(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552941
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】開孔装置及びビットスリーブ付開孔用ビット
(51)【国際特許分類】
C21B 7/12 20060101AFI20190722BHJP
F27D 3/15 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
C21B7/12 302
F27D3/15 T
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-211810(P2015-211810)
(22)【出願日】2015年10月28日
(65)【公開番号】特開2017-82288(P2017-82288A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】594086152
【氏名又は名称】株式会社丸和技研
(74)【代理人】
【識別番号】100114731
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 重男
(72)【発明者】
【氏名】嘉屋 文隆
【審査官】
池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−280907(JP,A)
【文献】
特開2011−149065(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0264694(US,A1)
【文献】
米国特許第05005807(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に中心軸線と直交する台金が3方向又は4方向に形成され、上記各台金間に繰粉排出溝が3か所又は4か所形成され、先端面に複数のチップが装着されたビット、及び、該ビットを支持する中空ロッドよりなる開孔装置において、
上記ビットは後端部に上記中心軸線を中心とする中空の径小短管が形成され、該径小短管の外周には雄螺子が形成されており、
上記ビットと上記中空ロッドの先端部との間に介在するものであって、上記中心軸線を中心とする中空のビットスリーブを設け、該ビットスリーブは、上記ビット側は内周面に上記雄螺子に螺合する雌螺子が形成された径大管部により形成され、上記中空ロッド側は、上記中空ロッドの上記先端部内に挿入可能であって上記径大管部の後端部に一体形成された径小管部により形成されており、
上記ビットスリーブの上記径大管部を上記ビットの雄螺子に螺合した状態で、上記ビットスリーブの上記径小管部を上記中空ロッドの上記先端部内に挿入し、上記ビットスリーブと上記中空ロッドの上記先端部とを溶接固定したものであり、
上記中空ロッドの肉厚よりも上記ビットスリーブの上記径大管部の肉厚が大となるように形成されている開孔装置。
【請求項2】
上記ビットの上記径小短管の上記雄螺子と、上記ビットスリーブの上記径大管部の上記雌螺子との螺合関係は、逆螺子となるように形成されている請求項1記載の開孔装置。
【請求項3】
上記ビットスリーブの上記径大管部の上記後端部には上記径小管部に連続するテーパ環状部が設けられると共に、上記ビットスリーブの上記径小管部には、上記中空ロッドの上記先端部の内周縁が係合する環状段部が形成されており、
上記中空ロッドの上記先端部を上記径小管部に接続した状態において、上記中空ロッドの上記内周縁が上記環状段部に当接するように構成し、上記内周縁が上記環状段部に当接した状態において、上記テーパ環状部と上記中空ロッドの上記先端部との間に溶接用環状溝が形成されるように構成された請求項1又は2記載の開孔装置。
【請求項4】
上記ビットスリーブの上記径大管部の外周面と上記中空ロッドの外周面は面一状態となるように構成され、
かつ上記径大管部の上記外周面及び上記中空ロッドの上記外周面は、上記ビットの上記繰粉排出溝の最内周部と面一又は上記最内周部より上記中心軸線側に設けられている請求項1〜3の何れかに記載の開孔装置。
【請求項5】
上記ビットスリーブと上記中空ロッドとの溶接部の外周部は、上記ビットの上記繰粉排出溝の上記最内周部と面一又は上記最内周部より上記中心軸線側に設けられている請求項4記載の開孔装置。
【請求項6】
