特許第6552839号(P6552839)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552839
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】ガラス基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 17/06 20060101AFI20190722BHJP
   C03B 32/00 20060101ALI20190722BHJP
   C03B 25/12 20060101ALI20190722BHJP
   C03C 15/00 20060101ALI20190722BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   C03B17/06
   C03B32/00
   C03B25/12
   C03C15/00 A
   G02F1/1333 500
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-39380(P2015-39380)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-160128(P2016-160128A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2018年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】598055910
【氏名又は名称】AvanStrate株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100159916
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】小山 昭浩
【審査官】 若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−210682(JP,A)
【文献】 特開2014−209200(JP,A)
【文献】 特開2014−010869(JP,A)
【文献】 特開2005−158939(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/000901(WO,A1)
【文献】 特開2005−231991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 7/00−7/22
9/00−17/06
19/00−19/10
21/00−35/26
40/00−40/04
C03C 15/00−23/00
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダウンドロー法により成形されたガラス基板の熱処理工程を含むガラス基板の製造方法であって、
前記熱処理工程では、過熱水蒸気を含む水蒸気雰囲気に前記ガラス基板を曝すことで、400℃〜650℃の熱処理温度で前記ガラス基板の全体を熱処理し、
前記熱処理工程では、前記ガラス基板の表面において凝縮伝熱が起こらないように、前記ガラス基板を熱処理する、
ガラス基板の製造方法。
【請求項2】
前記熱処理工程では、前記ガラス基板を室温から前記熱処理温度まで加熱し、その後に、前記ガラス基板を300℃以下まで徐冷する、
請求項1に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項3】
前記水蒸気雰囲気は、前記過熱水蒸気のみを含む、
請求項1または2に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項4】
前記熱処理工程では、前記水蒸気雰囲気の熱処理空間に前記ガラス基板を一枚ずつ通過させることで、前記ガラス基板を熱処理する、
請求項1からのいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項5】
前記熱処理工程では、複数枚の前記ガラス基板を保持した保持部材を、前記水蒸気雰囲気の熱処理空間に通過させることで、前記ガラス基板を熱処理し、
前記保持部材は、隣接する前記ガラス基板の主表面の間に空間が形成されるように、前記ガラス基板を保持する、
請求項1からのいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項6】
前記熱処理工程は、前記ガラス基板を前記熱処理温度まで加熱する過程において、前記ガラス基板が通過する空間の雰囲気を前記水蒸気雰囲気に置換する工程を含む、
請求項4または5に記載のガラス基板の製造方法。
【請求項7】
前記熱処理工程では、1枚または複数枚の前記ガラス基板を保持した保持部材を熱処理空間に設置した後に、前記熱処理空間の雰囲気を前記水蒸気雰囲気に置換することで、前記ガラス基板を熱処理し、
前記保持部材は、隣接する前記ガラス基板の主表面の間に空間が形成されるように、前記ガラス基板を保持する、
