特許第6552832号(P6552832)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウー−ブロックス アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

特許6552832二重化装置、無線デバイス、及び関連する方法
<>
  • 特許6552832-二重化装置、無線デバイス、及び関連する方法 図000017
  • 特許6552832-二重化装置、無線デバイス、及び関連する方法 図000018
  • 特許6552832-二重化装置、無線デバイス、及び関連する方法 図000019
  • 特許6552832-二重化装置、無線デバイス、及び関連する方法 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552832
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】二重化装置、無線デバイス、及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/52 20150101AFI20190722BHJP
   H04B 1/56 20060101ALI20190722BHJP
   H04B 1/408 20150101ALI20190722BHJP
【FI】
   H04B1/52
   H04B1/56
   H04B1/408
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-20142(P2015-20142)
(22)【出願日】2015年2月4日
(65)【公開番号】特開2015-149721(P2015-149721A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2017年12月7日
(31)【優先権主張番号】14153891.8
(32)【優先日】2014年2月4日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510145967
【氏名又は名称】ユー−ブロックス、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】u−blox AG
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100096921
【弁理士】
【氏名又は名称】吉元 弘
(72)【発明者】
【氏名】レオ ラフリン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー マーシャル
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0335291(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/063506(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0300814(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0304701(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/38−1/58
H03H 7/30−7/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線で送信される信号及びアンテナによって無線で受信された信号を二重化する装置であって、
前記アンテナに結合するアンテナノード、前記アンテナによって送信される信号を受信する入力ノード、前記アンテナによって無線で受信された信号を出力する出力ノード、及び平衡ノードを備えるハイブリッド結合部と、
前記平衡ノードに結合される可変インピーダンスと、
コントローラと、
を備え、前記コントローラは、
a)前記可変インピーダンスを所定のインピーダンスに設定することと、
b)関心のある第1の周波数帯内の第1の周波数で信号を送信することと、
c)前記信号が前記第1の周波数で送信された結果として、関心のある第2の周波数帯内の少なくとも1つの第2の周波数において、前記出力ノードで信号を測定することと、 d)前記関心のある第1の周波数帯内の少なくとも1つの他の周波数及び/又は前記関心のある第2の周波数帯内の少なくとも1つの他の周波数でステップb)及び/又はc)を繰り返すことと、
e)ステップc)での前記測定に応じて、前記可変インピーダンスを制御することと、を行うように構成され、
前記コントローラは、前記平衡ノードでの反射係数が、前記関心のある第1又は第2の周波数帯にわたる前記アンテナの平均反射係数に比例するように、前記可変インピーダンスを制御するように構成される、装置。