先端部に中心軸線と直交する台金が3方向又は4方向に形成され、各台金間に繰粉排出溝が3か所又は4か所形成され、先端面に複数のチップが装着され、後端部に上記中心軸線を中心とする中空の径小短管が形成され、該径小短管の外周には雄螺子が逆螺子に形成された開孔用ビットと、該開孔用ビットにビットスリーブを装着したビットスリーブ付開孔用ビットであって、
上記ビットスリーブは、上記中心軸線を中心とする中空のビットスリーブにより構成され、当該ビットスリーブは、上記開孔用ビットに接続される先端部側は、内周面に上記雄螺子に螺合する雌螺子が形成された径大管部により形成され、中空ロッドに接続される後端部側は、中空ロッドの先端部内に挿入可能であって上記径大管部の後端部に一体形成された径小管部により形成されており、
上記ビットスリーブの上記径大管部に上記開孔用ビットの上記径小短管の雄螺子が螺合接続されたものであり、
上記各繰粉排出溝の上記中心軸線方向の深さは、中空の上記ビットスリーブの雌螺子を上記径小短管に螺合した状態において、上記ビットスリーブの外周面が上記繰粉排出溝の最内周部に一致するか、又は、上記ビットスリーブの上記外周面が上記繰粉排出溝の上記最内周部の位置よりも上記中心軸線側に位置し得る深さに形成したものであり、
上記ビットスリーブの上記径大管部の肉厚は、当該ビットスリーブに接続される中空ロッドの肉厚より大であるビットスリーブ付開孔用ビット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉の出銑口、廃棄物溶融炉のスラグ排出口等を開孔するための開孔用ビット及び該ビットを支持する中空ロッドから構成される開孔装置であって、ビットスリーブ付の開孔装置、該開孔装置に使用する開孔用ビット、該開孔装置に使用するビットスリーブ付開孔用ビットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記出銑口やスラグ排出口の開孔装置では、先端部に中心軸線(推進方向)と直交する台金が3方向又は4方向(複数)に形成され、ビットの中央先端面や上記台金の先端面に超硬合金による複数のチップを設け(特許文献1,2)、又は硬化肉盛材(特許文献3)を装着した。
【0003】
これらの開孔装置は、先端のビットの後方の小径短管に中空ロッドの前端を螺子止め、或いは、溶接することで構成されていた(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−307258号公報
【特許文献2】特開2014−185396号公報
【特許文献3】特開2009−97145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1〜3の開孔装置は、ビットの後方の小径短管に中空ロッド先端が直接、螺子止め又は溶接されていたため、ビットと中空ロッドの接続部の強度を確保するため、中空ロッドの全体の肉厚を大きく(厚く)する必要があった。そのため、ビットと中空ロッドにより構成される開孔装置の重量が大となり、開孔装置の中空ロッド後端を、開孔機のシャンクロッドに接続する際の取り回し性が低いという課題があった。
【0006】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、ビットと中空ロッドとの接続部にビットスリーブを介在させることにより、従来装置に比べてより肉厚の薄い中空ロッドを使用可能としてハンドリング性を改善した開孔装置、ビットスリーブを装着可能な開孔用ビット、ビットスリーブ付開孔用ビットを提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、ビットスリーブを用いた場合であっても、開孔時に繰粉の排出性の良い開孔装置、ビットスリーブを装着可能な開孔用ビット、ビットスリーブ付開孔装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため本発明は、
第1に、先端部に中心軸線と直交する台金が3方向又は4方向に形成され、上記各台金間に繰粉排出溝が3か所又は4か所形成され、先端面に複数のチップが装着されたビット、及び、該ビットを支持する中空ロッドよりなる開孔装置において、上記ビットは後端部に上記中心軸線を中心とする中空の径小短管が形成され、該径小短管の外周には雄螺子が形成されており、上記ビットと上記中空ロッドの先端部との間に介在するものであって、上記中心軸線を中心とする中空のビットスリーブを設け、該ビットスリーブは、上記ビット側は内周面に上記雄螺子に螺合する雌螺子が形成された径大管部により形成され、上記中空ロッド側は、上記中空ロッドの上記先端部内に挿入可能であって上記径大管部の後端部に一体形成された径小管部により形成されており、上記ビットスリーブの上記径大管部を上記ビットの雄螺子に螺合した状態で、上記ビットスリーブの上記径小管部を上記中空ロッドの上記先端部内に挿入し、上記ビットスリーブと上記中空ロッドの上記先端部とを溶接固定したものであ
