特許第6552802号(P6552802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三星ディスプレイ株式會社の特許一覧

特許6552802有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子
<>
  • 特許6552802-有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子 図000034
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552802
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20190722BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20190722BHJP
   C07C 211/61 20060101ALN20190722BHJP
   C07F 7/08 20060101ALN20190722BHJP
【FI】
   H05B33/22 D
   H05B33/14 A
   C09K11/06 690
   !C07C211/61CSP
   !C07F7/08 R
【請求項の数】5
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2014-214447(P2014-214447)
(22)【出願日】2014年10月21日
(65)【公開番号】特開2016-82158(P2016-82158A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110002619
【氏名又は名称】特許業務法人PORT
(72)【発明者】
【氏名】糸井 裕亮
【審査官】 横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0234118(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/090806(WO,A1)
【文献】 特開2007−137873(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0096639(US,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0133145(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0045019(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
C09K 11/06
C07C 211/61
C07F 7/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【化1】

[式(1)中、Xは酸素原子、硫黄原子、CR12R13、SiR14R15又はNR16であり、R1〜R16は置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数1以上30以下のヘテロアリール基、炭素数1以上15以下のアルキル基、シリル基、ハロゲン原子、水素原子又は重水素原子であり、Lは単結合、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基及び置換若しくは無置換の環形成炭素数1以上30以下のヘテロアリーレン基又はシリレン基であり、Arは置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換のナフチル基、置換若しくは無置換のビフェニル基、置換若しくは無置換のターフェニル基、置換若しくは無置換のフェナントリル基、置換若しくは無置換のジベンゾチオフェニル基、置換若しくは無置換のピリジル基である。]
【請求項2】
前記式(1)中、R2がフェニル基であり、下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【化2】
【請求項3】
前記式(1)中、R1及びR3が水素原子又は重水素原子であり、R2がフェニル基であり、R5がNとの単結合を形成し、下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【化3】
【請求項4】
隣接した複数のR1〜R16は結合し、飽和若しくは不飽和の環を形成する請求項1乃至3の何れか一に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を発光層と陽極との間に配置される積層膜の一つの膜中に含むことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。特に、青色発光領域において低電圧で駆動可能で、且つ高い発光効率を示す有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(Organic Electroluminescence Display:有機EL表示装置)の開発が盛んになってきている。有機EL表示装置は、液晶表示装置等とは異なり、陽極及び陰極から注入された正孔及び電子を発光層において再結合させることにより、発光層における有機化合物を含む発光材料を発光させて表示を実現するいわゆる自発光型の表示装置である。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)としては、例えば、陽極、陽極上に配置された正孔輸送層、正孔輸送層上に配置された発光層、発光層上に配置された電子輸送層及び電子輸送層上に配置された陰極から構成された有機エレクトロルミネッセンス素子が知られている。陽極からは正孔が注入され、注入された正孔は正孔輸送層を移動して発光層に注入される。一方、陰極からは電子が注入され、注入された電子は電子輸送層を移動して発光層に注入される。発光層に注入された正孔と電子とが再結合することにより、発光層内で励起子が生成される。有機エレクトロルミネッセンス素子は、その励起子の輻射失活によって発生する光を利用して発光する。尚、有機エレクトロルミネッセンス素子は、以上に述べた構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0004】
