特許第6552846号(P6552846)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552846
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】透気性防水フィルター及びガス検知器
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20190722BHJP
【FI】
   G01N27/12 B
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-47280(P2015-47280)
(22)【出願日】2015年3月10日
(65)【公開番号】特開2016-166820(P2016-166820A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2018年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福地 健一
(72)【発明者】
【氏名】松本 晋一
【審査官】 大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−229154(JP,A)
【文献】 特開平10−062320(JP,A)
【文献】 特開2003−067867(JP,A)
【文献】 特開2010−266051(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0084160(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高水圧下で使用されるガス検知器に用いられる透気性防水フィルターであって、
透気性および防水性を有する多孔質体と、
透気性を有し前記多孔質体と重なって当該多孔質体を支持する、ピンホールが設けられた支持体とを備えた、透気性防水フィルター。
【請求項2】
前記支持体はそれぞれにピンホールが設けられた2枚の支持板であり、
前記多孔質体は1枚の多孔質膜であり、
前記2枚の支持板の間に前記1枚の多孔質膜が位置している、請求項1に記載の透気性防水フィルター。
【請求項3】
前記支持体は、それぞれにピンホールが設けられた2枚の支持板であり、
前記多孔質体は3枚の多孔質膜であり、
前記支持板と前記多孔質膜とが交互に位置するように重なっている、請求項1に記載の透気性防水フィルター。
【請求項4】
前記2枚の支持板は、一方の前記支持板に形成された前記ピンホールと、他方の前記支持板に形成された前記ピンホールとが、平面視において互いに位置がずれるように重なっている、請求項2または3に記載の透気性防水フィルター。
【請求項5】
高水圧下の水中のガスを検知するガス検知器であって、
前記高水圧下の水中に通じるガス取込用流路とこのガス取込用流路に通じる検知室とを内側に有するハウジングと、
前記高水圧下の水の浸入を遮断するように前記ガス取込用流路に取り付けられた請求項1〜4のいずれか一項に記載の透気性防水フィルターと、
前記検知室に配置された感ガス体とを備えた、ガス検知器。
【請求項6】
前記検知室と外部空間とを通じさせる排気孔を更に備えた、請求項5に記載のガス検知器。
【請求項7】
前記感ガス体に供給する電力を制御する制御部を更に備え、
前記制御部は、前記感ガス体に間歇的に電力を供給する制御を行うことを特徴とする請求項5または6に記載のガス検知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透気性防水フィルター及びガス検知器に関し、詳しくは、高水圧下の水中のガスを検知するための透気性防水フィルター及びガス検知器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガスセンサを透気防水膜で覆うことで、地下水中の溶存ガスの測定を可能とした検出器が記載されている。透気防水膜は、ごく微小の孔が無数に開いた樹脂フィルムを、織物に接着したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−30752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の検出器は、水道管を流れる水道水などの高水圧下の水中のガスの検知に用いた場合、水圧により透気防水膜が変形して透気防水膜の防水性能が低下するおそれがある。そのため、特許文献1に記載の検出器では、透気防水膜で水の透過を防ぐことができず、高水圧下の水中のガスの検知を行うことが難しい。
【0005】