り、上記中空ロッドの肉厚よりも上記ビットスリーブの上記径大管部の肉厚が大となるように形成されている開孔装置により構成される。
【0009】
このように構成すると、ビットスリーブの肉厚を大きくすることで、ビットと中空ロッドとの接続部を強化しながら、中空ロッドの肉厚を薄くすることができ、開孔装置全体の軽量化を実現することができる。
このように構成すると、ビットと中空ロッドとの接続部を強化しながら、中空ロッドの肉厚を薄くすることができ、開孔装置全体の軽量化を実現することができる。
【0012】
第
2に、上記ビットの上記径小短管の上記雄螺子と、上記ビットスリーブの上記径大管部の上記雌螺子との螺合関係は、逆螺子となるように形成されている上記第
1記載の開孔装置により構成される。
【0013】
このように構成すると、上記ビットスリーブ7を上記ビット1の雄螺子に螺合させるには、ビットスリーブ7を左回しとする。これにより、開孔時は中空ロッドを逆回転(左回転)させることにより、ビットとスリーブとの離脱を防止することができる。また、開孔後、ビットを交換する際は、中空ロッドを正回転(右回転)させることにより、スリーブからビットを容易に離脱することができる。
【0014】
第
3に、上記ビットスリーブの上記径大管部の上記後端部には上記径小管部に連続するテーパ環状部が設けられると共に、上記ビットスリーブの上記径小管部には、上記中空ロッドの上記先端部の内周縁が係合する環状段部が形成されており、上記中空ロッドの上記先端部を上記径小管部に接続した状態において、上記中空ロッドの上記内周縁が上記環状段部に当接するように構成し、上記内周縁が上記環状段部に当接した状態において、上記テーパ環状部と上記中空ロッドの上記先端部との間に溶接用環状溝が形成されるように構成された上記第
1又は2記載の開孔装置により構成される。
【0015】
このように構成すると、中空ロッドの先端部にビットスリーブの径小管部を挿入することにより、溶接用環状溝が形成されるので、ビットスリーブと上記中空ロッドとの溶接を容易に行うことができる。
【0016】
第
4に、上記ビットスリーブの上記径大管部の外周面と上記中空ロッドの外周面は面一状態となるように構成され、かつ上記径大管部の上記外周面及び上記中空ロッドの上記外周面は、上記ビットの上記繰粉排出溝の最内周部と面一又は上記最内周部より上記中心軸線側に設けられている上記第1〜
3の何れかに記載の開孔装置により構成される。
【0017】
このように構成すると、ビットの繰粉排出溝の後方エリアに、繰粉の排出を阻害するものがないため、円滑に繰粉を排出することができ、開孔動作を円滑に行うことが可能な開孔装置を実現できる。
【0018】
第
5に、
上記ビットスリーブと上記中空ロッドとの溶接部の外周部は、上記ビットの上記繰粉排出溝の上記最内周部と面一又は上記最内周部より上記中心軸線側に設けられている上記第
4記載の開孔装置により構成される。
【0019】
このように構成すると、ビットの繰粉排出溝の後方エリアに、繰粉の排出を阻害する溶接部がないため、円滑に繰粉を排出することができ、開孔動作を円滑に行うことが可能な開孔装置を実現できる。
【0020】
第
6に、先端部に中心軸線と直交する台金が3方向又は4方向に形成され、各台金間に繰粉排出溝が3か所又は4か所形成され、先端面に複数のチップが装着され
、後端部に上記中心軸線を中心とする中空の径小短管が形成され、該径小短管の外周には雄螺子が逆螺子に形成された開孔用ビットと、該開孔用ビットにビットスリーブを装着したビットスリーブ付開孔用ビットであって、上記ビットスリーブは、上記中心軸線を中心とする中空のビットスリーブにより構成され、当該ビットスリーブは、上記開孔用ビットに接続される先端部側は、内周面に上記雄螺子に螺合する雌螺子が形成された径大管部により形成され、中空ロッドに接続される後端部側は、中空ロッドの先端部内に挿入可能であって上記径大管部の後端部に一体形成された径小管部により形成されており、上記ビットスリーブの上記径大管部に上記開孔用ビットの上記径小短管の雄螺子が螺合接続されたものであり、上記各繰粉排出溝の上記中心軸線方向の深さは、中空の上記ビットスリーブの雌螺子を上記径小短管に螺合した状態において、上記ビットスリーブの外周面が上記繰粉排出溝の最内周部に一致するか、又は、上記ビットスリーブの上記外周面が上記繰粉排出溝の上記最内周部の位置よりも上記中心軸線側に位置し得る深さに形成したものであり、上記ビットスリーブの上記径大管部の肉厚は、当該ビットスリーブに接続される中空ロッドの肉厚より大であるビットスリーブ付開孔用ビットにより構成される。
