特許第6552925号(P6552925)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552925
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/337 20060101AFI20190722BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20190722BHJP
   H01L 29/808 20060101ALI20190722BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20190722BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20190722BHJP
   H01L 21/8232 20060101ALI20190722BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20190722BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20190722BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20190722BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20190722BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   H01L29/80 P
   H01L29/80 H
   H01L29/80 E
   H01L27/06 F
   H01L29/91 F
   H01L29/44 L
   H01L21/28 301B
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-175058(P2015-175058)
(22)【出願日】2015年9月4日
(65)【公開番号】特開2017-50511(P2017-50511A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】仲 敏行
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 啓
【審査官】 恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/190997(WO,A1)
【文献】 特開2014−222716(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/021099(WO,A1)
【文献】 特開2015−149324(JP,A)
【文献】 特開2007−266475(JP,A)
【文献】 特開2009−164158(JP,A)
【文献】 特開2010−040814(JP,A)
【文献】 特開2009−177029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 29/808
H01L 29/812
H01L 29/861
H01L 21/337
H01L 21/338
H01L 27/06
H01L 29/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の領域を有する第1の窒化物半導体層と、
前記第1の窒化物半導体層の上に設けられ、炭素とケイ素とを含む第2の窒化物半導体層と、
前記第2の窒化物半導体層の上に設けられ、第2の領域を有する第3の窒化物半導体層と、
前記第3の窒化物半導体層の上に設けられ、前記第3の窒化物半導体層よりもバンドギャップが大きい第4の窒化物半導体層と、
前記第4の窒化物半導体層の上に設けられ、前記第1の領域に電気的に接続されたソース電極と、
前記第4の窒化物半導体層の上に設けられ、前記第2の領域に電気的に接続されたドレイン電極と、
前記第4の窒化物半導体層の上に設けられ、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に挟まれたゲート電極と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記第1の窒化物半導体層および前記第3の窒化物半導体層が、窒化ガリウム層で構成され、かつ、前記第2の窒化物半導体層が、前記炭素と前記ケイ素とが含まれた窒化ガリウム層で構成されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の領域と、前記第2の領域と、前記第1の領域と前記第2の領域との間における前記第2の窒化物半導体層の一部と、を囲む電気絶縁領域をさらに備える、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1の領域と前記第2の領域が、互いに対向している、請求項1から3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
