特許第6552896号(P6552896)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6552896原子力発電所の状態監視装置及びその状態監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552896
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】原子力発電所の状態監視装置及びその状態監視方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/00 20060101AFI20190722BHJP
【FI】
   G21C17/00 100
   G21C17/00 700
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-138405(P2015-138405)
(22)【出願日】2015年7月10日
(65)【公開番号】特開2017-20884(P2017-20884A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 守
(72)【発明者】
【氏名】小岩井 正俊
(72)【発明者】
【氏名】林 洋介
(72)【発明者】
【氏名】和田 裕行
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秋夫
【審査官】 小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−195397(JP,A)
【文献】 特開2012−230524(JP,A)
【文献】 特開昭59−174787(JP,A)
【文献】 特開2013−195398(JP,A)
【文献】 特開2014−089134(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0300892(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/00−17/14
9/00−9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプラント現場計器の複数の計器信号を取得して原子力プラントの状態監視制御を行うデジタル状態監視制御システムとともに設置される状態監視装置であり、
前記状態監視制御システムの異常時に、前記複数のプラント現場計器の前記複数の計器信号を取得して、前記状態監視制御システムに代替して前記原子力プラントの状態監視を行う原子力発電所の状態監視装置であって、
前記状態監視制御システムは、前記原子力プラント内に設置されたリモートI/Oユニットと、前記原子力プラント外に設置された緊急時制御室内に配置されて電源および電源配線を備えた演算処理ユニットと、前記リモートI/Oユニットと前記演算処理ユニットとを接続する光多重伝送ケーブルと、を備え、
当該状態監視装置は、
前記原子力プラント内に設置され、この原子力プラントの異常時に前記複数のプラント現場計器の前記複数の計器信号を一括で切り替える計器信号切替回路と、
前記計器信号切替回路から前記緊急時制御室に渡って敷設され、前記計器信号切替回路により切り替えられた前記複数の計器信号を伝送する代替監視ケーブルと、
前記緊急時制御室に設置され、前記代替監視ケーブルにより伝送された前記複数の計器信号を測定する信号測定装置と、
前記計器信号切替回路から前記緊急時制御室に渡って敷設された代替電源ケーブルと、
前記代替電源ケーブルに接続されて前記緊急時制御室から前記計器信号切替回路に給電する代替電源装置と、
を備えることを特徴とする原子力発電所の状態監視装置。
【請求項2】
前記原子力プラントに設置され、前記計器信号切替回路から出力された前記複数の計器信号を取得し、前記代替監視ケーブルに出力するための計器信号を選択する監視信号選択回路をさらに備え、
前記代替監視ケーブルは、前記選択された計器信号を単一のケーブルにより伝送することを特徴とする請求項1に記載の原子力発電所の状態監視装置。
【請求項3】
前記計器信号切替回路は、前記代替電源装置から電源供給されたことを検知し、この検知信号により前記代替監視ケーブルへの信号出力を切り替えることを特徴とする請求項2に記載の原子力発電所の状態監視装置。
【請求項4】
前記監視信号選択回路は、前記代替電源装置からの電源供給の入切により、選択する計器信号を順次切り替えることを特徴とする請求項2又は3に記載の原子力発電所の状態監視装置。
【請求項5】
前記監視信号選択回路は、タイマ回路と、前記タイマ回路が一定時間おきに発生する信号により選択する計器信号を順次切り替えるスイッチ回路と、を備えることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか一項に記載の原子力発電所の状態監視装置。