そこで、本発明は、高水圧下の水中のガスの検知に用いることができる透気性防水フィルター及びガス検知器を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の透気性防水フィルターは、高水圧下で使用されるガス検知器に用いられる透気性防水フィルターであって、透気性および防水性を有する多孔質体と、透気性を有し前記多孔質体と重なって当該多孔質体を支持する支持体とを備える。
【0007】
上記課題を解決する本発明のガス検知器は、高水圧下の水中のガスを検知するガス検知器であって、前記高水圧下の水中に通じるガス取込用流路とこのガス取込用流路に通じる検知室とを内側に有するハウジングと、前記高水圧下の水の浸入を遮断するように前記ガス取込用流路に取り付けられた前記の透気性防水フィルターと、前記検知室に配置された感ガス体とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、高水圧下の水中のガスの検知に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第一実施形態のガス検知器を示す図であり、図1Aは側断面図であり、図1Bは側面図であり、図1Cは平面図である。
図2】同上のガス検知器の透気性防水フィルターを示す図であり、図2Aは透気性防水フィルター全体を示す側面図であり、図2Bは透気性防水フィルターの多孔質膜を示す平面図であり、図2Cは透気性防水フィルターの第一支持板を示す平面図であり、図2Dは透気性防水フィルターの第二支持板を示す平面図である。
図3】本発明の第二実施形態のガス検知器の設置例を示す側断面図である。
図4】本発明の第三実施形態のガス検知器の設置例を示す側断面図である。
図5】本発明の第四実施形態のガス検知器の設置例を示す側断面図である。
図6図6A乃至図6Eは本発明の第一乃至第四実施形態のガス検知器の透気性防水フィルターの変形例を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1A乃至図1Cには、本発明の第一実施形態のガス検知器100が示されている。ガス検知器100は、高水圧下の水中のガスを検知するガス検知器である。ガス検知器100は、水道管内や、工場等の配水管内や、川や海や湖等の水中に設置して用いることで、高水圧下の水中のガスを検知することができる。高水圧とは、例えば、1MPaである。
【0012】
ガス検知器100は、ガスを検知する感ガス体1と、感ガス体1が内蔵されたハウジング2と、ハウジング2の内側に設けられたガス取込用流路3と、ガス取込用流路3に配される透気性防水フィルター4とを備える。以下では、ガスを取り込む方向を基準として、上流側を前方とし、下流側を後方として、ガス検知器100の各構成について説明する。図1Aでは、矢印X1で示す方向が前方であり、その反対側が後方である。また、ガス検知器100及び透気性防水フィルター4においては、通気方向に沿って見ることを平面視という。
【0013】
図2Aには、本実施形態の透気性防水フィルター4が示されている。透気性防水フィルター4は、透気性および防水性を有する多孔質体5と、透気性を有する支持体6とを備えている。支持体6は、多孔質体5に重ねられ、これにより多孔質体5を支持する。
【0014】
本実施形態では、多孔質体5は、透気性及び防水性を有する3枚の多孔質膜50,51,52であり、支持体6は、2枚の支持板60,61である。各支持板60,61には、厚み方向に貫通するピンホール7が設けられている。3枚の多孔質膜50,51,52と2枚の支持板60,61とは、多孔質膜と支持板とが1枚ずつ交互に並ぶように重なっている。
【0015】
2枚の支持板60,61は、ピンホール7が1つ設けられた第一支持板60と(図2C参照)、ピンホール7が複数設けられた第二支持板61である(図2D参照)。第一支持板60は、第二支持板61よりも前側(つまり上流側)に位置する。以下では、3枚の多孔質膜50,51,52は、前側に位置するものから順に、第一多孔質膜50、第二多孔質膜51、第三多孔質膜52と記載する。第一多孔質膜50、第一支持板60、第二多孔質膜51、第二支持板61、第三多孔質膜52は、この順に重なっている。多孔質膜50,51,52と支持板60,61は、本実施形態では、平面視円形状であり、直径が略同じ(例えば11.0mm)である。
【0016】
多孔質膜50,51,52は、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂多孔質膜である。PTFE樹脂多孔質膜は、PTFE樹脂が持つ撥水性と、サブミクロンの超極細繊維からなる三次元網目構造により、防水性と高い通気性とを発揮する。多孔質膜50,51,52は、支持板60,61と重なる側の面の周縁部に、全周に亘って両面テープが接着されている。
