(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィルタ処理手段は、前記原画像のフィルタ領域における最小画素値を、前記フィルタ領域の注目画素に対応する画素の画素値とする前記第1中間画像を生成するとともに、前記初期画像のうち前記原画像のフィルタ領域における画素値が最大である画素に対応する画素に、前記フィルタ領域の全画素から前記フィルタ領域の最小画素値をそれぞれ減算して得られる前記複数の減算値を加算して前記第2中間画像を生成する請求項1に記載の画像処理装置。
前記フィルタ処理手段は、前記結果画像を前記原画像として、前記結果画像に基づいて前記第1中間画像を生成し、前記結果画像に基づいて前記第2中間画像を生成する請求項1又は2に記載の画像処理装置。
前記フィルタ処理手段は、前記結果画像を前記原画像として、前記結果画像に基づいて前記第1中間画像を生成し、前記結果画像に基づいて前記第2中間画像を生成する請求項4又は5に記載のX線診断装置。
新規の前記結果画像である新規画像上の対象物の像の位置が、前記新規画像より前に生成された過去の前記結果画像である過去画像上の対象物の像の位置と一致するように、前記新規画像に対して画像移動処理及び画像変形処理の少なくとも1の処理を行なって補正画像を生成する補正画像生成手段と、
前記原画像及び前記補正画像が時系列に沿って新規に生成されるごとに、最新の前記原画像及び前記補正画像を表示部に更新表示させる表示制御手段と、
をさらに有する請求項4乃至6のうちいずれか一項に記載のX線診断装置。
前記フィルタ処理手段は、前記原画像に対して前記空間フィルタを作用させる際に、前記結果画像の画素値が大きい順にソートするためのソート処理を組み合わせて行なって前記対象物の像の位置を識別する請求項7に記載のX線診断装置。
【背景技術】
【0002】
従来、健康診断等の医療分野において、被検体の所要部位に放射線(代表的には、X線)を照射して、所要部位を透過した放射線の強度分布を検出し、所要部位の画像を得るX線診断装置が広く利用されている。
【0003】
X線診断装置を用いて、血栓等により血管内に生じた狭窄部位に対して、血管内インターベンション治療と呼ばれる治療法が行なわれている。血管内インターベンション治療においては、医師によりバルーン付きカテーテルが狭窄部位まで挿入される。その後、カテーテルを通じてバルーン内に液体が注入されることにより、バルーンが拡張され、その結果、狭窄部位は機械的に拡張される。なお、バルーン付きカテーテルは、バルーン内の液体が吸引された上で、医師により体外に引き出される。
【0004】
また、バルーンによって拡張された狭窄部位の再狭窄を防止するために、バルーンの外側に金属のメッシュ(ステントストラット)を密着させたバルーン付きカテーテルを用いた血管内インターベンション治療も行なわれている。この治療においては、バルーンの拡張に伴ってステントストラットを拡張させた後、バルーン内の液体を吸引させてバルーン付きカテーテルが体外に引き出される。これにより、拡張されたステントストラットが狭窄部位に留置され、狭窄部位の再狭窄率が低下される。なお、ステントストラット及びバルーン付きカテーテルの2つの部分を有するデバイスは、「ステント」と呼ばれる。
【0005】
上述した血管内インターベンション治療は、X線診断装置により狭窄部位を含む領域のX線透視の間に行なわれるものである。医師は、バルーン付きカテーテルやステントを用いた一連の処理を、モニタに表示されたリアルタイムのX線透視画像を参照しながら実行する。
【0006】
血管内インターベンション治療では、医師は、X線透視画像を参照しながら、血管内に挿入したバルーン付きカテーテルやステントを狭窄部位まで精度よく移動させることが必要となる。特に、ステントストラットを留置する際には、医師は、ステントの位置決めをミリ単位の精度で行なうことが必要となる。このため、バルーン部分には、バルーン付きカテーテルやステントの位置を示すステントマーカ(以下、単に「マーカ」という。)としてX線不透過の金属が2箇所(1箇所の場合もある)取り付けられている。医師は、表示されたX線透視画像上のマーカ像を参照してバルーン付きカテーテルやステントの位置を確認しながら治療を進める。
【0007】
しかしながら、心臓のように常に拍動を行なう臓器の血管に血管内インターベンション治療を行なう場合、X線透視画像上でバルーン付きカテーテルやステントの像の位置が常に動いてしまう。よって、X線透視画像を参照しながら位置決めを行なうことは、医師にとって非常に困難な作業となる。
