(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粉体充填層は、主体金具内に滑石粉末を収容した後に、収容した滑石粉末を軸線方向後端側から先端側に向けて押し付けることによって形成されている。よって、粉体充填層を形成する際に、主体金具内のうち滑石粉末が位置する充填領域内は圧力が高くなる。充填領域内の圧力が高くなることによって、主体金具と滑石粉末とが直接に接している部分では、滑石粉末によって主体金具に対して径方向外側へ向かう圧力が加えられる。これにより、主体金具が変形する場合が生じ得る。特に、充填領域内の上側部分(軸線方向後端側部分)は、粉体充填層を形成するための押圧力が直接に加えられている地点から近い。よって、充填領域内の上側部分の圧力は、充填領域内の下側部分の圧力よりも高くなるため、主体金具のうち充填領域の上側部分に接する部分は変形の程度が高くなる可能性がある。主体金具が変形した場合、主体金具の内部に配置される部材(例えば、粉体充填層)が設計された値(例えば、圧縮の度合い)からズレる虞がある。
【0005】
ここで、主体金具のうち溝部が形成された部分(溝形成部)の変形を抑制するために、溝形成部の厚みを大きくする方法が考えられる。しかしながら、この方法では、主体金具が径方向に大型化する場合があった。
【0006】
よって、主体金具が径方向に大型化することを抑制しつつ、主体金具が変形することを抑制できる技術が望まれている。このような要望は、シール部材を配置するための溝部が形成された主体金具に限らず、径方向に厚みの小さい部分(薄肉部)を有する主体金具を備えるガスセンサに共通する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[形態1]
軸線方向に延び、前記軸線方向の先端側に特定ガスの濃度を検出するための検出部を有する検出素子と、
前記検出素子の周囲を取り囲む筒状の主体金具と、
前記主体金具の内表面と直接に接するように前記検出素子の外表面と前記主体金具の前記内表面との間に配置された粉体充填層と、を備えるガスセンサであって、
前記主体金具は、自身の外表面に周方向に亘って形成され、開口を有する溝部を備え、
前記軸線方向において、前記開口の内、前記主体金具と前記粉体充填層とが直接接している領域に形成されている部分の半分以上は、前記粉体充填層の中央である中央部から前記粉体充填層の先端までの間に位置し、
前記主体金具の後端部が、前記軸線方向の先端側に向けて加締められている、ことを特徴とする、ガスセンサ。
この形態によれば、溝部の内、主体金具と粉体充填層とが直接接している領域に形成されている部分の半分以上が粉体充填層の中央部から先端までの間の範囲(先端範囲)に位置する。ここで、粉体充填層が形成される際に、主体金具の先端範囲に位置する部分に加わる圧力は、粉体充填層の中央部から後端までの間の範囲である後端範囲に位置する部分に加わる圧力よりも低くできる。よって、主体金具の溝部が位置する部分(溝部形成部)の径方向の厚みを大きくすることなく、粉体充填層を形成するときにおける溝部の変形を抑制できる。
[形態2]
軸線方向に延び、前記軸線方向の先端側に特定ガスの濃度を検出するための検出部を有する検出素子と、
前記検出素子の周囲を取り囲む筒状の主体金具と、
前記主体金具の内表面と直接に接するように前記検出素子の外表面と前記主体金具の前記内表面との間に配置された粉体充填層と、を備えるガスセンサであって、
前記主体金具は、前記軸線方向において、前記粉体充填層と少なくとも一部が重なる部分のうち最も径方向の厚みが小さい薄肉部を有し、
前記軸線方向において、前記薄肉部の内、前記主体金具と前記粉体充填層とが直接接している領域に形成されている部分の半分以上は、前記粉体充填層の中央である中央部から前記粉体充填層の前記軸線方向における先端までの間に位置する、ことを特徴とする、ガスセンサ。