有機エレクトロルミネッセンス素子を表示装置に応用するにあたり、有機エレクトロルミネッセンス素子の低電圧駆動、高発光効率及び長寿命化が求められている。特に、青色発光領域においては、赤色発光領域及び緑色発光領域に比べて、有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動電圧が高く、発光効率及び寿命は十分なものとは言い難い。有機エレクトロルミネッセンス素子の低電圧駆動と高発光効率化及び長寿命化を実現するために、正孔輸送層の定常化、安定化などが検討されている。有機エレクトロルミネッセンス素子用材料として、芳香族アミン系化合物が知られているが、そのキャリア耐性の低さから有機エレクトロルミネッセンス素子の寿命に課題があった。有機エレクトロルミネッセンス素子の長寿命化に有利な材料として、例えば、特許文献1及び特許文献2には、ヘテロアリール環が置換したアミン誘導体が記載されている。
【0005】
しかしながら、これらの材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子も低電圧駆動、高発光効率及び長寿命化を充分に実現するものとは言い難く、現在では一層、駆動電圧が低く、発光効率が高く、且つ寿命の長い有機エレクトロルミネッセンス素子が望まれている。特に、赤色発光領域及び緑色発光領域に比べて、青色発光領域では、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率が低いため、発光効率の向上が求められている。有機エレクトロルミネッセンス素子の低電圧駆動と更なる高発光効率化及び長寿命化を実現するためには、新たな材料の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−267255号公報
【特許文献2】特開2009−029726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題を解決するものであって、低駆動電圧で、発光効率が高く、且つ寿命が長い有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【0008】
特に、本発明は、青色発光領域において、発光層と陽極との間に配置される積層膜の一つの膜に用いる低駆動電圧で、発光効率が高く、且つ寿命が長い有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によると、下記一般式(1)で表される有機エレクトロルミネッセンス素子用材料が提供される。
【化1】

式(1)中、Xは酸素原子、硫黄原子、CR12R13、SiR14R15又はNR16であり、R1〜R16は置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数1以上30以下のヘテロアリール基、炭素数1以上15以下のアルキル基、シリル基、ハロゲン原子、水素原子又は重水素原子であり、Lは単結合、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基及び置換若しくは無置換の環形成炭素数1以上30以下のヘテロアリーレン基又はシリレン基であり、Arは置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数1以上30以下のヘテロアリール基である。
【0010】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、[1,1':3',1''-ターフェニル]-2'-アミノ基にジベンゾヘテロール部位やフルオレン部位を導入することにより、アミンの特性を維持しつつ、アモルファス性が向上し、有機エレクトロルミネッセンス素子の形成に用いることで、低電圧駆動で、高い発光効率と長寿命化を実現することができる。特に、青色領域での顕著な効果を得ることができる。
【0011】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料において、前記式(1)中、R1及びR3が水素原子又は重水素原子であり、R2がフェニル基であり、下記一般式(2)で表されてもよい。
【化2】
【0012】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、嵩高い5'-フェニル-[1,1':3',1''-ターフェニル]-2'-アミノ基にジベンゾヘテロール部位やフルオレン部位を導入することにより、アミンの特性を維持しつつ、アモルファス性が向上し、有機エレクトロルミネッセンス素子の形成に用いることで、低電圧駆動で、高い発光効率と長寿命化を実現することができる。特に、青色領域での顕著な効果を得ることができる。
【0013】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料において、前記式(1)中、R1及びR3が水素原子又は重水素原子であり、R2がフェニル基であり、R5がNとの単結合を形成し、下記一般式(3)で表されてもよい。
【化3】
【0014】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、嵩高い5'-フェニル-[1,1':3',1''-ターフェニル]-2'-アミノ基をジベンゾヘテロール部位やフルオレン部位のR5の位置に導入することにより、アミンの特性を維持しつつ、アモルファス性が向上し、有機エレクトロルミネッセンス素子の形成に用いることで、低電圧駆動で、高い発光効率と長寿命化を実現することができる。特に、青色領域での顕著な効果を得ることができる。
【0015】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料において、隣接した複数のR1〜R16は結合し、飽和若しくは不飽和の環を形成してもよい。
【0016】
また、本発明の一実施形態によると、前記何れかの有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を発光層と陽極との間に配置される積層膜の一つの膜中に含む有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0017】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光層と陽極との間に配置される積層膜の一つの膜に、[1,1':3',1''-ターフェニル]-2'-アミノ基にジベンゾヘテロール部位やフルオレン部位を導入した材料を用いることにより、アミンの特性を維持しつつ、アモルファス性が向上し、低電圧駆動で、高い発光効率と長寿命化を実現することができる。特に、青色領域での顕著な効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、低駆動電圧で、発光効率が高く、且つ寿命が長い有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。特に、本発明によると、青色発光領域において、陽極との間に配置される積層膜の一つの膜に用いる低駆動電圧で、発光効率が高く、且つ寿命が長い有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。