導電性基板と、
前記導電性基板と前記第1の窒化物半導体層との間に設けられ、前記導電性基板よりも電気抵抗が大きいバッファ層と、
をさらに備える、請求項1から4のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記導電性基板と前記バッファ層とを貫通し、前記第1の領域と前記ソース電極とを電気的に接続する第1の貫通電極と、
前記第4の窒化物半導体層を貫通し、前記第2の領域と前記ドレイン電極とを電気的に接続する第2の貫通電極と、
をさらに備える、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2の貫通電極が、前記ドレイン電極の直下に設けられている、請求項6に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の構造の一例として、窒化物半導体層を備える構造が知られている。この窒化物半導体層として、AlGaN(窒化アルミニウムガリウム)層およびGaN(窒化ガリウム)層等が知られている。このような窒化物半導体層を備える半導体装置は、スイッチング電源およびインバータ回路などに用いられるスイッチング素子として有望視されている。
【0003】
スイッチング素子がスイッチング電源およびインバータ回路などに用いられると、オフ状態のスイッチング素子に高電圧が印加され、スイッチング素子がアバランシェ降伏により破壊する場合がある。そのため、スイッチング素子には、ある程度のアバランシェ耐量が求められる。
【0004】
しかし、窒化物半導体層を備える半導体装置に、高電圧に耐え得るアバランシェ耐量を求めると、素子耐圧の過大なマージンや素子面積の増大といった不都合な事態を招くおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−38409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、アバランシェ降伏が起こりにくい半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、半導体装置は、第1の窒化物半導体層と、第2の窒化物半導体層と、第3の窒化物半導体層と、第4の窒化物半導体層と、ソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極と、を備える。前記第1の窒化物半導体層は、第1の領域を有する。前記第2の窒化物半導体層は、前記第1の窒化物半導体層の上に設けられ、炭素とケイ素とを含む。前記第3の窒化物半導体層は、前記第2の窒化物半導体層の上に設けられ、第2の領域を有する。前記第4の窒化物半導体層は、前記第3の窒化物半導体層の上に設けられ、前記第3の窒化物半導体層よりもバンドギャップが大きい。前記ソース電極は、前記第4の窒化物半導体層の上に設けられ、前記第1の領域に電気的に接続されている。前記ドレイン電極は、前記第4の窒化物半導体層の上に設けられ、前記第2の領域に電気的に接続されている。前記ゲート電極は、前記第4の窒化物半導体層の上に設けられ、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に挟まれている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る半導体装置の概略的な構造を示す断面図である。
図2】第1の実施形態に係る半導体装置の等価回路図である。
図3図2に示すツェナーダイオードの電気的な特性を示すグラフである。
図4】(a)は、窒化物半導体層の形成工程を示す断面図であり、(b)は、電極の形成工程を示す断面図である。
図5】(a)は、第2の貫通電極の形成工程を示す断面図であり、(b)は、第2の貫通電極とドレイン電極の接続工程を示す断面図である。
図6】(a)は、第1の貫通電極の形成工程を示す断面図であり、(b)は、裏面電極の形成工程を示す断面図である。
図7】第2の実施形態に係る半導体装置の概略的な構造を示す断面図である。
図8】(a)は、電気絶縁領域の形成工程を示す断面図であり、(b)は、第2の貫通電極の形成工程を示す断面図であり、(c)は、第2の貫通電極とドレイン電極の接続工程を示す断面図である。
図9】(a)は、第1の貫通電極の形成工程を示す断面図であり、(b)は、裏面電極の形成工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る半導体装置の概略的な構造を示す断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る半導体装置1は、導電性基板11と、バッファ層12と、第1の窒化物半導体層13と、第2の窒化物半導体層14と、第3の窒化物半導体層15と、第4の窒化物半導体層16と、第1の貫通電極17と、第2の貫通電極18と、を備える。