【0021】
このような構成の開孔用ビットによると、中空のビットスリーブを接続した状態においても、ビットスリーブの外周面がビットの各繰粉排出溝の最内周部より外半径方向に突出することはないので、ビットスリーブを使用しても開孔時に円滑な繰粉排出を行い得る開孔用ビットを実現し得る。
このような構成のビットスリーブ付開孔用ビットによると、ビットスリーブの径大管部の肉厚を大とすることにより、開孔用ビットと中空ロッドとの接続部の強度を確保することができ、これにより中空ロッドの肉厚を比較的薄く形成することが可能となり、開孔装置の軽量化を実現することができる。このように構成すると、ビットスリーブを接続した状態においても、ビットスリーブの外周面がビットの各繰粉排出溝の最内周部より外半径方向に突出していないので、ビットスリーブを使用しても開孔時に円滑な繰粉排出を行い得るビットスリーブ付開孔用ビットを実現し得る。このように構成すると、ビットと中空ロッドの接続部の強度を確保しながら、中空ロッドの肉厚を比較的薄く形成し得るので開孔装置全体を軽量化することが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ビットスリーブの肉厚を大きくすることで、ビットと中空ロッドとの接続部を強化しながら、中空ロッドの肉厚を薄くすることができ、開孔装置全体の軽量化を実現し、ハンドリング性の良好な開孔装置を実現することができる。
【0029】
また、上記ビットスリーブと上記ビットとの螺合を逆螺子としたので、開孔時は中空ロッドを逆回転(左回転)させることにより、ビットとスリーブとの離脱を防止することができ、また、開孔後、ビットを交換する際は、中空ロッドを正回転(右回転)させることにより、スリーブからビットを容易に離脱することができる。
【0030】
また、中空ロッドの先端部にビットスリーブの径小管部を挿入することにより、溶接用環状溝が形成されるので、ビットスリーブと上記中空ロッドとの溶接を容易に行うことができる。
【0031】
また、ビットの繰粉排出溝の後方エリアに、繰粉の排出を阻害するものがないため、円滑に繰粉を排出することができ、開孔動作を円滑に行うことが可能な開孔装置を実現できる。
【0032】
また、ビットスリーブを接続した状態においても、ビットスリーブの外周面がビットの各繰粉排出溝の最内周部より外半径方向に突出していないので、ビットスリーブを使用しても開孔時に円滑な繰粉排出を行い得る開孔用ビットを実現し得る。
【0033】
また、ビットスリーブの径大管部の肉厚を大とすることにより、開孔用ビットと中空ロッドの接続部の強度を確保することができ、これにより中空ロッドの肉厚を比較的薄く形成することが可能となり、開孔装置の軽量化を可能としたビットスリーブ付開孔用ビットを実現し得る。
【0034】
また、ビットスリーブを接続した状態においても、ビットスリーブの外周面がビットの各繰粉排出溝の最内周部より外半径方向に突出することはないので、ビットスリーブを使用しても開孔時に円滑な繰粉排出を行い得るビットスリーブ付開孔用ビットを実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図3】(a)、(b)共に同上装置のビットの正面図(チップは省略)である。
【
図4】(a)、(b)共に同上装置のビットの正面図(チップは省略)である。
【
図5】開孔機(ドリル本体)に中空ロッドを装着した状態の側面図である。
【
図6】同上装置にて高炉を開孔する状態を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る開孔装置について詳細に説明する。
【0037】
図1、
図2に示すように、本発明の高炉の開孔装置10は、先端部2に中心軸線Pと直交する台金3が3方向又は4方向に形成され(
図3、
図4参照)、各台金3,3間に繰粉排出溝4が3か所又は4か所形成され、先端面2aに複数のチップ(例えば超硬チップ)5が装着されたビット1、及び、該ビット1を支持する中空ロッド6、及び、上記ビット1と上記中空ロッド6間に介在する中空のビットスリーブ7とから構成される。