本発明は、[1,1':3',1''-ターフェニル]-2'-アミノ基にジベンゾヘテロール部位やフルオレン部位を導入することで、高効率化と長寿命化を実現することができる。長寿命な正孔輸送材料であるアミンを、嵩高い[1,1':3',1''-ターフェニル]-2'-アミン誘導体とすることで、アミンの特性を維持しつつ、アモルファス性が向上し、有機エレクトロルミネッセンス素子の高い発光効率と長寿命化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上述の問題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは、[1,1':3',1''-ターフェニル]-2'-アミノ基にジベンゾヘテロール部位やフルオレン部位を導入することにより、アミンの特性を維持しつつ、アモルファス性が向上し、有機エレクトロルミネッセンス素子の低電圧駆動、高い発光効率と長寿命化を実現することができることを見出した。
【0021】
以下、図面を参照して本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子について説明する。但し、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0022】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、下記一般式(1)で示されるアミン誘導体を含む。
【化4】
【0023】
式(1)中、Xは酸素原子、硫黄原子、CR12R13、SiR14R15又はNR16である。R1〜R16は置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数1以上30以下のヘテロアリール基、炭素数1以上15以下のアルキル基、シリル基、ハロゲン原子、水素原子又は重水素原子である。Lは単結合、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基及び置換若しくは無置換の環形成炭素数1以上30以下のヘテロアリーレン基又はシリレン基である。Arは置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数1以上30以下のヘテロアリール基である。
【0024】
ここで、R1〜R16に用いる置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クォーターフェニル基、キンクフェニル基、セキシフェニル基、フルオレニル基、トリフェニレン基、ビフェニレン基、ピレニル基、ベンゾフルオランテニル基、クリセニル基等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
R1〜R16に用いる置換若しくは無置換の環形成炭素数1以上30以下のヘテロアリール基としては、ベンゾチアゾリル基、チオフェニル基、チエノチオフェニル基、チエノチエノチオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフリル基、ジベンゾチオフェニル基、ジベンゾフリル基、N−アリールカルバゾリル基、N−ヘテロアリールカルバゾリル基、N−アルキルカルバゾリル基、フェノキサジル基、フェノチアジル基、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジル基、キノリニル基、キノキサリル基等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
また、R1〜R16に用いる炭素数1以上15以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、1−ノルボルニル基、2−ノルボルニル基等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0027】
また、Lに用いる置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、フェナントリレン基、ビフェニリレン基、ターフェニリレン基、クォーターフェニリレン基、キンクフェニレン基、セキシフェニレン基、フルオレニレン基、トリフェニレニレン基、ビフェニレニレン基、ピレニレン基、ベンゾフルオランテニレン基、クリセニレン基等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
また、Lに用いる置換若しくは無置換の環形成炭素数1以上30以下のヘテロアリーレン基としては、ベンゾチアゾリレン基、チオフェニレン基、チエノチオフェニレン基、チエノチエノチオフェニレン基、ベンゾチオフェニレン基、ベンゾフリレン基、ジベンゾチオフェニレン基、ジベンゾフリレン基、N−アリールカルバゾリレン基、N−ヘテロアリールカルバゾリレン基、N−アルキルカルバゾリレン基、フェノキサジレン基、フェノチアジレン基、ピリジレン基、ピリミジレン基、トリアジレン基、キノリニレン基、キノキサリレン基等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
Arに用いる置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クォーターフェニル基、キンクフェニル基、セキシフェニル基、フルオレニル基、トリフェニレン基、ビフェニレン基、ピレニル基、ベンゾフルオランテニル基、クリセニル基等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
Arに用いる置換若しくは無置換の環形成炭素数1以上30以下のヘテロアリール基としては、ベンゾチアゾリル基、チオフェニル基、チエノチオフェニル基、チエノチエノチオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフリル基、ジベンゾチオフェニル基、ジベンゾフリル基、N−アリールカルバゾリル基、N−ヘテロアリールカルバゾリル基、N−アルキルカルバゾリル基、フェノキサジル基、フェノチアジル基、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジル基、キノリニル基、キノキサリル基等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、[1,1':3',1''-ターフェニル]-2'-アミノ基にジベンゾヘテロール部位やフルオレン部位を導入することにより、アミンの特性を維持しつつ、アモルファス性が向上し、有機エレクトロルミネッセンス素子の形成に用いることで、低電圧駆動で、高い発光効率と長寿命化を実現することができる。特に、青色領域での顕著な効果を得ることができる。