【0017】
多孔質膜50,51,52は、例えば、TEMISH(登録商標)の品番S−NTF2122A−S06Jの製品である。この製品は、膜特性として、厚みの代表値が0.20mm、JIS P 8117 ガーレー試験法によるガーレー数の代表値が35sec、JIS L 1092 B法(高水圧法)による耐水度の代表値が400kPaを有する。なお、多孔質膜50,51,52は、膜特性として上記の代表値を有するものに限定されない。また、多孔質膜50,51,52は、TEMISH(登録商標)に限らず、透気性及び防水性を有する他の膜状の多孔質体であってもよい。
【0018】
第一支持板60では、図2Cに示すように、平面視における円中心部に、ピンホール7が1つ設けられている。第一支持板60は、例えば、厚みが0.25mm、ピンホール7の直径が0.50mmのものである。第一支持板60は、例えば、ステンレス製である。
【0019】
第二支持板61では、図2Dに示すように、平面視における円中心部以外の部位に、ピンホール7が22個設けられている。22個のピンホール7は、第二支持板61の強度に部分的な偏りが生じないように、規則的に配置されている。第二支持板61は、例えば、厚みが0.25mm、ピンホール7の直径が0.50mmのものである。第二支持板61は、例えば、ステンレス製である。なお、支持板60,61は、多孔質膜50,51,52よりも硬質のものであればよく、他の金属製のものや、合成樹脂製のものであってもよい。
【0020】
2枚の支持板60,61と3枚の多孔質膜50,51,52は、それぞれが接着されてもよいし、互いの円中心部分を合わせて重ねるだけで、互いに接着させていなくてもよい。本実施形態の多孔質膜50,51,52は、片側にのみ粘着テープが設けられている。このため、第一多孔質膜50と第二多孔質膜51は第一支持板60に貼着され、第三多孔質膜52は第二支持板61に貼着されているが、第二多孔質膜51と第二支持板61との間は接着されていない。
【0021】
ハウジング2は、図1A乃至図1Cに示すように、その内側に、高水圧下の水中に通じるガス取込用流路3と、このガス取込用流路3に通じる検知室25とを有する。詳しくは、本実施形態では、ハウジング2は、感ガス体1が内蔵される筒状の第一ハウジング20と、第一ハウジング20に対して着脱自在に取り付けられる筒状の第二ハウジング21とを有する。第一ハウジング20の外周面と、第二ハウジング21の内周面にはそれぞれ、ねじ作用で嵌り合う螺旋状の溝22,23が設けられている。
【0022】
第二ハウジング21は、内側に、透気性防水フィルター4が配されるガス取込用流路3を有する。そして、第二ハウジング21は、前端部に、透気性防水フィルター4の前面の周縁部を前方から抑える抑え部24を有する。抑え部24は、第二ハウジング21の前端部から周方向に亘って内側に突出しており、円環状である。抑え部24の内側の空間が、ガス取込用流路3の上流端であり、ガス取込口30である。
【0023】
第一ハウジング20は、透気性防水フィルター4を通過したガスが流入する検知室25を内側に有する。この検知室25に、感ガス体1が配される。第一ハウジング20は、前端部に透気性防水フィルター4の後面の周縁部を受ける受け部26を有する。本実施形態では、第一ハウジング20の円環状の前端面が、受け部26を構成する。
【0024】
本実施形態のガス検知器100では、透気性防水フィルター4は、上流側にリング状の第一スペーサー80が配され、下流側にリング状の第二スペーサー81が配された状態で、ガス取込用流路3のうち、抑え部24よりも後方(下流側)の領域に配される。その後、第二ハウジング21を第一ハウジング20に対してねじ締めして取り付けることで、透気性防水フィルター4は、抑え部24と受け部26とで挟まれて、第二ハウジング21内に固定され、ガス取込用流路3を閉塞する。
【0025】
本実施形態のガス検知器100は、感ガス体1にワイヤー10を介して接続される3本の端子11と、3本の端子11を支持する樹脂製のベース12と、ベース12の下流側に配される保護フィルター13とを更に備える。感ガス体1、ワイヤー10、3本の端子11、ベース12及び保護フィルター13は、第一ハウジング20内に位置する。感ガス体1は、酸化錫を主体とするもので、内部にヒーターを埋め込んだものである。
【0026】
3本の端子11はそれぞれ、ベース12を貫通しており、前端部がワイヤー10を介して感ガス体1に接続され、後端部が電気回路に接続されている。ベース12は、周縁部が、第一ハウジング20の内周面に全周に亘って接着されており、第一ハウジング20の内側の空間を前後に仕切る。第一ハウジング20の内側の空間のうち、ベース12よりも前側(上流側)の空間が、検知室25である。ベース12には、3本の端子11の貫通箇所とは別に、検知室25と外部空間とを連通する排気孔14が設けられている。本実施形態のガス検知器100では、高水圧下の水中で使用するため、検知室25にはガスが次々と流入する。ここで、本実施形態のガス検知器100では、流入したガスが排気孔14を通じて外部空間に排出されるので、外部空間にあるガスが、排気孔14を通じて検知室25内に流入しにくくなっている。
【0027】
保護フィルター13は、外部空間の水やガスやほこりが排気孔14を通じて検知室25に浸入することを更に防止するためのフィルターである。保護フィルター13は、透気性及び防水性を有する。保護フィルター13は、例えば、透気性防水フィルター4の多孔質膜50,51,52と同様のものである。なお、保護フィルター13は、透気性及び防水性を有する市販のフィルターであってもよい。
【0028】
ガス検知器100は、感ガス体1に供給する電力を制御する制御部を更に備える。制御部は、例えば、3本の端子11の後端部が接続される電気回路に設けられる。制御部は、感ガス体に間歇的に電力を供給する制御を行う。制御部は、例えば、一日に一回、数秒程度、感ガス体1へ電力を供給するように制御を行う。なお、制御部による電力供給の制御は、上記の間隔や秒数に限定されるものではなく、適宜設定可能である。
【0029】
以上説明した本実施形態のガス検知器100は、例えば、水道管に設置することで、水道管を流れる高水圧下の水道水中から揮発する残留塩素由来の塩素化合物を検知することができる。水道管へのガス検知器100の設置は、例えば、水道管の一部に孔を設け、この孔にガス検知器100を嵌め込むことによって行う。このとき、ガス検知器100は、ガス取込用流路3が水道管内の通水路と連通するように設置する。
【0030】
水道管を流れる高水圧下の水は、ガス取込口30を通じて第二ハウジング21内に流入し、透気性防水フィルター4で受け止められる。すると、高水圧下の水は透気性防水フィルター4における多孔質膜50,51,52によって通過が妨げられるが、高水圧下の水中の塩素化合物は、多孔質膜50,51,52の微細な孔及び支持板60,61のピンホール7を通過する。そして、塩素化合物は、検知室25に流れ込み、感ガス体1によって検知される。その後、塩素化合物は、排気孔14を介して外部空間に排出される。すなわち、本実施形態のガス検知器100では、ガス取込用流路3に流れ込む高水圧下の水を、透気性防水フィルター4で受け止めて、この水中のガスだけを検知室25へと流入させることができる。
【0031】
ここで、本実施形態のガス検知器100では、透気性防水フィルター4を、3枚の多孔質膜50,51,52と2枚の支持板60,61とが、1枚ずつ交互に重なる構造としているため、各多孔質膜50,51,52が水道水の圧力で変形することを、2枚の支持板60,61によって抑制することができる。
【0032】
また、本実施形態のガス検知器100では、透気性防水フィルター4の前面と後面を樹脂製の多孔質膜50,52で構成しているため、多孔質膜50,52が水の通過を止める防水フィルターとして機能する他に、透気性防水フィルター4を挟み込む構成(本実施形態では第一スペーサー80と第二スペーサー81)との間の隙間を埋めるシーリング材としても機能する。そのため、本実施形態のガス検知器100では、前記の隙間を埋めるOリング等のシーリング材が別途必要とならない。
【0033】
また、本実施形態のガス検知器100では、2枚の支持板60,61が、第一支持板60に設けられたピンホール7と、第二支持板61に設けられたピンホール7とが、平面視において互いに位置がずれるように重なっているため、透気性防水フィルター4が更に水道水の通過がしにくいものとなっている。
【0034】
また、本実施形態のガス検知器100では、透気性防水フィルター4を通過し、検知室25に流入したガスは、排気孔14を通じて外部空間へと排気することができる。そのため、本実施形態のガス検知器100では、検知室25にて検知済のガスが検知室25から排出されず、新たに検知室25に流入したガスの検知が正確に行えなくなることを抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態のガス検知器100では、制御部により感ガス体1に電力を間歇的に供給するようにしたことで、ガス検知器100の駆動電力を極力抑えることができる。そのため、本実施形態のガス検知器100は、例えば、水道管に設置される水道メーター内に設置することができ、水道メーターを駆動する電池の電力を利用して、ガスの検知を行うことができる。
【0036】