請求項1からのいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板の熱処理工程を含むガラス基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイパネルの分野では、画質の向上のために画素の高精細化が進展している。この高精細化の進展に伴って、ディスプレイパネルに用いられるガラス基板にも寸法精度が高いことが望まれている。例えば、ディスプレイパネルの製造工程中に、ガラス基板が高温で熱処理されても寸法が変化しにくいように、熱収縮率の小さいガラス基板が求められている。
【0003】
一般に、ガラス基板の熱収縮率は、ガラスの歪点が高いほど小さくなる。このため、特許文献1(特表2014−503465)に開示されているように、熱収縮率を抑制するために、歪点が高くなるようにガラス組成を変更する方法が知られている。しかし、歪点が高くなるようにガラス組成を変更すると、熔解温度および成形温度が高くなる傾向にあり、ガラス基板の製造が難しくなるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラス基板製造の困難性を招くことなく、ガラス基板の熱収縮率を低減させる方法として、フュージョン法等により成形したシートガラスを切断して得られたガラス基板をオフラインにおいて熱処理(オフラインアニール処理)する方法がある。しかし、オフラインアニール処理では、ガラス基板を昇温・降温させる際にガラス基板の面方向で温度差が生じ、ガラス基板の面方向で熱収縮率がバラついて、ガラス基板に歪が生じてしまうという問題があった。また、熱収縮率のバラつきを低減するために、熱処理時におけるガラス基板の昇温・降温の速度を低下させると、ガラス基板の生産効率が低下してしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、ガラス基板の生産効率を高めつつ、ガラス基板の面方向での熱収縮率のバラつきを低減することができるガラス基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るガラス基板の製造方法は、ダウンドロー法により成形されたガラス基板の熱処理工程を含む。熱処理工程では、過熱水蒸気を含む水蒸気雰囲気にガラス基板を曝すことで、400℃〜650℃の熱処理温度でガラス基板の全体を熱処理する。
【0007】
また、熱処理工程では、ガラス基板を室温から熱処理温度まで加熱し、その後に、ガラス基板を300℃以下まで徐冷することが好ましい。
【0008】
また、水蒸気雰囲気は、過熱水蒸気のみを含むことが好ましい。
【0009】
また、熱処理工程では、ガラス基板の表面において凝縮伝熱が起こらないように、ガラス基板を熱処理することが好ましい。
【0010】
また、熱処理工程では、水蒸気雰囲気の熱処理空間にガラス基板を一枚ずつ通過させることで、ガラス基板を熱処理することが好ましい。
【0011】
また、熱処理工程では、複数枚のガラス基板を保持した保持部材を、水蒸気雰囲気の熱処理空間に通過させることで、ガラス基板を熱処理することが好ましい。この場合、保持部材は、隣接するガラス基板の主表面の間に空間が形成されるように、ガラス基板を保持することが好ましい。
【0012】
また、ガラス基板または保持部材を熱処理空間に通過させてガラス基板を熱処理する場合、熱処理工程は、ガラス基板を熱処理温度まで加熱する過程において、ガラス基板が通過する空間の雰囲気を水蒸気雰囲気に置換する工程を含むことが好ましい。
【0013】
また、熱処理工程では、1枚または複数枚のガラス基板を保持した保持部材を熱処理空間に設置した後に、熱処理空間の雰囲気を水蒸気雰囲気に置換することで、ガラス基板を熱処理することが好ましい。この場合、保持部材は、隣接するガラス基板の主表面の間に空間が形成されるように、ガラス基板を保持することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るガラス基板の製造方法は、ガラス基板の生産効率を高めつつ、ガラス基板の熱収縮率のバラつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態のガラス基板の製造方法の流れを示すフローチャートの例である。
図2】熱処理装置を上から見た概略図である。
図3】熱処理装置を横から見た概略図である。
図4】ガラス基板上の点A、Bの位置を示す図である。
図5】ガラス基板上の点A、Bの各位置における熱履歴を示す図である。
図6】熱履歴の差を示す面積と歪との関係を示すグラフである。
図7】熱処理空間の温度プロファイルを示す図である。
図8】複数のガラス基板を保持するパレットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(1)ガラス基板の製造方法
以下、本発明のガラス基板の製造方法の実施形態について説明する。図1は、本実施形態のガラス基板の製造方法の流れを示すフローチャートの例である。製造されるガラス基板は、特に制限されないが、縦寸法及び横寸法のそれぞれが500mm〜3500mmであり、厚さが0.1mm〜1.1mmである極めて薄い矩形形状の板であることが好ましい。
【0017】
