(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記受信ゲイン保存部に、被検体の体重、水励起条件を表す情報、反転回復パルスの印加条件を表す情報、シミングの条件を表す情報、脂肪飽和パルスの印加条件を表す情報及び被検体の肥満度を表す体格指数の少なくとも1つを前記脂肪信号量の割合を表す情報として受信ゲインと関連付けて保存した請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記受信ゲイン保存部に、撮像シーケンスの識別情報、被検体の撮像部位及び使用される高周波コイルの識別情報の少なくとも1つを前記撮像条件として受信ゲインと関連付けて保存した請求項5乃至7のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記受信ゲイン取得部は、前記参照データとして取得された異なるコントラストを有する複数の参照画像データに基づいて前記水と脂肪の相対量を求めるように構成される請求項10記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記生成部は、前記画像データの生成用の前記磁気共鳴信号の収集に先立つ位置決め画像データの収集用のプレスキャンによって前記参照データの生成用の磁気共鳴信号を収集するように構成される請求項13記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置について添付図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成図である。
【0013】
磁気共鳴イメージング装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石21、この静磁場用磁石21の内側に設けられたシムコイル22、傾斜磁場コイル23及びRFコイル24を備えている。
【0014】
また、磁気共鳴イメージング装置20には、制御系25が備えられる。制御系25は、静磁場電源26、傾斜磁場電源27、シムコイル電源28、送信器29、受信器30、シーケンスコントローラ31及びコンピュータ32を具備している。制御系25の傾斜磁場電源27は、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27y及びZ軸傾斜磁場電源27zで構成される。また、コンピュータ32には、入力装置33、表示装置34、演算装置35及び記憶装置36が備えられる。
【0015】
静磁場用磁石21は静磁場電源26と接続され、静磁場電源26から供給された電流により撮像領域に静磁場を形成させる機能を有する。尚、静磁場用磁石21は超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源26と接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。また、静磁場用磁石21を永久磁石で構成し、静磁場電源26が設けられない場合もある。
【0016】
また、静磁場用磁石21の内側には、同軸上に筒状のシムコイル22が設けられる。シムコイル22はシムコイル電源28と接続され、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて静磁場が均一化されるように構成される。
【0017】
傾斜磁場コイル23は、X軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23y及びZ軸傾斜磁場コイル23zで構成され、静磁場用磁石21の内側において筒状に形成される。傾斜磁場コイル23の内側には寝台37が設けられて撮像領域とされ、寝台37には被検体Pがセットされる。RFコイル24にはガントリに内蔵されたRF信号の送受信用の全身用コイル(WBC: whole body coil)や寝台37や被検体P近傍に設けられるRF信号の受信用の局所コイルなどがある。
【0018】
また、傾斜磁場コイル23は、傾斜磁場電源27と接続される。傾斜磁場コイル23のX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23y及びZ軸傾斜磁場コイル23zはそれぞれ、傾斜磁場電源27のX軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27y及びZ軸傾斜磁場電源27zと接続される。
【0019】
そして、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27y及びZ軸傾斜磁場電源27zからそれぞれX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23y及びZ軸傾斜磁場コイル23zに供給された電流により、撮像領域にそれぞれX軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzを形成することができるように構成される。
【0020】
RFコイル24は、送信器29及び受信器30の少なくとも一方と接続される。送信用のRFコイル24は、送信器29からRF信号を受けて被検体Pに送信する機能を有し、受信用のRFコイル24は、被検体P内部の原子核スピンのRF信号による励起に伴って発生したMR信号を受信して受信器30に与える機能を有する。
【0021】
一方、制御系25のシーケンスコントローラ31は、傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30と接続される。シーケンスコントローラ31は傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30を駆動させるために必要な制御情報、例えば傾斜磁場電源27に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報を記憶する機能と、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30を駆動させることによりX軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場Gz及びRF信号を発生させる機能を有する。
【0022】
また、シーケンスコントローラ31は、受信器30におけるMR信号の検波及びA/D変換により得られた複素データである生データ(raw data)を受けてコンピュータ32に与えるように構成される。
【0023】
このため、送信器29には、シーケンスコントローラ31から受けた制御情報に基づいてRF信号をRFコイル24に与える機能が備えられる一方、受信器30には、RFコイル24から受けたMR信号を検波して所要の信号処理を実行するとともにA/D変換することにより、デジタル化された複素データである生データを生成する機能と、生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える機能とが備えられる。
【0024】
また、寝台37は、寝台駆動装置39を備えている。寝台駆動装置39は、コンピュータ32と接続され、コンピュータ32からの制御によって寝台37の天板(table)を所望の位置に移動させることができる。そして、被検体Pのイメージングを行う場合には、被検体Pの撮像位置が磁場中心となるように寝台37の位置決めが行われる。
【0025】
また、コンピュータ32の記憶装置36に保存されたプログラムを演算装置35で実行することにより、コンピュータ32には各種機能が備えられる。ただし、プログラムの少なくとも一部に代えて、各種機能を有する特定の回路を磁気共鳴イメージング装置20に設けてもよい。
【0026】
図2は、
図1に示す受信器30及びコンピュータ32の機能ブロック図である。
【0027】
MR信号の受信用のRFコイル24の出力側は、受信器30と接続される。受信器30は、RFコイル24から出力されるMR信号を増幅する増幅器30A、増幅されたMR信号をA/D変換するA/Dコンバータ30B及びA/D変換によってデジタル信号となったMR信号に対して必要な信号処理を施す信号処理部30Cを有する。信号処理部30Cにおける信号処理後のMR信号は、シーケンスコントローラ31を通じてコンピュータ32に出力される。
【0028】