【請求項6】
前記監視信号選択回路は、前記複数の計器信号それぞれに固有のバイアス信号を印加するバイアス信号印加回路をさらに備え、前記信号測定装置において前記バイアス信号が印加された複数の計器信号を測定し、測定対象の計器信号を異なるレンジにより識別可能とすることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか一項に記載の原子力発電所の状態監視装置。
【請求項7】
前記監視信号選択回路は、前記複数の計器信号が複数のグループに分類されて各グループ内の前記計器信号を順次選択するグループ内信号選択回路と、これらのグループ内信号選択回路の中から一つのグループ内信号選択回路を選択する監視グループ選択回路と、を備えることを特徴とする請求項2ないし6のいずれか一項に記載の原子力発電所の状態監視装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の原子力発電所の状態監視装置を用いて状態監視を行うことを特徴とする原子力発電所の状態監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、原子力発電所の状態監視装置及びその状態監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則」(以下、「新規制基準」という。)が施行されている。この新規制基準によれば、原子力発電所には、原子炉建屋への故意による大型航空機の衝突やテロリズム等に起因する特定重大事故等に対処するため、特定重大事故等対処施設の設置が求められている。また、原子力発電所の必要な設備を監視制御するには、原子力発電所から離れた緊急時制御室において実施することが要求されている。
【0003】
原子力発電所を監視制御するには、信頼性の向上及び信号伝送の合理化の観点から、光多重伝送を伴うデジタル監視制御システムが広く適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−230301号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則」、原子力規制委員会、2014年7月8日施行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した新規制基準において要求される特定重大事故等対処施設は、位置的分散の観点から原子力発電所から離れた場所に設置した緊急時制御室から監視制御するため、長距離の信号伝達が必要となる。これを通常の電気信号による方式で実施する場合には、ケーブル物量が膨大となる。そのため、光多重伝送を伴うデジタル監視制御システムを適用するのが合理的である。
【0007】
しかしながら、このような光多重伝送を伴うデジタル監視制御システムは、重大事故時の過酷な状況を想定すると、電源喪失及びデジタル機器の共通要因故障等により、デジタル多重伝送システムが機能喪失する可能性がある。ここで、上記共通要因故障とは、同一の要因により、多重化されている安全系が機能停止に至る可能性のある故障をいう。
【0008】
さらに、光多重伝送を伴うデジタル監視制御システムでは、重大事故時には放射線の影響等により原子炉建屋内に設置したリモートI/O等の現場装置に近付けない可能性が高い。この場合においても、適切なバックアップにより必要なプラント設備の状態監視を継続することが必要である。
【0009】
本実施形態が解決しようとする課題は、重大事故が発生したとしても、必要最低限のプラントパラメータの状態監視を継続可能とした原子力発電所の状態監視装置及びその状態監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本実施形態に係る原子力発電所の状態監視装置は、複数のプラント現場計器の複数の計器信号を取得して原子力プラントの状態監視制御を行うデジタル状態監視制御システムとともに設置される状態監視装置であり、前記状態監視制御システムの異常時に、前記複数のプラント現場計器の前記複数の計器信号を取得して、前記状態監視制御システムに代替して前記原子力プラントの状態監視を行う原子力発電所の状態監視装置であって、前記状態監視制御システムは、前記原子力プラント内に設置されたリモートI/Oユニットと、前記原子力プラント外に設置された緊急時制御室内に配置されて電源および電源配線を備えた演算処理ユニットと、前記リモートI/Oユニットと前記演算処理ユニットとを接続する光多重伝送ケーブルと、を備え、当該状態監視装置は、前記原子力プラント内に設置され、この原子力プラントの異常時に前記複数のプラント現場計器の前記複数の計器信号を