【0008】
また、X線透視画像を参照して行なわれる治療実行時に、治療用機器の視認性を保証したX線透視画像を即時に表示する技術(例えば、特許文献1参照)が提案されている。この技術では、X線透視画像上のマーカ像の識別を略リアルタイムで行なう目的で、テンプレートマッチングの技術が利用される。テンプレートとは、マーカの典型的な教師画像であり、教師画像と最も良く似た部分をX線透視画像から検索する。このためには、テンプレートをフィルタとしてX線透視画像との畳み込み(コンボリューション)を行なうことによって、テンプレートと画像の相互相関関数を計算し、この関数が極大となる点をマーカ像の位置の候補として推定する。これを高速化するために、高速フーリエ変換(FFT)を使ってフィルタ処理を行なうことができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態に係る画像処理装置及びX線診断装置について、添付図面を参照して説明する。
【0021】
(本実施形態に係る画像処理装置)
図1は、本実施形態に係る画像処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0022】
図1は、本実施形態に係る画像処理装置10を示す。画像処理装置10は、大きくは、制御部11、画像データ記憶部12、入力部13、及び表示部14等の基本的なハードウェアから構成される。制御部11は、共通信号伝送路としてのバスBを介して、画像処理装置10をそれぞれ構成する各ハードウェア構成要素に相互接続される。
【0023】
制御部11は、CPU(central processing unit)及びGPU(graphics processing unit)等によって構成され、画像処理装置10全体の動作を制御する。制御部11は、入力部13を介して入力された各種コマンドに基づいて、
図2を用いて後述する画像処理を実行する。さらに、制御部11は、入力部13を介してコマンドを受け付けるためのGUI(graphical user interface)の操作画像や、画像データ記憶部12に記憶された画像や、画像処理後の画像等を表示部14に表示するように制御する。
【0024】
画像データ記憶部12は、メモリやHDD(hard disk drive)等によって構成される。画像データ記憶部12は、制御部11による制御の下、画像を記憶する。
【0025】
入力部13は、操作者が各種コマンドを入力するためのマウス、キーボード、ボタン、トラックボール、及びジョイスティック等を有する。入力部13は、操作者から受け付けられた各種コマンドを、制御部11に転送する。
【0026】
表示部14は、制御部11による制御の下、入力部13を介して入力された各種コマンドを受け付けるためのGUIの操作画像を表示したり、画像データ記憶部12に記憶された画像や、画像処理後の画像等を表示したりするモニタを含む。なお、表示部14は、複数のモニタを含む場合であってもよい。
【0027】
図2は、本実施形態に係る画像処理装置10の機能を示すブロック図である。
【0028】
制御部11がプログラムを実行することによって、画像処理装置10は、原画像取得(読み出し)手段21、フィルタ処理手段22、及び結果画像生成手段23として機能する。なお、手段21〜23は、ソフトウェア的に機能する場合を例に挙げて説明するが、それら手段21〜23の一部又は全部は、画像処理装置10にハードウェア的にそれぞれ設けられるものであってもよい。
【0029】
原画像取得手段21は、画像データ記憶部12から原画像をデータとして取得する(読み出す)。原画像は、高周波ノイズ低減フィルタ処理及び低周波成分除去フィルタ処理が実行済みの画像である。さらに、原画像は、フィルタ処理済み画像を構成する各画素の画素値に対して対数値を算出して生成される対数画像である。
【0030】
フィルタ処理手段22は、GPU等を利用して、原画像取得手段21によって取得された原画像に対して空間フィルタを作用させて2種の中間画像を生成する。フィルタ処理手段22は、原画像全体か、又は、原画像の部分に空間フィルタ処理を行なう。フィルタ処理手段22は、第1中間画像生成手段22a及び第2中間画像生成手段22bを有する。
【0031】
第1中間画像生成手段22aは、原画像取得手段21によって取得された原画像F(x,y)に対して空間フィルタを作用させて、第1中間画像a(x,y)を生成する。