コンピュータ32の演算装置35は、記憶装置36に保存されたプログラムを実行することにより撮像条件設定部40及びデータ処理部41として機能する。撮像条件設定部40は、受信ゲイン取得部40A、撮像パラメータ設定部40B、患者情報登録部40C及びゲイン設定パラメータ取得部40Dを有する。また、記憶装置36は、k空間データ記憶部42、画像データ記憶部43及びゲイン設定パラメータ記憶部44として機能する。
【0029】
撮像条件設定部40は、入力装置33からの指示情報に基づいてパルスシーケンスを含む撮像条件を設定し、設定した撮像条件をシーケンスコントローラ31に出力する機能を有する。尚、撮像条件設定部40において撮像条件として設定されたMR信号の受信ゲインは、シーケンスコントローラ31を通じて受信器30の増幅器30Aに出力される。これにより増幅器30Aでは、撮像条件設定部40において設定された受信ゲインでMR信号が増幅される。
【0030】
撮像条件設定部40の受信ゲイン取得部40Aは、撮像条件の1つとしてMR信号の受信ゲインを設定する機能を有する。特に、受信ゲイン取得部40Aは、イメージング用のMR信号の収集に先立って取得された撮像領域に対応する参照データ及び撮像条件に基づいてMR信号を受信するための受信ゲインを設定する機能を有している。
【0031】
受信ゲインを設定するための撮像条件としては、繰返し時間(TR: repetition time)、エコー時間(TE: echo time)及び反転回復(IR: inversion recovery)パルスの反転時間(TI: inversion time)等のMR信号の強度に影響を与える撮像パラメータを用いることができる。尚、TRはRF励起パルスから次のRF励起パルスまでの時間、TEはRF励起パルスの中心からMRエコー信号のピークまでの時間、TIはIRパルスからRF励起パルスまでの時間である。
【0032】
一方、受信ゲインを設定するために参照される参照データとしては、イメージング対象となる撮像領域からプレスキャンによって取得された画像データを用いることができる。そして、参照データとして取得された参照画像データに基づいてMR信号の強度に影響を与える空間位置ごとの被検体Pに固有の因子をパラメータとして求め、求めたパラメータに基づいて受信ゲインを設定することができる。
【0033】
MR信号の強度に影響を与える空間位置ごとの被検体Pに固有の因子としては、プロトン密度(PD: proton density)、縦緩和時間(T1: longitudinal relaxation time)及び横緩和時間(T2: transverse relaxation time)等の物性値が挙げられる。これらの物性値の空間分布は、異なるコントラストを有する複数の参照画像データに基づいて求めることができる。例えば、異なるTIに対応する複数の参照画像データの画像信号値に基づいて、各空間位置における信号の減衰の時定数としてT1分布やT2分布を計算することができる。
【0034】
但し、少ないデータ数でT1分布やT2分布を良好な精度で取得することは困難である場合もあるため、物性値に対応する指標値の空間分布を求めるようにしてもよい。実用的な例として、T1等の物性値の空間分布を直接求める代わりに、空間位置ごとの水と脂肪の相対量を求める方法が挙げられる。すなわち、T1等の物性値を間接的に表すパラメータとして、水と脂肪の相対量を用いることができる。
【0035】
そこで、以降では、異なるコントラストを有する複数の参照画像データに基づいて空間位置ごとの水と脂肪の相対量を求める場合を例に説明する。
【0036】
空間位置ごとの水と脂肪の相対量は、プレスキャンによって参照データとして取得された異なるコントラストを有する複数の画像データに基づいて簡易に求めることができる。例えば、脂肪抑制画像データと脂肪抑制を伴わない画像データとの間における差分画像データの信号値を参照することにより、脂肪信号(脂肪領域における画像信号)の分布として空間位置ごとの水と脂肪の比率を求めることができる。
【0037】
空間位置ごとの水と脂肪の相対量が求められると、水と脂肪の相対量に応じたPD、T1及びT2等のMR信号の強度に影響を与える物性値を空間位置ごとに近似的に求めることが可能となる。つまり、撮像位置におけるT1、T2、PD等の物性値のラフな空間分布を簡易に求めることができる。
【0038】
T1、T2、PD等の物性値の空間分布が求められると、参照データとして取得された参照画像データの空間位置ごとの画像信号値、T1、T2、PD等の空間位置ごとの物性値及びTR、TE及びTI等の撮像パラメータを用いて空間位置ごとのMR信号の最大値を見積もることが可能となる。そして、MR信号の最大値に対応する適切なMR信号の受信ゲインを設定することができる。
【0039】
更に、イメージング用のMR信号を収集するためのRFコイル24に対応する係数を用いて受信ゲインを設定することもできる。すなわち、受信ゲインに、RFコイル24の種類等に応じたオフセットを付与することができる。受信ゲインを設定するためのRFコイル24に対応する係数は経験的に定めることができる。
【0040】
式(2)及び式(3)は、スピンエコー(SE: spin echo)シーケンスによりMR信号を収集する場合における受信ゲインRGNの計算式の一例である。
Spmax(x, y, z)=kS(x, y, z)[1-exp{-TR/T1(x, y, z)}]exp{-TE/T2(x, y, z)} (2)
RGN=20log
10(DR/Smax)+preRGN (3)
但し、式(2) 及び式(3)においてSpmax(x, y, z)は撮像位置(x, y, z)における画像信号値の最大値の推定値、kはMR信号の受信用に用いられるRFコイル24に固有の係数、S(x, y, z)は撮像位置(x, y, z)における参照画像データの画像信号値、T1(x, y, z)は撮像位置(x, y, z)における水と脂肪の相対量に応じたT1、T2(x, y, z)は撮像位置(x, y, z)における水と脂肪の相対量に応じたT2、DRはA/Dコンバータ30Bのダイナミックレンジ、Smaxは全ての撮像位置(x, y, z)における画像信号値の最大値の推定値Spmax(x, y, z)の最大値、preRGNは受信ゲインの初期値である。
【0041】
参照画像データの画像信号値S(x, y, z)は、RFコイル24の感度分布に相当する。従って、参照画像データとしてRFコイル24の感度マップを収集するためのプレスキャンを実行することにより画像信号値S(x, y, z)を取得することができる。RFコイル24に固有の係数kは、RFコイル24を構成する回路の特性に応じた値となり、経験的に決定することができる。
【0042】
尚、式(2)及び式(3)はSE系のシーケンスに対応する受信ゲインの計算式の一例であるが、フィールド・エコー(FE: field echo)系のシーケンスやIRパルスの印加を伴うIRシーケンスの場合においても、T1、T2、PD等の位置ごとの物性値、TR、TE及びTI等の撮像パラメータ、プレスキャンにより収集された位置ごとの画像信号値並びにRFコイル24に固有の係数に基づいて、撮像位置に対応する画像信号値の最大値を同様に計算することができる。
【0043】
FEシーケンスの場合には、式(2)におけるT2(x, y, z)をT2スターT2
*(x, y, z)に置き換えればよい。但し、RFパルスのフリップ角(FA: flip angle)がαである場合には、撮像位置(x, y, z)における画像信号値の最大値の推定値Spmax(x, y, z)が式(4)によって求められる。
Spmax(x, y, z)=kS(x, y, z)sinα[1-exp{-TR/T1(x, y, z)}]exp{-TE/T2
*(x, y, z)}/[1-cosαexp{-TR/T1(x, y, z)}] (4)
【0044】
また、SE系のIRシーケンスの場合には、撮像位置(x, y, z)における画像信号値の最大値の推定値Spmax(x, y, z)が式(5)によって求められる。
Spmax(x, y, z)=kS(x, y, z)[1-2exp{-TI/T1(x, y, z)}][1-exp{-TR/T1(x, y, z)}]exp{-TE/T2(x, y, z)} (5)
尚、FE系のIRシーケンスの場合には、式(5)におけるT2(x, y, z)をT2
*(x, y, z)に置き換えればよい。
【0045】
