(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、電気伝搬の指標としての局所興奮到達時間の決定は、伝導異常がある場合には問題になる。例えば、心房細動が継続している間の心房電位図は、単一電位、二重電位、およびコンプレックス細分化心房電位図(CFAE)という3つの異なるパターンを有する。したがって、正常洞調律信号と比較して、心房細動信号はより可変であるだけでなく極めて複雑である。両方のタイプの信号にはノイズが存在し、それらの解析を複雑にしているが、心房細動信号の複雑さおよび可変性のために、その解析はそれに対応してより困難である。一方、医療処置において心房細動を克服するために、心房細動を表す心臓を進行する活動波の可能な経路を確立することが役立つ。一旦これらの経路が識別されると、それらは、例えば、心臓の領域の適切な切除によってブロックすることができる。経路は心臓内の心房細動信号の解析により測定することができ、本発明の実施形態はその解析を容易にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
説明を簡単にするために、本明細書の記述は心房細動が発生している状況を対象とするが、当業者は、必要な変更を加えて、この記述を他のタイプの細動に適応させることが可能である。
【0009】
本発明の実施形態は、遠位端部に各電極がそれぞれの単極信号を発生させる多数の電極を有するカテーテルを用いて、心臓の電位信号を同時に取得する。信号は単極信号と考えてもよいし、あるいは、別の電極と組み合わせて双極信号と考えてもよい。単極信号は、ウィルソン中心電極(WCT)について、または、別の心臓内電極について計算されてもよい。
【0010】
信号解析の第1の部分では、重要な特徴、通常は大きい数値勾配を有する信号の部分が識別される。解析は、(解析を改良するために双極信号を用いて)単極信号について実行される。解析は、本明細書ではアノテーションと呼ぶ電気活性化を識別して、アノテーションの各々に対してそれぞれの品質係数を割り当てる。
【0011】
解析の第2の部分では、心臓のブロックされた領域、すなわち、細胞が一時的に飽和して(難治性)、その結果、活性化波の経路およびアノテーションの次の検出を維持することができないか、または部分的に維持することしかできない心臓の領域を識別するために、心房細動信号をさらに調べる。解析は、例えば瘢痕組織の細胞などの永久に非伝導性である細胞を識別することができる。
【0012】
解析の2つの部分の結果は、心臓を通る活性化波の進行、ならびに心臓のブロックされた領域、すなわち活性化波が通過しない領域を示す、心臓の動的な3Dマップに組み込むことができる。
【0013】
本発明の実施形態に従って方法が提供され、本方法は、電極を有するプローブを生きた被験者の心臓に挿入するステップと、心臓内のある位置にある電極の1つから双極電位図および単極電位図を記録するステップと、双極電位図の電位の変化率が所定の値を超える関心ウィンドウを含む時間間隔を定義するステップと、によって実行される。本方法は、単極電位図のアノテーションを確立するステップであって、アノテーションは、関心ウィンドウ内の単極電位図の電位の最大変化率を示す、ステップと、アノテーションに品質値を割り当てるステップと、アノテーションおよびその品質値を含む、心臓の一部の3次元マップを生成するステップと、によってさらに実行される。
【0014】
本方法の別の態様によれば、双極電位図を記録するステップは、電極の二重双極電極配置を確立するステップを含む。二重双極電極配置は、第1の単極電極対からの第1の差動信号および第2の単極電極対からの第2の差動信号を含み、双極電位図は、第1の差動信号と第2の差動信号との間の時間的に変化する差として測定される。
【0015】
本方法のさらに別の態様によれば、アノテーションを確立するステップは、単極電位図のウェーブレット変換を計算するステップを含む。
【0016】
本方法の付加的な態様は、ウェーブレット変換のスケーログラムを生成し、スケーログラムにおける最大変化率を決定するステップを含む。
【0017】
本方法のさらに別の態様は、品質値から、アノテーションが所定のブロッキング基準を満たす適格なアノテーションであることを識別するステップと、マップに、適格なアノテーションが心臓のブロックされた領域またはその近くにあることを示すステップと、を含む。
【0018】
本方法のさらに別の態様によれば、アノテーションを確立するステップは、単極電位図から心室遠方場成分を除去するステップを含む。
【0019】
本方法の一態様によれば、アノテーションを確立するステップは、アノテーションにおける単極電位図の時間的サイクル長が他のアノテーションの時間的サイクル長の予め定義された統計的境界内にあるかどうかを決定するステップを含む。