【0038】
上記ビット1は後端部に上記中心軸線Pを中心とする中空の径小短管1aが形成され、該径小短管1の外周には雄螺子1a’が形成されている。
【0039】
上記ビットスリーブ7は、上記中心軸線Pを中心とし、上記ビット1と上記中空ロッド6の先端部6aとの間に介在する中空円筒状のもので、上記ビット1側(先端部側)は内周面に上記雄螺子1a’に螺合する雌螺子8が形成された径大管部7aにより形成され、上記中空ロッド6側(後端部側)は、上記中空ロッド6先端部6a内に挿入可能であって、上記径大管部7a後端部に一体形成された径小管部7bにより形成されている。
【0040】
そして、上記ビットスリーブ7の径大管部7aを上記ビット1の雄螺子1a’に螺合した状態で、上記中空ロッド6先端部6aから上記ビットスリーブ7の径小管部7bを上記中空ロッド6先端部6a内に挿入し、上記中空ロッド6先端部6aと上記ビットスリーブ7(径小管部7b)とを溶接固定することにより高炉等の開孔装置10を構成するものである。
【0041】
上記ビットスリーブ7の上記径大管部の肉厚T1は、上記中空ロッド6の肉厚T2よりも大となるように形成されている(T1>T2)。勿論、上記中空ロッド6の肉厚T2は、従来の中空ロッド(ビットスリーブ7を用いない従来の中空ロッド)の肉厚よりも薄く形成されている。
【0042】
このように構成することにより、肉厚の大きいビットスリーブ7によって、ビット1と中空ロッド6との接続部が強化されると共に、中空ロッド6の肉厚T2は、上記ビットスリーブの径大管部7aの肉厚T1より薄く、かつ従来の中空ロッドの肉厚より薄く形成することができるので、中空ロッド6の軽量化、延いては中空ロッド6及びビット1からなる開孔装置10の軽量化を実現することができる。
【0043】
また、上記ビット1の径小短管1aの雄螺子1a’と、上記ビットスリーブ7の径大管部7aの雌螺子8との螺合関係は、逆螺子(左螺子)となるように形成されている。よって、上記ビットスリーブ7を上記ビット1の雄螺子1a’に螺合させるには、ビットスリーブ7を左回しとする。これにより、開孔時は中空ロッド6を逆回転(左回転)させることにより、ビット1とスリーブ7との離脱を防止することができる。また、開孔後、ビット1を交換する際は、中空ロッドを逆回転(右回転)させることにより、スリーブ7からビット1を容易に離脱することができる。
【0044】
上記ビットスリーブ7の上記径大管部7aの後端部には上記径小管部7bに連続するテーパ環状部7cが設けられると共に、上記ビットスリーブ7の上記径小幹部7bには、上記中空ロッド6の先端部6aの内周縁6a’が係合する環状段部7dが形成されている。上記環状段部7dは、径小管部7bにおいて、中空ロッド6側(後部側)に径が縮小する方向に設けられた段部である。
【0045】
よって、上記中空ロッド6の先端部6aを上記径小管部7bに接続した状態において、上記中空ロッド6の内周縁6a’が上記環状段部7dに当接するように構成している(
図1参照)。
【0046】
上記内周縁6a’が上記環状段部7d当該当接した状態において、上記テーパ環状部7cと上記中空ロッド6先端部6aとの間に溶接用環状溝11が形成されるように構成されている。よって、当該溶接用環状溝11を溶接することで(溶接部9)、上記ビットスリーブ7と上記中空ロッド6を接続固定する。このとき、溶接部9の外周は、上記ビットスリーブ7の外周面7’及び中空ロッド6の外周面6’と面一、或いは、上記外周面7’,6’から突出しないように構成する(
図1参照)。
【0047】
さらに、上記ビットスリーブ7と上記中空ロッド6とを接続した状態において、上記ビットスリーブ7の径大管部7aの外周面7’と上記中空ロッド6の外周面6’は面一状態となるように構成されている(
図1参照)。即ち、上記ビットスリーブ7の径大管部7aの外周面7’の直径(管の直径T3)と、上記中空ロッド6の外周面6’の直径(ロッドの直径T4)は同一(T3=T4)となるように構成されている。
【0048】
また、上記ビットスリーブ7の上記径大管部7aの外周面7’は、上記ビット1の繰粉排出溝4の最内周部4’と面一(
図3(a)、
図4(a)参照)又は上記中心軸線P側に設けられている(
図3(b)、
図4(b)参照)。また、上述のように、上記溶接部9の外周部9’も、上記ビット1の繰粉排出溝4の最内周部4’と面一又は上記中心軸線P側に設けられている。このように構成することで、ビット1の繰粉排出口4から後方側に障害物が存在しないので、出銑口の開孔時、ビット1の繰粉排出口4から円滑に繰粉を後方に排出することができる。