このように、緩和による信号強度の変化を考慮して画像信号の最大値を求める理論式を用いて、撮像位置に対応する画像信号値の最大値を計算することができる。そして、最大値を有する画像信号が収集された場合でも、A/Dコンバータ30Bのダイナミックレンジが飽和しないように適切な受信ゲインを設定することができる。
【0046】
つまり、撮像シーケンスに応じて、水及び脂肪の相対量に応じた空間位置ごとのPD、T1及びT2の少なくとも1つの物性値と、TR、TE及びIR法におけるTIの少なくとも1つの撮像パラメータを用いた演算によって受信ゲインを算出することができる。
【0047】
受信ゲインの計算に必要となる水と脂肪の相対量に応じたT1等の物性値は、水の物性値と脂肪の物性値とを、水と脂肪の相対量に応じた重みで重み付け加算して得られる値とすることができる。この場合、物性値の分布データは、水と脂肪の相対量に対応する多値のデータとなる。
【0048】
但し、データ処理量及びデータ量を低減できるように、水と脂肪の相対量に応じた物性値の分布を、水に対応する物性値と脂肪に対応する物性値のいずれかを値として有する分布にすることができる。
【0049】
つまり、式(2)における水と脂肪の相対量に応じたT1(x, y, z)を、水のT1及び脂肪のT1のいずれかを値として有する2値の分布データとすることができる。同様に、水と脂肪の相対量に応じたT2(x, y, z)を、水のT2及び脂肪のT2のいずれかを値として有する2値の分布データとすることができる。これにより、受信ゲインの計算を簡易にすることができる。
【0050】
物性値の分布データを水の物性値又は脂肪の物性値の2値を呈するデータとする場合には、各空間位置が水に対応するのか或いは脂肪に対応するのかが特定されればよい。従って、例えば、脂肪抑制画像データと非脂肪抑制画像データとの間における差分画像データの画素値に対する閾値処理によって各空間位置を脂肪に対応する位置と、水に対応する位置とに分類することができる。つまり、脂肪抑制効果が一定以上得られる空間位置は脂肪に対応する位置であると判定することができる。一方、その他の空間位置は、水に対応する位置であると判定することができる。
【0051】
このような脂肪抑制画像データと非脂肪抑制画像データとの間における差分画像データの画素値に対する閾値処理によって、空間位置を水と脂肪に分類することができる。そうすると、各空間位置に水又は脂肪の物性値を割り当てることができる。その結果、式(2)等によって水に対応する位置における画像信号の最大値及び脂肪に対応する位置における画像信号の最大値をそれぞれ計算し、式(3)によって画像信号の最大値から簡易に受信ゲインを計算することができる。
【0052】
従って、少なくともプレスキャンで取得された参照画像データの空間位置における画像信号値又はRFコイル24に固有の係数と画像信号値との乗算値等の画像信号値に対応する値を、受信ゲインの設定用の空間位置ごとのパラメータとして扱うことができる。加えて、空間位置ごとの水と脂肪の相対量又は水と脂肪の相対量に対応する空間位置ごとの物性値を、受信ゲインの設定用の空間位置ごとのパラメータとして扱うことができる。また、データ処理簡易化のために各空間位置が水であるのか脂肪であるのかを識別する情報を受信ゲインの設定用のパラメータとしてもよい。
【0053】
撮像パラメータ設定部40Bは、TR、TE及びTI等のイメージング用の撮像パラメータを設定する機能を有する。設定された撮像パラメータは、受信ゲインの設定のために受信ゲイン取得部40Aに通知される。
【0054】
患者情報登録部40Cは、入力装置33から入力される指示情報に従って、イメージング対象となる被検体Pの氏名、身長及び体重等の患者情報を登録する機能を有する。登録された患者情報のうち撮像パラメータの設定のための条件として参照される患者情報は、撮像パラメータ設定部40Bに通知される。
【0055】
ゲイン設定パラメータ取得部40Dは、プレスキャンによって取得された参照画像データをデータ処理部41から参照データとして取得し、参照データに基づいて上述したような受信ゲイン取得部40Aにおける受信ゲインの設定に用いられる脂肪信号の分布や水と脂肪の相対量等のパラメータを求める機能を有する。求められた受信ゲインの設定用のパラメータは、ゲイン設定パラメータ取得部40Dから受信ゲイン取得部40Aに通知される。
【0056】
また、ゲイン設定パラメータ取得部40Dにおいて求められた受信ゲインの設定用のパラメータは、ゲイン設定パラメータ記憶部44に保存することができる。加えて、予め取得した受信ゲインの設定用のパラメータについてもゲイン設定パラメータ記憶部44に保存することができる。具体的には、式(2)から式(5)に例示されるような計算式によって受信ゲインを計算するために必要なパラメータのうち、撮像パラメータ以外のパラメータを、ゲイン設定パラメータ記憶部44に保存することができる。
【0057】
例えば、式(2)及び式(3)で受信ゲインを計算する場合であれば、MR信号の受信用に用いられるRFコイル24に固有の係数k、撮像位置(x, y, z)における参照画像データの画像信号値S(x, y, z)、撮像位置(x, y, z)におけるT1(x, y, z)、撮像位置(x, y, z)におけるT2(x, y, z)をパラメータとしてゲイン設定パラメータ記憶部44に保存することができる。
【0058】
但し、上述したように、T1分布T1(x, y, z)及びT2分布T2(x, y, z)を、プレスキャンで得られるデータから高精度に求めることは困難である場合が多いため、T1分布T1(x, y, z)及びT2分布T2(x, y, z)の代わりに、撮像位置(x, y, z)における水と脂肪の相対量をパラメータとしてゲイン設定パラメータ記憶部44に保存することができる。或いは、撮像位置(x, y, z)が水であるのか脂肪であるのかを識別する情報をパラメータとしてゲイン設定パラメータ記憶部44に保存するようにしてもよい。
【0059】
また、RFコイル24の係数kと参照画像データの画像信号値S(x, y, z)とを乗じた値を、パラメータとしてゲイン設定パラメータ記憶部44に保存するようにしてもよい。更に、必要に応じて、他の係数を導入してもよい。従って、ゲイン設定パラメータ記憶部44には、参照画像データの画像信号値S(x, y, z)又は参照画像データの画像信号値S(x, y, z)に対応する値をパラメータとして保存することができる。
【0060】
このように、一旦、ゲイン設定パラメータ取得部40Dにおいて求められた受信ゲインの設定用のパラメータは、ゲイン設定パラメータ記憶部44を参照することによって繰返し用いることができる。
【0061】
従って、受信ゲイン取得部40Aでは、同一の被検体Pに対する撮像条件として設定された撮像位置と同一とみなせる撮像位置を含む新たな撮像条件が設定された場合には、既存の参照データ及び新たな撮像条件に基づいて新たなMR信号を受信するための新たな受信ゲインを設定することができる。同様に、撮像条件として設定された撮像位置の一部とみなせる撮像位置を含む新たな撮像条件が設定された場合においても、既存の参照データ及び新たな撮像条件に基づいて新たなMR信号を受信するための新たな受信ゲインを設定することができる。
【0062】
すなわち、撮像位置が同一であれば、新たにプレスキャンを実行しなくても、ゲイン設定パラメータ記憶部44に保存されたパラメータ及び撮像パラメータに基づいて新たな撮像条件に対応する適切な受信ゲインを設定することができる。
【0063】
以上のような機能を有するコンピュータ32の撮像条件設定部40は、静磁場用磁石21、シムコイル22、傾斜磁場コイル23及びRFコイル24等のハードウェアと協働することによって、撮像条件に従って被検体Pの撮像領域からMR信号を収集するデータ収集系として機能する。但し、同様な機能が備えられれば、他の構成要素によってデータ収集系を構成してもよい。更に、このデータ収集系には、イメージングスキャンによるMR信号の収集に先立つプレスキャンによって参照データの生成用のMR信号を収集する機能が備えられる。尚、可能な場合には参照データの生成用のMR信号を収集するためのプレスキャンを、位置決め画像データの収集用のプレスキャンとすることが効率的である。
【0064】
