特許第6552969号(P6552969)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6552969定方向進化のためのライブラリーの作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552969
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】定方向進化のためのライブラリーの作製方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20190722BHJP
   C40B 40/06 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   C12N15/10 200Z
   C12N15/10 210Z
   C40B40/06ZNA
【請求項の数】21
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2015-559299(P2015-559299)
(86)(22)【出願日】2014年2月26日
(65)【公表番号】特表2016-507252(P2016-507252A)
(43)【公表日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】US2014018672
(87)【国際公開番号】WO2014134166
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2017年2月24日
(31)【優先権主張番号】61/769,517
(32)【優先日】2013年2月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515232619
【氏名又は名称】アクシオエムエックス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100188271
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 優子
(72)【発明者】
【氏名】ウェイナー,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】キス,マーガレット
【審査官】 金田 康平
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0045507(US,A1)
【文献】 Neylon, C., et al.,Chemical and biochemical strategies for the randomization of protein encoding DNA sequences: library construction methods for directed evolution,Nucleic Acids Research,2004年,32(4),1448-1459
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C40B
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的配列の変異体のライブラリーを作製する方法であって、以下:
(a)前記目的配列を含む鋳型DNA分子を提供するステップ;
(b)オリゴヌクレオチドのペアを提供するステップであって、前記オリゴヌクレオチドの両方が前記目的配列の逆鎖にハイブリダイズし、前記オリゴヌクレオチドの一方はエキソヌクレアーゼによる分解から保護され、他方のオリゴヌクレオチドはエキソヌクレアーゼによる分解から保護されず、かつ、前記オリゴヌクレオチドの両方が前記目的配列に隣接する、ステップ;
(c)前記オリゴヌクレオチドの両方を用いて、前記鋳型DNA分子に対して増幅反応を実施し、それによってdsDNA変異体の集団を作製するステップ;
(d)dsDNA変異体の前記集団を、前記dsDNA変異体の保護されない鎖を保護された鎖より優先して選択的に分解することができる前記エキソヌクレアーゼとインキュベートし、それによってssDNA変異体の集団を作製するステップ;
(e)ssDNA変異体の前記集団をssDNA媒介体にハイブリダイズさせ、ヘテロ二本鎖DNAを作製するステップであって、前記ssDNA媒介体は、前記目的配列又はその断片と実質的に同一の配列を含む、ステップ; 及び
(f)前記ヘテロ二本鎖DNAを細胞に形質転換し、それによって前記目的配列の変異体のライブラリーを作製するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記鋳型DNA分子が、
(i)直鎖状dsDNA分子であるか、
(ii)環状dsDNA分子であるか、又は
(iii)環状ssDNA分子であり、場合によりここで、前記鋳型DNA分子が、ウラシル化若しくはメチル化環状ssDNA分子であり、
場合によりここで、前記鋳型DNA分子の配列が、前記ssDNA媒介体の配列と実質的に同一である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記目的配列が、100塩基対を超え、
場合によりここで、前記目的配列が、
(i)100〜2000塩基対、
(ii)300〜1500塩基対、及び/又は
(iii)700〜1200塩基対
である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記保護されたオリゴヌクレオチドが、3個以上の5'ホスホロチオエートを含むオリゴヌクレオチドであり、かつ、前記保護されないオリゴヌクレオチドが、3個以上の5'ホスホロチオエートを含まないオリゴヌクレオチドであり、
場合によりここで、
(i)前記保護されたオリゴヌクレオチドが、3、4、又は5個の5'ホスホロチオエートを含み、
(ii)保護されない鎖を保護された鎖より優先して選択的に分解することができる前記エキソヌクレアーゼが、T7エキソヌクレアーゼであり、及び/又は
(iii)保護されない鎖を保護された鎖より優先して選択的に分解することができる前記エキソヌクレアーゼが、ラムダエキソヌクレアーゼである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記保護されたオリゴヌクレオチドが、5'ホスフェートを含むオリゴヌクレオチドであり、かつ、前記保護されないオリゴヌクレオチドが、5'ホスフェートを含まないオリゴヌクレオチドであり、
場合によりここで、保護されない鎖を保護された鎖より優先して選択的に分解することができる前記エキソヌクレアーゼが、ラムダエキソヌクレアーゼである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記増幅反応が、
(i)PCR反応であり、場合によりここで、前記増幅反応がエラープローンPCR反応であるか、又は
(ii)等温増幅反応であるか、又は
(iii)ローリングサークル増幅反応である
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
dsDNA変異体の前記集団のdsDNA変異体の50%が、前記目的配列と99.5%未満の同一性を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(i)保護されない鎖を保護された鎖より優先して選択的に分解することができる前記エキソヌクレアーゼとのインキュベーションの前に、dsDNA変異体の前記集団を精製するステップ、
(ii)前記ssDNA媒介体へのハイブリダイゼーションの前に、ssDNA変異体の前記集団を精製するステップ、及び/又は
(iii)前記細胞への形質転換の前に、前記ヘテロ二本鎖DNAを精製するステップ
をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ssDNA媒介体が、前記目的配列又はその断片と少なくとも50%の同一性を有する配列を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ssDNA媒介体が、ファージミド、又はファージミドの配列と実質的に同一である配列断片を含むベクターである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ssDNA変異体の前記集団の、前記ssDNA媒介体への前記ハイブリダイゼーションが、ssDNA変異体の前記集団及び前記ssDNA媒介体の変性温度での共インキュベーションと、その後の、アニーリング温度までの徐冷却を含み、
場合によりここで、
(i)前記変性温度が約90℃であり、
(ii)前記アニーリング温度が約55℃であり、及び/又は
(iii)前記徐冷却が、1分あたり約-1℃の速度で生じる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞が、真核細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞又は細菌細胞であり、及び/又は、前記細胞が、前記ssDNA媒介体を選択的に分解することができる細胞である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
(i)前記ssDNA媒介体が、修飾核酸塩基、又はアデニン、グアニン、シトシン及びチミン以外の核酸塩基を含み、
(ii)前記ssDNA媒介体が、ウラシル化ssDNA媒介体であり、場合によりここで、前記ssDNA媒介体を選択的に分解することができる前記細胞が、Ung+細菌細胞であり、好ましくは、前記細胞が、TG1大腸菌(E. coli)細胞であり、及び/又は、
(iii)前記ssDNA媒介体が、メチル化ssDNA媒介体であり、場合によりここで、前記ssDNA媒介体を選択的に分解することができる前記細胞が、Mcr+細菌細胞である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(e)が、前記ヘテロ二本鎖DNAのDNAポリメラーゼとのインキュベーションによって、前記ssDNA媒介体にハイブリダイズされた前記ssDNA変異体を伸長することをさらに含み、
場合によりここで、
(i)前記ヘテロ二本鎖DNAのDNAポリメラーゼとの前記インキュベーションが、前記ヘテロ二本鎖DNAのDNAポリメラーゼ及びDNAリガーゼとのインキュベーションを含むか、
(ii)前記ssDNA媒介体がメチル化ssDNA媒介体であり、かつ、ステップ(e)が、前記ヘテロ二本鎖DNAを変性するステップ、及び変性した生成物を、メチル化DNAを選択的に分解する酵素とインキュベートするステップをさらに含み、好ましくは、前記メチル化ssDNA媒介体が、メチル化アデニン核酸塩基を含み、かつ、メチル化DNAを選択的に分解する前記酵素が、DpnIであるか、又は
(iii)前記ssDNA変異体がメチル化され、前記ssDNA媒介体がメチル化されず、かつ、ステップ(e)が、前記ヘテロ二本鎖DNAを変性するステップ、及び変性した生成物を、非メチル化DNAを選択的に分解する酵素とインキュベートするステップをさらに含み、好ましくは、前記メチル化ssDNA変異体が、メチル化されたシトシン又はグアニン核酸塩基を含み、かつ、非メチル化DNAを選択的に分解する前記酵素が、DNA配列5'-GATC-3'を認識する制限酵素である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ヘテロ二本鎖DNAの前記細胞への前記形質転換が、前記細胞の2個以上、10個以上、20個以上、又は50個以上のアリコートの独立した形質転換を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記目的配列が、
(i)抗体又はそのドメイン若しくは断片、
(ii)ポリメラーゼ又はそのドメイン若しくは断片、又は
(iii)酵素又はそのドメイン若しくは断片
をコードする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ステップ1(a)〜1(d)が、ssDNA変異体の2種以上の集団を作製するために、2種以上の異なる目的配列のそれぞれから並行して実施され、ここで、前記ペアの一方又は両方のオリゴヌクレオチド、前記増幅反応、及び前記エキソヌクレアーゼは、前記2種以上の異なる目的配列のそれぞれに対するステップ1(a)〜1(d)のいずれか又は全ての適用において異なってよく、かつ、ssDNA変異体の前記集団は、ステップ1(e)の前又は最中に混合される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記2種以上の異なる目的配列の少なくとも2つが、
(i)単一の鋳型DNA分子から増幅され、好ましくは、前記2種以上の異なる目的配列の全てが、単一の鋳型DNA分子から増幅されるか、又は
(ii)異なる鋳型DNA分子から増幅され、好ましくは、前記2種以上の異なる目的配列のそれぞれが、異なる鋳型DNA分子から増幅される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
並行して実施される前記ステップの1つ以上が、
(i)前記2種以上の異なる目的配列の少なくとも2つについて単一の反応において実施され、好ましくは、並行して実施される前記ステップの1つ以上が、前記2種以上の異なる目的配列の全てについて単一の反応において実施されるか、又は
(ii)前記2種以上の異なる目的配列の少なくとも2つについて別々に実施され、好ましくは、並行して実施される前記ステップの1つ以上が、前記2種以上の異なる目的配列のそれぞれについて別々に実施される、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記ssDNA媒介体が、前記2種以上の異なる目的配列のそれぞれ、又はその断片、と実質的に同一の配列を含み、かつ、ステップ1(e)が、ssDNA変異体の前記2種以上の集団のそれぞれの、前記ssDNA媒介体へのハイブリダイゼーションを包含し、
場合によりここで、
(i)ssDNA変異体の前記2種以上の集団が、前記ssDNA媒介体に同時にハイブリダイズされるか、又は
(ii)ssDNA変異体の前記2種以上の集団が、前記ssDNA媒介体に連続的にハイブリダイズされる、請求項17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
目的配列の変異体のライブラリーを作製する方法であって、以下:
(a)前記目的配列を含む鋳型DNA分子を提供するステップ;
(b)オリゴヌクレオチドのペアを提供するステップであって、前記オリゴヌクレオチドの両方が前記目的配列の逆鎖にハイブリダイズし、前記オリゴヌクレオチドの一方はエキソヌクレアーゼによる分解から保護され、他方のオリゴヌクレオチドはエキソヌクレアーゼによる分解から保護されず、かつ、前記オリゴヌクレオチドの両方が前記目的配列に隣接する、ステップ;
(c)前記オリゴヌクレオチドの両方を用いて、前記鋳型DNA分子に対してエラープローンポリメラーゼの取り込みを用いて増幅反応を実施し、それによってdsDNA変異体の集団を作製するステップであって、前記dsDNA変異体はそれぞれ、Eco29kI制限部位を含まない、ステップ;
(d)dsDNA変異体の前記集団を、前記dsDNA変異体の保護されない鎖を保護された鎖より優先して選択的に分解することができる前記エキソヌクレアーゼとインキュベートし、それによってssDNA変異体の集団を作製するステップ;
(e)ssDNA変異体の前記集団をssDNA媒介体にハイブリダイズさせ、ヘテロ二本鎖DNAを作製するステップであって、前記ssDNA媒介体は、前記目的配列又はその断片と実質的に同一の配列を含み、前記ssDNA媒介体は、ウラシル化ssDNA媒介体又はメチル化ssDNA媒介体であり、前記ssDNA媒介体はそれぞれ、1つ以上のEco29kI制限部位を含む、ステップ; 及び
(f)前記ヘテロ二本鎖DNAを細胞に形質転換し、それによって前記目的配列の変異体のライブラリーを作製するステップであって、前記細胞は、前記1つ以上のEco29kI制限部位を選択的に分解することができる酵素を含む、ステップ
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2013年2月26日に提出された米国仮出願第61/769,517号に対する優先権の利益を主張し、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
概して、本発明は、改善された核酸ライブラリー作製に関する。
【背景技術】
【0003】
多様な遺伝子配列のライブラリーは、特定の機能を有するタンパク質の同定に有用であり得る。例えば、商業的に価値のある機能的配列は、多様な遺伝子配列のライブラリーを発現させ、得られたタンパク質を特定の機能について試験し、よく機能する配列を単離することによって同定され得る。このプロセスは、定方向進化(directed evolution)と称され得る。配列は、多様化及び選択の反復サイクルによって特定の機能についてさらに最適化され得る。多様な配列プールから選択された配列は、生物学的、医学的、又は工業的応用に有用であり得る。例えば、定方向進化によって同定された配列は、抗体工学において使用され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多様な遺伝子配列のライブラリーを作製する従来の方法は、効率的でないことが多い。例えば、従来の方法は、非効率的なライゲーションステップを含み得るか、又は高価なプライマーセットを必要とし得る。公知の方法のスピード及び費用対効果の改善は、ライブラリー作製の効率を増加させ、複数の機能的配列のハイスループットな並行処理を可能にし、新たな機能的配列の同定を促進する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、目的配列の変異体のライブラリーを作製する方法を含む。本方法は、まず、目的配列を含む鋳型DNA分子を提供するステップ、及びオリゴヌクレオチドのペアを提供するステップを含んでよく、ここで、オリゴヌクレオチドの一方は保護されてよく、他方のオリゴヌクレオチドは保護されなくてよく、かつ、オリゴヌクレオチドは目的配列の逆鎖にハイブリダイズし、目的配列に隣接する。続くステップは、オリゴヌクレオチドを用いて、鋳型DNA分子に対して増幅反応を実施し、それによってdsDNA変異体の集団を作製することを含んでよく、その後、dsDNA変異体の集団を、dsDNA変異体の保護されない鎖を保護された鎖より優先して選択的に分解することができる酵素とインキュベートし、それによってssDNA変異体の集団を作製するステップが続く。次に、ssDNA変異体の集団を、目的配列又はその断片と実質的に同一の配列を含み得るssDNA媒介体にハイブリダイズさせ、ヘテロ二本鎖DNAを作製し得る。ヘテロ二本鎖DNAの作製後、続くステップは、ヘテロ二本鎖DNAを細胞に形質転換し、それによって目的配列の変異体のライブラリーを作製することを含み得る。
