特許第6552887号(P6552887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552887
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】耐震補強方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20190722BHJP
【FI】
   E04G23/02 F
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-128398(P2015-128398)
(22)【出願日】2015年6月26日
(65)【公開番号】特開2017-8684(P2017-8684A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】熊野 豪人
(72)【発明者】
【氏名】佐分利 和宏
(72)【発明者】
【氏名】福垣 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】和田 佳奈美
(72)【発明者】
【氏名】藤井 康平
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 隆範
【審査官】 村田 泰利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−214261(JP,A)
【文献】 特開平10−238133(JP,A)
【文献】 特開2000−303701(JP,A)
【文献】 特開2013−221331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/00−23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存建物の柱梁架構の複数の開口部の外側に、表面にボルト接合部がない枠付耐震補強体を配置する工程と、
前記柱梁架構の梁の外面に補強鉄筋を配筋する工程と、
前記補強鉄筋を型枠で囲み、梁増打空間を仕切る工程と、
前記梁増打空間に充填材を充填して梁増打補強部を形成し、前記梁増打補強部に前記枠付耐震補強体を固定する工程と、
を有する耐震補強方法。
【請求項2】
複数の前記枠付耐震補強体は、いずれも同じ高さに形成され、
前記梁増打補強部の上面位置を調整して、前記梁増打補強部に前記枠付耐震補強体を固定する、
請求項1に記載の耐震補強方法。
【請求項3】
上側の前記枠付耐震補強体の下面と、下側の前記枠付耐震補強体の上面は、前記梁の外面に固定された連結部材に連結されている、
請求項1又は2に記載の耐震補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐震補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存建物を耐震改修する際には、柱梁架構の開口部を、建物の外側から枠付ブレースで補強する方法が広く採用されている。このとき、一般的には、運搬等施工条件の制約等から、枠付ブレースを現場でボルト接合していた。このため、ブレース表面のボルト接合部が建物の外側から見えることとなり、建物の外観デザイン的な観点から改善が望まれていた。
ボルト接合部を見せなくする枠付ブレースの取付け方法には、例えば、枠付ブレースの接合部を、現場で溶接接合する方法がある。しかし、この方法では、溶接作業が増えて工期が長くなる。
工期の短縮を図るため、一体化された枠付ブレースを現場へ運搬し、既存建物の柱梁架構の開口部に取り付ける方法が検討されている。
枠付ブレースで既存建物を耐震補強する技術には、例えば特許文献1がある。
【0003】
特許文献1は、ブレースと枠材が一体化された枠付ブレースを、既存建物の柱と梁で区画された開口部の内周面に枠体ごと嵌め込んで、柱及び梁の側面から内側へ突出させたアンカー筋で、枠付ブレースを柱と梁に接合する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−221331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1は、開口部の内周面に、枠付ブレースを枠体ごと嵌め込む構成のため、高さが異なる開口部が存在する建物の場合には、サイズの異なる枠付ブレースを、それぞれ準備する必要がある。即ち、枠付ブレースの多様な品揃えが必要となる。