【請求項2】
前記関心のある第1の周波数帯及び前記関心のある第2の周波数帯は重複しないか、部分的に重複するか、又は完全に重複する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の周波数及び前記少なくとも1つの第2の周波数は同一であるか、又は異なる、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
ステップc)での測定毎に、前記ハイブリッド結合部の干渉及び平衡を表す各数量を計算することと、
前記複数の数量に応じて、前記可変インピーダンスを制御することと、
を行うように更に構成される、請求項1〜3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記コントローラは、更に、信号が周波数の関数として前記アンテナによって送信される電力密度及び信号が周波数の関数として受信されるフィルタ利得のうちの少なくとも一方に応じて、前記可変インピーダンスを制御するように構成される、請求項1〜4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記可変インピーダンスを第2の所定のインピーダンスに設定することと、
前記第2の所定のインピーダンスでステップb)〜d)を繰り返すことであって、それにより、前記出力ノードで第2の複数の測定を得る、繰り返すことと、
前記第2の複数の測定に応じて、前記可変インピーダンスを制御することと、
を行うように構成される、請求項1〜の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記コントローラは、ステップa)〜e)を周期的に実行するように構成される、請求項1〜の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記コントローラは、
【数1】
に比例するインピーダンスをとるように前記可変インピーダンスを制御するように構成され、ここで、
【数2】
は、前記関心のある第1又は第2の周波数帯にわたる前記アンテナの前記平均反射係数であり、kは比例定数である、請求項に記載の装置。
【請求項9】
アンテナと、請求項1〜の何れか一項に記載の装置とを備える無線デバイス。
【請求項10】
ハイブリッド結合部を備えるシステムにおいて、無線で送信される信号及びアンテナによって無線で受信された信号を二重化する方法であって、前記ハイブリッド結合部は、前記アンテナに結合するアンテナノード、前記アンテナによって送信される信号を受信する入力ノード、前記アンテナによって無線で受信された信号を出力する出力ノード、及び平衡ノードを備え、前記方法は、
a)前記平衡ノードに結合される可変インピーダンスを所定のインピーダンスに設定することと、
b)関心のある第1の周波数帯内の第1の周波数で信号を送信することと、
c)前記信号が前記第1の周波数で送信された結果として、関心のある第2の周波数帯内の少なくとも1つの第2の周波数において、前記出力ノードで信号を測定することと、
d)前記関心のある第1の周波数帯内の少なくとも1つの他の周波数及び/又は前記関心のある第2の周波数帯内の少なくとも1つの他の周波数でステップb)及び/又はc)を繰り返すことと、
e)ステップc)での前記測定に応じて、前記可変インピーダンスを制御することと、を含み、
前記可変インピーダンスは、前記平衡ノードでの反射係数が、前記関心のある第1又は第2の周波数帯にわたる前記アンテナの平均反射係数に比例するように制御される、方法。
【請求項11】
前記関心のある第1の周波数帯及び前記関心のある第2の周波数帯は重複しないか、部分的に重複するか、又は完全に重複する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の周波数及び前記少なくとも1つの第2の周波数は同一であるか、又は異なる、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
ステップc)での測定毎に、前記ハイブリッド結合部の干渉及び平衡を表す各数量を計算することと、
前記複数の数量に応じて、前記可変インピーダンスを制御することと、
を更に含む、請求項1012の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記可変インピーダンスは、信号が周波数の関数として前記アンテナによって送信される電力密度及び信号が周波数の関数として受信されるフィルタ利得のうちの少なくとも一方に応じて更に制御される、請求項1013の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記可変インピーダンスを第2の所定のインピーダンスに設定することと、
