【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら上述した従来の射出延伸ブロー成形機では、上記射出成形部で要している動作時間を縮めることが困難であり、その点を次に述べる。
【0018】
図12と
図13は、射出延伸ブロー成形機の射出成形部に上記下型の下方となるようにして組み入れられているホットランナー装置aと射出装置bとが示されていて、ホットランナー装置aのメインノズルcにおける樹脂注入口dに射出装置bのノズルeを当接させている。射出装置b自体はガイドレールfを介して台盤上に移動可能に配置され、図示のように一端固定の油圧シリンダgが射出装置bに連結されている。
【0019】
図14はホットランナー装置aと射出装置bのノズルeとの当接を断面で示しているとともに、
図15はホットランナー装置aの吐出側にて上記上型hと下型iとリップ型jとからなる射出型kが形成された状態を示している。図示しているように射出装置bはノズルeをホットランナー装置aの横方向から樹脂注入口d(メインノズル)に当接させて溶融樹脂をホットランナー装置aに射出する。ホットランナー装置aではランナーが分岐されて複数のホットランナーノズルlが起立し、それぞれのゲートが下型iの底部に臨み、射出型kそれぞれで形成されるプリフォーム形成空間に、起立したホットランナーノズルlから溶融樹脂を射出するようにしている。
【0020】
射出成形部では定時間毎に射出装置から高圧の射出圧にて溶融樹脂の射出が行なわれるが、射出装置のノズルをホットランナー装置の樹脂注入口に高い圧力で当接させた状態としておかないと、ノズルとメインノズルとの間から溶融樹脂が漏れ出る可能性がある。
【0021】
そのために射出のタイミングに合うように、射出装置のノズルを前進させる方向で油圧シリンダを動作させて、ノズルの上記樹脂注入口に対する当接の度合を高めてその状態を必要時間の間保つノズルタッチを行ない、ノズルとメインノズルとの間からの樹脂漏れや射出型内への射出の圧力が低下しないようにする。
【0022】
(ノズルタッチで傾斜)
上述したように射出延伸ブロー成形機では、水平方向にして射出装置のノズルをホットランナー装置のメインノズルに当接させている。また、ホットランナー装置のホットランナーノズルそれぞれは起立している。そして射出のタイミングに合うように上記ノズルタッチを行なうと、ホットランナー装置がノズルからの押し込みを受けて変形し、ホットランナーノズルそれぞれが傾くようになる。このようにホットランナーノズルがノズルタッチごとに傾斜することは、射出成形部での成形においては好ましいことではない。
【0023】
(高圧型締め後にノズルタッチ)
ホットランナーノズルが傾斜することは、下型が上記上型と型閉じされていない単独の状態のときにあっては、その下型の位置が変化することとなる。この下型が単独で位置が変化した場合、下降する上型などとの位置合わせが不良となる。そのため、従来の射出延伸ブロー成形機では、上型下型の型締め工程を経た後にノズルタッチを行なっている。
【0024】
具体的には、回転板が下降してリップ型を下型に重ね合わせるとともに、型締装置から型締め力を加えてリップ型を通して上型が下降して下型の所要部分に入る型締めを行なって射出型を形成し、この射出型を組んでから型締装置からの型締め力を高圧の型締め力に切り換えてその高圧の型締め力を付加することで、上型下型の型締め工程が完了する。この後、ノズルが前進する方向でホットランナー装置への当接圧が高くなるように油圧シリンダが動作し、ノズルがメインノズルに高い圧力で当接させて射出を行なうようにしている。
【0025】
以上の理由から、射出延伸ブロー成形機の射出成形部でのプリフォームの成形は、上型下型の型締め工程の後にノズルタッチを行なっている。しかしながら、上型下型の型締め工程の後にノズルタッチを行なうことで、つぎに示す不具合を招いているのが現状である。
【0026】
(断熱紙が摩耗)
上記ホットランナーノズルはランナー内の樹脂の溶融状態を保つために加熱手段を備えている。一方、射出型の下型はプリフォーム形成空間に充填された溶融樹脂を所定の温度までに低下させる役割も有している。そのため、ホットランナーノズルから下型に熱が伝わらないように、ホットランナーノズルの上端に断熱紙mが取り付けられている。(
