特許第6552794号(P6552794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6552794-食品の加熱方法とこれに使用する加熱袋 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552794
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】食品の加熱方法とこれに使用する加熱袋
(51)【国際特許分類】
   A47J 36/28 20060101AFI20190722BHJP
【FI】
   A47J36/28
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-149594(P2014-149594)
(22)【出願日】2014年7月23日
(65)【公開番号】特開2016-22245(P2016-22245A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】506193028
【氏名又は名称】株式会社オオサキ
(74)【代理人】
【識別番号】100083884
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 睦美
(72)【発明者】
【氏名】沢本 哲
(72)【発明者】
【氏名】水山 景子
【審査官】 黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0210996(US,A1)
【文献】 特開2010−201048(JP,A)
【文献】 実開平01−150581(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3069642(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3132457(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 36/28
B65D 81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、水と接触して発熱反応を起こして高熱蒸気を発生する発熱剤と、食品をそれぞれ加熱袋内に収納し、袋内で食品の加熱を行う方法において、加熱袋としてはその材質の主成分がポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホン、非晶ポリアリルート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリエーテルケトン、液晶ポリマー及びこれに炭酸カルシウム、酸化チタン、及びタルクから選ばれた無機化合物粉末を練り合わせた耐熱性フィルムであり150℃の高温においても耐熱性を有し、常態で柔軟性があり、且つ内部で発生した高温蒸気により自在に膨張変形するものを使用し、該加熱袋内に食品の全部と発熱剤を加熱袋内で接触させるように収納した後、その上縁に設けられた結束片を結んで加熱袋の開口部を封鎖し、食品の全部を加熱剤表面の高温を利用して直接加熱するとともに、水と発熱剤が接触して発生した高温蒸気で膨張変形した加熱袋内を長時間対流させ、食品と十分に接触させて加熱することを特徴とする食品の加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水と反応する発熱剤の食品加熱を効果的に行うための加熱方法とこれに使用する加熱袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように水と化学物質の発熱反応を利用した発熱剤としては酸化カルシウム系及び粉末
金属アルミニウム混合物系などが食品の簡易加熱として商品化されている。
【0003】
一方、これらの加熱剤を使用して食品を加熱する場合の加熱用具としては、上方に蒸気排気孔を
有したスタンディング加熱袋及び事前に設置された水の入った袋を附属する誘導系などを引っ張ることにより、水と酸化カルシウム系及びアルミニウム系発熱剤と反応させるものが実用化されている。
【0004】
周知のように酸化カルシウム系で発生する蒸気温度は水との混合比により異なるが、最高で
90℃前後であり、アルミニウム金属系では95〜98℃が最高蒸気温度である。
【0005】
しかし、水との反応熱によって発熱剤の表面温度は酸化カルシウム系で100℃以上、アルミニ
ウム系では150〜200℃にもなる。
【0006】
これらの加熱袋は基本的に加熱剤によって発生する高温蒸気と接触することにより食品を加熱
することを主な原理としている。
【0007】
これらの原理を参考図3にて説明すると、上部に高温蒸気抜き孔を有するスタンディング加熱袋内の底部に発熱剤を収納し、発熱剤上に両側に設けられた挟持具の間に複数の食品素材をスタンディングさせ、発熱反応より加熱された水を高温蒸気とし、これを食品素材に蒸気接触させ加熱するものである。
【0008】