一括で切り替える計器信号切替回路と、前記計器信号切替回路から前記緊急時制御室に渡って敷設され、前記計器信号切替回路により切り替えられた前記複数の計器信号を伝送する代替監視ケーブルと、前記緊急時制御室に設置され、前記代替監視ケーブルにより伝送された前記複数の計器信号を測定する信号測定装置と、前記計器信号切替回路から前記緊急時制御室に渡って敷設された代替電源ケーブルと、前記代替電源ケーブルに接続されて前記緊急時制御室から前記計器信号切替回路に給電する代替電源装置と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本実施形態の原子力発電所の状態監視方法は、前記実施形態に記載の原子力発電所の状態監視装置を用いて状態監視を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本実施形態によれば、重大事故が発生したとしても、必要最低限のプラントパラメータの状態監視を継続することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態の原子力発電所の状態監視装置を示すブロック図である。
図2】第2実施形態の原子力発電所の状態監視装置を示すブロック図である。
図3】第3実施形態の原子力発電所の状態監視装置の監視信号選択回路の内部構成を示す回路図である。
図4】第3実施形態の原子力発電所の状態監視装置における監視信号選択回路の入力信号を示すタイミングチャートである。
図5】第4実施形態の原子力発電所の状態監視装置における監視信号選択回路の内部構成を示す回路図である。
図6】第5実施形態の原子力発電所の状態監視装置における監視信号選択回路の内部構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態に係る原子力発電所の状態監視装置及びその状態監視方法について、図面を参照して説明する。
【0015】
(第1実施形態)
(構 成)
図1は第1実施形態の原子力発電所の状態監視装置を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の原子力発電所の状態監視装置1は、計器信号切替回路15、代替監視ケーブル18、代替電源ケーブル19、信号測定装置20、代替電源装置21、及び計測開始スイッチ22を備える。原子力発電所の状態監視装置1は、例えば特定重大事故等対処設備を備えた原子力発電所に複数設置されている。
【0017】
上記特定重大事故等対処設備とは、安全系設備の機能が喪失した場合、代替手段により原子炉の冷却及び減圧等の安全機能を実施する設備である。この場合、中央制御室を含むプラント内設備の監視制御機能は、期待することができない。そのため、設備の監視制御は、原子力プラント(以下、プラントと略称する。)から離れた建屋に設置した緊急時制御室から遠隔で実施することが要求される。
【0018】
プラントの監視制御には、広くデジタル監視制御システム30が適用されている。デジタル監視制御システム30は、原子力発電所に複数設置されている。特定重大事故等対処設備の監視制御を目的としてデジタル監視制御システム30を構成する場合、その構成例としては、図1に示すように構成されている。
【0019】
具体的には、デジタル監視制御システム30は、緊急時制御室に設置され、プラントの監視制御に係わる演算処理を行う演算処理ユニット2と、プラントに設置され、プラント現場計器17からの計装信号及びポンプや弁等の機器の動作指令信号を入出力するリモートI/Oユニット3と、両ユニット2,3間の信号伝送のために緊急時制御室とプラントとの間を接続する光多重伝送ケーブル14と、を備える。
【0020】
演算処理ユニット2は、マイクロプロセッサ及び記憶装置等を有して演算処理を実行する演算処理装置6と、この演算処理装置6の処理信号を信号配線7を介して取得し、その処理信号を光多重伝送ケーブル14へ入出力する伝送装置5と、演算処理装置6及び伝送装置5へ電源電流を、電源配線8を通して供給する電源装置4と、を備える。
【0021】
リモートI/Oユニット3は、各種センサ及びリミットスイッチ等のプラント現場計器17からの計装信号を入力する信号入力装置11と、ポンプや弁等の機器への動作指令信号を出力する信号出力装置(図示せず)と、信号入力装置11及び上記信号出力装置の処理信号を、信号配線12を通して得て光多重伝送ケーブル14へ入出力する伝送装置10と、上記信号出力装置及び伝送装置10へ電源電流を、電源配線13を通して供給する電源装置9と、を備える。
【0022】
なお、光多重伝送ケーブル14において伝送される信号は、光デジタル信号であり、適切な伝送制御により複数の入出力信号を同一のケーブルによって伝送する。
【0023】
