(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜8のいずれかに記載の積層シートからなる封筒状の包装体であって、内容物の収容空間を挟持する一対の前記積層シートは、前記ポリエチレン系樹脂フィルムの製膜過程におけるフィルム巻き取り方向が揃っている包装体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、特定方向に易カット性を有する積層シート及びそれを用いた包装体を提供することを目的とし、特に電子部品などの内容物の収容及び配送に適しており開封時に手で容易に特定方向に直線状に開封することができる包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、合成樹脂製発泡体と特定のポリエチレン系樹脂フィルムとが積層された積層フィルムによれば、それを用いて包装体を作製した場合に開封時に手で容易に特定方向に直線状に開封することができる包装体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は下記の積層シート及びそれを用いた包装体に関する。
1.
厚さ0.5〜10mmの合成樹脂製発泡体と
厚さ20〜150μmのポリエチレン系樹脂フィルムとが積層された積層シートであって、
(1)前記ポリエチレン系樹脂フィルムは、アイオノマー及び環状オレフィン系重合体の少なくとも一種を含有し、
(2)前記ポリエチレン系樹脂フィルムは、製膜過程におけるフィルム巻き取り方向(MD方向)及びMD方向に対して垂直なTD方向を有し、
(3)前記積層シートは、前記ポリエチレン系樹脂フィルムにより特定される一対のMD方向辺(辺長100mm)及び一対のTD方向辺(辺長100mm)を有する正方形の前記積層シートの試料を用意し、一つの頂点から対角に向かって直線状に30mmの切れ込みを入れ、次いで切れ込み片の片方を試料手前に他方を試料奥にスライドさせることにより試料を引裂いてカット方向性を評価した場合に、前記ポリエチレン系樹脂フィルムのMD方向又はTD方向に選択的に直線状に引裂かれる、
ことを特徴とする積層シート。
2.前記合成樹脂製発泡体は、ポリエチレン系樹脂発泡体である、上記項1に記載の積層シート。
3.前記ポリエチレン系樹脂フィルムが単層又は多層からなり、
多層からなる場合には、いずれか
一層がアイオノマーを含有し、アイオノマーを含有する層の樹脂成分100重量%中、アイオノマーの含有量が10〜100重量%であり、
単層又は多層のいずれの場合も、前記アイオノマーの含有量は、前記ポリエチレン系樹脂フィルム全体の樹脂成分100重量%中、5〜40重量%である、
上記項1又は2に記載の積層シート。
4.前記ポリエチレン系樹脂フィルムが単層又は多層からなり、
多層からなる場合には、いずれか
一層が環状オレフィン系重合体を含有し、環状オレフィン系重合体を含有する層の樹脂成分100重量%中、環状オレフィン系重合体の含有量が5〜60重量%であり、
単層又は多層のいずれの場合も、前記環状オレフィン系重合体の含有量は、前記ポリエチレン系樹脂フィルム全体の樹脂成分100重量%中、5〜30重量%である、
上記項1又は2に記載の積層シート。
5.
厚さ0.5〜10mmの合成樹脂製発泡体と
厚さ20〜150μmのポリエチレン系樹脂フィルムとが積層された積層シートであって、
(1)前記ポリエチレン系樹脂フィルムは、アイオノマー及び環状オレフィン系重合体の少なくとも一種を含有し、
(2)前記ポリエチレン系樹脂フィルムは、製膜過程におけるフィルム巻き取り方向(MD方向)及びMD方向に対して垂直なTD方向を有し、TD方向のエルメンドルフ引裂き強度が1N以下であり、
(3)前記積層シートは、前記ポリエチレン系樹脂フィルムにより特定される一対のMD方向辺(辺長100mm)及び一対のTD方向辺(辺長100mm)を有する正方形の前記積層シートの試料を用意し、一つの頂点から対角に向かって直線状に30mmの切れ込みを入れ、次いで切れ込み片の片方を試料手前に他方を試料奥にスライドさせることにより試料を引裂いてカット方向性を評価した場合に、前記ポリエチレン系樹脂フィルムのTD方向に選択的に直線状に引裂かれる、
ことを特徴とする積層シート。
6.前記合成樹脂製発泡体は、ポリエチレン系樹脂発泡体である、上記項5に記載の積層シート。
7.前記ポリエチレン系樹脂フィルムが単層又は多層からなり、
多層からなる場合には、いずれか
一層がアイオノマーを含有し、アイオノマーを含有する層の樹脂成分100重量%中、アイオノマーの含有量が30〜100重量%であり、
単層又は多層のいずれの場合も、前記アイオノマーの含有量は、前記ポリエチレン系樹脂フィルム全体の樹脂成分100重量%中、5〜40重量%である、
上記項5又は6に記載の積層シート。
8.前記ポリエチレン系樹脂フィルムが単層又は多層からなり、
多層からなる場合には、いずれか
一層が環状オレフィン系重合体を含有し、環状オレフィン系重合体を含有する層の樹脂成分100重量%中、環状オレフィン系重合体の含有量が5〜40重量%であり、
単層又は多層のいずれの場合も、前記環状オレフィン系重合体の含有量は、前記ポリエチレン系樹脂フィルム全体の樹脂成分100重量%中、5〜30重量%である、