一方、データ処理部41は、イメージングスキャン又はプレスキャン等のスキャンによって収集されたMR信号に基づいて画像データを生成するデータ処理系としての機能を有する。具体的には、データ処理部41は、撮像条件設定部40において設定された撮像条件下におけるスキャンによって収集されたMR信号をシーケンスコントローラ31から取得してk空間データ記憶部42に形成されたk空間に配置する機能、k空間データ記憶部42からk空間データを取り込んでフーリエ変換(FT: Fourier transform)を含む画像再構成処理を施すことにより画像データを再構成する機能、再構成して得られた画像データを画像データ記憶部43に書き込む機能、画像データ記憶部43から取り込んだ画像データに必要な画像処理を施して表示装置34に表示させる機能を有する。
【0065】
特に、プレスキャンにより収集されたMR信号に対する画像再構成処理によって生成される画像データは、ゲイン設定パラメータ取得部40Dにおいて受信ゲインの設定用のパラメータを求めるために用いることができる。
【0066】
次に磁気共鳴イメージング装置20の動作及び作用について説明する。
【0067】
図3は、
図1に示す磁気共鳴イメージング装置20の動作の一例を示すフローチャートである。尚、ここでは、プレスキャンによって収集された参照画像データに基づいて撮像位置における水と脂肪の相対量をパラメータとして求め、水と脂肪の相対量に基づいてイメージングスキャン用のMR信号の受信ゲインを設定する場合を例に説明する。
【0068】
まず、予め寝台37に被検体Pがセットされ、静磁場電源26により励磁された静磁場用磁石21(超伝導磁石)の撮像領域に静磁場が形成される。また、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて撮像領域に形成された静磁場が均一化される。
【0069】
次にステップS1において、入力装置33の操作によって患者情報登録部40Cにより被検体Pの氏名、身長及び体重等の患者情報が登録される。登録された患者情報のうち撮像パラメータの設定のための条件として参照される患者情報は、撮像パラメータ設定部40Bに通知される。
【0070】
次にステップS2において、受信ゲイン取得部40Aは、MR信号の受信ゲインを初期値に設定する。すなわち、受信器30におけるA/Dコンバータ30Bのダイナミックレンジが飽和しないように、受信ゲイン取得部40AによりMR信号の受信ゲインの初期値として十分に低いゲインが設定される。例えば、受信ゲインの初期値はゼロや絶対値が小さい正又は負の値に設定することができる。
【0071】
次にステップS3において、プレスキャンによって位置決め画像データが収集される。典型的には、被検体Pのアキシャル断面画像データ、コロナル断面画像データ及びサジタル断面画像データ等の基準となる直交3断面画像データがプレスキャンによって収集される。
【0072】
具体的には、撮像条件設定部40からパルスシーケンス及び初期値に設定されたMR信号の受信ゲインを含む撮像条件がシーケンスコントローラ31に出力される。そうすると、シーケンスコントローラ31は、パルスシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29及び受信器30を駆動させることにより被検体Pがセットされた撮像領域に傾斜磁場を形成させるとともに、RFコイル24からRF信号を発生させる。
【0073】
このため、被検体Pの内部における核磁気共鳴により生じたMR信号が、RFコイル24により受信されて受信器30に与えられる。受信器30は、RFコイル24からMR信号を受けて、必要な信号処理を実行する。具体的には、受信器30の増幅器30Aでは、シーケンスコントローラ31から制御信号として与えられた受信ゲインの初期値でMR信号が増幅される。増幅されたMR信号は、A/Dコンバータ30BでA/D変換される。A/D変換後のMR信号には、信号処理部30Cにおいて必要な信号処理が施される。信号処理部30Cにおける信号処理後のMR信号は、シーケンスコントローラ31を通じてコンピュータ32に出力される。
【0074】
コンピュータ32では、データ処理部41によりMR信号がk空間データ記憶部42に形成されたk空間に配置される。続いて、k空間に配置されたMR信号を元データとする画像再構成処理によって基準となる画像データが位置決め画像データとして生成される。典型的には、被検体Pのアキシャル断面画像データ、コロナル断面画像データ及びサジタル断面画像データ等の基準となる直交3断面画像データが位置決め画像データとして生成される。これにより、ユーザは、位置決め画像データを参照して、続いて実行される他のプレスキャン用のデータ収集領域及び診断画像の撮像領域を設定することが可能となる。
【0075】
次にステップS4において、診断画像データを収集するためのイメージングスキャンに先だって実行すべき他のプレスキャンが実行される。位置決め画像データの収集を目的とするプレスキャン以外のプレスキャンとしては、静磁場のシミング用のデータを収集するためのプレスキャンやRFコイル24の感度分布の推定用のデータを収集するためのプレスキャンが挙げられる。
【0076】
次にステップS5において、イメージングスキャン用の撮像位置を含む撮像条件が撮像条件設定部40において設定される。例えば、イメージングスキャン用のTR、TE、TI等の撮像パラメータが撮像パラメータ設定部40Bにおいて設定される。
【0077】
次にステップS6において、撮像条件設定部40の受信ゲイン取得部40Aは、寝台37の移動等によって被検体Pの位置に変化があったか否かを判定する。イメージングスキャン用の撮像位置が新規に設定された場合や異なる撮像位置が再設定された場合には、撮像位置が同一でないと判定される。この場合、撮像条件設定部40はMR信号の受信ゲインの設定用のパラメータを求めるためのプレスキャンの実行指示を待つ待機状態となる。
【0078】
次にステップS7において、入力装置33から撮像条件設定部40に撮像パラメータ及び撮像断面の指示情報を含む撮像条件とともにプレスキャンの実行指示が入力される。これにより、受信器30の増幅器30AにおけるMR信号の受信ゲインを設定するために必要なパラメータを求めるための被検体Pのプレスキャンが実行される。
【0079】
具体例として、被検体Pのアキシャル断面、サジタル断面及びコロナル断面等の基準となる断面が、イメージングスキャン用の撮像領域をカバーする広い撮像視野で撮像断面として設定される。或いは、データ収集時間を短縮化するために、画像の解像度を低く設定したり、1次元(1D: one dimensional)のMRデータを収集するデータ収集条件としてもよい。
【0080】
すなわち、受信ゲインの設定パラメータを求めるためのプレスキャン用の条件として、データ収集時間の短縮化の観点からマトリクスサイズを小さく設定し、かつ適切な受信ゲインの設定パラメータを求める観点から撮影視野(FOV: field of view)を大きく設定することが望ましい。
【0081】
加えて、互いに異なるコントラストを有する複数の画像データが収集されるように、TR、TE及びTI等の撮像パラメータがプレスキャン用に設定される。好適な例として、STIR (short TI inversion recovery)パルス等の脂肪抑制パルスの印加を伴って脂肪抑制画像データを収集する撮像条件と、脂肪抑制を伴わずにPD画像データを収集するための撮像条件が設定される。
【0082】
そして、入力装置33から撮像条件設定部40にプレスキャンの開始指示が入力されると、MR信号の受信ゲインを初期値として、受信ゲインの設定パラメータを求めるためのMR信号が収集される。コンピュータ32のデータ処理部41では、プレスキャンによって収集されたMR信号を元データとする画像再構成処理が実行される。これにより、互いに異なるコントラストを有する複数の画像データが生成される。好適な例として、脂肪抑制画像データ及びPD画像データが取得される。
【0083】
次にステップS8において、ゲイン設定パラメータ取得部40Dにより、撮像領域における水と脂肪の相対量が空間位置ごとに算出される。水と脂肪の相対量は、コントラストの異なる画像データに基づいて任意の方法で算出することができる。
【0084】
実用的な例として、脂肪抑制画像データとPD画像データ等の非脂肪抑制画像データとの間における差分画像データを生成すると、差分画像データは脂肪抑制効果が高い画素位置では画素値が大きく、脂肪抑制効果が小さい画素位置では画素値がゼロに近い値となる。従って、差分画像データの画素値が大きい画素位置では脂肪量が多く、画素値がゼロに近い画素位置では脂肪量が少ないと考えることができる。つまり、差分画像データを、脂肪信号の分布と考えることができる。