【0032】
[第1中間画像の算出方法]
(1)原画像F(x,y)の各注目画素(x,y)を中心として、たとえば幅(2m+1)高さ(n+1)、あるいは直径(2m+1)[n、mは正の整数値]のフィルタ領域Fa(x,y)を設定する。フィルタ領域は、正方形、略円形、矩形などの形状である。
(2)フィルタ領域Fa(x,y)の中の画素値の平均値(平均画素値)より小さい値、例えば画素値の最小値(最小画素値)を、第1中間画像a(x,y)の値とする。
【0033】
上述の(1),(2)の処理を原画像F(x,y)の全画素に対して行なうことにより、第1中間画像a(x,y)を求める。
【0034】
第2中間画像生成手段22bは、原画像取得手段21によって取得された原画像F(x,y)に対して空間フィルタを作用させて、第2中間画像b(x,y)を生成する。以下、
図3を用いて第2中間画像の算出方法を説明する。
【0035】
[第2中間画像の算出方法]
(1)第2中間画像b(x,y)の全画素の値を初期値(例えば0)にした初期画像を設定する。
(2)原画像F(x,y)の各注目画素(x,y)を中心として、たとえば幅(2m+1)高さ(2m+1)、あるいは直径(2m+1)のフィルタ領域Fb(x,y)を設定する。フィルタ領域Fb(x,y)は、第1中間画像におけるフィルタ領域Fa(x,y)と同じ領域でも良いし、異なる領域でも良い。
(3)フィルタ領域Fb(x,y)の中に含まれる各画素値の最小値M(
図3に示す場合は「2」)と、画素値が最大である画素(p,q)(
図3に示す場合は画素(4,3))とを探す。画素(p,q)は、フィルタ領域Fb(x,y)の中の画素値の平均値(平均画素値)より大きい値をもつ画素であればよい。
(4)フィルタ領域Fb(x,y)に含まれる全ての画素(s,t)の画素値f(s,t)について、差の値(画素値f(s,t)−最小値M)を減算値として求め、初期画像に当該減算値を加算(単純加算、加算平均など)して第2中間画像b(p,q)を生成する。
【0036】
上述の(1)乃至(4)の処理を原画像F(x,y)の全画素に対して行なうことにより、第2中間画像b(x,y)を求める。
【0037】
結果画像生成手段23は、第2中間画像a(x,y)及び第1中間画像g(x,y)を画素ごとに加算して結果画像h(x,y)として生成する。
【0038】
上述の例では、第1中間画像、第2中間画像を求める際に最小画素値を用いたが、原画像の空間領域における平均画素値より小さい値であれば、最小画素値以外の値でも良い。例えば、空間領域における平均画素値より小さい複数の画素値に基づく平均画素値などを用いることができる。また、第2中間画像を求める際に最大画素値を用いたが、原画像の空間領域における平均画素値より大きい値であれば、最大画素値以外の値でもよい。
【0039】
フィルタ処理手段22及び結果画像生成手段23による上述の処理は、計算順序を変えることによって、同等の計算を、より少ない記憶領域と繰り返しで実装することもできるが、処理の内容が分かり易くなるように、最も単純な計算順序を示した。
【0040】
上述の処理は、結果画像を得るための1回のフィルタ処理である。原画像の代わりに、結果画像h1(x,y)を入力画像として、フィルタ処理手段22及び結果画像生成手段23による処理を繰り返し行なうようにしても良い。
【0041】
この処理を繰り返すことにより、各画素の値が、画素値の高い方へと集められて、最終的に得られる結果画像は、画像上の点状対象物の像のほぼ中央の位置で著しく高い画素値を持ち、他の位置では低い画素値をもつものとなる。
【0042】
結果画像h(x,y)の画素値によって形成される曲線は、原画像F(x,y)のそれと比較して、ピークの画素値がより大きくなる(ピーキーになる)。すなわち、結果画像h(x,y)は、原画像F(x,y)と比較して、画像上の点状対象物の像のほぼ中央の位置で著しく高い画素値を持ち、他の位置では低い画素値をもつものとなる。
【0043】
本実施形態に係る画像処理装置10によると、原画像に簡単な空間フィルタを作用させることによって、コントラストが高い小さな対象物の像の重心に近い位置を容易に検出できる。
【0044】
さらに、本実施形態に係る画像処理装置10によると、原画像全体に空間フィルタを作用させる場合でも、フーリエ変換よりも高速に処理が行なえる。画像処理装置10によると、原画像上の検出したい対象物の像の大体の位置が分かっている場合、それらの位置を含む範囲内のみに空間フィルタを作用させればよいので、さらに(典型的には数十倍〜数千倍の)高速化ができる。