上記項5又は6に記載の積層シート。
9.上記項1〜8のいずれかに記載の積層シートからなる封筒状の包装体であって、内容物の収容空間を挟持する一対の前記積層シートは、前記ポリエチレン系樹脂フィルムの製膜過程におけるフィルム巻き取り方向が揃っている包装体。
10.前記合成樹脂製発泡体が封筒状の内側である、上記項9に記載の包装体。
【発明の効果】
【0011】
本発明の積層シートは、合成樹脂製発泡体と特定のポリエチレン系樹脂フィルムとが積層された積層シートであって特定方向(前記ポリエチレン系樹脂フィルムのMD方向又はTD方向)に選択的に直線状に引裂き易い特性を有している。よって、本発明の積層シートを用いて封筒状の包装体を作製すれば、電子部品などの内容物の収容及び配送に適しており開封時に手で容易に特定方向に直線状に開封することができる包装体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の積層シート及び包装体について詳細に説明する。
【0014】
積層シート
本発明の積層シートは、合成樹脂製発泡体とポリエチレン系樹脂フィルムとが積層された積層シートであって、
(1)前記ポリエチレン系樹脂フィルムは、アイオノマー及び環状オレフィン系重合体の少なくとも一種を含有し、
(2)前記ポリエチレン系樹脂フィルムは、製膜過程におけるフィルム巻き取り方向(MD方向)及びMD方向に対して垂直なTD方向を有し、
(3)前記積層シートは、前記ポリエチレン系樹脂フィルムにより特定される一対のMD方向辺(辺長100mm)及び一対のTD方向辺(辺長100mm)を有する正方形の前記積層シートの試料を用意し、一つの頂点から対角に向かって直線状に30mmの切れ込みを入れ、次いで切れ込み片の片方を試料手前に他方を試料奥にスライドさせることにより試料を引裂いてカット方向性を評価した場合に、前記ポリエチレン系樹脂フィルムのMD方向又はTD方向に選択的に直線状に引裂かれる、
ことを特徴とする。
【0015】
上記特徴を有する本発明の積層シートは、合成樹脂製発泡体と特定のポリエチレン系樹脂フィルムとが積層された積層シートであって特定方向(MD方向又はTD方向)に選択的に直線状に引裂き易い特性を有している。よって、本発明の積層シートを用いて封筒状の包装体を作製すれば、電子部品などの内容物の収容及び配送に適しており開封時に手で容易に特定方向に直線状に開封することができる包装体が得られる。
【0016】
先ず、ポリエチレン系樹脂フィルムをインフレーション法により製造する場合における、上記MD方向及びTD方向について図を用いて説明する。
図1はポリエチレン系樹脂フィルムをインフレーション法により製造する場合の製造装置の一態様を示す模式図である。
図1において、ポリエチレン系樹脂フィルム1は、円形ダイス2の環状のダイリップから、紙面の下から上方向、即ち、点線の矢印3の方向に向かって押出され、後工程において巻き取られる。このとき、特定のブロー比で点線4の方向に延伸される。ポリエチレン系樹脂フィルムをインフレーション法により製造する場合、ポリエチレン系樹脂フィルムにおいて、上記フィルム巻き取り方向(MD方向)は点線3の方向であり、上記フィルム巻き取り方向(MD方向)と垂直な方向(TD方向)は点線4の方向である。
【0017】
ポリエチレン系樹脂フィルムは、後述する「環状オレフィン及びアイオノマー」以外の樹脂成分としてはポリエチレン系樹脂を主成分とすることが好ましい。なお、本発明において、「ポリエチレン系樹脂を主成分とする」とは、ポリエチレン系樹脂フィルム全体(ポリエチレン系樹脂フィルムが多層の場合も含む)に含まれる「環状オレフィン及びアイオノマー」以外の樹脂成分100質量%に対してポリエチレン系樹脂を60質量%以上含むことを意味しており、その中でも80質量%以上がより好ましい。
【0018】
ポリエチレン系樹脂としては、特に限定されず、市販されているポリエチレン系樹脂を適宜用いることができる。
【0019】
ポリエチレン系樹脂の中でも、良好なカット性を得るためには、低密度ポリエチレン(LDPE)を30質量%以上含むものが好ましい。より具体的には、LDPEは35質量%以上であればより好ましく、LDPE100質量%の場合であってもよい。ポリエチレン系樹脂として、LDPEと他のポリエチレン系樹脂とを併用する場合には、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等を用いることができる。LDPEと、その他のポリエチレン系樹脂とを併用することにより、フィルムの強度を向上させることができる。これらのLDPE以外のポリエチレン系樹脂は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0020】
LDPEは、密度が0.910〜0.930g/cm
3の範囲のポリエチレン系樹脂(ホモポリエチレン)であり、良好なカット性を得るためには0.915〜0.930g/cm
3の範囲が好ましい。LDPEの製造方法としては例えば、ラジカル開始剤を用いて高圧ラジカル重合により製造されるものが挙げられる。なお、本明細書における密度は、JIS K7112:1999 水中置換法(A法),25℃の条件で測定した値である。
【0021】