【0006】
鋳型DNA分子は、直鎖状dsDNA分子、環状dsDNA分子、環状ssDNA分子、ウラシル化環状ssDNA分子、又はメチル化環状ssDNA分子であってよい。鋳型DNA分子の配列は、ssDNA媒介体の配列と実質的に同一であってよい。
【0007】
目的配列は、100塩基対を超えるか、300塩基対を超えるか、500塩基対を超えるか、又は700塩基対を超えてよい。目的配列は、100〜2000塩基対、300〜1500塩基対、又は700〜1200塩基対であってよい。
【0008】
いくつかの実施形態において、保護されたオリゴヌクレオチドは、3個以上の5'ホスホロチオエートを含むオリゴヌクレオチドであってよい。保護されたオリゴヌクレオチドは、3、4、又は5個の5'ホスホロチオエートを含んでよい。保護されないオリゴヌクレオチドは、3個以上の5'ホスホロチオエートを含まないオリゴヌクレオチドであってよい。いくつかの実施形態において、保護されない鎖を保護された鎖より優先して選択的に分解することができる酵素は、T7エキソヌクレアーゼ又はラムダエキソヌクレアーゼであってよい。他の実施形態において、保護されたオリゴヌクレオチドは、5'ホスフェートを含むオリゴヌクレオチドであってよく、かつ、保護されないオリゴヌクレオチドは、5'ホスフェートを含まないオリゴヌクレオチドであってよい。そのような実施形態において、保護されない鎖を保護された鎖より優先して選択的に分解することができる酵素は、ラムダエキソヌクレアーゼであってよい。
【0009】
様々な実施形態において、増幅反応は、PCR反応、エラープローンPCR反応、等温増幅反応、又はローリングサークル増幅反応であってよい。いくつかの実施形態において、dsDNA変異体の集団のdsDNA変異体の50%は、目的配列と99.5%未満の同一性又は目的配列と98%未満の同一性を有する。
【0010】
上記実施形態のいずれかは、保護されない鎖を保護された鎖より優先して選択的に分解することができる酵素とのインキュベーションの前に、dsDNA変異体の集団を精製することをさらに含んでよい。上記実施形態のいずれかは、ssDNA媒介体へのハイブリダイゼーションの前に、ssDNA変異体の集団を精製することをさらに含んでよい。
【0011】
上記実施形態のいずれかにおいて、ssDNA媒介体は、目的配列又はその断片と少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、又は100%の同一性を有する配列を含んでよい。ssDNA媒介体は、ファージミド、又はファージミドの配列と実質的に同一である配列断片を含むベクターであってよい。
【0012】
上記実施形態のいずれかにおいて、ssDNA変異体の集団の、ssDNA媒介体へのハイブリダイゼーションが、ssDNA変異体の集団及びssDNA媒介体の変性温度での共インキュベーションと、その後の、アニーリング温度までの徐冷却を含んでよい。変性温度は約90℃であってよい。アニーリング温度は約55℃であってよい。徐冷却は、1分あたり約-1℃の速度で生じる。
【0013】
本発明の細胞は、真核細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞又は細菌細胞であってよい。
【0014】
上記実施形態のいずれかにおいて、ssDNA媒介体は、修飾核酸塩基、又はアデニン、グアニン、シトシン及びチミン以外の核酸塩基を含んでよい。細胞は、ssDNA媒介体を選択的に分解することができてよい。いくつかの特定の実施形態において、ssDNA媒介体は、ウラシル化ssDNA媒介体であってよい。他の特定の実施形態において、ssDNA媒介体は、メチル化ssDNA媒介体であってよい。特定の実施形態において、ssDNA媒介体を選択的に分解することができる細胞は、Ung+細菌細胞又はTG1大腸菌(E. coli)細胞であってよい。他の実施形態において、ssDNA媒介体を選択的に分解することができる細胞は、Mcr+細菌細胞であってよい。
【0015】
さらなる実施形態は、ヘテロ二本鎖DNAのDNAポリメラーゼとのインキュベーションによって、ssDNA媒介体にハイブリダイズされたssDNA変異体を伸長することを含んでよい。ヘテロ二本鎖DNAのDNAポリメラーゼとのインキュベーションは、ヘテロ二本鎖DNAのDNAポリメラーゼ及びDNAリガーゼとのインキュベーションを含んでよい。ssDNA媒介体はメチル化ssDNA媒介体であってよく、かつ、本方法は、ヘテロ二本鎖DNAを変性するステップ、及び変性した生成物を、メチル化DNAを選択的に分解する酵素とインキュベートするステップをさらに含んでよい。特定の実施形態において、メチル化ssDNA媒介体は、メチル化アデニン核酸塩基を含んでよく、かつ、メチル化DNAを選択的に分解する酵素は、DpnIであってよい。いくつかの実施形態において、ssDNA変異体はメチル化されていてよく、ssDNA媒介体はメチル化されていなくてよく、かつ、本方法は、ヘテロ二本鎖DNAを変性するステップ、及び変性した生成物を、非メチル化DNAを選択的に分解する酵素とインキュベートするステップをさらに含んでよい。特定の実施形態において、メチル化ssDNA変異体は、メチル化されたシトシン又はグアニン核酸塩基を含み、かつ、非メチル化DNAを選択的に分解する酵素は、Sau3AIであっても、又はDNA配列5'-GATC-3'を認識する制限酵素であってもよい。
【0016】
上記実施形態のいずれかにおいて、本方法は、細胞への形質転換の前に、ヘテロ二本鎖DNAを精製することをさらに含んでよい。ヘテロ二本鎖DNAの細胞への形質転換は、細胞の2個以上、10個以上、20個以上、又は50個以上のアリコートの独立した形質転換を含んでよい。変異体のライブラリーの1つ以上のアリコートを培養し、培養されたライブラリーを作製してよい。アリコートは、回収培地中で培養されてよい。変異体のライブラリーの1つ以上のアリコートは、独立して培養されてよく、又は単一の培養において組み合わされてもよい。培養されたライブラリーをペレット化し、ペレット化された培養ライブラリーを作製してもよい。ペレット化された培養ライブラリーは、-20℃以下の温度で保存してよい。ペレット化された培養ライブラリーを再懸濁し、再懸濁されたペレット化培養ライブラリーを作製してよい。再懸濁されたペレット化培養ライブラリーは、-20℃以下の温度で保存してよい。培養されたライブラリーの1つ以上のアリコートをヘルパーファージとインキュベートし、ファージディスプレイライブラリーを作製してもよい。培養されたライブラリーの1つ以上のアリコートは、独立してヘルパーファージとインキュベートされてよく、又はヘルパーファージとのインキュベーションについて組み合わされてもよい。ファージディスプレイライブラリーをペレット化し、ペレット化されたファージディスプレイライブラリーを作製してよい。ペレット化されたファージディスプレイライブラリーは、-20℃以下の温度で保存してよい。ペレット化されたファージディスプレイライブラリーを再懸濁し、再懸濁されたペレット化ファージディスプレイライブラリーを作製してよい。再懸濁されたペレット化ファージディスプレイライブラリーは、-20℃以下の温度で保存してよい。培養されたライブラリーを希釈し又は連続的に希釈し、希釈された又は連続的に希釈された培養ライブラリーを作製してよい。希釈された又は連続的に希釈された培養ライブラリーは、培養プレートにプレーティングされ、細胞の増殖又は分裂をもたらす温度で培養プレートがインキュベートされてよい。
【0017】
上記実施形態のいずれかにおいて、目的配列は、抗体又はそのドメイン若しくは断片、ポリメラーゼ又はそのドメイン若しくは断片、酵素又はそのドメイン若しくは断片、単鎖可変断片抗体又はそのドメイン若しくは断片、キナーゼ又はそのドメイン若しくは断片、DNA結合タンパク質又はそのドメイン若しくは断片、RNA結合タンパク質又はそのドメイン若しくは断片、転写因子又はそのドメイン若しくは断片、あるいはヒトタンパク質又はそのドメイン若しくは断片をコードしてよい。目的配列、又はssDNA媒介体の配列は、バクテリオファージコートタンパク質を含んでよい。
【0018】
いくつかの実施形態において、形質転換された細胞の少なくとも30%、少なくとも50%、又は少なくとも70%は、目的配列の変異体を含み得る。
【0019】
上記実施形態のいずれかにおいて、目的配列を含む鋳型DNA分子を提供するステップ、オリゴヌクレオチドのペアを提供するステップ、オリゴヌクレオチドを用いて、鋳型DNA分子に対して増幅反応を実施するステップ、及び得られたdsDNA変異体の集団を、dsDNA変異体の保護されない鎖を保護された鎖より優先して選択的に分解することができる酵素とインキュベートするステップは、ssDNA変異体の2種以上の集団を作製するために、2種以上の異なる目的配列のそれぞれから並行して実施されてよく、オリゴヌクレオチド、増幅反応、及び酵素は、2種以上の異なる目的配列のそれぞれに対するステップのいずれか又は全ての適用において異なってよい。ssDNA変異体の集団は、続くssDNA媒介体へのハイブリダイゼーションの前又は最中に混合されてよい。いくつかの実施形態において、2種以上の異なる目的配列の少なくとも2つは、単一の鋳型DNA分子から増幅されてよい。特定の実施形態において、2種以上の異なる目的配列の全ては、単一の鋳型DNA分子から増幅されてよい。いくつかの実施形態において、2種以上の異なる目的配列の少なくとも2つは、異なる鋳型DNA分子から増幅されてよい。特定の実施形態において、2種以上の異なる目的配列のそれぞれは、異なる鋳型DNA分子から増幅されてよい。さらに別の実施形態において、並行して実施されるステップの1つ以上は、2種以上の異なる目的配列の少なくとも2つについて単一の反応において実施されてよい。いくつかの実施形態において、並行して実施されるステップの1つ以上は、2種以上の異なる目的配列の全てについて単一の反応において実施されてよい。いくつかの実施形態において、並行して実施されるステップの1つ以上は、2種以上の異なる目的配列の少なくとも2つについて、又は2種以上の異なる目的配列のそれぞれについて別々に実施されてよい。特定の実施形態において、ssDNA媒介体は、2種以上の異なる目的配列のそれぞれ、又はその断片、と実質的に同一の配列を含んでよく、ハイブリダイゼーションは、ssDNA変異体の2種以上の集団のそれぞれの、ssDNA媒介体へのハイブリダイゼーションを包含する。特定の実施形態において、ssDNA変異体の2種以上の集団は、ssDNA媒介体に同時に又は連続的にハイブリダイズされてよい。
【0020】
エラープローンPCRによってdsDNA変異体の集団を作製する方法は、目的配列を含む鋳型DNA分子を提供するステップ、オリゴヌクレオチドのペアを提供するステップであって、オリゴヌクレオチドは目的配列の逆鎖にハイブリダイズし、オリゴヌクレオチドの一方は3個以上の5'ホスホロチオエートを含み、他方のオリゴヌクレオチドは3個以上の5'ホスホロチオエートを含まず、かつ、オリゴヌクレオチドは目的配列に隣接する、ステップ、及びオリゴヌクレオチドを用いて、鋳型DNA分子に対してエラープローンPCRを実施し、それによってdsDNA変異体の集団を作製するステップを含んでよい。
【0021】
エラープローンPCRによってssDNA変異体の集団を作製する方法は、目的配列を含む鋳型DNA分子を提供するステップ、オリゴヌクレオチドのペアを提供するステップであって、オリゴヌクレオチドは目的配列の逆鎖にハイブリダイズし、オリゴヌクレオチドの一方は3個以上の5'ホスホロチオエートを含み、他方のオリゴヌクレオチドは3個以上の5'ホスホロチオエートを含まず、かつ、オリゴヌクレオチドは目的配列に隣接する、ステップ、オリゴヌクレオチドを用いて、鋳型DNA分子に対してエラープローンPCRを実施し、それによってdsDNA変異体の集団を作製するステップ、及びdsDNA変異体の集団を、dsDNA変異体の非ホスホロチオエート鎖を加水分解することができるが、ホスホロチオエート鎖を加水分解することができない酵素とインキュベートし、それによってssDNA変異体の集団を作製するステップを含んでよい。
【0022】
PCRによってdsDNA分子の集団を作製する方法は、目的配列を含む鋳型DNA分子を提供するステップ、オリゴヌクレオチドのペアを提供するステップであって、オリゴヌクレオチドは目的配列の逆鎖にハイブリダイズし、オリゴヌクレオチドの一方は3個以上の5'ホスホロチオエートを含み、他方のオリゴヌクレオチドは3個以上の5'ホスホロチオエートを含まず、かつ、オリゴヌクレオチドは目的配列に隣接する、ステップ、及びオリゴヌクレオチドを用いて、鋳型DNA分子に対してPCRを実施し、それによってdsDNA分子の集団を作製するステップを含んでよい。
【0023】
PCRによってssDNA分子の集団を作製する方法は、目的配列を含む鋳型DNA分子を提供するステップ、オリゴヌクレオチドのペアを提供するステップであって、オリゴヌクレオチドは目的配列の逆鎖にハイブリダイズし、オリゴヌクレオチドの一方は3個以上の5'ホスホロチオエートを含み、他方のオリゴヌクレオチドは3個以上の5'ホスホロチオエートを含まず、かつ、オリゴヌクレオチドは目的配列に隣接する、ステップ、オリゴヌクレオチドを用いて、鋳型DNA分子に対してPCRを実施し、それによってdsDNA分子の集団を作製するステップ、dsDNA分子の集団を、dsDNA分子の非ホスホロチオエート鎖を加水分解することができるが、ホスホロチオエート鎖を加水分解することができない酵素とインキュベートし、それによってssDNA分子の集団を作製するステップを含んでよい。
【0024】
ファージディスプレイの方法は、本発明の実施形態によって作製された変異体のライブラリーを提供するステップ、変異体のライブラリーの1つ以上のアリコートを培養して、変異体の培養ライブラリーを作製するステップ、変異体の培養ライブラリーの1つ以上のアリコートを、ヘルパーファージとインキュベートし、ファージディスプレイライブラリーを作製するステップであって、ファージディスプレイライブラリーの細胞が、目的配列によってコードされるタンパク質の変異体を提示する、ステップ、ファージディスプレイライブラリーの細胞を、標的分子と接触させるステップであって、目的配列によってコードされるタンパク質の変異体の1つ以上が、標的分子と相互作用し得る、ステップ、及びファージディスプレイライブラリーの細胞の中から、標的分子と相互作用する変異体タンパク質を提示する細胞を単離するステップを含んでよい。変異体タンパク質は、標的分子に結合するか、標的分子を切断するか、標的分子の反応を触媒するか、標的分子に立体構造変化を誘導するか、又は標的分子を修飾することによって、標的分子と相互作用し得る。標的分子は、小分子、タンパク質又はそのドメイン若しくは断片、病原体タンパク質又はそのドメイン若しくは断片、酵素又はそのドメイン若しくは断片、あるいはヒトタンパク質又はそのドメイン若しくは断片であってよい。
【0025】
非組み換え核酸を選択的に分解する方法は、制限部位を有する少なくとも1つのセグメントを含む第一の核酸を提供するステップ; 制限部位を含まない少なくとも1つのセグメントを含む第二の核酸を提供するステップ; 第一の核酸及び第二の核酸を、第一の核酸のセグメントが第二の核酸のセグメントに置き換えられるように第一の核酸及び第二の核酸を組み換えるための反応に供し、それによって制限部位を含まない組み換え生成物を作製するステップ; 反応の生成物を、制限部位を切断することができる制限酵素を発現する細胞に形質転換するステップ; 及び細胞を、細胞によって発現される制限酵素による切断を可能にするのに十分な様式でインキュベートするステップを含んでよい。本方法は、細胞が、制限酵素によって切断される制限部位を含まない組み換え生成物を含むかどうかを決定するステップ、及び/又は細胞から組み換え生成物を単離するステップをさらに含んでよい。制限酵素は、Eco29kIであってよい。これらの方法のいずれかにおいて、組み換え生成物は、免疫グロブリン軽鎖及び/又は免疫グロブリン重鎖をコードすることができ、免疫グロブリン軽鎖及び/又は免疫グロブリン重鎖の1つ以上は、第一の核酸の少なくとも一部及び第二の核酸の少なくとも一部によってコードされる。
【0026】
突然変異されていない核酸を選択的に分解する方法は、制限部位を有する少なくとも1つのセグメントを含む第一の核酸を提供するステップ; 制限部位を含まず、かつ制限部位を有する第一の核酸の少なくともセグメントにハイブリダイズすることができる、少なくとも1つのセグメントを有する、第二の核酸を提供するステップ; 第二の核酸を第一の核酸にハイブリダイズさせ、ヘテロ二本鎖DNAを作製するステップ; ヘテロ二本鎖DNAを回復(resolve)させ、それによって制限部位を含まない生成物を作製するステップ; 反応の生成物を、制限部位を切断することができる制限酵素を発現する細胞に形質転換するステップ; 及び細胞を、細胞によって発現される制限酵素による切断を可能にするのに十分な様式でインキュベートするステップを含んでよい。本方法は、細胞が、制限酵素によって切断される制限部位を含まない生成物を含むかどうかを決定するステップ、及び/又は細胞から生成物を単離するステップをさらに含んでよい。制限酵素は、Eco29kIであってよい。これらの方法のいずれかにおいて、生成物は、免疫グロブリン軽鎖及び/又は免疫グロブリン重鎖をコードすることができ、免疫グロブリン軽鎖及び/又は免疫グロブリン重鎖の1つ以上は、第二の核酸の少なくとも一部又はその配列によってコードされる。これらの方法のいずれかにおいて、第一の核酸はssDNA媒介体であってよく、第二の核酸はssDNA変異体であってよい。
【0027】
