(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記センサーは、外周面に前記被検査管の内周面に吸着する磁石を有し、前記磁石が前記被検査管の内周面に吸着した状態で前記センサーの中心が前記被検査管の中心に位置決めされるセンタリング部材を備える請求項1又は2に記載の検査システム。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施形態に係る検査システムを図面に基づき説明する。
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態に係る検査システムの全体構成を示す模式図である。
図2は、上記検査システムのヘッダ治具に設けられたシール部の構成を示す断面図である。
図3は、探触子を備えたケーブルの構成を示す図である。
【0025】
配管(被検査管)100の検査システム10Aは、内部に水を満たして超音波によって配管の内部の状態を検査する。本実施形態の検査システム10Aは、水浸型UT検査を行う装置であって、超音波水浸法で配管100の板厚を全長にわたって連続して測定し、検査する。
図1に示すように、検査システム10Aは、入口ヘッダ(ヘッダ治具)102と、出口ヘッダ(ヘッダ冶具)103と、第一ポンプ(供給部)11Aと、第二ポンプ(吸引部)12と、先端に探触子(センサー)20が設けられたケーブル30と、を備える。
【0026】
ここで、検査対象となる配管100は、湾曲部を有する管状の金属配管である。本実施形態の配管100は、U字状に湾曲した複数の湾曲部101と、複数の湾曲部101をそれぞれ繋ぐ直線状の直線部101aとを有する。配管100は、例えば、9カ所の湾曲部を有する鉛直方向に10段連なった金属配管である。
【0027】
入口ヘッダ102は、配管100の一端側である入口側の開口に検査を行う際に接続される。入口ヘッダ102は、一端に入口配管接続部(供給管接続部)102aが設けられている。入口ヘッダ102は、他端にケーブル挿入口(ケーブル挿入部)102bと給水口102cとがV字状に分岐して設けられている。
【0028】
入口配管接続部102aは、配管100の一端に接続される。
ケーブル挿入口102bは、入口配管接続部102aに対して同軸上に配置されている。
給水口102cは、入口配管接続部102aとケーブル挿入口102bとを結ぶ方向に対し、斜めに傾斜して設けられている。この給水口102cには、第一ポンプ11Aが設けられた給水管13Aが接続される。
第一ポンプ11Aは、給水管13Aを通して水を入口配管接続部102aから配管100へと送り込む。
【0029】
出口ヘッダ103は、配管100の他端側である出口側の開口に検査を行う際に接続される。出口ヘッダ103は、一端に配管100の他端が接続される出口配管接続部103aが設けられている。出口ヘッダ103は、他端に第二ポンプ12が設けられた排水管14Aが接続される排水口103cが設けられている。
第二ポンプ12は、出口配管接続部103aを介し、排水管14Aを通して配管100内の水を吸い出す。
【0030】
図2に示すように、入口ヘッダ102のケーブル挿入口102bの入口配管接続部102aと繋がっていない側には、シール部104が設けられている。シール部104は、ケーブル挿入口102bの中心軸方向に間隔を空けて設けられた一対の第一シール部材105,105と、第一シール部材105,105の間に間隔を空けて複数枚が設けられた第二シール部材(シール部材)106と、を備えている。
【0031】
第一シール部材105は、中央部に貫通孔105hが形成された筒状をなしている。第一シール部材105は、ケーブル挿入口102bの内周面に接着剤等によって固定されている。この第一シール部材105は、スポンジ等の弾性を有した材料からなり、ケーブル挿入口102bの中心軸方向に所定の厚さを有している。貫通孔105hの内径は、後述するケーブル30に設けられる水受け部材38の外径よりも僅かに小さく設定されている。
【0032】
第二シール部材106は、円板状で、中央部に貫通孔106hが形成されている。第二シール部材106は、ケーブル挿入口102bの中心軸方向の厚さが第一シール部材105よりも薄い。貫通孔106hの内径は、後述するケーブル30に設けられる支持部材35の外径よりも僅かに小さく設定されている。例えば、支持部材35の外径が19mmであれば、貫通孔106hの内径は18mm程度に設定するのが好ましい。