前記第2の所定のインピーダンスでステップb)〜d)を繰り返すことであって、それにより、第2の複数の測定を得る、繰り返すことと、
前記第2の複数の測定に応じて、前記可変インピーダンスを制御することと、
を更に含む、請求項1014の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
ステップa)〜e)を周期的に実行することを更に含む、請求項1015の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記可変インピーダンスは、
【数3】
に比例するインピーダンスをとるように制御され、ここで、
【数4】
は、前記関心のある第1又は第2の周波数帯にわたる前記アンテナの前記平均反射係数であり、kは比例定数である、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線システムに関し、特に、二重化装置、そのような装置を備える無線デバイス、及び送信信号と受信信号とを互いから分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムは基本的に、動作しなければならない電磁スペクトルの可用性によって制限される。その結果、スペクトル効率の増大が、最近数十年にわたる研究の大きな焦点であり、無線サービスへの指数的な需要増大を考えると、スペクトル効率は、今後も主要な研究の推進力としてあり続けるだろう。無線信号は距離に伴ってすぐに減衰し、したがって、無線システムでは、送信信号電力は通常、受信信号電力よりもはるかに高い(セルラシステムでは100dBを超えることが多い)。このため、高電力送信信号が受信器での破滅的な自己干渉を生じさせることから、長い間、無線システムは同じ周波数で同時に送受信することができないと考えられてきた。
【0003】
従来の無線システムでは、二重化動作は、単にこの問題を回避することによって達成される。スペクトルリソースは、時分割二重化(TDD; time division duplexing)を使用して時間的に、又は周波数分割二重化(FDD; frequency division duplexing)を使用して周波数的に送信チャネルと受信チャネルとに分割される。
【0004】
FDD無線動作では、異なる周波数の2つの別個の搬送波があり、一方は上りリンク送信用であり、一方は下りリンク送信用である。下りリンク送信と上りリンク送信との分離は、二重化フィルタと呼ばれる送/受信フィルタによって達成される。これらの二重化フィルタは、デュプレクサとしても知られ、通常、2つの高選択性フィルタとして実施され、一方は受信(RX)帯にセンタリングされ、他方は送信(TX)帯にセンタリングされて、TX信号とRX信号とを分離し、それにより、TX信号がRX機能に干渉するのを回避する。
【0005】
デュプレクサの分離能力が高いほど、送信器のノイズ要件と、受信器の線形性要件及び位相ノイズ要件とを同時に緩和するため、デュプレクサの達成可能なTX−RX分離が最大の関心事である。例えば、特定のセルラ無線標準では、TX帯で52dB及びRX帯で45dBのTX−RX分離が指示されている。これらの厳しい分離要件は、近代のデュプレクサでは、高選択性表面音響波(SAW; surface acoustic wave)フィルタを利用することによって満たされている。
【0006】
これらのフィルタは、SAWフィルタの構築に使用される高Q共振子のために、オフチップで実装されなければならない(すなわち、CMOSプロセスと統合することができない)。これは通常、1つの周波数帯で動作する単純な無線送受信器では問題ではない。しかし、近代の無線送受信器は通常、マルチバンドである。例えば、第三世代パートナーシッププロジェクト(Third Generation Partnership Project)のリリース11(3GPP
Rel.11)によって規定されるLTE(Long-Term Evolution)の場合、38の動作帯があり、そのうちの26がFDD動作を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これは、各動作帯に別個のデュプレクサが必要なことを意味する。離散したデュプレクサの「バンク」が通常、多極RFスイッチを介してアンテナに接続され、このスイッチは、動作周波数帯に基づいて適切なデュプレクサを選択する。これは、デバイスの複雑性を