突然変異されたオープンリーディングフレームからタンパク質を選択的に発現する方法は、1つ以上の終止コドンを、もしそれがなければ発現可能なオープンリーディングフレームの少なくとも1つのセグメント中に含む第一の核酸を提供するステップ; 終止コドンを含まない少なくとも1つのセグメントを含む第二の核酸を提供するステップ; 第一の核酸及び第二の核酸を、第一の核酸のセグメントが第二の核酸のセグメントに置き換えられるように第一の核酸及び第二の核酸を組み換えるための反応に供し、それによってオープンリーディングフレーム中に終止コドンを含まない組み換え生成物を作製するステップ; 反応の生成物を細胞に形質転換するステップ; 及び細胞を、オープンリーディングフレームの発現を可能にするのに十分な期間インキュベートするステップを含んでよい。本方法は、細胞が、第一の核酸の一部の配列及び第二の核酸の少なくとも一部の配列を含むオープンリーディングフレームから発現されるタンパク質又はその一部を含むかどうかを決定するステップ、並びに/あるいは第一の核酸の一部の配列及び第二の核酸の少なくとも一部の配列を含むオープンリーディングフレームから発現されるタンパク質又はその断片を細胞から単離するステップをさらに含んでよい。これらの方法のいずれかにおいて、組み換え生成物は、免疫グロブリン軽鎖及び/又は免疫グロブリン重鎖をコードすることができ、免疫グロブリン軽鎖及び/又は免疫グロブリン重鎖の1つ以上が、第一の核酸の少なくとも一部及び第二の核酸の少なくとも一部によってコードされる。これらの方法のいずれかにおいて、組換え反応は、第一の核酸がssDNA媒介体であり、第二の核酸がssDNA変異体である、突然変異誘発反応であってよい。
【0028】
突然変異されたオープンリーディングフレームからタンパク質を選択的に発現する方法は、1つ以上の終止コドンを、もしそれがなければ発現可能なオープンリーディングフレームの少なくとも1つのセグメント中に含む第一の核酸を提供するステップ; 終止コドンを含まず、かつ終止コドンの1つ以上を有する第一の核酸の少なくともセグメントにハイブリダイズすることができる、少なくとも1つのセグメントを含む、第二の核酸を提供するステップ; 第二の核酸を第一の核酸にハイブリダイズさせ、ヘテロ二本鎖DNAを作製するステップ; ヘテロ二本鎖DNAを回復させ、それによってオープンリーディングフレーム中に終止コドンを含まない生成物を作製するステップ; 反応の生成物を細胞に形質転換するステップ; 及び細胞を、オープンリーディングフレームの発現を可能にするのに十分な期間インキュベートするステップを含んでよい。本方法は、細胞が、第一の核酸の一部の配列及び第二の核酸の少なくとも一部の配列を含むオープンリーディングフレームから発現されるタンパク質又はその一部を含むかどうかを決定するステップ、並びに/あるいは第一の核酸の一部の配列及び第二の核酸の少なくとも一部の配列を含むオープンリーディングフレームから発現されるタンパク質又はその断片を細胞から単離するステップを含むことができる。これらの方法のいずれかにおいて、生成物は、免疫グロブリン軽鎖及び/又は免疫グロブリン重鎖をコードすることができ、免疫グロブリン軽鎖及び/又は免疫グロブリン重鎖の1つ以上が、第二の核酸の少なくとも一部又はその配列によってコードされる。これらの方法のいずれかにおいて、組換え反応は、第一の核酸がssDNA媒介体であり、第二の核酸がssDNA変異体である、突然変異誘発反応であってよい。組成物が、本発明の方法によって作製されてよい。これらは、dsDNA変異体の集団、ssDNA変異体の集団、変異体のライブラリー、培養されたライブラリー、ペレット化された培養ライブラリー、ファージディスプレイライブラリー、ペレット化されたファージディスプレイライブラリー、希釈された培養ライブラリー、連続的に希釈された培養ライブラリー、及びプレーティングされた連続希釈培養ライブラリーを含む。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、記載された値の±10%を意味する。
【0030】
「実質的に同一である」とは、参照核酸配列と比較して、少なくとも35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、85%、90%、95%、又はさらには99%の同一性を有する核酸を意味する。配列同一性は、典型的には、その中に特定されるデフォルトパラメータを用いた配列解析ソフトウェアを用いて測定される(Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, 1710 University Avenue, Madison, WI 53705)。このソフトウェアプログラムは、様々な置換、欠失、及び他の改変に対してホモロジーの程度を割り当てることによって類似した配列を一致させる。比較配列の長さは、一般に、少なくとも20ヌクレオチド(例えば60ヌクレオチド)、好ましくは少なくとも90ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも120ヌクレオチド、又は全長である。元の配列の核酸塩基と同一又は類似の配列の核酸塩基間にギャップが見られてよいことは、本明細書において理解される。ギャップは、核酸塩基を含まなくてよく、又は元の核酸と同一若しくは類似でない1つ以上の核酸塩基を含んでよい。
【0031】
ヌクレオチド配列が 実質的に同一であることの別の示唆は、2つの分子がストリンジェント条件下で互いにハイブリダイズするかどうかである。ストリンジェント条件は、配列依存的であり、異なる状況において異なる。一般に、ストリンジェント条件は、規定のイオン強度及びpHにおける特定の配列についての融点(Tm)より約5℃〜約20℃、通常約10℃〜約15℃低く選択される。Tmは、標的配列の50%が、マッチしたプローブにハイブリダイズする温度(規定のイオン強度及びpH下)である。典型的には、ストリンジェント条件は、塩濃度がpH7における約0.02モラーであり、かつ温度が少なくとも約60℃である条件である。例えば、標準的サザンハイブリダイゼーション手順において、ストリンジェント条件は、42℃における6×SSC中の最初の洗浄、その後の少なくとも約55℃、典型的には約60℃、しばしば約65℃の温度における0.2×SSC中の1回以上の追加の洗浄を含む。
【0032】
DNA「配列」は、DNA分子中の一連の核酸塩基を意味する。DNA分子は、一本鎖(ss)又は二本鎖(ds)であってよい。dsDNA分子の配列を指す場合、その用語は、dsDNA分子の二本の鎖のいずれか又は両方の配列を指し得る。ssDNA分子の配列を指す場合、その用語は、ssDNA分子の配列、ssDNA分子に相補的な鎖の配列、又はその両方を指し得る。
【0033】
「目的配列」は、変異体のライブラリーの作製において開始点として使用され得る、DNA分子中の一連の核酸塩基を意味する。
【0034】
DNAの「断片」は、少なくとも約10個の連続した核酸塩基、例えば約10、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1500、2000、2500、3000、3500又は4000個の核酸塩基を含む配列である。タンパク質の「断片」は、一連の少なくとも6個のアミノ酸、例えば約6、8、10、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000個、又はそれ以上のアミノ酸を意味する。
【0035】
「目的配列の変異体」は、目的配列と比較して1つ以上の配列変化を含有する、増幅反応を通して目的配列から得られた配列など、目的配列に由来する配列を意味する。目的配列の変異体は、前記目的配列と70%〜99.9%の同一性、例えば約70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は99.9%の同一性を有し得る。変異体は、目的配列と実質的に同一であってよい。変異体は、一本鎖(ss)又は二本鎖(ds)DNA分子であってよい。dsDNA変異体は、増幅反応の生成物であってよい。ssDNA変異体は、例えば相補鎖が分解された場合、その相補鎖から解離したdsDNA変異体の鎖であってよい。本明細書で使用される場合、用語「メガプライマー」は、用語「ssDNA変異体」と交換可能である。
【0036】
「分解する」とは、酵素若しくは化学物質による処理によって、核酸塩基を切断、除去又は置換することによってDNA分子を変更することを意味する。
【0037】
「保護された」とは、DNA分子が、同じ条件下の保護されないDNA分子と比較して、よりゆっくり分解されることを意味する。保護されたDNA分子は、全く分解されないDNA分子であってよい。保護されたDNA分子は、DNA分子の分解が、保護されないDNA分子の分解と比較して阻害されるように、修飾核酸塩基、アデニン、グアニン、シトシン、及びチミン以外の核酸塩基、又はホスホジエステル結合以外のヌクレオチド間結合を含むDNA分子であってよい。あるいは、保護されたDNA分子は、そのように修飾されたDNA分子の分解と比較して、DNA分子の分解を増加させることができる様式で修飾されないDNA分子であってもよい。
【0038】
「選択的分解」は、提供された酵素が、いくつかのDNA分子を他より迅速に分解することを意味する。例えば、酵素は、保護されない鎖を保護された鎖より優先して選択的に分解し得る。保護されない鎖は、保護された鎖が分解される速度より、例えば、少なくとも約20倍大きい速度で選択的に分解されてよい。例えば、保護されない鎖は、保護された鎖より約20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍、2000倍、3000倍、4000倍、5000倍、又はそれ以上大きい速度で選択的に分解されてよい。いくつかの場合において、酵素は、保護された鎖を全く分解しなくてよい。
【0039】
「ホスホロチオエート」は、DNAなどのポリヌクレオチド分子に見ることができる、ヌクレオチド間結合を意味する。化学的には、ホスホロチオエートは、非架橋酸素の1つが、酸素原子の代わりに硫黄原子である点でホスホジエステル結合と異なる。
【0040】
「5'ホスホロチオエート」は、例えば5'末端ヌクレオチド間結合位置において、オリゴヌクレオチド中に存在するホスホロチオエートを意味する。5'ホスホロチオエートは、オリゴヌクレオチドの末端5'結合であってよく、又は1つ以上のヌクレオチドによって5'末端結合から分離されていてもよい。2個以上の5'ホスホロチオエートを有するオリゴヌクレオチドにおいて、ホスホロチオエートは、5'末端ヌクレオチド間結合位置を含めて、連続的ヌクレオチド間結合位置を占めてよい。あるいは、ホスホロチオエートは、非連続的ヌクレオチド間結合位置を占めてよく、占められた位置は、5'末端ヌクレオチド間結合位置を含まなくてよい。2個以上の5'ホスホロチオエートを有するオリゴヌクレオチドのホスホロチオエートは、連続的ホスホロチオエート、非連続的ホスホロチオエート、又は連続的及び非連続的ホスホロチオエートの混合であってよい。2個以上の5'ホスホロチオエートを有するオリゴヌクレオチドは、2個以上の連続的ホスホロチオエート、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、若しくは100個又はそれ以上の連続的ホスホロチオエートを含んでよく、あるいは、連続的ホスホロチオエートを有さなくてもよい。3個以上の5'ホスホロチオエートを有するオリゴヌクレオチドは、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、若しくは100個又はそれ以上のホスホロチオエートを含んでよい。
【0041】
0、1又は2個のホスホロチオエートを有するオリゴヌクレオチドは、「非ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド」である。3個以上のホスホロチオエートを有するオリゴヌクレオチドは、「ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド」である。
【0042】
オリゴヌクレオチドのペアは、オリゴヌクレオチドがハイブリダイズすることができる配列が、鋳型DNA分子の逆鎖上に見いだされる場合、鋳型DNA分子中の目的配列に「隣接する」と言われ、オリゴヌクレオチドをこれらのハイブリダイゼーション配列にアラインさせた場合、オリゴヌクレオチドの3'末端が互いに向かい合い、目的配列がオリゴヌクレオチドの5'末端間に位置する。
【0043】
「増幅反応」は、目的配列のコピーを作製する任意の反応を意味する。コピーは、目的配列の完全なコピー又は目的配列の変異体であってよい。増幅反応の忠実度(fidelity)は、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、バッファー及び使用されるサイクル条件などの因子、並びに他の因子に依存する。当技術分野で公知の増幅反応は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及びエラープローンPCRを含む。増幅反応は、2種のオリゴヌクレオチド、例えば保護されたオリゴヌクレオチド及び保護されないオリゴヌクレオチド、例えばホスホロチオエートオリゴヌクレオチド及び非ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを用いて実施してよい。
【0044】
「保護された鎖」は、本明細書で使用される場合、保護されたオリゴヌクレオチドからプライム(prime)される伸長によって増幅反応において生成されるDNA分子を意味する。
【0045】
「保護されない鎖」は、本明細書で使用される場合、保護されないオリゴヌクレオチドからプライムされる伸長によって増幅反応において生成されるDNA分子を意味する。
【0046】
「ホスホロチオエート鎖」は、本明細書で使用される場合、3個以上の5'ホスホロチオエートを有するDNA分子を意味する。
【0047】
「非ホスホロチオエート鎖」は、本明細書で使用される場合、3個未満の5'ホスホロチオエートを有するDNA分子を意味する。
【0048】
「ssDNA媒介体」は、ssDNA変異体がハイブリダイズし得るssDNA分子を意味する。ssDNA媒介体は、形質転換用のベクターであってよい。例えば、ssDNA媒介体はファージミドであってよい。
【0049】
「ヘテロ二本鎖DNA」は、ssDNA媒介体にハイブリダイズされたssDNA変異体から構成される分子の集団、又は細胞への形質転換の前に伸長、変性若しくは鎖特異的消化などの続くプロセシングステップを通してそのような分子の集団から得られる組成物を意味する。「ヘテロ二本鎖DNA分子」は、ssDNA媒介体にハイブリダイズされたssDNA変異体、又は細胞への形質転換の前に伸長、変性若しくは鎖特異的消化などの続くプロセシングステップを通してそのような分子から得られる生成物を意味する。
【0050】
「精製する」とは、出発材料から、所望の生成物の約20%〜100%、例えば、所望の生成物の約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%を分離することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1図1は、本発明の方法の一例の略図である。目的の組み換え抗体配列は、エラープローンPCR条件下で増幅される。得られたdsDNA変異体は、dsDNA分子の一方の鎖を選択的に分解するためにT7エキソヌクレアーゼで処理され、ssDNA変異体、又はメガプライマーをもたらす。これらのssDNA変異体(メガプライマー)は、ウラシル化環状一本鎖ファージミドにアニーリングされ、DNAポリメラーゼによるin vitro合成をプライムするために使用される。DNAからウラシルを除去することができ、かつssDNA変異体を含有する新たに合成された組み換え鎖を優先してDNAを修復することができる大腸菌株に、ライゲートされたヘテロ二本鎖生成物は形質転換される。
図2図2は、dsDNAエラープローンPCR生成物のssDNA分子への変換を示す、SYBRゴールドで染色された、ネイティブアクリルアミドゲルである。第1レーンは、ラダーを含有する。未処理dsDNAエラープローンPCR生成物は、ラダーの後の最初の5個のレーンに示される。最後の5個のレーンでは、T7エキソヌクレアーゼが、エラープローンPCR生成物に添加された。エラープローンPCR生成物は、未修飾フォワードプライマーと、各レーンの上に表示されるように未修飾の又は1、2、3若しくは4個の5'ホスホロチオエートで修飾されたリン酸化リバースプライマーとを用いて生成された。このゲル解析から分かるように、少なくとも3個の5'ホスホロチオエートが、T7酵素のエキソヌクレアーゼ活性から鎖を保護するために必要とされる。
図3図3は、ssDNAのヘテロ二本鎖DNAへの変換を示す、アガロースゲル電気泳動である。ssDNA分子は、ウラシル化環状ssDNA分子にハイブリダイズされ、ヘテロ二本鎖を形成した。レーンMは、2logDNAラダー(New England Biolabs)である。レーン1、2及び3は、それぞれ、ウラシル化環状ssDNA(pAX143)のみ、ssDNA変異体とウラシル化環状ssDNA媒介体との比3:1で形成されたヘテロ二本鎖、及びssDNA変異体とウラシル化環状ssDNA媒介体との比10:1で形成されたヘテロ二本鎖である。Y軸ラベルは、ウラシル化環状ssDNA(pAX143)のみ(ssDNA)及びヘテロ二本鎖DNA(hetDNA)のバンドを示す。
図4図4は、scFv構築物を示す一対の略図である。上側の構築物は、代表的なssDNA媒介体配列である。下側の構築物は、代表的な鋳型DNA分子である。
図5図5は、免疫グロブリンの発現のために同じ細胞に移行される、重鎖及び軽鎖可変配列の、別々のベクターへのクローニングを示す略図である。
図6図6は、重鎖配列及び軽鎖配列を、例えばバイシストロニック発現のために、挿入することができるベクターを示す略図である。
図7図7は、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖配列の突然変異誘発、その後のEco29kIを有するTG1細胞への形質転換を示す略図である。
図8図8は、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖ドメインの突然変異誘発を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