この形態によれば、薄肉部の内、主体金具と粉体充填層とが直接接している領域に形成されている部分の半分以上が粉体充填層の中央部から先端までの間(先端範囲)に位置する。ここで、粉体充填層が形成される際に、主体金具の先端範囲の位置する部分に加わる圧力は、後端範囲に位置する部分に加わる圧力よりも低くできる。よって、主体金具の薄肉部の径方向の厚みを大きくすることなく、粉体充填層を形成するときにおける薄肉部の変形を抑制できる。
【0008】
(1)本発明の一形態によれば、軸線方向に延び、前記軸線方向の先端側に特定ガスの濃度を検出するための検出部を有する検出素子と、前記検出素子の周囲を取り囲む筒状の主体金具と、 前記主体金具の内表面と直接に接するように前記検出素子の外表面と前記主体金具の前記内表面との間に配置された粉体充填層と、を備えるガスセンサが提供される。前記主体金具は、自身の外表面に周方向に亘って形成され、開口を有する溝部を備え、前記軸線方向において、前記開口の半分以上の部分は、前記粉体充填層の中央である中央部から前記粉体充填層の先端までの間に位置する。
この形態によれば、溝部の開口の半分以上の部分が粉体充填層の中央部から先端までの間の範囲(先端範囲)に位置する。ここで、粉体充填層が形成される際に、主体金具の先端範囲に位置する部分に加わる圧力は、粉体充填層の中央部から後端までの間の範囲である後端範囲に位置する部分に加わる圧力よりも低くできる。よって、主体金具の溝部が位置する部分(溝部形成部)の径方向の厚みを大きくすることなく、粉体充填層を形成するときにおける溝部形成部の変形を抑制できる。
【0009】
(2)上記形態のガスセンサであって、前記溝部には、前記ガスセンサが取り付けられる取付対象体と前記主体金具との間をシールするためのシール部材が配置されても良い。この形態によれば、シール部材によって取付対象体と主体金具との間をシールできる。
【0010】
(3)上記形態のガスセンサであって、前記溝部は、径方向において前記開口と対向する底面を有しても良い。この形態によれば、底面を有する溝部を提供できる。
【0011】
(4)上記形態のガスセンサであって、前記溝部の全体は、前記中央部から前記粉体充填層の前記先端までの間に位置しても良い。この形態によれば、粉体充填層を形成するときに、主体金具に加えられる圧力がより低い部分に溝部を設けることができる。よって、主体金具の溝部が位置する部分(溝部形成部)の径方向の厚みを大きくすることなく、粉体充填層を形成するときにおける溝部形成部の変形をより抑制できる。
【0012】
(5)上記形態のガスセンサであって、さらに、前記検出素子が挿入される第1挿入孔を有し、前記主体金具内において、前記第1挿入孔内に前記検出素子を挿入しつつ前記粉体充填層に対し前記軸線方向の後端側に配置されて、前記粉体充填層を圧縮する第1部材と、前記検出素子が挿入される第2挿入孔を有し、前記主体金具内において、前記第2挿入孔内に前記検出素子を挿入しつつ前記粉体充填層に対し前記軸線方向の先端側に配置されて、前記粉体充填層を圧縮する第2部材と、を備え、前記第2部材について、前記粉体充填層と接する面のうち前記軸線方向に垂直な面の面積S2は、前記第1部材について、前記粉体充填層と接する面のうち前記軸線方向に垂直な面の面積S1よりも大きくても良い。この形態によれば、面積S2の方が面積S1よりも大きいので、主体金具の先端側に加わる圧力を下げることができるため、主体金具(特に、溝部形成部)の変形をより抑制できる。
【0013】
(6)本発明の他の一形態によれば、軸線方向に延び、前記軸線方向の先端側に特定ガスの濃度を検出するための検出部を有する検出素子と、前記検出素子の周囲を取り囲む筒状の主体金具と、前記主体金具の内表面と直接に接するように前記検出素子の外表面と前記主体金具の前記内表面との間に配置された粉体充填層と、を備えるガスセンサであって、前記主体金具は、前記軸線方向において、前記粉体充填層と少なくとも一部が重なる部分のうち最も径方向の厚みが小さい薄肉部を有し、前記軸線方向において、前記薄肉部の半分以上の部分は、前記粉体充填層の中央である中央部から前記粉体充填層の前記軸線方向における先端までの間に位置する。