続いて、図3に示す本発明の第二実施形態のガス検知器100について説明する。以下では、第一実施形態のガス検知器100と同様の構成については図中に同じ符号を付し、異なる構成については詳しく説明する。
【0037】
第二実施形態のガス検知器100は、第二ハウジング21の外周面に、ねじ作用による嵌め合いに用いられる螺旋状の溝27を有する。第一ハウジング20は、前端部に、周方向に亘って内側に突出した円環状の受け部26を有する。透気性防水フィルター4は、第一ハウジング20の受け部26と第二ハウジング21の抑え部24によって、スペーサー80、81を介さずに直接挟み込まれている。
【0038】
以上説明した本実施形態のガス検知器100は、水道管等の管体101の一部を貫通する設置孔102に、ねじ締めにより取り付けることができる。設置孔102の内周面には、溝27が嵌め合わされる螺旋状の溝103が設けられている。
【0039】
本実施形態のガス検知器100においても、管体101を流れる高水圧下の水中のガスを検知することができる。更に、本実施形態のガス検知器100では、第二ハウジング21の外周面にねじ作用による嵌め合いに用いられる螺旋状の溝27を設けたことで、水道管等の管体101に設けた設置孔102に簡単に取り付けることができる。
【0040】
続いて、図4に示す本発明の第三実施形態のガス検知器100について説明する。以下では、第一実施形態のガス検知器100と同様の構成については図中に同じ符号を付し、異なる構成については詳しく説明する。
【0041】
第三実施形態のガス検知器100は、水道管等の2本の管体101を結合する略T字状の管継手104の一部が、第二ハウジング21を構成している。管継手104には、透気性防水フィルター4の前面の周縁部を前方から抑える抑え部108が設けられている。第一ハウジング20は、前端部に、周方向に亘って内側に突出した円環状の受け部26を有する。透気性防水フィルター4は、第一ハウジング20の受け部26と管継手104の抑え部108により、スペーサー80、81を介さずに直接挟み込まれている。
【0042】
詳しくは、略T字状の管継手104は、管体101が接続される2つの管接続口105,106と、ガス検知器100の第一ハウジング20が接続される1つの接続口107とを備える。2つの管接続口105,106は、一直線上に位置し、互いに反対方向に開口している。接続口107は、2つの管接続口105,106が並ぶ方向に対して直交する方向に開口している。
【0043】
2つの管接続口105,106と1つの接続口107の内周面にはそれぞれ、ねじ作用による嵌め合いに用いられる螺旋状の溝が設けられている。管体101は、外周面にねじ作用による嵌め合いに用いられる螺旋状の溝が設けられており、管接続口105,106に対してねじ締めにより取り付けられる。管継手104は、接続口107の上流側の端部に、円環状に突出した抑え部108を有する。
【0044】
以上説明した本実施形態のガス検知器100では、2本の管体101に接続されたT字状の管継手104を流れる高水圧下の水中のガスを検知することができる。また、本実施形態のガス検知器100では、ガス検知器100を取り付け可能な略T字状の管継手104を用いることで、管体101に設置孔を貫通させて設ける必要がなく、この分だけ現場での施工を簡略化することができる。
【0045】
続いて、図5に示す本発明の第四実施形態のガス検知器100について説明する。以下では、第一実施形態のガス検知器100と同様の構成については図中に同じ符号を付し、異なる構成については詳しく説明する。
【0046】
第四実施形態のガス検知器100では、第二ハウジング21が、抑え部24と受け部26の両方を有し、透気性防水フィルター4を単独で前後方向から挟んで支持する。感ガス体1が内蔵された第一ハウジング20は、前端部に受け部26を有さない筒状体である。
【0047】
第一ハウジング20は、第二ハウジング21の内側に、Oリング等のシーリング材9を介して配される。第一ハウジング20は、シーリング材9によって、第二ハウジング21内に保持されて、位置が固定される。本実施形態では、第一ハウジング20の外周面と、第二ハウジング21の内周面には、ねじ作用による嵌め合いに用いられる螺旋状の溝が設けられていない。なお、第一ハウジング20は、ねじ作用による嵌め合い以外の嵌め込みや接着によって、第二ハウジング21内に保持されて位置が固定されるようにしてもよい。
【0048】
第二ハウジング21は、水道管等の管体101の一部を貫通する設置孔102に、嵌め込みや接着によって取り付けられる。本実施形態では、第二ハウジング21の外周面と、管体101の設置孔102の内周面には、ねじ作用による嵌め合いに用いられる螺旋状の溝が設けられていない。
【0049】
