特許第6552910号(P6552910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552910
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】電動ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20190722BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20190722BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20190722BHJP
   B60T 17/22 20060101ALI20190722BHJP
   F16D 121/24 20120101ALN20190722BHJP
   F16D 127/06 20120101ALN20190722BHJP
   F16D 129/08 20120101ALN20190722BHJP
【FI】
   B60T7/12 A
   B60T13/74 G
   F16D65/18
   B60T17/22 C
   F16D121:24
   F16D127:06
   F16D129:08
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-158926(P2015-158926)
(22)【出願日】2015年8月11日
(65)【公開番号】特開2017-36000(P2017-36000A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2018年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(72)【発明者】
【氏名】増田 唯
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−020668(JP,A)
【文献】 特開2008−298016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12
B60T 13/74
F16D 65/18
B60T 17/22
F16D 121/24
F16D 127/06
F16D 129/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動ブレーキ装置とこの電動ブレーキ装置に電力を供給する電源装置とを備え、
前記電動ブレーキ装置は、ブレーキロータ、摩擦材、この摩擦材を前記ブレーキロータと接触させる摩擦材操作手段、この摩擦材操作手段を駆動する電動モータ、およびこの電動モータから前記摩擦材に至る間の駆動伝達部での機械的係合によって所定のブレーキ力を保持する駐車ブレーキ機構を有する電動ブレーキアクチュエータと、前記電動モータを制御することによりブレーキ力を目標値に追従制御するブレーキ制御手段、および前記駐車ブレーキ機構を制御する駐車ブレーキ制御手段を有するブレーキ制御装置とを有する電動ブレーキシステムにおいて、
前記電源装置とは別の補助電源と、前記電源装置と前記補助電源の電力を使用する比率を変更可能な電源制御装置と、前記電源装置による電力供給状態を監視しその監視の結果により電力供給状態が所定の状態を下回ると判定された場合に、前記電源制御装置を前記補助電源の電力により前記電源装置の供給電力の不足分を補って供給する接続形態とする電源監視制御手段とを有し、前記駐車ブレーキ制御手段は、前記電源制御装置の制御により前記電源装置の供給電力の不足分を前記補助電源を使用して補っている状況において、所定の判断に基づいて、前記電動ブレーキ装置の搭載車両の操縦者の操作によらずに前記駐車ブレーキ機構を動作させる機能を有することを特徴とする、
電動ブレーキシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の電動ブレーキシステムにおいて、前記所定の判断が、目標ブレーキ力、目標ブレーキ力の変化量、推定ブレーキ力、および推定ブレーキ力の変化量、の少なくともいずれか一つ以上に基づいて成すものであり、前記駐車ブレーキ制御手段は、目標ブレーキ力または推定ブレーキ力が増加し、またはこれら目標ブレーキ力および推定ブレーキ力のいずれかの変化量が閾値よりも低下すると、前記電動ブレーキ装置の作動時間における前記駐車ブレーキ機構を機能させる時間を増加させる電動ブレーキシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の電動ブレーキシステムにおいて、前記駐車ブレーキ制御手段は、前記所定の判断を、前記補助電源の残存電力に基づいて為し、前記補助電源の残存電力が低下すると、前記電動ブレーキ装置の作動時間における前記駐車ブレーキ機構を実行する時間の比率を上昇させる電動ブレーキシステム。