【0085】
そこで、例えば、脂肪抑制画像データと非脂肪抑制画像データとの間における差分画像データの画素値の最大値で差分画像データを正規化すれば、各画素位置における脂肪の割合を数値化することができる。この結果、脂肪と水の相対量を画素位置ごとに求めることができる。
【0086】
次にステップS9において、ゲイン設定パラメータ取得部40Dは、MR信号の受信ゲインの設定用の被検体Pの撮像部位に固有のパラメータを確定する。具体的には、被検体Pの撮像部位における空間位置ごとの脂肪と水の相対量及びプレスキャンによって取得された被検体Pの撮像部位における画像データの空間位置ごとの信号値を受信ゲインの設定用のパラメータとすることができる。
【0087】
次にステップS10において、ゲイン設定パラメータ取得部40Dは、受信ゲインの設定用の空間位置ごとのパラメータを被検体Pの人体座標系における撮像位置と関連付けてゲイン設定パラメータ記憶部44に保存する。
【0088】
次にステップS11において、受信ゲイン取得部40Aは、ゲイン設定パラメータ記憶部44に保存された受信ゲインの設定用のパラメータと、イメージングスキャン用の撮像条件として設定されたTR、TE、TI等の撮像パラメータとを参照してイメージングスキャン用のMR信号の受信ゲインを設定する。このため、イメージングスキャン用のTR、TE、TI等の撮像パラメータが撮像パラメータ設定部40Bから受信ゲイン取得部40Aに通知される。
【0089】
具体的には、式(2)から式(5)に例示されるように、TR、TE、TI等のイメージングスキャン用の撮像パラメータ、T1、T2、PD等の位置ごとのMR信号の強度に影響を与える物性値、プレスキャンで収集された位置ごとの画像信号値並びにRFコイル24に固有の係数に基づいて適切なMR信号の受信ゲインを設定することができる。空間位置ごとのT1、T2、PD等の物性値については、パラメータとして保存された空間位置ごとの脂肪と水の相対量と、脂肪及び水のT1値及びT2値に基づいて決定することができる。
【0090】
簡易な方法で、空間位置ごとの物性値を求める場合には、脂肪と水の相対量に応じて各空間位置を脂肪に対応する位置と水に対応する位置とに分類し、脂肪に対応する位置には脂肪に対応する物性値を割り当てる一方、水に対応する位置には水に対応する物性値を割り当てる方法を採用することができる。この場合、T1、T2、PD等の物性値ごとに水に対応する物性値と脂肪に対応する物性値を値として有する2値の物性値分布データが取得される。そして、物性値分布データを用いて受信ゲインを計算することができる。
【0091】
次にステップS12において、プレスキャンと同様な流れでイメージングスキャンが実行される。但し、イメージングスキャンでは、ステップS11において受信ゲイン取得部40Aにより設定された受信ゲインが用いられる。このため、受信ゲイン取得部40Aにおいて設定された受信ゲインが撮像条件設定部40からシーケンスコントローラ31を通じて受信器30の増幅器30Aに与えられる。
【0092】
イメージングスキャンによって診断画像データが取得されると、ステップS13において、全てのイメージングスキャンが完了したか否かが撮像条件設定部40において判定される。同一の被検体Pについてイメージングスキャンを繰返す場合には、全てのイメージングスキャンが完了していないと判定される。そして、ステップS14において、撮像条件設定部40は、次のイメージングスキャンを実行するために、撮像位置が再設定されるか否かを判定する。例えば、撮像位置の指定待ち状態であれば、撮像位置が再設定されると判定することができる。
【0093】
撮像位置の再設定を行う場合には、再びステップS5において、撮像位置を含む撮像条件が設定される。そして、再設定された撮像位置が、前回のイメージングスキャン用の撮像位置と同一とみなせるか否かが、ステップS6において判定される。無視できない距離を寝台37が移動した場合のように、物性分布データの取得範囲を超えて撮像位置に変化があった場合には、撮像位置が同一でないと判定される。
【0094】
また、撮像位置の再設定を行わない場合であっても、被検体Pの無視できない動きによって寝台37に対する被検体Pの撮像部位の相対位置が変化する可能性がある。このため、撮像位置の再設定を行わない場合であっても、ステップS6における撮像位置に変化があるか否かの判定を行うことが好適である。
【0095】
撮像位置に変化があったと判定された場合には、ステップS7からステップS11までのプレスキャンを含む流れによって同様に受信ゲインが再設定される。この結果、新たな撮像位置に対応する受信ゲインの設定用のパラメータがゲイン設定パラメータ記憶部44に保存される。すなわち、ゲイン設定パラメータ記憶部44に保存されていた受信ゲインの設定用のパラメータが更新される。
【0096】
尚、撮像条件設定部40がステップS6における判定を実行できるように、撮像位置が同一であるか否かを示す情報を入力装置33から撮像条件設定部40に入力するようにしてもよい。また、入力装置33から撮像条件設定部40に入力される寝台37の移動指示情報に基づいて、撮像条件設定部40が撮像位置の変化を認識するようにしてもよい。
【0097】
また、被検体Pが寝台37に対して相対的に移動した場合及び寝台37が移動した場合には、プレスキャンによる位置決め画像の収集指示が入力装置33から撮像条件設定部40に入力される。従って、位置決め画像の収集に関する指示情報が入力装置33から撮像条件設定部40に入力された場合には、撮像条件設定部40が撮像位置に変化があったと判定するようにしてもよい。但し、位置決め画像の再収集用のプレスキャンについては図示を省略する。
【0098】
上述のように、撮像位置に変化があった場合には、通常、位置決め画像の収集用のプレスキャンが実行される。従って、位置決め画像の収集用のプレスキャンを、ステップS7における受信ゲインの決定用のプレスキャンと兼ねることが効率的である。すなわち、位置決め画像の収集用のプレスキャンにおいて、受信ゲインの設定に必要なデータ収集を行うことができる。これにより、撮像位置が変わった場合に実行すべきプレスキャンの増加を回避することができる。
【0099】
尚、ステップS3における初回の撮像位置の設定のために必要となる位置決め画像の収集時には、受信ゲインの初期値を用いることができるが、2回目以降の位置決め画像の収集は、ステップS7におけるプレスキャンによって実行することが効率的であるため、この場合にも受信ゲインの初期値が用いられることとなる。
【0100】
但し、ステップS3及びステップS4における各プレスキャンのいずれかに先だってステップS7における受信ゲインの設定パラメータを求めるためのプレスキャンを実行するようにしてもよい。その場合には、ステップS3及びステップS4における各プレスキャンのうち、所望のプレスキャン用の受信ゲインを初期値以外のデータ収集位置に応じた適切な値に設定することができる。つまり、ステップS3及びステップS4における各プレスキャンのうち、所望のプレスキャン用の受信ゲインを、イメージングスキャン用の受信ゲインと同様に求めるようにしてもよい。
【0101】
他方、ステップS6の判定において、次のイメージングスキャンの撮像位置が過去の撮像位置と同一であると判定される場合には、受信ゲインの設定に必要な撮像位置に対応するパラメータが既にゲイン設定パラメータ記憶部44に保存されているため、受信ゲインを設定するためのプレスキャンが不要となる。すなわち、ステップS7からステップS10までのプレスキャンを含む流れを省略することができる。
【0102】
そして、ステップS11では、次のイメージングスキャンの撮像パラメータと、ゲイン設定パラメータ記憶部44に保存されているパラメータを用いて受信ゲインを計算することができる。つまり、撮像位置が同一であれば、撮像パラメータが異なっていても撮像パラメータを更新した計算によって適切な受信ゲインを計算することができる。
【0103】
従って、受信ゲインの設定用のプレスキャンを実行した後に、撮像位置を変えずに、位置決め画像の収集用のプレスキャンを実行する場合には、位置決め画像の収集用のプレスキャンにステップS11で計算した受信ゲインを用いることができる。更に、その場合において、位置決め画像の収集用のプレスキャンにおける撮像パラメータと、イメージングスキャンにおける撮像パラメータとが異なる場合には、位置決め画像の収集後にイメージングスキャン用の撮像パラメータを用いてイメージングスキャン用の受信ゲインを再計算すればよい。