この形態によれば、薄肉部の半分以上の部分が粉体充填層の中央部から先端までの間(先端範囲)に位置する。ここで、粉体充填層が形成される際に、主体金具の先端範囲の位置する部分に加わる圧力は、後端範囲に位置する部分に加わる圧力よりも低くできる。よって、主体金具の薄肉部の径方向の厚みを大きくすることなく、粉体充填層を形成するときにおける薄肉部の変形を抑制できる。
【0014】
(7)上記形態のガスセンサであって、前記薄肉部には、前記ガスセンサが取り付けられる取付対象体と前記主体金具との間をシールするためのシール部材が配置されても良い。この形態によれば、シール部材によって取付対象体と主体金具との間をシールできる。
【0015】
(8)上記形態のガスセンサであって、前記薄肉部は、前記軸線方向に延びる外表面を有しても良い。この形態によれば、外表面を有する薄肉部を提供できる。
【0016】
(9)上記形態のガスセンサであって、前記薄肉部の全体は、前記中央部から前記粉体充填層の前記先端までの間に位置しても良い。この形態によれば、粉体充填層を形成するときに、主体金具に加えられる圧力がより低い部分に薄肉部を設けることができる。よって、主体金具の薄肉部の径方向の厚みを大きくすることなく、粉体充填層を形成するときにおける薄肉部の変形をより抑制できる。
【0017】
(10)上記形態のガスセンサであって、さらに、前記検出素子が挿入される第1挿入孔を有し、前記主体金具内において、前記第1挿入孔内に前記検出素子を挿入しつつ前記粉体充填層に対し前記軸線方向の後端側に配置されて、前記粉体充填層を圧縮する第1部材と、前記検出素子が挿入される第2挿入孔を有し、前記主体金具内において、前記第2挿入孔内に前記検出素子を挿入しつつ前記粉体充填層に対し前記軸線方向の先端側に配置されて、前記粉体充填層を圧縮する第2部材と、を備え、前記第2部材について、前記粉体充填層と接する面のうち前記軸線方向に垂直な面の面積S2は、前記第1部材について、前記粉体充填層と接する面のうち前記軸線方向に垂直な面の面積S1よりも大きくても良い。この形態によれば、面積S2の方が面積S1よりも大きいので、主体金具の先端側に加わる圧力を下げることができるため、主体金具(特に、薄肉部)の変形をより抑制できる。
【0018】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、ガスセンサの他に、主体金具、ガスセンサ又は主体金具の製造方法等の態様で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.第1実施形態:
図1は、本発明の第1実施形態としてのガスセンサ200の断面図である。
図2は、端子収容ユニット10の斜視図である。
図3は、検出素子20の斜視図である。
図1において、検出素子20の軸線Oに平行な方向を軸線方向CDとし、紙面上側をガスセンサ200の後端側BSとし、紙面下側をガスセンサ200の先端側ASとする。
【0021】
このガスセンサ200(
図1)は、例えば、内燃機関の吸気系統(例えば吸気配管)に取り付けられ、吸気系統を流れる吸入ガス中の特定ガス濃度(酸素濃度)を検出するための検出信号を出力する。本実施形態のガスセンサ200は、エンジンの空燃比制御などに用いられる吸入ガスの酸素濃度を測定する。ガスセンサ200は、エンジンの吸入配管81に図示しない取付機構(例えば、ねじ)を用いて取り付けられている。ガスセンサ200の先端側ASは、吸入配管81内の流路84内に配置される。
【0022】
ガスセンサ200は、後端側BSから先端側ASの順に、端子収容ユニット10と、取付部15と、主体金具16と、プロテクタ17とを備える。また、ガスセンサ200は、軸線方向CDに延びる検出素子20を備える。
【0023】
検出素子20(
図3)は、板状形状であり、互いに対向する第1板面20faと第2板面20fbとを有する。第1板面20faと第2板面20fbとは、検出素子20の主面を形成する。第1板面20faと第2板面20fbとのそれぞれは、検出素子20の外表面のうち最も面積が大きい面である。