【0032】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、式(1)中、R2がフェニル基であることが好ましい。好ましくは、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、下記一般式(2)で表される。
【化5】
【0033】
一実施形態において、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、嵩高い5'-フェニル-[1,1':3',1''-ターフェニル]-2'-アミノ基にジベンゾヘテロール部位やフルオレン部位を導入することにより、アミンの特性を維持しつつ、アモルファス性が向上し、有機エレクトロルミネッセンス素子の形成に用いることで、低電圧駆動で、高い発光効率と長寿命化を実現することができる。特に、青色領域での顕著な効果を得ることができる。
【0034】
また、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、式(1)中、R1及びR3が水素原子又は重水素原子であり、R2がフェニル基であり、R5がNとの単結合を形成することが好ましい。好ましくは、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、下記一般式(3)で表される。
【化6】
【0035】
なお、式(1)中のR5は、Xが酸素原子又は硫黄原子の場合、下記一般式(4)の3位の位置に対応する。
【化7】
【0036】
また、式(1)中のR5は、XがCR12R13、SiR14R15又はNR16の場合、下記一般式(5)の2位の位置に対応する。
【化8】
【0037】
なお、ジベンゾヘテロール環(式(4))の置換位置の番号付けについては、ヘテロ原子が下側に配置されるようにジベンゾヘテロール環を置いた場合に最右に位置する環の骨格原子(ただし、縮合位置の炭素を除く)から順に時計回りに付した。また、カルバゾール環(式(5))の置換位置の番号付けについては、X(炭素原子、ケイ素原子又は窒素原子)が上側に配置されるようにカルバゾール環を置いた場合に最右に位置する環の骨格原子(ただし、縮合位置の炭素を除く)から順に時計回りに付した。
【0038】
一実施形態において、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、嵩高い5'-フェニル-[1,1':3',1''-ターフェニル]-2'-アミノ基をジベンゾヘテロール部位やフルオレン部位のR5の位置に導入することにより、アミンの特性を維持しつつ、アモルファス性が向上し、有機エレクトロルミネッセンス素子の形成に用いることで、低電圧駆動で、高い発光効率と長寿命化を実現することができる。特に、青色領域での顕著な効果を得ることができる。
【0039】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、隣接した複数のR1〜R16が結合し、飽和若しくは不飽和の環を形成してもよい。
【0040】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化9】
【0041】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化10】
【0042】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化11】
【0043】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化12】
【0044】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化13】
【0045】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化14】
【0046】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化15】
【0047】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化16】
【0048】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化17】
【0049】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化18】
【0050】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化19】
【0051】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化20】
【0052】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層と陽極との間に配置された積層膜の何れか一層に用いることができる。これにより、アミンの特性を維持しつつ、アモルファス性が向上し、有機エレクトロルミネッセンス素子の低駆動電圧化と高い発光効率、長寿命化を実現することができる。
【0053】
(有機エレクトロルミネッセンス素子)
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100を示す模式図である。有機エレクトロルミネッセンス素子100は、例えば、基板102、陽極104、正孔注入層106、正孔輸送層108、発光層110、電子輸送層112、電子注入層114及び陰極116を備える。一実施形態において、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層と陽極との間に配置された積層膜の何れか一層に用いることができる。
【0054】
例えば、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を正孔輸送層108に用いる場合について説明する。基板102は、例えば、透明ガラス基板や、シリコン等から成る半導体基板、樹脂等のフレキシブルな基板であってもよい。陽極104は、基板102上に配置され、酸化インジウムスズ(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)等を用いて形成することができる。正孔注入層106は、陽極104上に配置され、例えば、4,4′,4′′-Tris[2-naphthyl(phenyl)amino]triphenylamine(2-TNATA)、N,N,N′,N′-Tetrakis(3-methylphenyl)-3,3′-dimethylbenzidine(HMTPD)等を含む。正孔輸送層108は、正孔注入層106上に配置され、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いて形成される。一実施形態において、正孔輸送層108の厚さは3nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0055】
