(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552945
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】ポリアミド系合成繊維処理剤及びポリアミド系合成繊維の処理方法
(51)【国際特許分類】
D06M 13/292 20060101AFI20190722BHJP
D06M 13/224 20060101ALI20190722BHJP
D06M 13/17 20060101ALI20190722BHJP
D06M 101/34 20060101ALN20190722BHJP
【FI】
D06M13/292
D06M13/224
D06M13/17
D06M101:34
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-227618(P2015-227618)
(22)【出願日】2015年11月20日
(62)【分割の表示】特願2015-86904(P2015-86904)の分割
【原出願日】2015年4月21日
(65)【公開番号】特開2016-204814(P2016-204814A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100081798
【弁理士】
【氏名又は名称】入山 宏正
(72)【発明者】
【氏名】早川 秀弥
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴之
(72)【発明者】
【氏名】新井 伸明
(72)【発明者】
【氏名】亀田 愛子
【審査官】
春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5668170(JP,B2)
【文献】
特開2001−040579(JP,A)
【文献】
特開平08−226076(JP,A)
【文献】
特公昭48−034529(JP,B1)
【文献】
特開平04−002879(JP,A)
【文献】
特開2009−074209(JP,A)
【文献】
特開2011−174195(JP,A)
【文献】
特開2015−038260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00−15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平滑剤を62〜89質量%、ノニオン界面活性剤を10〜35質量%及び有機リン酸エステル化合物を1〜25質量%(合計100質量%)の割合で含有して成るポリアミド系合成繊維処理剤
(有機スルホン酸化合物を含むものを除く)であって、該有機リン酸エステル化合物が下記の有機リン酸エステル化合物A及び下記の有機リン酸エステル化合物Bを含有しており、且つ該有機リン酸エステル化合物Aを該有機リン酸エステル化合物Bよりも多く含有し、
有機リン酸エステル化合物が、下記の数1から求められる有機リン酸エステル化合物AのP核積分比率が60〜99.9となる場合のものであることを特徴とするポリアミド系合成繊維処理剤。
有機リン酸エステル化合物A:下記の化1で示される有機リン酸エステル及び/又は下記の化1で示される有機リン酸エステルの塩
有機リン酸エステル化合物B:下記の化2で示される有機リン酸エステル及び/又は下記の化2で示される有機リン酸エステルの塩
【化1】
【化2】
(化1及び化2において、
R
1,R
2,R
3:炭素数4〜18の直鎖飽和脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、炭素数8〜24の分岐飽和脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、炭素数4〜18の直鎖飽和脂肪族1価アルコール1モル当たりエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを合計で1〜20モル付加したものから水酸基を除いた残基、又は炭素数8〜24の分岐飽和脂肪族1価アルコール1モル当たりエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを合計で1〜20モル付加したものから水酸基を除いた残基)
【数1】
(数1において、
P化1:化1で示される有機リン酸エステルのカリウム塩に帰属されるP核NMR積分値
P化2:化2で示される有機リン酸エステルのカリウム塩に帰属されるP核NMR積分値)
【請求項2】
ノニオン界面活性剤が、エーテル型ノニオン界面活性剤、多価アルコール部分エステル型ノニオン界面活性剤、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル型ノニオン界面活性剤、アルキルアミド型ノニオン界面活性剤及びポリオキシアルキレン脂肪酸アミド型ノニオン界面活性剤から選ばれるものである請求項1記載のポリアミド系合成繊維処理剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載のポリアミド系合成繊維処理剤をポリアミド系合成繊維に対して0.1〜10質量%となるように付着させることを特徴とするポリアミド系合成繊維の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアミド系合成繊維処理剤及びポリアミド系合成繊維の処理方法に関し、更に詳しくはポリアミド系合成繊維の高温加工に起因する黄変を効果的に防止すると共に、ポリアミド系合成繊維に優れた染色性を付与するポリアミド系合成繊維処理剤及びかかるポリアミド系合成繊維処理剤を用いたポリアミド系合成繊維の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記のようなポリアミド系合成繊維処理剤として、潤滑剤と界面活性剤とを含有する処理剤中にイミダゾリン系両性活性剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤とを含有させたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、かかる従来のポリアミド系合成繊維処理剤には、ポリアミド系合成繊維の高温加工における黄変を防止し、またポリアミド系合成繊維に染色性を付与する上で不十分という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−40579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、ポリアミド系合成繊維の高温加工に起因する黄変を効果的に防止すると共に、ポリアミド系合成繊維に優れた染色性を付与するポリアミド系合成繊維処理剤及びかかる処理剤を用いたポリアミド系合成繊維の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記の課題を解決するべく検討した結果、平滑剤、ノニオン界面活性剤及び有機リン酸エステル化合物を特定割合で含有して成るポリアミド系合成繊維処理剤であって、該有機リン酸エステル化合物が特定の有機リン酸エステル化合物A及び特定の有機リン酸エステル化合物Bを含有しており、且つ該有機リン酸エステル化合物Aを該有機リン酸エステル化合物Bよりも多く含有するポリアミド系合成繊維処理剤が正しく好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、平滑剤を62〜89質量%、ノニオン界面活性剤を10〜35質量%及び有機リン酸エステル化合物を1〜25質量%(合計100質量%)の割合で含有して成るポリアミド系合成繊維処理剤
(有機スルホン酸化合物を含むものを除く)であって、該有機リン酸エステル化合物が下記の有機リン酸エステル化合物A及び下記の有機リン酸エステル化合物Bを含有しており、且つ該有機リン酸エステル化合物Aを該有機リン酸エステル化合物Bよりも多く含有し、有機リン酸エステル化合物が、後述する数1から求められる有機リン酸エステル化合物AのP核積分比率が60〜99.9となる場合のものであるポリアミド系合成繊維処理剤に係る。また本発明は、かかるポリアミド系合成繊維繊維処理剤をポリアミド系繊維に対し所定割合付着させるポリアミド系合成繊維の処理方法に係る。
【0007】
有機リン酸エステル化合物A:下記の化1で示される有機リン酸エステル及び/又は下記の化1で示される有機リン酸エステルの塩
【0008】
有機リン酸エステル化合物B:下記の化2で示される有機リン酸エステル及び/又は下記の化2で示される有機リン酸エステルの塩
【0009】
【化1】
【0010】
【化2】
【0011】
化1及び化2において、
R
1,R
2,R
3:炭素数4〜18の直鎖飽和脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、炭素数8〜24の分岐飽和脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、炭素数4〜18の直鎖飽和脂肪族1価アルコール1モル当たりエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを合計で1〜20モル付加したものから水酸基を除いた残基、又は炭素数8〜24の分岐飽和脂肪族1価アルコール1モル当たりエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを合計で1〜20モル付加したものから水酸基を除いた残基。
【0012】
先ず、本発明に係るポリアミド系合成繊維処理剤(以下、本発明の処理剤という)について説明する。本発明の処理剤は、平滑剤を62〜89質量%、ノニオン界面活性剤を10〜35質量%及び有機リン酸エステル化合物を1〜25質量%(合計100質量%)の割合で含有して成るものであって、該有機リン酸エステル化合物が前記の有機リン酸エステル化合物A及び前記の有機リン酸エステル化合物Bを含有しており、且つ該有機リン酸エステル化合物Aを該有機リン酸エステル化合物Bよりも多く含有するものである。
また、本発明の処理剤の場合、有機スルホン酸化合物を含むものは除かれる。
【0013】
本発明に供する有機リン酸エステル化合物には、前記した有機リン酸化合物A及び前記した有機リン酸エステル化合物B以外に例えば、モノオクチルピロホスフェート、ジオクチルピロホスフェート=カリウム塩、ジオクチルポリホスフェート、ピロリン酸四ナトリウム塩、トリポリリン酸等の成分を含有することもできるが、これらの成分の含有量は可及的に少ない方が好ましい。
【0014】