【0024】
検出素子20は、軸線方向CDの先端側AS側に位置する検出部21と、軸線方向CDの後端側BSに位置する素子後端部22とを有する。素子後端部22は、第1板面20faに形成された第1〜第3の金属端子部24a〜24cと、第2板面20fbに形成された第4と第5の金属端子部24d,24eとを有する。各金属端子部24a〜24eは、白金等の金属や導電性を有する部材によって形成され、それぞれの表面形状が略矩形状である。第2の金属端子部24bは、他の金属端子部24a,24c,24d,24eに比べて後端側BSに配置されている。ここで、第1〜第5の金属端子部24a〜24eを区別することなく用いる場合は、「金属端子部24」を用いる。検出部21は、被測定ガス中の特定ガス成分(例えば、酸素)の濃度を検出するために用いられる。
図1に示すように、検出素子20のうち検出部21が位置する先端側部分は、多孔質部材によって形成された検出部保護層90で覆われている。検出部保護層90は、被測定ガス中に含まれる不純物(例えば、水)が検出部21に付着することを抑制する機能を有する。
【0025】
空燃比センサとして用いられる検出素子20(
図3)は、従来の検出素子と同様の構成であるため、その内部構造等の詳細説明は省略するが、概略構成を以下に説明する。検出素子20は、検出部21が形成された板状形状の素子層28と、素子層28を加熱するための板状形状のヒータ層29とが積層した積層体である。素子層28はジルコニアを主体とする固体電解質体と白金を主体とする一対の電極とを、中空の測定室が一部に形成された絶縁層を介して積層した構成をなしている。素子層28は、固体電解質体の両面に形成された一対の電極の一方の電極(「第1電極」とも呼ぶ。)を外部に晒すと共に、一対の電極の他方の電極(「第2電極」とも呼ぶ。)を測定室に配置した酸素ポンプセルと、固体電解質体の両面に形成された一対の電極の一方を測定室に配置する。また、素子層28は、第2電極を基準ガス室に配置した酸素濃度測定セルを有する。そして素子層28は、酸素濃度測定セルの出力電圧が所定の値になるように、酸素ポンプセルの一対の電極間に流す電流を制御することで、測定室内の酸素を汲み出したり、測定室内に外部から酸素を汲み入れたりする構成を有する。なお、酸素ポンプセルのうち、一対の電極、及び、固体電解質体のうちでこれら電極に挟まれる部位は、酸素濃度に応じた電流が流れる検出部21を構成する。金属端子部24は、検出部21から検出信号を取り出すためや、ヒータ層29に埋設された電熱線に電力を供給するために用いられる。
【0026】
端子収容ユニット10(
図1)は、後端側BSに底部31を有する有底筒状のセパレータ部30と、底部31を自身の底部として構成する有底筒状の基体部40とを備える。すなわち、セパレータ部30と基体部40との底部は共通する。基体部40は、セパレータ部30の外周を取り囲む筒状の本体部41と、本体部41から軸線方向CDに対して交差する方向に延びるコネクタ部50とを有する。本実施形態では、コネクタ部50は軸線方向CDと直交する方向に延びる。端子収容ユニット10は、樹脂部材によって一体成形されている。樹脂部材としては、成形性のよい樹脂、例えば、ナイロン(登録商標)、PA(ポリアミド)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニルスルファイド)等を用いることができる。
【0027】
セパレータ部30(
図2)は、検出素子20や後述する接続端子60を収容するための第1〜第6の収容空間部34a〜34fと、6つの収容空間部34a〜34fを仕切る隔壁35とを有する。
図1に示すように、隔壁35は底部31からセパレータ部30の先端側端面の近傍まで延びる複数の板状部材によって構成されている。隔壁35は、軸線方向CDと直交する平面において、第1〜第6の収容空間部34a〜34fを仕切る。