【0104】
このように、スキャンがイメージングスキャンであるのかプレスキャンであるのかを問わず、次の撮像位置が過去の撮像位置と同一であれば、受信ゲインの設定のためのプレスキャンを省略することができる。換言すれば、同一の撮像位置につき、受信ゲインの設定のために実行すべきプレスキャンの回数を1回にすることができる。
【0105】
つまり以上のような磁気共鳴イメージング装置20は、プレスキャンによって収集された参照データに基づいて空間位置ごとのMR信号の強度に影響を与える被検体Pに固有のパラメータを求め、求めたパラメータ及び撮像パラメータを用いてMR信号の受信ゲインを適切に設定できるようにしたものである。更に、磁気共鳴イメージング装置20は、一旦取得した受信ゲインの設定用のパラメータを保存し、被検体Pの撮像位置が同一であるとみなせる場合には、プレスキャンを実行せずに受信ゲインを設定できるようにしたものである。
【0106】
このため、磁気共鳴イメージング装置20によれば、被検体Pの撮像位置が概ね同じであれば、TR、TE、TI等の撮像パラメータが異なっていても、MR信号の受信ゲインを設定するためのプレスキャンが不要となる。この結果、撮像時間が短縮され、検査のスループットの向上を図ることができる。
【0107】
(第2の実施形態)
第2の実施形態における磁気共鳴イメージング装置では、コンピュータ32の機能が第1の実施形態における磁気共鳴イメージング装置20と相違する。第2の実施形態における磁気共鳴イメージング装置の他の構成及び作用については第1の実施形態における磁気共鳴イメージング装置20と実質的に異ならないため、受信器30及びコンピュータ32の機能ブロック図のみを図示し、同一の構成又は対応する構成については同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0108】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置に備えられる受信器30及びコンピュータ32の機能ブロック図である。
【0109】
第2の実施形態における撮像条件設定部40は、受信ゲイン取得部40A、撮像パラメータ設定部40B及び患者情報登録部40Cを有する。また、記憶装置36は、k空間データ記憶部42、画像データ記憶部43及び受信ゲインデータベース45として機能する。
【0110】
撮像条件設定部40は、入力装置33からの指示情報に基づいてパルスシーケンスを含む撮像条件を設定し、設定した撮像条件をシーケンスコントローラ31に出力する機能を有する。尚、撮像条件設定部40において撮像条件として設定されたMR信号の受信ゲインは、シーケンスコントローラ31を通じて受信器30の増幅器30Aに出力される。これにより増幅器30Aでは、撮像条件設定部40において設定された受信ゲインでMR信号が増幅される。
【0111】
撮像条件設定部40の受信ゲイン取得部40Aは、撮像条件の1つとしてMR信号の受信ゲインを設定する機能を有する。特に、受信ゲイン取得部40Aは、被検体Oのイメージング用に被検体Oの患者情報及びイメージングの撮像条件が特定された場合に、被検体Oの患者情報及びイメージングの撮像条件の少なくとも一方に基づいて患者情報及び撮像条件の少なくとも一方に応じた適切な受信ゲインを設定できるように構成されている。
【0112】
受信ゲインデータベース45は、患者情報及び撮像条件の少なくとも一方とMR信号の受信ゲインとを関連付けて保存する受信ゲイン保存部としての機能を有する。従って、受信ゲイン取得部40Aでは、被検体Pのイメージング用に特定された被検体Pの患者情報及びイメージングの撮像条件の少なくとも一方に基づいて受信ゲインデータベース45から対応する受信ゲインを取得することができる。
【0113】
図5は、
図4に示す受信ゲインデータベース45に保存される、患者情報及び撮像条件ごとの適切なMR信号の受信ゲインを示すテーブルの一例を示す図である。
【0114】
図5に例示されるように受信ゲインデータベース45には、互いに異なる複数の患者情報及び互いに異なる複数の撮像条件の少なくとも一方に対応する適切な複数の受信ゲインの値RGNを記憶することができる。
図5に示す例では、適切な受信ゲインを可変設定するための撮像条件として、撮像シーケンスの識別情報、被検体Pの撮像部位及び使用されるRFコイル24の識別情報が用いられている。また、受信ゲインの値として初期値からの変化量RGNが保存されている。もちろん受信ゲインの値自体を直接受信ゲインデータベース45に保存してもよい。
【0115】
すなわち、FEシーケンス、エコープラナーイメージング(EPI: echo planar imaging)シーケンス、FSE (fast spin echo) シーケンス、FASE (fast advanced spin echo/fast asymmetric spin echo) シーケンス、3次元高速フィールドエコー(3D FFE: three dimensional fast field echo) シーケンス等の撮像シーケンスを特定するための名称が受信ゲインを決定するための撮像条件を表す撮像パラメータの1つとして用いられている。
【0116】
他に、頭部や腹部等の撮像部位及びHeadコイル、Flexコイル、Bodyコイル、Spineコイル等のRFコイル24の識別情報についても受信ゲインを決定するための撮像パラメータの1つとして用いることができる。尚、撮像に使用されるRFコイル24としては、受信感度が特に低いRFコイル24の識別情報又は特に高いRFコイル24の識別情報のみを撮像パラメータとして適切な受信ゲインと関連付けてもよい。また、撮像パラメータの値を特定しない場合には、全値合致として受信ゲインの特定テーブルを作成してもよい。
【0117】
受信ゲインと関連付けられる撮像パラメータとしては、単一又は複数の所望パラメータを用いることができる。従って、受信ゲインデータベース45には、撮像シーケンスの識別情報、被検体Pの撮像部位及び使用されるRFコイル24の識別情報の少なくとも1つを撮像条件として受信ゲインと関連付けて保存することができる。
【0118】
一方、
図5に示す例では、受信ゲインを決定するための患者情報を表すパラメータとして被検体Pの肥満度を表す体格指数(BMI: Body mass index)が用いられている。特に、MR信号に含まれる脂肪信号量の割合は、受信ゲインの値の最適化のためのパラメータとして支配的である。従って、受信ゲインデータベース45には、MR信号に含まれる脂肪信号量の割合を直接的又は間接的に表す情報を、受信ゲインと関連付けて保存することが好適である。
【0119】
MR信号に含まれる脂肪信号量の割合を表す情報としては、BMIの他、被検体Pの体重、水励起条件を表す情報、IRパルスの印加条件を表す情報、シミングの条件を表す情報、脂肪飽和(fat saturation)パルスの印加条件を表す情報が挙げられる。このため、MR信号に含まれる脂肪信号量の割合を表す複数の情報をパラメータとして組合わせることによって、脂肪からの信号量をより正確に推定できるようにしてもよい。
【0120】
従って、受信ゲインデータベース45には、被検体Pの体重、水励起条件を表す情報、IRパルスの印加条件を表す情報、シミングの条件を表す情報、脂肪飽和パルスの印加条件を表す情報及び被検体PのBMIの少なくとも1つを脂肪信号量の割合を表す情報として受信ゲインと関連付けて保存することが適切である。尚、IRパルス、水励起パルス、脂肪飽和パルス等のRFパルスの印加条件の具体例としては、RFパルスの有無、FA、RFパルスの種類、印加されるRFパルスの数、TI等のRFパルスの印加タイミングを特定するためのパラメータが挙げられる。
【0121】
受信ゲインデータベース45に保存される、受信ゲインの値を決定するための患者情報又は撮像条件を表すパラメータは、値とせずに値の範囲としてもよい。すなわち、患者情報又は撮像条件を表すパラメータの値に限らず、パラメータの値の範囲に適切な受信ゲインの値を関連付けてテーブルとして受信ゲインデータベース45に保存してもよい。
【0122】
また、BMIのように連続的な値をとり得るパラメータの場合には、パラメータの値と適切な受信ゲインの値とを関連付けた数式によって適切な受信ゲインの値を決定できるようにしてもよい。その場合には、パラメータの値に基づいて適切な受信ゲインの値を算出するための関数が受信ゲインデータベース45に保存される。