【0020】
本方法の付加的な態様は、品質値、アノテーション間距離、および別のアノテーションのタイミングの少なくとも1つに従って、アノテーションの品質値を調整するステップを含む。
【0021】
本方法の別の態様によれば、他のアノテーションは、電極のうちの別のものから読み込まれた別の単極電位図から生成された。
【0022】
本方法のさらなる態様は、ノイズを所定のレベルに低減するのに十分な量だけ単極電位図をフィルタリングするステップを含み、品質値を割り当てるステップはその量を決定するステップを含む。
【0023】
本発明の実施形態に従って、複数の電極を有する体内プローブを含む装置がさらに提供される。プローブは、心臓の組織と接触するように構成される。本装置は、ディスプレイおよびプロセッサを含み、プロセッサは、電極から電気信号を受け取って、心臓内のある位置にある電極の1つから双極電位図および単極電位図を記録するステップと、双極電位図の電位の変化率が所定の値を超える関心ウィンドウを含む時間間隔を定義するステップと、単極電位図のアノテーションを確立するステップであって、アノテーションは、関心ウィンドウ内の単極電位図の電位の最大変化率を示す、ステップと、アノテーションに品質値を割り当てるステップと、ディスプレイ上に心臓の一部の3次元マップを生成するステップであって、マップはアノテーションおよびその品質値を含む、ステップと、を実行するように構成される。
【0024】
本装置のさらなる態様によれば、プローブは複数の放射状部を有し、放射状部の各々は少なくとも1つの電極を有する。
【0025】
本装置の一態様によれば、プローブは複数のリブを有するバスケットカテーテルであって、リブの各々は少なくとも1つの電極を有する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の説明では、本発明の種々の原理の深い理解を促すため、多くの具体的な詳細について記載する。しかしながら、これらのすべての詳細が本発明の実施に必ずしも必要ではないことが、当業者には理解されよう。この場合、一般的な概念を不要に曖昧にすることのないよう、周知の回路、制御論理、並びに従来のアルゴリズム及び処理に関するコンピュータプログラム命令の詳細については、詳しく示していない。
【0028】
定義。
「アノテーション」または「アノテーション点」は、関心のある事象を示すものと考えられる電位図上の点または候補を示す。この開示において、その事象は、通常は電極によって検出される電波の伝搬の開始(局所興奮到達時間)である。
【0029】
本明細書では、電位図の「活動」は、電位図信号の爆発的なまたは波打つ変化のはっきりした領域を意味するために用いられる。このような領域は、ベースライン信号の領域の間で顕著であると認められ得る。この開示において、「活動」は、多くの場合、心臓を通る1つまたは複数の電気伝搬波の電位図上の発現を示す。
【0030】
次に図面を見て、まず最初に
図1を参照すると、これは、本発明の実施形態による、生体21の心臓12の異常な電気活動領域を検出するためのシステム10の図である。システムは、プローブ、通常はカテーテル14を含み、カテーテル14は通常は医師であるオペレータ16によって経皮的に挿入され、患者の血管系を通って、心臓の心室または血管構造に入る。オペレータ16は、カテーテルの遠位先端部18を、診断すべき標的部位において心臓壁に接触させる。単極および双極電位図は、カテーテルの遠位分節のマッピング電極を用いて記録される。次いで、上記の米国特許第6,226,542号および同第6,301,496号、ならびに同一出願人による米国特許第6,892,091号に開示される方法に従って、電位図に基づく電気的活性化マップが作成される。上記の開示は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0031】
システム10は、汎用または組込形コンピュータプロセッサを含むことができ、それは以下に説明する機能を実行するための好適なソフトウェアを用いてプログラムされる。したがって、本明細書の他の図面に示すシステム10の部分はいくつかの個別の機能ブロックを含むように示してあるが、これらのブロックは必ずしも個別の物理エンティティであるわけではなく、例えば、プロセッサがアクセス可能なメモリに記憶された異なる計算タスクまたはデータオブジェクトを表してもよい。これらのタスクは、単一プロセッサまたはマルチプロセッサで動くソフトウェアで実行することができる。ソフトウェアは、例えばCD−ROMまたは不揮発性メモリなどの有形の非一時的媒体で、1つまたは複数のプロセッサに提供することができる。あるいは、または、さらに、システム10は、デジタル信号プロセッサまたはハードワイヤード論理を含んでもよい。
【0032】