図2に示すように、第1〜第5の収容空間部34a〜34eには、対応する第1〜第5の接続端子60a〜60eがそれぞれ収容される。第6の収容空間部34fには、検出素子20の素子後端部22と第1〜第5の接続端子60a〜60eの一部(詳細には、第1〜第5の接続端子60a〜60eの素子当接部の一部)が収容される。
【0028】
セパレータ部30を先端側ASから見た場合に、第6の収容空間部34fは、筒状のセパレータ部30の略中央に配置され、第1〜第5の収容空間部34a〜34eは第6の収容空間部34fよりもセパレータ部30の径方向外側に配置されている。ここで、第1〜第6の収容空間部34a〜34fを区別することなく用いる場合は、「収容空間部34」を用いる。また、第1〜第5の接続端子60a〜60eを区別することなく用いる場合は、「接続端子60」を用いる。
【0029】
基体部40の本体部41(
図2)は、セパレータ部30の外周を取り囲む側部44を有する。側部44は、軸線方向CDの後端側BSに位置する底部31の周縁部から軸線方向CDの先端側ASに延びる。側部44は、セパレータ部30の径方向周囲を取り囲むように配置されている。
図1に示すように、隔壁35と側部44とは底部31によって間接的に接続されている。また、
図2に示すように、隔壁35と側部44とは少なくとも先端側ASにおいて、直接的に接続されている。
【0030】
コネクタ部50(
図1)内には、検出素子20から出力される検出信号を外部に取り出すためのコネクタ端子52(詳細にはコネクタ端子52の一端部54)が収容されている。コネクタ端子52は、接続端子60の数に対応して5つ設けられている(
図1では1つのみ図示)。コネクタ端子52は、基体部40にインサート成形されることで基体部40に取り付けられている。
【0031】
各コネクタ端子52の他端部56は、第1〜第5の収容空間部34a〜34e内で対応する接続端子60と電気的に接続している。コネクタ端子52の一端部54はコネクタ部50の開口部58内に配置され、開口部58に外部のコネクタが挿入されることで、外部のコネクタ内に配置された端子がコネクタ端子52の一端部54に電気的に接続される。これにより、外部のコネクタを介して酸素濃度を算出するための測定機器に対して検出信号が伝達される。
【0032】
主体金具16は、検出素子20が内側に配置される筒状の部材である。主体金具16は、SUS430等のステンレス鋼によって形成される。主体金具16は、検出素子20の軸線方向CDを中心とした周囲を取り囲む。主体金具16は、検出素子20の検出部21が先端側ASに突出すると共に素子後端部22が後端側BSに突出するように検出素子20を保持する。主体金具16のうち後端側BSに位置する後端側外周部168には、取付部15がレーザー溶接等によって取り付けられている。主体金具16のうち先端側ASに位置する先端側外周部167には、プロテクタ17がレーザー溶接によって取り付けられている。
【0033】
ガスセンサ200(
図1)は、さらに、セラミックホルダ175と、粉体充填層173と、セラミックスリーブ171とを備える。更に、セラミックスリーブ171と主体金具16の後端部164との間には、加締リング157が配置されている。
【0034】
セラミックホルダ175及びセラミックスリーブ171は、アルミナによって形成されている。セラミックスリーブ171及びセラミックホルダ175は、軸線方向CDに沿った矩形状の軸孔171H,175Hを有する筒状体である。このセラミックスリーブ171及びセラミックホルダ175は、その矩形状の軸孔171H,175Hに板状の検出素子20を挿通する。セラミックスリーブ171の軸孔171Hを第1挿通孔171Hとも呼び、セラミックホルダ175の軸孔175Hを第2挿通孔175Hとも呼ぶ。
【0035】
セラミックホルダ175は、粉体充填層173よりも先端側ASに配置されている。セラミックホルダ175は、主体金具16のうち先端側ASに位置する棚部169に係止されている。
【0036】