これに使用する加熱袋は、高温蒸気による加熱処理中複数の食品素材にスタンディング状態を維持させるために、それ自体加熱処理中膨張変形しないような定形袋で構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、このスタンディング加熱法は、発熱反応より加熱された水を高温蒸気とし、この高温蒸気を食品素材に蒸気接触させ加熱する原理を用いるため、たとえば蒸気が通過する空間がない場合には、食品を効果的に加熱することができない欠点がある。
【0010】
また、発生する高温蒸気は加熱する食品素材間の空間を通過するが、空間が広い場所とほとんど空間がない所を通過する高温蒸気では食品の加熱状況は異なる。
【0011】
周知のように、流体(液体と気体)の流れはベルヌィの法則により、流れの速い方に流体が引き
込まれるが、このため空隔率が異なり、空隔率の差が大きい場合、高温蒸気の流れはすべて上向きでなく、空隔率の大きい空間を通して上向に早い速度で上昇し、空隔率の小さい空間では蒸気の上昇はほとんどなくなり、下向きに引き込まれる、逆に冷たい気体と接触する場合が多い。
【0012】
この結果、従来の加熱袋では食品素材が重なった場合、万遍なく効果的に加熱することが困難な
場合が多い。
【0013】
一方、従来のスタンディング加熱袋による加熱方法では食材の量、種類によっては加熱時倒れる場合が多々あり、加熱途中で90〜95℃蒸気により人にやけどなどを起こす危険性がある。
【0014】
そこで、本発明は水と、水と接触して発熱反応を起こして高温蒸気を発生する発熱剤と、食品をそれぞれ加熱袋内に収納し、袋内で食品の加熱を行う方法において、安全で、且つ効果的な加熱する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明では 水と、水と接触して発熱反応を起こして高温蒸気を発生する発熱剤と、食品をそれぞれ加熱袋内に収納し、袋内で食品の加熱を行う方法において、加熱袋を常態で柔軟性があり、且つ上記高温蒸気により自在に膨張変形するような材質で形成し、且つその上部開口部には封鎖部を設けたものを使用し、1又は2以上の食品の一部又は全部を発熱剤と直接接触するようにして袋内に収納し、開口部を封鎖後は発生する高温蒸気により加熱袋を自在に膨張変形させてその内部で食品を加熱するようにしたことを特徴とする食品の加熱方法とこれに使用する加熱袋を提案するものである。
【0016】
本発明は、加熱袋を上記高温蒸気により自在に膨張変形する材質と形態で形成し、且つその上部開口部には封鎖部を設けたものを使用し、食品の一部又は全部は発熱剤と直接接触するようにして袋内に収納し、開口部を封鎖後は発生する高温蒸気により加熱袋を自在に膨張変形させてその内部で食品を加熱するようにしたことを特徴とする食品の加熱方法である(図1参照)。
【0017】
即ち、本発明に係る加熱方法では食品の全部又はその一部は発熱剤個体表面の高温を利用して直接加熱されるため、効果的に加熱が行われる。
【0018】
本発明の加熱方法は、図1に示すように食品の全部がと発熱剤を加熱袋内で接触させることが最良である。また、食品と発熱剤との接触面積を増やすために発熱剤の包装形態を変えて接触面積を増やすのも効果的である。
【0019】
また、本発明における高温蒸気による加熱は、膨張変形させられた加熱袋内で行われるため、高温蒸気が加熱袋内を長時間対流し、食品とが十分に接触させられ、その結果効果的な加熱がされる。
【0020】
即ち、本発明に係る加熱方法は、発熱剤と水の反応より発生する発熱剤の個体表面の高温を利用して、食品を直接加熱することと発生する高温蒸気の両方の加熱熱源を利用する事を主な原理としている。
【0021】
本発明では発熱する高温蒸気を利用しつつ、発熱剤表面の高温反応熱源を利用するため、例えば
加熱に要するエネルギーが高いパックご飯、パックラーメンなどを効果的に加熱することがで
きる加熱袋を提供するものである。
【0022】
したがって、厳しい環境においても食品を効果的に加熱することができるようになった。
例えば冷寒地における防衛食、訓練食の加熱が困難とされていたパックご飯、レトルト食品の
パックセットを効果的に加熱することが可能になった。
【0023】
また、火を直接使用することができない山岳、行楽地における食品の加熱を簡単にかつまた有効的に行うことができる。
【0024】
一方、本発明の加熱方法では加熱袋が常態で柔軟性があり、且つ上記高温蒸気により自在に膨張変形するように形成されているため、内部に水、発熱剤、食品を収納した場合、それに応じて底辺面積が拡張されるように変形されるので、安定して加熱することができる。
【0025】
したがって、本発明の加熱方法は訓練食など移動携帯食の加熱、登山及び山岳活動救難活動、天災時の食品加熱、つりなどのアウトドアなどに最適である。
【0026】
本発明の加熱方法には、常態で柔軟性があり、且つ上記高温蒸気により自在に膨張変形するような材質で形成し、その上部開口部には封鎖具を設けたことを特徴とする加熱袋を使用する。
【0027】