【0011】
導電性基板11は、シリコン基板またはSiC(炭化ケイ素)基板等で構成されている。導電性基板11の裏面には裏面電極19が設けられている。裏面電極19は、配線20を介してソース電極21に電気的に接続されている。導電性基板11の上には、バッファ層12が設けられている。
【0012】
バッファ層12には、炭素がドーピングされている。これにより、バッファ層12の電気抵抗は、導電性基板11の電気抵抗よりも大きい。バッファ層12の上には、第1の窒化物半導体層13が設けられている。
【0013】
第1の窒化物半導体層13は、アンドープの窒化ガリウム層であるi−GaN層で構成されている。第1の窒化物半導体層13は、第1の貫通電極17との接触面である第1の領域13aを有する。第1の窒化物半導体層13の上には、第2の窒化物半導体層14が設けられている。
【0014】
第2の窒化物半導体層14は、炭素とシリコンとがドーピングされたGaN層で構成されている。第2の窒化物半導体層14の上には、第3の窒化物半導体層15が設けられている。
【0015】
第3の窒化物半導体層15は、アンドープの窒化ガリウム層であるi−GaN層で構成されている。第3の窒化物半導体層15は、第2の貫通電極18との接触面である第2の領域15aを有する。本実施形態では、第2の領域15aは、第1の窒化物半導体層13の第1の領域13aと対向している。第3の窒化物半導体層15の上には、第4の窒化物半導体層16が設けられている。
【0016】
第4の窒化物半導体層16は、第3の窒化物半導体層15よりもバンドギャップが大きいアンドープのAlGaN層で構成されている。第4の窒化物半導体層16の上には、ソース電極21と、ドレイン電極22と、ゲート電極23とが設けられている。なお、ゲート電極23の構造には、本実施形態のようなショットキーゲート構造の他に、MIS(Metal Insulator Semiconductor)ゲート構造、ジャンクションゲート構造も適用できる。
【0017】
本実施形態では、第3の窒化物半導体層15は、AlGa1−XN(0≦X<1)の組成式で表されるアンドープの窒化物半導体層であってもよい。また、第4の窒化物半導体層16は、AlGa1−YN(0<Y≦1、X<Y)の組成式で表されるアンドープもしくはn型の窒化物半導体層であってもよい。
【0018】
第1の貫通電極17は、導電性基板11とバッファ層12とを貫通することによって、第1の領域13aを裏面電極19と電気的に接続している。裏面電極19は、配線20を介してソース電極21に電気的に接続されている。つまり、第1の貫通電極17によって、第1の領域13aがソース電極21に電気的に接続される。
【0019】
第2の貫通電極18は、ドレイン電極22と第2の領域15aとの間で第4の窒化物半導体層16を貫通している。これにより、第2の領域15aがドレイン電極22に電気的に接続される。
【0020】
図2は、本実施形態に係る半導体装置1の等価回路図である。図2に示すように、本実施形態に係る半導体装置1は、電界効果トランジスタ1aと、この電界効果トランジスタ1aに並列に接続されたツェナーダイオード1bと、を備える。以下、図1に戻って、電界効果トランジスタ1aとツェナーダイオード1bについて説明する。
【0021】
まず、電界効果トランジスタ1aについて説明する。本実施形態では、i−GaN層で構成された第3の窒化物半導体層15と、AlGaN層で構成された第4の窒化物半導体層16によって、ヘテロ構造が形成されている。このヘテロ構造により、第3の窒化物半導体層15側には2次元電子ガス24が発生する。2次元電子ガス24は、ドレイン電極22とソース電極21との間に電流経路を形成する。この電流経路を流れる電流は、ドレイン電極22とソース電極21との間に挟まれたゲート電極23の電圧を調整することにより制御される。これにより、電界効果トランジスタ1aが実現する。
【0022】
次に、ツェナーダイオード1bについて説明する。本実施形態では、第2の窒化物半導体層14に炭素とシリコンとがドーピングされているので、この第2の窒化物半導体層14は、P型の半導体層に相当する。また、第1の窒化物半導体層13と第3の窒化物半導体層15は、i−GaN層で構成されているので、これらはN型の半導体層に相当する。そのため、ソース電極21に電気的に接続された第1の領域13aと、ドレイン電極22に電気的に接続された第2の領域15aとの間にNPN接合が形成される。このNPN接合によって、ツェナーダイオード1bが実現する。
【0023】
図3は、ツェナーダイオード1bの電気的な特性を示すグラフである。図3において、横軸はアノードとカソード間の電圧である。縦軸は、アノードとカソード間を流れる電流である。
