(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の電力変換装置を、図面を参照して説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、実施形態の電力変換装置100を搭載した電気車システム1の概略構成図である。電力変換装置100が搭載された電気車(鉄道車両)は、直流電力の供給源である架線Pに集電器2が接触することにより、架線Pから電力の供給を受けて線路R上を走行する。同図では、電気車の車輪Wを駆動するのに必要な電力を生成する電力変換装置については図示しておらず、空調装置等のより低電圧な装置に電力を供給するための構成を示している。
【0009】
電気車システム1は、主要な構成要素として、集電器2と、接触器3、車輪Wと、電力変換装置100とを備える。符号20は、電力変換装置100から直流の電力が供給される負荷である。負荷20は、電力変換装置100に、常時接続されているものでもよく、使用する際に接続されるものでもよい。電力変換装置100は、集電器2により架線Pに接続され、車輪Wにより線路Rに接続される。電力変換装置100が架線Pに接続された状態におかれても、負荷20は、架線Pと線路Rの双方との絶縁が確保された状態で、電力変換装置100から電力が供給される。
【0010】
集電器2は、架線Pから直流電力を取得する。接触器3は、集電器2と電力変換装置100との間に直列に接続される。接触器3は、制御された条件のもとで電力変換装置100への直流電力の出力を遮断する。
【0011】
電力変換装置100は、昇圧部5と、容量部8と、抵抗部9と、変換部13と、検出部10と、制御部50とを備える。電力変換装置100は、さらに変圧器14と、整流器15と、容量部16との一部または全部を備えていてもよい。なお、電力変換装置100の構成に応じて、変圧器14と、整流器15と、容量部16との一部または全部を負荷20が備えていてもよい。
【0012】
昇圧部5は、昇圧用リアクトル4を含み、接触器3を介して入力される入力電圧を昇圧して出力電圧を生成する。例えば、昇圧用リアクトル4とスイッチング素子6と整流器7とが昇圧部5を構成する。昇圧部5は、スイッチング素子6をスイッチングさせて、直流の入力電圧を昇圧し、整流器7を介して出力する。なお、昇圧部5は、制御部50からの制御(SWCONT)を受けて、スイッチング素子6のスイッチングを停止する場合がある。
【0013】
容量部8と抵抗部9と変換部13と検出部10と変換部13とが、昇圧部5の出力側に設けられる。容量部8は、昇圧部5が出力する電圧を平滑化する。抵抗部9は、容量部8と並列に設けられており、容量部8に蓄えられた電力を放電させる。検出部10は、昇圧部5の出力電圧、すなわち容量部8の端子電圧を測定する。
【0014】
変換部13は、昇圧部5から供給された直流電力を、制御部50から入力された制御信号(例えばPWM:Pulse Width Modulation)に基づいて、所望の周波数や電圧などの単相交流に変換して出力する。例えば、変換部13は、容量部11aと、容量部11bと、スイッチング素子12aと、スイッチング素子12bとを備える。この変換部13は、単相のハーフブリッジ型のインバータである。変換部13は、スイッチング素子12aとスイッチング素子12bを規定の周期(スイッチング周期T)でスイッチングさせることにより昇圧部5の出力電圧を交流電圧に変換し、変圧器14に供給する。例えば、交流電圧は、PWMのDutyによって調整される。なお、変換部13は、制御部50からの制御(SWCONT)を受けて、スイッチング素子12aとスイッチング素子12bのスイッチングを停止する場合がある。
【0015】