多様な遺伝子配列のライブラリーから機能的配列を単離するプロセスは、定方向進化と称され得る。遺伝子配列の大きな多様なライブラリーを作製する効率的な方法は、このプロセスにおいて重要なステップである。そのようなライブラリーは、目的配列の変異体の集団であってよい。本発明は、定方向進化において使用され得るものなど、目的配列の変異体のライブラリーを作製する効率的な方法を対象とする。以下に詳細に記載されるように、本方法は、目的配列の二本鎖DNA(dsDNA)変異体を作製するための、増幅反応、例えばエラープローンPCRを含んでよく、その後、dsDNA変異体の一方の鎖は、選択的に分解されて、一本鎖DNA(ssDNA)変異体を生成し得る。ssDNA変異体は、ssDNA媒介体、例えばウラシル化環状ssDNA媒介体にハイブリダイズされ、ヘテロ二本鎖DNAを形成し得る。いくつかの実施形態において、ヘテロ二本鎖DNAは、DNAポリメラーゼとインキュベートされ、ssDNA媒介体を鋳型として使用して、ssDNA変異体を伸長する。ヘテロ二本鎖DNAは、細胞、例えば大腸菌細胞に形質転換され、変異体のライブラリーをもたらし得る。この方法は、多くの従来の方法では必要とされた非効率的なサブクローニングステップ及び高価なプライマーセットに対する必要性を排除する。
【0053】
目的配列
本方法はまた、目的配列の変異体のライブラリーを対象とする。目的配列は、ランダム配列、公知の機能を持たない配列、又はタンパク質をコードする配列であってよい。目的配列は、酵素又はそのドメイン若しくは断片、キナーゼ又はそのドメイン若しくは断片、転写因子又はそのドメイン若しくは断片、DNA結合タンパク質又はそのドメイン若しくは断片、RNA結合タンパク質又はそのドメイン若しくは断片、抗体又はそのドメイン若しくは断片、ポリメラーゼ又はそのドメイン若しくは断片、あるいはヒトタンパク質又はそのドメイン若しくは断片をコードしてよい。
【0054】
増幅反応
本方法において、dsDNA変異体は、鋳型DNA分子から増幅されてよい。鋳型DNA分子は、目的配列を含む分子である。鋳型DNA分子は、ssDNA分子、dsDNA分子、環状ssDNA分子、環状dsDNA分子、ウラシル化環状ssDNA分子、又はウラシル化環状dsDNA分子であってよい。鋳型DNA分子は、PCR生成物、プラスミド、ファージミド、ファージにパッケージされたDNA分子、又は単離されたDNA分子であってよい。
【0055】
本方法において、目的配列は、オリゴヌクレオチドのペアを用いて増幅されてよく、その一方のオリゴヌクレオチドは、保護されたオリゴヌクレオチドであり、他方は、保護されないオリゴヌクレオチドである。目的配列は、PCR、エラープローンPCR、等温増幅、又はローリングサークル増幅などの増幅反応によって、そのようなオリゴヌクレオチドペアを用いて増幅されてよい。
【0056】
増幅の様々な方法は、配列変化を誘導してよく、それによって、アンプリコンの配列は、目的の鋳型配列の配列とは異なる。PCRの特定の方法は、ヌクレオチドの誤取り込み(misincorporation)を促進する。エラープローンPCRは、そのような方法の一例である。エラープローンPCRは、当技術分野で公知の方法のいずれかによって実施されてよい。エラープローンPCRは、典型的には、突然変異が、鋳型配列から増幅される配列に導入される割合を増大させる、標準的PCRの改変型である。PCRの突然変異率を増加させる方法としては、MgCl2の濃度を増加させること、MnCl2の濃度を増加させること、さもなくば二価カチオンの利用可能性を変更すること、同じでない割合の各ヌクレオチドをPCR反応に含ませること、又はヌクレオチドアナログを含ませることが挙げられる。エラープローンPCRの具体的な方法は、当技術分野で公知である。例えば、Rasila et al.(Analytical Biochemistry, 2009, 388:71-80)は、Taq DNAポリメラーゼ及び変異誘発性バッファーを用いたエラープローンPCRを記載し、米国特許第6803216号は、新規エラープローンDNAポリメラーゼを用いたPCR突然変異誘発を記載する。他の方法は、当技術分野で公知である。
【0057】
PCRにおけるDNAポリメラーゼの使用は、常に、ある程度の突然変異をもたらすため、PCRの標準的方法はまた、目的配列のdsDNA変異体を作製するために使用してよい。天然DNAポリメラーゼ及び操作されたDNAポリメラーゼの両方の固有のエラー率は、様々である。本発明の増幅反応生成物は、目的配列のdsDNA変異体であってよい。
【0058】
オリゴヌクレオチド
本発明の増幅反応は、一方のオリゴヌクレオチドが保護されたオリゴヌクレオチドであり、他方が保護されないオリゴヌクレオチドである、オリゴヌクレオチドのペアを使用し得る。本発明に使用されるオリゴヌクレオチドのため、それぞれのdsDNA変異体は、保護された鎖及び保護されない鎖を有し得る。保護された鎖は、保護されない鎖より優先して選択的に分解されてよく、dsDNA変異体のssDNA変異体への変換を可能にする。
【0059】
本発明の一例において、目的配列に隣接するホスホロチオエートオリゴヌクレオチド及び非ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、鋳型DNA分子から目的配列を増幅するために使用される。これらのオリゴヌクレオチドは、3個以上の5'ホスホロチオエートを、dsDNA変異体の一方の鎖に選択的に取り込むが、他方の鎖には取り込まないように設計される。より具体的には、目的配列に相補的なオリゴヌクレオチドの一方(ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド)は、3個以上の5'ホスホロチオエートを有し、一方、目的配列の逆鎖に相補的な第二のオリゴヌクレオチド(非ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド)は、3個未満のホスホロチオエートを有する。
【0060】
ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、3個以上のホスホロチオエート、例えば約3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、又は100個のホスホロチオエートを含み得る。好ましくは、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、3〜100個のホスホロチオエート、より好ましくは3〜20個のホスホロチオエート、又はさらにより好ましくは3〜10個のホスホロチオエートを含む。ホスホロチオエートは、連続的であってよく、又はホスホロチオエートオリゴヌクレオチドにわたって分布してよい。非ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、3個未満のホスホロチオエート、例えば2、1又は0個のホスホロチオエートを含んでよい。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド又は非ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドのいずれかの長さは、8〜200塩基対、例えば約8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、100、150、又は200塩基対であってよい。
【0061】
使用されるオリゴヌクレオチドのため、目的配列の各dsDNA変異体は、3個以上の5'ホスホロチオエートを有する鎖、及び3個未満の5'ホスホロチオエートを有する鎖を含み得る。3個以上の5'ホスホロチオエートを有する鎖は、3個未満の5'ホスホロチオエートを有する鎖より優先して分解から保護され得る。
【0062】
本発明の別の例では、保護されたオリゴヌクレオチドは、5'ホスフェートを含み、保護されないオリゴヌクレオチドは、5'ホスフェートを含まない。5'ホスフェートを欠く保護されない鎖は、保護された鎖より迅速に分解されてよく、ssDNA変異体の作製のための手段を提供する。いくつかの実施形態において、保護されたオリゴヌクレオチドを提供する機構は、保護されないオリゴヌクレオチドを提供する異なる機構との組み合わせにおいて使用されてよい。
【0063】
dsDNA変異体のssDNA変異体への変換
本発明は、dsDNA変異体の保護されない鎖を選択的に分解する酵素、化合物、又は化学物質を利用し、dsDNA変異体をssDNA変異体へ効率的に変換する。典型的には、DNA加水分解は、鎖特異的ではない。本発明において、dsDNA変異体の一本鎖の選択的分解は、一方の鎖が保護された鎖であるが、他方が保護されない鎖であるため、可能である。
【0064】
例えば、3個以上の5'ホスホロチオエートは、DNAの鎖を分解から保護し得る。対照的に、0、1又は2個のホスホロチオエートを有する鎖は保護されない。保護された鎖が3個以上の5'ホスホロチオエートを含み、保護されない鎖が3個未満の5'ホスホロチオエートを含む、dsDNA変異体は、3個未満の5'ホスホロチオエートを有するDNA鎖を選択的に分解する酵素によってssDNA変異体に変換されてよい。
【0065】
3個未満の5'ホスホロチオエートを有する鎖を選択的に分解することができるエキソヌクレアーゼの例は、T7エキソヌクレアーゼ及びラムダエキソヌクレアーゼを含む。T7及びラムダエキソヌクレアーゼの両方は、5'から3'方向へ二本鎖DNAを加水分解する。dsDNA分子の一方の鎖が5'ホスホロチオエートによって保護され、逆鎖が保護されない場合、逆鎖は、T7又はラムダエキソヌクレアーゼによって選択的に分解される。保護されない鎖は、完全に分解されてよい。選択的分解は、ssDNA変異体を生成する。次いで、ssDNA変異体は、ssDNA媒介体にハイブリダイズすることができる(例えば図1)。別の例では、保護されたオリゴヌクレオチドは、5'ホスフェートを含むヌクレオチドであり、一方、保護されないオリゴヌクレオチドは、5'ホスフェートを含まない。保護されない鎖は、保護された鎖より迅速にエキソヌクレアーゼによって分解され得る。ラムダエキソヌクレアーゼは、5'ホスフェートのない鎖を、5'ホスフェートを有する鎖より優先して選択的に分解し得るヌクレアーゼの例である。保護された鎖が5'ホスフェートを含み、保護されない鎖が5'ホスフェートを含まない、dsDNA変異体の処理は、dsDNA変異体をssDNA変異体に変換し得る。
【0066】
ssDNA変異体のヘテロ二本鎖DNAへの取り込み
目的配列の変異体のライブラリーを作製することは、目的配列の変異体での細胞の形質転換を必要とする。これを生じさせるため、ssDNA変異体は、細胞、例えば大腸菌を首尾よくトランスフェクトし得る形態に適合されてよい。本発明において、ssDNA変異体は、ssDNA媒介体へのハイブリダイゼーションによって、ヘテロ二本鎖DNAに取り込まれる。いくつかの実施形態において、ssDNA変異体は、ハイブリダイゼーションの前に精製される。ssDNA変異体は、ssDNA変異体がハイブリダイズし得る配列を含むssDNA媒介体とインキュベートされる。いくつかの場合において、この配列は、目的配列と同一又は実質的に同一である。例えば、ssDNA媒介体は、目的配列と30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%同一である配列を含んでよい。
【0067】
ssDNA媒介体は、環状ssDNA分子又は直鎖状ssDNA分子であってよい。ssDNA媒介体は、ファージミドであってよく、又はファージミドと同一若しくは実質的に同一である配列断片を含んでよい。例えば、目的配列のssDNA変異体が、ファージディスプレイのために最適化された遺伝子発現機構に組み込まれるように、ssDNA媒介体は、当技術分野で公知の様々な技術によってファージディスプレイのために改変されてよい。ssDNA媒介体は、ウラシル化又はメチル化されてよい。
【0068】
ssDNA変異体をssDNA媒介体にハイブリダイズさせるため、ssDNA変異体及びssDNA媒介体は、ハイブリダイゼーションを可能にする温度又は一連の温度で共にインキュベートされてよい。例えば、それらは、アニーリング温度への徐冷却を伴って、変性温度で共にインキュベートされてよい。ハイブリダイゼーションの方法は、当技術分野で公知である。例示的温度は、約90℃での変性、約55℃でのアニーリング、及び1分あたり約-1℃での変性温度からアニーリング温度までの冷却を含み得る。
【0069】
ハイブリダイズされたssDNA変異体は、特定の実施形態において、DNAポリメラーゼ及び遊離ヌクレオチドの存在下でDNA伸長をプライムし得る。伸長は、DNAポリメラーゼが活性である温度における伸長反応のインキュベーションによって達成され得る。伸長反応は、場合により、リガーゼを含み得る。ssDNA媒介体が例えばウラシル化又はメチル化されているいくつかの実施形態において、完全な伸長は、ssDNA媒介体の元のウラシル化若しくはメチル化鎖を含む、並びに、取り込まれたssDNA変異体中に存在する変化若しくは差異、及び伸長中に導入された任意の追加の変化若しくは差異を除いて、ssDNA媒介体と同じ配列を有する新しい非ウラシル化及び/若しくは非メチル化鎖を含む、ヘテロ二本鎖DNA分子をもたらし得る。
【0070】
いくつかの実施形態において、ヘテロ二本鎖DNAは、ssDNA媒介体鎖を選択的に分解するために、形質転換の前にin vitroで処理されてよい。これは、ヘテロ二本鎖DNAを変性し、変性したヘテロ二本鎖DNAを、ssDNA媒介体鎖を選択的に分解することができる酵素、化合物又は化学物質で処理することによって達成され得る。例えば、ssDNA媒介体鎖が、修飾核酸塩基、又はアデニン、グアニン、シトシン及びチミン以外の核酸塩基を含むが、ssDNA変異体鎖はそれらを含まない場合、特定の酵素が、in vitroにおいてssDNA媒介体を選択的に分解し得る。一例において、ssDNA媒介体鎖は、メチル化アデニン核酸塩基を含み、変性したヘテロ二本鎖DNAは、メチル化DNAを選択的に分解する酵素DpnIで処理される。あるいは、ssDNA変異体鎖は、ssDNA媒介体鎖には見られず、かつssDNA変異体鎖を分解から選択的に保護する、修飾核酸塩基、又はアデニン、グアニン、シトシン及びチミン以外の核酸塩基を含んでよい。一例において、ssDNA変異体鎖は、メチル化核酸塩基を含むが、ssDNA媒介体鎖はそれを含まず、変性したヘテロ二本鎖DNAは、非メチル化DNAを選択的に分解する酵素Sau3AIで処理される。1つの群の鎖に存在する修飾又は非典型的塩基は、他の鎖には完全に又は部分的にのみ存在しなくてよい。
【0071】
2種以上のssDNA変異体集団に由来するssDNA変異体の、ヘテロ二本鎖DNAへの取り込み
いくつかの実施形態において、単一の目的配列から得られたssDNA変異体を、ssDNA媒介体にハイブリダイズさせてよい。他の実施形態において、2種以上の異なる目的配列から得られたssDNA変異体は、ssDNA媒介体にハイブリダイズしてよい。例えば、ssDNA変異体は、2種以上の異なる目的配列のそれぞれから作製されたdsDNAから作製されてよい。任意の2種の異なる目的配列は、単一の鋳型DNA配列中に又は異なる鋳型DNA配列中に見出すことができる。したがって、任意の2種以上の異なるdsDNA変異体集団は、単一の鋳型DNA分子から、又は2種以上の異なる鋳型DNA分子から増幅されてよい。
【0072】
保護されたオリゴヌクレオチド及び保護されないオリゴヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドの単一のペアは、2種以上の目的配列を増幅することが可能であってよい。あるいは、各ペアが1種以上の目的配列を増幅できる、オリゴヌクレオチドの2種以上の異なるペアは、2種以上の目的配列を増幅するために使用されてよい。オリゴヌクレオチドの所定のペアの保護されたオリゴヌクレオチドが、保護されないオリゴヌクレオチドより優先して選択的に分解から保護される機構は、オリゴヌクレオチドの任意の2つのペアについて同じであってよく、又はオリゴヌクレオチドの任意の2つのペアについて異なっていてもよい。
【0073】
任意の2種の目的配列のそれぞれからのdsDNA変異体の集団の作製は、各目的配列から作製されたssDNA変異体が物理的に分離されるように、別々に実施してよい。例えば、任意の2種の異なる目的配列の増幅は、別の反応チャンバー中で実施してよい。別々に実施される任意の2つの増幅反応は、同じ種類の増幅反応、例えば両方ともエラープローンPCRであってよく、又は異なる種類の反応であってよく、例えば一方の反応がエラープローンPCRであり、他方が標準的PCR若しくは等温増幅であってもよい。あるいは、任意の2種の目的配列の増幅は、単一の反応において実施してよい。同様に、dsDNA変異体の任意の2種の集団の、ssDNA変異体への変換は、別々に又は単一の反応において実施してよい。dsDNA変異体の変換は、いずれの機構の選択的分解によって達成されてもよく、その利用可能性は、各増幅反応に使用されるオリゴヌクレオチドによって決定され得る。
【0074】
ssDNA変異体の2種以上の別々に作製された集団は、ssDNA媒介体へのハイブリダイゼーションの前又は最中に混合されてもよい。ssDNA媒介体は、目的配列のそれぞれと実質的に同一の配列を含んでよい。単一の配列は、2種以上の目的配列と実質的に同一であってよい。あるいは、単一の配列は、1つだけの目的配列と実質的に同一であってよい。任意の2種の目的配列は、ssDNA媒介体の単一の配列と、ssDNA媒介体の重複する配列と、又はssDNA媒介体の重複しない配列と実質的に同一であってよい。ssDNA媒介体は、単一の目的配列がハイブリダイズし得る、複数の重複する又は重複しない配列を含んでよい。ssDNA変異体の集団の、ssDNA媒介体へのハイブリダイゼーションは、同時に又は連続して生じてよい。ssDNA変異体の混合した集団は、上に記載した方法によってssDNA媒介体にハイブリダイズされてよく、得られたヘテロ二本鎖DNAは、ハイブリダイゼーション後の任意のステップ、処理、又は本発明の反応における使用に適切であり得る。記載された任意のステップ、反応、又は処理は、並行して生じてよく、このことは、異なるssDNA集団の、単一のヘテロ二本鎖DNAへの取り込みを許容する様式で、それらが生じることを意味する。並行して生じるステップ、反応、又は処理は、同時に又は同様の期間内に生じても生じなくてもよい。ssDNA変異体の2種以上の集団をssDNA媒介体にハイブリダイズさせる方法は、2種以上の目的配列、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、又は20種の目的配列からのssDNA媒介体の作製を含み得る。
【0075】
ssDNA変異体の2種以上の集団をssDNA媒介体にハイブリダイズさせる方法の使用の例は、目的タンパク質をコードする配列内の複数の配列断片を改変することであってよい。例えば、抗体は、固定されたフレームワーク、及び抗体機能を決定する複数の非連続的相補性決定領域(CDR)を有し得る。各CDRをコードする配列又はその断片は、目的配列であってよい。本発明の方法において目的の各CDR配列からssDNA変異体を作製することによって、変動が望まれる領域(CDR)中にのみ配列変化を有し、他(固定されたフレームワーク)には有さない、目的配列の変異体のライブラリーが作製され得る。目的配列のこれらの変異体は、特定の機能を有する抗体を同定するために、定方向進化の方法において使用され得る。