LDPEのメルトフローレート(MFR)は、0.5〜6.0g/10分が好ましく、1.0〜4.0g/10分がより好ましい。MFRが高すぎるとインフレーション法により安定的な成膜が困難となり、低すぎるとカット性が低下する。なお、本明細書におけるMFRは、別途測定条件を規定しない限り、JIS K7210:1999,A法,190℃,荷重21.18Nの条件で測定した値である。
【0022】
LLDPE及びMDPEには明確な区別はないが、密度によって便宜上区別することがある。LLDPE及びMDPEは、Ziegler触媒、メタロセン触媒等のシングルサイト系触媒を用いて、エチレンとα−オレフィンとを共重合することにより得ることができ、α−オレフィンの種類や量を調整することによって密度範囲を制御することができる。
【0023】
上記α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは、単独又は2種以上を併用することができる。
【0024】
LLDPEの密度は、0.870〜0.945g/cm
3という広範囲の製品が市販されており、本発明では特に限定されないが、良好なカット性を得るためには0.900〜0.940g/cm
3が好ましく、0.910〜0.940/cm
3がより好ましい。また、LLDPEのMFRは高すぎるとインフレーション法により安定的な成膜が困難となり、低すぎるとカット性が低下する。よって、MFRは0.5〜6.0g/10分が好ましく、1.0〜4.0g/10分がより好ましい。
【0025】
また、MDPEは、LLDPEの中で特に密度が0.930〜0.945/cm
3程度のものを指し、MFRとしては1.0〜4.0g/10分程度が好ましい。
【0026】
HDPEとしては特に限定されないが、密度は0.940〜0.960g/cm
3が好ましく、0.945〜0.960g/cm
3がより好ましい。また、HDPEのメルトフローレート(MFR)は、高すぎるとインフレーション法により安定的な成膜が困難となり、低すぎるとカット性が低下する。よって、MFRは0.1〜4.0g/10分が好ましく、0.5〜2.0g/10分がより好ましい。
【0027】
ポリエチレン系樹脂フィルムは、アイオノマー及び環状オレフィン系重合体の少なくとも一種を含有する。なお、詳細は後述するが、ポリエチレン系樹脂フィルムが多層からなる場合には、いずれかの層がアイオノマー及び環状オレフィン系重合体の少なくとも一種を含有していればよい。
【0028】
以下、アイオノマーについて説明する。なお、本明細書において、「樹脂成分」には、「ポリエチレン系樹脂」及び「アイオノマー」が含まれ得るが、「ポリエチレン系樹脂」と「アイオノマー」とは異なる成分であり、区別される。
【0029】
アイオノマーは、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体の一部又は全部が金属イオンにより中和された樹脂状重合体である。上記エチレン−不飽和カルボン酸共重合体は、不飽和カルボン酸の含有量が好ましくは1〜25質量%、より好ましくは3〜23質量%、更に好ましくは4〜20質量%の共重合体であり、エチレンと不飽和カルボン酸との二元共重合体のみならず、任意に他の単量体が共重合された多元共重合体であってもよい。不飽和カルボン酸の含有量が1質量%未満の場合にはカット性が得られないおそれがあり、25質量%を超えると吸湿による発泡などの不具合が発生するおそれがある。
【0030】
上記エチレン−不飽和カルボン酸共重合体を構成する不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなどを例示することができる。中でも、アクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。
【0031】
上記任意に共重合されていてもよい他の単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等の不飽和カルボン酸エステル、一酸化炭素、二酸化硫黄等を例示することができる。これらの他の単量体は、例えば0〜30重量%、好ましくは0〜20重量%の範囲で共重合されていてもよいが、上述のような他の単量体の含有量が多くなると、得られるアイオノマーの引裂き性が損なわれるおそれがあるため、上述のような他の単量体は含まれていないことが好ましく、含んでいる場合であっても、15質量%以下程度の量で共重合されていることが好ましい。
【0032】
アイオノマーとしては、上記エチレン−不飽和カルボン酸共重合体中のカルボキシル基の10〜100モル%、好ましくは10〜80モル%が金属イオンで中和されたものを好適に用いることができる。上記エチレン−不飽和カルボン酸共重合体中のカルボキシル基の中和度が低過ぎると、フィルムの引裂き性が低下するおそれがある。ここで、上記金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、亜鉛等のイオンが挙げられ、中でも、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム又は亜鉛が好ましく、特に、ナトリウムをイオン源とするアイオノマーを用いると、フィルムが引裂き性に優れる点で、より好ましい。
【0033】