例えば、変換部13の出力に、変圧器14の1次側が接続されており、変換部13は、変圧器14の1次側を駆動する。変圧器14は、1次側と2次側が絶縁されており、所望の絶縁耐圧性を有する。換言すれば、変圧器14は、変換部13と変圧器14より負荷20側の回路を絶縁する。変圧器14は、1次側から供給される変換部13のスイッチング周期Tに応じた周波数(スイッチング周波数)の交流電力を変換して2次側に供給する。上記のスイッチング周波数は、商用電力の周波数(50Hzまたは60Hz)に対して充分に高い周波数であり、例えば、数KHzから数100KHz程度の間(周波数範囲)で予め定められる。変圧器14は、スイッチング周波数を高めるほど小型化できることから、上記の周波数範囲の中でも変換損失に影響がない範囲で上記のスイッチング周波数を高めて、例えば高周波領域の周波数にするとよい。別の観点では、上記のスイッチング周波数を定める場合、可聴領域の周波数を避けて、例えば、20KHzを超える周波数領域から選択するとよい。上記のスイッチング周波数を、可聴領域の周波数を避けることにより、共振により生じた騒音や振動の影響を低減できる。変圧器14は、上記のスイッチング周波数を商用電力の周波数(50Hzまたは60Hz)に対して充分に高い周波数(例えば高周波領域の周波数)にすることにより、電力変換損失を少なくできる等の利点がある。
【0016】
変圧器14の2次側、すなわち変圧器14より負荷側には整流器15が設けられている。整流器15は、変圧器14から供給される交流を整流する。容量部16は、整流器15によって整流された後の電圧を平滑化する。平滑化された後に、変圧器14を介して供給された電力が直流として負荷20に供給される。
【0017】
制御部50は、接触器3、昇圧部5、検出部10、変換部13等の各部に接続され、それぞれから情報を取得する。そして制御部50は、各種検知器が検知した情報、上記の各部の状態などの情報に基づいて電力変換装置100のシーケンス動作を制御する。また制御部50は、入力されたそれぞれの検出情報に基づいてゲート指令を昇圧部5、変換部13に出力して、昇圧部5のスイッチング素子6、変換部13のスイッチング素子12aとスイッチング素子12bとのスイッチング動作を制御する。
【0018】
次に、第1の実施形態の電力変換装置100の起動時の動作について説明する。
【0019】
容量部8は、変換部13の入力電圧安定化用に設けられている。容量部8は、電力変換装置100を起動する前は放電されており、端子間電圧がほぼ0Vの状態となっている。この状態で電力変換装置100を起動するために接触器3を投入すると、容量部8の充電が開始される。なお、起動時においては、昇圧部5と変換部13はスイッチング動作を開始していない。
【0020】
容量部8の充電が始まると、昇圧用リアクトル4により入力電流の大きさが有限の値に制限されるものの、昇圧用リアクトル4と容量部8との間で共振現象が生じる、その結果、入力電流は大きな振幅を持つ振動電流となる。また、容量部8に掛る電圧が振動して、過大な電圧が生じる。
【0021】
電力変換装置100では、昇圧部5のスイッチング素子6、容量部8、変換部13の容量部11aと容量部11bの耐圧を電車線電圧Eの最大値の2倍にあたる電圧2E以上に設定して、これらが過電圧によって破壊されることを防止する。変換部13については後述する。
【0022】
図2は、第1の実施形態の変換部のスイッチング素子の応答性について示す説明図である。同図には、スイッチング素子12aのゲート制御信号と電流波形、及び、スイッチング素子12bのゲート制御信号と電流波形とを示すタイミングチャートが示されている。
【0023】
同図の初期状態は、スイッチング素子12aとスイッチング素子12bが共にオフ状態(非導通状態)にある。例えば、時刻t1においてスイッチング素子12aをオン状態(導通状態)に遷移させるゲート制御信号を供給しても、時刻t2までの時間帯(ターンオン時間)ではスイッチング素子12aを流れる電流が徐々に増加する。時刻t3においてスイッチング素子12aをオフ状態(非導通状態)に遷移させるゲート制御信号を供給しても、時刻t4までの時間帯(ターンオフ時間)ではスイッチング素子12aを流れる電流が徐々に減少する。スイッチング素子12においても、時刻t5から時刻t9までの間で、スイッチング素子12aの時刻t1から時刻t5まで動作と同様の動作がみられる。一般に、上記のターンオン時間とターンオフ時間は、高耐圧のスイッチング素子ほど長くなり、応答時間が長くなるという傾向がある。
【0024】
そこで、電力変換装置100では、スイッチング素子12aとスイッチング素子12bに掛る電圧を低減させて、応答性の良いスイッチング素子を適用することでスイッチング周波数を高めるようにした。