有機リン酸化合物Aとしては、モノヘプチルホスフェート、モノオクチルホスフェート、モノノニルホスフェート、モノデシルホスフェート、モノウンデシルホスフェート、モノドデシルホスフェート、モノトリデシルホスフェート、モノミリスチルホスフェート、モノペンタデシルホスフェート、モノセチルホスフェート、モノヘプタデシルホスフェート、モノステアリルホスフェート、モノ2−エチルーヘキシルホスフェート、モノ2−メチルーオクチルホスフェート、モノ2−プロピルーヘプチルホスフェート、モノ2−ブチルーオクチルホスフェート、モノ2−ペンチルーノニルホスフェート、モノ2−ヘキシルーデシルホスフェート、モノ2−ヘプチルーウンデシルホスフェート、モノイソステアリルホスフェート、モノイソドコシルホスフェート、モノイソテトラコシルホスフェート等の有機リン酸エステルやこれらの有機リン酸エステルの塩が挙げられる。その他、参考例としてモノミリストレイルホスフェート、モノパルミトレイルホスフェート、モノヘプタデセルホスフェート、モノオレイルホスフェートが挙げられる。有機リン酸エステルの塩としては、いずれも前記した有機リン酸エステルと、1)水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等とを中和して得られるアルカリ金属塩、2)ジエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン等の有機アミンとを中和して得られる有機アミン塩、3)オクチルアミン-ポリオキシエチレン10モル付加物、ラウリルアミン-ポリオキシエチレン4モル付加物、ステアリルアミンポリオキシエチレン4モル付加物等、有機アミン1モルに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを1〜50モル付加させた化合物とを中和して得られる有機アミンのアルキレンオキサイド付加物との塩等が挙げられるが、なかでも1)モノデシルホスフェート=ナトリウム塩等の有機リン酸エステルのナトリウム塩、2)2−プロピルーヘプチルホスフェート=カリウム塩等の有機リン酸エステルのカリウム塩、3)モノドデシルホスフェート=ジエタノールアミン塩、2−エチルーヘキシルホスフェート=ジブチルエタノールアミン塩等の有機リン酸エステルの有機アミン塩、4)モノイソステアリルホスフェート=ラウリルアミン-ポリオキシエチレン4モル付加物等の有機リン酸エステルと有機アミン1モルにエチレンオキサイドを1〜20モル付加させた化合物との塩が好ましい。その他、参考例としてモノオレイルホスフェート=ステアリルアミン-ポリオキシエチレン4モル付加物が挙げられる。
【0015】
有機リン酸化合物Bとしては、ジブチルホスフェート、ジヘプチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジノニルホスフェート、ジデシルホスフェート、ジウンデシルホスフェート、ジドデシルホスフェート、ジトリデシルホスフェート、ジミリスチルホスフェート、ジペンタデシルホスフェート、ジセチルホスフェート、ジヘプタデシルホスフェート、ジステアリルホスフェート、ジ2−エチル−ヘキシルホスフェート、ジ2−メチル−オクチルホスフェート、ジ2−プロピル−ヘプチルホスフェート、ジ2−ブチル−オクチルホスフェート、ジ2−ペンチル−ノニルホスフェート、ジ2−ヘキシル−デシルホスフェート、ジ2−ヘプチル−ウンデシルホスフェート、ジイソステアリルホスフェート、ジイソドコシルホスフェート、ジイソテトラコシルホスフェート等の有機リン酸エステルやこれらの有機リン酸エステルの塩が挙げられる。その他、ジミリストレイルホスフェート、ジパルミトレイルホスフェート、ジヘプタデセルホスフェート、ジオレイルホスフェートが挙げられる。有機リン酸エステルの塩としては、いずれも前記した有機リン酸エステルと、1)水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等とを中和して得られるアルカリ金属塩、2)ジエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン等の有機アミンとを中和して得られる有機アミン塩、3)オクチルアミン−ポリオキシエチレン10モル付加物、ラウリルアミン−ポリオキシエチレン4モル付加物、ステアリルアミン-ポリオキシエチレン4モル付加物等、有機アミン1モルに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを1〜50モル付加させた化合物とを中和して得られる有機アミンのアルキレンオキサイド付加物との塩等が挙げられるが、なかでも1)ジオクチルホスフェート=カリウム塩等の有機リン酸エステルのカリウム塩、2)ジイソステアリルホスフェート=ジブチルエタノールアミン塩等の有機アミン塩、3)ジデシルホスフェート=オクチルアミン-ポリオキシエチレン10モル付加物等の有機リン酸エステルと有機アミン1モルにエチレンオキサイドを1〜20モル付加させた化合物との塩が好ましい。その他、参考例としてジオレイルホスフェート=ラウリルアミン-ポリオキシエチレン4モル付加物、ジオレイルホスフェート=ステアリルアミン-ポリオキシエチレン4モル付加物が挙げられる。
【0016】
化1及び化2中のR
1,R
2,R