ケーブル挿入口102bの中心軸方向において互いに隣接する第二シール部材106,106の間隔は、後述するケーブル30に設けられる支持部材35のケーブル軸方向長さよりも小さく設定するのが好ましい。第二シール部材106は、10枚程度配置することが好ましい。
【0033】
このようなシール部104は、ケーブル30に設けられる複数の支持部材35がシール部104内に同時に位置するよう、中心軸方向の長さが設定されている。シール部104は、ケーブル30に設けられる複数の支持部材35のそれぞれの外周面と、複数の第一シール部材105および複数の第二シール部材106の少なくともいずれか一つ以上が常に摺接することで、ケーブル挿入口102bとケーブル30との間のシール性を確保する。
【0034】
ケーブル30は、配管100の内部に第一ポンプ11A側である入口側から第二ポンプ12側である出口側に向かって挿入される。
図3に示すように、ケーブル30は、ケーブル本体31と、探触子20と、フレキシブル管26と、ケーブル接続部材28とを有している。
【0035】
探触子20は、円柱状をなしたハウジング22内に、超音波パルスを発振する発振子(図示無し)を備えている。探触子20の先端部には、発振子から発振された超音波パルスを反射して、配管100の管壁へ垂直に入射させるミラー23が設けられている。配管100の管壁の内表面及び外表面からのエコー波はミラー23を介して発振子に反射される。発振子は、超音波パルスのエコー波を受けて電気信号からなる出力信号に変換し、信号線(図示無し)を通して、外部のコントローラ(図示無し)に送信する。コントローラでは、探触子20の発振子から送信された出力信号に基づき、配管100の板厚を検出する。
【0036】
ここで、ミラー23は、ハウジング22に、ハウジング22の中心軸周りに回転自在に設けられている。このミラー23を、ハウジング22の中心軸周りに回転させることで、配管100の全周に超音波パルスを入射させて、配管100を全周にわたって検査することができる。
【0037】
このような探触子20のハウジング22には、センタリング部材25が設けられている。センタリング部材25は、ハウジング22の外周面22fから外周側に膨出するよう、ハウジング22と一体に設けられている。センタリング部材25は、ハウジング22の周方向における所定位置に、ハウジング22の外周面22fから外周側への膨出寸法が最も大きい頂部25tを有している。頂部25tとハウジング22の中心との間隔は、配管100の内周面の半径と等しく設定されている。
【0038】
この頂部25tには、磁石25mが埋設されている。これにより、探触子20を配管100内に挿入すると、磁石25mの磁力によって頂部25tが配管100の内周面に接する。これによって、探触子20の中心が配管100の中心軸に対して一致するよう配置される。
【0039】
探触子20の基端部には、軟質樹脂系材料あるいはゴム系材料等からなるフレキシブル管26の一端が接続されている。フレキシブル管26は、コイルスプリング27の内側に挿通されている。このフレキシブル管26の他端には、ケーブル本体31の一端が接続されるケーブル接続部材28が設けられている。したがって、探触子20は、ケーブル本体31の先端にフレキシブル管26及びケーブル接続部材28を介して接続されている。
【0040】
また、探触子20とケーブル接続部材28とがフレキシブル管26及びコイルスプリング27を介して接続されている。これにより、探触子20とケーブル接続部材28との間でフレキシブル管26およびコイルスプリング27が配管100の湾曲に沿って弾性変形して湾曲する。また、コイルスプリング27が有する弾性により、配管100から引き抜いた状態では、フレキシブル管26が直線状に延びた状態に復元する。
【0041】
ケーブル接続部材28は、その外周面28fに、センタリング部材25と同様、外周側に膨出するセンタリング部材29が一体に設けられている。
【0042】
センタリング部材29は、ケーブル接続部材28の周方向における所定位置に、ケーブル接続部材28の外周面28fから外周側への膨出寸法が最も大きい頂部29tを有している。頂部29tとケーブル接続部材28の中心との間隔は、配管100の内周面の半径と等しく設定されている。頂部29tには、磁石29mが埋設されている。これにより、探触子20を配管100内に挿入すると、磁石29mの磁力によって頂部29tが配管100の内周面に接し、ケーブル接続部材28の中心が配管100の中心軸に対して一致するよう配置される。