発光層110は、正孔輸送層108上に配置され、縮合多環芳香族の誘導体を含有することが好ましく、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、フルオラレンテン誘導体、クリセン誘導体、ベンゾアントラセン誘導体及びトリフェニレン誘導体から選択されることが好ましい。特に、発光層110は、アントラセン誘導体又はピレン誘導体を含有することが好ましい。発光層110に用いるアントラセン誘導体としては、下記一般式(6)で示される化合物が挙げられる。
【化21】
【0056】
式(6)中、R21〜R30は置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数1以上30以下のヘテロアリール基、炭素数1以上15以下のアルキル基、シリル基、ハロゲン原子、水素原子あるいは重水素原子である。また、a及びbは0以上5以下の整数である。なお、隣接した複数のR21〜R30は結合し、飽和若しくは不飽和の環を形成してもよい。
【0057】
R21〜R30に用いる置換若しくは無置換の環形成炭素数1以上30以下のヘテロアリール基としては、ベンゾチアゾリル基、チオフェニル基、チエノチオフェニル基、チエノチエノチオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフリル基、ジベンゾチオフェニル基、ジベンゾフリル基、N−アリールカルバゾリル基、N−ヘテロアリールカルバゾリル基、N−アルキルカルバゾリル基、フェノキサジル基、フェノチアジル基、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジル基、キノリニル基、キノキサリル基等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
R21〜R30に用いる置換若しくは無置換の環形成炭素数1以上30以下のヘテロアリール基としては、ベンゾチアゾリル基、チオフェニル基、チエノチオフェニル基、チエノチエノチオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフリル基、ジベンゾチオフェニル基、ジベンゾフリル基、N−アリールカルバゾリル基、N−ヘテロアリールカルバゾリル基、N−アルキルカルバゾリル基、フェノキサジル基、フェノチアジル基、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジル基、キノリニル基、キノキサリル基等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
また、R21〜R30に用いる炭素数1以上15以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、1−ノルボルニル基、2−ノルボルニル基等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0060】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層110に用いるアントラセン誘導体は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化22】
【0061】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層110に用いるアントラセン誘導体は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【化23】
【0062】
発光層110は、例えば、スチリル誘導体(例えば、1,4-bis[2-(3-N-ethylcarbazoryl)vinyl]benzene(BCzVB)、4-(di-p-tolylamino)-4’-[(di-p-tolylamino)styryl]stilbene(DPAVB)、N-(4-((E)-2-(6-((E)-4-(diphenylamino)styryl)naphthalen-2-yl)vinyl)phenyl)-N-phenylbenzenamine(N-BDAVBi)、ペリレンおよびその誘導体(例えば、2,5,8,11-tetra-t-butylperylene(TBPe))、ピレンおよびその誘導体(例えば、1,1-dipyrene、1,4-dipyrenylbenzene、1,4-Bis(N,N-Diphenylamino)pyrene)等の2,5,8,11-Tetra-t-butylperylene(TBP)等のドーパントを含み、本発明においては特に限定されない。
【0063】
電子輸送層112は、発光層110上に配置され、例えば、Tris(8-hydroxyquinolinato)aluminium(Alq3)や含窒素芳香環を有する材料(例えば、1,3,5-tri[(3-pyridyl)-phen-3-yl]benzeneのようなピリジン環を含む材料や、2,4,6-tris(3’-(pyridin-3-yl)biphenyl-3-yl)-1,3,5-triazineのようなトリアジン環を含む材料、2-(4-(N-phenylbenzoimidazolyl-1-ylphenyl)-9,10-dinaphthylanthraceneのようなイミダゾール誘導体を含む材料)を含む材料により形成される。
【0064】
電子注入層114は、電子輸送層112上に配置され、例えば、フッ化リチウム(LiF)リチウム−8−キノリナート(Liq)等を含む材料により形成される。陰極116は、電子注入層114上に配置され、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)およびカルシウム(Ca)等の金属や酸化インジウムスズ(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)等の材料により形成される。上記薄膜は、真空蒸着、スパッタ、各種塗布など材料に応じた適切な成膜方法を選択することにより、形成することができる。
【0065】
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100においては、上述した本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いることにより、駆動電圧の低電圧化と高発光効率化を実現可能な正孔輸送層が形成される。なお、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、TFTを用いたアクティブマトリクスの有機EL発光装置にも適用することができる。