このような構成のデジタル監視制御システム30は、従来のリレーやアナログ回路等のハードワイヤード回路により構成するシステムに比べて一般に信頼性が高く、また上記の多重伝送方式を採用したことにより、ケーブル物量を削減することができる等の利点を有する。
【0024】
その一方でデジタル監視制御システム30は、光多重伝送ケーブル14の断線又は電源喪失、ソフトウェアの共通部分の設計又は実装ミス等の共通要因故障により、システム全体の機能喪失に至る恐れがある。さらに、重大事故時には放射線の影響等により、原子炉建屋近傍に設置したリモートI/Oユニット3には近付けない可能性がある。そのため、本実施形態では、このような状況においても必要最低限なプラントの主要パラメータの代替監視を行うための回路を構成する。
【0025】
本実施形態では、プラント現場計器17のうち代替監視を実施するパラメータとして選択された計器からの信号を計器信号切替回路15に入力させる。この計器信号切替回路15は、デジタル監視制御システム30の信号入力装置11と、原子力発電所の状態監視装置1の代替監視ケーブル18と、代替電源ケーブル19とに接続されている。
【0026】
計器信号切替回路15は、プラント通常運転時、プラント現場計器17から取得した信号をデジタル監視制御システム30の信号入力装置11に出力する。デジタル監視制御システム30に対し代替監視を要する場合、計器信号切替回路15は、代替電源装置21から電源供給の開始信号を得て、信号入力装置11から代替監視ケーブル18側に出力を一括で切り替える機構に構成されている。
【0027】
代替監視ケーブル18は、プラントから緊急時制御室に渡って敷設され、緊急時制御室側のケーブル端は、信号測定装置20を接続可能とする。本実施形態の代替監視ケーブル18は、2本設置した例を示しているが、実際には代替監視を行うパラメータとして計器信号切替回路15に入力する計器の点数に応じた本数が設置される。
【0028】
信号測定装置20は、専用の監視装置の他、信号形式によって例えばオシロスコープ又はテスタ等の簡易な監視装置でも適用可能である。
【0029】
計器信号切替回路15の電源は、緊急時制御室から供給可能とするため、計器信号切替回路15から緊急時制御室に渡り代替電源ケーブル19が敷設されている。代替電源ケーブル19の緊急時制御室側のケーブル端には、電源供給の入切を行う計測開始スイッチ22が接続されるとともに、代替電源装置21を接続可能とする接続端を有する。代替電源装置21は、緊急時の電源として、常設の電源装置の他、例えば可搬の車載バッテリ等でも適用可能である。
【0030】
(作 用)
デジタル監視制御システム30が健全であり、計器信号切替回路15に緊急時制御室から電源電流を供給していない場合、計器信号切替回路15の出力側は、リモートI/Oユニット3内部の信号入力装置11側となっており、プラント現場計器17の計器信号が信号入力装置11に入力する。これにより、デジタル監視制御システム30により、プラントの状態監視を実施可能である。
【0031】
一方、デジタル監視制御システム30が何らかの共通要因故障によって機能喪失した場合、緊急時制御室の運転員が代替電源装置21を代替電源ケーブル19に接続し、さらに計測開始スイッチ22を投入し、計器信号切替回路15へ電源電流を供給する。これにより、計器信号切替回路15は、上記電源電流の信号を得てその出力を一括で自動的に代替監視ケーブル18側へ切り替える。
【0032】
すると、プラント現場計器17からの計器信号は、代替監視ケーブル18により伝送され、緊急時制御室の運転員が信号測定装置20を代替監視ケーブル18のケーブル端に接続することで、信号測定を行うことができる。
【0033】
したがって、本実施形態では、デジタル監視制御システム30が機能喪失した場合、又は発電機等の電源が喪失した場合でも、プラントに設置した信号入力装置11から離れた場所において、代替監視を実施するパラメータとしてあらかじめ選択された計器からの計器信号を監視することができる。
【0034】
(効 果)
このように本実施形態によれば、デジタル監視制御システム30が機能喪失した場合でも、最低限の追加設備で実現する代替手段により、必要最低限のプラントパラメータの状態監視が継続可能となる。
【0035】
(第2実施形態)
(構 成)
図2は第2実施形態の原子力発電所の状態監視装置を示すブロック図である。
【0036】
なお、本実施形態は、前記第1実施形態の変形例であって、前記第1実施形態と同一の部分には、同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0037】
図2に示すように、本実施形態は、前記第1実施形態の原子力発電所の状態監視装置1の構成に加えて、計器信号切替回路15の代替監視ケーブル18に監視信号選択回路16が設けられている。
【0038】