【0049】
より具体的には、繰粉排出溝4が3方向(
図3参照)の場合は、上記ビットスリーブ7の外周面7’が、各排出溝4の最内周部4’と面一(
図3(a)参照)か、上記各繰粉排出溝4の各最内周部4’から各々一定距離T5だけ、中心軸線P側に位置するように構成する(
図3(b)参照)。上記繰粉排出溝4が4方向(
図4参照)の場合は、上記ビットスリーブ7の外周面7’が、各排出溝4の最内周部4’と面一(
図4(a)参照)か、上記各繰粉排出溝4の各最内周部4’から各々一定距離T6だけ、中心軸線P側に位置するように構成する(
図4(b)参照)。
【0050】
即ち、開孔用ビット1に着目すると、上記各繰粉排出溝4の上記中心軸線P方向の深さは、中空のビットスリーブ7の雌螺子8を上記径小管部1aに螺合した状態において、上記ビットスリーブ7の外周面7’が上記各繰粉排出溝4の各最内周部4’に一致するか、又は、上記ビットスリーブ7の上記外周面7’が上記各繰粉排出溝4の上記各最内周部4’の位置よりも、上記中心軸線P側に位置し得る深さに形成されている。
【0051】
このように構成すると、ビット1の各繰粉排出溝4(3方向又は4方向)の後方の中空ロッド6方向に、障害物が全く存在しないので、開孔時の繰粉は上記各繰粉排出溝4(3方向又は4方向)を通って後方に円滑に排出することができるものである。ここで、上記ビットスリーブ7が接続された上記ビット1を開孔用ビット又はビットスリーブ付開孔用ビットという。
【0052】
尚、上記「面一」とは、突き合わされた部材(面)に段差がない状態をいうが、この場合、上記最内周部4’とビットスリーブ7の径大管部7aの外周面7’との関係のように、最内周部4’と外周縁7’とが直接突き合わされた状態をいうのは勿論であるが(
図3(a)、
図4(a)参照)、上記ビットスリーブ7の径大管部7aの外周面7’と、上記中空ロッド6の外周面6’のように、両者の間に間隔(この場合溶接部9)が介在している場合においても、両面に段差がない場合に、「面一」という表現を用いる。
【0053】
上記中空ロッド6の後端部には、上記中心軸線Pを中心とする中空の芯出しボス12の径大管部12aを嵌合し、当該ボス12の径小管部12bに肉厚大の径小中空ロッド13を接続し、上記ボス12と上記径小中空ロッド13の先端部とを溶接により固定する(溶接部15)。これにより上記径小中空ロッド13の中心軸線は上記中心軸線Pに一致し、従って、上記ビット1、ビットスリーブ7、中空ロッド6,13の中心軸は上記中心軸線Pに一致する。
【0054】
上記径小中空ロッド13の後端部には雄螺子14(逆螺子)が形成されており、当該雄螺子14を既設の開孔機15のシャンク15’に螺合し得るように構成している。上記径小中空ロッド13の肉厚T7は上記中空ロッド6の肉厚T2より大(T2<T7)に形成されており、開孔装置全体の強度を維持するように構成している。
【0055】
図5に示すものは開孔機本体であり、同開孔機本体の機枠16の下にスライダーガイド17を設け、当該ガイド17に開孔機15(油圧ハンマードリル)を前後方向にスライド可能に設け、開孔機15のシャンク15’に上記径小中空ロッド13の雄螺子14を螺合することで、上記開孔装置を上記開孔機15に接続する。
【0056】
図6に示すように、上記開孔機15により上記開孔装置10、即ち中空ロッド6,13、及びビット1を打撃及び回転させることで、上記ビット1によって溶融炉18の開孔部閉塞マッド19を開孔する。
【0057】
本発明の開孔装置は上述のように構成されているため、本発明に係る開孔装置10を構成するには、ビット1の後端部の雄螺子1a’にビットスリーブ7の径大管部7aを螺子込み(逆螺子)固定し、その後、ビットスリーブ7の径小管部7bを中空ロッド6の先端部6a内に挿入し、内周縁6a’を上記ビットスリーブ7の環状段部7dに当接させ、その状態で、溶接用環状溝11を溶接により固定して(溶接部9)ビットスリーブ7と中空ロッド6を固定する。
【0058】
その後、中空ロッド6の後端に芯出しボス12の径大管部12aを嵌合挿入し、その後端の径小管部12bに小径中空ロッド13の先端部を挿入して両者を溶接により固定する(溶接部23)。これにより開孔装置10が完成する(
図1参照)。
【0059】