【0025】
図3は、第1の実施形態の電力変換装置100の起動時の動作を示すタイミングチャートである。同図に、昇圧部出力電圧Vの変化と、スイッチング素子の制御状態(SWCONT)を示す。
【0026】
電力変換装置100は、電力が供給されていない期間(例えば、時刻t10までの期間)、及び、時刻t10に電力の供給が開始されてから下記するように所定の期間が経過するまではスイッチング素子のスイッチングを実施しない。
【0027】
電力変換装置100に電力の供給が開始された段階(時刻t10)で共振電流が発生する。電力変換装置100の昇圧部5には、昇圧チョッパ回路を構成する整流器7が設けられている。発生した共振電流が整流器7を介して昇圧部5から出力され、容量部8が充電される。容量部8に掛る電圧(昇圧部出力電圧V)は、時刻t11において共振により生じた最大電圧になる。その最大電圧は、電車線電圧Eの2倍の電圧2Eに達する。
【0028】
時刻t11を過ぎると、整流器7が逆バイアスになり、整流器7から容量部8に向けて流れる電流が停止する。
図1に示したように、電力変換装置100は、容量部8を放電させる抵抗部9を備えている。この抵抗部9の作用によって、容量部8に掛る電圧(昇圧部出力電圧V)が低減する。例えば、昇圧部出力電圧Vは、容量部8を含む容量成分の容量値と抵抗部9の抵抗値とから算定される時定数の放電特性に従って減衰し、電圧Eに漸近する。
【0029】
昇圧部出力電圧Vが電車線電圧E近傍の電圧まで低下してから、変換部13のスイッチング動作を開始することで、スイッチング素子12aとスイッチング素子12bのスイッチング動作時に掛る電圧を低減させることができる。これにより、スイッチング素子12aとスイッチング素子12bとして、電力変換装置100Rを構成するものに対して、スイッチング動作時に掛る電圧を低減することができ、耐圧が比較的低いスイッチング素子を適用できる。
【0030】
より具体的な電力変換装置100の一態様について説明する。スイッチング素子12aとスイッチング素子12bの定格電圧VMAXは、昇圧部5の入力電圧を規定する電車線電圧E(基準入力電圧)より高く、電車線電圧E(基準入力電圧)の2倍の電圧(電圧2E)より低くする。定格電圧VMAXとは、スイッチング素子をスイッチとしてみた場合、スイッチの両端に印加することができる電圧の許容値(例えば、最大定格電圧)のことをいう。閾値電圧Vthが、スイッチング素子12aとスイッチング素子12bの定格電圧VMAXより低い電圧に予め定められている。制御部50は、検出部10により検出された電圧(昇圧部出力電圧V)が、閾値電圧Vthを超えて、その後閾値電圧Vthより低下した時刻t12Aが過ぎてからスイッチング素子12aとスイッチング素子12bのスイッチングを開始させるように制御する(SCONT参照)。変換部13は、制御部50の制御に応じて、スイッチング素子12aとスイッチング素子12bのスイッチングを開始して、同スイッチングにより、昇圧部5の出力電圧を交流電圧に変換して、変圧器14に供給する。
【0031】
上記のとおり、電力変換装置100の変換部13は、所望の周波数(スイッチング周波数)の高周波を出力可能なインバータとして機能する。変圧器14は、高周波の電力を変換することが可能になる。電力変換装置100は、変圧器14の小型化、電気車システム1並びに電力変換装置100の小型化を実現することを可能にする。
【0032】
さらに、変換部13におけるスイッチング動作による容量部8の電圧変動の周波数成分は、スイッチング素子のスイッチング周波数(高周波)を基本波とする周波数成分になる。容量部8は周波数が高いほどインピーダンスが低くなることにより、上記の電圧変動の成分の影響を低減させるのに必要な容量を少なくできる。これにより、電力変換装置100は、容量部8の小型化、ひいては、電気車システム1並びに電力変換装置100の小型化を実現することを可能にする。
【0033】
