(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記マスクが形成された被処理物をエッチングする工程と、前記エッチングされた部分の断面形状を修正する工程と、を交互に実行させる請求項1記載のプラズマ処理装置。
前記載置部に載置された前記マスクが形成された被処理物の前記載置部に対峙する側の面に検出光を入射させ、前記マスクが形成された被処理物からの反射光に基づいて、エッチングレートの変化を求める検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記エッチングされた部分の断面形状を修正する工程において、前記検出部により求められた前記エッチングレートが所定の値以下となった場合には、前記エッチングされた部分の断面形状を修正する工程から前記マスクが形成された被処理物をエッチングする工程に切り換える請求項2記載のプラズマ処理装置。
前記マスクが形成された被処理物をエッチングする工程と、前記エッチングされた部分の断面形状を修正する工程と、を交互に実行する請求項4記載のプラズマ処理方法。
前記エッチングされた部分の断面形状を修正する工程において、エッチングレートが所定の値以下となった場合には、前記エッチングされた部分の断面形状を修正する工程から前記マスクが形成された被処理物をエッチングする工程に切り換える請求項5記載のプラズマ処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。
なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
また、被処理物100は、例えば、透光性を有する材料を含む基板とすることができる。
透光性を有する材料を含む基板は、例えば、石英ガラス基板などとすることができる。
石英ガラス基板に所定の溝を形成することで、例えば、インプリント法に用いられるテンプレートやレベンソン型位相シフトマスクなどを形成することができる。
なお、以下においては、一例として、被処理物100が石英ガラス基板である場合を例示する。
また、一例として、溝100cが形成される場合を例示するが、孔が形成される場合も同様とすることができる。
【0009】
図1は、本実施の形態に係るプラズマ処理装置1を例示するための模式断面図である。
図1に示すように、プラズマ処理装置1には、処理容器2、載置部3、電源部4、電源部5、減圧部6、第1ガス供給部7、第2ガス供給部8、検出部9および制御部10が設けられている。
【0010】
処理容器2は、本体部20および窓部21を有する。
本体部20は、略円筒形状を呈している。
本体部20は、例えば、アルミニウム合金などの金属から形成することができる。
また、本体部20は、接地されている。
【0011】
窓部21は、板状を呈し、本体部20の天板に設けられている。
窓部21は、電磁場を透過させることができ、プラズマ処理を行った際にエッチングされにくい材料から形成されている。
窓部21は、例えば、石英などの誘電体材料から形成することができる。
処理容器2は、大気圧よりも減圧された雰囲気を維持可能な気密構造となっている。
処理容器2の内部には、被処理物100をプラズマ処理するための空間である処理空間22が設けられている。
【0012】
本体部20には、被処理物100を搬入搬出するための搬入搬出口20aが設けられている。
搬入搬出口20aは、ゲートバルブ20bにより気密に閉鎖できるようになっている。 ゲートバルブ20bは、扉20b1およびシール部材20b2を有する。
シール部材20b2は、例えば、O(オー)リングなどとすることができる。
扉20b1は、図示しないゲート開閉機構により開閉される。
扉20b1が閉まった時には、シール部材20b2が搬入搬出口20aの近傍にある壁面に押しつけられ、搬入搬出口20aが気密に閉鎖されるようになっている。
【0013】
載置部3は、処理容器2の内部であって、処理容器2(本体部20)の底面の上に設けられている。
載置部3は、電極30、台座31、および絶縁リング32を有する。
電極30は、処理空間22の下方に設けられている。電極30の上面は被処理物100を載置するための載置面となっている。
電極30は、金属などの導電性材料から形成することができる。
【0014】
台座31は、電極30と、本体部20の底面の間に設けられている。
台座31は、電極30と、本体部20の間を絶縁するために設けられている。
台座31は、例えば、石英などの誘電体材料から形成することができる。
【0015】