3としては、1)ブタノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノールデシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、イコシルアルコール、ヘンエイコシルアルコール、ドコシルアルコール、トリコシルアルコール、テトラコシルアルコール等の炭素数4〜24の脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、2)ブタノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノールデシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコールテトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、イコシルアルコール、ヘンエイコシルアルコール、ドコシルアルコール、トリコシルアルコール、テトラコシルアルコール等の炭素数4〜24の脂肪族1価アルコール1モル当たりエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを合計で1〜20モル付加したものから水酸基を除いた残基が例示されるが、なかでも1)オクタノール、ドデシルアルコール等の炭素数4〜18の直鎖飽和脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、2)2−プロピルーヘプチルアルコール、2−エチルーヘキシルアルコール等の炭素数8〜24の分岐飽和脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、3)テトラデシルアルコール等の炭素数4〜18の直鎖飽和脂肪族1価アルコール1モル当たりエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを合計で1〜20モル付加したものから水酸基を除いた残基、4)イソステアリルアルコール等の炭素数8〜24の分岐飽和脂肪族1価アルコール1モル当たりエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを合計で1〜20モル付加したものから水酸基を除いた残基から選ばれるものが適用される。
その他、参考例として5)パルミトレイルアルコール等の炭素数8〜24の不飽和脂肪族1価アルコールから水酸基を除いた残基、及び6)オレイルアルコール等の炭素数8〜24の不飽和脂肪族1価アルコール1モル当たりエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを合計で1〜20モル付加したものから水酸基を除いた残基が挙げられる。
【0017】
本発明の処理剤としては、前記の有機リン酸エステル化合物が、下記の数1から求められる有機リン酸エステル化合物AのP核積分比率が60〜99.9となるようにしたものである。かかる比率は、70〜99.9となるようにしたものがより好ましい。
【0018】
【数1】
【0019】
数1において、
P化1:化1で示される有機リン酸エステルのカリウム塩に帰属されるP核NMR積分値
P化2:化2で示される有機リン酸エステルのカリウム塩に帰属されるP核NMR積分値
【0020】
有機リン酸化合物AのP核積分比率は、有機リン酸エステル及び/又は有機リン酸エステルの塩を過剰の水酸化カリウムを加えて中和し、31P−NMRの測定値から算出することができる。一般的におおよそ、化1に帰属されるピークは0ppm以下、化2に帰属されるピークは0ppm超4ppm未満に現れるので、それぞれのピークの積分値を求め、前記した数1により算出する。
【0021】
本発明の処理剤に供する平滑剤としては、1)ブチルステアラート、オクチルステアラート、オレイルラウラート、オレイルオレアート、イソペンタコサニルイソステアラート、オクチルパルミテート、イソトリデシルステアレート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、脂肪族モノアルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加した(ポリ)オキシアルキレン付加物と脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、2)1,6−ヘキサンジオールジデカノエートトリメチロールプロパンモノオレートモノラウレート、ソルビタントリトレアート、グリセリンモノラウレラート等の、脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との完全エステル化合物、脂肪族多価アルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加した(ポリ)オキシアルキレン付加物と脂肪族モノカルボン酸との完全エステル化合物、3)ジラウリルアジペート、ジオレイルアゼレート、ジイソセチルチオジプロピオナート、ビスポリオキシエチレンラウリルアジパート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族多価カルボン酸との完全エステル化合物、脂肪族モノアルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加した(ポリ)オキシアルキレン付加物と脂肪族多価カルボン酸との完全エステル化合物、4)ベンジルオレアート、ベンジルラウラート及びポリオキシプロピレンベンジルステアラート等の、芳香族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、芳香族モノアルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加した(ポリ)オキシアルキレン付加物と脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、5)ビスフェノールAジラウラート、ポリオキシエチレンビスフェノールAジラウラート等の、芳香族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との完全エステル化合物、芳香族多価アルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加した(ポリ)オキシアルキレン付加物と脂肪族モノカルボン酸との完全エステル化合物、6)ビス2−エチルヘキシルフタラート、ジイソステアリルイソフタレート、トリオクチルトリメリテート等の、脂肪族モノアルコールと芳香族多価カルボン酸との完全エステル化合物、脂肪族モノアルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加した(ポリ)オキシアルキレン付加物と芳香族多価カルボン酸との完全エステル化合物、7)ヤシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、ゴマ油、魚油及び牛脂等の天然油脂等、8)鉱物油等、合成繊維用処理剤に採用されている公知の平滑剤挙げられる。なかでも平滑剤としては、トリメチロールプロパントリラウラート等の多価アルコールと1価のカルボン酸とのエステル、ジラウリルアジペート、ジオレイルアゼレート、ジイソセチルチオジプロピオナート等の1価のアルコールと多価カルボン酸とのエステル及びイソトリデシルステアレート、オクチルパルミテート、オレイルオレアート等の1価のアルコールと1価のカルボン酸とのエステルが好ましい。
【0022】
本発明の処理剤に供するノニオン界面活性剤としては、1)有機酸、有機アルコール、有機アミン及び/又は有機アミドに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加した化合物、例えばポリオキシエチレンジラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリン酸エステルメチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイン酸ジエステル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシプロピレンラウリルエーテルメチルエーテル、ポリオキシブチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンノニルエーテル、ポリオキシプロピレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンラウロアミドエーテル等のエーテル型ノニオン界面活性剤、2)ソルビタントリオレアート、グリセリンモノラウレラート等の多価アルコール部分エステル型ノニオン界面活性剤、3)ポリオキシアルキレンソルビタントリオレアート、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油トリオクタノアート等のポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル型ノニオン界面活性剤、4)ジエタノールアミンモノラウロアミド等のアルキルアミド型ノニオン界面活性剤、5)ポリオキシエチレンジエタノールアミンモノオレイルアミド等のポリオキシアルキレン脂肪酸アミド型ノニオン界面活性剤等が挙げられるが、なかでもエーテル型ノニオン界面活性剤が好ましい。
【0023】
本発明の処理剤は、平滑剤を62〜89質量%、ノニオン界面活性剤を10〜35質量%及び有機リン酸エステル化合物を1〜25質量%(合計100質量%)の割合で含有するものである。
【0024】
本発明の処理剤は、合目的的に他の成分を併用することができる。かかる他の成分としては、酸化防止剤、外観調整剤、pH調整剤等が挙げられる。酸化防止剤としては、1)1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ハイドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のフェノール系酸化防止剤、2)オクチルジフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、テトラトリデシル−4,4’−ブチリデン−ビス−(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト等のホスファイト系酸化防止剤、3)4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート等のチオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。