また、枠付ブレースの寸法を大きくし過ぎると、運搬時の寸法制約等から、枠付ブレースをトラックで運搬できなくなる場合がある。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑み、一定サイズの枠付ブレースで多様な高さの開口部に取付けることができると共に、外観デザインを向上させる耐震補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明に係る耐震補強方法は、既存建物の柱梁架構の複数の開口部の外側に、表面にボルト接合部がない枠付耐震補強体を配置する工程と、前記柱梁架構の梁の外面に補強鉄筋を配筋する工程と、前記補強鉄筋を型枠で囲み、梁増打空間を仕切る工程と、前記梁増打空間に充填材を充填して梁増打補強部を形成し、前記梁増打補強部に前記枠付耐震補強体を固定する工程とを有している。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、既存建物の柱梁架構の複数の開口部の外側に、ボルト接合部がない枠付耐震補強体がそれぞれ配置される。また、梁の外面の梁増打空間には、補強鉄筋が取付けられ、補強鉄筋を囲む型枠の内部に充填された充填材で、梁増打補強部が形成される。
これにより、梁増打補強部で、既存建物の柱梁架構が耐震補強されると共に、枠付耐震補強体が梁増打補強部に固定される。また、表面にボルト接合部がない枠付耐震補強体で、既存建物が耐震補強されるので、従来の補強方法に比べ、耐震補強された建物の外観デザインを向上させることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の耐震補強方法において、複数の前記枠付耐震補強体は、いずれも同じ高さに形成され、前記梁増打補強部の上面位置を調整して、前記梁増打補強部に前記枠付耐震補強体を固定している。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、複数の枠付耐震補強体は、いずれも同じ高さに形成されている。そして、複数の開口部の中に、他の開口部と高さが異なる開口部があっても、梁増打補強部の上面位置を調整することで、梁増打補強部に枠付耐震補強体を固定することができる。
これにより、一定サイズの枠付耐震補強体で、開口部の多様な高さに対応することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の耐震補強方法において、上側の前記枠付耐震補強体の下面と、下側の前記枠付耐震補強体の上面は、前記梁の外面に固定された連結部材に連結されている。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、梁の外面に固定された連結部材により、上側の枠付耐震補強体の下面と、下側の枠付き耐震補強体の上面が連結された状態で、梁の外面に固定される。
これにより、枠付耐震補強体を、建物の外壁に複数取付けておき、その後、枠付耐震補強体の間を増し打ち補強することができる。即ち、枠付耐震補強体の取付け工程と、梁の増打補強の工程を分けることができるので、施工性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上記構成としてあるので、一定サイズの枠付ブレースで多様な高さの開口部に取付けることができると共に、外観デザインを向上させる耐震補強方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る耐震補強方法による施工工程を示す正面図である。
図2】(A)は、本発明の実施形態に係る柱梁架構を示す正面図であり、(B)は、図2(A)のZ1−Z1線断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る柱梁架構を示す、図2(A)のX1−X1線断面図である。
図4】(A)は、本発明の実施形態に係る耐震補強方法の施工段階を示す正面図であり、(B)は、図4(A)のZ1−Z1線断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る図4(A)のX1−X1線断面図である。
図6】(A)は、本発明の実施形態に係る耐震補強方法の施工段階を示す正面図であり、(B)は、図6(A)のZ1−Z1線断面図である。
図7】本発明の実施形態に係る図1(A)のX2−X2線断面図である。
図8】(A)は、本発明の実施形態に係る耐震補強方法の施工段階を示す正面図であり、(B)は、図8(A)のZ1−Z1線断面図である。
図9】本発明の実施形態に係る耐震補強方法による施工工程を示す図8のX3−X3線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る耐震補強方法について、図1図9を用いて説明する。