なお、電力変換装置100は、接触器3を投入するとき(起動時)に生じる共振を防止するための充電抵抗器を備えていない。充電抵抗器がないことが共振を発生する要因となっているが、電力変換装置100は、起動時の過電圧を許容できるように構成されている。電力変換装置100は、充電抵抗器を備えることなく構成を簡略化することができ、電気車システム1並びに電力変換装置100の小型化を実現することを可能にする。
【0034】
本実施形態に係る電力変換装置100をより具体的なシステムに適用した場合の効果について説明する。直流電化方式における電車線電圧Eとして、750Vまたは1500Vが適用される。電車線電圧Eの許容電圧変動幅を加味すると、それぞれの上限電圧が900Vまたは1800Vになる。上記の上限電圧が昇圧部5の入力電圧になった場合に、容量部8の端子電圧がそれぞれ1800Vまたは3600Vに達する。容量部8の端子電圧がそれぞれ1800Vまたは3600Vにある状態で昇圧部5と変換部13とにおけるスイッチングを実施する場合には、各スイッチング素子に、それぞれ1800Vまたは3600V以上の定格電圧VMAXが必要になる。
【0035】
ところで、IEGT(Injection Enhanced Gate Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やパワーMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)などの一般的なスイッチング素子には、段階的な最大定格電圧(定格電圧VMAX)が設定されている。例えば、上記の電圧範囲の場合、スイッチング素子の最大定格電圧は、1700Vまたは3300Vまたは4500Vである。
【0036】
ここで、参考例の電力変換装置100Rを搭載した電気車システム1Rを例示して説明する。
図4は、参考例の電力変換装置100Rを搭載した電気車システム1Rの概略構成図である。電力変換装置100Rは、電力変換装置100(
図1)に関連するものである。電力変換装置100Rには、電力変換装置100と相違する点として抵抗部9が設けられていない点と後述するように変換部13Rの特性が変換部13の特性と異なる点と変圧器14Rの特性が変圧器14の特性と異なる点等の相違点がある。電力変換装置100と同じ構成には同じ符号を附す。
【0037】
図5は、参考例の電力変換装置100Rの起動時における昇圧部出力電圧Vの変化を示す模式図である。電力変換装置100Rに電力の供給が開始された段階(時刻t10)で共振電流が発生する。電力変換装置100Rの昇圧部5には、昇圧チョッパ回路を構成する整流器7が設けられている。発生した共振電流が整流器7を介して昇圧部5から出力され、容量部8が充電される。容量部8に掛る電圧(昇圧部出力電圧V)は、時刻t11において共振により生じた最大電圧になる。その最大電圧は、電車線電圧Eの2倍の電圧2Eに達する。なお、この整流器7の作用によって、容量部8に掛る電圧(昇圧部出力電圧V)がそのまま保持される。
【0038】
電力変換装置100Rでは、抵抗部9を設けていないことにより、昇圧部出力電圧Vが高い電圧(電圧2E)に保持される。昇圧部5のスイッチング素子6、容量部8、変換部13Rの容量部11aと容量部11b、スイッチング素子12Raとスイッチング素子12Rbの耐圧(定格電圧VMAX)を電車線電圧Eの最大値の2倍にあたる電圧2E以上のものにして、これらが過電圧によって破壊されることを防止する。
【0039】
ところで、上記のように変換部13Rのスイッチング素子12Raとスイッチング素子12Rbの耐圧を単に高めるだけでは、変換部13Rのスイッチング周波数を十分に高めることができないことがある。変圧器14Rは、変換部13Rのスイッチング周波数に応じたものになる。
【0040】
一般に、変換部13Rのスイッチング周波数を高めるほど、変圧器14Rをより小型にすることができる。上記の電力変換装置100Rでは、変換部13Rのスイッチング周波数を十分に高めることができない場合には、より小型の変圧器14Rにすることが困難になる。
【0041】
電力変換装置100Rと電力変換装置100とを対比して、具体的な電車線電圧Eを適用した場合について説明する。
電力変換装置100Rにおける電車線電圧Eを750Vまたは1500Vとする場合、電力変換装置100Rの各スイッチング素子には、スイッチング素子の最大定格電圧がそれぞれ3300Vまたは4500Vのものを適用する。