【請求項4】
請求項1に記載の電動ブレーキシステムにおいて、前記駐車ブレーキ制御手段は、前記電動ブレーキ装置の搭載車両の車速推定手段を有し、前記所定の判断が、前記電動ブレーキ装置の搭載車両の車速に基づいて為し、前記車速が低下すると、前記電動ブレーキ装置の作動時間における前記駐車ブレーキ機構を機能させる時間の比率を上昇させる電動ブレーキシステム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の電動ブレーキシステムにおいて、前記駐車ブレーキ制御手段は、前記所定の判断に基づいて操縦者の操作によらず前記駐車ブレーキ機構を機能させるときに、前記操縦者によるブレーキ操作手段の操作に追従する通常制動動作の連続作動時間を制限する通常制動時間上限値と、前記駐車ブレーキ機構が機能するときの最低継続時間を制限する駐車制動時間下限値とを有し、前記駐車ブレーキ機構が機能する時間の比率が、前記通常制動時間上限値および駐車制動時間下限値を変更することによって調整可能である電動ブレーキシステム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の電動ブレーキシステムにおいて、前記電動ブレーキ装置を搭載する車両の駆動力の状態を推定する駆動力監視手段を有し、前記駐車ブレーキ制御手段は、前記駆動力監視手段により車両の駆動力が喪失または所定値を下回っていると判断され、かつ前記電動ブレーキ装置の搭載車両が概ね停止していると判断
されたときに、前記駐車ブレーキ機構を機能させたままで車両停止状態を維持し続ける電動ブレーキシステム。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の電動ブレーキシステムにおいて、前記駐車ブレーキ機構が、前記電動モータから前記摩擦材操作手段までの駆動伝達部を構成する部品および静止部品のうち、互いに係合することで前記摩擦材の緩み方向への移動を阻止する部品の間で、両部品を係合させる係合部と被係合部とを係合させ、前記電動モータの動力によらず前記摩擦材の押圧力を保持する構成である電動ブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駐車ブレーキの機能を備えた電動ブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動ブレーキ装置や駐車ブレーキ機構として、次の各例が提案されている。
・電動モータでブレーキ力を制御する電動ブレーキ装置(特許文献1)。
・摩擦パッド押圧力を検出するディスクブレーキ(特許文献2)。
・ボールねじのボールに熱伝導率の低い部材を使用した、ボールねじ方式の電動ブレーキ装置(特許文献3)。
・ソレノイドを使用したパーキングブレーキ機構(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-247576号公報
【特許文献2】特開2010-270788号公報
【特許文献3】特開2006-183809号公報
【特許文献4】特開2012-087889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜4のような電動ブレーキ装置において、特に電源装置の失陥に対する冗長系が課題となる場合がある。その際、補助の電源を設ける冗長系において、長時間にわたりブレーキをかけることのできる補助電源について、コストや搭載スペースが課題となる場合がある。
例えば特許文献3,4において、電力を消費することなくブレーキ力を維持する機構が提案されている。しかしながら、前記の機構によってブレーキ力を維持すると、ブレーキ力の変更には一度係合部を離反させなければならない。そのため、ブレーキ力の変更に時間を要し、素早い変更ができず、ブレーキフィーリングが悪化する恐れがある。
【0005】
この発明の目的は、電源装置の電力供給状態が低下しても、補助電源からの電力の補助により、必要なブレーキ動作が可能であり、かつ駐車ブレーキ機構を適宜使用しながらブレーキ動作を行うことができて、消費電力を低減でき、特に補助電源使用時におけるブレーキ作動時間の延長に有効となり、さらに駐車ブレーキ機構を使用することによるブレーキ性能およびフィーリングへの影響を極力小さくすることができる電動ブレーキシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この電動ブレーキシステムは、電動ブレーキ装置1とこの電動ブレーキ装置1に電力を供給する電源装置19とを備え、