絶縁リング32は、リング状を呈し、電極30および台座31の側面を覆うように設けられている。
絶縁リング32は、例えば、石英などの誘電体材料から形成することができる。
【0016】
また、載置部3には図示しない静電チャックなどの被処理物100を保持する機構を設けることもできる。
【0017】
電源部4は、電源40および整合器41を有する。
電源部4は、いわゆるバイアス制御用の高周波電源である。すなわち、電源部4は、載置部3に載置、保持された被処理物100に引き込むイオンのエネルギーを制御するために設けられている。
電極30と電源40は、整合器41を介して電気的に接続されている。
【0018】
電源40は、イオンを引き込むために適した比較的低い周波数(例えば、13.56MHz以下の周波数)を有する高周波電力を電極30に印加する。
整合器41は、電極30と電源40の間に設けられている。整合器41は、電源40側のインピーダンスと、プラズマP側のインピーダンスとの間で整合をとるための整合回路などを備えている。
【0019】
電源部5は、電極50、電源51、および整合器52を有する。
電源部5は、プラズマPを発生させるための高周波電源である。すなわち、電源部5は、処理空間22において高周波放電を生じさせてプラズマPを発生させるために設けられている。
本実施の形態においては、電源部5が、処理容器2の内部にプラズマPを発生させるプラズマ発生部となる。
電極50、電源51、および整合器52は、配線により電気的に接続されている。
【0020】
電極50は、処理容器2の外部であって、窓部21の上に設けられている。
電極50は、電磁場を発生させる複数の導体部と複数の容量部(コンデンサ)とを有したものとすることができる。
【0021】
電源51は、100KHz〜100MHz程度の周波数を有する高周波電力を電極50に印加する。この場合、電源51は、プラズマPの発生に適した比較的高い周波数(例えば、13.56MHzの周波数)を有する高周波電力を電極50に印加する。
また、電源51は、出力する高周波電力の周波数を変化させるものとすることもできる。
【0022】
整合器52は、電極50と電源51の間に設けられている。整合器52は、電源51側のインピーダンスと、プラズマP側のインピーダンスとの間で整合をとるための整合回路などを備えている。
【0023】
プラズマ処理装置1は、上部に誘導結合型電極を有し、下部に容量結合型電極を有する二周波プラズマエッチング装置である。
ただし、プラズマの発生方法は例示をしたものに限定されるわけではない。
プラズマ処理装置1は、例えば、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)を用いたプラズマ処理装置や、容量結合プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)を用いたプラズマ処理装置などであってもよい。
【0024】
減圧部6は、ポンプ60および圧力制御部61を有する。
減圧部6は、処理容器2の内部が所定の圧力となるように減圧する。
ポンプ60は、例えば、ターボ分子ポンプ(TMP:Turbo Molecular Pump)などとすることができる。
ポンプ60と圧力制御部61は、配管を介して接続されている。
【0025】
圧力制御部61は、処理容器2の内圧を検出する図示しない真空計などの出力に基づいて、処理容器2の内圧が所定の圧力となるように制御する。
圧力制御部61は、例えば、APC(Auto Pressure Controller)などとすることができる。
圧力制御部61は、配管を介して、本体部20に設けられた排気口20bに接続されている。
【0026】
第1ガス供給部7は、処理容器2の内部の処理空間22に第1ガスG1を供給する。
第1ガス供給部7は、ガス収納部70、ガス制御部71、および開閉弁72を有する。 ガス収納部70は、第1ガスG1を収納し、収納した第1ガスG1を処理容器2の内部に供給する。
ガス収納部70は、例えば、第1ガスG1を収納した高圧ボンベなどとすることができる。
ガス収納部70とガス制御部71は、配管を介して接続されている。
【0027】
ガス制御部71は、ガス収納部70から処理容器2の内部に第1ガスG1を供給する際に流量や圧力などを制御する。
ガス制御部71は、例えば、MFC(Mass Flow Controller)などとすることができる。
ガス制御部71と開閉弁72は、配管を介して接続されている。
開閉弁72は、配管を介して、処理容器2に設けられたガス供給口20cに接続されている。
開閉弁72は、第1ガスG1の供給と停止を制御する。