アイオノマーのMFRは、製造工程での成形性やフィルム物性等に優れる点で、0.1〜4.0g/10分であることが好ましく、0.5〜2.0g/10分であることがより好ましい。
【0034】
本発明のポリエチレン系樹脂フィルムは単層又は多層からなり、いずれかの層がアイオノマーを含有し、MD方向又はTD方向に任意にカット方向性を付与するためには、アイオノマーを含有する層の樹脂成分100重量%中、アイオノマーの含有量は10〜100重量%が好ましく、15〜100重量%がより好ましい。また、アイオノマーの含有量は、ポリエチレン系樹脂フィルム全体の樹脂成分100重量%中、5〜40重量%が好ましく、10〜30重量%がより好ましい。
【0035】
これに対して、本発明のポリエチレン系樹脂フィルムは単層又は多層からなり、いずれかの層がアイオノマーを含有し、TD方向に選択的にカット方向性を付与するためには、アイオノマーを含有する層の樹脂成分100重量%中、アイオノマーの含有量は30〜100重量%が好ましく、35〜100重量%がより好ましい。また、アイオノマーの含有量は、ポリエチレン系樹脂フィルム全体の樹脂成分100重量%中、5〜40重量%が好ましく、10〜30重量%がより好ましい。
【0036】
上記アイオノマーを含有する層は、上記ポリエチレン系樹脂の他に、アイオノマー以外に金属イオンで中和されていない他のイオン性コポリマーを含有していてもよい。上記金属イオンで中和されていない他のイオン性コポリマーとしては、上記アイオノマーの調製に用いられる、金属イオンにより中和していないエチレン−不飽和カルボン酸共重合体を用いることができ、当該エチレン−不飽和カルボン酸共重合体は、上記アイオノマーを含有する層に用いられるアイオノマーを調製するためのエチレン−不飽和カルボン酸共重合体と同一であっても異なっていてもよい。
【0037】
以下、環状オレフィン系重合体について説明する。
【0038】
環状オレフィン系重合体としては、重合体中に環状オレフィンを含有していれば特に限定されず、環状オレフィン単独重合体(以下、「COP」とも示す)、エチレン−環状オレフィン共重合体等(以下、「COC」とも示す)を用いることができる。ポリエチレン系樹脂への分散性及びカット性を高めるためにはCOCが好ましい。
【0039】
エチレン−環状オレフィン共重合体としては限定的ではないが、モノマー成分としてのエチレン含有量が25質量%以上でガラス転移点(Tg)が120℃以下であれば、LDPE、LLDPE等のポリエチレン系樹脂への分散性が良くなり、カット性が向上するため好ましい。また、エチレン−環状オレフィン共重合体の密度は0.95〜1.05g/cm
3程度が好ましく、190℃,21.18Nで測定したMFRは0.05〜4.0g/10分程度が好ましい。
【0040】
モノマー成分としての環状オレフィンは、例えば、炭素原子数が3〜20のシクロアルカンを有するビニルシクロアルカン及びその誘導体、炭素原子数が3〜20のモノシクロアルケン及びその誘導体、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン(ノルボルネン)及びその誘導体、トリシクロ[4.3.0.1
2,5]−3−デセン及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.1
3,6.0
2,7.0
9,13]−4−ペンタデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.1
2,5.1
9,12.0
8,13]−3−ペンタデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.1
2,5.1
9,12.0
8,13]−3−ヘキサデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.1
3,6.0
2,7.0
9,14]−4−ヘキサデセン及びその誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.1
3,6.1
10,13.0
2,7.0
9,14]−4−ヘプタデセン及びその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.1
2,9.1
4,7.1
11,17.0
3,8.0
12,16]−5−エイコセン及びその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.1
3,6.1
10,17.1
12,15.0
2,7.0
11,16]−4−エイコセン及びその誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.1
2,9.1
4,7.1
11,18.0
3,8.0
12,17]−5−ヘンエイコセン及びその誘導体、オクタシクロ[8.8.0.1
2,9.1
4,7.1
11,18.1
13,16.0
3,8.0
12,17]−5−ドコセン及びその誘導体、ノナシクロ[10.9.1.1
4,7.1
13,20.1
15,18.0
2,10.0
3,8.0
12,21.0
14,19]−5−ペンタコセン及びその誘導体等があげられる。なお、環状オレフィンは、特開2007−291364号公報に開示されているように、水素添加処理されているものであってもよい。