【0045】
(本実施形態に係るX線診断装置)
図4は、本実施形態に係るX線診断装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0046】
図4は、本実施形態に係るX線診断装置30を示す。X線診断装置30は、高電圧発生部31、X線管(X線源)32、X線絞り装置33、X線検出器34、天板35、Cアーム36、Cアーム回転・移動機構37、天板移動機構38、システム制御部41、入力部42、表示部43、及び画像データ記憶部44を備える。
【0047】
高電圧発生部31は、システム制御部41による制御の下、高電圧を発生して、発生した高電圧をX線管32に供給する装置である。
【0048】
X線管32は、システム制御部41による制御の下、高電圧発生部31から供給される高電圧を用いてX線を発生する装置である。すなわち、高電圧発生部31は、X線管32に供給する電圧を調整することで、被検体Pに対して照射されるX線量の調整や、被検体PへのX線照射のON/OFFの制御を行なう。
【0049】
X線絞り装置33は、X線管32が発生したX線を被検体Pの関心領域に対して選択的に照射されるように絞り込むための装置である。例えば、X線絞り装置33は、スライド可能な4枚の絞り羽根を有する。X線絞り装置33は、システム制御部41による制御の下、絞り羽根をスライドさせることで、X線管32が発生したX線を絞り込む。
【0050】
X線検出器34は、被検体Pを透過したX線を検出するためのX線検出素子がマトリックス状に配列された装置であり、各X線検出素子は、被検体Pを透過したX線を電気信号に変換して蓄積し、蓄積した電気信号を後述するシステム制御部41に送信する。
【0051】
天板35は、被検体Pを載置するためのベッドであり、図示しない寝台の上に配置される。
【0052】
Cアーム36は、X線管32、X線絞り装置33、及びX線検出器34を保持するアームである。X線管32及びX線絞り装置33とX線検出器34とは、Cアーム36により被検体Pを挟んで対向するように配置される。なお、X線診断装置30がCアーム36を備え、Cアーム36がX線管32及びX線検出器34を一体として動作させる構成を例にとって説明するが、その場合に限定されるものではない。例えば、X線診断装置30がCアーム36を備えずに、X線管32及びX線検出器34をそれぞれ独立して動作させる構成であってもよい。
【0053】
Cアーム回転・移動機構37は、システム制御部41による制御の下、Cアーム36を回転動、円弧動、及びスライド動をさせるための装置である。
【0054】
天板移動機構38は、システム制御部41による制御の下、天板35を移動させるための装置である。
【0055】
システム制御部41は、CPU及びGPU等によって構成され、X線診断装置30全体の動作を制御する。すなわち、システム制御部41は、入力部42を介して入力された各種コマンドに基づいて、高電圧発生部31、X線管32、X線絞り装置33、Cアーム回転・移動機構37、及び天板移動機構38を制御することで、X線量の調整及びX線照射のON/OFF制御と、Cアーム36の回転動、円弧動、及びスライド動の調整と、天板35の移動調整とを行なう。
【0056】
また、システム制御部41は、入力部42を介して入力された各種コマンドに基づいて、
図6を用いて後述する画像処理を実行する。さらに、システム制御部41は、入力部42を介してコマンドを受け付けるためのGUIの操作画像や、画像データ記憶部44に記憶されたX線画像(X線透視画像及びX線撮影画像)や、画像処理後のX線画像等を表示部43に表示するように制御する。
【0057】
入力部42は、医師や技師等の操作者が各種コマンドを入力するためのマウス、キーボード、ボタン、トラックボール、及びジョイスティック等を有する。入力部42は、操作者から受け付けたコマンドを、後述するシステム制御部41に転送する。
【0058】
表示部43は、システム制御部41による制御の下、入力部42を介して各種コマンドを受け付けるためのGUIの操作画像を表示したり、画像データ記憶部44に記憶されたX線画像や、システム制御部41による画像処理後のX線画像等を表示したりするモニタを含む。なお、表示部43は、複数のモニタを含む場合であってもよい。
【0059】
画像データ記憶部44は、システム制御部41による制御の下、X線検出器34によって生成されたX線画像を記憶する。