カテーテル14は、通常、アブレーションを行うためにオペレータ16が必要に応じてカテーテルの遠位端部を方向転換、位置決め、および方向決めすることを可能とする好適な制御部を有するハンドル20を含む。オペレータ16を補助するため、カテーテル14の遠位部分には、コンソール24内に分布された位置決めプロセッサ22に信号を供給する位置センサー(図示せず)が収容されている。カテーテル14は、同一出願人による米国特許第6,669,692号に記載されたアブレーションカテーテルから、必要な変更を加えて作製することができる。上記の開示は参照によって本明細書に組み込まれる。コンソール24は、通常、ECGプロセッサ26およびディスプレイ30を含む。
【0033】
位置決めプロセッサ22はカテーテル14の位置および配向座標を測定する。一実施形態では、システム10は、カテーテル14の位置と向きを判定する磁気式位置追跡システムを含む。システム10は、通常、磁場発生コイル28などの1組の外部ラジエータを備えており、それらの外部ラジエータは、患者の体外にある一定の既知の位置に配置されている。コイル28は心臓12の付近に電磁場を発生する。これらの場は、カテーテル14に設けられた磁場センサーによって検出される。
【0034】
簡略化のため図には示されていないが、通常、システム10には他の要素も含まれる。例えば、システム10は、ECG同期信号をコンソール24に供給するために、1つ以上の身体表面電極からの信号を受信するように連結された心電図(ECG)モニタを含んでもよい。システム10は、通常、対象の身体の外面に取り付けられた外部から貼付された基準パッチ、または心臓12に対して固定位置に維持された、心臓12の中に挿入され内部に配置されたカテーテルのどちらかの上に基準位置センサーもまた含む。カテーテル14にアブレーション部位を冷却するための液体を通して循環させるための従来のポンプおよびラインが設けられてもよい。
【0035】
システム10の上記の特徴を具体化する1つのシステムは、Biosense Webster,Inc.(3333 Diamond Canyon Road,Diamond Bar,CA 91765)から入手可能な、CARTO(登録商標)3 Systemである。このシステムは、本明細書に記載される本発明の原理を具現化するように、当業者によって変更されることができる。単極および双極電位図を取得するために好適である多電極バスケットおよびスプラインカテーテルは公知である。このようなスプラインカテーテルの一例は、Biosense Websterから入手可能なPentaray(登録商標)NAVカテーテルである。
【0036】
本発明の原理を応用することによって解決し得る問題点をより良く示すために、ここで
図2を参照するが、これは本発明の実施形態による一群の双極電位図であり、ここではシミュレーションされた双極電極が8つの方向に置かれている。双極電位図は、単極電位図、例えば電気解剖学的マップ36の特徴的なハッチングパターンで示す正方形32、34の差から計算され、1つの極は正方形32に固定して置かれ、他の極は固定された極の位置の周りで8つのステップ(4つの垂直な位置および4つの傾斜した位置)で回転する。マップ36では、活性化波は右から左へわずかに斜めに伝搬する。8つの双極コンプレックスから観察される形態は異なっている。この群は、2つの波の融合から生じるコンプレックス活性化を示し、それは関心ウィンドウ38内の双極コンプレックスの形態および振幅の大きな違いをもたらす。
図2は、活性化の検出のあいまいさを示している。活性化波がある点を通過する局所興奮到達時間は、後述する基準を満たす電位図に事象を置いて、事象の時刻から基準参照の時刻を減算することによって算出される。参照事象の時刻は、別の心臓内信号または体表面心電図を用いて定義することができる。
【0037】
以下の2つの図は、本発明の一実施形態による、心臓から電位を得るために用いるカテーテルの遠位端部の模式的な図である。
【0038】
ここで
図3を参照するが、これは本発明の実施形態に従って用いられるバスケット心室マッピングカテーテル40の図である。カテーテル40は、米国特許第6,748,255号(Fuimaono他)に記載されているバスケットカテーテルに設計が類似しており、この特許は本発明の譲受人に譲渡されており、参照により本明細書に組み込まれる。カテーテル40は複数のリブを有し、各リブは複数の電極を有する。一実施形態では、カテーテル40は、64個の単極電極を有し、スプライン当たり最高7つの双極対で構成することができる。例えば、リブ42は、双極構成B1〜B7を伴う単極電極M1〜M8を有する。電極間距離は、4mmである。
【0039】
ここで