図15参照)
【0027】
そして、上述したように高圧の型締め力を型締装置から射出型側に加えられた際、ホットランナーノズルを断熱紙を介して下型が押して断熱紙が高い圧力で挟み付けられる状態となる。このときノズルタッチにてホットランナーノズルが僅かならも傾斜してその上端が位置ずれして断熱紙が擦れるようになり、繰り返しのノズルタッチで前記断熱紙が摩耗する。そのため断熱紙を頻繁に交換しなければならない。
【0028】
(センターずれが発生)
また、型締め力を高圧の型締め力に切り換えてからのノズルタッチによってホットランナーノズルが僅かながらも傾斜し、そのためホットランナーノズルのゲートと下型でのゲート対応部分とでセンターずれが発生し、樹脂の充填性が落ちる場合がある。
【0029】
(専用のアクチュエータが必要)
ノズルタッチしたときには、ノズルからメインノズルに亘って樹脂の流路が繋がっていなければならず、メインノズルに向けてノズルを前進させる方向となるようにノズルを樹脂注入口に案内し、必要時間の間、その押圧力を保持する専用のアクチュエータが必要となっている。
【0030】
(射出の待ち時間が長い)
上記射出延伸ブロー成形機による成形では、上型下型の型締め工程の後にノズルタッチを行ない、そのノズルタッチの後に溶融樹脂の射出を行なっている。特に上型下型の型締め工程では、次の順序で動作が順に進むように構成されている。
【0031】
まず、回転板が下降してリップ型を下型に重ね合わせるようにするとともに、上型を前記リップ型に通すように下降させ、上型のコアの部分が下型のキャビティの部分に入り込むように型締板を介して型締装置側から型締め力を受けるようにしながら、その上型がリップ型の上に重ね合わされる。前記型締め力を受けながら上型とリップ型と下型とで射出型が構成されると、型締装置では型締め力を高圧の型締め力に切り換えてその高圧の型締め力を射出型に加える。
【0032】
上記型締装置の型締め力が高圧の型締め力に切り換えられたことを条件として、上記ノズルをホットランナー装置に向けて前進する方向に押圧力が加わるように油圧シリンダを動作させる。ノズルの前進方向での圧力が上昇することでノズルタッチの動作が完了する。
【0033】
一方、射出装置はタイマーにより射出の動作が制御されるものであり、前記タイマーのカウントアップした値が設定カウント値に到達した時に射出の動作をするように設けられている。そして、この射出延伸ブロー成形機での射出型に向けて溶融樹脂を送り出すようにした前記射出装置にあっては、前記ノズルタッチが完了したときを、タイマーのカウントを開始させるカウント開始点としており、このカウント開始点から、カウントアップした値が事前に設定された設定カウント値に到達するまでを、射出開始の段階として備えている。即ち、ノズルタッチの動作が完了した後に前記射出開始の段階に移る構成としている。
【0034】
カウントアップした値が設定カウント値に到達すれば、射出装置が動作する射出の段階に移るように構成されており、この射出装置が射出する動作の継続時間も予め設定されている。
【0035】
このように上型と下型とを高圧の型締め力にて型締めする段階とその段階に続くノズルタッチと順にたどらなければ射出が行なえず、射出の待ち時間が長くなっている。そして、プリフォームを成形する射出成形部での動作時間が、延伸ブロー成形部での動作時間と取出部での動作時間との何れよりも長い時間を要するものであるため、射出成形部での動作時間で、射出延伸ブロー成形機の成形サイクルが決まってしまうのが現状である。
【0036】
そこで本発明は上記事情に鑑み、ノズルタッチを省いて射出装置の射出が早期の段階で行えるようにすることを課題とし、射出延伸ブロー成形機の成形サイクルを短縮することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0037】