【0041】
エチレン−環状オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン−ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン共重合体、トリシクロ[4.3.0.1
2,5]−3−デセン−エチレン共重合体、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン−エチレン共重合体等が挙げられる。また、エチレン−環状オレフィン共重合体としては、市販品を用いてもよく、例えば、三井化学(株)製のアペル(商品名)、Topas Advanced Polymers GmbH社製のTOPAS(商品名)等が挙げられる。
【0042】
シクロオレフィン単独重合体としては特に限定されず、ガラス転移点(Tg)が120℃以下であれば、LDPE、LLDPE等のポリエチレン系樹脂への分散性が良くなり、カット性が向上するため好ましい。シクロオレフィン系単独重合体の密度は0.95〜1.05g/cm
3程度が好ましく、190℃,21.18Nで測定したMFRは0.05〜4.0g/10分程度が好ましい。
【0043】
シクロオレフィン単独重合体の市販品としては、例えば、日本ゼオン(株)製のゼオノア(商品名)、JSR(株)製のアートン(商品名)等が挙げられる。
【0044】
上記環状オレフィン系重合体は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0045】
本発明のポリエチレン系樹脂フィルムは単層又は多層からなり、いずれかの層が環状オレフィン系重合体を含有し、MD方向又はTD方向に任意にカット方向性を付与するためには、環状オレフィン系重合体を含有する層の樹脂成分100重量%中、環状オレフィン系重合体の含有量は5〜60重量%が好ましく、10〜60重量%がより好ましい。また、環状オレフィン系重合体の含有量は、ポリエチレン系樹脂フィルム全体の樹脂成分100重量%中、5〜30重量%が好ましく、10〜30重量%がより好ましい。
【0046】
これに対して、本発明のポリエチレン系樹脂フィルムは単層又は多層からなり、いずれかの層が環状オレフィン系重合体を含有し、TD方向に選択的にカット方向性を付与するためには、環状オレフィン系重合体を含有する層の樹脂成分100重量%中、環状オレフィン系重合体の含有量は5〜40重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましい。また、環状オレフィン系重合体の含有量は、ポリエチレン系樹脂フィルム全体の樹脂成分100重量%中、5〜30重量%が好ましく、10〜30重量%がより好ましい。
【0047】
本発明のポリエチレン系樹脂フィルムは、単層又は多層のいずれであってもよい。単層の場合には、厚みは20〜150μmが好ましく、25〜100μmがより好ましい。多層の場合には、総厚みは20〜150μmが好ましく、25〜100μmがより好ましい。
【0048】
多層の場合には、例えば、アイオノマー及び環状オレフィン系重合体の少なくとも一種を含有する層(基本層)を多層中の少なくとも1層として有し、上記基本層の厚みが、フィルムの総厚みの20%以上であることが好ましい。
【0049】
多層の場合には、上記基本層を有していればその層構成は特に限定されず、例えば、中間層としての上記基本層の両面に、内層及び外層として他の層を備える層構成、上記基本層の一方面に、他の層を備える構成、中間層としての他の樹脂層の両面に、内層及び外層として上記基本層を備える構成であってもよい。
【0050】
上記基本層と積層される他の層としては特に限定されず、例えば、LDPEを主成分とする層、LLDPEを主成分とする層等が挙げられ、LDPEからなる層、LLDPEからなる層等が好適に用いられる。
【0051】
多層の場合には、上記基本層の厚みは、フィルムの総厚みの20%以上が好ましい。基本層の厚みがフィルムの総厚みの20%未満であると、カット性を十分に発揮できないおそれがある。上記基本層の厚みは、フィルムの総厚みの25%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。
【0052】
本発明のポリエチレン系樹脂フィルムの引裂き強度は限定的ではないが、TD方向のエルメンドルフ引裂き強度は1N以下であることが好ましい。この中でも、0.1〜0.8Nが好ましい。ポリエチレン系樹脂フィルムを一般的な方法で製膜する場合には、MD方向への分子の配向が強くなり、TD方向の引裂き性を発揮することは困難である。しかしながら、インフレーション法など2軸に延伸されるような成膜法においては、MD方向への分子の配向性を弱めるとともに、相対的にTD方向への分子の配向性を強めることができるためTD方向への引裂き性が向上する。また、本発明ではポリオレフィン系樹脂フィルムにアイオノマー及び/又は環状オレフィン系重合体を添加することにより引裂き性をより向上させることができる。つまり、例えばインフレーション法により製膜することを前提とすれば、TD方向のエルメンドルフ引裂き強度を1N以下に調整することによりTD方向の引裂き性を高め易く、合成樹脂発泡体とポリエチレン系樹脂フィルムとを積層した積層シートにおいても、TD方向へのスムースな引裂き性を発揮することが可能となる。