【0123】
適切な受信ゲインの値を算出するための関数は、シミュレーションや設計仕様等に基づいて理論的に、或いは実際の測定によって経験的に決定することができる。実際の測定によって受信ゲインの値を算出するための関数を決定する場合には、線形関数或いは高次関数、指数関数、対数関数等の任意の非線形関数を定義し、定義した関数の係数を、カーブフィッティング等によって求めればよい。この場合には、所望のパラメータの値に対応する受信ゲインの値が、補間によって算出されることになる。
【0124】
一方、IRパルスの有無やRFコイル24の識別情報のように、パラメータの値又は値の範囲と適切な受信ゲインの値とを一対一で対応させる場合においても、シミュレーションや設計仕様等に基づいて理論的に、或いは実際の測定によって経験的に決定することができる。
【0125】
受信ゲインデータベース45に上述したような、患者情報や撮像条件に応じた適切な受信ゲインの値を決定するための情報を保存すれば、受信ゲイン取得部40Aにおいて、受信ゲインデータベース45に保存された条件と、被検体Pのイメージング用に特定された条件とを照合することによって、特別なプレスキャンを実行することなく簡易に適切な受信ゲインの値を求めることが可能となる。すなわち、全ての条件が一致する受信ゲインの値をイメージング用の受信ゲインの値に設定することができる。
【0126】
特に、MR信号に含まれる脂肪信号量の割合を表す情報を条件として受信ゲインの値を求めるためのテーブルを受信ゲインデータベース45に保存すれば、受信ゲイン取得部40Aにおいて、イメージング用に特定された、適切な受信ゲインの値の決定に非常に支配的な脂肪信号量の割合を表す情報に基づいて受信ゲインデータベース45から対応する受信ゲインを取得することが可能となる。
【0127】
受信ゲインデータベース45に条件が合致する受信ゲインの値が保存されていない場合には、受信ゲインの初期値をゼロ又は十分に小さい値に設定したプレスキャンを実行することによってイメージング用の受信ゲインを決定することができる。具体的には、イメージングスキャンと同一の条件で、高い強度でMR信号が収集されるイメージング領域に限定したプレスキャンを実行してMR信号を収集し、収集されたMR信号の最大値に基づいて従来の式(1)によってイメージングスキャン用の受信ゲインを決定することができる。
【0128】
従って、受信ゲイン取得部40Aは、受信ゲインデータベース45に条件が合致する受信ゲインの値が保存されていない場合には、受信ゲインの設定用のプレスキャンで収集されたMR信号の値に基づいてイメージングスキャン用の受信ゲインを設定する機能を有している。尚、一旦、プレスキャンの実行によって設定された受信ゲインの値は、順次、受信ゲインデータベース45に、プレスキャンにおける患者情報及び撮像条件に含まれる任意の条件と関連付けて保存できるようにすることができる。
【0129】
一方、撮像条件設定部40の撮像パラメータ設定部40Bは、入力装置33から入力される指示情報に従って、パルスシーケンス、被検体Pの撮像部位及び使用されるRFコイル24等の撮像パラメータを設定する機能を有する。設定された撮像パラメータのうち受信ゲインの設定のための条件として参照される撮像パラメータは、受信ゲイン取得部40Aに通知される。
【0130】
患者情報登録部40Cは、入力装置33から入力される指示情報に従って、イメージング対象となる被検体Pの氏名、身長及び体重等の患者情報を登録する機能を有する。登録された患者情報のうち撮像パラメータの設定のための条件として参照される患者情報は、撮像パラメータ設定部40Bに通知される。一方、登録された患者情報のうち受信ゲインの設定のための条件として参照される患者情報は、受信ゲイン取得部40Aに通知される。
【0131】
他方、データ処理部41は、イメージングスキャン又はプレスキャン等のスキャンによって収集されたMR信号に基づいて画像データを生成する機能を有する。具体的には、データ処理部41は、撮像条件設定部40において設定された撮像条件下におけるスキャンによって収集されたMR信号をシーケンスコントローラ31から取得してk空間データ記憶部42に形成されたk空間に配置する機能、k空間データ記憶部42からk空間データを取り込んでFTを含む画像再構成処理を施すことにより画像データを再構成する機能、再構成して得られた画像データを画像データ記憶部43に書き込む機能、画像データ記憶部43から取り込んだ画像データに必要な画像処理を施して表示装置34に表示させる機能を有する。
【0132】
以上のような機能を有するコンピュータ32のデータ処理部41は、静磁場用磁石21、シムコイル22、傾斜磁場コイル23及びRFコイル24等のハードウェアと協働することによって、受信ゲイン取得部40Aにおいて取得された受信ゲインによる増幅を伴って被検体PのMR信号を受信し、受信したMR信号に基づいてMR画像データを生成する生成部として機能する。但し、同様な機能が備えられれば、他の構成要素によって生成部を構成してもよい。
【0133】
次に第2の実施形態における磁気共鳴イメージング装置の動作及び作用について説明する。
【0134】
図6は、第2の実施形態における磁気共鳴イメージング装置の動作の一例を示すフローチャートである。尚、
図3に示すフローチャートのステップと同様なステップには同符号を付して同様な部分の詳細な説明を省略する。
【0135】
まずステップS1からステップS5において、患者情報の登録、受信ゲインの初期値への設定、プレスキャンによる位置決め画像データの収集、他のプレスキャンの実行及びイメージングスキャン用の撮像位置を含む撮像条件の設定が行われる。この際、ステップS1において患者情報登録部40Cにより登録された被検体Pの氏名、身長及び体重等の患者情報のうち受信ゲインの設定のための条件として参照される患者情報が受信ゲイン取得部40Aに通知される。更に、ステップS5において、撮像パラメータ設定部40Bにより設定されたイメージング用のパルスシーケンス、被検体Pの撮像部位及び使用されるRFコイル24等の撮像パラメータのうち受信ゲインの設定のための条件として参照される撮像パラメータも、受信ゲイン取得部40Aに通知される。
【0136】
次にステップS21において、受信ゲイン取得部40Aは、受信ゲインデータベース45を検索し、患者情報登録部40Cから通知された患者情報及び撮像パラメータ設定部40Bから通知された撮像パラメータと合致する患者情報及び撮像パラメータに対応する受信ゲインが保存されているか否かを判定する。
【0137】
そして、ステップS22において、患者情報及び撮像パラメータで構成される条件と一致する条件が受信ゲインデータベース45に保存されていないと判定された場合には、ステップS23において、受信ゲインの決定用のプレスキャンが実行される。すなわち、受信ゲインの初期値をゼロ又は十分に小さい値に設定し、イメージングスキャンと同一の条件で、高い強度でMR信号が収集されるイメージング領域からMR信号が収集される。
【0138】
次にステップS11において、受信ゲイン取得部40Aは、プレスキャンによって収集されたMR信号の最大値に基づいて従来の式(1)によってイメージングスキャン用の受信ゲインを設定する。
【0139】
一方、ステップS22において、患者情報及び撮像パラメータで構成される条件と一致する条件が受信ゲインデータベース45に保存されていると判定された場合には、ステップS11において、受信ゲイン取得部40Aが、一致する条件に関連付けられている受信ゲインを受信ゲインデータベース45から取得してイメージングスキャン用の受信ゲインに設定する。
【0140】
次にステップS12において、受信ゲイン取得部40Aにより設定された受信ゲインでのMR信号の増幅を伴ってイメージングスキャンが実行される。これにより、受信器30の増幅器30Aにおいて適切な受信ゲインで増幅されたMR信号がk空間データ記憶部42に形成されたk空間に配置される。
【0141】
続いて、データ処理部41は、イメージングスキャンによって収集されたMR信号の画像再構成処理及び必要な画像処理によって表示用の診断画像データを生成する。生成された診断画像データは、表示装置34に表示される。表示装置34に表示される診断画像データは、適切な受信ゲインで増幅されたMR信号に基づいて生成されているため、良好なSNRを有するMR画像データとして表示させることができる。