【0060】
ここで、X線診断装置30は、被検体Pの心臓血管における狭窄部位に対してステントやバルーン付きカテーテルを用いた血管内インターベンション治療を行なう際に、入力部42を介した各種コマンドに基づいて、ステントが挿入される狭窄部位を関心領域としてX線透視を時系列に沿って実行してX線透視画像を生成する。なお、X線診断装置30では、ステントのバルーン部分両端に2つのX線不透過の金属がマーカとして取り付けられている場合について説明するが、本発明は、ステントのバルーン部分中央に1つのX線不透過の金属がマーカとして取り付けられている場合であっても適用可能である。
【0061】
すなわち、X線診断装置30は、
図5に示すように、血管内インターベンション治療が施されている被検体Pの狭窄部位に対してX線管32からX線を照射し、被検体Pを透過したX線をX線検出器34によって検出することで、時系列に沿って順次生成したX線透視画像を画像データ記憶部44に格納する。なお、
図5は、本実施形態に係るX線診断装置30におけるX線画像の生成を説明するための図である。
【0062】
図6は、本実施形態に係るX線診断装置30の機能を示すブロック図である。
【0063】
システム制御部41がプログラムを実行することによって、X線診断装置30は、原画像取得手段21、フィルタ処理手段22、結果画像生成手段23、補正画像生成手段24、及び表示制御手段25として機能する。なお、手段21〜25は、ソフトウェア的に機能する場合を例に挙げて説明するが、それら手段21〜25の一部又は全部は、X線診断装置30にハードウェア的にそれぞれ設けられるものであってもよい。
【0064】
なお、
図6において、
図2に示す部材と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0065】
図7〜
図9は、シミュレーションに基づく原画像と、結果画像とを説明するための図である。
図8及び
図9は、
図7に示す非常にノイズが強い原画像F(x,y)上の弱いコントラストの対象物の像(中央の白色部分)に対するフィルタ効果を示す結果画像である。これらの図は、画素値を等高線で表現している。
【0066】
図7は、原画像F(x,y)の一例を示すものであり、中央部に比較的画素値が大きい部分(図では白い半円状)があり、原画像F(x,y)の至る所にノイズ(濃いグレーと淡いグレーとの斑)が存在する。
図8は、フィルタ処理手段22(
図6に図示)による1回のフィルタ処理に基づく結果画像h1(x,y)の一例を示すものである。
図9は、フィルタ処理手段22(
図6に図示)による2回のフィルタ処理に基づく結果画像h2(x,y)の一例を示すものである。
【0067】
図8に示す結果画像h1(x,y)は、
図7の原画像F(x,y)に示す中央の対象物の像に近い3〜4個の画素が特に大きな画素値をもち、他の画素は相対的にごく小さい画素値をもつ。このため、結果画像h1(x,y)からこれら3〜4個の画素を選抜するのは容易である。
図9に示す結果画像h2(x,y)は、
図7の原画像F(x,y)に示す中央の対象物の像のほぼ中心位置の画素だけが大きな画素値をもつ。このため、結果画像h2(x,y)からその画素を選抜するのは容易である。
【0068】
原画像F(x,y)ではマーカ像の位置での画素値が最も大きいが、マーカ像以外の多数の点も大きな画素値をもつ。よって、原画像F(x,y)に基づいてマーカ像の識別を行なうための処理プロセスを行なうと、マーカ像候補の絞り込みの処理量が大きくなり時間がかかる。一方、結果画像h1(x,y)では、マーカ像以外では僅かの画素だけが大きい画素値を持つので、上記絞り込みの処理量が著しく小さくなる。結果画像h2(x,y)では、結果画像h1(x,y)と比較してさらに効果が顕著に表れる。
【0069】
図6の説明に戻って、補正画像生成手段24は、結果画像生成手段23によって生成された結果画像に基づくマーカ像の位置の候補から、結果画像の画素値が大きい順にソートするためのソート処理を施してマーカ像の識別を行なう(
図10のステップST2)。なお、フィルタ処理手段22が、繰り返し処理における最終回に空間フィルタを作用させる際に、結果画像の画素値が大きい順にソートするためのソート処理を組み合わせて行なうことで、
図10のステップST2を省略してもよい。
【0070】