前記電動ブレーキ装置1は、ブレーキロータ6、摩擦材7、この摩擦材7を前記ブレーキロータ6と接触させる摩擦材操作手段8、この摩擦材操作手段8を駆動する電動モータ9、およびこの電動モータ9から前記摩擦材7に至る間の駆動伝達部での機械的係合によって所定のブレーキ力を保持する駐車ブレーキ機構5を有する電動ブレーキアクチュエータ2と、前記電動モータ9を制御することによりブレーキ力を目標値に追従制御する主ブレーキ制御手段21、および前記駐車ブレーキ機構5を制御する駐車ブレーキ制御手段22を有するブレーキ制御装置3とを有する電動ブレーキシステムにおいて、
前記電源装置19とは別の補助電源25と、前記電源装置19と前記補助電源25の 電力を使用する比率を変更可能な電源制御装置24と、前記電源装置19による電力供給状態を監視しその監視の結果により電力供給状態が所定の状態を下回ると判定された場合に、前記電源制御装置24を前記補助電源25の電力により前記電源装置19の供給電力の不足分を補って供給する接続形態とする電源監視制御手段23とを有し、前記駐車ブレーキ制御手段22は、前記電源制御装置24の制御により前記電源装置19の供給電力の不足分を前記補助電源25を使用して補っている状況において、所定の判断に基づいて、前記電動ブレーキ装置1の搭載車両の操縦者の操作によらずに前記駐車ブレーキ機構5を動作させる機能を有することを特徴とする。
なお、前記「所定の判断」は、設計によって適宜の内容に定めれば良い。
【0007】
この構成によると、駐車ブレーキ機構5を適宜使用しながらブレーキ動作を行うことで、消費電力を低減し、特に補助電源25の使用時におけるブレーキ作動時間の延長に有効となる。また、前記駐車ブレーキ機構5を使用する頻度を、状況に応じて変更することで、ブレーキ性能およびフィーリングへの影響を極力小さくすることができる。
具体的には、主となる前記電源装置19(以下、「主電源装置19」称する場合がある)とは別の補助電源25と、電力供給状態が所定の状態を下回った場合に、前記補助電源25の電力を補って前記電動モータ9の駆動に使用する電源制御装置24とを備えるため、前記主電源装置19の出力電圧が蓄電量の低下等により低下しても、補助電源25の電力が主電源装置19の出力に加えられ、通常の制動動作を適正に行うことができる。
前記補助電源25は、主電源装置19と並設されるため、大きな電力容量にすると、過剰構成となってコスト増となるうえ、重量増となるため、電力容量を抑える必要がある。これにつき、前記駐車ブレーキ機構5は 駆動伝達部での機械的係合によってブレーキ力を保持する構成であるため、電力消費を殆ど必要とせずにブレーキ力の保持が可能であり、また前記駐車ブレーキ制御手段22は、前記補助電源25を使用している状況において、所定の判断に基づいて、前記電動ブレーキ装置1の搭載車両の操縦者の操作によらずに前記駐車ブレーキ機構5を動作させる。そのため、運転者が特に注意しなくても、消費電力を低減できる。
【0008】
このように、駐車ブレーキ機構5を適宜使用しながらブレーキ動作を行うことで、消費電力を低減し、特に補助電源25の使用時における補助電源25の電力枯渇によるブレーキ失陥までの猶予時間を延長し、冗長性を向上させることができる。このため、主電源装置19の蓄電量の低下等による出力電圧の低下が生じても、修理や保守の可能な場所まで車両を走行させることができ、また走行を続ける間における主電源装置19の充電も期待できる。
走行中における前記駐車ブレーキ機構5の使用は、消費電力を低減させる反面、ブレーキ操作のフィーリング低下を招くが、駐車ブレーキ機構5の使用は、前記補助電源25を使用している状況において、かつ所定の判断に基づいてようにしている。このように、駐車ブレーキ機構5を使用する条件を限られた条件に限定しているため、頻繁に駐車ブレーキ機構5を使用する場合に比べて、ブレーキ操作のフィーリングの低下が抑制される。前記所定の判断の設定内容によって、制動が重要で操作フィーリングまでを問えない場合に限定して駐車ブレーキ機構5を使用することもできる。
【0009】
この発明において、前記所定の判断が、目標ブレーキ力、目標ブレーキ力の変化量、推定ブレーキ力、および推定ブレーキ力の変化量、の少なくともいずれか一つ以上に基づいて成すものであり、前記駐車ブレーキ制御手段22は、目標ブレーキ力または推定ブレーキ力が増加し、またはこれら目標ブレーキ力および推定ブレーキ力のいずれかの変化量が閾値よりも低下すると、前記電動ブレーキ装置1の作動時間における前記駐車ブレーキ機構5を機能させる時間を増加させるようにしても良い。
【0010】
前記駐車ブレーキ制御手段22により駐車ブレーキ機構5を機能させる頻度変更の条件として、上記のように、例えば目標ブレーキ力ないし推定ブレーキ力の何れかを用いることができる。
一般に、ブレーキ力が大きいほど消費電力は増加する傾向がある為、ブレーキ力が増加するほど駐車制動の頻度が高くなる処理とすると好適と考えられる。ブレーキ力の増加は、目標ブレーキ力と推定ブレーキ力とのいずれであっても良い。
また、前記頻度変更の条件として、例えば目標ブレーキ力ないし推定ブレーキ力の変化量を用いることができる。前記変化量が小さいほどブレーキ力を変化させる必要性が小さく、駐車ブレーキを使用したときの制動性能への影響が小さいため、前記変化量が小さいほど駐車制動の頻度が高くなる処理とすると好適と考えられる。