高温蒸気により膨張変形する材質としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホン、非晶ポリアリレート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリエーテルケトン、液晶ポリマー及びこれらに炭酸カルシウム、酸化チタン、及びタルクのどの無機化合物粉末を練り合わせた150℃の高温においても耐熱性を有する耐熱フィルムを挙げることができる。
【0028】
また、高温蒸気により膨張変形する形態としては、開口部を封鎖した後、発生する高温蒸気圧により膨張が規制されないような形態、例えば袋状のものでよい。
【0029】
即ち、本発明に使用する加熱袋はスタンディング加熱袋のような定形袋ではなく、上方に開口部を有する食品素材の種類により型を自由に変えることができる形状である。
【0030】
本発明で提供する加熱袋は本質的にはレジ袋のような袋であり、耐熱性を有し加熱中においても
倒れない変型自在な容器である。
【0031】
更に、開口部の封鎖具としては、例えば開口部上縁両側に一対の結束片を設け、これら結束片を結ぶことに簡易に開口部を閉じるようにしてもよい。
【0032】
また、封鎖具として、開口部上縁両側に沿ってチャックを設けるようにしてもよい。
【0033】
更に、本発明に使用する加熱袋はスタンディング構成、チャック、蒸気孔が必要としないことから非常に安価で製造することができ、且つ加熱後、廃棄袋として使用もできる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
水と、水と接触して発熱反応を起こして高温蒸気を発生する発熱剤と、食品をそれぞれ加熱袋内に収納し、袋内で食品の加熱を行う方法において、加熱袋を常態で柔軟性があり、且つ上記高温蒸気により自在に膨張変形するような材質で形成し、且つその上部開口部には封鎖部を設けたものを使用し、食品の全部が発熱剤と接触するようにして袋内に収納し、開口部を封鎖後は発生する高温蒸気により加熱袋を自在に膨張変形させてその内部で食品を加熱するようにしたことを特徴とする食品の加熱方法。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】は、本発明の加熱方法を模式的に示すものであり、図1(a)は加熱前加熱袋内に発熱剤、水、食品を収納した状態、図1(b)は開口部上縁両側部に設けられた結束片を結び、発熱剤と水を接触させて食品を加熱する状態を示す図である。
図2】は、本発明の実施例で加熱袋を示すもので、図2(a)は側面図、図2(b)は正面図
図3】は、従来のスタンディング加熱袋による食品の加熱状態を示す図
【実施例】
【0036】
実施例1
1.条件
・本考案の加熱袋 :サイズ(26cm、26cm)(図2参照)
・スタンディング加熱袋:定形型で、サイズ(25cm 、25cm)
・発熱剤(アルミニウム系):70g
・加熱時間 :20分
・水量、水温 :180&#13206; , 15℃
・加熱素材 :パック白飯(200g、2個) レトルト食品2食

2.加熱結果
【0037】
【表1】
【0038】
実施例2
1.条件
・本考案の加熱袋 :サイズ(26cm , 26cm)(図2参照)
・スタンディング加熱袋 :定形型で、サイズ(25cm , 25cm)
・発熱剤(アルミニウム系):60g
・加熱時間 ;20分
・水量、水温 :150&#13206;、15℃
・加熱素材 :パック白飯(200g, 2個 レトルト食品2食)
2.加熱結果
【0039】
【表2】
【0040】
実施例3
1.条件
・本考案の加熱袋 :サイズ(26cm、26cm)(図2参照)
・スタンディング加熱袋:定形型で、サイズ(25cm、25cm)
・発熱剤(アルミニウム系):75g
・加熱時間 :20分
・水量、水温 :200&#13206; , 5℃
・加熱素材 :冷凍パック白飯(200g、2個) 中心温度−5℃)
レトルト食品2食


2.加熱結果
【0041】
【表3】
【0042】
以上実施例1−3によれば、本発明によれば従来のスタンディング及類似の加熱袋と比べ同量の加熱剤使用において加熱効果が150〜200%高まる。
【0043】
また、パック白飯(200g 2個)とレトルト食品(内容量200g 2個)を70gのアルミニウム系発熱剤で20分間加熱する場合、パック白飯の加熱状況は本発明では5点測定で平均70℃で
あったがスタンディング袋では平均約55℃であり、白飯の中心部は45℃であった。
【0044】
本発明において、たとえばパックご飯(200g 2個)レトルト食品2個を加熱剤60g〜80gで加熱する場合のサイズは図2(a)、(b)が最適であるが、発熱剤の大きさ、加熱食材量により自由に変えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上要するに、本発明によれば水と、水と接触して発熱反応を起こして高温蒸気を発生する発熱剤と、食品をそれぞれ加熱袋内に収納し、袋内で食品の加熱を行う方法において、廉価に製造できる加熱袋を使用して安全で、且つ効果的な加熱する方法を提供できる。
【符号の説明】
【0046】
1は、本発明に使用する加熱袋
2は発熱剤
3は食品
4,4は結束片
5,5は挟持片
6は通気口
図1
図2
図3