ここで、図1は、既存建物14の柱梁架構20を外側から見た正面図であり、耐震補強方法で構築された耐震補強体10の複数の施工工程を、上部から下部へ順に示している。
図2(A)、(B)、及び図3は、柱梁架構20の基本構成を示している。
図4(A)、(B)、及び図5は、柱梁架構20に枠付ブレース12を取付けた状態を示し、図6(A)、(B)、及び図7は、柱梁架構20に補強鉄筋28、枠付ブレース12を取付けた状態を示している。
図8(A)、(B)、及び図9は、柱梁架構20の外側にコンクリートを打設し、梁増打補強部32を構築し、耐震補強体10を完成させた状態を示している。
【0016】
本実施形態に係る耐震補強方法による耐震補強体10の構築を、以下、工程順に説明する。耐震補強方法は、先ず、既存建物14の柱梁架構20の複数の開口部21の外側に、表面にボルト接合部がない枠付ブレース(枠付耐震補強体)12を配置する。
【0017】
図1図2(A)、(B)、図3に柱梁架構20を示す。
既存建物14は、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造とされ、複数階を有している。柱梁架構20は、既存建物14の外周部の柱梁架構である。
柱梁架構20は、既存の柱16と既存の梁17で構成されている。梁17には、壁体19が、所定の高さで梁17の上方及び下方へ構築され、梁17と壁体19で外壁構造体18を構成している。壁体19は、梁17の建物外側に設けられている。
【0018】
図2(A)、(B)、図3に、耐震補強体10が補強する開口部21を示す。開口部21は、隣り合う柱16の間(内法寸法W1)と、上下の梁17の間(内法寸法H3)に形成された空間である。開口部21を耐震補強することで、柱梁架構20の耐震強度を高めることができる。
【0019】
また、上下の外壁構造体18の間には、内法寸法H1で窓開口部22が設けられている。窓開口部22は、開口部21より小さな開口部であり(H3>H1)、上下の壁体19の間に、図示しない窓部材が取付けられる。
既存建物14の柱梁架構20は、平面視において、外壁構造体18の外面18Fより、柱16の外面16Fが、距離Y1だけ突出した構成である(図2(B)参照)。
【0020】
図1の施工工程に示すように、耐震補強体10は、内法寸法W1をあけて建てられた既存の柱16の側面16Sと、外壁構造体18の外面18Fとで形成された凹部(段差部)を利用して、凹部を埋める構成で構築されている。
なお、図1には、耐震補強体10の一部分しか表示されていない。耐震補強体10は、必要に応じて、高さ方向には、既存建物14の最下部から最上階まで構築され、横方向には、既存建物14の周囲を囲んで構築されている。
【0021】
耐震補強体10は、枠付ブレース12と、後述する梁増打補強部32を有している。
図1図4(A)、(B)に枠付ブレース12の外観、及び柱梁架構20への取付状態を示す。
【0022】
枠付ブレース12は、矩形状に形成された枠体(縦枠材26V、横枠材26H)26の内周面に、一対のブレース(耐震要素)24を取付けた構成である。
枠体26は鋼材製とされ、高さH2は、窓開口部22の高さH1より大きく、幅W2は、窓開口部22の内法寸法W1より小さい外形寸法で形成されている。
【0023】
ブレース24は鋼材製とされ、一対のブレース24が、枠体26の内周面に斜めに固定されている。ブレース24は、途中で切断されることなく、枠体26に固定されている。この結果、ブレースの表面には、ボルト接合部は設けられていない。
【0024】
枠付ブレース12は、窓開口部22の外側であり窓開口部22を覆う位置に、外壁構造体18の外面18Fと並行に配置されている。枠付ブレース12は、窓開口部22からの眺望を極力確保して、開口部21を耐震補強する。
【0025】
一対のブレース24の下端部は、枠体26の下側の両方の角部にそれぞれ固定され、上端部は、上側の横枠材26Hの中央部に、それぞれ固定されている。これにより、一対のブレース24と下側の横枠材26Hで、上に凸の三角形が形成されている。
なお、ブレース24の固定形状は、上に凸の三角形に限定されることはなく、耐震強度が確保できれば、例えば、下に凸の三角形等、他の取付け形状であってもよい。
【0026】
枠付ブレース12は、中央部が窓開口部22を覆い、枠付ブレース12の下側の横枠材26Hが、下側の既存の外壁構造体18の外面18Fと距離をあけて平行に配置され、上側の横枠材26Hが、上側の既存の外壁構造体18の外面18Fと距離をあけて平行に配置されている。
また、縦枠材26Vは、柱16の側面16Sと並行に、柱16の側面16Sと距離W4をあけて配置されている。
【0027】
