領域では、この周波数領域における受信信号は、以下の式によって表すことができる。
【数24】
【0072】
ここで、hは、インデックスkのキャリアのチャネル応答であり、νは、同じ周波数における付加雑音である。例えば、項νは、AWGN(熱)雑音及び干渉体を加えるものである。この干渉体のために、付加雑音の分散は周波数に依存し、σによって示される。
【0073】
復調信号は、パイロット抽出モジュール301に提供される。
【0074】
パイロット抽出モジュール301は、パイロット位置において、対応する受信シンボルを抽出し、それらの受信シンボルを粗チャネル推定モジュール305に提供する。
【0075】
粗チャネル推定モジュール305は、各パイロット位置kにおけるチャネル応答hの粗推定値gを、例えば以下のように求める。
【数25】
【0076】
ここで、kは、パイロット位置インデックスであり、yは、対応する受信シンボルであり、pは、第kの位置における送信パイロット値である。
【0077】
ここで、この推定は、雑音(熱雑音及び/又は干渉体)による影響を受け、パイロット位置における推定値しか提供しないことに留意しなければならない。フィルタリングの目的は、雑音を低減することと、パイロット位置以外の位置におけるチャネル推定の補間を行うこととである。提案された方式は、主として、雑音プラス干渉低減問題に対処する。
【0078】
パイロット抽出モジュール301は、対応する受信シンボルを雑音電力推定モジュール302に提供する。
【0079】
雑音電力推定モジュール302は、付加雑音の分散σを推定する。提示を簡潔にするために、この推定は完全であると仮定する。
【0080】
粗チャネル推定は、以下のようにモデル化される。
【数26】
【0081】
付加雑音
【数27】
は、例えば、熱雑音及び干渉を加えることである。以下では、一般性を失うことなく、E(|p)=1であると仮定する。
【0082】
したがって、付加雑音nは、vと同じ分散σを有し、中心であると仮定される。すなわち、E(|n)=σであり、E(n)=0である。
【0083】
雑音電力推定値は、重み係数計算モジュール303に提供される。
【0084】
重み係数モジュール303は、既に開示しているように重み係数ωを求める。
【0085】
重み係数は、重み付けモジュール306に転送され、この重み付けモジュールは、粗チャネル推定モジュール306の出力gを重み係数ωによって重み付けする。
【0086】
重み付けモジュール306の出力は、フィルタリングモジュール307に提供され、このフィルタリングモジュールは、重み付き出力ωをフィルタリングするのにAbasic行列を用いる。
【0087】
ここで、Abasic行列は、補間を提供することができる、すなわち、より多くのサンプルを提供するために、2つのシンボル又はシンボルブロックの間で補間を行うことに留意しなければならない。
【0088】
本発明の特定の実現態様によれば、フィルタリングモジュール307の出力は、補正モジュール308に提供される。
【0089】
幾つかの分散σが大きい場合、幾つかの重み付け係数ωは非常に小さい場合があり、フィルタリングモジュール307によって提供される推定値は、推定される元の信号hよりもはるかに低いエネルギーを有する。補正モジュール308は、更なる補正ステップによってこれを補償し、これは重み付け係数ωに依存する。
【0090】
正規化係数計算モジュール304は、重み付け係数ωを用いて、補正係数を求める。
【0091】
例えば、インデックスiの各出力に以下の式を乗算することができる。ここで、iは、Abasic行列の出力のインデックスである。
【数28】
ここで、μは所定の値である。例えば、μは、固定値μに設定することができ、例えばμ=1である。代替的に、μは、既知の基本フィルターの対応する値に等しく設定することができる。すなわち、
【数29】
である。
【0092】
ここで、補間がフィルタリングモジュール307によって行われない場合、iはkと同等であることに留意しなければならない。
【0093】
最後に、最適なフィルターの以下の近似が得られる。
【数30】
【0094】
補正モジュール308の出力
【数31】
は、チャネル値hの最終推定値に対応する。説明を簡単にするために、以下では、
【数32】

【数33】
に表記変更する。
【0095】
復調モジュール300の出力y、雑音電力推定モジュール302の出力σ及び補正モジュール308の出力
【数34】