この監視信号選択回路16は、プラントの建屋内に設置され、計器信号切替回路15から複数のプラント現場計器17の計器信号を取得し、代替監視ケーブル18に出力する計器信号を選択する機構を有する。この選択する計器信号は、監視信号選択回路16への電源が入切される度に、その検知信号により順次切り替えられるように設定されている。
【0039】
したがって、本実施形態の代替監視ケーブル18は、監視信号選択回路16により選択された計器信号を伝送するため、前記第1実施形態のように代替監視を行う計器の点数に応じたケーブル本数を設ける必要はなく、単一のケーブルでよい。
【0040】
なお、計器信号切替回路15は、最初に電源が供給される際に出力を代替監視ケーブル18側へ切り替えた以降は、電源の入切を繰り返しても再度デジタル監視制御システム30の信号入力装置11側には切り替わらないような保持機能を有する。
【0041】
代替電源ケーブル19は、計器信号切替回路15及び監視信号選択回路16の双方に接続され、緊急時制御室の代替電源装置21から計器信号切替回路15及び監視信号選択回路16に対して電源電流を供給する。
【0042】
(作 用)
デジタル監視制御システム30が何らかの共通要因故障によって機能喪失した場合、緊急時制御室の運転員が代替電源装置21を代替電源ケーブル19に接続し、さらに計測開始スイッチ22を投入し、計器信号切替回路15へ電源電流を供給する。これにより、計器信号切替回路15は、上記電源電流の信号を得てその出力を一括で自動的に代替監視ケーブル18側へ切り替える。
【0043】
また、監視信号選択回路16は、電源電流が供給されたことを検知し、この検知信号によりあらかじめ設定された順序に従って自動的に1番目の計器信号を選択する。この1番目の計器信号は、代替監視ケーブル18により緊急時制御室に伝送され、緊急時制御室の運転員が信号測定装置20を代替監視ケーブル18のケーブル端に接続することで、信号測定を行うことができる。
【0044】
次に、一旦計測開始スイッチ22を手動にて切操作し、再度入操作することで、監視信号選択回路16は、1番目の計器信号から2番目の計器信号へ切り替える。この2番目の計器信号は、代替監視ケーブル18により緊急時制御室に伝送され、接続された信号測定装置20により測定を実施することができる。
【0045】
同様に、運転員が計測開始スイッチ22の入切を行う度に、監視信号選択回路16によって選択された計器信号が次の計器信号へ切り替えられる。次の計器信号は、代替監視ケーブル18により緊急時制御室に伝送され、接続された信号測定装置20により測定を実施することができる。
【0046】
(効 果)
このように本実施形態によれば、前記第1実施形態の効果に加えて、デジタル監視制御システム30が機能喪失した際においても、単一の代替監視ケーブル18で、複数の計器信号の代替監視を実施することができる。
【0047】
(第3実施形態)
(構 成)
図3は第3実施形態の原子力発電所の状態監視装置の監視信号選択回路の内部構成を示す回路図である。図4は第3実施形態の原子力発電所の状態監視装置における監視信号選択回路の入力信号を示すタイミングチャートである。
【0048】
なお、本実施形態は、前記第2実施形態の変形例であって、前記第2実施形態と同一の部分には、同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0049】
図3に示すように、本実施形態は、前記第2実施形態の構成に加えて、タイマ回路23及びスイッチ回路16Aが設けられている。タイマ回路23は、一定時間間隔でチャンネル切替トリガ信号24をスイッチ回路16Aに出力する。このスイッチ回路16Aは、タイマ回路23からチャンネル切替トリガ信号24を取得する度に、監視信号選択回路16の入力信号CH−1,CH−2,…CH−Nを順次切り替える。これにより、順次選択する計器信号が切り替えられる。
【0050】
代替電源ケーブル19は、計器信号切替回路15、監視信号選択回路16のスイッチ回路16A及びタイマ回路23に接続され、緊急時制御室の代替電源装置21から計器信号切替回路15、監視信号選択回路16のスイッチ回路16A及びタイマ回路23に対して電源電流を供給する。
【0051】
(作 用)
デジタル監視制御システム30が何らかの共通要因故障によって機能喪失した場合、緊急時制御室の運転員が代替電源装置21を代替電源ケーブル19に接続し、さらに計測開始スイッチ22を投入し、計器信号切替回路15へ電源電流を供給する。これにより、計器信号切替回路15は、上記電源電流の信号を得てその出力を一括で自動的に代替監視ケーブル18側へ切り替える。
【0052】