図4を参照するが、これは本発明の実施形態に従って用いられるスプラインカテーテル44の図である。このようなスプラインカテーテルの一例は、Biosense Websterから入手可能なPentaray(登録商標)NAVカテーテルである。カテーテル44は、複数のスプラインを有し、各スプラインはいくつかの電極を有する。一実施形態では、カテーテル44は20個の単極電極を有し、それはスプライン当たり2または3つの双極対として構成することができる。例えば、スプライン46は、単極電極48、50の第1の対および単極電極52、54の第2の対(M1〜M4)を有する。単極電極対のそれぞれの差は、ブロック56、58で計算される。ブロック56、58(B1、B2)の出力は、本明細書において「二重双極構成」と呼ぶ配置であるハイブリッド双極電極構成を構成するように、互いに関係づけられ得る。二重双極構成は、後述するように関心のある双極ウィンドウを確立するために用いられる。可能な電極間距離は、4−4−4または2−6−6mmである。類似の双極構成は、カテーテル40(
図3)で確立することができる。
【0040】
カテーテル38、44の両方とも、複数の電極を有し、それらの個々のスプライン、スポーク、またはブランチに複数の電極を有する遠位端部の例であり、遠位端部を患者の心臓に挿入することができる。本発明の実施形態は、心臓の異なる領域から時間的に変化する電位を同時に取得するために、カテーテル38、44などのカテーテルを用いる。心臓に心房細動が起こっている場合には、取得された電位は心臓内のそれらの遷移を特性評価するために解析される。
【0041】
ここで
図5を参照するが、これは、本発明の実施形態による、心臓の電気解剖学的マップにアノテーションをつける方法のフローチャートである。その処理ステップは、明瞭に表現するために、特定の線形順序で示してある。しかし、それらの処理ステップの多くは、並列的に、非同期的に、または異なる順序で実行し得ることが明白であろう。当業者であれば、処理は、別の方法としては、例えば、状態図において、相互関連状態または事象の数として表現され得ることが理解されるであろう。さらには、図示される全ての処理ステップが、この方法を実施するために必要とされるとは限らない場合がある。
【0042】
本方法は、被験者が伝導外乱(例えば、心房細動)を経験している間に複数のカテーテル電極によって得られた電位を解析するステップを含む。まず最初に、電位信号は、通常は隣接した電極対の間の差動信号を見いだすことによって、時間とともにプロットされる双極電位として取得される。しかし、電極対が隣接している必要はなく、いくつかの実施形態では、隣接していない電極からの双極信号が用いられる。双極信号については、電極の3次元位置に関する情報を用いることができる。あるいは、または、さらに、カテーテルの電極配置に関する情報を用いることができる。
【0043】
最初のステップ60において、電位の比較的大きな変化、すなわち
【数1】
の最大値がある初期期間またはウィンドウを決定するために、双極信号を解析する。
【0044】
ここで
図6を参照するが、これは本発明の実施形態による、単極局所興奮到達時間(LAT)検出の方法のブロック図である。単極電位図(EGM)入力62は、ブロック64の心室遠方場効果を除去するために処理される。遠方場の低減は、発明の名称がHybrid Bipolar/Unipolar Detection of Activation Wavefrontである、同一出願人による出願番号第14/166,982号の教示を用いて達成することができる。上記の内容は参照によって本明細書に組み込まれる。ブロック66ではプレフィルタリングが行われ、それはハイパスフィルタおよびローパスフィルタ(例えばFIRおよびIIRフィルタ)を用いて達成することができる。それから、ブロック66の出力はウェーブレット検出ブロック68で処理されるが、その詳細は後述する。
【0045】
ブロック66の出力は、二重双極電位図計算ブロック72の入力70を形成する。ブロック72の別の入力74は、出力信号76である双極電位図を計算するために用いられる電極の識別を伝える。双極対の各部材は、カテーテル44(
図4)に関して説明したように構築される。例えば、ブロック72の入力70、74は、カテーテル44の単極電極48、50(
図4)であってもよい。
図4のブロック56は、
図6のブロック72に対応する。双極EGMの開始および終了は、ブロック78で確立される。これは、同一出願人による米国特許出願公開第2013/0281870号の教示により達成することができる。上記の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。双極電位図の関心ウィンドウは、ブロック80においてブロック68およびブロック78の出力を用いて確立される。
【0046】
ここで
図7を参照するが、これは本発明の実施形態によるブロック72(