【0043】
探触子20のセンタリング部材25と、ケーブル接続部材28のセンタリング部材29とによって、探触子20及びフレキシブル管26を保持している。これにより、探触子20を、配管100の中心に位置し、かつその中心軸方向に平行な状態で保持することができる。
【0044】
ケーブル本体31は、筒状をなしており、内部に発振子用の信号線(図示無し)が挿通されている。ケーブル本体31は、軟質樹脂系材料、ゴム系材料等からなり、配管100の湾曲に応じて湾曲可能な十分な柔軟性を有している。
【0045】
ケーブル30は、ケーブル30が延在する方向であるケーブル30の中心軸方向にそって間隔を空けて、支持部材35を複数設けている。各支持部材35は、中央部に貫通孔35hが形成された筒状をなしている。各支持部材35は、貫通孔35hにケーブル本体31が挿通され、ケーブル本体31の外周面に固定されている。支持部材35の外周面35fは、ケーブル30の中心軸方向の中央部35aが最も外周側に膨出し、中心軸方向両端部35b,35bが中央部35aよりも膨出寸法が小さい略球面状とされている。このような支持部材35は、外周面35fの中央部35aにおける外径が、配管100の内径よりも小さく設定されている。支持部材35は、樹脂系材料等から形成され、ケーブル本体31よりも摩擦係数が小さくなるように形成されている。
【0046】
また、ケーブル30は、ケーブル30の中心軸方向において互いに前後する支持部材35,35間に、アウタースリーブ36を備えている。アウタースリーブ36は、筒状で、その内部にケーブル本体31が挿通されている。アウタースリーブ36は、支持部材35の外周面35fの外径よりも小さな外径を有している。また、アウタースリーブ36は、支持部材35と同様、樹脂系材料等から形成されている。アウタースリーブ36は、ケーブル本体31よりも摩擦係数が小さく、かつ、ケーブル本体31の湾曲を阻害しないように配管100の湾曲に応じて湾曲可能な十分な柔軟性を有している。
【0047】
アウタースリーブ36は、内径がケーブル本体31の外径よりも僅かに大きく設定されている。これにより、アウタースリーブ36は、ケーブル本体31に対して周方向に回転可能とされている。このようにすれば、ケーブル30を配管100に挿入していったときに、ケーブル本体31が捻れるように変形しても、アウタースリーブ36はケーブル本体31の捻れを阻害しない。したがって、アウタースリーブ36によって、ケーブル本体31が変形するときの変形抵抗が大きくなるのを抑えることができる。
【0048】
さらに、ケーブル30は、ケーブル30の中心軸方向に間隔を空けて、複数の水受け部材(水受け部)38を備えている。水受け部材38は、中央部に貫通孔38hを有した筒状をなしている。水受け部材38は、ケーブル本体31の外周面、あるいはアウタースリーブ36の外周面に接着剤等によって固定されている。水受け部材38は、その外径が、配管100の内径と同等あるいはそれよりも僅かに大きく設定されている。例えば、配管100の内径が24〜26mm程度である場合、水受け部材38の外径は、27mm程度に設定するのが好ましい。この水受け部材38は、スポンジ等の、柔軟性を有した材料で形成され、配管100内に押し込んだときに、配管100の内周面の全周に摺接することで、その外径が小さくなるように弾性変形可能となっている。
【0049】
このような水受け部材38は、ケーブル30の中心軸方向における支持部材35の設置間隔よりも、大きな間隔で設けられている。例えば、水受け部材38は、ケーブル30の中心軸方向に300mm程度の間隔を空けて設けることができる。
【0050】
ここで、水受け部材38の設置間隔は、配管100の湾曲部101の曲率半径、長さ等に応じて適宜設定することができる。例えば、ケーブル30を配管100内に挿入したときに、一つの湾曲部101に、水受け部材38が一つのみ存在するよう、水受け部材38の間隔を設定してもよい。このような構成によれば、配管100の内周面との間で摩擦抵抗を生じる水受け部材38が、一つの湾曲部101に一つのみとなるので、摩擦抵抗を抑えることができる。