一方、電力変換装置100における電車線電圧Eを750Vまたは1500Vとする場合、スイッチング素子12aとスイッチング素子12bには、スイッチング素子の最大定格電圧がそれぞれ1700Vまたは3300Vのものを適用する。
上記のとおり、電力変換装置100であれば、最大定格電圧が比較的低いスイッチング素子を適用することができる。一般に、スイッチング素子の最大定格電圧が低いものほど、スイッチング周波数を高めることができる。これにより、電力変換装置100は、上述したとおりスイッチング周波数を高めることが可能になる。このことから、変換部13のスイッチング周波数を変換部13Rのスイッチング周波数より高めて、この変圧器14を変圧器14Rより小型にすることができる。また、最大定格電圧が比較的低いスイッチング素子は、最大定格電圧が高いスイッチング素子よりも小型である。このように、電力変換装置100は、変圧器14の小型化、ひいては、電気車システム1並びに電力変換装置100の小型化を実現することを可能にする。
【0042】
(第1の実施形態の変形例)
第1の実施形態の電力変換装置100の一態様の制御部50は、検出部10により検出された電圧(昇圧部出力電圧V)が、閾値電圧Vthを超えて、その後閾値電圧Vthよりも低い電圧に低下した場合、スイッチング素子12aとスイッチング素子12bのスイッチングを開始させる。
上記の変形例として、次のように構成してもよい。
【0043】
例えば、制御部50は、昇圧部5に入力電圧が印加されたことを、接触器3の状態から検知する。接触器3が導通状態となった段階で、昇圧部5に電圧が印加されたと見なすことができる。接触器3と制御部50を合わせたものが、「印加検知部51」の一例である。制御部50は、印加検知部51により昇圧部5に入力電圧が印加されたことが検知された後、検出部10により検出された電圧が、閾値電圧Vthよりも高い電圧から閾値電圧Vthよりも低い電圧に低下した場合、スイッチング素子12aとスイッチング素子12bのスイッチングを開始させるように制御する。変換部13は、制御部50の制御に応じて、スイッチング素子12aとスイッチング素子12bのスイッチングを開始して、同スイッチングにより、昇圧部5の出力電圧を交流電圧に変換して、変圧器14に供給する。
【0044】
上記のとおり、本変形例による電力変換装置100の変換部13は、所望の周波数(スイッチング周波数)の高周波を出力可能なインバータとして機能する。変圧器14は、高周波の電力を変換することが可能になる。電力変換装置100は、変圧器14の小型化、ひいては、電気車システム1並びに電力変換装置100の小型化を実現することを可能にする。
【0045】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の電力変換装置100Aは、検出部(検出部10)を備えない点で第1の実施形態と異なっている。第1の実施形態と同一又は同様の部位には同一の符号を付してその詳細の説明は省略する。
【0046】
図6は、第2の実施形態の電力変換装置100Aを搭載した電気車システム1Aの概略構成図である。
電力変換装置100Aは、昇圧部5と、容量部8と、抵抗部9と、変換部13と、制御部50Aとを備える。電力変換装置100Aは、さらに変圧器14と、整流器15と容量部16とを備えていてもよい。同図では、電気車の車輪Wを駆動するのに必要な電力を生成する電力変換装置については図示しておらず、空調装置等のより低電圧な装置に電力を供給するための構成を示している。
【0047】
制御部50Aは、接触器3、昇圧部5、変換部13等の各部に接続され、それぞれから情報を取得する。そして制御部50Aは、各種検知器が検知した情報、上記の各部の状態などの情報に基づいて電力変換装置100Aのシーケンス動作を制御する。また制御部50Aは、入力されたそれぞれの検出情報に基づいてゲート指令を昇圧部5、変換部13に出力して、昇圧部5のスイッチング素子6、変換部13のスイッチング素子12aとスイッチング素子12bとのスイッチング動作を制御する。
【0048】