最初に、熔融されたガラスから、フュージョン法(オーバーフローダウンドロー法)あるいはフロート法等の公知の方法により、所定の厚さの帯状ガラスであるシートガラスが成形される(ステップS1)。次に、成形されたシートガラスを温度管理しながら冷却する徐冷工程が行われる。シートガラスは、取り出し可能な温度(例えば、300℃から室温までの温度、好ましくは100℃未満の温度)まで冷却された後、所定の長さの素板であるガラス基板に採板される(ステップS2)。採板により得られたガラス基板は、ガラス基板を保護するためのシート体と交互に積層されて、ガラス基板の積層体が作製される(ステップS3)。次に、このガラス基板の積層体から、ガラス基板が一枚ずつ取り出され、吊り下げられた状態で搬送される。そして、搬送されるガラス基板に対して、熱処理が行われる(ステップS4)。ステップS4の処理は、オフラインアニール処理である。オフラインアニール処理の詳細については後述する。
【0018】
熱処理されたガラス基板は、切断工程において製品サイズに切断され、ガラス基板が得られる(ステップS5)。得られたガラス基板は、端面の研削、研磨およびコーナーカットを含む端面加工が行われた後、洗浄される(ステップS6)。洗浄されたガラス基板は、キズ、塵、汚れあるいは光学欠陥が無いか、光学的検査が行われる(ステップS7)。検査により品質の適合したガラス基板は、ガラス基板を保護する紙と交互に積層された積層体としてパレットに積載されて梱包される(ステップS8)。梱包されたガラス基板は納入先業者に出荷される。なお、ガラス基板の採板工程(ステップS2)の後に、ガラス基板の積層工程(ステップ3)を行わずに、ガラス基板の熱処理工程(ステップS4)を行い、ガラス基板の熱処理工程(ステップS4)の後に、一旦、ガラス基板を積層する工程(ステップS9)を行ってもよい。
【0019】
このようなガラス基板として、以下のガラス組成のガラス基板が例示される。つまり、以下のガラス組成のガラス基板が製造されるように、熔融ガラスの原料が調合される。
SiO:55モル%〜80モル%、
Al:8モル%〜20モル%、
:0モル%〜12モル%、
RO:0モル%〜17モル%(ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量)。
【0020】
SiOは、60モル%〜75モル%、さらには、63モル%〜72モル%であることが、熱収縮率を小さくするという観点から好ましい。
【0021】
ROは、MgOが0モル%〜10モル%、CaOが0モル%〜10モル%、SrOが0モル%〜10モル%、BaOが0モル%〜10モル%であることが好ましい。
【0022】
また、ガラス組成は、SiO、Al、B及びROを少なくとも含み、モル比((2×SiO)+Al)/((2×B)+RO)が4.5以上であってもよい。また、ガラス組成は、MgO、CaO、SrO及びBaOの少なくともいずれかを含み、モル比(BaO+SrO)/ROが0.1以上であることが好ましい。
【0023】
また、モル%表示のBの含有率の2倍とモル%表示のROの含有率との合計は、30モル%以下、好ましくは10モル%〜30モル%であることが好ましい。
【0024】
また、上記ガラス組成のガラス基板におけるアルカリ金属酸化物の含有率は、0モル%以上0.4モル%以下であってもよい。
【0025】
また、ガラス中で価数変動する金属の酸化物(酸化スズ、酸化鉄)を合計で0.05モル%〜1.5モル%含み、As、Sb及びPbOを実質的に含まない条件は、必須ではなく任意である。
【0026】
(2)オフラインアニール処理の方法
次に、オフラインアニール処理について説明する。オフラインアニール処理は、例えば、ダウンドロー法により成形されたシートガラスを温度管理された状態で冷却する第1徐冷工程を経て得られたガラス基板を、再度加熱し、所定の温度まで昇温させた後、再度冷却する第2徐冷工程を行う処理である。図1のステップS3では、複数のガラス基板11と複数のシート体とを交互に1枚ずつ積層してガラス基板11の積層体が作製される。シート体としては、再生紙またはパルプ紙等が用いられる。
【0027】
本実施形態では、積層体から1枚ずつ取り出したガラス基板11を搬送しながら加熱する枚葉方式の熱処理が行われる。枚葉方式の熱処理を行う熱処理装置101について説明する。図2は、熱処理装置101を上から見た概略図である。図3は、熱処理装置101を横から見た概略図である。熱処理装置101によって熱処置されるガラス基板11は、表面にシリコン膜が形成されていないガラス基板である。なお、熱処理装置101によって熱処理されるガラス基板11は、第1徐冷工程を経て得られたガラス基板11であり、ガラス基板11の温度は、300℃以下である。
【0028】
熱処理装置101は、主として、熱処理炉40と搬送装置102とを備える。熱処理炉40は、ガラス基板11の熱処理が行われる熱処理空間40aを内部に有する。搬送装置102は、ガラス基板11を吊り下げながら搬送する。搬送装置102は、熱処理炉40内の熱処理空間40aを通過するように設置されている。すなわち、ガラス基板11は、搬送装置102によって搬送される過程で、熱処理空間40aを通過して熱処理される。
【0029】