追加するのみならず、規模の経済性のために高度に集積された解決策に頼るマルチバンド送受信器の全体サイズ及びコストにも影響する。その結果、複数のバンドをサポートすることができるのみならず、オンチップで完全に集積することもできる二重化装置が非常に望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、無線で送信される信号及びアンテナによって無線で受信された信号を二重化する装置であって、アンテナに結合するアンテナノード、アンテナによって送信される信号を受信する入力ノード、アンテナによって無線で受信された信号を出力する出力ノード、及び平衡ノードを備えるハイブリッド結合部と、平衡ノードに結合される可変インピーダンスと、コントローラとを備え、コントローラは、a)可変インピーダンスを所定のインピーダンスに設定することと、b)関心のある第1の周波数帯内の第1の周波数で信号を送信することと、c)信号が第1の周波数で送信された結果として、関心のある第2の周波数帯内の少なくとも1つの第2の周波数において、出力ノードで信号を測定することと、d)関心のある第1の周波数帯内の少なくとも1つの他の周波数及び/又は関心のある第2の周波数帯内の少なくとも1つの他の周波数でステップb)及び/又はc)を繰り返すことと、e)ステップc)での測定に応じて、可変インピーダンスを制御することとを行うように構成される、装置が提供される。
【0009】
本発明の実施形態では、関心のある第1の周波数帯及び関心のある第2の周波数帯は重複しなくてもよく、部分的に重複してもよく、又は完全に重複してもよい。したがって、バンドは同じであってもよく(すなわち、システムは、全二重モードで同じ周波数帯を介して信号を送受信し得る)、又は異なってもよい。異なる場合、送信帯及び受信帯は、周波数空間において互いに隣接し得る。
【0010】
本発明の実施形態では、第1の周波数及び少なくとも1つの第2の周波数は同一であってもよく、又は異なってもよい。
【0011】
本発明の実施形態では、コントローラは、ステップc)での測定毎に、信号を使用して、ハイブリッド結合部の干渉及び平衡を表す各数量を計算することと、複数の数量に応じて、可変インピーダンスを制御することとを行うように構成される。一実施形態では、コントローラは、平衡ノードでの反射係数が、関心のある第1又は第2の周波数帯にわたるアンテナの平均反射係数に比例するように、可変インピーダンスを制御するように構成される。別の実施形態では、コントローラは、更に、信号が周波数の関数としてアンテナによって送信される電力密度及び信号が周波数の関数として受信されるフィルタ利得のうちの少なくとも一方に応じて、可変インピーダンスを制御するように構成される。
【0012】
本発明の実施形態では、コントローラは、
【数1】

に比例するインピーダンスをとるように可変インピーダンスを制御するように構成され、ここで、
【数2】

は、関心のある第1又は第2の周波数帯にわたるアンテナの平均反射係数であり、kは比
例定数である。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、ハイブリッド結合部を備えるシステムにおいて、無線で送信される信号及びアンテナによって無線で受信された信号を二重化する方法であって、ハイブリッド結合部は、アンテナに結合するアンテナノード、アンテナによって送信される信号を受信する入力ノード、アンテナによって無線で受信された信号を出力する出力ノード、及び平衡ノードを備え、方法は、a)平衡ノードに結合される可変インピーダンスを所定のインピーダンスに設定することと、b)関心のある第1の周波数帯内の第1の周波数で信号を送信することと、c)信号が第1の周波数で送信された結果として、関心のある第2の周波数帯内の少なくとも1つの第2の周波数において、出力ノードで信号を測定することと、d)関心のある第1の周波数帯内の少なくとも1つの他の周波数及び/又は関心のある第2の周波数帯内の少なくとも1つの他の周波数でステップb)及び/又はc)を繰り返すことと、e)ステップc)での測定に応じて、可変インピーダンスを制御することとを含む、方法が提供される。
【0014】
本発明をよりよく理解し、本発明をいかに実施し得るかをより明確に示すために、これより、以下の図面を例として参照する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態による二重化装置を示す概略図である。
図2】本発明の実施形態による二重化装置に利用し得るハイブリッド回路の例である。
図3】本発明の実施形態による二重化装置を備える無線デバイスを示す。
図4】本発明の実施形態による方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の実施形態による二重化装置10を示す。
【0017】