図7は、第2の実施形態の電力変換装置100Aの起動時の動作を示すタイミングチャートである。同図に、昇圧部出力電圧Vの変化と、スイッチング素子の制御状態(SWCONT)を示す。
【0049】
電力変換装置100Aは、電力が供給されていない期間(例えば、時刻t10までの期間)、及び、時刻t10に電力の供給が開始されてから所定の期間が経過するまではスイッチング素子のスイッチングを実施しない。
【0050】
電力変換装置100Aに電力の供給が開始された段階(時刻t10)で共振電流が発生する。電力変換装置100Aの昇圧部5には、昇圧チョッパ回路を構成する整流器7が設けられている。発生した共振電流が整流器7を介して昇圧部5から出力され、容量部8が充電される。容量部8に掛る電圧(昇圧部出力電圧V)は、時刻t11において共振により生じた最大電圧になる。その最大電圧は、電車線電圧Eの2倍の電圧2Eに達する。
【0051】
時刻t11を過ぎると、整流器7が逆バイアスになり、整流器7から容量部8に向けて流れる電流が停止する。
図6に示したように、電力変換装置100Aは、容量部8を放電させる抵抗部9を備えている。この抵抗部9の作用によって、容量部8に掛る電圧(昇圧部出力電圧V)が低減する。例えば、昇圧部出力電圧Vは、容量部8を含む容量成分の容量値と抵抗部9の抵抗値とから算定される時定数の放電特性に従って減衰し、電圧Eに漸近する。
【0052】
そこで、昇圧部出力電圧Vが電車線電圧E近傍の電圧まで低下してから、変換部13の運転を開始することで、スイッチング素子12aとスイッチング素子12bのスイッチング動作時に掛る電圧を低減させることができる。これにより、スイッチング素子12aとスイッチング素子12bとして、電力変換装置100R(
図2)を構成するものに対して、スイッチング動作時に掛る電圧(耐圧)を比較的低いものにできる。
【0053】
より具体的な電力変換装置100Aの一態様について説明する。
スイッチング素子12aとスイッチング素子12bの定格電圧VMAXは、昇圧部5の入力電圧を規定する電車線電圧E(基準入力電圧)より高く、電車線電圧E(基準入力電圧)の2倍の電圧(電圧2E)より低くする。
【0054】
制御部50Aは、昇圧部5に昇圧部出力電圧V(入力電圧)が印加されことを、接触器3の状態から検知する。接触器3が導通状態となった段階で、昇圧部5に電圧が印加されたと見なすことができる。接触器3と制御部50Aを合わせたものが、「印加検知部51A」の一例である。制御部50Aは、印加検知部51Aにより昇圧部5に入力電圧が印加されたことが検知された後、予め定められた時間Tdが経過した場合、スイッチング素子12aとスイッチング素子12bのスイッチングを開始させるように制御する(SCONT参照)。変換部13は、制御部50Aの制御に応じて、スイッチング素子12aとスイッチング素子12bのスイッチングを開始して、同スイッチングにより、昇圧部5の出力電圧を交流電圧に変換して、変圧器14に供給する。
【0055】
上記の時間Tdの定め方の一例について説明する。例えば、時間Tdは、時間Td1と時間Td2とに分けて規定してもよい。時間Td1は、電力変換装置100Aに電力の供給が開始された時刻t10を起点にして、共振により容量部8に掛る電圧(昇圧部出力電圧V)が最大電圧になる時刻t11までの時間にする。時間Td2は、時刻t11を起点にして、容量部8に掛る電圧(昇圧部出力電圧V)がスイッチング素子12aとスイッチング素子12bの定格電圧VMAXより低い電圧に低下する時間Tdrefを超える時間(時刻t12B)にする。
【0056】
上記のとおり、第2の実施形態による電力変換装置100Aの変換部13は、所望の周波数(スイッチング周波数)の高周波を出力可能なインバータとして機能する。変圧器14は、高周波の電力を変換することが可能になる。電力変換装置100Aは、変圧器14の小型化、ひいては、電気車システム1A並びに電力変換装置100Aの小型化を実現することを可能にする。
【0057】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の電力変換装置100Bは、変換部13Bの構成が第1の実施形態の変換部13と異なっている。第1の実施形態と同一又は同様の部位には同一の符号を付してその詳細の説明は省略する。