搬送装置102は、略直立状態に吊り下げられたガラス基板11を水平方向に搬送する。搬送装置102によって搬送されるガラス基板11の主表面の法線は、水平面に平行であり、かつ、ガラス基板11の搬送方向に平行である。搬送装置102は、複数枚のガラス基板11を連続して搬送する。搬送装置102は、隣り合うガラス基板11の主表面の間に空間が形成されるように、複数のガラス基板11を所定の間隔を空けて搬送する。この所定の間隔は、例えば、10mm〜300mmである。搬送装置102は、クリップ等の把持部材112によってガラス基板11の上端部を複数箇所で把持しながらガラス基板11を搬送する。把持部材112は、ガイドレール111によって、ガラス基板11の搬送方向に沿って移動する。
【0030】
図1のステップS4では、搬送装置102によって搬送されるガラス基板11に対して、ガラス基板製造ラインから外れたオフラインでの熱処理(オフラインアニール処理)が行われる。オフラインアニール処理では、ガラス基板11を所定の熱処理温度の雰囲気下に所定の時間曝すことで、ガラス基板11の主表面内の熱分布および歪分布が一様になるように、ガラス基板11の熱処理が行われる。
【0031】
具体的には、熱処理装置101は、熱処理炉40内の熱処理空間40aに、搬送装置102によって搬送されるガラス基板11を通過させて、ガラス基板11を熱処理する。これにより、熱処理空間40aの雰囲気の熱がガラス基板11に伝達されて、ガラス基板11の熱処理が行われる。熱処理炉40は、熱処理空間40aの高温に耐えられる素材で成形されている。例えば、熱処理炉40は、石英およびステンレスによって成形されている。熱処理炉40をステンレスで成形する場合、熱処理炉40は、寸法が2000mm以上の大型のガラス基板11の熱処理を行うことができる熱処理空間40aを有することができる。
【0032】
熱処理炉40は、熱処理空間40aの雰囲気を加熱および循環するための発熱装置41を備える。発熱装置41が熱源となって、熱処理空間40aの雰囲気が温められる。また、熱処理炉40は、熱処理空間40aの雰囲気を、過熱水蒸気を含む水蒸気雰囲気にするための水蒸気発生装置42を備える。水蒸気発生装置42は、過熱水蒸気を発生させて、熱処理空間40aに供給する。水蒸気発生装置42は、過熱水蒸気の原料として、純水もしくはイオン交換水が供給されることが好ましい。熱処理装置101は、発熱装置41および水蒸気発生装置42を制御して、熱処理空間40aの雰囲気の温度を調整することにより、ガラス基板11の熱処理を行う。発熱装置41および水蒸気発生装置42は、例えば、熱処理炉40の内壁の側面に取り付けられている。
【0033】
熱処理空間40aは、主として、加熱空間51、温度維持空間52および冷却空間53から構成される。搬送装置102によって搬送されるガラス基板11は、熱処理工程において、加熱空間51、温度維持空間52および冷却空間53を順に通過する。加熱空間51は、搬送されるガラス基板11が熱処理空間40aに入る際に通過する、熱処理空間40aの入口を有する。冷却空間53は、搬送されるガラス基板11が熱処理空間40aから出る際に通過する、熱処理空間40aの出口を有する。
【0034】
加熱空間51は、ガラス基板11が温められて、ガラス基板11の温度が上昇する空間である。温度維持空間52は、ガラス基板11の温度が所定の熱処理温度に維持される空間である。冷却空間53は、ガラス基板11が冷却されて、温度制御されながらガラス基板11の温度が下降する空間(徐冷空間)である。なお、熱処理装置101で熱処理される前のガラス基板11、および、熱処理装置101で熱処理された後のガラス基板11の温度は、室温であるが、300℃以下の任意の温度であってもよい。
【0035】
本実施形態において、熱処理温度は、400℃〜650℃である。なお、熱処理温度は、ガラス基板11の(歪点−60)℃の温度から(歪点−260)℃の温度までの温度範囲であることが、熱収縮率を低減させ、ガラス基板11の歪分布を一様とする点から好ましい。ここで、歪点とは、一般的なガラスの歪点を言い、1014.5ポワズの粘度に相当する温度である。
【0036】
ガラス基板11の熱処理時間は、ガラス基板11が温度維持空間52を通過する時間であり、例えば、0.1時間〜5時間である。ガラス基板11の熱処理時間は、好ましくは1時間以上である。温度維持空間52の雰囲気の温度の時間履歴は、特に制限されないが、雰囲気の温度が熱処理温度と同じである時間が少なくとも0.1時間以上あるとよい。この時間が0.1時間未満であると、ガラス基板11の熱収縮率が十分に低下せず、逆に5時間より長いと、ガラス基板11の熱収縮率は十分に低減するが、ガラス基板11の生産効率が低下する。ガラス基板11の搬送速度は、ガラス基板11の熱処理時間に応じて適宜に設定される。
【0037】
なお、歪点はガラスの種類によって異なるが、ガラス基板11は、熱収縮率を小さくするために、歪点が高いガラス組成を有することが好ましい。ガラス基板11のガラスの歪点は、600℃以上であることが好ましく、655℃以上であることがより好ましい。歪点が661℃である場合、熱処理温度は、歪点(661℃)−(60℃〜260℃)=601℃〜401℃であることが好ましい。しかし、ガラス基板11の熱収縮率を小さくして、ガラス基板11を高精細ディスプレイ用ガラス基板として用いるためには、上記の温度範囲に限定されない。例えば、熱処理温度は、400℃〜550℃でもよい。
【0038】