また、一つの湾曲部101に、水受け部材38が複数存在するようなピッチで水受け部材38の間隔を設定してもよい。
【0051】
上記したような検査システム10Aで配管100の検査を行うには、以下のようにする。
まず、
図1に示すように、配管100の一端に入口ヘッダ102を取り付け、他端に出口ヘッダ103を取り付ける。また、入口ヘッダ102の給水口102cには、第一ポンプ11Aが設けられた給水管13Aを接続する。出口ヘッダ103の排水口103cには、第二ポンプ12が設けられた排水管14Aを接続する。
【0052】
このとき、入口ヘッダ102のケーブル挿入口102bに、先端に探触子20を備えたケーブル30を挿入する。ケーブル挿入口102bには、シール部104が備えられているので、ケーブル30を挿入していく間、ケーブル30に設けられた複数の支持部材35のそれぞれの外周面と、第一シール部材105および第二シール部材106が順次摺接することで、ケーブル挿入口102bとケーブル30との間のシール性が確保される。
【0053】
ケーブル30の先端部分に設けられた水受け部材38が、入口ヘッダ102において給水口102cとケーブル挿入口102bとの合流部分を少なくとも通過するまで、手作業によって、ケーブル30を挿入する。その後、第一ポンプ11Aおよび第二ポンプ12を作動させる。第一ポンプ11Aでは、給水管13Aを通して水を入口ヘッダ102から配管100へと送り込む。第二ポンプ12は、排水管14A内にして吸引力を作用させる。第二ポンプ12では、排水管14A内が、ほぼ真空状態となるように吸引するのが好ましい。このようにして、配管100内においては、第一ポンプ11Aによって加圧されて入口ヘッダ102から送り込まれた水が、第二ポンプ12によって吸引され、出口ヘッダ103から吸い出される。これにより、配管100内においては、入口ヘッダ102側から出口ヘッダ103側へと向かう水流が生じる。
【0054】
ケーブル30に設けられた複数の水受け部材38は、配管100の内周面の全周に摺接していることで、配管100内に生じる静圧差による引張力が作用する。これによって、ケーブル30を、引き込んで配管100内に容易に送り込むことができる。
【0055】
このようにしてケーブル30を配管100内に送り込みながら、その先端に設けられた探触子20において、配管100の肉厚の検出を行っていく。なお、配管100の肉厚の検出は、配管100内に挿入したケーブル30を、配管100から引き抜きながら行うようにしても良い。
【0056】
上述した第一実施形態の検査システム10Aによれば、第一ポンプ11Aによって配管100の一端から水を供給するのに加え、第二ポンプ12によって配管100の他端から水を吸引している。その結果、第一ポンプ11Aの圧力で単純に水を供給する場合に比べて、供給する水の圧力を過度に高めなくとも、配管100内における水受け部材38の前後の静圧差を大きくすることができる。そのため、配管100の入口側から出口側に向かって水受け部材38が受ける引張力を大きくすることができ、水受け部材38を介してケーブル30を配管100の出口側である奥に向かって引っ張る力を大きくすることができる。したがって、湾曲部101を通過する際のケーブル30の摩擦抵抗や変形抵抗よりも大きな力をケーブル30に作用させて、配管100内にケーブル30を円滑に挿入することができ、湾曲部101を有する配管100の奥深くまで円滑にケーブル30を挿入することができる。
【0057】
また、配管100内の圧力を低く抑えることができるので、ケーブル30を挿入する入口ヘッダ102における大量の水漏れも抑えることができる。
【0058】
また、ケーブル30の外周面に、水受け部材38よりも径が小さく、かつケーブル30よりも摩擦係数が小さい支持部材35を設けることで、配管100の湾曲部101を通過する際に、配管100の内周面と擦れたときの摩擦抵抗を抑えることができる。
特に、支持部材35の外周面35fは略球面状であるため、配管100との接触面積を抑え、より摩擦抵抗を抑えることができる。
【0059】
さらに、配管100の一端側設けた入口ヘッダ102のケーブル挿入口102bのシール部104においては、複数の第二シール部材106がケーブル30に設けられた支持部材35の外周面に摺接する。これにより、ケーブル挿入口102bからケーブル30を挿入していく際に、ケーブル挿入口102bとケーブル30との間のシール性を確保することができる。