以上説明した本実施形態のガス検知器100においても、管体101を流れる高水圧下の水中のガスを検知することができる。
【0050】
なお、上述した第一乃至第四実施形態のガス検知器100はいずれも、3枚の多孔質膜50,51,52と2枚の支持板60,61とを、多孔質膜と支持板とが1枚ずつ交互に並ぶように重ね合わせた5層の透気性防水フィルター4を備えるものであったが、これに限定されない。
【0051】
つまり、透気性防水フィルター4は、図6Aに示すように、1枚の多孔質膜(第一多孔質膜50)と1枚の支持板(第一支持板60)とを、第一支持板60が第一多孔質膜50の後側(つまり下流側)に位置するように、重ねた2層構造のものであってもよい。この場合、透気性防水フィルター4の下流側には、Oリング等のシーリング材を配置することが好ましい。
【0052】
また、透気性防水フィルター4は、図6Bに示すように、1枚の支持板(第一支持板60)と2枚の多孔質膜(第一多孔質膜50と第二多孔質膜51)とを、第一多孔質膜50と第二多孔質膜51との間に第一支持板60が位置するように配した3層構造のものであってもよい。この場合、透気性防水フィルター4の上流側と下流側へのOリング等のシーリング材の設置は、省略可能である。
【0053】
また、透気性防水フィルター4は、図6Cに示すように、1枚の多孔質膜(第二多孔質膜51)と2枚の支持板(第一支持板60と第二支持板61)とを交互に重ね、第一支持板60と第二支持板61との間に1枚の第二多孔質膜51が位置するようにした3層構造のものであってもよい。この場合、透気性防水フィルター4の上流側と下流側にはそれぞれ、Oリング等のシーリング材を配置することが好ましい。
【0054】
また、透気性防水フィルター4は、図6Dに示すように、2枚の多孔質膜(第一多孔質膜50と第二多孔質膜51)と2枚の支持板(第一支持板60と第二支持板61)とを、最も前側(上流側)の層が多孔質膜となるように、支持板と多孔質膜とを1枚ずつ交互に並べて重ねた4層構造のものであってもよい。この場合、透気性防水フィルター4の下流側には、Oリング等のシーリング材を配置することが好ましい。
【0055】
また、透気性防水フィルター4は、図6Eに示すように、2枚の多孔質膜(第二多孔質膜51と第三多孔質膜52)と2枚の支持板(第一支持板60と第二支持板61)とを、最も上流側の層が支持板となるように、支持板と多孔質膜とを1枚ずつ交互に並べて重ねた4層構造のものであってもよい。この場合、透気性防水フィルター4の上流側には、Oリング等のシーリング材を配置することが好ましい。
【0056】
また、透気性防水フィルター4は、少なくとも1枚の多孔質膜と、少なくとも1枚の支持板とを、多孔質膜と支持板とが1枚ずつ交互に並ぶように重ねた複層構造のものであればよく、上記の枚数の組み合せや配置に限定されない。ただし、透気性防水フィルター4は、使用する環境に対応した耐水圧性能を有するように、支持板の厚みが設定される。ガス検知器100を水道管に設置する場合には、透気性防水フィルター4は、2.0〜2.5MPaの耐水圧性能を有することが好ましい。透気性防水フィルター4を構成する支持板の枚数が1枚だけの場合、その支持板の厚みは、例えば、0.25〜0.75mmであることが好ましい。透気性防水フィルター4を構成する支持板の枚数が2枚以上の場合、各支持板は、上記の厚みよりも薄いものを用いることも可能である。
【0057】
また、上述した第一乃至第四実施形態のガス検知器100はいずれも、第一支持板60が1つのピンホール7を有し、第二支持板61が22個のピンホール7を有するものであったが、支持板60,61に形成されるピンホール7の数は、支持板60,61の強度を確保でき、かつ通気性を確保できる範囲で適宜設定可能であり、上記の数に限定されない。
【0058】
また、上述した第一乃至第四実施形態のガス検知器100はいずれも、第一支持板60のピンホール7と、第二支持板61のピンホール7が、平面視にて、互いにずれた配置であったが、並ぶ配置であってもよく、透気性防水フィルター4が耐水圧性能と通気性を確保可能な配置であればよい。
【0059】
また、上述した第一乃至第四実施形態のガス検知器100はいずれも、感ガス体1に電力を間歇的に供給する制御を行う制御部を備えるものであったが、制御部による電力供給の制御は、上記の制御に限定されない。
【0060】
また、上記した第一乃至第四実施形態のガス検知器100はいずれも、ハウジング2は、第一ハウジング20と第二ハウジング21との2部材で構成されていたが、例えば、1つの部材や、3つ以上の部材によって構成されてもよい。
【0061】
<実験例>
ここで、透気性防水フィルターにおいて、ピンホールの数と防水性との関係を検証する実験を行った。
【0062】
透気性防水フィルターとして、2つの支持板(第一支持板,第二支持板)と、3つの多孔質膜(第一多孔質膜,第二多孔質膜,第三多孔質膜)とを用い、高水圧の水に近い側から、第一多孔質膜,第一支持板,第二多孔質膜,第二支持板,第三多孔質膜と順に重ねて配置した。
【0063】
支持板として、ステンレス製,板厚0.25mmの板材を用い、ピンホールは全てφ0.5mmとした。多孔質膜として、日東電工株式会社製の「TEMISH(登録商標);品番S−NTF2122A−S06J」を用いた。
【0064】
実験装置は、スウェージロック社製の継手(ステンレス鋼製おすコネクター,外径サイズ8mm;品番SS−8M0−1−4RT)の一方の端部側に、透気性防水フィルターを組み込んだ。実験方法として、継手において透気性防水フィルターとは反対側の端部から水圧を掛け、透気性防水フィルターに水がしみ出したときの水圧を測定した。以下、実験結果を示す。
【0065】
【表1】
【0066】
この表にも明らかなように、透気性防水フィルターとして、第一支持板のピンホール数を2つ以下にすると、より効果的な防水性能が得られることが分かった。なお、第二支持板のピンホール数を第一支持板のピンホール数よりも多くした場合に、透気性防水フィルターの通気性が向上した。
【0067】
以上説明した本発明の第一乃至第四実施形態の透気性防水フィルター4は、以下の構成を備えることを特徴とする。
【0068】
すなわち、第一乃至第四実施形態の透気性防水フィルター4は、高水圧下で使用されるガス検知器に用いられる透気性防水フィルター4である。透気性防水フィルター4は、透気性及び防水性を有する多孔質体5と、透気性を有し多孔質体5と重なって当該多孔質体5を支持する支持体6とを備える。
【0069】
上記の構成のように、第一乃至第四実施形態の透気性防水フィルター4は、透気性及び防水性を有する多孔質体5と、透気性を有する支持体6とを重ねたもので構成している。そのため、第一乃至第四実施形態の透気性防水フィルター4では、高水圧下の水からの力を受けて多孔質体5が変形することを支持体6によって抑制することができ、多孔質体5の防水性能が低下することを抑制することができる。したがって、第一乃至第四実施形態の透気性防水フィルター4は、高水圧下の水中のガスの検知に用いるガス検知器に採用可能なものとなっている。
【0070】
更に、第一乃至第四実施形態の透気性防水フィルター4は、上記の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0071】
すなわち、第一乃至第四実施形態の透気性防水フィルター4は、前記支持体6は、それぞれにピンホール7が設けられた2枚の支持板60,61であり、前記多孔質体5は、1枚の多孔質膜51である。2枚の支持板60,61の間には、1枚の多孔質膜51が位置している。
【0072】
上記の付加的な構成のように、第一乃至第四実施形態の透気性防水フィルター4は、透気性及び防水性を有する1枚の多孔質膜51を、ピンホール7付きの2枚の支持板60,61で挟み込んだもので構成している。そのため、第一乃至第四実施形態の透気性防水フィルター4では、高水圧下の水からの力を受けて多孔質膜51が変形することを2枚の支持板60,61によって抑制することができ、多孔質膜51の防水性能が低下することを抑制することができる。
【0073】
あるいは、第一乃至第四実施形態の透気性防水フィルター4は、上記の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0074】
すなわち、第一乃至第四実施形態の透気性防水フィルター4は、前記支持体6は、それぞれにピンホール7が設けられた2枚の支持板60,61であり、前記多孔質体5は、3枚の多孔質膜50,51,52であり、支持板と多孔質膜とが交互に位置するように重なっている。
【0075】
上記の付加的な構成のように、第一乃至第四実施形態の透気性防水フィルター4は、2枚の支持板60,61と3枚の多孔質膜50,51,52とが、支持板と多孔質膜とが交互に位置するように重なったものである。そのため、第一乃至第四実施形態の透気性防水フィルター4では、高水圧下の水からの力を受けて、3枚の多孔質膜50,51,52のそれぞれが変形することを、2枚の支持板60,61によって抑制することができ、3枚の多孔質膜50,51,52の防水性能が低下することを抑制することができる。
【0076】
更に、第一乃至第四実施形態の透気性防水フィルター4は、上記の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0077】