【0011】
この発明において、前記駐車ブレーキ制御手段22は、前記所定の判断を、前記補助電源25の残存電力に基づいて為し、前記補助電源25の残存電力が低下すると、前記電動ブレーキ装置1の作動時間における前記駐車ブレーキ機構5を実行する時間の比率を上昇させるようにしても良い。
前記補助電源25の残存電力が少なくなるほど、ブレーキフィーリング等を犠牲にしてもブレーキ動作可能時間を延長する必要があるため、前記残存電力が少なくなるほど駐車制動の頻度が高くなる処理とすると好適と考えられる。
補助電源25の残存電力に応じて、駐車ブレーキ機構5を適用する頻度を段階的に調整することで、極力ブレーキフィーリングを維持しつつ、補助電源25の電力枯渇によるブレーキ失陥までの猶予時間を延長し、冗長性を向上させることができる。
【0012】
この発明において、前記駐車ブレーキ制御手段22は、前記電動ブレーキ装置1の搭載車両の車速推定手段29を有し、前記所定の判断を、前記電動ブレーキ装置1の搭載車両の車速に基づいて為し、前記車速が低下すると、前記電動ブレーキ装置1の作動時間における前記駐車ブレーキ機構5を機能させる時間の比率を上昇させるようにしても良い。
前記車速が低いほど車両の安全性に対する制動性能悪化の影響が低いため、車速が低くなるほど駐車制動の頻度が高くなる処理とすると好適と考えられる。特に、車速が概ね零すなわち停車状態であれば、ブレーキ力を変化させる必要が無いため、車両を停止するのに十分なブレーキ力をもって駐車制動を行うと好適と考えられる。その際、例えば車両の駆動力が喪失している場合は、駐車制動を解除する必要が無いため、駐車制動を維持し続ければよい。
【0013】
なお、前記駐車ブレーキ制御手段22は、前記所定の判断およびその判断結果に基づく処理につき、前記処理の判断,処理のうちの一つを選択して実行しても、また二つ以上を適宜組み合わせて実行しても良い。
【0014】
この発明において、前記駐車ブレーキ制御手段22は、前記所定の判断に基づいて操縦者の操作によらず前記駐車ブレーキ機構5を機能させるときに、前記操縦者によるブレーキ操作手段31の操作に追従する通常制動動作の連続作動時間を制限する通常制動時間上限値Cthsと、前記駐車ブレーキ機構5が機能するときの最低継続時間を制限する駐車制動時間下限値Cthpとを有し、前記駐車ブレーキ機構5が機能する時間の比率が、前記通常制動時間上限値Cthsおよび駐車制動時間下限値Cthpを変更することによって調整可能であっても良い。
この構成のように、前記駐車ブレーキ機構5が機能する時間の比率を、前記通常制動時間上限値Cthsおよび駐車制動時間下限値Cthpを変更することによって調整可能とした場合、消費電力を抑える程度と、操作のフィーリングを重視する制御との割合を、容易に変更することができる。
【0015】
この発明において、前記電動ブレーキ装置1を搭載する車両の駆動力の状態を推定する駆動力監視手段32を有し、前記駐車ブレーキ制御手段22は、前記駆動力監視手段32により車両の駆動力が喪失または所定値を下回っていると判断され、かつ前記電動ブレーキ装置1の搭載車両が概ね停止していると判断されたときに、前記駐車ブレーキ機構5を機能させたままで車両停止状態を維持し続けるようにしても良い。
車両の駆動力が喪失している場合、ブレーキにより車両が停車した後に再度走行することは無いため、駐車ブレーキ機構5を機能させ続けることで、安全に車両の停止状態を維持することができる。
【0016】
この発明において、前記駐車ブレーキ機構5が、前記電動モータ9から前記摩擦材操作手段8までの動力伝達部を構成する部品および静止部品のうち、互いに係合することで前記摩擦材の緩み方向への移動を阻止する部品の間で、両部品を係合させる係合部と被整合部とを係合させ、前記電動モータ9の動力によらず前記摩擦材7の押圧力を保持する構成であっても良い。
このように、駐車ブレーキ機構5が部品間の係合で移動阻止を行う構成とすることで、電力消費を殆ど必要とせずに、制動力を維持することができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明の電動ブレーキシステムは、電動ブレーキ装置とこの電動ブレーキ装置に電力を供給する電源装置とを備え、前記電動ブレーキ装置は、ブレーキロータ、摩擦材、この摩擦材を前記ブレーキロータと接触させる摩擦材操作手段、この摩擦材操作手段を駆動する電動モータ、およびこの電動モータから前記摩擦材に至る間の駆動伝達部での機械的係合によって所定のブレーキ力を保持する駐車ブレーキ機構を有する電動ブレーキアクチュエータと、前記電動モータを制御することによりブレーキ力を目標値に追従制御するブレーキ制御手段、および前記駐車ブレーキ機構を制御する駐車ブレーキ制御手段を有するブレーキ制御装置とを有する電動ブレーキシステムにおいて、前記電源装置とは別の補助電源と、前記電源装置と前記補助電源の電力を使用する比率を変更可能な電源制御装置と、前記電源装置による電力供給状態を監視しその監視の結果により電力供給状態が所定の状態を下回ると判定された場合に、前記電源制御装置を前記補助電源の電力により前記電源装置の供給電力の不足分を補って供給する接続形態とする電源監視制御手段とを有し、前記駐車ブレーキ制御手段は、前記電源制御装置の制御により前記電源装置の供給電力の不足分を前記補助電源を使用して補っている状況において、所定の判断に基づいて、前記電動ブレーキ装置の搭載車両の操縦者の操作によらずに前記駐車ブレーキ機構を動作させる機能を有するため、主電源装置の電力供給状態が低下しても、補助電源からの電力の補助により、必要なブレーキ動作が可能であり、かつ駐車ブレーキ機構を適宜使用しながらブレーキ動作を行うことができて、消費電力を低減でき、特に補助電源使用時におけるブレーキ作動時間の延長に有効となり、さらに駐車ブレーキ機構を使用することによるブレーキ性能およびフィーリングへの影響を極力小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の一実施形態に係る電動ブレーキシステムの概念構成を示すブロック図である。
図2】同電動ブレーキシステムにおける電動ブレーキ装置の概略構成の説明図である。
図3】同電動ブレーキ装置における駐車ブレーキ機構の説明図である。
図4】同電動ブレーキシステムの駐車ブレーキ制御手段の制御動作の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。図1において、この電動ブレーキシステムは、電動ブレーキ装置1と、この電動ブレーキ装置1に電力を供給する電源装置19とを備え、上位ECU20からの制動指令等によって操作される。
電動ブレーキ装置1は、機械的な部分である電動ブレーキアクチュエータ2と、この電動ブレーキアクチュエータ2を制御するブレーキ制御装置3とでなる。電動ブレーキアクチュエータ2は、ブレーキ力の制御が可能な主ブレーキ部4の他に、この主ブレーキ部4を利用して駐車ブレーキとして機能する駐車ブレーキ機構5を有する。また、電動ブレーキアクチュエータ2には、その状態を検出するセンサ14が設けられている。
【0020】
前記ブレーキ制御装置3は、前記電動ブレーキアクチュエータ2の電動モータ9を制御することによりブレーキ力を目標値に追従制御する主ブレーキ制御手段21、および前記駐車ブレーキ機構5を制御する駐車ブレーキ制御手段22を有する。
【0021】
この電動ブレーキシステムは、上記構成において、前記電源装置19とは別に補助電源25が設けられ、前記電源装置19の電力と前記補助電源25の電力を使用する比率を変更可能な電源制御装置24と、前記電源装置19による電力供給状態を監視しその監視の結果により電力供給状態が所定の状態を下回ると判定された場合に、前記電源制御装置24を、前記補助電源25の電力により前記電源装置19の供給電力の不足分を補って供給する接続形態とする電源監視制御手段23とを有している。前記駐車ブレーキ制御手段23は、前記電源制御装置24により前記補助電源25を使用して補っている状況において、所定の判断に基づいて、前記電動ブレーキ装置1の搭載車両の操縦者の操作によらずに前記駐車ブレーキ機構5を動作させる機能を有する。
なお、本図は、この提案を実現するための構成のみを示すものであり、その他必要な機能については本図に示す以外の機能を適宜実装されるものとする。
以下、各部を具体的に説明する。
【0022】
図2は、電動ブレーキアクチュエータ2の一例を示す。この電動ブレーキアクチュエータ2は、自動車等の車両の車輪(図示せず)と一体に回転するレーキロータ6と、摩擦材7と、この摩擦材7を前記ブレーキロータ6と接触させる摩擦材操作手段8と、この摩擦材操作手段8を駆動する電動モータ9とで、前記主ブレーキ部4が構成される。前記摩擦材操作手段8は、送りねじ機構等からなる直動機構8aと、前記電動モータ9の駆動を直動機構8aに減速して伝える減速機8bとでなる。減速機8bは、図示の例ではギヤ列からなり、1次歯車12、中間歯車13、および3次歯車11を含む。この例では、減速機構8bは、電動モータ9のロータ軸9aに取り付けられた1次歯車12の回転を、中間歯車13を介して、直動機構8aの回転軸8aaに固定された3次歯車11に伝達可能としている。
【0023】
駐車ブレーキ機構5は、前記電動モータ9から摩擦材7に至る間の駆動伝達部となる摩擦材操作手段8までの、ブレーキハウジング(図示せず)等との機械的係合によって所定のブレーキ力を保持する機構とされる。例えば、前記電動モータ9から前記摩擦材操作手段8までの駆動伝達部を構成する部品および静止部品のうち、互いに係合することで前記摩擦材7の緩み方向への移動を阻止する部品の間で、両部品を係合させる係合部と被係合部とを係合させ、前記電動モータ9の動力によらず前記摩擦材7の押圧力を保持する構成とされる。