は、等化モジュール309に提供され、この等化モジュールは、復調信号の等化を行う。例えば、等化モジュール309は、以下のMMSE等化を実施する。
【数35】
【0096】
球面復号器として、又はターボ等化の場合に事前情報を有する等化器として、より高性能な等化をここで行うことができる。
【0097】
本発明の特定の実現態様によれば、幾つかの基本フィルター行列は、事前に計算されて記憶される。これらの基本フィルターのうちの1つが、例えば、推定された雑音分散、例えばこれらの分散の平均、若しくはチャネル相関行列Σに関連した重要なパラメーターの推定値、例えばチャネル遅延スプレッド、又はそれらの双方に従って選択される。
【0098】
フィルター選択モジュール310は、雑音電力推定モジュール302によって提供された分散から及び/又はチャネル相関行列Σに関連した重要なパラメーターの推定値、例えばチャネル遅延スプレッドに従って、フィルター係数モジュール311に記憶された複数の所定の基本行列の中から基本行列Abasicを選択する。
【0099】
選択された基本行列は、正規化係数モジュール304及び基本フィルターモジュール307に提供される。
【0100】
図4は、本発明による受信機によって実行されるアルゴリズムの一例を開示している。
【0101】
ステップS400において、受信機Recによって受信された信号は、復調モジュール300によって復調される。例えば、復調は、受信信号の離散フーリエ変換(DFT)を実行する。
【0102】
復調後、すなわち周波数領域では、この周波数領域における受信信号は、以下の式によって表すことができる。
【数36】
【0103】
ここで、hは、インデックスkのキャリアのチャネル応答であり、νは、同じ周波数における付加雑音である。例えば、項νは、AWGN(熱)雑音及び干渉体を加えるものである。この干渉体のために、付加雑音の分散は周波数に依存し、σによって示される。
【0104】
ステップS401において、パイロット抽出が行われる。
【0105】
このパイロット抽出によって、復調信号のパイロット位置において、対応する受信パイロットシンボルが抽出される。
【0106】
ステップS402において、抽出されたパイロットシンボルから、粗チャネル推定が行われる。
【0107】
粗チャネル推定は、各パイロット位置kにおけるチャネル応答hの粗推定値gを、例えば以下のように求める。
【数37】
【0108】
ここで、kは、パイロットインデックスであり、yは、対応する受信シンボルであり、pは、第kの位置における送信パイロット値である。
【0109】
ここで、この推定は、雑音(熱雑音及び/又は干渉体)による影響を受け、パイロット位置における推定値しか提供しないことに留意しなければならない。
【0110】
ステップS403において、雑音電力推定が、受信パイロットシンボルに対して行われる。
【0111】
雑音電力推定は、付加雑音の分散σを推定する。
【0112】
粗チャネル推定は、以下のようにモデル化される。
【数38】
【0113】
付加雑音
【数39】
は、例えば、熱雑音及び干渉を加えることである。以下では、一般性を失うことなく、E(|p)=1であると仮定する。
【0114】
したがって、付加雑音nは、vと同じ分散σを有し、中心であると仮定される。すなわち、E(|n)=σであり、E(n)=0である。
【0115】
ステップS404において、重み係数計算が雑音電力推定に基づいて行われる。
【0116】
重み係数ωは、既に開示したように求められる。
【0117】
ステップS406において、求められた重み係数は、粗チャネル推定の出力gを重み付けする。
【0118】
ステップS407において、フィルタリングが、粗チャネル推定の重み付き出力ωに対して実行される。このフィルタリングは、重み付き出力ωをフィルタリングするのにAbasic行列を用いる。
【0119】
ここで、Abasic行列は、補間を提供することができる、すなわち、より多くのサンプルを提供するために、2つのシンボル又はシンボルブロックの間で補間を行うことに留意しなければならない。
【0120】
ステップS409において、補正係数が、重み付け係数ωを用いて求められる。
【0121】
幾つかの分散σが大きい場合、幾つかの重み付け係数ωは非常に小さい場合があり、フィルタリングモジュール307によって提供される推定値は、推定される元の信号hよりもはるかに低いエネルギーを有する。補正モジュール308は、更なる補正ステップによってこれを補償し、これは重み付け係数に依存する。