セラミックスリーブ171は、粉体充填層173の後端側BSに配置されている。セラミックスリーブ171は、粉体充填層173の元となる滑石粉末を先端側ASに向かって押し付けるための部材である。セラミックスリーブ171の後端側には加締リング157が配置されている。セラミックスリーブ171は、主体金具16内に配置された後、主体金具16の後端部164を径方向内側かつセラミックスリーブ171の後端面に向けて加締めることによって、加締めリング157を介して主体金具16内に固定されている。
【0037】
粉体充填層173は、粉体材料としての滑石粉末が主体金具16内に圧縮充填されることによって形成される。粉体充填層173の内部には検出素子20が挿通される。粉体充填層173は、主体金具16の内表面16faと直接に接するように検出素子20の外表面と主体金具16の内表面16faとの間に配置されている。
【0038】
主体金具16は、さらに、周方向に亘って外表面16fbに形成された溝部162を有する。この溝部162には、吸入配管81と主体金具16との間をシールするためのシール部材158が配置される。本実施形態では、シール部材158はO−リングである。シール部材80は、ガスセンサ200が吸入配管81に取り付けられる際に、吸入配管81のセンサ取り付け孔の内壁に圧接されることにより弾性変形する。このシール部材158の弾性変形によって、センサ取り付け孔とガスセンサ200との間がシールされる。
【0039】
プロテクタ17(
図1)は、外部プロテクタ18と、外部プロテクタ18の内側に位置する内部プロテクタ19と、を有する。外部プロテクタ18及び内部プロテクタ19は有底筒状である。外部プロテクタ18及び内部プロテクタ19は、複数の孔部を有する金属製の部材である。これらの複数の孔部を通過して内部プロテクタ19内に被測定ガスが流入する。外部プロテクタ18及び内部プロテクタ19は、検出素子20の検出部21を覆うことによって流路84内を流れる異物(例えば、水)が検出部21に付着することを抑制する。
【0040】
取付部15は、主体金具16と端子収容ユニット10とを接続する部材である。取付部15は、ステンレス鋼等の金属製の部材である。取付部15のうち先端側ASに位置する部分は主体金具16にレーザー溶接等に取り付けられ、後端側BSに位置する部分は端子収容ユニット10の基体部40に加締めによって取り付けられている。基体部40(詳細には、本体部41)の先端側端面に形成された溝411には、シール部材159が配置されている。シール部材159はO−リングである。このシール部材159は、取付部15と基体部40との取付部分を封止する。取付部15は、
図1の紙面方向に突出する一対のフランジ部(図示せず)を有する。フランジ部には孔が形成されている。この孔にネジを挿通し、取付対象体に設けられたネジ孔にネジ止めすることでガスセンサ200が取付対象体に取り付けられる。ここで、ネジ孔は1個でも複数でも良い。
【0041】
図4は、粉体充填層173の形成工程図である。まず、主体金具16内にセラミックホルダ175と、滑石粉末と、セラミックスリーブ171と、検出素子20とを配置する(ステップS10)。具体的には、セラミックホルダ175を棚部169(
図1)に係止させた後に、検出素子20をセラミックホルダ175の軸孔に挿通させる。そして、セラミックホルダ175上に、滑石粉末とセラミックスリーブ171とをこの順番で積層する。次に、治具を用いてセラミックスリーブ171を後端側BSから先端側ASに向けて押すことによって、滑石粉末を圧縮して粉体充填層173を形成する(ステップS20)。滑石粉末が軸線方向CDに圧縮される際には、滑石粉末によって主体金具16には径方向外側に向かう圧力が加えられる。最後に、加締リング157をセラミックスリーブ171後端側(図中の上側)に配置した後に、主体金具16の後端部164を加締める(ステップS30)。粉体充填層173によって、検出素子20は主体金具16内に保持されると共に、主体金具16内を気密にできる。ここで、第2部材としてのセラミックホルダ175について、粉体充填層173と接する面(後端面)のうち軸線方向CDに垂直な平面部分175Pの面積を面積S2とする。