【0024】
図3は、駐車ブレーキ機構5の概略を側面視で示す図である。中間歯車13の片面に、被係合部である複数(この例では6個)の係止孔17が円周方向一定間隔おきに形成される。各係止孔17は、円周方向に沿って延びる長孔形状にそれぞれ形成される。これら係止孔17のいずれか1つに、係合部である進退可能なロック部材15が係止可能に構成される。ロック部材15は、係脱駆動源16(図2)により進退駆動される。
【0025】
係脱駆動源16には、この例ではソレノイドが適用される。係脱駆動源16によりロック部材15を進出させて中間歯車13に形成された係止孔17の有底円筒孔部17aに嵌まり込ませることで係止し、中間歯車13の回転を阻止することで、摩擦材7が現在位置に保たれ、このときのブレーキ力が維持される。つまり、係脱駆動源16が設置されたブレーキハウジング(図示せず)に対して係合することになり、中間歯車13がパーキングロック状態となる。ロック部材15の一部または全部を退避させて係止孔17(図3)から離脱させることで中間歯車13の回転を許容し、アンロック状態となる。
なお、駐車ブレーキ機構5の係脱駆動源16は、この例ではソレノイドを用いたが、例えばDCモータ等の電動モータと直動機構等で構成されていても良い。駐車ブレーキ機構5は、このように前記ソレノイドやDCモータを用いて減速機8b等のトルク伝達部をハウジングと係合する機構を用いると安価で好適と考えられる。
【0026】
前記主ブレーキ部4の前記電動モータ9は、BLDCモータを用いると省スペースで高出力を得られて好適であるが、ブラシ付DCモータや誘導モータを用いても良い。前記直動機構8aは、前記送りねじ機構の他に、ランプ機構等の回転運動を直進運動に変換する機構を用いることができる。減速機8bは、図3の例のような平行歯車を用いると安価で好適と考えられるが、遊星歯車やウォーム歯車等を用いることもでき、要求推力によっては減速機8bを用いなくても良い。
【0027】
図1において、前記センサ14として、例えば電動モータ9の角度を検出する角度センサや、ブレーキ力センサ、等を備えると高精度な制御を実現できて好適と考えられる。
前記電源装置19は、例えば自動車における低圧電源とすると、安価に実現できて好適と考えられる。補助電源25は、例えばバッテリやキャパシタ等の蓄電装置を用いることができる。
なお、補助電源25、前記電源制御装置24、および電源監視制御手段23等は、電動ブレーキ装置1の電動ブレーキアクチュエータ2に設置する代わりに、電動ブレーキ装置1を搭載する車両の前記電動ブレーキアクチュエータ2とは別の場所に備えても良いが、本図に示す構成のように、例えばブレーキ制御装置3に小型のキャパシタと制御回路を備えるよう実装すると、高い冗長性が期待できて好適と考えられる。
【0028】
上位ECU20は、ブレーキペダル等の運転者が操作するブレーキ操作手段31の操作に従って、または自動運転や安全性確保のための制御手段(図示せず)によって生成される制動指令に従って、前記電動ブレーキ装置1に制動指令を与える機能を有する電子制御ユニットである。上位ECU20は、例えば自動車における全体の協調制御や統括制御を行うメインの電気制御ユニット(「VCU」とも称される)としても良く、その場合、簡潔な構成となり好適と考えられるが、電動ブレーキ装置1の統合制御装置(図示せず)として、メインECUとは別途に設けても良い。
【0029】
前記ブレーキ制御装置3は、演算器26を備え、この他にモータドライバ27、駐車ブレーキ機構駆動装置28、前記電源制御装置24を備えている。前記演算器26に、前記主ブレーキ制御手段21、駐車ブレーキ制御手段22、および前記電源監視制御手段23が設けられている。
【0030】
前記演算器26は、例えばマイコン、FPGA、ASIC、DSP等によって実装しても良く、それにより複雑な制御機能を簡潔に実装できて好適と考えられる。モータドライバ27は、前記主ブレーキ制御手段21が出力したモータ駆動指令に従ってモータ電流を流す回路であり、例えばFETを用いたハーフブリッジ回路により実装すると安価で好適と考えられる。前記駐車ブレーキ機構駆動装置28は、前記駐車ブレーキ制御手段22の出力に従って駐車ブレーキ機構5の駆動電力を供給する手段であり、例えば前記電動ブレーキアクチュエータ2内の駐車ブレーキ機構5の駆動源がソレノイドであればスイッチ等で、DCモータ等の電動モータであればハーフブリッジ回路等により実装すると安価で好適と考えられる。
【0031】
電源制御装置24は、電源装置19及び補助電源25から供給される電力をブレーキ制御装置3および電動ブレーキアクチュエータ2の全体に供給する機能を有し、例えば主電源装置19におよび補助電源25に対して電流制御回路を設けた構成であっても良く、或いは単純に両者を切り替えるスイッチで構成しても良い。また、電源装置19で補助電源25を充電する回路を設けても良い。