【0076】
ヘテロ二本鎖DNA、又はヘテロ二本鎖DNA媒介体鎖の選択的in vitro分解によって生成されたssDNA変異体鎖での細胞の形質転換
ヘテロ二本鎖DNA、又はヘテロ二本鎖DNA媒介体鎖の選択的in vitro分解によって生成されたssDNA変異体鎖での細胞の形質転換は、当技術分野で公知の任意の方法によって達成され得る。例としては、エレクトロポレーション、化学的形質転換、及び熱ショック形質転換がある。細胞は、形質転換の選択された方法に対する能力を最適化するために処理されてよい。いくつかの実施形態において、ヘテロ二本鎖DNAは、形質転換の前に精製されてよい。形質転換は、1〜50個又はそれ以上のアリコートの形質転換を含み得る。例えば、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50個のアリコートが形質転換されてよい。形質転換体は、目的配列の変異体のライブラリーである。形質転換体は、回収培地中で培養されてよい。個々のアリコートは、回収培地中で混合されても、又は別々に培養されてもよい。回収後、培養された形質転換体は、ペレット化されてよい。ペレット化された形質転換体は、-20℃以下の温度で保存されてよい。あるいは、ペレット化された形質転換体は、再懸濁されてよい。再懸濁されたライブラリーは、ヘルパーファージとインキュベートされてよく、ファージディスプレイライブラリーをもたらす。あるいは、再懸濁されたライブラリーのいくつかの又は全てのアリコートは、-20℃以下の温度で保存されてよい。ファージディスプレイライブラリーは、ペレット化されてよい。ペレット化されたファージディスプレイライブラリーは、-20℃以下の温度で保存されてよい。あるいは、ペレット化されたファージディスプレイライブラリーは、再懸濁されてよい。再懸濁されたペレット化ファージディスプレイライブラリーは、-20℃以下の温度で保存されてよい。変異体の培養されたライブラリー、変異体の再懸濁されたライブラリー、ファージディスプレイライブラリー、又は再懸濁されたファージディスプレイライブラリーは、場合により、希釈され、培養プレート上にプレーティングされてよい。
【0077】
本発明の細胞は、真核生物、例えば哺乳動物、昆虫、若しくは酵母の細胞、又は細菌、例えば大腸菌(E. coli)若しくは枯草菌(B. subtilis)の細胞であってよい。ウラシル化ssDNA媒介体を使用する実施形態は、Ung+大腸菌などの、ウラシル化DNAを選択的に分解することができる細胞を形質転換し得る。メチル化ssDNA媒介体を使用する実施形態は、Mcr+細菌などの、メチル化DNAを選択的に分解することができる細胞を形質転換し得る。
【0078】
ミスマッチヌクレオチドの回復(resolution)
ヘテロ二本鎖DNA、又はヘテロ二本鎖DNA媒介体鎖の選択的in vitro分解によって生成されたssDNA変異体鎖は、回復され得るが、このことは、ヘテロ二本鎖DNA又はssDNA変異体鎖が、in vitro又はin vivoプロセスにおいて改変され、ミスマッチヌクレオチドがほとんどない又は全くない二本鎖ベクターを生成し得ることを意味する。回復されたベクターは、目的配列と比較して存在する1つ以上の変化又は差異(もしあれば)を有する1つ以上のssDNA変異体の配列を取り込むことができる。いくつかの場合には、1つ以上のssDNA変異体がハイブリダイズされるヘテロ二本鎖DNAの媒介体鎖の1つ以上のミスマッチヌクレオチドが改変され、媒介体鎖のミスマッチヌクレオチドが、ハイブリダイズされたssDNA変異体鎖に相補的なヌクレオチドに置き換えられる(すなわち修復される)、in vitro又はin vivo反応によって、回復されたベクターは形成される。ssDNA変異体鎖のミスマッチヌクレオチドが、それがハイブリダイズされる媒介体鎖のセグメントに相補的なヌクレオチドに置き換えられるように、ssDNA変異体鎖の1つ以上のミスマッチヌクレオチドが改変されるように、修復はまた生じ得る。
【0079】
ヘテロ二本鎖DNAの媒介体鎖は、ssDNA変異体鎖の配列を保存する(すなわち優先する)ように、修復を促進する改変を含み得る。いくつかの実施形態において、ssDNA変異体鎖は、ssDNA変異体鎖の配列を優先するように修復を促進する改変を含み得る。特定の例では、媒介体鎖はウラシル化される。さらにより特定の例では、DNAは、ung+細菌細胞、例えばung+大腸菌細胞に形質転換される。
【0080】
別の例では、ヘテロ二本鎖DNA媒介体鎖の選択的in vitro分解によって生成されたssDNA変異体鎖は、in vivoで回復される。そのような回復は、例えば、ssDNA変異体鎖に相補的な新しいDNA鎖の作製によって、生じ得る。
【0081】
非組み換えベクターのin vivo分解
本発明は、本発明の1つ以上又は全ての実施形態と共に又はそれと独立して使用するための、非組み換えベクターを分解する方法を含む。非組み換えベクターの分解を含む実施形態において、受容ベクターは、除去され、置換され、又は他の方法で改変される1つ以上のセグメント内に1つ以上の制限部位を含む。1つ以上のセグメントが、例えばクローニングによって、除去され、置換され、又は他の方法で改変された後、細胞によって発現された制限酵素は、媒介体鎖を選択的に分解することができる。例えば、いくつかの実施形態において、制限部位(単数又は複数)は、SacII部位であり、制限酵素は、Eco29kIである(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Pertzev et al. Nucleic Acids Res. 1992 April 25; 20(8): 1991に記載される)。Eco29kIは、SacII制限部位(CCGCGG)を切断することができ、かつ細菌細胞、例えば大腸菌で発現され得る、SacIIイソシゾマーである。SacII制限部位の1つの利点は、それがA又はTヌクレオチドを含まず、本発明の様々な実施形態と組み合わせてdut及びung戦略の最適な使用を可能にすることである。細胞は、例えば、細菌細胞、例えば大腸菌細胞、又はより具体的には、例えばTG1細胞であってよい。結果として、1つ以上のセグメントのそれぞれが改変、置換、又は除去されず、得られたベクターが制限部位を含まない、ベクターは、制限酵素(単数又は複数)を発現する細胞内で分解される。
【0082】
特定の実施形態において、非組み換えベクター又はベクター鎖のin vivo分解を使用して、scFv可変領域及びIgG定常領域が免疫グロブリンの形態で配置されるように、免疫グロブリンの組み換えを促進することができる。scFvは、軽鎖可変ドメイン、リンカー、重鎖可変ドメイン、及びGp3タンパク質を含み得る。いくつかの実施形態において、少なくともIgG重鎖定常ドメインをコードする核酸は、制限部位と、少なくともIgG重鎖定常ドメインをコードする核酸とを含むセグメントを含む。IgG重鎖は、制限部位を含むセグメントを含み得る。重鎖及び軽鎖核酸は、別々のベクター上、単一のベクター上に存在しても、又はバイシストロニック発現系において配置されてもよい。特定の実施形態において、scFv軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインは、クローニングが各制限部位を除去又は改変し、IgG重鎖をコードする核酸及びIgG軽鎖をコードする核酸の形成をもたらすように、IgG軽鎖定常ドメインをコードする核酸及びIgG重鎖定常ドメインをコードする核酸にそれぞれクローニングされる。上に記載されたように、これらの2種の構築物は、別々のベクター上(例えば単一細胞内での発現のため)又は単一のベクター上(例えば別々の発現のため、若しくはバイシストロニック配置において)存在してよい。
【0083】
特定の実施形態において、制限部位はSacII制限部位である。特定の実施形態において、in vivo分解はEco29kIによるものである。特定の例では、媒介体鎖は、ウラシル化される。さらにより特定の例では、DNAは、ung+細菌細胞、例えばung+大腸菌細胞に形質転換される。
【0084】
本明細書に記載される方法によって記載され、作製され、又は作製され得るベクターは、非細菌細胞種、例えばCHO細胞への移行に適してよい。ベクターは、1つ以上の細胞種、例えば哺乳動物細胞、昆虫細胞、及び/又は細菌細胞においてベクター中に存在する1つ以上のタンパク質の発現を指令するのに十分な配列情報を含み得る。非限定的な例として、本発明の方法によって作製されたベクターは、CHO細胞において発現することができるIgG重鎖及びIgG軽鎖を含み得る(図8)。
【0085】
ssDNA媒介体鎖を優先して回復するか、又はssDNA変異体を十分に取り込まない、ベクターの分解
本発明の様々な実施形態のいずれかにおいて、ssDNA媒介体鎖を優先して回復するか、又はssDNA変異体を十分に取り込まない、ベクターの選択的分解のための機構が提供され得る。特に、ssDNA媒介体は、1つ以上の制限部位を含む1つ以上のセグメント(例えば、制限酵素によって認識され切断され得る配列)を含み得るが、ssDNA媒介体鎖セグメントにハイブリダイズすることができるssDNA変異体は、これらの制限部位を含まない。したがって、一般に、制限部位が、ssDNA変異体を優先して回復される場合、回復されたベクターは、それらの部位を切断することができる制限酵素によって分解されない。対照的に、1つ以上の制限部位がssDNA媒介体を優先して回復する場合、得られたベクターは、それらの部位を切断することができる制限酵素による切断に対して感受性である。
【0086】
一例では、ssDNA媒介体は、特定の制限部位の単一のコピーを含み、制限部位は、ssDNA変異体がハイブリダイズすることができる領域内に位置する。ssDNA変異体は、いずれの方向にも制限部位を含まない。したがって、制限部位は、1つ以上のミスマッチヌクレオチドを含み、それは、例えばin vivoで修復され得る。制限部位ミスマッチが、ssDNA変異体を優先して修復される場合、得られるベクターは、特定の制限酵素による分解に対して感受性ではない。あるいは、制限部位ミスマッチが、ssDNA媒介体を優先して修復される場合、得られるベクターは、制限部位を含み、特定の酵素による分解に対して感受性である。具体的な例では、ssDNA媒介体は、ウラシル化される。
【0087】
様々な実施形態において、制限部位が、それに基づいてssDNA変異体が作製された鋳型分子中に存在しなかったために、ssDNA変異体は制限部位を含まない。他の実施形態において、制限部位が突然変異誘発事象によって破壊されたために、ssDNA変異体は制限部位を含まない。本発明の様々な実施形態は、上に記載されたように、2種以上の異なる目的配列に由来し、かつssDNA媒介体にハイブリダイズすることができる、ssDNA変異体を含み得る。そのような場合、2種以上のssDNA変異体のそれぞれがハイブリダイズすることができるssDNA媒介体のセグメントは、それぞれ制限部位を含み得る。いくつかの例では、ssDNA変異体がハイブリダイズすることができる2つ以上のセグメントのそれぞれは、同じ特定の制限部位を含む。他の実施形態において、ssDNA変異体がハイブリダイズすることができる2つ以上のセグメントは、2種以上の異なる制限部位を含む。
【0088】
特定の場合において、1つ以上のssDNA変異体がハイブリダイズすることができるssDNA媒介体の1つ以上のセグメントは、それぞれ単一の制限部位を含むことができる。他の実施形態において、1つ以上のssDNA変異体がハイブリダイズすることができるssDNA媒介体のセグメントは、2つ以上の制限部位を含むことができる。
【0089】
いくつかの実施形態において、1つ以上の回復されたベクターは、単離及び/又は精製され、ssDNA媒介体鎖を優先して回復するか、又はssDNA変異体を十分に取り込まないベクターを分解するために、1つ以上の制限酵素でin vitroで処理される。
【0090】
いくつかの実施形態において、ssDNA媒介体鎖を優先して回復するか、又はssDNA変異体を十分に取り込まない、1つ以上のベクターは、in vivoで分解される。特に、回復されたベクターは、制限酵素を発現する細胞中に存在してよく、制限酵素が分解することができる1つ以上の制限部位を含んでよい。さらにより具体的な実施形態において、回復されたベクターは、制限酵素Eco29kIを発現する細胞中に存在してよい。細胞は、例えば、細菌細胞、例えば大腸菌細胞、例えばTG1細胞であり得る。
【0091】
特定の実施形態において、非組み換えベクターのin vivo分解を使用して、免疫グロブリンの形態における重鎖及び軽鎖可変領域並びにIgG定常領域のssDNA変異体の組み換えを促進することができる。軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインは、例えばscFv軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインであってよい。いくつかの実施形態において、少なくともIgG重鎖定常ドメインをコードする核酸は、制限部位と、制限部位を含むセグメントを含む、少なくともIgG軽鎖定常ドメインをコードする核酸とを含むセグメントを含む。重鎖及び軽鎖核酸は、別々のベクター上、単一のベクター上に存在しても、又はバイシストロニック発現系において配置されてもよい(例えば図5〜7を参照のこと)。特定の実施形態において、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインは、ハイブリダイズされたベクターの回復が各制限部位を除去又は改変するように、IgG軽鎖定常ドメインをコードする核酸及びIgG重鎖定常ドメインをコードする核酸にそれぞれハイブリダイズされる。これは、それぞれが1つ以上のssDNA変異体を潜在的に取り込む、IgG重鎖をコードする核酸及びIgG軽鎖をコードする核酸の形成をもたらす。上に記載されたように、これらの2種の構築物は、別々のベクター上(例えば単一細胞内での発現のため)又は単一のベクター上(例えば別々の発現のため、若しくはバイシストロニック配置において)存在してよい。構築物は、例えば細菌に移行され、そこで回復してもよい。
【0092】
特定の実施形態において、制限部位はSacII制限部位である。特定の実施形態において、in vivo分解はEco29kIによるものであり、細菌はEco29kIを発現する細菌である。
【0093】
本明細書に記載される方法によって記載され、作製され、又は作製され得るベクターは、非細菌細胞種、例えばCHO細胞への移行に適してよい。ベクターは、1つ以上の細胞種においてベクター中に存在する1つ以上のタンパク質の発現を指令するのに十分な配列情報を含み得る。非限定的な例として、本発明の方法によって作製されたベクターは、CHO細胞において発現することができるIgG重鎖及びIgG軽鎖を含み得る(図8)。
【0094】
ssDNA媒介体鎖を優先して回復するか、又はssDNA変異体を十分に取り込まない、ベクターの分解のための上記方法及び組成物は、組み換え核酸、十分に組み換えられた核酸、又は複数の標的化部位のそれぞれにおいて10%以上、例えば10%、20%、30%、40%、50%、75%、100%、150%、200%、300%、500%、若しくは1000%又はそれ以上組み換えられた核酸、の回収を改善し得る。
【0095】
目的配列の変異体のライブラリーのサイズ及び特徴付け
本発明の方法は、約1E+05を超える変異体の総数、例えば約1E+05、1E+06、1E+07、1E+08、1E+09、1E+10、1E+11、若しくは1E+12の変異体又はそれ以上を有する変異体のライブラリーをもたらし得る。本発明の方法によって作製された形質転換体のうち、組み換え形質転換体の数は、30%を超えてよく、例えば約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%であってよい。組み換え体における突然変異率は、少なくとも約0.75%、例えば約0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、1%、1.5%、2%、2.5%、又は3%であってよい。ライブラリーのサイズ、組み換え体のパーセンテージ、及び組み換え体における突然変異率は、ヘテロ二本鎖DNA分子の数、試みた形質転換の数、形質転換の方法、目的配列を増幅する方法、及び他の因子に依存する。
【0096】
突然変異誘発の効率の決定
本発明の方法は、目的配列の変異体のライブラリーを作製するために使用してよい。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態において、突然変異誘発の効率を決定することは有利である。突然変異誘発の効率を決定するための機構は、定量的、半定量的、又は定性的であってよい。
【0097】
突然変異誘発の効率を決定する1つの機構において、青色/白色レポーター選抜は、本発明の方法と共に使用される。青色/白色レポーター選抜における使用のためのいくつかの公知の構築物は、LacZ遺伝子を含む。そのような実施形態において、LacZの発現は、構成的であるか、例えばIPTGによる、誘導性であるか、又は例えば抑制を含む、複数の手段によって制御されてよい。LacZ遺伝子は、細胞のゲノム中に、プラスミド上に、本発明のヘテロ二本鎖DNA分子中に、又は本発明の回復されたベクター中に存在してよい。LacZ遺伝子の発現は、青色色素をもたらす様式でX-galを切断することができる酵素であるβ-ガラクトシダーゼを生成する。β-ガラクトシダーゼ及びX-galの十分な量を含む細胞は青い。突然変異誘発は、β-ガラクトシダーゼによるX-galの切断を破壊し得る。これが生じると、細胞は白く見える。さらに、白色コロニーのパーセンテージは、突然変異誘発の効率を示す。白色コロニーの高いパーセンテージは、LacZの発現及び/又はβ-ガラクトシダーゼによるX-galの切断を破壊するのに十分な突然変異が高頻度で生じたことを示し、一方、白色コロニーのの低いパーセンテージは、そのような突然変異が高頻度で生じなかったことを示す。
【0098】
特定の実施形態において、白色コロニーのパーセンテージは、突然変異誘発の特定の頻度と実験的に又は理論上相関し、それによって、白色コロニーのパーセンテージは、突然変異誘発の効率の推定値を提供し得る。
【0099】