また、第1部材としてのセラミックスリーブ171について、粉体充填層173と接する面(先端面)のうち軸線方向CDに垂直な平面部分171Pの面積を面積S1とする。この場合、面積S2は面積S1よりも大きい。粉体充填層173と接する部分のうち、軸線方向CDに垂直な平面部分の面積が大きい方が、粉体充填層173から受ける圧力を分散させて低くできる。本実施形態によれば、セラミックホルダ175の平面部分175Pの面積S2がセラミックスリーブ171の平面部分171Pの面積S1よりも大きいため、主体金具16の先端側に加わる圧力を下げることができるため、主体金具16の開口165が形成された部分の変形を抑制できる。
【0042】
図5は、ガスセンサ200の部分拡大図である。
図5を用いて、溝部162の詳細構成と、配置位置について説明する。ここで、軸線方向CDにおいて、粉体充填層173が配置された範囲を第1範囲Raと呼ぶ。また、軸線方向CDにおいて、第1範囲Raの先端PAtと後端PBtの中央を中央部PMtと呼ぶ。また、軸線方向CDにおいて、中央部PMtから先端PAtまでの間の範囲を先端範囲Rbと呼ぶ。
【0043】
溝部162は、主体金具16の径方向における外側に開口165を有する。主体金具16のうち、開口165を規定する後端側BS端部を第1端部165Aと呼び、先端側AS端部を第2端部165Bと呼ぶ。開口165は、軸線方向CDに垂直な方向に開口している。つまり、溝部162は、軸線方向CDに所定の長さに亘り形成されている。溝部162は、さらに、主体金具16の径方向(
図5の左右方向)において開口165と対向する底面166を有する。底面166は、軸線方向CDと平行に延びる。つまり、溝部162は、一定の深さを有する形状である。主体金具16の溝部162が形成された部分(溝部形成部)は、第1範囲Raにおいて、径方向の厚みが小さく、その中でも底面166が形成された部分が最も径方向の厚みが小さい。よって、この最も径方向の厚みが小さい部分を薄肉部163とも呼ぶ。軸線方向CDにおいて、溝部162及び薄肉部163の全体が先端範囲Rbに位置する。
【0044】
ここで、粉体充填層173は、後端側BSから先端側ASへ向けて滑石粉末を押すことで軸線方向CDに沿って圧縮されることによって形成される。よって、粉体充填層173を形成する際には、主体金具16内の圧力が高くなり主体金具16が径方向外側に膨らむように変形する場合がある。特に、滑石粉末を押圧する起点となる後端側BSは、先端側ASよりも主体金具16内の圧力が高くなる。つまり、粉体充填層173が形成される際に、主体金具16の先端範囲Rbに位置する部分に加わる圧力は、中央部PMtから第1範囲Raの後端までの間の範囲(後端範囲)に加わる圧力よりも低い。上記第1実施形態によれば、溝部162全体が中央部PMtから第1範囲の先端までの間(先端範囲Rb)に位置する(
図5)。よって、粉体充填層173が形成される際に、主体金具16の溝部162が位置する部分(薄肉部163)に加わる圧力を抑制できるため、薄肉部163の径方向の厚みを大きくすることなく、薄肉部163及び溝部162の変形を抑制できる。
【0045】
また上記第1実施形態によれば、溝部162にはシール部材158が配置される。これにより、吸入配管81と主体金具16との間をシールできるため吸入ガスが外部に漏れ出すことを抑制できる。また、第1実施形態では、溝部162の変形を抑制できるため、シール部材158の位置ズレを抑制できる。また、溝部162は一定の深さを有し、軸線方向CDに沿って延びる底面166を有する。これにより、シール部材158を安定に溝部162に配置できる。
【0046】
B.第2実施形態:
図6は、本発明の第2実施形態としてのガスセンサ200aの断面図である。第1実施形態のガスセンサ200と第2実施形態のガスセンサ200aとの異なる点は、溝部162aの形状と、シール部材158aの配置位置である。その他の構成について第1実施形態のガスセンサ200と第2実施形態のガスセンサ200aとは同一であるため、同一の構成について同一符号を付すと共に説明を省略する。
【0047】