この装置は、少なくとも4つのノードを有するハイブリッド回路12(ハイブリッド結合部としても知られる)を備える。第1のノードはアンテナ14に結合されて、信号を無線で送受信する。第2のノードは送信(TX)パスに結合される。したがって、送信される信号は、電力増幅器16を介してハイブリッド回路12に入力され、次に、信号はアンテナ14に渡される。第3のノードは受信器(RX)パスに結合される。したがって、アンテナ14を介して無線で受信される信号は、ハイブリッド回路12を通してRXパス内の低ノイズ増幅器(LNA)18に渡される。第4のノードは、平衡インピーダンスとも呼ばれる可変インピーダンスZBAL20に結合される。平衡インピーダンスは、可変抵抗、インダクタ、及び/又はキャパシタの回路を備え得る。抵抗、インダクタ、及び/又はキャパシタは、異なる抵抗、インダクタンス、及びキャパシタンスをとるように可変であり、これらの結合様式は、可変インピーダンス20が全体的に所望のインピーダンスをとるように、既知の様式で変更することができる。構成要素及び結合は、周波数範囲にわたる所望のインピーダンス変動を提示するように更に構成し得る。
【0018】
図1の概略構成では、第1のノード(「アンテナノード」とも呼ばれる)は第4のノード(「平衡ノード」とも呼ばれる)の逆に配置され、一方、第2のノード(「TXノード」)は第3のノード(「RXノード」の逆に配置される。ハイブリッド回路に選ばれる特定のトポロジーにより、各ノードが1つ又は2つの端子を備え得ることが当業者には明らかになるだろう。しかし、幾つかの実施形態は、実施に応じて3つ以上の端子を含んでもよい。
【0019】
当業者には知られるように、ハイブリッド回路12は、4つの端子(又は差動信号の場
合には端子対)を提供するように構成される変圧器、抵抗回路、1組の導波管、又は他の構成であり得る。ハイブリッド回路は、回路が平衡されるとき、1つの端子に入る信号は分割され、2つの隣接する端子から出るが、逆の端子に達することはできないという特性を有する。特定の端子でそのような分離を達成するために、特定の端子に隣接する端子で見られるインピーダンスは、アンテナノード及び平衡ノードでの反射係数が、問題となっている特定のハイブリッドの対称性に依存する定数係数に関連する、すなわち、平衡するような適切な値であるべきである。幾つかのハイブリッド回路トポロジーでは、特定の端子に隣接する端子で見られるインピーダンスは、等しくてもよく、他のトポロジーでは、等しくなくてもよい。
【0020】
図2(a)〜図2(c)は、ハイブリッド回路12の3つの異なる実施態様を示す。示される回路は例であり、本発明の範囲から逸脱せずに、同じ分離効果を達成する代替の回路を利用可能なことを当業者は理解するだろう。
【0021】
図2(a)は、TXノード(すなわち、電力増幅器16の出力)が2つのインダクタ22、24の間に接続される第1の回路実施形態を示す。第1のインダクタ22の逆の端末はアンテナノード(すなわち、アンテナ14)に結合され、一方、第2のインダクタ24の逆の端子は平衡ノード(すなわち、平衡インピーダンス20の一方の端子)に結合される。平衡インピーダンス20の他方の端子は基準電位に結合される。第3のインダクタ26は、第1及び第2のインダクタ22、24の両方に誘導結合され、第3のインダクタ26の端子は両方とも、RXノード(すなわち、低ノイズ増幅器18)に結合される。
【0022】
図2(b)は、TXノードがインダクタ32の一方の端子に接続され、逆の端子がアンテナ14に結合される、ハイブリッド回路12の第2の回路実施形態を示す。RXノードは、第2のインダクタ34の一方の端子に結合され、逆の端子もアンテナ14に結合される。平衡インピーダンス20は、平衡インピーダンス20が、一端部においてRXノードに結合され、他端部においてTXノードに接続されるように、2つの直列接続されたインダクタ32、34にわたって接続される。したがって、この例では、平衡ノードは、平衡インピーダンス20の両端部に2つの端子を備える。
【0023】
図2(c)は、TXノードがインダクタ42の一方の端子に結合され、逆の端子が平衡インピーダンス20に結合される、ハイブリッド回路12の第3の回路実施形態を示す。RXノードは、第2のインダクタ44の一方の端子に結合され、逆の端子も平衡インピーダンスに結合される(その同じノードで)。第3のインダクタ46は、第1及び第2のインダクタ42、44に誘導結合され、インダクタ46の一方の端子はアンテナ14に結合され、他方の端子は基準電位(例えば、接地)に結合される。
【0024】
正しく平衡すると、これらの回路インピーダンスは全て、RXノードでの信号がTXノードに到達しないように、及びその逆も同様に分離するように動作する。同じ効果を達成する代替の回路を提供してもよいことを当業者は理解するだろう。
【0025】