開閉弁72は、例えば、2ポート電磁弁などとすることができる。
なお、開閉弁72の機能をガス制御部71に持たせることもできる。
【0028】
第1ガスG1は、プラズマPにより励起、活性化された際に被処理物100を化学的にエッチングすることができる中性活性種(ラジカル)が生成されるものとすることができる。
なお、第1ガスG1に関する詳細は後述する。
【0029】
第2ガス供給部8は、処理容器2の内部の処理空間22に第2ガスG2を供給する。
第2ガス供給部8は、ガス収納部80、ガス制御部81、および開閉弁82を有する。 ガス収納部80は、第2ガスG2を収納し、収納した第2ガスG2を処理容器2の内部に供給する。
ガス収納部80は、例えば、第2ガスG2を収納した高圧ボンベなどとすることができる。
ガス収納部80とガス制御部81は、配管を介して接続されている。
【0030】
ガス制御部81は、ガス収納部80から処理容器2の内部に第2ガスG2を供給する際に流量や圧力などを制御する。
ガス制御部81は、例えば、MFC(Mass Flow Controller)などとすることができる。
ガス制御部81と開閉弁82は、配管を介して接続されている。
開閉弁82は、配管を介して、処理容器2に設けられたガス供給口20cに接続されている。
開閉弁82は、第2ガスG2の供給と停止を制御する。
開閉弁82は、例えば、2ポート電磁弁などとすることができる。
なお、開閉弁82の機能をガス制御部81に持たせることもできる。
【0031】
第2ガスG2は、プラズマPにより励起、活性化された際に被処理物100を化学的にエッチングすることができる中性活性種が生成されないものとすることができる。
なお、第2ガスG2に関する詳細は後述する。
また、2種類のガスを供給する場合を例示したが、ガス収納部、ガス制御部、および開閉弁を3組以上設けて3種類以上のガスを供給するようにしてもよい。
【0032】
検出部9は、被処理物100のエッチング処理が施される側の面(溝100cが形成される側の面)とは反対側の面に対して垂直な方向から検出光L1を入射させる。また、検出部9は、底面100aからの反射光L2に基づいて底面100aの位置の変化、ひいてはエッチングレートの変化を演算する。
なお、検出部9に関する詳細は後述する。
【0033】
制御部10は、プラズマ処理装置1に設けられた各要素の動作を制御する。
制御部10は、例えば、ゲートバルブ20bに設けられた図示しないゲート開閉機構を制御して、扉20b1を開閉させる。
制御部10は、例えば、載置部3に設けられた図示しない保持機構を制御して、載置された被処理物100の保持と解放を行わせる。
制御部10は、例えば、電源40および整合器41を制御して、バイアス制御用の高周波電力を電極30に印加させる。
【0034】
制御部10は、例えば、電源51および整合器52を制御して、プラズマP発生用の高周波電力を電極50に印加させる。
制御部10は、例えば、処理容器2の内圧を検出する図示しない真空計などの出力に基づいて、圧力制御部61を制御して、処理容器2の内部が所定の圧力となるように減圧させる。
【0035】
制御部10は、例えば、ガス制御部71を制御して、処理空間22に供給する第1ガスG1の流量や圧力などを制御させる。
制御部10は、例えば、開閉弁72を制御して、第1ガスG1の供給と供給の停止を行わせる。
制御部10は、例えば、ガス制御部81を制御して、処理空間22に供給する第2ガスG2の流量や圧力などを制御させる。
制御部10は、例えば、開閉弁82を制御して、第2ガスG2の供給と供給の停止を行わせる。
この場合、第2ガスG2は常時供給するようにしてもよい。
後述する様に、制御部10は、第1ガス供給部7を制御して、第1ガスG1を供給し、生成された中性活性種により被処理物100をエッチングする工程(以降、被処理物100をエッチングする工程と称する)と、第1ガスG1の供給を停止または供給量を減少させてエッチングされた部分の断面形状を修正する工程(以降、エッチングされた部分の断面形状を修正する工程と称する)と、を実行させる。
この場合、制御部10は、被処理物100をエッチングする工程と、エッチングされた部分の断面形状を修正する工程と、を交互に実行させることができる。
制御部10は、エッチングされた部分の断面形状を修正する工程において、検出部9により求められたエッチングレートが所定の値以下となった場合には、エッチングされた部分の断面形状を修正する工程から被処理物100をエッチングする工程に切り換える。
【0036】
次に、検出部9についてさらに説明する。