図6)の動作を示す詳細なブロック図である。2つのEGM入力82、84は、ブロック86、88で除去されるプレフィルタ処理された遠方場成分である。入力82、84は、通常は隣接する電極対から生成され、電極対自体の各部材は、
図3および
図4に示すように双極ソースを構成する。例えば、入力82は、単極電極50(
図4)から来たものであってもよい。ブロック86、88の出力は、ブロック92で減算されて、二重双極出力信号94を生成する。信号94は、ブロック96で別のプレフィルタリングステップを受け、ブロック98でノッチが除去されて、関心のある双極ウィンドウが決定されるブロック102に出力信号100が提出される。ブロック102によって出力信号104が生成される。
【0047】
ここで
図8を参照するが、これは本発明の実施形態によるブロック102(
図7)の動作の一部を示す詳細なブロック図である。信号106、108は、連続した暫定的なウィンドウの決定(信号104(
図7))を表し、ウィンドウ検出ブロック110、112で評価されて、ウィンドウ検出ブロック110、112は、それぞれ出力信号114、116を生成する。2つの極小の間の最大値が検出される。信号114、116はブロック118で処理されて、検出されたウィンドウのオーバーラップが決定される。20%を超えるオーバーラップがある場合には、ブロック120において、ブロック110、112で見いだされたウィンドウは融和される。ブロック120によって、関心ウィンドウを表す信号122が出力される。
【0048】
ここで
図9を参照するが、これは、本発明の実施形態による、
図8の構成に従って処理される信号を示す図である。グラフ124、126は、ブロック110、112の出力を表し、電位図の形態およびそれぞれの検出されたウィンドウを示す。例えば、ウィンドウ128、130は、グラフ132に示すように、広範囲にわたってオーバーラップし、したがって融合される。グラフ132は、より大きなウィンドウ134を形成するための、グラフ124、126の電位図の重ね合わせおよびウィンドウ128、130の融合を示す。ウィンドウ134は、ウィンドウ128、130の開始時刻の最小値である点136から始まり、ウィンドウ128、130の終了時刻の最大値である点138で終了する。
【0049】
ここで
図10を参照するが、これは本発明の実施形態によるウェーブレット検出ブロック68(
図6)の動作を示す詳細なブロック図である。ウェーブレット変換は、拡大および平行移動によってマザーウェーブレットから導出される一組の(正規直交)基底関数の組合せとして、信号の分解を提供する。ウェーブレットが平滑化関数の導関数である場合には、ウェーブレット係数は入力信号の勾配を表す。
図10の構成で用いられるウェーブレットパラメータは、(1)連続ウェーブレット変換(CWT)、(2)ガウスウェーブレットの一次導関数、および(3)ブロック145、147のレイティングおよびピーク検出が後に続くブロック141、143の15のリニアスケール上の分解を含む。
【0050】
ここで
図11を参照するが、これは、本発明の実施形態による、
図10に示す構成によって生成される信号を示す図である。ウェーブレット変換ブロック142において、スケーログラム140が連鎖最大値および最小値、すなわち、反復フィルタ処理による曲線の順序集合の形成によって電位
図144から生成される。時間間隔例えば、時間間隔146、148はスケーログラム140の直ちに識別可能な最大値および最小値を示すが、これらは電位
図144においてそれほど明瞭ではない。
【0051】
ここで
図12を参照するが、これは本発明の実施形態による、異なる不整脈のウェーブレット変換ブロック68(
図6)の動作を示す図である。局所的な電気解剖学的マップ150は、心房細動と関係する様々なタイプの心房不整脈異常を示す。マップ150は、対応する電位
図152およびスケーログラム154により示される。スケーログラム154は、それぞれの電位
図152に関する異なる形態を有する。一般に、電位
図152のピークは、例えば図の右の症例156、158のように、特に活性化がより明瞭にならない場合に、スケーログラム154でより明確に分離される。
【0052】
図5に戻って、信号調整ステップ160で、細動信号を露出させるために、妨害信号を単極細動信号から除去する。妨害信号は、心室から放射される心室遠方場信号または成分を含む。これらの成分を除去する一方法では、心室から放射する信号が検出され、心室信号の発生時に細動信号から平均QRS信号が差し引かれる。
【0053】
ここで
図13を参照するが、これは、本発明の実施形態による、単極細動信号からの妨害信号の除去を示す一組の図である。第1の部分162に示すように、細動信号は心室遠方場部分を最初に含む。第2の部分164に示すように、平均QRS信号は、通常は一組のQRS信号から生成され、第3および第4の部分166に示すように、細動信号は平均QRS信号を減算することによって補正される。