【0058】
図8は、第3の実施形態の電力変換装置100Bを搭載した電気車システム1Bの概略構成図である。同図では、電気車の車輪Wを駆動するのに必要な電力を生成する電力変換装置については図示しておらず、空調装置等のより低電圧な装置に電力を供給するための構成を示している。
電力変換装置100Bは、昇圧部5と、容量部8と、抵抗部9と、変換部13Bと、制御部50とを備える。電力変換装置100Bは、さらに変圧器14と、整流器15と容量部16とを備えていてもよい。なお、電力変換装置100Bの構成に応じて、変圧器14と、整流器15と、容量部16との一部または全部を負荷20が備えていてもよい。
【0059】
変換部13Bは、昇圧部5から供給された直流電力を、制御部50から入力された制御信号(例えばPWM:Pulse Width Modulation)に基づいて、所望の周波数や電圧などの単相交流に変換して出力する。例えば、変換部13は、スイッチング素子12aと、スイッチング素子12bと、スイッチング素子12cと、スイッチング素子12dとを備える。この変換部13は、単相のフルブリッジ型のインバータである。変換部13Bは、スイッチング素子12aとスイッチング素子12bスイッチング素子12cとスイッチング素子12dとを規定の周期(スイッチング周期T)でスイッチングさせることにより昇圧部5の出力電圧を交流電圧に変換して、変圧器14に供給する。例えば、交流電圧は、PWMのDutyの調整によって調整される。なお、変換部13Bは、制御部50からの制御(SWCONT)を受けて、スイッチング素子12aとスイッチング素子12bとスイッチング素子12cとスイッチング素子12dのスイッチングを停止する場合がある。
【0060】
例えば、変換部13Bの出力に、変圧器14の1次側が接続されており、変換部13Bは、変圧器14の1次側を駆動する。変圧器14は、1次側と2次側が絶縁されており、所望の絶縁耐圧性を有する。換言すれば、変圧器14は、変換部13Bと変圧器14より負荷20側の回路を絶縁する。
【0061】
変圧器14の2次側、すなわち変圧器14より負荷側には整流器15が設けられている。整流器15は、変圧器14から供給される交流を整流する。容量部16は、整流器15によって整流された後の電圧を平滑化する。平滑化された後に、変圧器14を介して供給された電力が直流として負荷20に供給される。
【0062】
なお、スイッチング動作開始後に、変換部13Bを駆動するゲート制御信号は、一般的なフルブリッジ型のインバータの制御信号に準じたものでよい。なお、第1の実施形態または第2の実施形態に示した変換部13のスイッチング動作の開始時刻を制御する方法と同様の方法で、制御部50Bは、変換部13Bのスイッチング動作の開始時刻を制御してもよい。
【0063】
上記のとおり、第3の実施形態による電力変換装置100Bの変換部13Bは、所望の周波数(スイッチング周波数)の高周波を出力可能なインバータとして機能する。変圧器14は、高周波の電力を変換することが可能になる。電力変換装置100Bは、変圧器14の小型化、ひいては、電気車システム1B並びに電力変換装置100Bの小型化を実現することを可能にする。
【0064】
なお、変換部13Bの各スイッチング素子に掛る電圧は、前述の変換部13の各スイッチング素子に掛る電圧の半分になる。これにより、更に耐圧が小さなスイッチング素子を適用できれば、スイッチング周波数をさらに高めることが可能になる。
【0065】
上記各実施形態では、制御部50と制御部50Aと制御部50Bと制御部50Rはソフトウェア機能部であってもよく、LSI等のハードウェア機能部であってもよい。
【0066】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、昇圧部5と、容量部8と、抵抗部9と、変換部13と、検出部10と、制御部50(50A、50B)とを持つことにより、電力変換装置100の小型化を実現することができる電力変換装置100を提供することができる。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。