特定の実施形態において、青色/白色選抜が適用される細胞は、実験細胞、例えば、特定の特徴を有する変異体を同定するために突然変異誘発された配列を含む細胞である。他の実施形態において、細胞は、実験細胞と並行して突然変異誘発された対照細胞である。
【0100】
本発明の様々な他の実施形態において、選抜は、青色色素以外の表現型を同定する。そのような場合、マーカー構築物は、lacZ遺伝子を含む構築物では必ずしもなく、むしろ、検出可能な表現型を示すことができる、ある他のマーカー遺伝子を含む構築物である。例えば、突然変異誘発によって破壊することができる検出可能な表現型は、限定するものではないが、発光、蛍光、抗生物質耐性、抗生物質感受性、毒素耐性、毒素感受性、増殖速度の変化、アナライトへの応答の変化、細胞構造の変化、コロニー形成の変化、又は栄養要求性の変化であってよい。さらなる検出可能な表現型は、当技術分野で公知である。さらに、これらの検出可能な表現型を示すことができる遺伝子はまた、当技術分野で公知である。例えば、検出可能な表現型は、緑色蛍光タンパク質(例えばgfp)、赤色蛍光タンパク質(例えばrfp)、黄色蛍光タンパク質(例えばyfp)、アンピシリン耐性遺伝子(amp)、テトラサイクリン耐性遺伝子(tet)、カナマイシン耐性遺伝子(kan)、ベータガラクトシダーゼ(β-gal)、アラニン合成遺伝子(例えばargA)、システイン合成遺伝子(例えばcysE)、ロイシン合成遺伝子(例えばlysA)、トレオニン合成遺伝子(例えばthrC)、又は当技術分野で公知の複数の他の天然若しくは合成遺伝子のいずれか、の発現に起因してよい。あるいは、マーカータンパク質は、例えば転写因子の発現によって、検出可能な表現型を示す遺伝子の発現を指令する又はそれに寄与する機能的カセットであってよい。そのような場合、検出可能な表現型を示す遺伝子は、細胞に対して内因性であっても、又はベクターによってコードされていてもよい。細胞のサブセットがアッセイ条件下で成長しないことが予測される実施形態において、許容条件に対するレプリカプレート又は同様の効果の別の技術を使用して、示される表現型を有する細胞のパーセンテージを決定してよい。さらに、検出可能な表現型を有する細胞を選択又は単離する方法は、当技術分野で公知である。マーカータンパク質の発現に起因する表現型を有する1つ以上の細胞を選択又は単離することは、検出可能な表現型に応じて、フローサイトメトリー、関連する抗生物質若しくは毒素の存在下で細胞の集団を培養すること、特定の有機化合物の存在若しくは不在下で細胞の集団を培養すること、又は顕微鏡技術を含み得る。特定の検出可能な表現型を有する細胞を選択及び単離するさらなる方法は、当技術分野で公知である。
【0101】
定方向進化
本発明の変異体のライブラリーは、ファージディスプレイ又は定方向進化の方法において使用され得る。本発明のssDNA媒介体は、ファージディスプレイにおける使用に適したファージミドであってよく、その例は当技術分野で公知である。目的配列の変異体のライブラリーの細胞の、ヘルパーファージとのインキュベーションは、目的配列の変異体によってコードされるタンパク質の提示をもたらし得る。タンパク質変異体を提示する細胞は、タンパク質変異体が相互作用し得る、1つ以上の標的分子、例えば1つ以上のタンパク質、分子又は化合物と共にインキュベートされてよい。標的分子(複数可)は、小分子、タンパク質又はそのドメイン、ヒトタンパク質又はそのドメイン、酵素、病原体タンパク質又はそのドメイン、抗体又はそのドメイン、あるいは組み換えタンパク質であってよい。タンパク質変異体は、標的分子(複数可)に結合するか、それを切断するか、又はそれを改変してよい。あるいは又は加えて、目的配列のタンパク質変異体は、標的分子(複数可)の立体構造変化を誘導し、又は標的分子(複数可)の反応を触媒し得る。定方向進化によって同定された配列は、多様化及び選択の続くラウンドにおいて目的配列として使用してよい。
【実施例】
【0102】
[実施例1]
ウラシル化環状ssDNAの作製
本発明において、ウラシル化環状ssDNAは、DNA鋳型分子、ウラシル化環状ssDNA媒介体、又はその両方として機能してよい。ウラシル化環状ssDNA分子は、ファージ又はファージミドssDNA分子であってよい。ウラシル化環状ssDNA分子を作製する1つの方法は、CJ236大腸菌細胞を使用する(遺伝子型: FΔ(HindIII)::cat (Tra+ Pil+ CamR)/ ung-1 relA1 dut-1 thi-1 spoT1 mcrA;New England Biolabs)。この株の細胞は、機能的dUTPase及びウラシル-Nグリコシラーゼを欠く。最初に、エレクトロコンピテントCJ236細胞のアリコート(25μl)を、冷却した0.1mmギャップキュベット内にピペットで入れ、1μlのpAPIII6プラスミドDNAをCJ236細胞に添加した。BioRadエレクトロポレーター中で1.6ボルトにて細胞をエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションの直後に、1mlのSOC培地を添加し、培地及び細胞を、14ml Falcon製培養チューブに移した。培養物を、振とうしながら(およそ225rpm)37℃にて1時間インキュベートした。その時間の終わりに、250μlの形質転換された細胞を、LB +CAM +AMPプレートに直接播種した。これらのプレートを、37℃で一晩インキュベートした。
【0103】
ファージを作製するため、LB及びアンピシリン(60μg/ml)を含有する1mlの増殖培地、並びに100μlのM13K07ヘルパーファージ(NEB、1011 PFU/ml)を、培養チューブに添加した。次いで、単一の10μlピペットチップを用いて、一晩の形質転換プレートから30個のコロニーを培地に接種した。培養物を200rpmにて37℃で2時間振とうし、その後、0.5μlのカナマイシンストック(終濃度30μg/ml)を添加し、培養物を225rpmにて37℃で6時間又は濁るまで振とうした。培養物を、250mlのガラスバッフル付フラスコ中で、アンピシリン(60μg/ml)、カナマイシン(30μg/ml)及びウリジン(0.3μg/ml)を含有する新鮮な30mlの2YT培地に希釈した。培養物を225rpmにて30℃で一晩(およそ18時間)振とうした。
【0104】
一晩振とうした後、30mlの培養物を、丸底遠心チューブに移し、細胞を、4℃にて、SS34ローター又は同等のローターを用いたSorvall RC-5B遠心分離機中で、15,000rpmで15分間の遠心分離によってペレット化した。上清を、0.22μmチューブトップフィルターを用いてろ過し、ろ液を、6mlの20% PEG8000/2.5M NaClを含有する新しい丸底チューブに移した。各チューブをパラフィルムで覆い、数回転倒して混合し、次いで、氷上で60分間インキュベートした。各チューブを、SS34ローターを用いたSorvall RC-5B遠心分離機中で10K rpmで20分間、4℃で遠心分離した。上清を移し、チューブを、SS34ローターを用いたSorvall RC-5B遠心分離機中で5K rpmで5分間再び遠心分離した。残りの液体を、ピペットを用いて吸引し、ファージペレットを残した。ファージペレットを、500μlの1×滅菌PBS中に再懸濁し、1.7mlチューブに移した。再懸濁したファージを、トップスピード(14K rpm)で4℃でベンチトップ微小遠心分離機中で4℃で5分間遠心分離した。
【0105】
遠心分離した再懸濁ファージの上清を、新しい1.5mlチューブに移した。次に、7μlのバッファーMP(Qiagen M13キット)を、ファージプレップ(phage prep)に添加し、混合し、その後、5分間室温でインキュベーションした。サンプルを、QIAprepスピンカラム(Qiagen M13キット)に適用した。カラムを、ベンチトップ微小遠心分離機中で8K rpmにて30秒間遠心分離し、フロースルーを廃棄した。次いで、700μlのバッファーMLBをカラム(Qiagen M13キット)に添加し、カラムを、15秒間、ベンチトップ微小遠心分離機中で8K rpmにて遠心分離した。700μlのさらなるバッファーMLBをカラムに添加し、カラムを少なくとも1分間室温にてインキュベートし、次いで、30秒間、ベンチトップ微小遠心分離機中で8K rpmにて遠心分離した。次に、700μlのバッファーPE(Qiagen M13キット)を添加し、カラムを、ベンチトップ微小遠心分離機中で15秒間8K rpmにて遠心分離した。このステップを繰り返した。カラムを新しい1.7mlチューブに移した。100μlのバッファーEB(M13キット)を、カラムメンブレンに添加し、カラムを、10分間室温にてインキュベートし、次いで、ベンチトップ微小遠心分離機中で8K rpmにて30秒間遠心分離した。dU-ssDNAを含有する溶出液を、1%アガロースTAEゲルに1.0μlの溶出液を流すことによって分析した。DNAは、主要な単一バンドとして現れたが、電気泳動移動度がより低いかすかなバンドが見えることが多く、これは、dU-ssDNAにおける二次構造によって生じた可能性が高い。
【0106】
[実施例2]
エラープローンPCR
本発明において、エラープローンPCRを使用して、目的配列の変異体を作製することができる。この実施例では、1つのPCRプライマーは、ホスホロチオエートの導入によって5'末端で修飾される。3個以上の5'ホスホロチオエートを有し、かつ目的配列の一方の鎖にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドと、目的配列の逆鎖にハイブリダイズすることができる、3個未満のホスホロチオエートを有する第二のオリゴヌクレオチドとを用いて、目的配列は増幅される。エラープローンPCRを実施するために、10μLの10×突然変異誘発PCRバッファー[70mM MgCl2、500mM KCl、100mM Tris(pH 8.3)、0.1%(wt/vol)ゼラチン]を、10μLの10×dNTPミックス(2mM dGTP、2mM dATP、10mM dCTP、10mM dTTP)、目的DNAを増幅するために設計されたフォワード及びリバースプライマーのそれぞれ30pモルと混合した。scFv遺伝子のために、本発明者らは、以下を使用した: (AXL6AS4-PCRR 5'Phos G*T*C*G*ACTGAGGAGACGGTGACC); 及び(AXL6KunkPCRF2 AAGCTTTCCTATGAGCTGACACAGCC)、アスタリスクは、ホスホロチオエートによって接続された塩基対の境界を定めている。反応は、1、10又は20fモルのいずれかのインプットDNAを使用し(すなわち、各量について別の反応)、水を、総体積88μLまで添加した。次いで、10μLの5mM MnCl2を添加し、よく混合した; いずれの沈殿物もないことを確認した。2μLのTaq DNAポリメラーゼを添加し、最終体積を100μLとした。反応を、Biorad T100サーマルサイクラーで30回(94℃ 1分、55℃ 1分、72℃ 1分)、サイクルした。PCRが完了した後、反応クリーンアップを、Qiagen QIAquick PCR精製キットを用いて製造業者のプロトコールにしたがって行った。生成物サイズは、およそ800塩基対であった。
【0107】
[実施例3]
T7処理
3個未満のホスホロチオエートを有する鎖を消化するために、Qiagen QIAquick PCR精製キットを用いて精製した40μlのPCR生成物を、BioRad T100サーマルサイクラー中で1時間25℃にて1×NEBバッファー4中の10μlのT7エキソヌクレアーゼ(1mlあたり10,000ユニット)とインキュベートした。T7処理した生成物を、Qiagen QIAquick PCR精製キットを用いて精製し、反応あたり40μlのEBバッファー中に溶出した。
【0108】
これらのホスホロチオエートは、5'から3'のエキソヌクレアーゼT7の加水分解作用からの、最初の二本鎖PCR生成物の保護を提供し、一方、反対の保護されない鎖は加水分解される。本発明者らは、1又は2個のホスホロチオエートが、加水分解を阻止するのに十分ではないが、3又は4個のホスホロチオエートの付加が、対応する鎖の完全な保護をもたらしたことを見出した。
【0109】
ホスホロチオエートは、大腸菌においてサイトゾルエキソヌクレアーゼによる分解から、不完全にライゲートしたヘテロ二本鎖生成物を保護し、突然変異の偏った取り込みを阻止することによって、in vivoでさらなる利点を提供し得る。
【0110】
二本鎖PCR生成物の一本鎖DNA変異体への変換
ヌクレオチドの誤取り込みに有利に働く条件下での800塩基対scFv遺伝子の増幅からのPCR生成物を、T7若しくはラムダエキソヌクレアーゼあり又はなしのいずれかで、25℃で1時間処理した。処理後、生成物を、SYBR-Goldで染色したネイティブアクリルアミドゲルで可視化した。ssDNA生成物は、対応するdsDNAより遅い移動度を示す(図2)。予想通り、T7エキソヌクレアーゼは、いずれのプライマーもホスホロチオエートを含有しない場合、保護されないDNAを完全に分解する。5'末端における1又は2個のホスホロチオエート残基はまた、酵素の加水分解作用からの十分な保護を提供しない(図2)。しかし、5'末端の1つが3又は4個のホスホロチオエートを有する場合、PCR生成物は、ssDNAに完全に変換される(図2)。ラムダエキソヌクレアーゼはまた、dsDNAをssDNAに変換するが、反応は、非ホスホロチオエートプライマーが5'リン酸化されている場合に、より効率的である。
【0111】
[実施例4]
ヘテロ二本鎖形成
エラープローンPCRとその後のT7消化の一本鎖生成物の、DNAヘテロ二本鎖への取り込みのために、40μlのT7処理及びクリーンアップ反応物を、13μlのpAX143 ssDNA、25μlの10×TM(0.1M MgCl2、0.5M Tris、pH 7.5)バッファー、及び172μlのdH20に添加した。pAX143は、バクテリオファージM13 gpIIIコートタンパク質に融合した単鎖可変断片抗体(scFv)を有するファージミドpAP-III6の誘導体である。pAX143中のscFvは、CDRのそれぞれにおいて終止コドン及びSac II制限部位を含有し、そのため、非組み換えクローンは非機能的になる。合成オリゴヌクレオチドとの反応において、200ngのオリゴヌクレオチドを、20μgの環状一本鎖鋳型に添加した。アニーリング反応を、BioRad T100サーモサイクラー中で、90℃で2分間インキュベートし、その後、1分あたり-1℃で90℃から55℃へ徐々に低下させることによって実施した。次いで、アニールした生成物を、10μlの10mM ATP、10μlの100mM dNTPミックス、15μlの100mM DTT、0.5μl(30U)のT4 DNAリガーゼ及び3μl(30U)のT7 DNAポリメラーゼと混合した。混合物を、5個のPCRチューブに等しく分注し、BioRad T100サーモサイクラー中で20℃にて一晩(16時間)インキュベートする。
【0112】
得られたDNAを、Qiagen QIAquick DNA精製キットを用いて、脱塩及び精製した。反応物を1.0mlのバッファーQG(Qiagen QIAquick DNA精製キット)と混合することによって、これを達成した。サンプルを、各カラムへの35μlのバッファーEB(Qiagen QIAquick DNA精製キット)の添加によって溶出した。2個のカラムからの溶出液(70μl 最終)を混合し、2μlの生成物を、2μlのssDNAと並行して、アガロースゲルで可視化した。最大3個のバンドが観察された。上の(最もよく見られることが多い)バンドは、鎖が置換された(stand displaced)DNAに対応し、真ん中の(通常薄い)バンドは、ニックDNA(すなわち、適切に伸長及びライゲートされていない)に対応し、下のバンドは、正確に伸長及びライゲートされた生成物を表す。ssDNAは、正確にライゲートされたバンドより下に移動する。
【0113】
エラープローンPCR生成物の標準的クローニングのため、DNAを、HindIII及びSalIで消化し、ファージディスプレイ用のpAPIII6ベクターにライゲートした。
【0114】
[実施例5]
CJ236株の形質転換
CJ236株(遺伝子型: FΔ(HindIII)::cat (Tra+ Pil+CamR)/ ung-1 relA1 dut-1 thi-1 spoT1 mcrA)をNew England Biolabsから購入した。この株は、機能的なdUTPase及びウラシル-Nグリコシラーゼを欠き、ウラシル化された一本鎖DNA鋳型を作製するために使用される。エレクトロコンピテントCJ236細胞のアリコート(25μl)を、冷却した0.1mmギャップキュベット内にピペットで入れ、1μlのpAPIII6プラスミドDNAをキュベット中のCJ236細胞に添加した。BioRadエレクトロポレーター中で1.6ボルトにて細胞をエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションの直後に、1mlのSOC培地を添加し、培地及び細胞を、14ml Falcon製培養チューブに移した。培養物を、振とうしながら(およそ225rpm)37℃にて1時間インキュベートした。その時間の終わりに、250μlの形質転換された細胞を、LB +CAM +AMPプレートに直接播種する。プレートを、37℃で一晩インキュベートした。
【0115】
[実施例6]
ライブラリー形質転換
TG1大腸菌株(F' [traD36 proAB+ lacIq lacZΔM15]supE thi-1 Δ(lac-proAB) Δ(mcrB-hsdSM)5, (rK-mK-))をLucigenから購入した。形質転換反応のため、0.5μlのヘテロ二本鎖DNA又はライゲーション生成物を、25μlのTG1エレクトロコンピテント細胞(Lucigen)と混合し、0.1cmギャップキュベットに添加した。細胞及びDNAを、1.6kV(「セットボルト」についてr1.60)、200ohms、25μFに設定したGenePulserを用いてエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションした細胞を、1mlのLucigenリカバリーと混合し、14mlのFalcon培養チューブに移し、次いで、37℃で振とうした。1時間後、2μlの培養物を取り出し、198μlの2YT培地に10-2希釈し、ボルテックスして混合した。次いで、きれいなピペットを用いて、2μlの10-2希釈物を、198μlの2YT培地にさらに希釈し、10-4希釈物とした。これらの10-2連続希釈を、10-14まで繰り返した。100μlの各希釈物を、TYE- AMP-グルコースプレートに滅菌スプレッダーによって播種し、プレートを37℃で一晩インキュベートした。