また、監視信号選択回路16のスイッチ回路16Aは、電源電流が供給されたことを検知し、あらかじめ設定された順序に従って自動的に1番目の計器信号を選択する。これにより、監視信号選択回路16は、入力信号CH−1を取得する。タイマ回路23は、電源電流が供給されることにより、一定時間間隔でチャンネル切替トリガ信号24をスイッチ回路16Aに出力する。
【0053】
スイッチ回路16Aは、タイマ回路23からチャンネル切替トリガ信号24を取得することで、まず監視信号選択回路16の入力信号CH−1を入力信号CH−2に切り替える。これにより、1番目の計器信号から2番目の計器信号へ入力信号の選択が切り替えられる。
【0054】
同様に、スイッチ回路16Aは、タイマ回路23からチャンネル切替トリガ信号24を入力する度に、順次入力信号CH−Nの選択を切り替えることを繰り返す。これにより、順次選択する計器信号が切り替えられる。この時のタイマ回路23の出力信号と監視信号選択回路16の入力信号との関係のタイミングチャートを図4に示す。
【0055】
スイッチ回路16Aによって選択された計器信号は、代替監視ケーブル18を通して緊急時制御室に伝送される。緊急時制御室の運転員が信号測定装置20を代替監視ケーブル18のケーブル端に接続することで、一定時間間隔で異なる計器の信号測定を行うことができる。
【0056】
(効 果)
このように本実施形態によれば、前記第1実施形態の効果に加えて、緊急時制御室の運転員は、手動で計測開始スイッチ22の入切を繰り返すことなく、複数の計器信号の代替監視を実施することができる。
【0057】
(第4実施形態)
(構 成)
図5は第4実施形態の原子力発電所の状態監視装置における監視信号選択回路の内部構成を示す回路図である。なお、本実施形態は、前記第3実施形態の変形例であって、前記第3実施形態と同一の部分には、同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0058】
図5に示すように、本実施形態は、前記第3実施形態の構成に加えて、監視信号選択回路16の入力側に接続され、かつ各計器信号に対して固有のバイアス信号を印加するバイアス信号印加回路25が設けられている。
【0059】
ここで、上記バイアス信号とは、監視信号選択回路16において自動で選択されている計器を緊急時制御室の測定端から異なる信号レンジにより識別するためのものである。バイアス信号印加回路25は、測定端において各計器信号成分が互いに異なるレベルで測定できるようなレベルの直流成分を個別の計器信号に印加する回路である。例えば、各計器信号が4〜20mAのレンジの電流信号の場合、1番目の計器信号には0mA、2番目の計器信号には20mA、n番目の計器信号には(n−1)×20mAのバイアス信号をそれぞれ加えるような回路とすればよい。したがって、1番目の計器信号は4〜20mA、2番目の計器信号は、24〜40mA、n番目の計器信号は4+(n−1)×20〜20+(n−1)×20mAのレンジの電流信号になる。
【0060】
代替電源ケーブル19は、計器信号切替回路15、監視信号選択回路16のスイッチ回路16A、タイマ回路23、及びバイアス信号印加回路25に接続され、緊急時制御室の代替電源装置21から各回路に対し電源電流を供給する。
【0061】
なお、本実施形態では、各計器信号が4〜20mAの電流回路について説明したが、これに限らず他の信号形態、例えば電圧信号回路、又は4〜20mA以外の電流回路等であってもよい。
【0062】
(作 用)
デジタル監視制御システム30が何らかの共通要因故障によって機能喪失した場合、緊急時制御室の運転員が代替電源装置21を代替電源ケーブル19に接続し、さらに計測開始スイッチ22を投入し、計器信号切替回路15へ電源電流を供給する。これにより、計器信号切替回路15は、上記電源電流の信号を得てその出力を一括で自動的に代替監視ケーブル18側へ切り替える。
【0063】
また、バイアス信号印加回路25は、代替電源装置21から電源電流が供給されることで、監視信号選択回路16の各入力信号CH−1,CH−2,…CH−Nに対して上述した固有のバイアス信号を印加する。
【0064】
監視信号選択回路16のスイッチ回路16A及びタイマ回路23に電源電流が供給されることで、監視信号選択回路16は、一定時間間隔かつ自動で順次入力信号CH−1,CH−2,…CH−Nの選択を切り替えることを繰り返す。これにより、監視信号選択回路16によって選択された計器信号は、代替監視ケーブル18を通して緊急時制御室に伝送される。そして、緊急時制御室の運転員が信号測定装置20を代替監視ケーブル18のケーブル端に接続することで、一定時間間隔ごとに異なる計器の信号測定を行うことができる。
【0065】
(効 果)
このように本実施形態によれば、前記第1実施形態の効果に加えて、監視信号選択回路16によって選択されている計器を異なる信号レンジにより識別しながら、代替監視を実施することができる。