その後、上記中空ロッド13の雄螺子14を開孔機15のシャンク15’に螺合装着し(逆螺子)、かかる状態で、開孔機15を回転(左回転)及び打撃を繰り返しながら開孔装置10(ビット1)を前進させ、溶融炉18の開孔部閉塞マッド19を開孔する(
図7参照)。このとき、開孔装置10は、その中空ロッド6の肉厚T2は薄く、軽量であるため、開孔装置10の撮り回し性が良く、開孔装置10の開孔機15への取付作業を効率的に行うことができる。
【0060】
上記ビット1によって上記開孔部閉塞マッド19を開孔していく際、上記マッドの繰粉は上記ビット1の各繰粉排出溝4を介して後方(中空ロッド6の方向)に排出されていくが、上記ビット1に装着されたビットスリーブ7及び中空ロッド6の外周面7’,6’、及び溶接部9における外周部9’は何れも、上記各繰粉排出溝4の各最内周部4’と面一、又は各最内周部4’より中心軸線P側に設けられているので、上記ビット1の各繰粉排出溝4の後方には障害物が存在せず、従って、上記各繰粉排出溝4から後方に繰粉を円滑に排出することができる。
【0061】
また、上記ビット1と中空ロッド6とは、中空ロッド6の肉厚T2より厚い肉厚(T1>T2)を有するビットスリーブ7を介して接続されているため、ビット1と上記中空ロッド6とを強固に接続固定することができる。
【0062】
以上のように、本発明によれば、ビットスリーブ7の肉厚T1を大きくすることで、ビット1と中空ロッド6との接続部を強化しながら、中空ロッド6の肉厚T2を薄くすることができ、開孔装置全体の軽量化を実現し、ハンドリング性の良好な開孔装置を実現することができる。
【0063】
また、上記ビットスリーブ7と上記ビット1との螺合を逆螺子としたので、開孔時は中空ロッドを逆回転(左回転)させることにより、ビット1とスリーブ7との離脱を防止することができ、また、開孔後、ビット1を交換する際は、中空ロッド6を正回転(右回転)させることにより、ビットスリーブ7からビット1を容易に離脱することができる。
【0064】
また、中空ロッド3の先端部6aにビットスリーブ7の径小管部7bを挿入することにより、溶接用環状溝11が形成されるので、ビットスリーブ7と中空ロッド6との溶接を容易に行うことができる。
【0065】
また、ビット1の各繰粉排出溝4の後方エリアに、繰粉の排出を阻害するものがないため、円滑に繰粉を排出することができ、開孔動作を円滑に行うことが可能な開孔装置を実現できる。
【0066】
また、ビット1の各繰粉排出溝4の後方エリアに、繰粉の排出を阻害するものがないため、円滑に繰粉を排出することができ、開孔動作を円滑に行うことが可能な開孔用ビットを実現できる。
【0067】
また、ビットスリーブ7を接続した状態においても、ビットスリーブ7の外周面7’がビット1の各繰粉排出溝4の各最内周部4’より外半径方向に突出することはないので、ビットスリーブ7を使用しても開孔時に円滑な繰粉排出動作を行い得る開孔用ビットを実現し得る。
【0068】
また、ビットスリーブ7の径大管部7aの肉厚T1を大とすることにより、開孔用ビット1と中空ロッド6の接続部の強度を確保することができ、これにより中空ロッド6の肉厚T2を比較的薄く形成することが可能となり、開孔装置の軽量化を実現することができる。
【0069】
また、ビットスリーブ7を接続した状態においても、ビットスリーブ7の外周面7’がビット1の各繰粉排出溝4の各最内周部4’より外半径方向に突出することはないので、ビットスリーブ7を使用しても開孔時に円滑な繰粉排出動作を行い得るビットスリーブ付開孔用ビットを実現し得る。
【0070】
尚、
図2中、21はビット1の上面の開口22に連通し、各繰粉排出溝4に各々開口する通気孔(
図3、
図4参照)、
図5中、20は圧油送油ホースである。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る開孔装置は、ビットと中空ロッドとの接続を強化し得ると共に開孔装置全体を軽量化することができるので、各種高炉等の開孔装置として広く使用が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 ビット
1a 径小短管
1a’ 雄螺子
2a 先端面
3 台金
4 繰粉排出溝
4’ 最内周部
5 チップ
6 中空ロッド
6a 先端部
6a’ 内周縁
7 ビットスリーブ
7a 径大管部
7b 径小管部
7c テーパ環状部
7d 環状段部
8 雌螺子
9 溶接部
9’ 外周部
11 溶接用環状溝
T1 肉厚(ビットスリーブの径大管部)
T2 肉厚(中空ロッド)
P 中心軸線