【0053】
なお、MD方向のエルメンドルフ引裂き強度は限定的ではないが、0.02〜3Nが好ましく、0.05〜1Nがより好ましい。エルメンドルフ引裂き強度を上述の範囲とすることにより、カット性を発揮し易くなる。なお、本明細書における引裂き強度は、JIS K7128−2に準拠したエルメンドルフ法により測定した値である。
【0054】
本発明で用いるポリエチレン系樹脂フィルムは特定のカット方向性を有し、詳細には、一対のMD方向辺(辺長100mm)及び一対のTD方向辺(辺長100mm)を有する正方形のポリエチレン系樹脂フィルムの試料を用意し、一つの頂点から対角に向かって直線状に30mmの切れ込みを入れ、次いで切れ込み片の片方を試料手前に他方を試料奥にスライドさせることにより試料を引裂いてカット方向性を評価した場合に、MD方向又はTD方向(好ましくはTD方向)に選択的に直線状に引裂かれるカット方向性を有する。
【0055】
以下、本発明で用いるポリエチレン系樹脂フィルムのカット方向性の評価方法及びその評価基準について、
図2を参照しながら詳細に説明する。
【0056】
図2(1)は一対のMD方向辺(辺長100mm)及び一対のTD方向辺(辺長100mm)を有する正方形のポリエチレン系樹脂フィルムの試料であり、一つの頂点(
図2(1)では頂点a)から対角(対角頂点d)に向かって直線状に30mmの切れ込みを有する。
【0057】
次いで切れ込み片の片方を試料手前に他方を試料奥にスライドさせることにより試料を引裂いてカット方向性を評価した場合に、
図2(2)では頂点aの対辺のうちMD方向辺(頂点b、dを結ぶ辺)に向かって直線状に引裂かれている。ここで、引裂き速度は300mm/分以下とする。このとき、図のようにMD方向辺の上側頂点bからMD方向辺に沿って75mm以内の部分でカットされていればカット方向性は「TD方向」であると定義する。
【0058】
他方、
図2(3)では頂点aの対辺のうちTD方向辺(頂点c、dを結ぶ辺)に向かって直線状に引裂かれている。ここで、引裂き速度は300mm/分以下とする。このとき、図のようにTD方向辺の上側頂点cからTD方向辺に沿って75mm以内の部分でカットされていればカット方向性は「MD方向」であると定義する。
【0059】
他方、
図2(4)のようにMD方向辺の上側頂点bからMD方向辺に沿って75mm以内の部分でカットされていない場合や、図示はしていないが、TD方向辺の上側頂点cからTD方向辺に沿って75mm以内の部分でカットされていない場合には、MD方向又はTD方向への選択的なカット方向性を有していない(カット方向性「×」)と定義する。
【0060】
つまり、本発明で用いるポリエチレン系樹脂フィルムは、MD方向又はTD方向に引裂き始めた場合にはMD方向又はTD方向に直線的に引裂かれ、MD方向又はTD方向からずれた方向に引裂き始めた場合には、
図2(2)又は(3)のように、引裂き方向がTD方向又はMD方向に選択的に変化する。本発明で用いるポリエチレン系樹脂フィルムは、上記の特定のカット方向性を有するため、本発明の積層シートにおいても同じカット方向性を有する。つまり、ポリエチレン系樹脂フィルムに積層された合成樹脂製発泡体はポリエチレン系樹脂フィルムに追従して引裂かれるために積層シートのカット方向性はポリエチレン系樹脂フィルムのカット方向性と同じとなる。
【0061】
従って、
図2のカット方向性の評価方法及びその評価基準は、積層シートのカット方向性の評価方法及びその評価基準としても当てはまり、本発明の積層シートは、ポリエチレン系樹脂フィルムにより特定される一対のMD方向辺(辺長100mm)及び一対のTD方向辺(辺長100mm)を有する正方形の積層シートの試料を用意し、一つの頂点から対角に向かって直線状に30mmの切れ込みを入れ、次いで切れ込み片の片方を試料手前に他方を試料奥にスライドさせることにより試料を引裂いてカット方向性を評価した場合に、ポリエチレン系樹脂フィルムのMD方向又はTD方向に選択的に直線状に引裂かれる。
【0062】
本発明で用いる合成樹脂製発泡体としては限定されず、封筒状の包装体の緩衝材として公知のものが広く採用できる。
【0063】
合成樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ−4−メチルペンテン、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂が発泡適性に優れている点で好ましい。これらの合成樹脂の中でもポリエチレン系樹脂が特に好ましい。ポリエチレン系樹脂を用いる場合には、ポリエチレン系樹脂フィルムと材質が同一又は類似となるため、両層を熱ラミネートにより積層する場合に接着し易いという利点があり、更には他の合成樹脂を用いる場合に比したコストメリットがある。
【0064】
ポリエチレン系樹脂としては特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等の中から適宜選択して使用できる。これらのポリエチレン系樹脂の中でも、低密度ポリエチレンは発泡性に優れる点で、直鎖状低密度ポリエチレンは高い強度が得られる点でそれぞれ好適に用いることができる。