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、下部基盤に立てられたダイバーに案内されて、下部基盤の上部に成形機上下方向にして昇降自在に設けられた型締板と、前記ダイバーに案内されて、前記型締板の下方で成形機上下方向にして昇降自在に設けられた中間基盤と、前記中間基盤の下部に、成形機上下方向を回転軸方向にして回転自在に取り付けられ、下面三方それぞれに、容器口部形成用のリップ型を有する回転板と、前記中間基盤の上部の中央に位置し、前記回転板を120度ずつ間欠的に回転させてリップ型を三つの停止位置に停止可能とした回転駆動モータとを備え、前記リップ型の前記停止位置を射出成形部、延伸ブロー成形部、取出部とした射出延伸ブロー成形機により容器を成形するに際し、
前記射出延伸ブロー成形機の前記射出成形部には、射出装置側に位置するキャビティ型であって、成形機に組み入れられたホットランナー装置のホットランナーノズルが底部に臨むように配置されている下型と、成形機上下方向にして昇降自在とされて、前記射出成形部に位置したリップ型を通って下降し、このリップ型が重ねられた下型とで内部にプリフォーム形成空間を有する射出型を形成するコア型である上型と、前記上型とこの上型が通るリップ型を重ねた前記下型とを型締めする型締装置とが備えられていて、
前記上型と回転板の回転で射出成形部に対応位置した前記リップ型と前記下型とからなる前記射出型に溶融樹脂を射出して、プリフォームの成形を行ない、
前記射出成形部で成形されてリップ型で保持されている前記プリフォームを、回転板の前記回転にて前記延伸ブロー成形部に搬送し、この延伸ブロー成形部でのプリフォームに対する延伸とブローにて容器の成形を行ない、
前記延伸ブロー成形部で成形されてリップ型で保持されている前記容器を、回転板の前記回転にて前記取出部に搬送し、この取出部にてリップ型から前記容器を離型する容器の成形方法において、
前記射出延伸ブロー成形機のホットランナー装置に、タイマーのカウントアップした値が設定カウント値に到達した時に射出の動作をする射出装置
のノズルが連結固定されていて、
前記タイマーのカウント開始点が、前記回転板が回転する段階、或いは前記回転板の回転を止めて回転不能
に固定する段階、或いは前記上型と下型との型締めが開始される段階のいずれかに設定されていることを特徴とする射出延伸ブロー成形機による容器の成形方法を提供して、上記課題を解消するものである。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、従来の高圧型締めの動作の完了とノズルタッチの動作の完了とを待たずに射出装置に対して射出を行なわせることができる。そしてこの射出装置の射出をカウントアップした時点で行なうためのカウント開始点を、回転板が回転する段階、回転板を止めて固定する段階、上型下型の型締めが開始される段階の何れかとするので、射出装置の射出を前記段階にオーバーラップした状態で行える。
【0039】
即ち、従来の上型とリップ型と下型とを組んで射出型が形成されるまでの時間と、その射出型に高圧の型締め力を加える切り換えが完了するまでの時間と、射出装置のノズルによるホットランナー装置のメインノズルを押圧する動作の完了(ノズルタッチの完了)までの時間とからなる待ち時間が省かれる。よって射出成形部においてプリフォームを成形する時間が短くなり、成形機の成形サイクルを短縮して生産性を向上させることができる。
【0040】
そしてノズルタッチを行なわないので、上記断熱紙の交換期間を長くすることができる。またホットランナーノズルのゲートと下型のゲート対応部分とのセンターずれ、専用のアクチュエータを必要とする点などの不具合が生じないようになる。
【0041】
さらに上型が下型に下がる途中での射出が行なえることとなり、その途中からの射出は射出型が完全に閉まっていない状態で射出することであって、型同士の間の隙間も多いため、溶融樹脂の流動抵抗が減って充填性が向上する。また上型と下型との間のガスや空気の排出も良好になる。
【0042】
そして上記充填性の向上がガスの排出を良好にすることにも相乗効果を及ぼし、エアベントの詰まりも低減する。よってこのエアベントのメンテナンス周期が長くなる。さらに充填性の向上による樹脂流動抵抗の低下で、射出装置の射出ラムの径を小さくすることが可能となる。