したがって、平衡インピーダンス20を適宜制御することにより、TXノードにおいてハイブリッド回路12に入る信号は、平衡インピーダンス20及びアンテナ14で見ることができる(したがって、アンテナを介して送信することができる)が、理想的には、RXノードでは見ることができない。TXパスとRXパスとの分離を得ることができ、TXノードにおいてRX信号から生じる干渉がなくなる。理論上、これは、平衡インピーダンスがアンテナインピーダンスに完全に一致する(対称ハイブリッドの場合)か、又は比例関係にある(非対称ハイブリッドの場合)ときに発生する。
【0026】
この技法を使用して良好な分離を達成するには、アンテナノードで見られる反射係数(
アンテナのインピーダンスに依存する)と、平衡ノードで見られる反射係数(可変インピーダンス20のインピーダンスに依存する)との良好な平衡が必要とされる。しかし、アンテナインピーダンスは、一定の値に固定されることは希であり、むしろ、(1)周波数の関数であり、したがって、動作周波数帯にわたって変動し、(2)周囲変動及び人の介入に起因して、配置される環境によって大きく影響され、それにより時間変動もする。これらの影響は最終的に、実際に達成される分離量を低減させ、これは特に、比較的広い周波数帯が使用され、エンドユーザが往々にして移動するセルラ用途の場合に当てはまる。
【0027】
本発明の実施形態は、可変インピーダンスを既知のインピーダンスに設定し、周波数帯内の既知の周波数で、アンテナ14を介して信号を送信することによってこれらの問題に対処する。ハイブリッド回路12での不完全な分離の結果としてRXノードで見られる信号が測定される。このプロセスは、周波数帯内の複数の周波数に対して繰り返され、次に、RXノードで測定された信号に基づいて可変インピーダンス20を調整することができる。したがって、周波数帯にわたる複数の異なる周波数の信号をRXノードで測定することにより、周波数に伴うアンテナインピーダンスの変動を考慮に入れ、補償することができる。最終的に、周波数帯にわたる(すなわち、RXノードにおいてTX信号が見られる程度まで、及び逆の程度まで)TX−RX利得は、低減されるはずであり、理想的にはなくなるはずである。
【0028】
図3は、上述した二重化装置を利用する無線デバイス100をより詳細に示す。不必要な繰り返しを避けるために、同様の構成要素は同様の参照番号で示されている。
【0029】
デバイスはプロセッサ50(例えば、マイクロプロセッサ)を備え、プロセッサ50は、一般にデバイス100を制御し、特に、より詳細に後述するように二重化動作を制御する。
【0030】
デバイスは、当業者に馴染みのあるTXパスを備える。ベースバンドプロセッサ52がプロセッサ50と通信する。プロセッサ50及び/又はベースバンドプロセッサはメモリ(図示せず)にアクセスすることができ、メモリは、無線デバイス10によって送信される情報又は無線デバイス10によって受信された情報を記憶する。
【0031】
ベースバンドプロセッサ52は、デバイス10によって送信される1つ又は複数の出力信号を生成する。図示の実施形態では、これらの信号はデジタルであり、送信のために一緒に変調される2つの成分で表現される:直交成分(Q)及び同相成分(I)。代替の変調方式も可能なことを当業者は理解するだろう。
【0032】
ベースバンドプロセッサ52から出力される信号は、デジタル/アナログコンバータ(DAC; digital-to-analog converter)54に入力され、アナログ領域に変換される。ベースバンドプロセッサ52から出力される信号は、プロセッサ50に入力することもでき、それにより、任意の必要なフィードバックを提供する。アナログ信号は、プロセッサ50の制御下でローカル振動子58によって生成された無線周波数信号と混合されることにより、ミキサ56において無線周波数に変換され、上述したように、ハイブリッド回路12及びアンテナ14を介して送信される前に、増幅のために電力増幅器16に入力される。
【0033】
デバイス100はRXパスを更に備え、RXパスはこれも、当業者に馴染みのあるものである。アンテナ14によって受信された信号は、ハイブリッド回路12を介して低ノイズ増幅器18に結合される(電力増幅器16には結合されない)。図3に示されるRXパスは、ハイブリッド回路の二重化動作を較正することを目的とする。したがって、一般に、受信信号は、メモリ又はデバイス内の何らかの他のRXパス(図3では破線で示される
)にも出力して、通常通り処理し得る。示されるRXパスは第2のミキサ60を備え、このミキサ60は、低ノイズ増幅器18の出力と、ローカル振動子58からの無線周波数信号とを受信し、受信信号をベースバンドにダウンコンバートする。代替的には、第2のミキサ60は、低ノイズ増幅器18の入力に接続して、ハイブリッド回路12から信号を直接受信することができる。図示の実施形態では、受信信号はI成分及びQ成分に復調されるが、代替の復調方式が当業者には明らかだろう。I及びQ(アナログ)受信信号はそれぞれ、ローパスフィルタ62a、62bに入力され、更にアナログ/デジタルコンバータ(ADC)64に入力される。次に、デジタル信号はプロセッサ50に提供され、後述するように処理される。