【0024】
図3に示すように、ツェナーダイオード1bでは、アノードとカソード間に逆方向に印加された電圧がブレークダウン電圧に達すると、電流が急激に流れ始める。このとき、炭素の濃度を増加させるか、またはシリコンの濃度を減少させると、図3に示す点線のように、ブレークダウン電圧は上昇する。反対に、炭素の濃度を減少させるか、またはシリコンの濃度を増加させると、ブレークダウン電圧は下降する。つまり、2つの不純物(炭素およびシリコン)のドーピング濃度を調整することで、ブレークダウン電圧を制御することができる。
【0025】
以下、図4図6を参照して、本実施形態に係る半導体装置1の製造工程について説明する。
【0026】
まず、図4(a)に示すように、導電性基板11上に、バッファ層12と、第1の窒化物半導体層13と、第2の窒化物半導体層14と、第3の窒化物半導体層15と、第4の窒化物半導体層16と、が順次形成される。本実施形態では、各層は、エピタキシャル成長にて形成される。
【0027】
上記各層が形成された後、図4(b)に示すように、第4の窒化物半導体層16の上に、ソース電極21と、ドレイン電極22と、ゲート電極23とが形成される。本実施形態では、ゲート電極23は、ソース電極21とドレイン電極22との間に形成される。
【0028】
上記各電極が形成された後、図5(a)に示すように、第2の貫通電極18が形成される。本実施形態では、エッチングにて第4の窒化物半導体層16を貫通する穴部が形成され、この穴部に導電部材が埋め込まれる。これにより、第2の貫通電極18が完成する。
【0029】
第2の貫通電極18が形成された後、図5(b)に示すように、第2の貫通電極18とドレイン電極22とが電気的に接続される。本実施形態では、ドレイン電極22は、図4(b)に示す工程で形成された部分と、図5(b)に示す工程により第2の貫通電極18の直上に形成された部分とを含む。つまり、本実施形態では、第2の貫通電極18が、ドレイン電極22の直下に形成されている。
【0030】
第2の貫通電極18とドレイン電極22とが電気的に接続された後、図6(a)に示すように、第1の貫通電極17が、第2の貫通電極18と対向するように形成される。本実施形態では、エッチングにて導電性基板11とバッファ層12とを貫通する穴部が形成され、この穴部に導電部材が埋め込まれる。これにより、第1の貫通電極17が完成する。
【0031】
第1の貫通電極17が形成された後、図6(b)に示すように、導電性基板11の裏面に裏面電極19が形成される。最後に、図1に戻って、配線20によって裏面電極19とソース電極21とが接続されることによって、本実施形態に係る半導体装置1が完成する。
【0032】
以上説明した本実施形態に係る半導体装置1によれば、第1の窒化物半導体層13の第1の領域13aと、第3の窒化物半導体層15の第2の領域15aと、第1の領域13aと第2の領域15aとの間に挟まれた第2の窒化物半導体層14の一部と、によって、ツェナーダイオード1bが形成されている。換言すると、ツェナーダイオード1bが、電界効果トランジスタ1aを構成する各窒化物半導体層の内部に作り込まれている。
【0033】
そして、第2の窒化物半導体層14に炭素とシリコンとがドーピングされているので、ツェナーダイオード1bのブレークダウン電圧を制御できるようになる。このブレークダウン電圧が、電界効果トランジスタ1aでアバランシェ降伏が発生する電圧よりも低くなるように設定されると、電界効果トランジスタ1aのアバランシェ降伏が発生する前に、ツェナーダイオード1bのブレークダウンが発生する。その結果、電界効果トランジスタ1aに印加される電圧がクランプされるので、アバランシェ降伏が起こりにくくなる。
【0034】
なお、電界効果トランジスタ1a側にも、ドレイン電極22と裏面電極19との間に高電圧が印加される場合がある。しかし、電界効果トランジスタ1a側には、高抵抗なバッファ層12が存在するので、電界効果トランジスタ1aの耐圧は十分に確保されている。
【0035】
また、本実施形態では、第1の窒化物半導体層13の第1の領域13aと、第3の窒化物半導体層15の第2の領域15aとが互いに対向している。これにより、第1の領域13aと第2の領域15aとの間に安定した電界が形成されるので、ツェナーダイオード1bのブレークダウン電圧が安定する。よって、電界効果トランジスタ1aに印加される電圧がより確実にクランプされるので、アバランシェ降伏がより一層起こりにくくなる。
【0036】
さらに、本実施形態では、第2の貫通電極18がドレイン電極22の直下に形成されている。そのため、ドレイン電極22と第2の領域15aとを電気的に接続する電極を形成するスペースを新たに設ける必要がない。つまり、素子面積を大きくすることなくドレイン電極22と第2の領域15aとを電気的に接続することが可能となる。