図2は、検出部9を例示するための模式図である。
図2に示すように、検出部9には窓部90、接続部91、レンズ92、ホルダ93、伝送部94、光源95、分光部96、演算部97が設けられている。
検出部9は、載置部3に載置された被処理物100の載置部3に対峙する側の面に検出光L1を入射させ、被処理物100からの反射光L2に基づいて、エッチングレートの変化を求める。
【0037】
窓部90は、石英などの透光性を有する材料から形成され、電極30の内部に設けられている。また、窓部90の一端は電極30の上面から露出し、他端は接続部91の端部に接続されている。
接続部91は、軸方向の端面間を貫通する段付きの孔部91aを有している。孔部91aの一方の開口部には窓部90が設けられ、孔部91aの他方の開口部近傍にはホルダ93が保持されている。
【0038】
ホルダ93は、軸方向の端面間を貫通する段付きの孔部93aを有し、一方の端部近傍が接続部91に保持されている。接続部91に保持される側の孔部93aの開口部近傍にはレンズ92が設けられている。また、接続部91に保持される側とは反対側の孔部93aの開口部近傍には伝送部94が保持されている。
レンズ92は、検出光L1、反射光L2を集光する。例えば、レンズ92は、伝送部94から出射された検出光L1を被処理物100における検出位置に集光させる。また、レンズ92は、被処理物100からの反射光L2を集光して伝送部94に入射させる。なお、1つのレンズ92が設けられる場合を例示したがこれに限定されるわけではない。例えば、複数のレンズが設けられたり、フィルタなどの他の光学要素などが設けられたりすることもできる。なお、レンズ92は、伝送部94を検出位置に接近させるようにして設置すれば設けなくてもよい。
【0039】
伝送部94は、検出光L1、反射光L2を伝送する。例えば、伝送部94は、光源95から出射した検出光L1を伝送し、レンズ92に向けて出射する。また、伝送部94は、レンズ92から出射した反射光L2を伝送し、分光部96に向けて出射する。伝送部94は、例えば、光ファイバーなどを用いたものとすることができる。
【0040】
光源95は、検出光L1を出射する。検出光L1は、波長が400nm以下の光、例えば、紫外光とすることができる。光源95は、例えば、高い光量を有する紫外光を出射することができる水銀キセノンランプを備えたものとすることができる。
【0041】
分光部96は、入射した反射光L2から特定の波長の光を分離する。光源95から出射する検出光L1の波長を単一のものとすることが難しい場合がある。その様な場合には、分光部96により特定の波長の光を分離するようにすれば、検出精度を向上させることができる。なお、分光部96は必ずしも必要ではなく、必要に応じて設けるようにすればよい。
【0042】
演算部97は、反射光L2のうち、分光部96により分離された光に基づいて、底面100aの位置の変化、ひいてはエッチングレートを演算する。また、演算部97は、例えば、所定の時間毎にエッチングレートを演算することでエッチングレートの変化を求める。求められたエッチングレートの変化に関する情報は、プラズマ処理装置1の動作を制御する制御部10に送られる。
制御部10は、エッチングレートの変化に関する情報に基づいて、後述する工程の切り換え時期を判断し、工程の切り換えを実行する。
なお、演算部97の機能を制御部10に持たせることもできる。
【0043】
図3は、検出部9の作用を例示するための模式断面図である。
被処理物100は、石英などの透光性を有する材料から形成されている。
被処理物100のエッチング処理が施される側の面には、ハードマスク(エッチングマスク)101が設けられている。
ハードマスク101は、クロムなどの金属を含み、被処理物100に所望の溝100cを形成するためのパターンを有する。
ハードマスク101により覆われた領域はエッチングされず、ハードマスク101から露出した領域はエッチングされる。そのため、ハードマスク101から露出した領域に所望の溝100cを形成することができる。
【0044】
ここで、
図3に示すように、被処理物100の主面に対して傾いた方向から検出光L3を入射させると、底面100aを透過した光が溝100cの側壁面100bやハードマスク101の側面などにおいて反射される。そのため、底面100aからの反射光に、溝100cの側壁面100bやハードマスク101の側面などからの反射光が混入するおそれがある。
【0045】