加熱空間51では、加熱空間51の雰囲気の少なくとも一部が過熱水蒸気に置換される。これにより、温度維持空間52の雰囲気は、水蒸気雰囲気となる。冷却空間53では、水蒸気雰囲気に含まれる過熱水蒸気が除去される。温度維持空間52の水蒸気雰囲気は、過熱水蒸気を少なくとも5%含むことが好ましく、15%以上、20%以上、50%以上または90%以上含むことがより好ましく、過熱水蒸気のみを含むことがさらに好ましい。
【0039】
発熱装置41は、熱処理空間40aに高温の気体を送風して、熱処理空間40aの雰囲気を循環させる装置である。水蒸気発生装置42は、加熱空間51に過熱水蒸気を供給する装置である。発熱装置41および水蒸気発生装置42は、加熱空間51、温度維持空間52および冷却空間53の雰囲気の温度を制御する。加熱空間51の温度は、熱処理空間40aの入口側から温度維持空間52側に向かって高くなる。以下、加熱空間51の一部であって、水の沸点(100℃)よりも高い雰囲気の空間を入口側過熱空間51aと呼ぶ。水蒸気発生装置42は、入口側過熱空間51aに過熱水蒸気を供給する。また、水蒸気発生装置42は、温度維持空間52にも設置されてもよい。また、温度維持空間52には、雰囲気を攪拌して雰囲気の温度を熱処理温度の近傍で均一に保つための装置が設置されてもよい。
【0040】
冷却空間53の温度は、温度維持空間52側から熱処理空間40aの出口側に向かって低くなる。以下、冷却空間53の一部であって、水の沸点(100℃)よりも高い雰囲気の空間を出口側過熱空間53aと呼ぶ。冷却空間53では、出口側過熱空間53aに過熱水蒸気が存在してもよいが、出口側過熱空間53a以外の空間は、飽和水蒸気圧未満の雰囲気であることが好ましい。そのため、冷却空間53には、過熱水蒸気を除去するための機構が設置されることが好ましい。
【0041】
このように、熱処理空間40aにおいて、過熱水蒸気は、水の沸点(100℃)よりも高い雰囲気の空間のみに存在する。具体的には、過熱水蒸気は、入口側過熱空間51a、温度維持空間52および出口側過熱空間53aのみに存在する。そのために、発熱装置41は、加熱空間51、温度維持空間52および冷却空間53に設置され、各空間の雰囲気の温度を制御し、水蒸気発生装置42は、入口側過熱空間51aおよび温度維持空間52に供給される過熱水蒸気の量を制御することが好ましい。なお、温度維持空間52の過熱水蒸気の温度は、通常、熱処理温度(400℃〜650℃)と同じ値に設定される。しかし、入口側過熱空間51aの過熱水蒸気の温度は、熱処理温度より高い値に設定されてもよい。
【0042】
(3)オフラインアニール処理の特徴
図4は、ガラス基板11上の点A,Bの位置を示す図である。図5は、従来のオフラインアニール処理において、ガラス基板11上の点A,Bの各位置における熱履歴を示す図である。熱履歴とは、熱処理によって変化するガラス基板11の温度の履歴を示すものである。なお、図4において、発熱装置41からの送風方向は、矢印で示されるように、図面右側から図面左側であるとする。従来のオフラインアニール処理では、図4において、ガラス基板11の右側端部近傍の右側領域11aは、高温の雰囲気から熱が伝導されるので、ガラス基板11の左側端部近傍の左側領域11bよりも早く昇温する傾向にあった。また、冷却空間53では、熱処理温度より低温の雰囲気に、熱処理温度のガラス基板11の右側領域11aが晒されて放熱するので、右側領域11aは、左側領域11bよりも早く降温する傾向にあった。この場合、図5に示されるように、ガラス基板11上では、点Aの周辺領域は、点Bの周辺領域よりも早く昇温および降温する。このように点A,Bの間で熱履歴に差が生じると、右側領域11aから左側領域11bにかけて(点A周辺から点B周辺にかけて)熱収縮率が変化するので、ガラス基板11に引っ張り力および圧縮応力が生じ、その結果、ガラス基板11に歪が発生する。ガラス基板11面内での熱収縮率を均一にして、ガラス基板11の歪の発生を抑制するためには、ガラス基板11の右側領域11aから左側領域11bかけての温度を均一にする、つまり、図5に示される点A,Bの熱履歴の差Cを小さくする必要がある。
【0043】
ここで、LTPSおよびIGZOから構成される半導体層をガラス基板11に形成する最高温度は、400℃〜600℃であるため、この温度範囲におけるガラス基板11の熱収縮率を低減できればよい。本実施形態では、ガラス基板11の点A,Bの周辺の温度が、400℃〜650℃の温度(熱処理温度)となるように熱処理を行う。熱収縮率は、熱処理温度だけでなく、熱履歴によっても変化する。特に、図5に示されるように、熱処理温度(例えば、500℃)から、熱処理温度より50℃〜200℃低い温度(例えば、300℃〜450℃)までの熱履歴は、熱収縮率に大きく影響する。図5には、300℃〜500℃の温度範囲における熱履歴の差Cが示されている。また、熱収縮率を評価する温度、ここでは、LTPSおよびIGZOから構成される半導体層をガラス基板11に形成する温度(例えば、400℃〜500℃)でガラス基板11を熱処理することにより、この温度領域における熱収縮率が低減する。また、この温度領域(400℃〜500℃)より低い温度領域においてガラス基板11を熱処理しても、当該温度領域における熱収縮率が低減する。熱収縮率を評価する温度に近い温度では、熱収縮率は大きな影響を受け、熱収縮率を評価する温度から離れるほど、熱収縮率への影響は小さくなる。このため、本実施形態では、300℃〜500℃の温度領域において、ガラス基板11の面方向での熱履歴の差Cが小さくなるように熱処理を行う。具体例としては、熱処理温度は、500℃とする。ガラス基板11の右側領域11a(点A周辺)と左側領域11b(点B周辺)との熱履歴の差Cを小さくすることにより、ガラス基板11面上の熱収縮率のバラつきが抑制され、歪の発生が抑制される。