【0054】
あるいは、または、さらに、予め定義された心室信号に対するテンプレートマッチングおよび/または細動信号からの推定に基づくテンプレートは、信号が心室性だけである場合に、単極細動信号の心室遠方場信号の予測のために用いることができる。通常は、心室性信号の発生が予想される時間は、体ECG信号、心室性心臓内信号、または冠状静脈洞信号から決定することができる。テンプレートを用いて、心室遠方場信号または成分を算出して、細動信号から差し引くことができる。
【0055】
当業者は、必要な変更を加えて、上の説明を心室遠方場信号を除去する他の方法に適応させることが可能であろう。さらに、心室遠方場信号以外の妨害信号は、心室性信号についての上記の方法に類似する方法によって除去することができる。
【0056】
当該技術分野において周知の任意の方法によって、信号調整ステップで実行され得る他の調整は、ノイズ低減(50/60Hzの信号による誘導ノイズを含む)、電磁干渉(EMI)の低減、およびベースライン変動の補正を含む。
【0057】
図5のフローチャートに戻って、調整された単極細動信号に対して実行されるさらなる解析ステップ168において、本明細書でアノテーションと呼ぶ最大の
【数2】
が検出される時間が決定される。最大の
【数3】
値を決定する処理は、初期解析初期ステップ60で見いだされたウィンドウ内の調整された信号に適用され、さらにノイズ低減の処理を含む。一実施形態では、補正された細動信号に適用されるノイズ低減は、補正された細動信号を用いて異なるウェーブレット変換の合成を形成することを含む。異なるウェーブレット変換は、異なるバンド幅のフィルタを効果的に生成し、補正された細動信号によるこれらのフィルタの合成は信号のノイズを低減させる。
【0058】
さらに、または、あるいは、ノイズ低減の他の方法は、上記のウィンドウ内で、例えば1つまたは複数の異なるバンド幅フィルタを信号に適用することによって、補正された細動信号に適用することができる。
【0059】
品質評価ステップ170では、ステップ168でアノテーションを決定するために必要なフィルタリングの量およびタイプに応じて、各最大
【数4】
アノテーションはアノテーションの良さを測定するパラメータを割り当てられ得る。例えば、高いパラメータ値によって割り当てられるアノテーションは、フィルタリングの低レベルおよび高レベルの両方について戻され得るが、一方、低いパラメータ値によって割り当てられるアノテーションは、低いまたは高いフィルタレベルについてだけ戻され得るが、両方についてではない。
【0060】
アノテーションは、アノテーションの最終的な品質を評価するために、さらに特性評価される。特性評価は、それらの信号を発生させる電極の位置、心臓において信号が取得される位置、アノテーションのタイミング、アノテーション(前のステップで決定された)の良さのパラメータ、および/またはアノテーションが、信号調整ステップで上述した信号調整が成された時刻に、もしくはその近くにあるかどうかに従っている。これらのパラメータの各々には、数値を割り当てることができる。例えば、第1の電極の位置から、電極によって取得された信号がアノテーションを含むことが生理的にありそうにないと考えられる場合には、アノテーションの最終的な品質を下げることができる。第2の電極について、信号がアノテーションを含むことがありそうであると考えられる場合には、アノテーションの最終的な品質を上げることができる。
【0061】
所与のアノテーションの品質を評価するための上記の変数の他に、隣接空間アノテーションの品質、アノテーション間距離、およびタイミングをチェックすることができ、それに応じて所与のアノテーションの品質が調整される。例えば、所与の電極が高い品質を有するアノテーションを生成する電極によって囲まれている場合には、場合によっては、所与の電極アノテーションの品質が増加することがあり得る(ステップ28に関して後述する他の場合には、ブロッキング効果があり得る)。あるいは、所与の電極が低い品質を有するアノテーションを生成する電極によって囲まれている場合には、所与の電極アノテーションの品質が減少することがあり得る。さらに、所与の電極が生理学的範囲の著しく外側で品質アノテーションを生成する電極によって囲まれている場合には、所与の電極の品質はさらに減少することがあり得る。
【0062】
アノテーションの品質を決定するさらなるチェックとして、アノテーションは、他のアノテーションを記述する統計に対して評価される。例えば、各アノテーションの時間的サイクル長のヒストグラムを生成することができる。ヒストグラムの予め定義された境界内にあるそれらのアノテーションだけが有効であるとみなすことができて、境界の外側にあるアノテーションは誤りであるとみなされる。