近年においては、被処理物100に形成される溝100cが微細化される傾向にあり、被処理物100の主面に対して傾いた方向から検出光L3を入射させると底面100a以外からの反射光の影響が大きなものとなる。そのため、検出精度が悪化して、後述する工程の切り換えタイミングがずれるおそれがある。
【0046】
そこで、検出部9においては、被処理物100の主面に対して垂直な方向から検出光L1を入射させるようにしている。被処理物100の主面に対して垂直な方向から検出光L1を入射させれば、溝100cの側壁面100bやハードマスク101の側面などからの反射光による影響を抑制することができる。なお、
図3においては、検出光L1のうち、底面100aに入射するものを検出光L11、ハードマスク101に入射するものを検出光L12としている。また、反射光L2のうち、底面100aからのものを反射光L21、ハードマスク101からのものを反射光L22としている。
【0047】
この場合、ハードマスク101により覆われた領域はエッチングされないので、ハードマスク101からの反射光L22の位相の変化は極めて少ないことになる。一方、底面100aはエッチングされることによりその位置が変化するため、底面100aからの反射光L21の位相は変化することになる。この場合、反射光L2は、反射光L21と反射光L22とにより干渉光となる。
【0048】
次に、エッチングレートの演算方法を例示する。
反射光L2の一周期Tの間にエッチングされた量Hは以下の式で求めることができる。
【数1】
ここで、Hは反射光L2の一周期Tの間にエッチングされる量、Sは検出光L1の波長、nは被処理物100の屈折率である。
反射光L2の一周期Tにおける処理時間と、エッチングされた量Hとからエッチングレートを演算することができる。
また、例えば、所定の時間毎にエッチングレートの演算を行うことでエッチングレートの変化を求めることができる。
【0049】
すなわち、演算部97は、反射光L2の強度変化、変化時間などから反射光L2の一周期Tの間にエッチングされた量Hを演算し、反射光L2の一周期Tにおける処理時間と演算されたエッチングされた量Hとからエッチングレートを演算する。
また、演算部97は、例えば、所定の時間毎にエッチングレートの演算を行うことでエッチングレートの変化を求める。
【0050】
次に、被処理物100における溝100cの形成(エッチング処理)についてさらに説明する。
被処理物100が石英ガラス基板である場合には、第1ガスG1は、例えば、炭素原子とフッ素原子を有するガスとすることができる。
例えば、第1ガスG1は、CHF
3、CF
4、C
4F
8などとすることができる。
そのため、第1ガスG1をプラズマPにより励起、活性化すると、被処理物100を化学的にエッチングすることができる中性活性種が生成される。
【0051】
ここで、中性活性種による化学的なエッチングは、等方性を有するエッチングであるため、溝100cの深さ方向と、溝100cの深さ方向に直交する方向において、ほぼ同量のエッチングが行われる。
また、溝100cの底部側には中性活性種が到達し難いので、溝100cの側壁面100bは傾斜面となる。(
図5(a)を参照)
そのため、第1ガスG1を用いてエッチング処理を施せば、溝100cの断面形状が所定のものとなるように制御することが困難となる。
【0052】
ここで、本発明者らの得た知見によれば、処理空間22に含まれる第1ガスG1の量が多ければ第1ガスG1から多くの種類の中性活性種が生成される。中性活性種の種類が多ければ、等方性を有するエッチングとなりやすくなる。
一方、処理空間22に含まれる第1ガスG1の量(濃度)を極めて少なくすれば、第1ガスG1から生成される中性活性種の種類が少なくなる。そのため、異方性を有するエッチングとなりやすくなる。
【0053】
例えば、第1ガスG1がCHF
3の場合、処理空間22に含まれる第1ガスG1の量が少なければ生成された中性活性種全体に占めるCF3ラジカルの割合が多くなり、処理空間22に含まれる第1ガスG1の量が多ければ生成された中性活性種全体に占めるCF3ラジカルの割合が少なくなる。CF3ラジカルの割合が多くなれば、異方性を有するエッチングとなりやすくなる。
【0054】
そのため、処理空間22に含まれる第1ガスG1の量を変化させることで、等方性を有するエッチングと、異方性を有するエッチングとを切り換えることができる。
すなわち、処理空間22に含まれる第1ガスG1の量を極めて少なくすれば、異方性を有するエッチングとすることができる。
そして、異方性を有するエッチングにより、傾斜面となっている側壁面100bを除去することで、溝100cの断面形状が所定のものとなるように修正することができる。(