【0060】
加えて、上記構成においては、ケーブル30が延在する方向に沿って間隔を空けて複数の水受け部材38が設けられている。このように構成することで、第二ポンプ12によって配管100内に生じる静圧差による引張力を複数の水受け部材38でより確実に受けることができる。これにより、ケーブル30の配管100内における推進力が高まり、ケーブル30をより一層円滑に配管100内に導入することが可能となる。
【0061】
また、探触子20は、外周面に配管100の内周面に吸着する磁石25mを有し、金属製の配管100の内周面に磁石25mを吸着させることで、探触子20の中心が配管100の中心に位置決めされる。これによって、配管100内の奥深くであっても、探触子20を配管の中心に配置して、一定の条件で配管100の検査を行うことができる。
【0062】
上記のような検査システム10Aを使用しない現状の検査システムでは、探触子20を備えたケーブル30を手作業でU字状の湾曲部101を通過させるためには、ケーブル30の摩擦抵抗及び変形抵抗の影響により、湾曲部101を1〜2箇所通過させることしかできない。また、ケーブル30を奥まで挿入するために、ポンプで配管100の内部に送り込む水の圧力を過度に高くすると、配管100にケーブル30を挿入する部分のシール性が保てなくなり、配管100内の水が大量に外部に漏れてしまう。ところが、上記のような検査システム10Aによれば、ケーブル挿入口102bからの大量の水漏れを抑えながら、手作業であっても、5つ以上の湾曲部101を通過させてケーブル30を配管100内の奥深くまで簡単に挿入することができる。
【0063】
(第二実施形態)
次に、この発明にかかる検査システムの第二実施形態について説明する。以下に説明する第二実施形態においては、第一実施形態に対し、配管100に送り込む水を循環させるようにした構成のみが異なる。第二実施形態の検査システム10Bは、探触子20を先端に有するケーブル30、入口ヘッダ102,出口ヘッダ103等については上記第一実施形態と共通する。したがって、以下においては、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
【0064】
図4は、本発明の第二実施形態に係る検査システムの全体構成を示す模式図である。
図4に示すように、配管100の検査システム10Bは、入口ヘッダ102と、出口ヘッダ103と、第一ポンプ(供給部)11Bと、第二ポンプ12と、回収タンク(貯留槽)16と、先端に探触子20が設けられたケーブル30と、を備える。
【0065】
上記第一実施形態と同様、検査対象となる配管100の入口側に入口ヘッダ102が接続され、配管100の出口側に出口ヘッダ103が接続される。
【0066】
入口ヘッダ102の給水口102cには、給水管13Bの一端が接続される。給水管13Bの他端は、回収タンク16内に設けられた第一ポンプ11Bに接続されている。第一ポンプ11Bは、給水管13Bを通して回収タンク16内の水を入口ヘッダ102から配管100へと送り込む残水ポンプである。
【0067】
出口ヘッダ103の排水口103cには、第二ポンプ12が設けられた排水管14Bの一端が接続されている。排水管14Bの他端は、回収タンク16に接続されている。第二ポンプ12は、配管100から出口ヘッダ103を介して吸い出した水を、排水管14Bを通して回収タンク16に貯留する。
【0068】
上記したような検査システム10Bで配管100の検査を行うには、以下のようにする。
まず、
図4に示すように、配管100の一端に入口ヘッダ102を取り付け、他端に出口ヘッダ103を取り付ける。また、入口ヘッダ102の給水口102cと、第一ポンプ11Bが設けられた回収タンク16とを給水管13Bで接続する。出口ヘッダ103の排水口103cと、回収タンク16とを、第二ポンプ12が設けられた排水管14Bで接続する。
【0069】
入口ヘッダ102のケーブル挿入口102bから、先端に探触子20を備えたケーブル30を挿入し、その先端部分に設けられた水受け部材38が、入口ヘッダ102において給水口102cとケーブル挿入口102bとの合流部分を少なくとも通過するまで、手作業によって、ケーブル30を挿入する。
【0070】