【0034】
理想的な対称トポロジーを有するハイブリッド回路12のTx−Rx電圧利得GTX−RXは、
【数3】

によって与えられ、式中、ΓBAL(ω)は平衡ノードの反射係数であり、ΓANT(ω)はアンテナノードの反射係数である。ΓANTを得るために、GTX−RXを測定し、ΓANT(ω)について解くことができる。
【0035】
しかし、現実では、ハイブリッド回路は理想的又は対称ではなく、実際には、利得は、GTX−RX(ω)=X(ω)ΓBAL(ω)−Y(ω)ΓANT(ω)+Z(ω)
によって与えられ、式中、X(ω)及びY(ω)は、平衡ノード及びアンテナノード(それぞれ平衡チャネル及びアンテナチャネルと呼ばれる)のそれぞれでのハイブリッドの対称性及び損失に依存する周波数依存変数であり、Z(ω)は、ハイブリッド回路を通るTXノードからRXノードまでの直接リークパスである。理想的な対称の場合、
【数4】

であり、Z(ω)=0である。非理想的な場合、4つの未知数X(ω)、Y(ω)、Z(ω)、及びΓANT(ω)がある。幾つかの実施形態では、ΓBALは変動して、適宜選ばれる異なる既知の値をとり、したがって、連立方程式を構築する。例えば、X(ω)=Y(ω)=L(ω)である一実施形態では、2つの既知のインピーダンスで送受信利得を測定し、以下の連立方程式を作成する。
【数5】

式中、
【数6】

及び
【数7】

は、既知の平衡反射係数である。これを解いて、ΓANT(ω)及びL(ω)を得ることができる。
【0036】
しかし、幾つかの実施形態では、X(ω)≠Y(ω)であり、且つ/又はZ(ω)≠0であるため、一貫しているが、結果として生成される連立方程式が劣決定であることから、Y(ω)、ΓANT(ω)、又はZ(ω)を得ることが可能ではないことがある。これらの状況では、X(ω)しか明白に得ることができない。
【0037】
しかし、幾つかの実施形態では、全ての変数について解く必要がないことがある。むしろ、
【数8】

を代入し、
【数9】

のような連立方程式を構築し得、これは、完全に決定され、X(ω)及びI(ω)について解くことができる。I(ω)は、アンテナポートでの反射と、ハイブリッド回路12のTXノードとRXノードとの直接結合(干渉チャネルと呼ばれる)とに起因する干渉を表す。
【0038】
図4は、本発明の実施形態による方法のフローチャートである。
【0039】
方法はステップ200において開始され、プロセッサ50は、特定の既知のインピーダンスZをとるように、平衡インピーダンス20を制御する。このインピーダンスは、例えば、50オームであり得る。ステップ202において、プロセッサ50は更にローカル振動子58を制御して、信号が、関心のある周波数帯内の第1の周波数fで、アンテナ14を介して送信されるような周波数で振動する。関心のある周波数帯は、例えば、送信帯であり得る。
【0040】
ステップ204において、信号が、電力増幅器16、ハイブリッド回路12、及びアンテナ14を介して周波数fで送信される。これが行われる際、ステップ206において、RXノードで生じる信号(ハイブリッド回路12による不完全な分離により)は、図3に関して上述したRXパスを使用して測定される。測定された信号は、例えば、メモリに記憶することができる。測定は、例えば、受信帯であり得る関心のある第2の周波数帯にわたって行われる。関心のある第1及び第2の周波数帯は全体的に異なってもよく(すなわち、全く重複しない)、又は部分的に重複してもよい。一実施形態では、関心のある第1及び第2の周波数帯は、全体的に重複してもよく(すなわち、一方のバンドが他方のバンド内に完全に入る)、又は同一であってもよい。後者の場合、デバイスは「全二重」モードで動作していると説明することができる。
【0041】
ステップ208において、関心のある周波数帯内の必要とされる全ての周波数で、信号が測定されたか否かが判断される。全ては測定されていない場合、ステップ210において、ローカル振動子58の周波数は変更され(例えば、増分周波数Δfだけ)、プロセスはステップ204に戻る。更なる信号が新しい周波数で送信され、RXノードで生じる信号が測定される。このプロセスは少なくとも1回繰り返され、それにより、関心のある周
波数帯内の少なくとも2つの周波数で測定が行われる。しかし、本発明の実施形態では、3つ以上の測定を、バンドにわたる3つ以上の異なる周波数で行うことができる。一実施形態では、異なる周波数はバンドにわたって均一に離間し得、他の実施形態では、間隔は任意であり得る。
【0042】