【0044】
図5において、点Aの熱履歴と点Bの熱履歴との差を表す面積Cが小さいほど、歪の値は小さくなる。図6は、熱履歴の差を示す面積と歪との関係を示すグラフである。図6に示されるように、歪を2kgf/cm2以下にする場合には、面積CがC1以下になるように、ガラス基板11を熱処理する。また、歪を4kgf/cm2以下にする場合には面積CがC2以下になるように、歪を9kgf/cm2以下にする場合には面積CがC3以下になるように、ガラス基板11を熱処理する。面積C1〜C3の値は、時間×温度、つまり、熱量である。面積C1〜C3の値は、ガラス基板11の大きさ、厚さ、組成等によって任意に変更できる。これにより、高精細ディスプレイのパネル製造時に求められる歪の許容値に応じて、ガラス基板11の熱処理における温度、時間、昇温速度および降温速度を適宜変更することができる。
【0045】
本実施形態では、ガラス基板11を搬送装置102で吊り下げた状態で、熱処理炉40内の熱処理空間40aに搬入すると、過熱水蒸気を含む水蒸気雰囲気にガラス基板11が曝される。これにより、熱処理空間40aの水蒸気雰囲気の熱がガラス基板11に伝達される。加熱空間51では、ガラス基板11の温度が室温から熱処理温度まで上昇し、温度維持空間52では、ガラス基板11の温度が熱処理温度に維持される。この間、ガラス基板11は、過熱水蒸気を含む水蒸気雰囲気に曝されている。過熱水蒸気を含む水蒸気雰囲気に曝されたガラス基板11は、輻射伝熱および対流伝熱の両方によって加熱される。一方、大気雰囲気に曝されたガラス基板11は、輻射伝熱によっては加熱されず、対流伝熱のみによって加熱される。また、過熱水蒸気の比熱容量(0.48cal/g/℃)は、空気の比熱容量(0.24cal/g/℃)よりも高いので、過熱水蒸気が保持できる熱量は、同じ体積の空気が保持できる熱量よりも大きい。そのため、過熱水蒸気を含む水蒸気雰囲気に曝されたガラス基板11は、大気雰囲気に曝されたガラス基板11と比較して、より早く加熱および冷却され、その結果、ガラス基板11の面内においてより均一に熱処理される。従って、本実施形態の熱処理装置101は、過熱水蒸気を含む水蒸気雰囲気にガラス基板11を曝すことで、ガラス基板11の熱処理の効率を向上させることができる。
【0046】
このように、本実施形態では、熱処理装置101は、過熱水蒸気を含む水蒸気雰囲気にガラス基板11を曝すことで、熱処理空間40aにおいてガラス基板11を面内において均一に加熱することができる。そのため、熱処理装置101は、ガラス基板11の左側領域11b(点B周辺)の温度を、右側領域11a(点A周辺)の温度と同じように、熱処理温度まで上昇させることができる。具体的には、熱処理装置101は、左側領域11b(点B周辺)の温度と右側領域11a(点A周辺)の温度との差が小さくなるように、すなわち、ガラス基板11での面方向での熱履歴の差が小さくなるように、ガラス基板11を熱処理温度まで加熱することができる。ガラス基板11の左側領域11b(点B周辺)の温度が熱処理温度に達すると、右側領域11a(点A周辺)と左側領域11b(点B周辺)との熱収縮率の差がほぼゼロとなり、歪の発生が低減される。左側領域11b(点B周辺)の温度が熱処理温度を維持する時間は、任意であり、例えば、0.1時間〜5時間であり、より好ましくは、0.2時間〜2時間である。このように、熱処理装置101は、所定の熱収縮率を達成するために、右側領域11a(点A周辺)から左側領域11b(点B周辺)にかけてのガラス基板11の温度が所定の熱処理温度に到達するように熱処理し、かつ、歪の発生を抑制するために、ガラス基板11での面方向での熱履歴の差が小さくなるように熱処理する。
【0047】
図7は、熱処理空間40aの温度プロファイルを示す図である。図7の横軸は、搬送方向におけるガラス基板11の位置を表す。図7の縦軸は、熱処理空間40aの温度を表す。上述したように、ガラス基板11は、加熱空間51、温度維持空間52および冷却空間53を順に通過する。ガラス基板11の温度は、加熱空間51において室温から熱処理温度(500℃)まで上昇し、温度維持空間52において熱処理温度に維持され、冷却空間53において熱処理温度から室温まで冷却される。加熱空間51は、雰囲気の温度が100℃よりも高い入口側過熱空間51aを有し、冷却空間53は、雰囲気の温度が100℃よりも高い出口側過熱空間53aを有する。過熱水蒸気は、入口側過熱空間51aにおいて供給され、出口側過熱空間53aにおいて除去される。過熱水蒸気は、雰囲気の温度が100℃以下の空間に存在すると、液体の水に凝縮する。そのため、加熱空間51において、入口側過熱空間51a以外の空間(雰囲気の温度が100℃以下の空間)に過熱水蒸気が供給されると、加熱空間51を通過するガラス基板11の表面で過熱水蒸気が潜熱を放出して凝縮して液体の水となり、凝縮伝熱が発生する。このとき、ガラス基板11の表面に水が付着すると、熱処理後のガラス基板11の表面の汚れの原因となるおそれがある。そのため、本実施形態では、雰囲気の温度が100℃よりも高い空間(入口側過熱空間51a、温度維持空間52および出口側過熱空間53a)のみに過熱水蒸気が存在するように発熱装置41および水蒸気発生装置42を制御することで、ガラス基板11の表面で凝縮伝熱が起こらないようにガラス基板11を熱処理することができる。その結果、ガラス基板11の熱処理工程の効率が向上すると共に、熱処理されたガラス基板11の表面の清浄度が高く維持される。