【0066】
(第5実施形態)
(構 成)
図6は第5実施形態の原子力発電所の状態監視装置における監視信号選択回路の内部構成を示す回路図である。
【0067】
図6に示すように、本実施形態では、前記第2、第3又は第4実施形態において、監視信号選択回路16の内部に、異なるプラント現場計器の計器信号が複数のグループに分類されて各グループ内の計器信号を順次選択するグループ内信号選択回路16B,16Cが設けられている。具体的には、グループ1としてグループ内信号選択回路16B、グループXとしてグループ内信号選択回路16Cに分類されて各グループ内の計器信号が順次選択される。
【0068】
これら各グループ内信号選択回路16B,16Cの出力側には、監視グループ選択回路16Dが接続されている。この監視グループ選択回路16Dは、代替監視ケーブル18に信号出力する対象とするグループの選択切替を行う。すなわち、監視グループ選択回路16Dは、グループ内信号選択回路16B,16Cの中から一つを順次選択する。
【0069】
重大事故時には、事象の進展や、それに応じた事故対策の実施等の状況変化により、重点的に監視すべきプラントのパラメータは異なってくることが考えられる。そのため、予め諸条件により監視対象のプラント現場計器17を複数のグループに分類しておき、これらのグループ毎に異なるグループ内信号選択回路16B,16Cへ入力し、さらに監視グループ選択回路16Dにより、プラントの状況に応じた監視対象のグループを選択可能とする。
【0070】
代替電源ケーブル19は、各グループ内信号選択回路16B,16C、監視グループ選択回路16Dに接続され、緊急時制御室の代替電源装置21から各回路に対し電源電流を供給する。各グループ内信号選択回路16B,16C、監視グループ選択回路16Dの接点切替は、例えば前記第2実施形態の電源の入切による方法や、前記第3実施形態のタイマ回路23等、あるいいはそれらの組合せ等によって実施する。
【0071】
(作 用)
デジタル監視制御システム30が何らかの共通要因故障によって機能喪失した場合、緊急時制御室の運転員が代替電源装置21を代替電源ケーブル19に接続し、さらに計測開始スイッチ22を投入し、計器信号切替回路15へ電源電流を供給する。これにより、計器信号切替回路15は、上記電源電流の信号を得てその出力を一括で自動的に代替監視ケーブル18側へ切り替える。
【0072】
また、運転員が監視グループ選択回路16Dの操作、例えば前記第2実施形態の計測開始スイッチ22の操作による電源供給の入切によって行うことにより監視対象のグループを選択する。
【0073】
さらに、監視対象として選択されたグループのプラント現場計器17は、グループ内信号選択回路16B,16C等によって、例えば前記第3実施形態のタイマ回路23によって順次計器信号を代替監視ケーブル18へ出力する。
【0074】
これにより、緊急時制御室の運転員は、信号測定装置20をケーブル端に接続することで、任意のグループのプラント現場計器17の信号測定を行うことができる。
【0075】
(効 果)
このように本実施形態によれば、前記第1実施形態の効果に加えて、重大事故時のプラントの状況に応じて重点的に監視を行うプラントパラメータを任意に選択し、監視を実施することができる。
【0076】
(その他の実施形態)
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0077】
なお、上記各実施形態における回路及び伝送路の信号形式は、特定の形式に限定するものではなく、例えば上記電流信号の他に、電圧信号、又は光信号等が適用可能である。
【0078】
また、上記各実施形態では、計測開始スイッチ22を代替電源ケーブル19に接続した例について説明したが、この計測開始スイッチ22は、必ずしも必要なものではなく、代替電源装置21に代替電源ケーブル19を接続操作することができればよい。
【符号の説明】
【0079】
1…原子力発電所の状態監視装置、2…演算処理ユニット、3…リモートI/Oユニット、4…電源装置、5…伝送装置、6…演算処理装置、7…信号配線、8…電源配線、9…電源装置、10…伝送装置、11…信号入力装置、12…信号配線、13…電源配線、14…光多重伝送ケーブル、15…計器信号切替回路、16…監視信号選択回路、16A…スイッチ回路、16B…グループ内信号選択回路、16C…グループ内信号選択回路、16D…監視グループ選択回路、17…プラント現場計器、18…代替監視ケーブル、19…代替電源ケーブル、20…信号測定装置、21…代替電源装置、22…計測開始スイッチ、23…タイマ回路、24…チャンネル切替トリガ信号、25…バイアス信号印加回路、30…デジタル監視制御システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6