【0066】
また、本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100においては、上述した本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を発光層と陽極との間に配置された積層膜の何れか一層に用いることにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の低駆動電圧化と高い発光効率、長寿命化を実現することができる。
【実施例】
【0067】
(製造方法)
上述した本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、例えば、以下のように合成することができる。例えば、実施例化合物7を以下の反応により合成することができる。まず、中間体として、化合物Aを以下のように合成した。
【化24】
【0068】
アルゴン雰囲気下、500mLフラスコにジベンゾ[b,d]チオフェン5,5−ジオキシド(Dibenzo[b,d]thiophene 5,5-dioxide)(2.0g)と、濃硫酸(60mL)と、N−ブロモスクシンイミド(NBS)(3.29g)とを加え、室温で24時間撹拌した。撹拌後、反応混合物を冷水に注ぎ、析出した固体を吸引ろ過して溶媒を留去した。得られた粗成生物を水およびメタノールで洗浄し、白色固体の化合物A(2.0g,収率55%)を得た。FAB−MS測定により測定された化合物Aの分子量は、295であった。
【0069】
化合物Aを原料として、化合物Bは、例えば、以下の反応により合成することができる。
【化25】
【0070】
アルゴン雰囲気下、500mLフラスコに化合物A(10.1g)と、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4)(1.3g)とを加え、テトラヒドロフラン(THF)(174mL)溶媒中で、3時間加熱還流した。空冷後、混合物を酢酸エチルで抽出し、抽出液に硫酸マグネシウム(Mg2SO4)および活性白土を加えた後、吸引ろ過して溶媒を留去した。得られた粗生成物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(silica gel column chromatography)にて、ジクロロメタンとヘキサンとの混合溶媒を用いて精製し、薄黄色固体の化合物B(4.23g,収率47%)を得た。FAB−MS測定により測定された化合物Bの分子量は、263であった。
【0071】
また、化合物Bを原料として、化合物7は、例えば、以下の反応により合成することができる。
【化26】
【0072】
アルゴン雰囲気下、500mLの三つ口フラスコに、化合物B 1.50gと5’−フェニル−[1,1’:3’,1”−ターフェニル]−2’−アミン 0.900g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2(dba)3)クロロホルム付加体 0.340g、トリ−tert−ブチルホスフィン((t-Bu)3P) 0.150g、ナトリウムtert−ブトキシド 1.35gを加えて、75mL キシレン溶媒中で、120℃で10時間加熱攪拌した。空冷後、水を加えて有機層を分取し活性炭を入れ熱時濾過し、溶媒留去した。THF/ヘキサン混合溶媒で再結晶を行い、薄黄色固体の化合物7を1.54 g(収率80%)得た。
【0073】
FAB−MS測定により測定された化合物7の分子量は、686であった。また、H−NMR (CDCl3)測定で測定された実施例化合物7のケミカルシフト値δは、8.45(d,2H,J=7.82Hz)、7.98(d,2H,J=7.80Hz)、7.80(d,2H,J=7.60Hz)、7.55−7.50(m,12H)、7.42−7.39(m,5H)、7.08−7.01(m,6H)、6.89−6.80(m,2H)であった。
【0074】
上述した化合物1、5、6、7、17、41、65及び81を正孔輸送材料として用いて、上述した製造方法により、実施例1〜8の有機エレクトロルミネッセンス素子を形成した。
【化27】
【0075】
また、比較例として、下記の化合物85〜87を正孔輸送材料として用いて、比較例1〜3の有機エレクトロルミネッセンス素子を形成した。
【化28】
【0076】
本実施例においては、基板102には透明ガラス基板を用い、150nmの膜厚のITOで陽極104を形成し、60nmの膜厚の2−TNATAで正孔注入層106を形成し、実施例及び比較例の化合物を用いて70nmの膜厚の正孔輸送層108を形成し、ADNにTBPを3%ドープした25nmの膜厚の発光層110を形成し、25nmの膜厚のAlq3で電子輸送層112を形成し、1nmの膜厚のLiFで電子注入層114を形成し、100nmの膜厚のAlで陰極116を形成した。
【0077】
作成した有機エレクトロルミネッセンス素子について、電圧及び発光効率を評価した。なお、電流密度を10 mA/cmとして評価した。
【表1】
【0078】
表1の結果から、[1,1':3',1''-ターフェニル]-2'-アミノ基にジベンゾヘテロール部位やフルオレン部位を導入した実施例1〜8の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔輸送層に適応した場合、比較例の化合物に比して低電圧で駆動し、高い発光効率を示し、長寿命であることが判明した。これは、実施例1〜4の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料では、アミンの特性を維持しつつ、アモルファス性が向上したことによるものと推察される。
【0079】
また、式(1)中、R2がフェニル基である実施例化合物5を用いた実施例2の有機エレクトロルミネッセンス素子では、アモルファス性が向上し、有機エレクトロルミネッセンス素子がさらに長寿命化することが判明した。
【0080】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、[1,1':3',1''-ターフェニル]-2'-アミノ基にジベンゾヘテロール部位やフルオレン部位を導入することで、分子の平面性が崩れることにより、アミンの特性を維持しつつ、アモルファス性が向上し、有機エレクトロルミネッセンス素子の形成に用いることで、低電圧駆動で、高い発光効率と長寿命化を実現することができる。特に、青色領域での顕著な効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0081】
100 有機EL素子、102 基板、104 陽極、106 正孔注入層、108 正孔輸送層、110 発光層、112 電子輸送層、114 電子注入層、116 陰極
図1