【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1発明のハイブリッド太陽電池モジュールは、以下の特徴を有する。
太陽光の受光面側に設けられる太陽光パネルと、液体が通過する樹脂製パイプと、ゴム素材と、裏面側に設けられる裏面ガラスと、を一体的に結合してなり、
前記樹脂製パイプは前記太陽光パネルの裏面及び前記裏面ガラスに接触しつつ、スパイラル状に配置されて前記ゴム素材によって包囲され、
太陽光を利用した発電と、太陽熱を利用して前記樹脂製パイプ内を通過する液体の温度上昇とを同時に実現する。
【0009】
第1発明のハイブリッド太陽電池モジュールは、太陽電池パネルの下部にゴム素材層を設け、その内部に樹脂製パイプが設けられたものであり、その樹脂製パイプに水等の液体を流通させ、太陽光により発電するとともに、太陽熱により温水等を製造する。温水等は樹脂製パイプを流通するので、従来の金属パイプを使用した場合に比べ腐食することがまったく無い。また従来の太陽電池パネルに樹脂製パイプを接着したものに比べ、樹脂製パイプがゴム素材層で覆われていて集熱性・熱伝導性・保温性に優れており、効率よく太陽熱により温水を製造することができる。
【0010】
更にゴム素材層内に樹脂製パイプがスパイラル状に配置されているので樹脂製パイプが太陽電池パネルと接触している部分の長さが長くなり、太陽電池パネルからの受熱量が格段に増加する。従って樹脂製パイプ内を流れる液体の温度を格段に短時間で昇温することができる。
【0011】
第2発明のハイブリッド太陽電池モジュールは、第1発明において以下の特徴を有する。
前記太陽光パネルは、表面ガラスと、太陽電池セルを内包する封止材と、セル割れ防止シートとを積層したものである。
【0012】
第2発明によれば、太陽電池パネルとゴム素材層の間にセル割れ防止シートが挿入されている。従って第2発明のハイブリッド太陽電池モジュールを製造する際に真空加圧によるラミネ−ト加工により製造するが、その際に太陽電池パネルのセル割れを防止することができる。シートがクッション性を有しており衝撃力やプレス力が付加されても太陽電池パネルの太陽電池セルの割れを防止することができる。
【0013】
このセル割れ防止シートは、出願人が平成26年2月25日に特願2014−34580として出願したものであり、概略以下の構成である。太陽電池モジュール内の太陽電池セルの割れを防止するためにセル割れ防止シートを、太陽電池用バックシートとオレフィンゴム組成物が一体となったセル割れ防止シートとし、300μm以上の厚みでゴム組成物を前記バックシート上に一体にシート化し、前記ゴム組成物は、オレフィンゴム(A)100重量部に対して、オレフィン系樹脂(B)が10から30重量部配合し、加熱成形後のゴム組成物のゴム硬度(JISA)が45から70で、ゴム伸びが100%以上500%以下とした。このセル割れ防止シートは、太陽電池モジュールを降雪地にて設置する場合に、太陽電池モジュールの上に堆積した雪の荷重により太陽電池モジュール内のセル割れを防止する目的で研究開発されたものである。発明者らは、本願のハイブリッド太陽電池を実現するために、このセル割れ防止シートが有効に作用することを見出し、ハイブリッド太陽電池の構成要件として付加した。このセル割れ防止シートをハイブリッド太陽電池モジュールに使用することにより、ハイブリッド太陽電池モジュールの使用中に外的要因により衝撃力が加えられても太陽電池セルが割れることながなく発電機能を維持しながら温水等の製造をすることができる。
【0014】
第3発明のハイブリッド太陽電池モジュールは、第1発明または第2発明において以下の特徴を有する。
前記太陽光パネルのセル割れ防止シートと前記ゴム素材の間に高熱伝導性シートを積層配置したことを特徴とする。
【0015】
第3発明のハイブリッド太陽電池モジュールを用いれば、太陽電池パネルのセル割れ防止シートとゴム層の間に高熱伝導シートを積層配置しているので、太陽電池パネルの受熱は速やかに樹脂製パイプに伝達される。これにより樹脂製パイプ内の液体の温度を迅速に温度上昇させることができ、温水の製造効率を格段に向上させることができる。高熱伝導シートとしてはカーボンナノチューブを使用した高熱伝導性シートを採用することができる。また接着性を有する高熱伝導性シートを裏面ガラスとゴム層に内包した樹脂パイプとの間に設けた構成とすることが望ましい。
【0016】
第4発明のハイブリッド太陽電池モジュールは、第1発明から第3発明のいずれかにおいて以下の特徴を有する。
前記樹脂製パイプが、架橋ポリエチレン樹脂或いはポリブテン樹脂からなる。
【0017】