【0032】
前記演算器26は、前述のように主ブレーキ制御手段21、駐車ブレーキ制御手段22、および前記電源監視制御手段23が設けられている。
主ブレーキ制御手段22は、上位ECU20等から与えられたブレーキ力の目標値に従い、フィードフォワード制御やフィードバック制御により、ブレーキ力を目標値に追従させるための電動モータ9の駆動電力を決定する。この決定した駆動電力に従ってモータドライブ27が駆動電力を電動モータ9に出力する。
【0033】
駐車ブレーキ制御手段22は、目標となるブレーキ力に保持するよう、主ブレーキ部4のブレーキ制御と連動して駐車ブレーキ機構5を動作させる。駐車ブレーキ制御手段22は、具体的には図4の流れ図で示す処理を行う。
電源監視制御手段23は、前記電源装置19および補助電源25の電力供給状況を監視し、電源装置19からの電力供給が例えば閾値以下に低下したときに補助電源25を使用して前記低下電力を補うように、前記電源制御装置24は補助電源25の電力を使用する比率を変更する。また、電源監視制御手段23は、電源装置19からの電力供給が例えば閾値以上である場合に、前記電源制御装置24を用いて、補助電源25を電源装置19の電力で適宜充電する処理等を行う。
【0034】
図4は、上記構成の電動ブレーキシステムにおける駐車ブレーキ制御手段22(図1)が行う処理の例を示す。
まず、ステップf1で、この電動ブレーキシステムの制動モードがブレーキ力を目標値に対して追従制御する通常制動モードにあるか否かを判定する。通常制動モードにあるときは、通常制動モードの継続時間の計算のためのカウンタ値Cbsを一定値(例えば1)だけ加算し(ステップf2)、カウンタ値Cbsが閾値(スレッショルド)Cthsよりも大きいか否かを判断する(ステップf3)。閾値以下である場合は、電動ブレーキ装置1の制動モードを通常精度モードに維持して(ステップf4)、処理を終了し、再度ステップf1から同図の処理を行う。
【0035】
継続時間のカウンタ値Cbsが所定値、つまり前記閾値Cthsを超えると、駐車制動力のブレーキ力を現在のブレーキ力F(k)に設定し(ステップf5)、駐車制動モードに移行する(ステップf6)。この後、前記カウンタ値Cbsを零にリセットし(ステップf7)、処理を終了して最初のステップf1から同図の処理を行う。
【0036】
ステップf1の判断で、駐車制動モードである場合は、駐車制動の継続時間を計測するカウンタ値Cpsを一定値(例えば1)だけ加算し(ステップf8)、カウンタ値Cpsが閾値(スレッショルド)Cthpよりも大きいか否かを判断する(ステップf9)。継続時間が閾値Cthpに達していない場合は、制動モードを駐車制動のモード(ステップf10)としたままで処理を終了し、最初のステップf1から同図の処理を行う。
【0037】
駐車制動の継続時間Cpsがステップf9の判断で閾値Cthpに達すると、目標ブレーキ力F(k)と推定ブレーキ力F(k)との偏差ΔFを求める(ステップf11)。推定ブレーキ力Fb(k)は、電動ブレーキアクチュエータ2が有する前記センサ14(図1)の計測値から定める。
この偏差ΔFの絶対値をブレーキ力変化の閾値(スレッショルド)Fthと比較する(ステップf12)。偏差ΔFが閾値Fthに達していない場合は、制動モードを駐車制動に維持(ステップf10)したままで処理を終了し、最初のステップf1から同図の処理を行う。
ステップf12の判断で、偏差ΔFが閾値Fthを超えていると、通常制動モードに移行し(ステップf13)、カウンタ値Cpsを零にリセットし(ステップf14)、処理を終了する。このような処理を常時繰り返す。
【0038】
同図の流れ図の処理例において、例えば各カウンタの閾値Cths,Cthpの値を調整することにより、駐車制動モードに入る頻度を変更することができる。例えば頻度を増加させると電力消費を抑えることができ、頻度を減少させるとブレーキ制御精度が向上する。従って、例えば消費電力を押さえなければならない冗長制御時において前記の駐車制動の頻度を上げる処理を行うと、補助電源25の電力を長く使えて好適と考えられる。
【0039】
前記の駐車制動の頻度変更の条件として、例えば目標ブレーキ力ないし推定ブレーキ力の何れかを用いることができる。一般に、ブレーキ力が大きいほど消費電力は増加する傾向がある為、ブレーキ力が増加するほど駐車制動の頻度が高くなる処理とすると好適と考えられる。
【0040】
前記の駐車制動の頻度変更の条件として、例えば目標ブレーキ力ないし推定ブレーキ力の変化量を用いることができる。前記変化量が小さいほどブレーキ力を変化させる必要性が小さく、駐車ブレーキを使用したときの制動性能への影響が小さいため、前記変化量が小さいほど駐車制動の頻度が高くなる処理とすると好適と考えられる。
【0041】