また、補正画像生成手段24は、時系列に沿って順次生成される結果画像のうち第t(tは正の整数)フレームの結果画像上のマーカ像の位置を基準位置とし、第t+1フレームの結果画像上のマーカ像の位置が、第tフレームの結果画像に基づく基準位置と一致するように、第t+1フレームの結果画像に対して平行移動及び回転移動等の画像移動処理と、アフィン変換等の画像変形処理とのうち少なくとも1の処理を行なって(
図10のステップST3)、補正画像をそれぞれ生成する。なお、直前フレームの結果画像に基づくマーカ像の位置を基準位置として用いる場合に限定するものではなく、最初の第1フレームに基づくマーカ像の位置を基準位置に固定してもよい。
【0071】
表示制御手段25は、表示用画像(stent stabilized image)としての補正画像が時系列に沿って新規に生成されるごとに表示用画像を表示部43に更新表示させる。すなわち、表示制御手段25は、マーカ像の位置が一致した複数の表示用画像を動画表示するように制御する。これにより、マーカ像以外の背景部分がぶれた状態となるものの、マーカ像が動かない状態で複数の表示用画像を動画表示することができる。
【0072】
なお、表示制御手段25は、入力部42を介して受け付けた表示形態指示コマンドに従って、表示用画像を様々な形態で表示するように制御する。具体的には、表示制御手段25は、表示形態指示コマンドに従って、補正画像上のマーカ像の位置に基づいて設定される設定領域を表示用画像として表示させる。例えば、表示制御手段25は、補正画像上の2のマーカ像の位置に基づく矩形を設定領域とし、設定領域以外の補正画像をマスクして表示させる。また、表示制御手段25は、設定領域を拡大した拡大画像を表示用画像として表示させることもできる。
【0073】
表示制御手段25は、表示形態指示コマンドに従って、原画像及び表示用画像が時系列に沿って新規に生成されるごとに、最新の原画像及び表示用画像を表示部43に更新表示するように制御する。
図10は、並列表示される原画像と表示用画像としての拡大画像とを並列表示する場合を示す。さらに、表示制御手段25は、並列表示させる際に、設定領域又は拡大画像が表示用画像であるならば、設定領域に対応する領域を原画像にて表示させることもできる。
【0074】
ここで、補正画像、設定領域、又は拡大画像を表示用画像とする場合について説明した。しかしながら、結果画像そのものが表示用画像とされてもよい。
【0075】
本実施形態に係るX線診断装置30によると、X線透視画像の原画像に簡単な空間フィルタを作用させることによって、コントラストが高い小さな対象物の像の重心に近い位置を容易に検出できる。また、X線診断装置30によると、X線透視画像の原画像上のマーカの典型的形状を予想してテンプレートを準備することが不要である。例えば、テンプレートのマーカ像が半径rの円形であるとして、実際のマーカ像が短軸2r、長軸4rの略楕円形であったとしても、X線診断装置30では、テンプレートを使わずに、原画像上のマーカ像内の幾つかの点がマーカ像の位置の候補として選抜される。これらの候補位置は極めて近接しているので、容易に単一のマーカ像を示していることが判別できる。
【0076】
さらに、本実施形態に係るX線診断装置30によると、フィルタ処理手段22(
図6に図示)によって原画像全体に空間フィルタを作用させる場合でも、フーリエ変換よりも高速に処理が行なえる。X線診断装置30によると、原画像上の検出したいマーカ像の大体の位置が分かっている場合、フィルタ処理手段22(
図6に図示)によってそれらの位置を含む範囲内のみに空間フィルタを作用させればよいので、さらに(典型的には数十倍〜数千倍の)高速化ができる。
【0077】
加えて、本実施形態に係るX線診断装置30によると、最終のk回目に、k−1回目のフィルタ処理で得られた結果画像に対して空間フィルタを作用させる際に、k回目のフィルタ処理で得られる結果画像hk(x,y)の画素値が大きい順にソートするためのソート処理を組み合わせることが容易にできる。こうすれば、結果画像hk(x,y)の生成後に改めてその結果画像hk(x,y)を構成する全画素にアクセスして画素値が大きい順にソートする必要がない。
【0078】
また、本実施形態に係るX線診断装置30によると、原画像の部分ごとにフィルタ処理手段22(
図6に図示)によるフィルタ処理を実行できるため、多数の演算回路で並列処理を行なうGPUに実装するのに適している。
【0079】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。