特許第6552757号(P6552757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6552757コイル装置並びにそれを用いた電動弁及び電磁弁
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552757
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】コイル装置並びにそれを用いた電動弁及び電磁弁
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/06 20060101AFI20190722BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20190722BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20190722BHJP
   H01F 5/04 20060101ALI20190722BHJP
   H01F 7/16 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   H01F7/06 G
   F16K31/04 A
   F16K31/06 305B
   H01F5/04 C
   H01F7/16 R
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-2281(P2019-2281)
(22)【出願日】2019年1月10日
(62)【分割の表示】特願2017-43023(P2017-43023)の分割
【原出願日】2017年3月7日
(65)【公開番号】特開2019-83326(P2019-83326A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2019年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 仁志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 教郎
【審査官】 田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−32753(JP,A)
【文献】 特開平10−208211(JP,A)
【文献】 特開平8−250321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K31/00−31/11
H01F5/00−5/06
7/06−7/17
17/00−21/12
27/00
27/02
27/06
27/08
27/23
27/26
27/28−27/29
27/30
27/32
27/36
27/42
38/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面矩形の通電端子が設けられたコイルボビンと、該コイルボビンに巻装されるとともにはんだにより前記通電端子に固着されたマグネットワイヤと、該マグネットワイヤの外周部を覆うモールド樹脂とを備えるコイル装置であって、
前記コイルボビンから突設された前記通電端子の一部に、該通電端子の角部が窪んで形成された窪み領域が設けられ、前記コイルボビンから巻出された前記マグネットワイヤが前記窪み領域に数回巻き付けられ、前記通電端子における前記窪み領域より先端側で前記通電端子に固着されて導通されており、
前記はんだによって前記窪み領域及び該窪み領域に絡げられた前記マグネットワイヤの一部が被覆されるとともに、前記はんだによって、前記通電端子の前記窪み領域と前記角部のある領域との境界が覆われていることを特徴とするコイル装置。
【請求項2】
前記窪み領域は、前記通電端子の角部がR付けもしくは面取りされて形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記窪み領域の断面形状は、角部が丸みを帯びた矩形、円形、楕円形、又は、頂角が90°より大きい多角形を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のコイル装置を有するステッピングモータと、弁口を有する弁本体と、前記ステッピングモータへの通電により発生する駆動力により駆動されて前記弁口を開閉する弁軸と、を備えることを特徴とする電動弁。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載のコイル装置と、弁口を有する弁本体と、前記コイル装置への通電により発生する磁力により駆動されて前記弁口を開閉する弁軸と、を備えることを特徴とする電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル装置並びにそれを用いた電動弁及び電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷媒のような流体の流量制御に使用する電動流量制御弁として、例えば弁室に連通する一次口及び二次口を有し二次口側隔壁の連通弁口に弁座を設けた弁本体と、この弁本体の弁座に接離するニードル弁を先端に有する弁棒と、該弁棒を軸方向に移動させてニードル弁の開閉作動を行うステッピングモータとを具備するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記した従来の電動流量制御弁で使用されるステッピングモータは、コイルボビンにマグネットワイヤが巻装され、前記コイルボビンの端子接続部に通電端子が突設されたマグネットワイヤ巻線ボビン、マグネットワイヤの外周部や端子接続部を覆うモールド樹脂等から構成され、モールド樹脂の外周部に一体的に突設されたソケット部の内側に前記通電端子が延出して電源コードのプラグが挿入接続されるようになっている。
【0004】