【0048】
以上より、熱処理装置101は、ガラス基板11の表面の熱分布を均一にしながらガラス基板11を加熱して熱処理することができる。そのため、熱処理装置101は、熱処理後のガラス基板11の熱収縮率のバラつきを低減しつつ、ガラス基板11の歪の発生を抑制し、かつ、ガラス基板11の歪を低減し、さらに、ガラス基板11の生産効率を高めることができる。これにより、熱処理装置101は、例えば、ガラス基板11の主表面内、および、ガラス基板11間において、熱収縮率のバラつきを10%以下に抑えることができる。このような熱処理により、熱処理装置101は、ガラス基板11の熱収縮率を、好ましくは15ppm以下とすることができ、より好ましくは12ppm以下とすることができ、さらに好ましくは6ppm以下とすることができる。なお、熱収縮率は、ガラス基板製造工程における最高温度の雰囲気下でガラス基板を保持し、その後にガラス基板を取り出した後、公知のけがき法によって評価される。例えば、500℃に加熱された熱処理炉に室温のガラス基板を投入し、30分間保持した後、室温の雰囲気下にガラス基板を取り出して、ガラス基板の変化量を測定することで、熱収縮率が評価される。
【0049】
また、熱処理装置101は、過熱水蒸気を含む水蒸気雰囲気にガラス基板11を曝すことで、熱処理工程前のガラス基板11の表面に付着している有機物やパーティクルを低減することができる。有機物は、ガラス基板11の積層体に使用されるシート体に由来する有機物や、ガラス基板11の製造工程の雰囲気中に存在する埃等である。このような有機物は、過熱水蒸気によってガラス基板11の表面から効率的に分解除去される。パーティクルは、例えば、微小なガラス片である。ガラス片は、ガラス基板11の切断時にガラス基板11の切断面から発生してガラス基板11の表面に付着する。また、ガラス基板11を搬送するときや、ガラス基板11を熱処理空間40aで熱処理する際に、ガラス基板11の切断面からガラス片が風圧を受けて剥がれ落ちたり、熱膨張によってガラス基板11の切断面からガラス片が剥がれ落ちたりすることがある。そのため、ガラス基板11の切断面からガラス片が剥がれ落ちて、ガラス基板11の表面に付着することがある。そして、ガラス片が共有結合によりガラス基板11の表面に付着している場合でも、過熱水蒸気によって共有結合を切断して、ガラス基板11の表面からガラス片を除去することができる。例えば、ガラス片に含まれる「Si−O」基の酸素原子と、ガラス基板11に含まれる「Si−O」基のケイ素原子とが共有結合している場合に、過熱水蒸気によって共有結合部位が水と反応すると、ガラス片およびガラス基板11の「Si−O」基が「Si−OH」基に変化する。これにより、共有結合が切断されるので、後の洗浄工程においてガラス基板11の表面からガラス片が除去しやすくなる。洗浄工程では、熱処理されたガラス基板11の表面にエアーを吹き付けて、ガラス片等が除去されてもよい。また、高い清浄度を求める場合、洗浄薬液が塗布されたガラス基板11の表面に対して、ブラシ等の洗浄治具を用いて、ガラス基板11の表面に付着しているガラス片を含む異物を除去することが好ましい。
【0050】
また、本実施形態のように、搬送装置102によってガラス基板11を1枚ずつ搬送しながら熱処理する場合、搬送されるガラス基板11の間の間隔を狭くすることで、ガラス基板11の熱処理効率を向上させることができる。また、熱処理装置101は、過熱水蒸気を用いてガラス基板11を効率的に熱処理できるので、搬送されるガラス基板11の間の間隔を狭くすることができる。
【0051】
また、熱処理空間40aは、過熱水蒸気によって湿度が高い状態にある。そのため、ガラス基板11が熱処理空間40aを通過することで、ガラス基板11に静電気が発生することが抑制される。その結果、ガラス基板11の帯電が抑制され、ガラス基板11の表面に埃等が付着することが抑制される。
【0052】
なお、本実施形態で製造されるガラス基板11は、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板として好適である。フラットパネルディスプレイ用ガラス基板は、例えば、液晶ディスプレイ用ガラス基板、および、有機ELディスプレイ用ガラス基板である。さらに、ガラス基板11は、高精細ディスプレイに用いられるLTPS(Low-temperature poly silicon)・TFTディスプレイ用ガラス基板、あるいは、酸化物半導体・TFTディスプレイ用ガラス基板として特に好適である。
【0053】