即ち、枠体26の幅W2は、隣り合う柱16の側面16Sの距離W1より小さく、柱16の側面16Sとの間には、両側に、それぞれ距離W4の隙間が設けられている。また、枠体26の高さH2は、窓開口部22の高さ(上下の外壁構造体18間の距離)H1より大きくされている。
これにより、枠付ブレース12は、幅方向を、隣り合う柱16の側面16Sの間に挿入し、高さ方向を、上側の外壁構造体18の下端部、及び下側の外壁構造体18の上端部と重複させることができる(図9参照)。
【0028】
この結果、開口部21の高さH3が、既存建物14の場所により、他の場所と高さが異なっていても、同じ寸法(高さH2)で形成された枠付ブレース12を、窓開口部22の高さH1を利用して、全ての窓開口部22に配置することができる。即ち、開口部21の高さが異なっても、それぞれの高さに合わせた枠付ブレース12を必要としない。
【0029】
枠付ブレース12は、高さ方向に、柱16に沿って複数個が配置された状態で、支柱(連結部材)30で仮止めされる。
図1図5に示すように、支柱30は、上側の枠付ブレース12と下側の枠付ブレース12との間に、柱16に沿って鉛直方向の2カ所に配置される。
支柱30は、H形鋼等の支持剛性が高い部材で形成され、外壁構造体18の外面18Fから、距離Y4だけ離れた位置に外面18Fと平行に固定される。
【0030】
支柱30は、梁17にアンカーボルト36で取付けられたベースプレート60と、支柱30に取付けられたガセットプレート62を、自由端側で重ね合わせ、図示しない貫通孔を一致させて、高力ボルト64で接合することで梁17に固定される。
【0031】
支柱30は、枠付ブレース12と同じY軸上の平面上であり、上側の枠付ブレース12と、下側の枠付ブレース12の枠体26の、縦枠材26Vの延長線上に設けられている。
上側の枠付ブレース12の下端部と下側の枠付ブレース12の上端部は、梁17に固定された支柱30の上端部と下端部に、それぞれ軸線を一致させて連結される。
これにより、外壁構造体18の外側に、枠付ブレース12が取付けられる。
【0032】
次に、柱梁架構20の梁17の外面18Fに補強鉄筋28を配筋する。
【0033】
図1図6(A)、(B)、図7に、補強鉄筋28が配筋された状態を示す。なお、図7は、コンクリート(充填材)34を打設した状態を示している。補強鉄筋28は、梁17の外面18Fと、上側に配置された枠付ブレース12の下面と、下側に配置された枠付ブレース12の上面との間の梁増打空間に配筋される。
補強鉄筋28は、所定の間隔で横方向に複数本が渡された主筋42と、所定の間隔で縦方向に複数本が渡され、主筋42を囲んで固定するあばら筋44と、を有している。
【0034】
主筋42の両端部は、支柱30を横方向に貫通して、柱16の側面16Sの間に渡される(図3参照)。ここに、支柱30は、フランジ面を梁17の外面18Fと並行に向け、ウェブ52には、高さ方向に複数の開口部54が設けられている。即ち、横方向にはしご状にウェブ52が切り残されているので、主筋42は、はしご状に切り残されたウェブ52を利用して、主筋42とあばら筋44を配筋することができる。これにより、配筋作業の効率を高めることができる。
【0035】
梁17には、複数のアンカーボルト38が埋め込まれ、補強鉄筋28はアンカーボルト38と接合されている。また、上側に配置された枠付ブレース12の下面と、下側に配置された枠付ブレース12の上面との間には、定着筋68が渡されている。
なお、図示は省略するが、柱16の側面16Sにはアンカーボルトが埋め込まれ、枠付ブレース12の縦枠材26Vと、柱16の側面16Sとの間には、スパイラル筋66が配筋される。これにより、枠付ブレース12と柱梁架構20との接合をより強くすることができる。
【0036】
次に、補強鉄筋28を型枠46、48で囲み、梁増打空間を仕切る。
【0037】
図1図7に示すように、補強鉄筋28の配筋後に型枠46、48を取付ける。型枠46は補強鉄筋28の外側に取付けられ、型枠48は補強鉄筋28の下側に取付けられる。型枠46、48により、周囲の空間と梁増打空間58が仕切られる。
型枠46、48は、いずれも、柱16の側面16Sの間に横方向(X軸方向)に渡されている。型枠46の上端部は、上側の枠付ブレース12の下面とラップされ、型枠46の下端部は、下側の枠付ブレース12の上面とラップされる。また、型枠48のY軸方向の一方の端部は、外壁構造体18の底面とラップされ、型枠48の他方の端部は、下側の枠付ブレース12の側面と当接させて取付けられている。
【0038】
なお、下側の枠付ブレース12の横枠材26Hの上面と、上側の枠付ブレース12の横枠材26Hの下面には、それぞれスタッド(シアコネクタ)40が接合されている。型枠46は、スタッド40がコンクリートに埋設されるよう、枠体26の横枠材26Hの外側に、一部をラップさせて設けられる。