【0122】
例えば、インデックスiの各出力に以下の式を乗算することができる。ここで、iは、Abasic行列の出力のインデックスである。
【数40】
ここで、μは所定の値である。例えば、μは、固定値μに設定することができ、例えばμ=1である。代替的に、μは、既知の基本フィルターの対応する値に等しく設定することができる。すなわち、
【数41】
である。
【0123】
ここで、補間がフィルタリングによって行われない場合、iはkと同等であることに留意しなければならない。
【0124】
ステップS409において、補正が、フィルタリングモジュール307の出力に対して行われる。
【0125】
最後に、最適なフィルターの以下の近似が得られる。
【数42】
【0126】
補正モジュール308の出力
【数43】
は、チャネル値hの最終推定値に対応する。説明を簡単にするために、以下では、
【数44】

【数45】
に表記変更する。
【0127】
ステップS410において、等化が、復調ステップの出力yと、雑音電力推定ステップの出力σと、補正ステップの出力
【数46】
とを用いて行われる。例えば、等化は、以下のMMSE等化を実施する。
【数47】
【0128】
球面復号器として、又はターボ等化の場合に事前情報を有する等化器として、より高性能な等化をここで行うことができる。
【0129】
本発明の特定の実現態様によれば、幾つかの基本フィルター行列は、事前に計算されて記憶される。これらの基本フィルターのうちの1つが、ステップS405において、例えば、推定された雑音分散、例えばこれらの分散の平均、若しくはチャネル相関行列Σに関連した重要なパラメーターの推定値、例えばチャネル遅延スプレッド、又はそれらの双方に従って選択される。
【0130】
フィルター選択ステップS405は、雑音電力推定によって提供された分散から及び/又はチャネル相関行列Σに関連した重要なパラメーターの推定値、例えばチャネル遅延スプレッドに従って、フィルター係数モジュール311に記憶された複数の所定の基本行列の中から基本行列Abasicを選択する。
【0131】
図5は、本発明が受信機において実施されたときのパケットエラーレートの進展の一例を開示している。
【0132】
横軸はキャリア対雑音比を表し、縦軸はパケットエラーレートを表している。
【0133】
50で示す曲線は、干渉体が存在しない場合に最適なチャネル推定が行われた一例を表している。
【0134】
51で示す曲線は、干渉体が存在する場合に最適なチャネル推定が行われた一例を表している。
【0135】
52で示す曲線は、重み付けがフィルタリングステップ407の前に行われていない場合の結果を表している。
【0136】
53で示す曲線は、重み付けがフィルタリングステップ407の前に行われるとともに正規化ステップが実行された場合の結果を表している。
【0137】
その上、利得は、シミュレーション条件に依存することになる。1つのトーン及び−10dBのC/Iの場合、提案された方式を適用すると、これらのチャネル状態において、現時点における最先端技術に対して約0.5dBの利得が提供される。その上、完全なチャネル推定と比較した損失は0.1dB未満であるので、これは、最適なフィルター計算と比較した損失が更に低くなることを意味している。
【0138】
本発明は、フィルター入力の重み付けが、MSE基準について最適化された基本フィルターを考慮することによって行われる一例において開示されている。フィルター入力の重み付けは、これらの基本フィルターが、固定分散を明示的又は暗黙的に前提とすることによって求められる限り、上記方法が基本フィルターを計算するのに用いたものがいかなるものであっても適用することができる。例えば、周波数応答に基づくフィルター設計は、固定分散を暗黙的に前提としている。
【0139】
本発明は、単数又は複数の基本行列が事前に知られている一例において開示されていることに留意しなければならない。本発明は、基本行列がその時々において再計算され、そのレートが、全体の複雑度がこの計算によって大きな影響を受けないほど十分に低い場合にも適用可能であり、また、干渉体分散がこの低いレートよりも高速に変化すると予想される場合にも適用可能である。
【0140】
当然のことながら、本発明の範囲から逸脱することなく、上記で説明した本発明の実施形態に対して多くの変更を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5