すなわち、第一乃至第四実施形態の透気性防水フィルター4では、2枚の支持板60,61は、一方の支持板60(61)に形成されたピンホール7と、他方の支持板61(60)に形成されたピンホール7とが、平面視において互いに位置がずれるように重なっている。
【0078】
上記の付加的な構成のように、第一乃至第四実施形態の透気性防水フィルター4は、2枚の支持板60,61のピンホール7が、直線上に並ばないため、防水性能の低下を更に抑制することができる。
【0079】
また、第一乃至第四実施形態のガス検知器100は、下記の構成を備えることを特徴とする。
【0080】
すなわち、第一乃至第四実施形態のガス検知器100は、高水圧下の水中のガスを検知するガス検知器100である。第一乃至第四実施形態のガス検知器100は、前記高水圧下の水中に通じるガス取込用流路3とこのガス取込用流路3に通じる検知室25とを内側に有するハウジング2と、高水圧下の水の浸入を遮断するようにガス取込用流路3に取り付けられた上述したいずれかの透気性防水フィルター4と、検知室25に配置された感ガス体1とを備える。
【0081】
上記の構成のように、第一乃至第四実施形態のガス検知器100は、透気性及び防水性を有する多孔質体5と透気性を有する支持体6とを重ねた透気性防水フィルター4を備えている。そのため、第一乃至第四実施形態のガス検知器100では、高水圧下の水からの力を受けて多孔質体5が変形することを支持体6によって抑制することができ、多孔質体5の防水性能が低下することを抑制することができる。したがって、第一乃至第四実施形態のガス検知器100では、高水圧下の水中のガスの検知を行うことができる。
【0082】
更に、第一乃至第四実施形態のガス検知器100は、上記の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0083】
すなわち、第一乃至第四実施形態のガス検知器100は、検知室25と外部空間とを通じさせる排気孔14を更に備える。
【0084】
上記の付加的な構成を備えることで、第一乃至第四実施形態のガス検知器100では、検知室25に次々と流入するガスを、排気孔14を通じて外部空間へと排気することができる。そのため、第一乃至第四実施形態のガス検知器100では、検知室25にて検知済のガスが検知室25から排出されず、新たに検知室25に流入したガスの検知が正確に行えなくなることを抑制することができる。
【0085】
更に、第一乃至第四実施形態のガス検知器100は、上記の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0086】
すなわち、第一乃至第四実施形態のガス検知器100は、感ガス体1に供給する電力を制御する制御部を更に備え、この制御部が、感ガス体1に間歇的に電力を供給する制御を行う。
【0087】
上記の付加的な構成のように、第一乃至第四実施形態のガス検知器100では、制御部により感ガス体1に電力を間歇的に供給するようにしたことで、ガス検知器100の駆動電力を極力抑えることができる。そのため、第一乃至第四実施形態のガス検知器100は、例えば、水道管に設置される水道メーター内に設置することができ、水道メーターを駆動する電池の電力を利用して、ガスの検知を行うことができる。
【0088】
また、第一乃至第四実施形態の透気性防水フィルター4では、支持体6は、それぞれにピンホールが設けられた複数の支持板60,61であり、前記複数の支持板60,61のうち、高水圧下の水に最も近い位置に配置される支持板60には、2つ以下のピンホール7が形成されている。そのため、第一乃至第四実施形態の透気性防水フィルター4は、2つ以下のピンホール7が形成された支持板60,61にて効果的に多孔質体5を支持することができて、防水性能の低下を更に抑制することができる。
【0089】
また、第一乃至第三実施形態のガス検知器100では、ハウジング2が、検知室25が内部に形成された第一ハウジング20と、ガス取込用流路3が形成され第一ハウジング20に着脱自在に取り付けられる第二ハウジング21とを備え、透気性防水フィルター4が、第一ハウジング20と第二ハウジング21とで挟持されて保持される。このため、第一乃至第三実施形態のガス検知器100によれば、透気性防水フィルター4の取り付け・交換を容易に行うことができる。
【0090】
以上、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 感ガス体
2 ハウジング
3 ガス取込用流路
4 透気性防水フィルター
5 多孔質体
6 支持体
7 ピンホール
14 排気孔
25 検知室
50 多孔質膜(第一多孔質膜)
51 多孔質膜(第二多孔質膜)
52 多孔質膜(第三多孔質膜)
60 支持板(第一支持板)
61 支持板(第二支持板)
100 ガス検知器
図1
図2
図3
図4
図5
図6