【0142】
次にステップS13において、必要な全てのイメージングスキャンが完了したか否かが判定される。次のイメージングスキャンを実行する場合には、続いてステップS14において、撮像位置の再設定が実行されるか否かが判定される。撮像位置の再設定が実行される場合には、ステップS5において撮像位置を含む撮像条件が再設定される。そして、ステップS21において、新たに設定された撮像位置を含む撮像条件と一致する受信ゲインが検索される。一方、撮像位置の再設定が実行されない場合には、ステップS21において同一の撮像位置に対する次のイメージングスキャンの撮像条件と一致する受信ゲインが検索される。そして、ステップS13の判定において全てのイメージングスキャンが完了したと判定されるまで、受信ゲインの設定とイメージングスキャンが繰返される。
【0143】
尚、位置決め画像データの収集用のプレスキャンや他の目的のプレスキャンの受信ゲインも、イメージングスキャン用の受信ゲインと同様に、患者情報及びデータ収集条件の少なくとも一方と関連付けて受信ゲインデータベース45に予め保存しておくことができる。その場合には、受信ゲインデータベース45に保存された、患者情報及びデータ収集条件に対応する受信ゲインを用いてプレスキャンを実行することができる。
【0144】
つまり、スキャンがイメージングスキャンであるのかプレスキャンであるのかを問わず、患者情報及びデータ収集条件に応じた受信ゲインを受信ゲインデータベース45に保存し、スキャンの実行の際に適切な受信ゲインを呼び出して設定することができる。
【0145】
以上のような第2の実施形態における磁気共鳴イメージング装置は、患者情報や撮像条件等の参照データごとに予めMR信号の適切な受信ゲインを定めておき、イメージングの際に患者情報や撮像条件等のイメージングごとに異なり、かつ適切な受信ゲインの値に影響を与えるパラメータに応じて簡易かつ短時間に適切な受信ゲインを決定できるようにしたものである。
【0146】
このため、第2の実施形態における磁気共鳴イメージング装置によれば、従来、イメージング前に行われているMR信号の受信ゲインを決定するためのプレスキャンを省略することができる。その結果、受信ゲインの設定に要する時間を短縮し、検査のスループットを向上することができる。
【0147】
また、近年では、ハードウェアの進歩により、受信ゲインの設定値に要求される精度が緩和される傾向にある。従って、データベース化された複数の受信ゲインの値から適切な受信ゲインの値を選択する方法によって受信ゲインを決定しても、十分な精度で受信ゲインを設定することができる。このため、適切な受信ゲインでMR信号を受信することによって、良好なSNRでMR画像を取得することが可能となる。
【0148】
(第3の実施形態)
第3の実施形態における磁気共鳴イメージング装置では、コンピュータ32の機能が第1の実施形態における磁気共鳴イメージング装置20及び第2の実施形態における磁気共鳴イメージング装置と相違する。第3の実施形態における磁気共鳴イメージング装置の他の構成及び作用については第1の実施形態における磁気共鳴イメージング装置20及び第2の実施形態における磁気共鳴イメージング装置と実質的に異ならないため、受信器30及びコンピュータ32の機能ブロック図のみを図示し、同一の構成又は対応する構成については同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0149】
図7は本発明の第3の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置に備えられる受信器30及びコンピュータ32の機能ブロック図である。
【0150】
第3の実施形態における撮像条件設定部40は、受信ゲイン取得部40A、撮像パラメータ設定部40B、患者情報登録部40C及びゲイン設定パラメータ取得部40Dを有する。また、記憶装置36は、k空間データ記憶部42、画像データ記憶部43、ゲイン設定パラメータ記憶部44及び受信ゲインデータベース45として機能する。つまり、第3の実施形態における磁気共鳴イメージング装置は、第1の実施形態における磁気共鳴イメージング装置20及び第2の実施形態における磁気共鳴イメージング装置の双方の機能を備えている。
【0151】
特に、受信ゲイン取得部40Aは、患者情報及び撮像条件の少なくとも一方に対応するMR信号の受信ゲインが受信ゲインデータベース45に保存されていない場合に、撮像領域に対応する参照データ及び撮像条件に基づいてMR信号を受信するための受信ゲインを設定するように構成されている。従って、受信ゲインの設定に参照される参照データは、第1の実施形態において説明したように、診断画像データの生成用に撮像領域から収集されるMR信号の収集に先立ってプレスキャンによって取得される。
【0152】
図8は第3の実施形態における磁気共鳴イメージング装置の動作の一例を示すフローチャートであり、
図9は
図8に示すフローチャートのステップS31における動作及び処理の流れの詳細を示すフローチャートである。尚、
図3及び
図6に示す各フローチャートのステップと同様なステップには同符号を付して同様な部分の詳細な説明を省略する。
【0153】
まずステップS1からステップS5において、患者情報の登録、受信ゲインの初期値への設定、プレスキャンによる位置決め画像データの収集、他のプレスキャンの実行及びイメージングスキャン用の撮像位置を含む撮像条件の設定が行われる。次にステップS21において、受信ゲイン取得部40Aが受信ゲインデータベース45を検索し、ステップS22において、患者情報及び撮像パラメータに対応する受信ゲインが受信ゲインデータベース45に保存されているか否かを判定する。
【0154】
患者情報及び撮像パラメータに対応する受信ゲインが受信ゲインデータベース45に保存されている場合には、
図6に示す第2の実施形態における流れと同様な流れでステップS11における受信ゲインの設定、ステップS12におけるイメージングスキャン及びイメージングスキャン後におけるステップS13とステップS14の各判定が順次実行される。
【0155】
一方、患者情報及び撮像パラメータに対応する受信ゲインが受信ゲインデータベース45に保存されていない場合には、ステップS31において、受信ゲインの設定パラメータが取得される。受信ゲインの設定パラメータの取得は、
図9に示すように、
図3のステップS6からステップS10までの動作及び処理と同様な動作及び処理によって行うことができる。
【0156】
すなわち、最初のイメージングスキャンの場合や撮像位置に変化がある場合であれば、ステップS7からステップS10までのプレスキャンを含む動作及び処理によって受信ゲインの設定パラメータを求めることができる。例えば、プレスキャンによって収集された参照データに基づいて脂肪信号の分布を求め、脂肪信号の分布に基づいて受信ゲインの設定パラメータを取得することができる。
【0157】
一方、撮像位置に変化がなければ、プレスキャンを行うことなくゲイン設定パラメータ記憶部44から撮像位置に対応する設定パラメータを取得することができる。そして、ステップS11では、撮像位置に対応する設定パラメータと、撮像パラメータとに基づいて撮像条件に適切な受信ゲインを設定することができる。
【0158】
以上の第3の実施形態における磁気共鳴イメージング装置は、患者情報及び撮像条件ごとに適切な受信ゲインを受信ゲインデータベース45に保存しておき、対応する受信ゲインが受信ゲインデータベース45に保存されていない場合には、プレスキャンによって取得した参照データに基づくパラメータを用いて受信ゲインの計算を行うようにしたものである。
【0159】
このため、第3の実施形態によれば、第1の実施形態において得られる効果及び第2の実施形態において得られる効果の双方を得ることができる。すなわち、撮像条件に応じた適切なMR信号の受信ゲインを設定するためのプレスキャンの回数を一層低減させることができる。具体的には、受信ゲインデータベース45に対応する受信ゲインが保存されていない場合及びゲイン設定パラメータ記憶部44に対応する受信ゲインの設定パラメータが保存されていない場合を除き、受信ゲインの設定のみを目的とするプレスキャンを省略することができる。
【0160】
(他の実施形態)
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。