【0063】
ブロッキング識別ステップ172では、ステップ170で割り当てられた基準を満たしているアノテーションを考慮して、心筋の活性化が「ブロック」されたように見える心臓の領域を識別する。このようなブロッキングは、活性化波が衝突するかまたは分離するときに発生し、衝突する位置で心筋細胞を一時的に飽和させ、その結果、心筋細胞は再活性化することができなくなる。これらは、「難治性細胞」として知られている。ブロックされた領域は、所与の電極ならびに取り囲む電極の信号を考慮することによって識別することができる。通常は、所与の電極のアノテーション信号が取り囲む電極のアノテーション信号よりも著しく小さく、異なる形態を有し、および/またはより低い品質を有する場合には、所与の電極は心臓のブロックされた領域またはその近くに位置していると考えることができる。ブロックは、一時的であってもよいし(機能的ブロック)、あるいは永続的であってもよい(例えば、瘢痕)。
【0064】
表示ステップ174では、2つの前のステップの結果、すなわち、高い品質のアノテーションおよびブロックされているとして識別された領域は、心臓または心室の動的な3次元マップに表示される。常は、動的なマップは、心臓のアノテーションの相対的タイミングおよび品質、ならびにアノテーションの算定された「流れ」、すなわち連続したアノテーション間の時間間隔を示す。また動的なマップは、ブロックされているとみなされる心臓の領域も示す。また動的なマップは、情報が取得されなかった心臓または心室の領域を示すこともできる。
【0065】
ここで
図14を参照するが、これは、本発明の実施形態による電位
図176のアノテーションを示すグラフ図である。図の下部は、代表的なコンプレックス178に適用される処理を詳述する。混成双極ウィンドウ180、182は、上述したように2つの単極電極から取得される。トレース184、186は、2つの単極電極からの信号の1次導関数を表す。スケーログラム188は、電位
図176に基づいて計算されるウェーブレット変換から作成された。一連のアノテーション190は、スケーログラム188に示される。
【0066】
ここで
図15を参照するが、これは、本発明の実施形態による、心房細動の場合の電気活動のアノテーションを示すグラフ図である。トレース194は、重畳された体表面電極信号である。図の下部のスケーログラム196のいくつかのコンプレックスについてアノテーションを示し、図の下部の三角形の数によってさらに示す。例えば、矢印198で示すアノテーションは2つの三角形200だけと関係し、より多くの数の三角形204と関係する矢印202で示すアノテーションと比較して、比較的低い品質である。中間の部分206では、アノテーションの品質をさらにグラフィカルに示す。本技術は、活動192のコンプレックス細分化部分208にアノテーションをつけることに成功している。
【0067】
ここで
図16を参照するが、これは、本発明の実施形態による電気活動のアノテーションを示すグラフ図である。この表現は
図15に類似している。アノテーションの品質をドット210によってさらに示している。ドット210は、最も微細なスケールから始まって、より粗いスケールに進むチェーンを表す。反対方向に進む三角形によって示されるチェーンと共に、ドット210によって示されるチェーンを検査することによって、オペレータはスケーログラム154(
図12)によって示される様々な活性化パターンを区別することができる。
【0068】
当業者であれば、本発明が、以上で詳細に示し、説明したものに限定されない点を、理解するところであろう。むしろ、本発明の範囲は、以上で述べた種々の特徴の組み合わせおよび一部の組み合わせ、ならびに上記の説明を読むことで当業者が想到するであろう、従来技術にはない特徴の変形および改変をも含むものである。
【0069】
〔実施の態様〕
(1) 方法であって、
電極を有するプローブを生きた被験者の心臓に挿入するステップと、
前記心臓内のある位置にある前記電極の1つから双極電位図および単極電位図を記録するステップと、
前記双極電位図の電位の変化率が所定の値を超える関心ウィンドウを含む時間間隔を定義するステップと、
前記単極電位図のアノテーションを確立するステップであって、前記アノテーションは、前記関心ウィンドウ内の前記単極電位図の電位の最大変化率を示す、ステップと、
前記アノテーションに品質値を割り当てるステップと、
前記心臓の一部の3次元マップを生成するステップであって、前記マップは前記アノテーションおよびその前記品質値を含む、ステップと、を含む方法。
(2) 双極電位図を記録するステップは、電極の二重双極電極配置を確立するステップを含み、前記二重双極電極配置は、第1の単極電極対からの第1の差動信号および第2の単極電極対からの第2の差動信号を含み、前記双極電位図は、前記第1の差動信号と前記第2の差動信号との間の時間的に変化する差として測定される、実施態様1に記載の方法。