図5(b)を参照)
ただし、処理空間22に含まれる第1ガスG1の量を極めて少なくすれば、プラズマPの維持が困難となる。
そのため、処理空間22に含まれる第1ガスG1の量を極めて少なくする際には、第1ガスG1の供給を停止もしくは供給量を減少させるとともに、第2ガスG2を供給するようにしている。
【0055】
この場合、第2ガスG2を常時供給し、第1ガスG1の供給と、供給の停止(もしくは供給量の減少)を行うようにしてもよい。
【0056】
第2ガスG2は、主に、プラズマPの維持のために供給される。
そのため、第2ガスG2は、プラズマPにより励起、活性化された際に被処理物100を化学的にエッチングすることができる中性活性種が生成されないものとしている。
例えば、第2ガスG2は、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどとすることができる。
【0057】
ここで、第1ガスG1の供給を停止すれば、中性活性種が生成されずエッチングが進まないように思える。
しかしながら、処理空間22には第1ガスG1が残留しているのでしばらくの間は中性活性種が生成される。また、溝100cの側壁面100bには、フッ素などを含む副生成物が付着しており、副生成物が分解することで被処理物100がエッチングされる成分が生成される。
そのため、第1ガスG1の供給を停止もしくは供給量を極めて少なくしても、エッチングが進むことになる。
この場合、第2ガスG2は、残留する第1ガスG1から生成された中性活性種を被処理物100に搬送するキャリアガスの機能をも有することになる。
【0058】
ただし、第1ガスG1の供給を停止もしくは供給量を極めて少なくすれば、エッチングレートは徐々に低下することになる。
そのため、溝100cの深さをさらに深くしたい場合には、被処理物100をエッチングする工程に切り換えて、以降は前述した工程を交互に繰り返す様にすればよい。
【0059】
前述した工程を交互に繰り返す場合、エッチングされた部分の断面形状を修正する工程における処理時間が長くなると、生産効率の低下が顕著になるおそれがある。
また、エッチングされた部分の断面形状を修正する工程における処理時間が長くなると、第2ガスG2から生成されたイオンによりハードマスク101にダメージが発生するおそれがある。
一方、エッチングされた部分の断面形状を修正する工程における処理時間が短すぎると、溝100cの断面形状が所定のものとなるように修正することが困難となる。
【0060】
この場合、エッチングされた部分の断面形状を修正する工程から、被処理物100をエッチングする工程への切り換えは、エッチングレートの変化、すなわち、エッチングレートの低下に基づいて判断することができる。
【0061】
図4は、工程の切り換えを例示するための模式図である。
図4中における0からT1の期間、T2からT3の期間は、被処理物100をエッチングする工程である。
T1からT2の期間、T3からT4の期間は、エッチングされた部分の断面形状を修正する工程である。
図4中における線の傾きがエッチングレートとなる。
【0062】
例えば、被処理物100を石英ガラス基板、第1ガスG1をCHF
3、第2ガスG2を窒素ガス、被処理物100をエッチングする工程におけるエッチングレートをαとした場合に、
図4に示すように、エッチングされた部分の断面形状を修正する工程におけるエッチングレートが0.9・αとなった時点で、被処理物100をエッチングする工程へ切り換えるようにすることができる。
この様にすれば、形成される溝100cの断面形状の精度を向上させることができ、かつ、生産効率の向上を図ることができる。
【0063】
図5(a)、(b)は、溝100cの形成を例示するための模式工程断面図である。
前述したように、被処理物100をエッチングする工程においては、等方性を有するエッチングが行われる。
この場合、溝100cの底部側には中性活性種が到達し難いので、溝100cの断面形状は、
図5(a)に示すように台形となる。すなわち、溝100cの側壁面100bは傾斜面となる。
【0064】
エッチングされた部分の断面形状を修正する工程においては、異方性を有するエッチングが行われる。
そのため、異方性を有するエッチングにより、溝100cの側壁面100bが除去されて、
図5(b)に示すように、傾斜角度θを
小さくすることができる。
すなわち、溝100cの断面形状が所定のものとなるように修正することができる。
そして、前述した工程を交互に繰り返すことで、所定の断面形状を有し、深さの深い溝100cを形成することができる。