この後、第一ポンプ11B及び第二ポンプ12を作動させる。第一ポンプ11Bでは、回収タンク16内の水を、給水管13Bを通して入口ヘッダ102から配管100へと送り込む。第二ポンプ12は、排水管14B内にして吸引力を作用させる。第二ポンプ12では、排水管14B内が、ほぼ真空状態となるように吸引するのが好ましい。このようにして、配管100内においては、第一ポンプ11Bによって加圧されて入口ヘッダ102から送り込まれた水が、第二ポンプ12によって吸引され、出口ヘッダ103から吸い出され、回収タンク16で回収される。これにより、配管100内においては、入口ヘッダ102側から出口ヘッダ103側へと向かう水流が生じる。
【0071】
ケーブル30に設けられた複数の水受け部材38は、配管100の内周面の全周に摺接していることで、配管100内に生じる静圧差による引張力が作用する。これによって、ケーブル30を、引き込んで配管100内に容易に送り込むことができる。このようにしてケーブル30を配管100内に送り込みながら、その先端部に設けられた探触子20において、配管100の肉厚の検出を行っていく。
【0072】
上述した第二実施形態の検査システム10Bによれば、配管100の出口側から排出された水を貯留する回収タンク16を有し、回収タンク16に貯留された水を第一ポンプ11Bから供給するようにした。このように構成することで、配管100内に送り込む水を、回収タンク16を介して循環させることができ、検査に使用する水の使用量を抑えることができる。
【0073】
また、上記第一実施形態と同様、第一ポンプ11Bによって配管100の入口側から水を供給するのに加え、第二ポンプ12によって配管100の出口側から水を吸引している。その結果、配管100内における水受け部材38の前後の静圧差を大きくすることができる。これにより、水受け部材38を介してケーブル30を配管100の出口側である奥に向かって引っ張る力を大きくすることができ、探触子20が設けられたケーブル30を配管100内に円滑に挿入することができる。また、配管100内の圧力を低く抑えることができるので、ケーブル30を挿入する入口ヘッダ102における水漏れも抑えることができる。これによって、探触子20を備えたケーブル30を、複数の湾曲部101を通過させて配管100の奥まで円滑に挿入して配管100内の検査を行うことが可能となる。
【0074】
(第二実施形態の変形例)
ここで、第二実施形態では、配管100内において入口ヘッダ102側から出口ヘッダ103側へと水を流して循環させるようにしたが、これに限るものではなく、配管100内における水の流れ方向を切換可能な構成とすることもできる。
【0075】
図5は、本発明の第二実施形態に係る検査システムの変形例の構成を示す模式図である。
図6は、
図5に示した構成において、第二実施形態と同じ方向に水を流している状態を示す図である。
図7は、
図5に示した構成において、
図6とは反対方向に水を流している状態を示す図である。
【0076】
この
図5に示すように、上記第二実施形態で示した構成に加えて、第一ポンプ11Bと第二ポンプ12とを切り替えて、配管100内の水の流通方向を切り替える切替部50を備える。
【0077】
第一ポンプ11Bと第二ポンプ12とを切り替える切替部50は、以下のような構成を有している。切替部50は、排水管14Bの出口ヘッダ103と第二ポンプ12との間に、出口ヘッダ103側から直列に設けられた第一切換弁V1と、第二切換弁V2とを有する。
【0078】
また、切替部50は、入口ヘッダ102と第一ポンプ11Bとの間に、給水管13Bから分岐して回収タンク16に接続される第二排水管40を有する。切替部50は、この第二排水管40に配置された第三切換弁V3を有する。切替部50は、給水管13Bと第二排水管40との分岐部と入口ヘッダ102との間に配置された第四切換弁V4を有する。また、切替部50は、給水管13Bの第二排水管40との分岐部と第一ポンプ11Bとの間に、第一ポンプ11B側から直列に配置された第六切換弁V6と、第五切換弁V5とを有する。
【0079】
さらに、切替部50は、排水管14Bの第一切換弁V1及び第二切換弁V2の間と、給水管13Bの第五切換弁V5及び第六切換弁V6の間と、を接続するバイパス管41を有する。切替部50は、このバイパス管41に配置された第七切換弁V7を有する。
【0080】
このような構成の切替部50において、