【0039】
なお、開口部21の高さが、他の位置の開口部21の高さH1と異なる場合には、梁増打補強部32の上面32Uの位置を上下方向に調整して、補強強度を確保する。これにより、窓開口部22の高さが、枠付ブレース12の高さH2より小さければ、同じ高さH2の枠付ブレース12を用いて、開口部21の高さの違いを吸収することができる。
【0040】
型枠46、48は、柱16と縦枠材26Vとの間の隙間にも取付けられる。型枠46、48は、内部に、上方の打設口からコンクリート34が打設されても、型枠46、48の位置が移動しないよう、図示しない固定部材で外側から力が加えられている。
【0041】
最後に、梁増打空間にコンクリート(充填材)34を充填して梁増打補強部32を形成し、梁増打補強部32に枠付ブレース12を固定する。
【0042】
図1図7図8(A)、(B)、9に示すように、型枠46、48、外壁構造体18の外面18F、及び柱16の側面16Sで囲まれた梁増打空間58に、所定高さまでコンクリート34を打設する。これにより、コンクリート34が打設された梁増打補強部32が形成される。梁増打補強部32の外面32Fは、枠付ブレース12の外面12Uと、ほぼ同じ面となる。
【0043】
この結果、梁17は、梁増打補強部32で補強された増打梁50となり、既存建物14が補強されると共に、上側の枠付ブレース12と下側の枠付ブレース12が、梁増打補強部32と一体化され、既存建物14に固定される。
【0044】
以上、説明したように、本実施形態の耐震補強方法によれば、開口部21の高さが、他の開口部21の高さH3と異なる高さであっても、窓開口部22の高さH1が、枠付ブレース12の高さ寸法H2より小さければ、梁増打補強部32の天端位置を調整することで、同じ高さに形成された複数の枠付ブレース12を、既存建物14の外壁構造体18と一体化することができる。
即ち、一定サイズの枠付ブレース12を、多様な高さの窓開口部22に取付けることができる。この結果、耐震補強体10の施工性の向上、美観の向上を図ることができる。
【0045】
また、枠付ブレース12を、施工現場から離れた作業所や工場等で製作し、完成品をトラック等で取付け現場へ搬入することができる。これにより、枠付ブレース12の寸法精度を高め、現場での作業を低減できる。
また、完成品の枠付ブレース12を、そのまま窓開口部22に取付けるので、枠付きブレース12から、ボルト接合部をなくすことができ、外観デザインを向上させることができる。
【0046】
また、枠付ブレース12の、全ての外形寸法を等しくすることで、製造効率を高めることができる。このとき、枠付ブレース12の高さ寸法を、トラックで運搬可能な寸法(例えば、最大高さ2400mm〜2700mm程度)以下に統一することで、トラック等による搬送効率を高めることができる。
【0047】
また、施工時に、枠付ブレース12を、既存建物14の窓開口部22の高さ方向に複数取付けて、支柱30で仮止めしておき、その後、型枠46、48と枠付ブレース12で囲まれた梁増打空間58にコンクリート34を打設して、梁増打補強部32を形成するので、枠付ブレース12の取付け工程と、外壁構造体18の補強工程が分離され、施工性の向上、工期の短縮を図ることができる。
【0048】
なお、耐震補強体10の構築方法は、本実施形態で説明した方法のみでなく、既存建物14の下層階から、上層へ向けて、枠付ブレース12と、梁増打補強部32を順次構築する方法でもよい。
また、梁増打空間へのコンクリート34の打設は、枠付ブレース12の下側の横枠材26Hに注入孔をあけておき、注入孔からコンクリート34を注入してもよい。
【0049】
また、本実施形態では、耐震要素としてブレース24を用いる場合について説明した。しかし、これに限定されることはなく、例えば、ブレース24に代えて、波形鋼鈑を含む鋼板を枠材に取付けた、鋼板耐震壁を採用した構成であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 耐震補強体
12 枠付ブレース(枠付耐震補強体)
14 既存建物
16 柱(柱梁架構)
17 梁(柱梁架構)
17F 梁の外面
18 外壁構造体
18F 外壁構造体の外面
20 柱梁架構
22 開口部
24 ブレース(耐震要素)
26 枠体
28 補強鉄筋
30 支柱(連結部材)
32 梁増打補強部
34 コンクリート(充填材)
46 型枠
48 型枠
58 梁増打空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9