(3) アノテーションを確立するステップは、前記単極電位図のウェーブレット変換を計算するステップを含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記ウェーブレット変換のスケーログラムを生成し、前記スケーログラムにおける前記最大変化率を決定するステップをさらに含む、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記品質値から、前記アノテーションが所定のブロッキング基準を満たす適格なアノテーションであることを識別するステップと、
前記マップに、前記適格なアノテーションが前記心臓のブロックされた領域またはその近くにあることを示すステップと、をさらに含む、実施態様1に記載の方法。
【0070】
(6) アノテーションを確立するステップは、前記単極電位図から心室遠方場成分(ventricular far field components)を除去するステップを含む、実施態様1に記載の方法。
(7) アノテーションを確立するステップは、前記アノテーションにおける前記単極電位図の時間的サイクル長が他のアノテーションの時間的サイクル長の予め定義された統計的境界内にあるかどうかを決定するステップを含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 品質値、アノテーション間距離、および別のアノテーションのタイミングの少なくとも1つに従って、前記アノテーションの前記品質値を調整するステップをさらに含む、実施態様1に記載の方法。
(9) 前記他のアノテーションは、前記電極のうちの別のものから読み込まれた別の単極電位図から生成された、実施態様8に記載の方法。
(10) ノイズを所定のレベルに低減するのに十分な量だけ前記単極電位図をフィルタリングするステップをさらに含み、品質値を割り当てるステップは前記量を決定するステップを含む、実施態様1に記載の方法。
【0071】
(11) 装置であって、
複数の電極を有し、心臓の組織と接触するように構成される体内プローブと、
ディスプレイと、
プロセッサであって、前記電極から電気信号を受け取って、
前記心臓内のある位置にある前記電極の1つから双極電位図および単極電位図を記録するステップと、
前記双極電位図の電位の変化率が所定の値を超える関心ウィンドウを含む時間間隔を定義するステップと、
前記単極電位図のアノテーションを確立するステップであって、前記アノテーションは、前記関心ウィンドウ内の前記単極電位図の電位の最大変化率を示す、ステップと、
前記アノテーションに品質値を割り当てるステップと、
前記ディスプレイ上に前記心臓の一部の3次元マップを生成するステップであって、前記マップは前記アノテーションおよびその前記品質値を含む、ステップと、を実行するように構成される、プロセッサと、を含む装置。
(12) 双極電位図を記録するステップは、電極の二重双極電極配置を確立するステップを含み、前記二重双極電極配置は、第1の単極電極対からの第1の差動信号および第2の単極電極対からの第2の差動信号を含み、前記双極電位図は、前記第1の差動信号と前記第2の差動信号との間の時間的に変化する差として測定される、実施態様11に記載の装置。
(13) アノテーションを確立するステップは、前記単極電位図のウェーブレット変換を計算するステップを含む、実施態様11に記載の装置。
(14) 前記ウェーブレット変換のスケーログラムを生成し、前記スケーログラムにおける前記最大変化率を決定するステップをさらに含む、実施態様13に記載の装置。
(15) 前記品質値から、前記アノテーションが所定のブロッキング基準を満たす適格なアノテーションであることを識別するステップと、
前記マップに、前記適格なアノテーションが前記心臓のブロックされた領域またはその近くにあることを示すステップと、をさらに含む、実施態様11に記載の装置。
【0072】
(16) アノテーションを確立するステップは、前記単極電位図から心室遠方場成分を除去するステップを含む、実施態様11に記載の装置。
(17) アノテーションを確立するステップは、前記アノテーションにおける前記単極電位図の時間的サイクル長が他のアノテーションの時間的サイクル長の予め定義された統計的境界内にあるかどうかを決定するステップを含む、実施態様11に記載の装置。
(18) 前記プローブは複数の放射状部(rays)を有し、前記放射状部の各々は少なくとも1つの電極を有する、実施態様11に記載の装置。
(19) 前記プローブは複数のリブを有するバスケットカテーテルであって、前記リブの各々は少なくとも1つの電極を有する、実施態様11に記載の装置。