また、本発明者らの得た知見によれば、被処理物100が石英ガラス基板の場合には、第1ガスG1をCHF3、第2ガスを窒素ガスとすれば、断面形状の制御が容易となる。
【0065】
次に、プラズマ処理装置1の作用とともに本実施の形態に係るプラズマ処理方法について例示をする。
ゲートバルブ20bの扉20b1を、図示しないゲート開閉機構により開く。
図示しない搬送部により、搬入搬出口20aから被処理物100を処理容器2内に搬入する。搬入された被処理物100は載置部3上に載置され、載置部3に内蔵された図示しない静電チャックなどにより保持される。
被処理物100のエッチング処理が施される側の面には、ハードマスク101が設けられている。
【0066】
図示しない搬送部を処理容器2の外に退避させる。
図示しないゲート開閉機構によりゲートバルブ20bの扉20b1を閉じる。
減圧部6により処理容器2内が所定の圧力となるように減圧される。この際、処理容器2の内圧を検出する図示しない真空計などの出力に基づいて、処理容器2の内圧が所定の圧力となるように圧力制御部61により制御される。
【0067】
次に、第1ガス供給部7から処理容器2内の処理空間22に第1ガスG1を供給する。 次に、電源51により所定の周波数(例えば、13.56MHzの周波数)を有する高周波電力が電極50に印加される。また、電源41により所定の周波数(例えば、13.56MHz以下の周波数)を有する高周波電力が電極30に印加される。
【0068】
すると、電極50が誘導結合型電極を構成するので、窓部21を介して電磁場が処理容器2の内部に導入される。そのため、処理容器2の内部に導入された電磁場により処理空間22にプラズマPが発生する。発生したプラズマPにより第1ガスG1が励起、活性化されて中性活性種が生成される。生成された中性活性種は、処理空間22内を下降して被処理物100の表面に到達し、等方性を有するエッチング処理が施される。
【0069】
所定の時間の経過後、または、検出部9により検出されたエッチング量に基づいて、被処理物100をエッチングする工程から、エッチングされた部分の断面形状を修正する工程に切り換える。
【0070】
すなわち、第1ガス供給部7により第1ガスG1の供給を停止もしくは供給量を極めて少なくする。
この場合、第1ガスG1の供給を停止もしくは供給量を極めて少なくすることに併せて第2のガスG2を供給することもできるが、第2のガスG2は常時供給することもできる。
すると、等方性を有するエッチングから、異方性を有するエッチングに切り換わり、溝100cの断面形状が所定のものとなるように修正される。
【0071】
また、必要に応じて、前述した工程を交互に繰り返すことができる。
この場合、エッチングされた部分の断面形状を修正する工程から、被処理物100をエッチングする工程への切り換えは、エッチングレートの変化、すなわち、エッチングレートの低下に基づいて判断することができる。
【0072】
検出部9は、底面100aからの反射光L2に基づいて底面100aの位置の変化、ひいてはエッチングレートの変化を演算する。
制御部10は、演算されたエッチングレートの変化に関する情報に基づいて、工程の切り換えを行う。
【0073】
以上に説明したように、本実施の形態に係るプラズマ処理方法は、以下の工程を備えることができる。
第1ガスG1から生成された中性活性種により、被処理物100をエッチングする工程。
第1ガスG1の供給を停止または供給量を減少させてエッチングされた部分の断面形状を修正する工程。
【0074】
この場合、被処理物100をエッチングする工程と、エッチングされた部分の断面形状を修正する工程とを交互に実行することができる。
エッチングされた部分の断面形状を修正する工程において、エッチングレートが所定の値以下となった場合には、エッチングされた部分の断面形状を修正する工程から被処理物100をエッチングする工程に切り換えることができる。
【0075】
以上、実施の形態について例示をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、プラズマ処理装置1が備える各要素の形状、寸法、材質、配置、数などは、例示をしたものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
例えば、本実施形態においては、干渉光の強度変化をモニタすることによりエッチングレートを求めたが、他の実施形態として、事前に取得したスペクトルデータと、モニタしているスペクトルデータを比較することによってエッチングレートを求めるようにしてもよい。