【0065】
合成樹脂性発泡体は、上記樹脂成分、後記の熱分解型発泡剤及びその他の添加剤を含む発泡性樹脂組成物をバンバリミキサー、単軸押出機、2軸押出機等を用いて溶融混練し、次いでシート状に製膜し、その後、必要に応じて樹脂架橋した後に熱分解型発泡剤の分解温度以上に加熱することによって得られる。ここで、発泡前に樹脂架橋した場合には架橋発泡体が得られ、本発明では特に架橋ポリエチレン系発泡体が好ましい。
【0066】
熱分解型発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、オキシベンゼンスルホニルヒドラジド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラゾジカルボンアミド等が挙げられる。これらは、熱により分解して気体を発生する熱分解型発泡剤である。
【0067】
合成樹脂製発泡体の発泡倍率は限定的ではないが10〜80cc/gが好ましく、20〜50cc/gがより好ましい。発泡倍率が上記範囲内にあることにより、発泡体であることによる緩衝性が得られ易く、また、前記ポリエチレン樹脂フィルムとの積層時(特にラミネート加工時)の熱による過度な収縮を抑制することができる。
【0068】
発泡性樹脂組成物における熱分解型発泡剤の含有量は所望の発泡倍率に応じて適宜調整することができるが、樹脂成分100重量部に対して2〜30重量部が好ましく、5〜25重量部がより好ましい。
【0069】
架橋助剤を添加する場合には、例えば、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等に代表される多官能モノマー、1,4ポリブタジエンに代表される不飽和二重結合を有するポリマーなどが挙げられる。
【0070】
架橋助剤を添加する場合の含有量は所望の架橋度合いに応じて適宜調整できるが、樹脂成分100重量部に対して、通常、多官能モノマーの場合には1〜10重量部が好ましく、不飽和二重結合を有するポリマーの場合には4〜20重量部の範囲が好ましい。
【0071】
その他の添加剤としては、例えば、抗酸化剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料等が例示でき、添加剤の含有量は常法に応じて適宜調整できる。
【0072】
架橋発泡体を得る場合には、発泡性樹脂組成物をシート化した後に、α線、β線、γ線、電子線等の電離放射線を照射することによって架橋できる。電離放射線の照射線量としては0.1〜50Mradが好ましく、0.5〜20Mrad程度がより好ましい。
【0073】
発泡性樹脂組成物を加熱する際は、公知の縦型発泡炉、横型発泡炉等が使用できる。
【0074】
合成樹脂製発泡体の厚みは限定的ではないが、0.5〜10mmが好ましく、1.0〜5mmがより好ましい。前記合成樹脂発泡体の厚みは、より厚い発泡体を製造した後に任意の厚みにスライスすることで得ることもできる。スライスにより得た合成樹脂発泡体はスライス面とその反対側の表皮面が形成されるので、ポリエチレン系樹脂フィルムを表皮面にラミネートする方が、ラミネート強度が強くなるので好ましい。
【0075】
合成樹脂製発泡体とポリエチレン系樹脂フィルムとを積層することにより積層シートを得る方法としては、熱ラミネートを利用することができる。つまり、合成樹脂製発泡体とポリエチレン系樹脂フィルムとを重ね合わせて圧力及び熱を加えることにより積層シートを得ることができる。このとき、合成樹脂製発泡体に製膜過程におけるフィルム巻き取り方向(MD方向)及びMD方向に対して垂直なTD方向が存在する場合には、合成樹脂製発泡体とポリエチレン系樹脂フィルムのフィルム巻き取り方向が揃っているか、又は直交していることが好ましい。つまり、合成樹脂製発泡体のMD方向とポリエチレン系樹脂フィルムとのMD方向が揃っているか、又は、合成樹脂製発泡体のMD方向とポリエチレン系樹脂フィルムのMD方向が直交するように積層することが好ましい。
【0076】
本発明の積層シートは、前述の通り、ポリエチレン系樹脂フィルムが特定のカット方向性を有することに起因して、積層シートとしても特定のカット方向性を有する。詳細には、ポリエチレン系樹脂フィルムにより特定される一対のMD方向辺(辺長100mm)及び一対のTD方向辺(辺長100mm)を有する正方形の積層シートの試料を用意し、一つの頂点から対角に向かって直線状に30mmの切れ込みを入れ、次いで切れ込み片の片方を試料手前に他方を試料奥にスライドさせることにより試料を引裂いてカット方向性を評価した場合に、ポリエチレン系樹脂フィルムのMD方向又はTD方向に選択的に直線状に引裂かれるカット方向性を有する。積層シートのカット方向性の評価方法及びその評価基準については、前述のポリエチレン系樹脂フィルムのカット方向性の評価方法及びその評価基準と同じであり、
図2の試料を積層シートの試料を読み替えるとともに、MD方向、TD方向の用語はポリエチレン系樹脂フィルムのMD方向、TD方向に読み替えればよい。
【0077】
封筒状の包装体