第4発明によれば、温水等が流通する樹脂製パイプを架橋ポリエチレン樹脂或いはポリブテン樹脂で構成しているので、耐圧性に優れ樹脂製パイプの破損・破裂等による温水等の漏れが発生する事のないハイブリッド太陽電池モジュールを実現することができる。
【0018】
第5発明のハイブリッド太陽電池モジュールは、第1発明から第4発明のいずれかにおいて以下の特徴を有する。
前記樹脂製パイプ内の耐水圧性能が、0.2MPa以上である。
【0019】
第5発明によれば、第4発明と同様の効果が発現する。
【0020】
第6発明のハイブリッド太陽電池モジュールは、第1発明から第5発明のいずれかにおいて以下の特徴を有する。
前記ハイブリッド太陽電池モジュール1枚に対し、太陽電池セルの合計面積(A)と前記樹脂製パイプの占有面積(B)の比(B/A)が75/25〜40/60である。
【0021】
第6発明によれば、太陽電池モジュール1枚に対する、太陽電池セルの合計面積(A)と前記樹脂製パイプの占有面積(B)の比(B/A)が75/25〜40/60としている。比(B/A)が75/25を上回るとガラスとガラスに挟まれた樹脂管を挟み、接着しているゴム素材の接着面積が低下し、ガラスとの全接着強度低下により、太陽電池モジュールが破損する虞がある。他方比(B/A)が40/60を下回ると集熱性能が低下し、目的の温水が得られないこと、モジュールの重量が重くなり、設置作業性が著しく低下するため好ましくない。
【0022】
第7発明のハイブリッド太陽電池モジュールは、第2発明から第6発明のいずれかにおいて以下の特徴を有する。
前記封止材は、オレフィン系封止材又はエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる。
【0023】
第7発明によれば、封止材としてエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を封止材とし
て使用することができる。この場合、封止材は公知の封止材であり入手が容易である。ま
たオレフィン系封止材は、出願人が2014年2月25日において特願2014−344
05として出願したものである。このオレフィン系封止材を使用することにより、封止材
としてEVAを使用した場合に比べて太陽電池パネルの発電中に酢酸の発生が非常に少な
く、太陽電池パネル内の電極が腐食することがない。更にこのオレフィン系封止材と太陽
電池パネルの表面側ガラスとの間にEVA封止材を設ける構成とすることも可能である。
【0024】
第8発明のハイブリッド太陽電池モジュールは、第2発明から第7発明のいずれかにおいて以下の特徴を有する。
前記セル割れ防止シートは、太陽電池用バックシートとオレフィン系ゴム組成物とを一体化したものである。
【0025】
第8発明によれば、太陽電池パネルに使用するバックシートにオレフィンゴム組成物を
一体化したセル割れ防止シートを使用している。このオレフィン系ゴム組成物は、本願の第2発明において使用しているものと同一のものである。このオレフィン系ゴム組成物をセル割れ防止シートとして使用することにより、第2発明と同様の効果が発現する。
【0026】
第9発明のハイブリッド太陽電池モジュールは、第8発明において以下の特徴を有する。
前記オレフィン系ゴム組成物のシート厚みが250μm以上で800μm以下である。
【0027】
第9発明によれば、太陽電池パネルとゴム素材層との間に設けられたオレフィン系ゴム組成物の厚みが250μm以上で800μm以下であり、ハイブリッド太陽電池モジュールを製造する際のラミネート加工におけるプレス力により太陽電池パネル内の太陽電池セルが割れることは無い。
このオレフィン系ゴム組成物の厚みが250μm未満においては、ハイブリッド太陽電池モジュールを製造する際のラミネート加工時のプレス力により太陽電池セルが割れてしまう虞がある。また、このオレフィン系ゴム組成物の厚みが800μmを超えると結晶系セル表面にゴム組成物が回り込み、発電の阻害となることがあるため、好ましくない。
【0028】
第10発明のハイブリッド太陽電池モジュールは、第1発明から第9発明のいずれかにおいて以下の特徴を有する。
前記樹脂製パイプは前記ハイブリッド太陽電池モジュールから露出部分を有し、前記露出部分同士を接続し前記ハイブリッド太陽電池モジュールの液体の通過する流路を接続し、さらに前記樹脂製パイプの接続部を前記ハイブリッド太陽電池モジュールを設置した下方に収納することができる。
【0029】
第10発明によれば、樹脂製パイプが太陽電池パネルから露出した部分があり、その露出部分同士を従来の手段で容易に接続することができる。またその露出部分の接続部を太陽電池モジュールの下方に収納することができる。従って本発明の太陽電池モジュールであれば複数枚の太陽電池モジュールを設置する場合に隙間なく敷き詰めて設置することが可能になる。よって省スペース化を実現することができる。