ステップ208において、複数の必要とされる周波数で測定が行われたと判断されると、プロセスはステップ212に移り、測定が複数のインピーダンスで行われたか否かが判断される。すなわち、幾つかの実施形態では、平衡インピーダンス20として異なる既知のインピーダンスを使用して、同じ周波数で複数の測定を行う必要があり得る。測定が、例えば、1つのみのインピーダンスを使用して行われた場合、プロセスはステップ214に移ることができ、平衡インピーダンス20は第2の異なる既知のインピーダンスZに変更される。新しいインピーダンスZで、同じ周波数を使用して、ステップ202、204、206、208、及び210は全て繰り替えされる。ハイブリッドが理想に近く、既知の対称性を有する幾つかの実施形態では、プロセスを第2のインピーダンスに対して繰り返す必要がないことがある。他の実施形態では、プロセスを3つ以上のインピーダンスに対して繰り返し得る。
【0043】
本発明の動作に実質的に影響せずに、図4に示される方法に変更を行い得ることを当業者は理解するだろう。例えば、図4に、平衡インピーダンスを変更する前に、異なる周波数で複数の測定値を取得すると記載される場合、方法は代わりに、送信周波数を変更する前に、同じ周波数であるが異なる平衡インピーダンスで複数の測定値を取得してもよい。いずれの場合でも、同じデータが取得される。
【0044】
そのデータが取得されると、プロセスはステップ216に移り、干渉チャネルI(ω)及び平衡チャネルX(ω)の値が、RXノードで測定される信号を使用して、周波数帯にわたる各周波数で計算される(プロセッサ50が、どの信号が送信されたか−ベースバンドプロセッサ52とプロセッサ50との間でのフィードバックを参照−及び送信時の平衡インピーダンスの値を知っていることを所与として)。ステップ218において、可変インピーダンス20は、この情報に基づいて動作に向けて設定される。
【0045】
測定信号及び計算されたチャネルに基づいて、可変インピーダンスを制御し得る多くの方法がある。
【0046】
一実施形態では、プロセッサ50は、関心のある周波数帯にわたる干渉チャネル及び平衡チャネルの平均値を計算し、インピーダンスの反射係数が、関心のある周波数帯にわたる干渉チャネルの平均を平衡チャネルで割ったものに等しくなるように、平衡インピーダンスを制御し得る。例えば、特に、インピーダンス反射係数の周波数に伴う変動が小さいか、又はゼロであると見なすことができる場合、ハイブリッド回路12でのTX−RX利得を最小化する平衡インピーダンスが、関心のある周波数帯にわたる干渉チャネルの平均を、関心のある周波数帯にわたる平衡チャネルの平均で割ったものであることを示すことができる。その場合、平衡インピーダンスのこの最適な反射係数ΓBAL_OPT(ω)は、以下の式に従って計算することができ、
【数10】

式中、シンボルは、前と同様の意味を有し、関心のある周波数帯にわたるこれらの数量の平均がとられる。平衡インピーダンス20は、以下の式に従って制御し得、
【数11】

式中、Rは正規化インピーダンスである。
【0047】
他の実施形態では、プロセッサ50は、周波数の関数として、信号がアンテナ14によって送信される電力密度を考慮に入れ、その数量の関数として可変インピーダンスを制御し得る。例えば、加重関数を各事例に含めて、以下のように、周波数の関数として送受信器のエネルギー密度を考慮に入れることができる。
1.予期される正規化送信器電力密度T(ω)を包含して、送信器帯にわたる電力出力の変動を考慮に入れ、したがって、受信器に潜在的に干渉を生じさせる可能性がある送信器信号電力の変動を考慮に入れる。
2.予期される正規化受信器フィルタ利得R(ω)を包含して、受信器帯にわたる受信器フィルタの電力伝達関数の変動を考慮に入れ、したがって、送信器からの信号電力による潜在的な干渉に対する受信器のロバスト性の変動を考慮に入れる。
3.予期される結合送信器電力密度及び受信器フィルタリング(T(ω).R(ω))を包含して、送信器帯と受信器帯との重複内の両影響を考慮に入れる。
【0048】
デバイス100の寿命中の外部要因(アンテナが配置される環境変化等)又は内部要因(構成要素の温度変化等)から生じる干渉チャネルの変動を考慮に入れるために、可変インピーダンスを最適化するプロセスを適時に繰り返して、可変インピーダンスを更新し、そのような変動を考慮に入れることができる。
【0049】
したがって、本発明は、測定が、関心のある周波数帯にわたる複数の周波数で行われ、平衡インピーダンスがそれらの測定値に応じて制御される、二重化装置、無線デバイス、及び信号を二重化する方法を提供する。その結果、RXノードとTXノードとの分離は強化され、TXによるRXの動作の干渉は、周波数帯にわたって全体的に低減される。
【0050】
本明細書に添付される特許請求の範囲において規定される本発明の範囲から逸脱せずに、様々な修正及び変更を上述した実施形態に対して行うことが可能なことを当業者は理解するだろう。
図1
図2
図3
図4