【0037】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。図7は、第2の実施形態に係る半導体装置の概略的な構造を示す断面図である。以下、上述した第1の実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0038】
図7に示すように、本実施形態に係る半導体装置2は、電気絶縁領域25を備える点で第1の実施形態に係る半導体装置1と異なる。電気絶縁領域25は、第1の領域13aと、第2の領域15aと、第1の領域13aと第2の領域15aとの間に挟まれた第2の窒化物半導体層14の一部と、を囲んでいる。換言すると、電気絶縁領域25は、ツェナーダイオード1bを囲んでいる。これにより、ツェナーダイオード1bが電界効果トランジスタ1aから電気的に絶縁される。
【0039】
以下、図8、9を参照して、本実施形態に係る半導体装置2の製造工程について説明する。本実施形態に係る半導体装置2の製造工程のうち、窒化物半導体層の形成工程(図4(a)参照)と、電極の形成工程(図4(b)参照)とは、第1の実施形態と同様である。そのため、これらの工程の説明は省略し、以下、残りの工程について説明する。
【0040】
第4の窒化物半導体層16の上に、ソース電極21と、ドレイン電極22と、ゲート電極23とが形成された後、図8(a)に示すように、電気絶縁領域25が形成される。本実施形態では、第4の窒化物半導体層16側からツェナーダイオード1bの周囲にイオンが注入される。イオン注入された箇所は結晶破壊する。この結晶破壊によって電気絶縁領域25が完成する。
【0041】
ただし、電気絶縁領域25の形成方法は、上記の内容に限定されない。以下に、電気絶縁領域25の他の形成方法について説明する。まず、第4の窒化物半導体層16から第1の窒化物半導体層13に達する溝部をエッチングにて形成する。次に、この溝部に絶縁物を埋め込む。このような方法によっても、電気絶縁領域25を形成することは可能である。
【0042】
電気絶縁領域25が形成された後、図8(b)に示すように、第2の貫通電極18が形成される。本実施形態では、第2の貫通電極18は、電気絶縁領域25の内部に形成される。
【0043】
第2の貫通電極18が形成された後、図8(c)に示すように、第2の貫通電極18とドレイン電極22とが電気的に接続される。本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、ドレイン電極22は、図4(b)に示す工程で形成された部分と、図8(c)に示す工程により第2の貫通電極18の直上に形成された部分とを含む。つまり、本実施形態においても、第2の貫通電極18は、ドレイン電極22の直下に形成されている。
【0044】
第2の貫通電極18とドレイン電極22とが電気的に接続された後、図9(a)に示すように、第1の貫通電極17が、第2の貫通電極18と対向するように形成される。
【0045】
第1の貫通電極17が形成された後、図9(b)に示すように、導電性基板11の裏面に裏面電極19が形成される。最後に、図7に戻って、配線20によって裏面電極19とソース電極21とが接続されることによって、本実施形態に係る半導体装置2が完成する。
【0046】
以上説明した本実施形態に係る半導体装置1によれば、第1の実施形態と同様に、ツェナーダイオード1bが、電界効果トランジスタ1aを構成する各窒化物半導体層の内部に作り込まれている。そして、第2の窒化物半導体層14に炭素とシリコンとがドーピングされているので、ツェナーダイオード1bのブレークダウン電圧を制御できるようになる。これにより、電界効果トランジスタ1aがアバランシェ降伏する前に、ツェナーダイオード1bをブレークダウンさせることが可能となる。その結果、電界効果トランジスタ1aに印加される電圧がクランプされるので、アバランシェ降伏が起こりにくくなる。
【0047】
特に、本実施形態では、電気絶縁領域25によって、ツェナーダイオード1bが、電界効果トランジスタ1aから電気的に絶縁される。これにより、ツェナーダイオード1bの動作は、電界効果トランジスタ1aの動作の影響を受けにくくなる。これにより、ツェナーダイオード1bのブレークダウン電圧が安定するので、電界効果トランジスタ1aに印加される電圧がより確実にクランプされる。よって、アバランシェ降伏がより一層起こりにくくなる。
【0048】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1,2 半導体装置、11 導電性基板、12 バッファ層、13 第1の窒化物半導体層、14 第2の窒化物半導体層、15 第3の窒化物半導体層、16 第4の窒化物半導体層、17 第1の貫通電極、18 第2の貫通電極、21 ソース電極、22 ドレイン電極、23 ゲート電極、25 電気絶縁領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9