これにつき纏めると、前記駐車ブレーキ制御手段22は、前述のように、前記電源制御装置24の制御により前記補助電源25を使用している状況において、所定の判断に基づいて前記駐車ブレーキ機構5を動作させるが、上記のように、前記所定の判断が、目標ブレーキ力、目標ブレーキ力の変化量、推定ブレーキ力、および推定ブレーキ力の変化量、の少なくともいずれか一つ以上に基づいて成すものであり、前記駐車ブレーキ制御手段22は、目標ブレーキ力または推定ブレーキ力が増加し、またはこれら目標ブレーキ力および推定ブレーキ力のいずれかの変化量が閾値よりも低下すると、前記電動ブレーキ装置1の作動時間における前記駐車ブレーキ機構5を機能させる時間を増加させるようにしても良い。
【0042】
前記の駐車制動の頻度変更の条件として、例えば図1に示す補助電源25の残存電力を用いることができる。例えば、前記駐車ブレーキ制御手段22は、前記駐車ブレーキ機構5を動作させるか否かの所定の判断を、前記補助電源25の残存電力に基づいて為し、前記補助電源25の残存電力が低下すると、前記電動ブレーキ装置1の作動時間における前記駐車ブレーキ機構5を実行する時間の比率を上昇させるようにしても良い。
前記補助電源25の残存電力が少なくなるほど、ブレーキフィーリング等を犠牲にしてもブレーキ動作可能時間を延長する必要があるため、前記残存電力が少なくなるほど駐車制動の頻度が高くなる処理とすると好適と考えられる。
【0043】
前記駐車制動の頻度変更の条件として、例えば電動ブレーキシステム搭載車両の車速を用いることができる。例えば、前記駐車ブレーキ制御手段22は、前記駐車ブレーキ機構5を動作させるか否かの所定の判断を、前記電動ブレーキ装置1の搭載車両の車速に基づいて為し、前記車速が低下すると、前記電動ブレーキ装置1の作動時間における前記駐車ブレーキ機構5を機能させる時間の比率を上昇させるようにしても良い。前記車速の推定を行う車速推定手段29(図1)は、例えば従動輪の回転検出を行って車速に換算する手段が用いられる。
前記車速が低いほど安全性における制動性能悪化の影響が低いため、前記車速が低くなるほど駐車制動の頻度が高くなる処理とすると好適と考えられる。特に、車速が概ね零すなわち停車状態であれば、ブレーキ力を変化させる必要が無いため、車両を停止するのに十分なブレーキ力をもって駐車制動を行うと好適と考えられる。その際、例えば車両の駆動力が喪失している場合は、駐車制動を解除する必要が無いため、駐車制動を維持し続ければよい。
【0044】
また、前記駐車ブレーキ制御手段22は、前記所定の判断に基づいて操縦者の操作によらず前記駐車ブレーキ機構5を機能させるときに、前記操縦者によるブレーキ操作手段31の操作に追従する通常制動動作の連続作動時間を制限する通常制動時間上限値(閾値Cths)(図4のステップf3)と、前記駐車ブレーキ機構5が機能するときの最低継続時間を制限する駐車制動時間下限値(閾値Cthp)(図4のステップf9)とを有し、前記駐車ブレーキ機構5が機能する時間の比率が、前記通常制動時間上限値および駐車制動時間下限値を変更することによって調整可能であっても良い。
この構成のように、前記駐車ブレーキ機構5が機能する時間の比率を、前記通常制動時間上限値および駐車制動時間下限値を変更することによって調整可能とした場合、消費電力を抑える程度と、操作のフィーリングを重視する制御との割合を、容易に変更することができる。
【0045】
さらに、この電動ブレーキシステムは、図1に示すように、前記電動ブレーキ装置1を搭載する車両の駆動力の状態を推定する駆動力監視手段32を有し、前記駐車ブレーキ制御手段22は、前記駆動力監視手段32により車両の駆動力が所定値を下回っていると判断され、かつ前記電動ブレーキ装置1の搭載車両が概ね停止していると判断されたときに、前記駐車ブレーキ機構5を機能させたままで車両停止状態を維持し続けるようにしても良い。前記駆動力監視手段32は、例えばブレーキ制御装置3の前記演算器26に設けられる。
車両の駆動力が喪失している場合、ブレーキにより車両が停車した後に再度走行することは無いため、駐車ブレーキ機構5を機能させ続けることで、安全に車両の停止状態を維持することができる。
【0046】
なお、前記処理のうち一つ以上を、適宜処理して駐車制動の頻度を変更することができる。いくつかの処理を並列で実行しても良く、何れか一つの処理を選定しても良い。
【0047】
以上、実施例に基づいて本発明を実施するための形態を説明したが、ここで開示した実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0048】
1…電動ブレーキ装置
2…電動ブレーキアクチュエータ
4…主ブレーキ部
5…駐車ブレーキ機構
6…ブレーキロータ
7…摩擦材
8…摩擦材操作手段
9…電動モータ
19…電源装置
21…主ブレーキ制御手段
22…駐車ブレーキ制御手段
23…電源監視制御手段
24…電源制御装置
25…補助電源
図1
図2
図3
図4