より詳しくは、上記従来のステッピングモータは、図6、7に示すように、コイルボビンBに巻装されたマグネットワイヤWが、コイルボビンBの端子接続部Cに設けられた断面矩形の通電端子Tに数回巻き付けられ(絡げられ)、その通電端子Tの角部を利用して切断された後、はんだH付け等により該通電端子Tに固着されて電気的に接続(導通)され、その後、マグネットワイヤWの外周部や端子接続部C、該端子接続部Cに固定された通電端子Tの外側を覆うようにモールド樹脂(図5、6では不図示)が成形されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−65994号公報
【特許文献2】特開2015−32753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来のステッピングモータでは、コイルボビンにおける巻付けテンションを保持するため、あるいは、モールド樹脂成形時の圧力による負荷を軽減するために、コイルボビンBに巻装されたマグネットワイヤWは、図6、7に示されるように、はんだ付け等により固着される手前、具体的には、端子接続部Cに突設された通電端子Tの根元部分で該通電端子Tに若干の緩み(余裕)を持って数回巻き付けられる(絡げられる)のが一般的である。そのため、この通電端子Tの根元部分でマグネットワイヤWの絡げ状態(例えば、絡げ幅)が不安定になりやすいという懸念があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、通電端子に絡げられるマグネットワイヤの絡げ状態を安定させることのできるコイル装置並びにそれを用いた電動弁及び電磁弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記する課題を解決するために、本発明に係るコイル装置は、基本的に、断面矩形の通電端子が設けられたコイルボビンと、該コイルボビンに巻装されるとともにはんだにより前記通電端子に固着されたマグネットワイヤと、該マグネットワイヤの外周部を覆うモールド樹脂とを備えるコイル装置であって、前記コイルボビンから突設された前記通電端子の一部に、該通電端子の角部が窪んで形成された窪み領域が設けられ、前記コイルボビンから巻出された前記マグネットワイヤが前記窪み領域に数回巻き付けられ、前記通電端子における前記窪み領域より先端側で前記通電端子に固着されて導通されており、前記はんだによって前記窪み領域及び該窪み領域に絡げられた前記マグネットワイヤの一部が被覆されるとともに、前記はんだによって、前記通電端子の前記窪み領域と前記角部のある領域との境界が覆われていることを特徴としている。
【0009】
前記窪み領域は、好ましくは、前記通電端子の角部がR付けもしくは面取りされて形成される。
【0010】
前記窪み領域の断面形状は、好ましくは、角部が丸みを帯びた矩形、円形、楕円形、又は、頂角が90°より大きい多角形を有する。
【0011】
また、本発明に係る電動弁は、前記コイル装置を有するステッピングモータと、弁口を有する弁本体と、前記ステッピングモータへの通電により発生する駆動力により駆動されて前記弁口を開閉する弁軸と、を備えることを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係る電磁弁は、前記コイル装置と、弁口を有する弁本体と、前記コイル装置への通電により発生する磁力により駆動されて前記弁口を開閉する弁軸と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、コイルボビンから突設された通電端子の一部に、コイルボビンから巻出されたマグネットワイヤを一旦絡げるための窪み領域が設けられているので、この窪み領域が絡げ領域(マグネットワイヤを絡げるべき領域)の目安となり、通電端子に絡げられたマグネットワイヤの絡げ状態(絡げの不具合状態等)を(例えば製造工程上で)目視等で容易に確認できるため、通電端子に絡げられるマグネットワイヤの絡げ状態を安定させることができる。また、通電端子にマグネットワイヤを若干の緩み(余裕)を持って絡げる場合にも、窪み領域に絡げられたマグネットワイヤは当該窪み領域から外れにくくなり、マグネットワイヤの絡げ幅を所定幅以内に収める(言い換えれば、絡げ幅を均一に保つ)ことができるため、この点からも、通電端子に絡げられたマグネットワイヤの絡げ状態を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るコイル装置の一実施形態の主要部を示す斜視図。
図2図1に示されるコイル装置の要部拡大図付き下面図。
図3図2のU−U矢視断面図。
図4図3に示される通電端子の他例を示す、図2のU−U矢視線に従う断面図。
図5図2に示されるコイル装置の他例を示す要部拡大下面図。
図6】従来のコイル装置の要部拡大図付き下面図。
図7図6のV−V矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明に係るコイル装置の一実施形態の主要部を示す斜視図、図2は、図1に示されるコイル装置の要部拡大図付き下面図、図3は、図2のU−U矢視断面図である。
【0017】
図示実施形態のコイル装置1は、基本的に、通電端子15a〜15cが設けられた例えば樹脂製のコイルボビン10と、該コイルボビン10の周囲に巻装されたマグネットワイヤ20と、を備えている。
【0018】
コイルボビン10の外周には、平面視略矩形の端子接続部11が突設され、その端子接続部11の表面(図示例では、下面)に、通電端子15a〜15cを圧入固定するための挿入穴13a〜13cが設けられた支持固定部12a〜12cが一体的に形成されている。図示例では、例えば矩形状の3個の支持固定部12a〜12cが端子接続部11の外縁に沿って横並びで形成されるとともに、各支持固定部12a〜12cの略中央に、例えば断面円形の挿入穴13a〜13cが設けられている。
【0019】