ガスセンサ200aの主体金具16aは、周方向に亘って外表面16fbに形成された溝部162aを有する。溝部162aは、径方向外側から径方向内側に向かって縮径するテーパ形状である。本実施形態では、軸線方向CDに平行な溝部162aの断面形状はV字形状である。主体金具16aは、軸線方向CDにおいて溝部162aが形成された位置に薄肉部163aを有する。薄肉部163aは、軸線方向CDにおいて、第1範囲Raに位置する主体金具16aのうちで最も径方向の厚みが小さい部分である。つまり、本実施形態において薄肉部163aは、溝部162aのV字形状の最も深い部分(V字先端)に相当する位置にある。溝部162a全体、及び、薄肉部163a全体は、軸線方向CDにおいて先端範囲Rbに位置する。溝部162aは、主体金具16aを軽量化するために形成されている。また、別の実施形態では、溝部162aは放熱用に用いられても良い。また、溝部162aは、軸線方向CDの異なる位置に複数形成されていても良い。
【0048】
シール部材158aは、取付部15のうち径方向外側に突出する部分に設けられている。シール部材158aは、O−リングである。シール部材158aは、ガスセンサ200と吸入配管81との間を封止する。
【0049】
上記第2実施形態によれば、薄肉部163a全体が中央部PMtから第1範囲の先端までの間(先端範囲Rb)に位置する(
図6)。よって、粉体充填層173が形成される際に、主体金具16の薄肉部163aに加わる圧力を抑制できるため、薄肉部163aの径方向の厚みを大きくすることなく、薄肉部163a及び溝部162aの変形を抑制できる。
【0050】
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0051】
C−1.第1変形例:
上記第1,第2実施形態では、溝部162,162a全体、及び、薄肉部163,163a全体が先端範囲Rbに位置していたがこれに限定されるものではない。例えば、第1実施形態において、開口165及び薄肉部163(
図5)の半分以上の部分が先端範囲Rbに位置していても良い。また例えば、第2実施形態において、薄肉部163aが軸線方向CDに長さを有する場合、薄肉部163aの半分以上の部分が先端範囲Rbに位置していても良い。このようにしても、上記第1,第2実施形態と同様に、薄肉部163,163aの径方向の厚みを大きくすることなく、薄肉部163,163a及び溝部162,162aの変形を抑制できる。ここで、開口165及び薄肉部163,163aの半分以上とは、開口165及び薄肉部163,163aの軸線方向CDに沿った長さの半分以上を意味する。
【0052】
C−2.第2変形例:
上記第1実施形態では、
図1に示すように溝部162にはシール部材158が配置されていたが配置されていなくても良い。この場合、第1実施形態のガスセンサ200は、第2実施形態のガスセンサ200aと同様の箇所にシール部材158a(
図6)を配置しても良い。また上記第2実施形態では、溝部162aとは異なる部分にシール部材158aが配置されていたが、シール部材158aは溝部162aに配置されても良い。
【0053】
C−3.第3変形例:
上記第2実施形態では、薄肉部163aの外表面はV字形状であったが(
図6)、これに限定されるものではない。例えば、薄肉部163aは、第1実施形態の薄肉部163と同様に、軸線方向CDに平行に延びる外表面を有していても良い。薄肉部163aが軸線方向に平行に延びる外表面を有することによって、第1実施形態と同様に、開口165と開口と対向する底面166(薄肉部163aの外表面)を有する形状を形成する。
【0054】
C−4.第4変形例:
上記第1,第2実施形態のガスセンサ200,200aは、吸入配管81を流れる吸入ガス中の酸素濃度を測定する酸素センサであったが、これに限定されるものではなく、各種の特定ガスの濃度を測定するためのガスセンサに本発明は適用できる。例えば、ガスセンサ200,200aは、エンジンの排気管内を流れる排気ガス中のNOx濃度を測定するためのセンサであっても良い。