外観調製剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピルアルコール、グリセリン、ブチルジグリコール等の低級アルコールが挙げられる。pH調整剤としては、オクタン酸、オレイン酸等の有機酸類、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムなどのアルカリ類、アルキルアミン及びアルキルアミンのアルキレンオキサイド付加物等のアミン類等を挙げられる。これらは単独で使用することもできるし、また二つ以上を併用することもできる。合目的的に併用することができるこれらの他の成分は、本発明の処理剤100質量部に対し、合計で3質量部以下とするのが好ましい。
【0025】
次に本発明に係るポリアミド系合成繊維の処理方法(以下、本発明の処理方法という)について説明する。本発明の処理方法は、以上説明したような本発明の処理剤を熱処理工程に供するポリアミド系合成繊維に対し0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜1.5質量%となるよう付着させる方法である。本発明の処理剤をポリアミド系合成繊維に付着させる工程としては、紡糸工程、延伸工程、紡糸と延伸とを同時に行うような工程等が挙げられる。また本発明の処理剤をポリアミド系合成繊維に付着させる方法としては、ローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等が挙げられる。更に本発明の処理剤をポリアミド系合成繊維に付着させる形態としては、水性液、有機溶剤溶液、ニート等が挙げられる。
【0026】
本発明の処理方法に供するポリアミド系合成繊維としては、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維が挙げられるが、なかでも後加工にて高温加工時の耐黄変性の要求が過酷なポリアミド系合成繊維に用いられることが、本発明の処理剤の優れた耐熱性を発揮する上で好ましい。
【発明の効果】
【0027】
以上説明した本発明によると、ポリアミド系合成繊維の高温加工に起因する黄変を効果的に防止すると共に、ポリアミド系合成繊維に優れた染色性を付与するという効果がある。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は特に断りが無い限り質量%を意味する。
【0029】
試験区分1(有機リン酸エステル化合物の合成)
・有機リン酸エステル化合物(P−1)の合成
反応容器に1−デカノール381部を仕込み、120℃で0.05MPa以下の条件下に2時間脱水処理した後、常圧に戻し、撹拌しながら60±5℃で五酸化二燐81部を1時間かけて投入した。80℃にて3時間熟成した後、30%水酸化ナトリウム水溶液543部を50℃で滴下して中和を行ない、有機リン酸エステル化合物(P−1)を得た。
【0030】
・有機リン酸エステル化合物(P−1)のP核積分比率の算出
有機リン酸エステル化合物(P−1)に過剰のKOHを加えてpHを12以上にした条件下で、31P−NMRを用いてP核積分比率を算出したところ、化1で示される有機リン酸エステルが85%、化2で示される有機リン酸エステルが15%であった。
P核積分比率は、31P−NMR(VALIAN社製の商品名MERCURY plus NMR Spectrometor System、300MHz、以下同じ)の測定値を用いて前記の数1から算出した。尚、溶媒は重水/テトラヒドロフラン=8/2(体積比)の混合溶媒を用いた。
【0031】
・有機リン酸エステル化合物(P−2〜P−14)の合成
有機リン酸化合物(P−1)と同様にして、その他の有機リン酸エステル化合物(P−2〜P−14)を得た。
【0032】
・有機リン酸エステル化合物(RP−1)の合成
反応容器にオレイルアルコール327部及びイオン交換水3部を仕込み、撹拌しながら60±5℃で五酸化二燐69部を1時間かけて投入した。80℃にて3時間熟成した。イオン交換水4部を添加し、100℃で2時間加水分解を行なった後、ラウリルアミン-ポリオキシエチレン4モル付加物604部を50℃で滴下して中和を行い、有機リン酸エステル化合物(RP−1)を得た。有機リン酸エステル化合物(RP−1)に過剰のKOHを加えてpHを12以上にした条件下で、31P−NMRを用いてP核積分比率を算出したところ、化1で示されるリン酸エステルが45%、化2で示される有機リン酸エステルが55%であった。
【0033】
・有機リン酸エステル化合物(RP−2〜RP−4)の合成
有機リン酸エステル化合物(RP−1)と同様にして、その他の有機リン酸エステル化合物(RP−2〜RP−4)を調製した。以上で調製した各有機リン酸化合物の内容を表1及び表2にまとめて示した。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
表1及び表2において、
アルキレンオキサイドの付加モル数:脂肪族1価アルコール当たりのアルキレンオキサイドの付加モル数
PO:プロピレンオキサイド
EO:エチレンオキサイド
【0037】
試験区分2(ポリアミド系合成繊維処理剤の調製)
・実施例1
平滑剤としてイソトリデシルステアレート(L−1)を50部、オクチルパルミテート(L−2)を15部、有機リン酸エステル化合物として表1及び表2に記載の有機リン酸エステル化合物(P−1)を3部、有機リン酸エステル化合物(P−7)を5部、イミダゾリン型両性界面活性剤としてN−オレイル−N’−カルボキシエチル−N’−ヒドロキシエチル−エチレンジアミンナトリウム(A−1)を3部、ノニオン界面活性剤としてポリオキシプロピレン(2モル)ポリオキシエチレン(6モル)ノニルエーテル(N−1)を14部、ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテル/ポリオキシエチレン(3モル)トリデシルエーテル=5/5(質量比)の混合物(N−4)を10部の割合で均一混合して、実施例1の合成繊維用処理剤を調製した。