前記端子接続部11(の各支持固定部12a〜12c)の各挿入穴13a〜13cには、断面矩形の通電端子15a〜15cが圧入されて支持固定されるとともに、各通電端子15a〜15cの根元部分(各支持固定部12a〜12cから突出した後の所定長さの範囲)の角部はR付けされており(特に、図2、3中のR付け部18a参照)、これにより、各通電端子15a〜15cの根元部分に、通電端子15a〜15cの角部が窪んで形成された窪み領域16a〜16cが設けられている。
【0020】
なお、本例では、各通電端子15a〜15c(の根元部分)の角部をR付けすることで、前記窪み領域16a〜16cを形成しているが、例えば図4に示される如くに、各通電端子15a〜15cの角部を面取りすることで(面取り部19a)、前記各通電端子15a〜15cにおける窪み領域16a〜16cを形成してもよい。
【0021】
前述のように、各通電端子15a〜15cの角部がR付けもしくは面取りされることにより、前記窪み領域16a〜16cの断面形状は、例えば、角部が丸みを帯びた矩形(図3参照)、円形、楕円形、又は、頂角が90°より大きい五角形以上の多角形(図4参照)とされる。
【0022】
なお、前述の窪み領域16a〜16cを有する通電端子15a〜15cは、例えば、通電端子15a〜15cを構成する断面矩形の線材(角線ともいう)をリールに巻かれた状態から所定長さだけ巻出し、通電端子15a〜15cに相当する長さで切断すると同時に、各通電端子15a〜15cの根元部分に相当する部分(の角部)を圧縮変形させて前記窪み領域16a〜16cを形成することで、作製することができる。
【0023】
マグネットワイヤ20は、所定の引張力を付与しながらコイルボビン10の周囲に巻装され、その一端が通電端子15aの根元部分に設けられた窪み領域16a又は通電端子15cの根元部分に設けられた窪み領域16cに(若干の緩みをもって)数回絡げられ(巻き付けられ)、通電端子の根元部分から離れた位置(つまり、窪み領域より先端側)で通電端子15a又は通電端子15cに再び数回絡げられ、断面矩形の通電端子の角部を利用して所定の箇所で切断された後、前記窪み領域16aより先端側の部分に塗工されたはんだ17a又は前記窪み領域16cより先端側の部分に塗工されたはんだ17cによって通電端子15a又は通電端子15cに固着されて電気的に接続(導通)される。また、マグネットワイヤ20の他端は、中央の通電端子15bの根元部分に設けられた窪み領域16bに(若干の緩みをもって)数回絡げられ、通電端子15bの根元部分から離間した位置(つまり、窪み領域16bより先端側)で通電端子15bに再び数回絡げられ、断面矩形の通電端子15bの角部を利用して所定の箇所で切断された後、前記窪み領域16bより先端側の部分に塗工されたはんだ17bによって通電端子15bに固着されて電気的に接続(導通)される。
【0024】
そして、上記コイル装置1におけるマグネットワイヤ20の外周部やコイルボビン10の端子接続部11、該端子接続部11に固定された通電端子15a〜15cの外側等を覆うように不図示のモールド樹脂が成形されることになる。
【0025】
上記した如くの構成を有するコイル装置1は、当該コイル装置1から構成されるステータコイルを備えたステッピングモータと、弁口を有する弁本体と、前記ステッピングモータへの通電により発生する駆動力により駆動されて前記弁口を開閉する弁軸と、を備える電動弁(例えば冷凍サイクルやヒートポンプ式冷暖房システム等に使用される電動弁)や、当該コイル装置1からなるソレノイドコイルと、弁口を有する弁本体と、前記ソレノイドコイルへの通電により発生する磁力により駆動されて前記弁口を開閉する弁軸と、を備える電磁弁(例えば冷凍サイクルやマルチエアコンシステム等の流体システムに使用される電磁弁)等に利用される(詳細構造については、上記特許文献1、2等参照)。
【0026】
このように、本実施形態のコイル装置1では、コイルボビン10の端子接続部11から突設された通電端子15a〜15cの根元部分に、コイルボビン10から巻出されたマグネットワイヤ20を一旦絡げるための窪み領域16a〜16cが設けられているので、この窪み領域16a〜16cが絡げ領域(マグネットワイヤを絡げるべき領域)の目安となり、通電端子15a〜15cに絡げられたマグネットワイヤ20の絡げ状態(絡げの不具合状態等)を(例えば製造工程上で)目視等で容易に確認できるため、通電端子15a〜15cに絡げられるマグネットワイヤ20の絡げ状態を安定させることができる。また、通電端子15a〜15cにマグネットワイヤ20を若干の緩み(余裕)を持って絡げる場合にも、窪み領域16a〜16cに絡げられたマグネットワイヤ20は当該窪み領域16a〜16cから外れにくくなり、マグネットワイヤ20の絡げ幅を所定幅以内に収める(言い換えれば、絡げ幅を均一に保つ)ことができるため、この点からも、通電端子15a〜15cに絡げられたマグネットワイヤ20の絡げ状態を安定させることができる。
【0027】
なお、上記実施形態では、通電端子15a〜15cにおける窪み領域16aより先端側にはんだ17a〜17cが塗工されてマグネットワイヤ20が通電端子15a〜15cに固着されているが、通電端子における窪み領域と一般部(断面矩形の部分)との間(境界)に形成される段差によるマグネットワイヤへの負荷を軽減するために、例えば、図5に示される如くに、通電端子15aを固着するための前記はんだ17aによって、窪み領域16aの端部(つまり、窪み領域16aと一般部との間に形成される段差を含む部分)及び当該窪み領域16aに絡げられたマグネットワイヤ20の端部を被覆するようにしてもよい。
【0028】
また、上記実施形態では、マグネットワイヤを一旦絡げるための窪み領域が通電端子の根元部分に設けられているが、当該窪み領域の設定位置は通電端子の根元部分のみに限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
1 コイル装置
10 コイルボビン
11 端子接続部
12a〜12c 支持固定部
13a〜13c 挿入穴
15a〜15c 通電端子
16a〜16c 窪み領域
17a〜17c はんだ
18a R付け部
19a 面取り部
20 マグネットワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7