本実施形態では、ガラス基板11を1枚ずつ搬送しながら熱処理する例について説明したが、ガラス基板11の熱処理装置は、ガラス基板11を1枚ずつ搬送しながら熱処理する装置に限られない。例えば、炉内にガラス基板11を載置した後に、炉内の温度・水蒸気を管理して熱処理する装置が用いられてもよい。また、炉内に複数枚のガラス基板11を積層したガラス基板積層体を載置して熱処理する装置が用いられてもよい。
【0054】
(4)変形例
(4−1)変形例A
実施形態の熱処理装置101は、ガラス基板11を1枚ずつ搬送しながら熱処理空間40aを通過させることで、ガラス基板11の熱処理を行う枚葉方式の熱処理を行う。しかし、熱処理装置101は、複数のガラス基板11を保持する保持部材であるパレット20を搬送しながら、パレット20を熱処理空間に通過させることで、ガラス基板11の熱処理を行ってもよい。本変形例では、ガラス基板11を搬送する機構が実施形態と異なるが、ガラス基板11を熱処理する機構は、実施形態の熱処理炉40と同じである。
【0055】
図8は、複数のガラス基板11を保持するパレット20の側面図である。パレット20は、複数のガラス基板11を略直立状態に支持することができる。また、パレット20は、複数のガラス基板11の主表面が互いに平行になり、かつ、隣り合うガラス基板11の主表面の間に空間21が形成されるように、ガラス基板11を保持することができる。ガラス基板11とパレット20との接触面積は、小さいほど好ましい。パレット20の素材は、熱処理炉40の部材と同じ部材であってもよく、例えば、ステンレス鋼であってもよい。
【0056】
本変形例では、パレット20は、ベルトコンベア等の搬送装置によって搬送される。実施形態と同様に、パレット20は、搬送装置によって搬送される過程で、熱処理炉40の熱処理空間40aを通過する。熱処理空間40aにおいて、パレット20が加熱空間51、温度維持空間52および冷却空間53を順に通過する過程で、パレット20に保持されているガラス基板11の熱処理が行われる。
【0057】
(4−2)変形例B
実施形態の熱処理装置101は、ガラス基板11を1枚ずつ搬送しながら熱処理空間40aを通過させることで、ガラス基板11の熱処理を行う枚葉方式の熱処理を行う。また、変形例Aでは、熱処理装置101は、複数のガラス基板11を保持する保持部材であるパレット20を搬送しながら、パレット20を熱処理空間に通過させることで、ガラス基板11の熱処理を行う。
【0058】
しかし、図8に示されるパレット20を用いてガラス基板11の熱処理を行う場合、パレット20を搬送しながら、パレット20に保持されるガラス基板11を加熱しなくてもよい。具体的には、最初に、複数のガラス基板11を保持しているパレット20を所定の熱処理空間に設置し、次に、熱処理空間を気密的に密閉し、次に、熱処理空間の雰囲気の温度を上昇させることで、パレット20に保持されているガラス基板11の熱処理を行ってもよい。本変形例は、変形例Aのパレット20を使用することができる。
【0059】
本変形例では、ガラス基板11の熱処理時において、パレット20が設置される熱処理空間を気密的に密閉することができる。そのため、熱処理空間の雰囲気を、過熱水蒸気を含む水蒸気雰囲気に容易に置換することができる。具体的には、最初に、パレット20が設置されている熱処理空間の雰囲気を100℃より高い温度まで加熱して、次に、熱処理空間の雰囲気に過熱水蒸気を供給しながら熱処理空間から気体を吸引することで、熱処理空間を過熱水蒸気のみで満たすことができる。また、熱処理前のガラス基板11を保持するパレット20を熱処理空間に搬入する工程と、熱処理後のガラス基板11を保持するパレット20を熱処理空間から取り出す工程を自動化し、かつ、熱処理空間の容積を大きくして一度に熱処理できるガラス基板11の数を増やすことで、ガラス基板11の熱処理を効率的に行うことができる。
【0060】
(4−3)変形例C
実施形態の熱処理装置101は、熱処理炉40内に水蒸気発生装置42が設置されている。水蒸気発生装置42は、過熱水蒸気を含む水蒸気雰囲気を熱処理空間40aに供給することで、熱処理空間40aの雰囲気を水蒸気雰囲気にすることができる。しかし、熱処理炉40内に水蒸気発生装置42を設置すると共に、または、熱処理炉40内に水蒸気発生装置42を設置する代わりに、熱処理炉40が設置される空間に過熱水蒸気を供給する装置を設置してもよい。この装置として、水蒸気発生装置42を用いてもよい。これにより、熱処理炉40内に水蒸気発生装置42を設置しなくても、熱処理空間40aの雰囲気も水蒸気雰囲気にすることができる。また、熱処理炉40が設置される空間を過熱水蒸気で満たして、熱処理炉40が設置される空間の酸素分圧をゼロにしてもよい。この場合、熱処理炉40および搬送装置102の部材の劣化が抑制される。例えば、熱処理炉40および搬送装置102の部材がステンレス鋼である場合、酸素分圧をゼロにすることで部材の酸化が抑制されるので、熱処理装置101の寿命を長くすることができる。
【符号の説明】
【0061】
11 ガラス基板
20 パレット(保持部材)
40a 熱処理空間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【特許文献1】特表2014−503465
図1
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図8