本発明の積層シートは封筒状の包装体の材料として有用である。ここで、本発明の積層シートを用いて封筒状の包装体を形成する方法としては、本発明の積層シートを2つに折り畳んで部分的に熱融着や接着剤などにより接着することにより封筒状の包装体に加工する方法、2枚の積層シートを重ね合わせて部分的に熱融着や接着剤などにより接着することにより封筒状の包装体に加工する方法等が挙げられる。また、あらかじめ封筒内面側の周辺部に粘着加工を施し、被包装物を積層シートに乗せた後に折り畳むか、2枚の積層シートで挟み込んで接着する方法なども有効である。なお、上記いずれの方法においても、内容物の収容空間を挟持する一対の積層シートは、ポリエチレン系樹脂フィルムどうしの製膜過程におけるフィルム巻き取り方向(MD方向又はTD方向)が揃っていることが必要である。また、上記いずれの方法においても、合成樹脂製発泡体が封筒状の内側(内容物側)に位置するように加工することが好ましい。
【0078】
このように一対の積層シートのポリエチレン系樹脂フィルムどうしのMD方向又はTD方向が揃っていることにより、封筒状の包装体を手で引裂いて開封する際にもMD方向又はTD方向に選択的に直線状に引裂いて内容物を取り出すことができる。
【0079】
本発明の封筒状の包装体は、例えば、電子部品などの内容物の収容及び配送に適しており開封時に鋏などを使用することなく手で容易に特定方向に直線状に開封することができる点で従来品に比して有用性が高い。
【実施例】
【0080】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例の範囲に限定されない。
【0081】
実施例1〜5及び比較例1〜3
ポリエチレン系樹脂フィルムを作製するための原料として以下の原料を用意した。実施例1〜5及び比較例2、3は多層フィルムであり、比較例1は単層フィルムである。
(原 料)
・LDPE(旭化成製、M2713、MFR=1.3g/10分、密度0.929g/cm
3)
・アイオノマー(三井デュポン製、ハイミラン1601、MFR=1.3g/10分、密度0.940g/cm
3)
・環状オレフィン系重合体(三井化学製、アペル6509T、密度1.02g/cm
3)
具体的には、3台(内層、中間層及び外層の各層を形成するためのもの)の押出機が接続具を介して直径150mm、リップギャップ1.0mmの円形多層ダイスに接続されてなる多層インフレーション製膜装置を用意した。
【0082】
表1に示す配合でLDPE、アイオノマー及び環状オレフィン系重合体を混合し、上記各押出機に供給し、170℃にて溶融混練した後、溶融状態の樹脂を上記円形ダイスよりダイ温度170℃の条件で吐出(共押出)して溶融製膜した。得られたチューブ状のフィルムは厚み40μm、折幅800mmでブロー比は約3.4であった。そこから、幅290mmのポリエチレン系樹脂フィルムを切り出した。なお、比較例1は中間層のみを単層押出により溶融製膜した。
【0083】
得られた各ポリエチレン系樹脂フィルムの層比、厚み、MD方向のエルメンドルフ引裂き強度、TD方向のエルメンドルフ引裂き強度、カット方向性を調べて表1に示す。
【0084】
合成樹脂製発泡体として、積水化学工業製、ソフトロンS3003(発泡倍率30cc/g、厚み3.0mm)をスライスして1.5mm厚にしたものを用意した。
【0085】
ポリエチレン系樹脂フィルムと、合成樹脂製発泡体の表皮面(スライス断面とは逆面)を重ね合わせてロール温度110℃で熱ラミネートすることにより積層シートを作製した。
【0086】
積層シートのカット性(MD方向)、カット性(TD方向)及びカット方向性を調べて
図3に示す。ここで、カット性(MD方向)及びカット性(TD方向)の試験方法は
図3に示す。また、評価基準は下記の通りである。
【0087】
◎…ノッチがなくてもMD方向又はTD方向に選択的に直線状にカットできた。
○…ノッチを附設すればノッチを起点にMD方向又はTD方向に選択的に直線状にカットできた。
×…ノッチの有無にかかわらず、カットできず、ポリエチレン系樹脂フィルムが伸びたりラミネートが剥離したりした。
【0088】
【表1】
【0089】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜5で用いたポリエチレン系樹脂フィルムはそれぞれTD方向又はMD方向に選択的なカット方向性を有し、それらと合成樹脂性発泡体とを積層してなる積層シートにおいても、ポリエチレン系樹脂フィルムと同様に、TD方向又はMD方向に選択的なカット方向性を有する。つまり、MD方向又はTD方向に引裂き始めた場合にはMD方向又はTD方向に直線的に引裂かれ、MD方向又はTD方向からずれた方向に引裂き始めた場合には、引裂き方向がTD方向又はMD方向に選択的に変化し、最終的にはTD方向又はMD方向に選択的に直線状にカットできる。かかる積層シートは、封筒状の包装体の材料として有用である。
【0090】
これに対して、比較例1〜3で用いたポリエチレン系樹脂フィルムは特定方向に対する選択的なカット方向性を有しておらず、それらと合成樹脂性発泡体とを積層してなる積層シートにおいてはMD方向に引裂き始めた場合にはそのまま直線状にカットすることは可能であるが(但し比較例3はノッチの附設が必要である)、MD方向からずれた方向に引裂き始めた場合には途中でちぎれたりポリエチレン系樹脂フィルムが伸びて合成樹脂製発泡体とのラミネートが剥離したりした。