【0116】
[実施例7]
Kunkel突然変異誘発
5'ホスホロチオエート結合を有するssDNA生成物の、Kunkel突然変異誘発の効率、及び特に、in vitro合成された組み換え鎖を優先したウラシル化DNA鎖の偏った修復、に対する影響を、大腸菌において調べた。5'末端に4個のホスホロチオエートを含有する合成オリゴヌクレオチドを、ホスホロチオエートを欠く同じオリゴヌクレオチドと並行して、標準的Kunkel突然変異誘発反応に使用した。ヘテロ二本鎖DNA生成物を、DNAにおけるウラシルの除去に必要な酵素の野生型バージョンをコードし、かつ組み換え非ウラシル化鎖の増殖に有利に働く、大腸菌TG1細胞に形質転換した。組み換え体は、非修飾及び修飾オリゴヌクレオチドの両方から、それぞれ44%及び50%の割合で作製され(表1)、このことは、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを、Kunkel突然変異誘発に使用できることを示す。
【0117】
合成オリゴヌクレオチドを、突然変異したscFv遺伝子に対応する800塩基対エラープローンPCR断片のT7エキソヌクレアーゼ処理によって作製されたssDNA変異体の代わりに用いた。突然変異したssDNA変異体は、オリゴヌクレオチドより20倍大きいため、ssDNA変異体の、ウラシル化環状一本鎖鋳型に対する比率を、ヘテロ二本鎖生成物の効率的な生成を達成するために最適化しなければならなかった(図3)。dsDNA生成物のTG1細胞へのエレクトロポレーション後、個々のクローンを配列決定に送り、組み換え体の数を決定した。組み換え体は、46%の割合で作製され、これは、合成オリゴヌクレオチドで観察された効率と同等である。完全な組み換え体に加え、ssDNA変異体反応は部分的組み換え体ももたらし、これでは、ssDNA変異体配列の一部が35%の頻度で組み込まれた(26個中9個の組み換え体; 表1)。
【0118】
【表1】
【0119】
[実施例8]
AXM突然変異誘発を用いた、多様なライブラリーの作製
本方法を、エラープローンPCRによってアフィニティ成熟ライブラリーを作製する従来のアプローチと比較するため、上と同じscFv遺伝子をエラープローンPCRによって増幅し、標準的技術を用いてファージミドベクターにサブクローニングした。ライゲートした生成物のTG1細胞へのエレクトロポレーション後、形質転換体の数の推定値を得るため、連続希釈を固体培地上に播種した。個々のクローンを配列決定し、組み換え体のパーセンテージ及び突然変異頻度を決定した。
【0120】
標準的ライブラリーからの形質転換体のうち、75%が組み換え体であり、平均して、各組み換え体クローンは8個の突然変異を有しており、これは、およそ1%の点突然変異率に等しい(表2)。1.5%の類似した突然変異率が、AXM突然変異誘発アプローチを用いて観察された(表2)。組み換え体の頻度は、AXM突然変異誘発ライブラリーより標準的ライブラリーについてわずかに高かったが、形質転換体の全体数は、AXM突然変異誘発アプローチを用いて数桁高かった(それぞれ、2.8×108対1×105)。これらの効率に基づいて、AXM突然変異誘発アプローチを用いた単一形質転換からの全体的ライブラリー多様性は、およそ108組み換え体クローンであった(表2)。標準的アプローチを用いて類似のサイズのライブラリーを達成するためには1000回の形質転換を要する。この結果は、本方法により、単一形質転換から108組み換え体クローンを有するライブラリーの効率的な作製が可能であることを示す。従来のエラープローンPCR及びサブクローニングアプローチは、同等のサイズのライブラリーを生じるために1000回の形質転換を要した。
【0121】
【表2】
【0122】
[実施例9]
突然変異誘発の効率を決定する方法
青色/白色選抜を使用して、突然変異誘発の効率を決定した。β-ガラトシダーゼを発現することができるlacZ遺伝子を含むpBluescriptベクターを、これらの実験に使用した。標準的PCRによって増幅されたLacZ ssDNA変異体にハイブリダイズされたpBluescriptベクターで、対照細胞を形質転換した。これらの形質転換細胞を、X-galの存在下で培養した; これらの細胞の1490個のうち1480個が青色であった(0.01%白色コロニー)。エラープローンPCRによって増幅されたLacZ ssDNA変異体にハイブリダイズされたpBluescriptベクターで形質転換された細胞を、X-galの存在下で別に培養した。627個のうち525個の細胞が青色であった(19%白色コロニー)。エラープローンPCRによって増幅されたscFv鋳型で、さらなる細胞を別に形質転換した。scFv鋳型がエラープローンPCRによって増幅され、ベクターにハイブリダイズされ、X-gal上で培養された2つのサンプルのそれぞれにおいて、コロニーの100%が白色であった。これらの細胞について21%のKunkel効率が決定された(表3)。
【0123】
【表3】
【0124】
[実施例10]
別々のベクター上の免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の突然変異誘発
本発明の一例では、第一の目的配列は、免疫グロブリン重鎖をコードし、第二の目的配列は、免疫グロブリン軽鎖をコードする。それぞれは、本発明の方法にしたがって突然変異誘発され、dsDNA変異体を生成し、次いで、これはssDNA変異体に変換され、ssDNA媒介体にハイブリダイズされ、ヘテロ二本鎖を形成する。免疫グロブリン軽鎖ssDNA変異体は、第一のssDNA媒介体にハイブリダイズされ、一方、免疫グロブリン重鎖ssDNA変異体は、第二の別のssDNA媒介体にハイブリダイズされる。ハイブリダイズされたssDNA変異体は、ssDNA媒介体を鋳型分子として用いてDNA伸長をプライムする。伸長反応は、リガーゼを含む。その後、ssDNA媒介体は、細菌への形質転換の前又は後のいずれかに分解される。いずれかの又は全てのステップは、単一の反応プールにおいて生じてもよく、又は、例えば免疫グロブリン軽鎖変異体について少なくとも1つ及び免疫グロブリン重鎖変異体についてもう1つを含む、2つ以上の別の反応プールにおいて生じてもよい。細菌の単一プールは、生成された免疫グロブリン軽鎖ベクター及び生成された免疫グロブリン重鎖ベクターで形質転換される。形質転換された細胞のサブセットは、1つ以上の免疫グロブリン軽鎖ベクター及び1つ以上の免疫グロブリン重鎖ベクターの両方で形質転換される。そのような場合、重鎖変異体及び軽鎖変異体は共発現され、発現された重鎖タンパク質及び発現された軽鎖タンパク質が免疫グロブリン複合体、すなわち抗体を形成することを可能にし得る。重鎖変異体及び軽鎖変異体の発現は、ベクターが最初に形質転換される細菌細胞種において生じてもよく、又はベクター若しくはそれに由来するベクターが次に移行される異なる細胞種において生じてもよい。
【0125】
[実施例11]
単一のベクター上の免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の突然変異誘発
本発明の一例では、第一の目的配列は、免疫グロブリン重鎖をコードし、第二の目的配列は、免疫グロブリン軽鎖をコードする。免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖配列は、単一ベクターにクローニングされる。それぞれは、本発明の方法にしたがって突然変異誘発され、dsDNA変異体を生成し、次いで、これはssDNA変異体に変換され、ssDNA媒介体にハイブリダイズされ、ヘテロ二本鎖を形成し、ここで、それぞれのssDNA媒介体は、免疫グロブリン重鎖ssDNA変異体にハイブリダイズすることができる少なくとも1つの位置、及び免疫グロブリン軽鎖ssDNA変異体にハイブリダイズすることができる別の位置を有する。ハイブリダイズされたssDNA変異体は、ssDNA媒介体を鋳型分子として用いてDNA伸長をプライムする。伸長反応は、リガーゼを含む。その後、ssDNA媒介体は、細菌への形質転換の前又は後のいずれかに分解される。本発明の方法によって単一ベクターにクローニングされた重鎖変異体及び軽鎖変異体は、共発現され、発現された重鎖タンパク質及び発現された軽鎖タンパク質が免疫グロブリン複合体、すなわち抗体を形成することを可能にし得る。重鎖変異体及び軽鎖変異体の発現は、ベクターが最初に形質転換される細菌細胞種において生じてもよく、又はベクター若しくはそれに由来するベクターが次に移行される異なる細胞種において生じてもよい。
【0126】
[実施例12]
回復されたベクターについて選択するためのEco29kI制限部位の使用
本発明のいくつかの場合において、複数の異なるポリヌクレオチドセグメントに対応するssDNA変異体を、単一の回復されたベクターに組み込むことが望ましい。この実施例では、本発明の方法は、単一構築物において、単鎖抗体の6個の相補性決定領域のそれぞれを、それにハイブリダイズすることができるssDNA変異体の配列に置き換えるために使用される。単鎖抗体は、軽鎖可変ドメイン(VL)相補性決定領域(CDR)1(合わせてVL-CDR1)、VL-CDR2、VL-CDR3、リンカー、重鎖可変ドメイン(VH)CDR1(合わせてVH-CDR1)、VH-CDR2、及びVH-CDR3を含む。任意の2つの隣接するCDR間の距離は、例えば30〜40塩基対であってよい。
【0127】
CDRのそれぞれにハイブリダイズすることができるssDNA変異体は、CDRのそれぞれに対応する鋳型配列に基づいて作製される。鋳型配列は、SacII制限部位又はopal終止コドンを含まない(図4)。ssDNA変異体は、CDR ssDNA変異体がハイブリダイズすることができる配列を有するが、対応するssDNA変異体がハイブリダイズすることができる各CDRのセグメント内にSacII制限部位及びopal終止コドンをさらに含む、ウラシル化ssDNA媒介体にハイブリダイズする(図4)。ssDNA変異体は、ssDNA媒介体にハイブリダイズされ、次いで、細菌に移行され、そこでミスマッチヌクレオチドは回復される。これらの細菌は、完全なSacII制限部位を含むベクターを分解することができるEco29kI制限酵素を発現する。したがって、媒介体鎖の6個のCDRの任意の1つがssDNA変異体にハイブリダイズしない場合、又は6個のCDRの任意の1つが、対応するssDNA変異体にハイブリダイズするが、ハイブリダイズされたssDNA変異体よりもssDNA媒介体鎖を優先してSacII制限部位において回復しない場合、得られるベクターは、1つ以上のSacII制限部位を含む。そのようなベクターはEco29kIを発現する細菌中で分解される。6個のCDRのそれぞれにおいてssDNA変異体を優先して回復されないベクターを除去することによって、全ての6個のCDRにおいて改変された構築物を同定する効率が増加する。同様に、いずれかのopal突然変異の存在は、回復されたベクターにコードされる単鎖抗体又はその変異体の発現を破壊する。
【0128】
[実施例14]
組み換え体のパーセンテージを改善するためのEco29kI制限の使用
本明細書に記載されるEco29kI制限方法を用いた場合に組み換え体が同定される頻度の増加を実証するために、いくつかの条件を試験した。第一の条件では、ssDNA変異体を、scFv鋳型(scFv1又はscFv2)から作製した。ssDNA変異体は、SacII制限部位を含まない。ssDNA変異体は、ssDNA変異体がハイブリダイズすることができるssDNA媒介体のセグメント内にSacII制限部位を含むssDNA媒介体にハイブリダイズされた。Eco29kIを発現するTG1細胞への形質転換は、ミスマッチヌクレオチドの回復、及びSacII制限部位を含むベクターの分解をもたらす。第二の条件では、scFv2鋳型を使用して、ssDNA変異体を作製し、ssDNA変異体は、SacII制限部位を含まないssDNA媒介体にハイブリダイズされた。この第二の条件では、Eco29kIを発現するTG1細胞への形質転換は、SacII 制限部位を含むベクターの分解をもたらさない。SacII制限部位を含むベクターの分解は、組み換えを完了しなかったベクターを選択的に分解するため、組み換え体のパーセンテージは増加する。この効果は、SacIIでのin vitro処理有り又は無しで、Eco29kIを発現しない細胞(TG1細胞)において比較される。
【0129】
以下の結果は、Eco29kIを発現するTG1細胞における非組み換えベクターの制限が、Eco29kIを発現しないTG1細胞で観察されるより、組み換え体の高いパーセンテージをもたらすことを示す。
【0130】
【表4】
【0131】
他の実施形態
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び特許は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0132】
具体的な実施形態に関連して発明を記載したが、さらなる改変が可能であることが理解される。したがって、本明細書は、当分野内の公知の又は慣習的な実施の範囲にある本開示からの発展を含めて、概して本発明の原理に従う本発明の任意の変形、使用、又は応用をカバーすることが意図される。
本発明はまた、以下に関する。
[項目1]
目的配列の変異体のライブラリーを作製する方法であって、以下:
(a)前記目的配列を含む鋳型DNA分子を提供するステップ;
(b)オリゴヌクレオチドのペアを提供するステップであって、前記オリゴヌクレオチドは前記目的配列の逆鎖にハイブリダイズし、前記オリゴヌクレオチドの一方は保護され、他方のオリゴヌクレオチドは保護されず、かつ、前記オリゴヌクレオチドは前記目的配列に隣接する、ステップ;
(c)前記オリゴヌクレオチドを用いて、前記鋳型DNA分子に対して増幅反応を実施し、それによってdsDNA変異体の集団を作製するステップ;
(d)dsDNA変異体の前記集団を、前記dsDNA変異体の保護されない鎖を保護された鎖より優先して選択的に分解することができる酵素とインキュベートし、それによってssDNA変異体の集団を作製するステップ;
(e)ssDNA変異体の前記集団をssDNA媒介体にハイブリダイズさせ、ヘテロ二本鎖DNAを作製するステップであって、前記ssDNA媒介体は、前記目的配列又はその断片と実質的に同一の配列を含む、ステップ; 及び
(f)前記ヘテロ二本鎖DNAを細胞に形質転換し、それによって前記目的配列の変異体のライブラリーを作製するステップ
を含む、方法。
[項目2]
前記鋳型DNA分子が、直鎖状dsDNA分子である、項目1に記載の方法。
[項目3]
前記鋳型DNA分子が、環状dsDNA分子である、項目1に記載の方法。
[項目4]
前記鋳型DNA分子が、環状ssDNA分子である、項目1に記載の方法。
[項目5]
前記鋳型DNA分子が、ウラシル化又はメチル化環状ssDNA分子である、項目4に記載の方法。
[項目6]
前記鋳型DNA分子の配列が、前記ssDNA媒介体の配列と実質的に同一である、項目1〜5のいずれか一項に記載の方法。
[項目7]
前記目的配列が、100塩基対を超える、項目1〜6のいずれか一項に記載の方法。
[項目8]
前記目的配列が、300塩基対を超えるか、500塩基対を超えるか、又は700塩基対を超える、項目7に記載の方法。
[項目9]
前記目的配列が、100〜2000塩基対である、項目7に記載の方法。
[項目10]
前記目的配列が、300〜1500塩基対である、項目9に記載の方法。
[項目11]
前記目的配列が、700〜1200塩基対である、項目10に記載の方法。
[項目12]
前記保護されたオリゴヌクレオチドが、3個以上の5'ホスホロチオエートを含むオリゴヌクレオチドであり、かつ、前記保護されないオリゴヌクレオチドが、3個以上の5'ホスホロチオエートを含まないオリゴヌクレオチドである、項目1〜11のいずれか一項に記載の方法。
[項目13]
前記保護されたオリゴヌクレオチドが、3、4、又は5個の5'ホスホロチオエートを含む、項目12に記載の方法。
[項目14]
保護されない鎖を保護された鎖より優先して選択的に分解することができる前記酵素が、T7エキソヌクレアーゼである、項目12又は13に記載の方法。
[項目15]
保護されない鎖を保護された鎖より優先して選択的に分解することができる前記酵素が、ラムダエキソヌクレアーゼである、項目12又は13に記載の方法。
[項目16]
前記保護されたオリゴヌクレオチドが、5'ホスフェートを含むオリゴヌクレオチドであり、かつ、前記保護されないオリゴヌクレオチドが、5'ホスフェートを含まないオリゴヌクレオチドである、項目1〜11のいずれか一項に記載の方法。
[項目17]
保護されない鎖を保護された鎖より優先して選択的に分解することができる前記酵素が、ラムダエキソヌクレアーゼである、項目16に記載の方法。
[項目18]
前記増幅反応が、PCR反応である、項目1〜17のいずれか一項に記載の方法。
[項目19]
前記増幅反応が、エラープローンPCR反応である、項目18に記載の方法。
[項目20]
前記増幅反応が、等温増幅反応である、項目1〜17のいずれか一項に記載の方法。
[項目21]
前記増幅反応が、ローリングサークル増幅反応である、項目1〜17のいずれか一項に記載の方法。
[項目22]
dsDNA変異体の前記集団のdsDNA変異体の50%が、前記目的配列と99.5%未満の同一性を有する、項目1〜21のいずれか一項に記載の方法。
[項目23]
dsDNA変異体の前記集団のdsDNA変異体の50%が、前記目的配列と98%未満の同一性を有する、項目22に記載の方法。
[項目24]
保護されない鎖を保護された鎖より優先して選択的に分解することができる前記酵素とのインキュベーションの前に、dsDNA変異体の前記集団を精製するステップをさらに含む、項目1〜23のいずれか一項に記載の方法。
[項目25]
前記ssDNA媒介体へのハイブリダイゼーションの前に、ssDNA変異体の前記集団を精製するステップをさらに含む、項目1〜24のいずれか一項に記載の方法。
[項目26]
前記ssDNA媒介体が、前記目的配列又はその断片と少なくとも50%の同一性を有する配列を含む、項目1〜25のいずれか一項に記載の方法。
[項目27]
前記ssDNA媒介体が、前記目的配列又はその断片と少なくとも70%の同一性を有する配列を含む、項目26に記載の方法。
[項目28]
前記ssDNA媒介体が、前記目的配列又はその断片と少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、項目27に記載の方法。
[項目29]