【0038】
実施例2、参考例3及び比較例1〜6
実施例1のポリアミド系合成繊維処理剤と同様にして、実施例2、参考例3及び比較例1〜6のポリアミド系合成繊維処理剤を調製した。以上で調製した各例のポリアミド系合成繊維処理剤の内容を、実施例1も含めて、表3及び表4にまとめて示した。
【0039】
試験区分3(ポリアミド系合成繊維へのポリアミド系合成繊維処理剤の付着及び評価)
・実施例1
・ポリアミドフィラメントへの処理剤の付着
硫酸相対粘度ηr2.4、酸化チタン含有量0.3質量%のナイロン−6,6チップを常法により乾燥した後、エクストルーダー型紡糸機により290℃にて溶融紡糸した。紡糸口金から吐出して冷却固化した後の走行糸条に試験区分2で調製した実施例1のポリアミド系合成繊維処理剤の10%水性エマルションをガイド給油法にて付着させ、40℃に加熱した4200m/分の速度で回転する第1ゴデットローラーで引き取り、185℃に加熱した第2ゴデットローラーに至る間で1.2倍に延伸し、第2ゴデットローラーとワインダーとの間に設置したエア交絡ノズルにて2.5kg/cm
2の圧空により交絡処理を施し、5300m/分の速度で捲き取り、処理剤付着量が0.1〜3%の範囲にはいる50デニール24フィラメントの処理済みポリアミド直接紡糸延伸糸を5kg捲きケークとして得た。
【0040】
・実施例2、参考例3及び比較例1〜6
実施例1と同様にして実施例2、参考例3及び比較例1〜6の合成繊維用処理剤を付着させた。
【0041】
・耐黄変性の評価
前記で得た5kg捲きケークの延伸糸を用い、筒編機で直径70mm、長さ1.2mの編地を作製した。作製した編地を熱風式乾燥機中で、温度180℃において5分加熱し、目視により黄変の程度を下記の基準で評価した。結果を、表3及び表4にまとめて示した。
【0042】
・・耐黄変性の評価基準
3:黄変した部分がない
2:黄変部分が編地全体の10%以下
1:黄変部分が編地全体の50%以下
×:黄変部分が編地全体の90%以上
【0043】
・染色性の評価
前記で得た5kg捲きケークの延伸糸を用い、筒編機で直径70mm、長さ1.2mの編地を作製した。作製した編地を、80℃で精練し、リラックス処理した後、酸性染料(クラリアント社製の商品名サンドランブルーE−HRLN)を用いて常圧染色法により染色した。染色した編地を、常法に従い水洗し、乾燥した後、直径70mm、長さ1mの鉄製の筒に装着して、編地表面の濃染部分の点数を肉眼で数え、以下の基準で評価した。結果を表3及び表4にまとめて示した。
【0044】
・・染色性の評価基準
3:濃染部分がない
2:濃染部分が1〜3点ある
1:濃染部分が4〜7点ある
×:濃染部分が8点以上ある
【0045】
・紡糸性の評価
前記の処理済みポリアミド直接紡糸延伸糸1トン当たりの断糸回数を算出し、下記の基準で評価した。結果を表3及び表4にまとめて示した。
【0046】
・・紡糸性の評価基準
3:断糸回数が0.5回未満
2:断糸回数が0.5回以上〜1.0回未満
1:断糸回数が1.0回以上〜2.0回未満
×:断糸回数が2.0回以上
【0047】
・加工性の評価
前記で得た5kg捲きケークを用い、以下の編立て条件で連続して編立を行い、ガイドへの白粉の堆積によって発生する張力変動による編み欠点が発生するまでの日数を測定し、以下の基準で評価した。結果を表3及び表4にまとめて示した。
【0048】
・・編立て条件
編み機:K式丸編機(永田精機株式会社製)
給糸速度:600m/分
【0049】
・・加工性の評価基準
3:編立て開始から4日間以上で編み欠点が発生した。
2:編立て開始から2日間以上〜4日間未満で編み欠点が発生した。
1:編立て開始から1日間以上〜2日間未満で編み欠点が発生した。
×:編立て開始から1日間未満で編み欠点が発生した。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
表3及び表4において、
その他の部:本発明の処理剤100質量部に対するその他の成分の質量部
L−1:イソトリデシルステアレート
L−2:オクチルパルミテート
L−3:ジイソセチルチオジプロピオナート
P−1〜P−14,RP−1〜RP−4:表1及び表2に記載のもの
N−1:ポリオキシプロピレン(2モル)ポリオキシエチレン(6モル)ノニルエーテル
N−4:ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテル/ポリオキシエチレン(3モル)トリデシルエーテル=5/5(質量比)混合物
N−5:ポリオキシエチレン(4モル)ジラウリルエーテル
N−7:ポリオキシエチレン(25モル)硬化ひまし油エーテルトリラウレート
A−1:N−オレイル−N’−カルボキシエチル−N’−ヒドロキシエチル−エチレンジアミンナトリウム
O−1:1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸
O−2:オレイン酸
【0053】
表1及び表2に対応する表3及び表4の結果からも明らかなように、本発明によると、ポリアミド系合成繊維の高温加工に起因する黄変を効果的に防止すると共に、ポリアミド系合成繊維に優れた染色性を付与し、更には優れた紡糸性及び加工性を付与することができる。