図6に示すように、第一切換弁V1、第二切換弁V2、第四切換弁V4、第五切換弁V5、第六切換弁V6を開き、第三切換弁V3及び第七切換弁V7を閉じる。この状態で、第一ポンプ11Bおよび第二ポンプ12を作動させると、第一ポンプ11Bから送り出された水は、第六切換弁V6、第五切換弁V5、第四切換弁V4を経て給水管13Bを流通し、入口ヘッダ102から配管100に送り込まれ、出口ヘッダ103から排出される。排出された水は、第一切換弁V1、第二切換弁V2を経て排水管14Bを流通し、回収タンク16に回収される。このようにして、第一ポンプ11Bから送り出された回収タンク16内の水は、上記第二実施形態と同様に、配管100内を入口ヘッダ102側から出口ヘッダ103側へと流れる。これにより、探触子20を備えたケーブル30を、入口ヘッダ102が設けられた配管100の一端から円滑に挿入して、配管100の板厚の検出を行うことができる。
【0081】
また、水の流通方向を切り替える際には、切替部50において、
図7に示すように、第一切換弁V1、第三切換弁V3、第四切換弁V4、第六切換弁V6、第七切換弁V7を開き、第二切換弁V2及び第五切換弁V5を閉じる。この状態で、第一ポンプ11Bおよび第二ポンプ12を作動させると、第一ポンプ11Bから送り出された水は、第六切換弁V6、第七切換弁V7、第一切換弁V1を経て給水管13B、バイパス管41、及び排水管14Bを流通し、出口ヘッダ103から配管100に送り込まれ、入口ヘッダ102から排出される。排出された水は、第四切換弁V4、第三切換弁V3を経て給水管13B、第二排水管40、及び排水管14Bを流通し、回収タンク16に回収される。このようにして、第一ポンプ11Bから送り出された水は、配管100内を出口ヘッダ103側から入口ヘッダ102側へ流通方向を反転させて流れる。これにより、入口ヘッダ102が設けられた側から配管100に挿入したケーブル30を、入口ヘッダ102側に容易に戻して引き抜くことができる。
【0082】
また、探触子20を備えたケーブル30を、出口ヘッダ103が設けられた側から配管100内に円滑に挿入して、配管100の板厚の検出を行うこともできる。この場合は、出口ヘッダ103に代えて、入口ヘッダ102と同様に、ケーブル挿入口102bを備える必要がある。
【0083】
このような構成によれば、第一ポンプ11Bと第二ポンプ12とを切り替える切替部50を有することで、配管100内における水の流通方向を任意に切り換えることができる。これによって、配管100内にケーブル30を挿入するときだけでなく、配管100からケーブル30を抜く作業も円滑に行うことができる。また、配管100へ挿入途中のケーブル30が詰まってしまった場合であっても、作業途中で水の流通方向を切り替えることで、配管100からケーブル30を円滑に抜いて詰まりを解消することができる。
【0084】
(その他の変形例)
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
例えば、上記実施形態中で挙げた各部の寸法や材質は、一例に過ぎず、配管100の内径、配管100の湾曲部101の曲率等に応じて適宜変更することが可能である。もちろん、
図1に示した、複数の湾曲部101を有した配管100のレイアウトは一例に過ぎない。
【0085】
また、本実施形態では、配管100の入口側のみを、ケーブル挿入口(ケーブル挿入部)102bを備えたヘッダ治具である入口ヘッダ102としたが、このような構造に限定されるものではない。例えば、配管100の出口側も、ケーブル挿入口(ケーブル挿入部)102bを備えたヘッダ治具としてもよい。このように構成することで、配管100の出口側からもケーブル30を挿入して、配管100の検査を行うことができる。したがって、仮に、本実施形態のような10段の配管を検査する際には、入口側からケーブル30を挿入して5つ程度の湾曲部101を通過させて配管100内の検査した後に、出口側からケーブル30を挿入して5つ程度の湾曲部101を通過させて配管100内を検査する。これにより、10段程度の配管であっても、高い精度で検査することができる。
【0086】
また、上記実施形態では、探触子20で配管100の板厚を超音波探査により検出するようにしたが、探触子20の構造、板厚の検出方法等についてはいかなるものとしても良い。
さらに、探触子20では、配管100の板厚検出に限らず、他の検査を行うようにしても良い。