前記ssDNA媒介体が、前記目的配列又はその断片と100%の同一性を有する配列を含む、項目28に記載の方法。
[項目30]
前記ssDNA媒介体が、ファージミド、又はファージミドの配列と実質的に同一である配列断片を含むベクターである、項目1〜29のいずれか一項に記載の方法。
[項目31]
ssDNA変異体の前記集団の、前記ssDNA媒介体への前記ハイブリダイゼーションが、ssDNA変異体の前記集団及び前記ssDNA媒介体の変性温度での共インキュベーションと、その後の、アニーリング温度までの徐冷却を含む、項目1〜30のいずれか一項に記載の方法。
[項目32]
前記変性温度が約90℃である、項目31に記載の方法。
[項目33]
前記アニーリング温度が約55℃である、項目31又は32に記載の方法。
[項目34]
前記徐冷却が、1分あたり約-1℃の速度で生じる、項目31〜33のいずれか一項に記載の方法。
[項目35]
前記細胞が、真核細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞又は細菌細胞である、項目1〜34のいずれか一項に記載の方法。
[項目36]
前記ssDNA媒介体が、修飾核酸塩基、又はアデニン、グアニン、シトシン及びチミン以外の核酸塩基を含む、項目1〜35のいずれか一項に記載の方法。
[項目37]
前記細胞が、前記ssDNA媒介体を選択的に分解することができる細胞である、項目1〜36のいずれか一項に記載の方法。
[項目38]
前記ssDNA媒介体が、ウラシル化ssDNA媒介体である、項目1〜37のいずれか一項に記載の方法。
[項目39]
前記ssDNA媒介体が、メチル化ssDNA媒介体である、項目1〜37のいずれか一項に記載の方法。
[項目40]
前記ssDNA媒介体を選択的に分解することができる前記細胞が、Ung+細菌細胞である、項目38に記載の方法。
[項目41]
前記細胞が、TG1大腸菌(E. coli)細胞である、項目40に記載の方法。
[項目42]
前記ssDNA媒介体を選択的に分解することができる前記細胞が、Mcr+細菌細胞である、項目39に記載の方法。
[項目43]
ステップ(e)が、前記ヘテロ二本鎖DNAのDNAポリメラーゼとのインキュベーションによって、前記ssDNA媒介体にハイブリダイズされた前記ssDNA変異体を伸長することをさらに含む、項目1〜42のいずれか一項に記載の方法。
[項目44]
前記ヘテロ二本鎖DNAのDNAポリメラーゼとの前記インキュベーションが、前記ヘテロ二本鎖DNAのDNAポリメラーゼ及びDNAリガーゼとのインキュベーションを含む、項目43に記載の方法。
[項目45]
前記ssDNA媒介体がメチル化ssDNA媒介体であり、かつ、ステップ(e)が、前記ヘテロ二本鎖DNAを変性するステップ、及び変性した生成物を、メチル化DNAを選択的に分解する酵素とインキュベートするステップをさらに含む、項目43又は44に記載の方法。
[項目46]
前記メチル化ssDNA媒介体が、メチル化アデニン核酸塩基を含み、かつ、メチル化DNAを選択的に分解する前記酵素が、DpnIである、項目45に記載の方法。
[項目47]
前記ssDNA変異体がメチル化され、前記ssDNA媒介体がメチル化されず、かつ、ステップ(e)が、前記ヘテロ二本鎖DNAを変性するステップ、及び変性した生成物を、非メチル化DNAを選択的に分解する酵素とインキュベートするステップをさらに含む、項目43又は44に記載の方法。
[項目48]
前記メチル化ssDNA変異体が、メチル化されたシトシン又はグアニン核酸塩基を含み、かつ、非メチル化DNAを選択的に分解する前記酵素が、DNA配列5'-GATC-3'を認識する制限酵素である、項目47に記載の方法。
[項目49]
前記細胞への形質転換の前に、前記ヘテロ二本鎖DNAを精製するステップをさらに含む、項目1〜48のいずれか一項に記載の方法。
[項目50]
前記ヘテロ二本鎖DNAの前記細胞への前記形質転換が、前記細胞の2個以上、10個以上、20個以上、又は50個以上のアリコートの独立した形質転換を含む、項目1〜49のいずれか一項に記載の方法。
[項目51]
前記目的配列が、抗体又はそのドメイン若しくは断片をコードする、項目1〜50のいずれか一項に記載の方法。
[項目52]
前記目的配列が、ポリメラーゼ又はそのドメイン若しくは断片をコードする、項目1〜50のいずれか一項に記載の方法。
[項目53]
前記目的配列が、酵素又はそのドメイン若しくは断片をコードする、項目1〜50のいずれか一項に記載の方法。
[項目54]
ステップ1(a)〜1(d)が、ssDNA変異体の2種以上の集団を作製するために、2種以上の異なる目的配列のそれぞれから並行して実施され、ここで、前記オリゴヌクレオチド、前記増幅反応、及び前記酵素は、前記2種以上の異なる目的配列のそれぞれに対するステップ1(a)〜1(d)のいずれか又は全ての適用において異なってよく、かつ、ssDNA変異体の前記集団は、ステップ1(e)の前又は最中に混合される、項目1〜53のいずれか一項に記載の方法。
[項目55]
前記2種以上の異なる目的配列の少なくとも2つが、単一の鋳型DNA分子から増幅される、項目54に記載の方法。
[項目56]
前記2種以上の異なる目的配列の全てが、単一の鋳型DNA分子から増幅される、項目55に記載の方法。
[項目57]
前記2種以上の異なる目的配列の少なくとも2つが、異なる鋳型DNA分子から増幅される、項目54に記載の方法。
[項目58]
前記2種以上の異なる目的配列のそれぞれが、異なる鋳型DNA分子から増幅される、項目57に記載の方法。
[項目59]
並行して実施される前記ステップの1つ以上が、前記2種以上の異なる目的配列の少なくとも2つについて単一の反応において実施される、項目54〜58のいずれか一項に記載の方法。
[項目60]
並行して実施される前記ステップの1つ以上が、前記2種以上の異なる目的配列の全てについて単一の反応において実施される、項目59に記載の方法。
[項目61]
並行して実施される前記ステップの1つ以上が、前記2種以上の異なる目的配列の少なくとも2つについて別々に実施される、項目54〜58のいずれか一項に記載の方法。
[項目62]
並行して実施される前記ステップの1つ以上が、前記2種以上の異なる目的配列のそれぞれについて別々に実施される、項目61に記載の方法。
[項目63]
前記ssDNA媒介体が、前記2種以上の異なる目的配列のそれぞれ、又はその断片、と実質的に同一の配列を含み、かつ、ステップ1(e)が、ssDNA変異体の前記2種以上の集団のそれぞれの、前記ssDNA媒介体へのハイブリダイゼーションを包含する、項目54〜62のいずれか一項に記載の方法。
[項目64]
ssDNA変異体の前記2種以上の集団が、前記ssDNA媒介体に同時にハイブリダイズされる、項目63に記載の方法。
[項目65]
ssDNA変異体の前記2種以上の集団が、前記ssDNA媒介体に連続的にハイブリダイズされる、項目63に記載の方法。
[項目66]
エラープローンPCRによってdsDNA変異体の集団を作製する方法であって、以下:
(a)前記目的配列を含む鋳型DNA分子を提供するステップ;
(b)オリゴヌクレオチドのペアを提供するステップであって、前記オリゴヌクレオチドは前記目的配列の逆鎖にハイブリダイズし、前記オリゴヌクレオチドの一方は3個以上の5'ホスホロチオエートを含み、他方のオリゴヌクレオチドは3個以上の5'ホスホロチオエートを含まず、かつ、前記オリゴヌクレオチドは前記目的配列に隣接する、ステップ; 及び (c)前記オリゴヌクレオチドを用いて、前記鋳型DNA分子に対してエラープローンPCRを実施し、それによってdsDNA変異体の集団を作製するステップ
を含む、方法。
[項目67]
エラープローンPCRによってssDNA変異体の集団を作製する方法であって、以下:
(a)前記目的配列を含む鋳型DNA分子を提供するステップ;
(b)オリゴヌクレオチドのペアを提供するステップであって、前記オリゴヌクレオチドは前記目的配列の逆鎖にハイブリダイズし、前記オリゴヌクレオチドの一方は3個以上の5'ホスホロチオエートを含み、他方のオリゴヌクレオチドは3個以上の5'ホスホロチオエートを含まず、かつ、前記オリゴヌクレオチドは前記目的配列に隣接する、ステップ;
(c)前記オリゴヌクレオチドを用いて、前記鋳型DNA分子に対してエラープローンPCRを実施し、それによってdsDNA変異体の集団を作製するステップ; 及び
(d)dsDNA変異体の前記集団を、前記dsDNA変異体の非ホスホロチオエート鎖を加水分解することができるが、ホスホロチオエート鎖を加水分解することができない酵素とインキュベートし、それによってssDNA変異体の集団を作製するステップ
を含む、方法。
[項目68]
PCRによってdsDNA分子の集団を作製する方法であって、以下:
(a)前記目的配列を含む鋳型DNA分子を提供するステップ;
(b)オリゴヌクレオチドのペアを提供するステップであって、前記オリゴヌクレオチドは前記目的配列の逆鎖にハイブリダイズし、前記オリゴヌクレオチドの一方は3個以上の5'ホスホロチオエートを含み、他方のオリゴヌクレオチドは3個以上の5'ホスホロチオエートを含まず、かつ、前記オリゴヌクレオチドは前記目的配列に隣接する、ステップ; 及び (c)前記オリゴヌクレオチドを用いて、前記鋳型DNA分子に対してPCRを実施し、それによってdsDNA分子の集団を作製するステップ
を含む、方法。
[項目69]
PCRによってssDNA分子の集団を作製する方法であって、以下:
(a)前記目的配列を含む鋳型DNA分子を提供するステップ;
(b)オリゴヌクレオチドのペアを提供するステップであって、前記オリゴヌクレオチドは前記目的配列の逆鎖にハイブリダイズし、前記オリゴヌクレオチドの一方は3個以上の5'ホスホロチオエートを含み、他方のオリゴヌクレオチドは3個以上の5'ホスホロチオエートを含まず、かつ、前記オリゴヌクレオチドは前記目的配列に隣接する、ステップ;
(c)前記オリゴヌクレオチドを用いて、前記鋳型DNA分子に対してPCRを実施し、それによってdsDNA分子の集団を作製するステップ; 及び
(d)dsDNA分子の前記集団を、前記dsDNA分子の非ホスホロチオエート鎖を加水分解することができるが、ホスホロチオエート鎖を加水分解することができない酵素とインキュベートし、それによってssDNA分子の集団を作製するステップ
を含む、方法。
[項目70]
ファージディスプレイの方法であって、以下:
(a)項目1〜65のいずれか一項に記載の変異体のライブラリーを提供するステップ; (b)変異体の前記ライブラリーの1つ以上のアリコートを培養して、変異体の培養ライブラリーを作製するステップ;
(c)変異体の前記培養ライブラリーの1つ以上のアリコートを、ヘルパーファージとインキュベートし、ファージディスプレイライブラリーを作製するステップであって、前記ファージディスプレイライブラリーの細胞が、前記目的配列によってコードされるタンパク質の変異体を提示する、ステップ;
(d)前記ファージディスプレイライブラリーの前記細胞を、標的分子と接触させるステップであって、前記目的配列によってコードされるタンパク質の前記変異体の1つ以上が、前記標的分子と相互作用し得る、ステップ; 及び
(e)前記ファージディスプレイライブラリーの前記細胞の中から、前記標的分子と相互作用する変異体タンパク質を提示する細胞を単離するステップ
を含む、方法。
[項目71]
非組み換え核酸を選択的に分解する方法であって、以下:
(a)制限部位を有する少なくとも1つのセグメントを含む第一の核酸を提供するステップ;
(b)前記制限部位を含まない少なくとも1つのセグメントを含む第二の核酸を提供するステップ;
(c)前記第一の核酸及び前記第二の核酸を、前記第一の核酸の前記セグメントが前記第二の核酸の前記セグメントに置き換えられるように前記第一の核酸及び前記第二の核酸を組み換えるための反応に供し、それによって前記制限部位を含まない組み換え生成物を作製するステップ;
(d)前記反応の生成物を、前記制限部位を切断することができる制限酵素を発現する細胞に形質転換するステップ; 及び
(e)前記細胞を、前記細胞によって発現される前記制限酵素による切断を可能にするのに十分な様式でインキュベートするステップ
を含む、方法。
[項目72]
前記細胞が、前記制限酵素によって切断される制限部位を含まない組み換え生成物を含むかどうかを決定するステップをさらに含む、項目71に記載の方法。
[項目73]
前記細胞から前記組み換え生成物を単離するステップをさらに含む、項目71に記載の方法。
[項目74]
前記制限酵素がEco29kIである、項目71〜73のいずれか一項に記載の方法。
[項目75]
前記組み換え生成物が、免疫グロブリン軽鎖及び免疫グロブリン重鎖をコードし、前記免疫グロブリン軽鎖及び前記免疫グロブリン重鎖の1つ以上が、前記第一の核酸の少なくとも一部及び前記第二の核酸の少なくとも一部によってコードされる、項目71〜74のいずれか一項に記載の方法。
[項目76]
突然変異されていない核酸を選択的に分解する方法であって、以下:
(a)制限部位を有する少なくとも1つのセグメントを含む第一の核酸を提供するステップ;
(b)前記制限部位を含まず、かつ前記制限部位を有する前記第一の核酸の少なくともセグメントにハイブリダイズすることができる、少なくとも1つのセグメントを有する、第二の核酸を提供するステップ;
(c)前記第二の核酸を前記第一の核酸にハイブリダイズさせ、ヘテロ二本鎖DNAを作製するステップ;
(d)前記ヘテロ二本鎖DNAを回復させ、それによって前記制限部位を含まない生成物を作製するステップ;
(e)前記反応の生成物を、前記制限部位を切断することができる制限酵素を発現する細胞に形質転換するステップ; 及び
(f)前記細胞を、前記細胞によって発現される前記制限酵素による切断を可能にするのに十分な様式でインキュベートするステップ
を含む、方法。
[項目77]
前記細胞が、前記制限酵素によって切断される制限部位を含まない生成物を含むかどうかを決定するステップをさらに含む、項目76に記載の方法。
[項目78]
前記細胞から前記生成物を単離するステップをさらに含む、項目76に記載の方法。
[項目79]
前記制限酵素がEco29kIである、項目76〜78のいずれか一項に記載の方法。
[項目80]
前記生成物が、免疫グロブリン軽鎖及び免疫グロブリン重鎖をコードし、前記免疫グロブリン軽鎖及び前記免疫グロブリン重鎖の1つ以上が、前記第二の核酸の少なくとも一部又はその配列によってコードされる、項目76〜79のいずれか一項に記載の方法。
[項目81]
前記第一の核酸がssDNA媒介体であり、前記第二の核酸がssDNA変異体である、項目76〜80のいずれか一項に記載の方法。
[項目82]
突然変異されたオープンリーディングフレームからタンパク質を選択的に発現する方法であって、以下:
(a)1つ以上の終止コドンを、もしそれがなければ発現可能なオープンリーディングフレームの少なくとも1つのセグメント中に含む第一の核酸を提供するステップ;
(b)終止コドンを含まない少なくとも1つのセグメントを含む第二の核酸を提供するステップ;
(c)前記第一の核酸及び前記第二の核酸を、前記第一の核酸の前記セグメントが前記第二の核酸の前記セグメントに置き換えられるように前記第一の核酸及び前記第二の核酸を組み換えるための反応に供し、それによって前記オープンリーディングフレーム中に終止コドンを含まない組み換え生成物を作製するステップ;
(d)前記反応の生成物を細胞に形質転換するステップ; 及び
(e)前記細胞を、前記オープンリーディングフレームの発現を可能にするのに十分な期間インキュベートするステップ
を含む、方法。
[項目83]
前記細胞が、前記第一の核酸の一部の配列及び前記第二の核酸の少なくとも一部の配列を含むオープンリーディングフレームから発現されるタンパク質又はその一部を含むかどうかを決定するステップをさらに含む、項目82に記載の方法。
[項目84]
前記第一の核酸の一部の配列及び前記第二の核酸の少なくとも一部の配列を含むオープンリーディングフレームから発現されるタンパク質又はその断片を前記細胞から単離するステップをさらに含む、項目82に記載の方法。
[項目85]
前記組み換え生成物が、免疫グロブリン軽鎖及び免疫グロブリン重鎖をコードし、前記免疫グロブリン軽鎖及び前記免疫グロブリン重鎖の1つ以上が、前記第一の核酸の少なくとも一部及び前記第二の核酸の少なくとも一部によってコードされる、項目82〜84のいずれか一項に記載の方法。
[項目86]
前記組換え反応が、第一の核酸がssDNA媒介体であり、第二の核酸がssDNA変異体である、突然変異誘発反応である、項目82〜85のいずれか一項の記載の方法。
[項目87]
突然変異されたオープンリーディングフレームからタンパク質を選択的に発現する方法であって、以下:
(a)1つ以上の終止コドンを、もしそれがなければ発現可能なオープンリーディングフレームの少なくとも1つのセグメント中に含む第一の核酸を提供するステップ;
(b)終止コドンを含まず、かつ前記終止コドンの1つ以上を有する前記第一の核酸の少なくともセグメントにハイブリダイズすることができる、少なくとも1つのセグメントを含む、第二の核酸を提供するステップ;
(c)前記第二の核酸を前記第一の核酸にハイブリダイズさせ、ヘテロ二本鎖DNAを作製するステップ;
(d)前記ヘテロ二本鎖DNAを回復させ、それによって前記オープンリーディングフレーム中に終止コドンを含まない生成物を作製するステップ;
(e)前記反応の生成物を細胞に形質転換するステップ; 及び
(f)前記細胞を、前記オープンリーディングフレームの発現を可能にするのに十分な期間インキュベートするステップ
を含む、方法。
[項目88]
前記細胞が、前記第一の核酸の一部の配列及び前記第二の核酸の少なくとも一部の配列を含むオープンリーディングフレームから発現されるタンパク質又はその一部を含むかどうかを決定するステップをさらに含む、項目87に記載の方法。
[項目89]
前記第一の核酸の一部の配列及び前記第二の核酸の少なくとも一部の配列を含むオープンリーディングフレームから発現されるタンパク質又はその断片を前記細胞から単離するステップをさらに含む、項目87に記載の方法。
[項目90]
前記生成物が、免疫グロブリン軽鎖及び免疫グロブリン重鎖をコードし、前記免疫グロブリン軽鎖及び前記免疫グロブリン重鎖の1つ以上が、前記第二の核酸の少なくとも一部又はその配列によってコードされる、項目87〜89のいずれか一項に記載の方法。
[項目91]
前記組換え反応が、第一の核酸がssDNA媒介体であり、第二の核酸がssDNA変異体である、突然変異誘発反応である、項目87〜90のいずれか一項に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]