【実施例1】
【0015】
(実施例1の構成)
図1Aは、本発明の実施例1における電源システムの概略の構成を示す回路図である。
【0016】
電源システムは、直流電源装置1を備え、この出力側に、正極側電源線2a及び負極側電源線2bを介して、負荷3の装置や機器等が接続されている。直流電源装置1は、例えば、商用電源の交流電力を直流電力に変換し、この出力電圧Voutを電源線2a,2bを介して負荷3へ供給する装置であり、スイッチング電源装置等により構成されている。正極側電源線2aには、切替回路10が分岐接続されている。この切替回路10には、複数系統(例えば、2系統)の第1直流電源としての1系直流電源21と、第2直流電源としての2系直流電源22と、が並列に分岐接続されている。
【0017】
切替回路10は、第1切替信号S1及び第2切替信号S2に基づき、直流電源装置1から出力される直流電力と、1系直流電源21の正極側電源端子21aから出力される第1直流電力又は2系直流電源22の正極側電源端子22aから出力される第2直流電力と、を切り替えて負荷3へ供給する回路である。切替回路10は、直流電源装置1が動作している通常時には、この直流電源装置1から出力される直流電力を負荷3へ供給し、直流電源装置1が停止する異常時には、1系直流電源21の正極側電源端子21aから出力される第1直流電力又は2系直流電源22の正極側電源端子22aから出力される第2直流電力を負荷3へ供給する機能を有している。
【0018】
切替回路10は、正極側電源線2aに接続された共通端子11を有し、この共通端子11と1系直流電源21の正極側電源端子21aとの間に、第1スイッチ12−1が接続され、更に、その共通端子11と2系直流電源22の正極側電源端子22aとの間にも、第2スイッチ12−2が接続されている。第1スイッチ12−1には、これと並列に整流手段が接続されている。
【0019】
第1スイッチ12−1は、第1切替信号S1に基づき、共通端子11と電源端子21aとの間をオン/オフするものである。第2スイッチ12−2は、第2切替信号S2に基づき、共通端子11と電源端子22aとの間をオン/オフするものである。第1、第2スイッチ12−1,12−2は、機械接点式スイッチや、半導体スイッチング素子等により構成されている。
【0020】
前記整流手段は、電源端子21aから共通端子11へ一方向に電流を流すものであり、例えば、ダイオード13−1により構成されている。ダイオード13−1は、この出力端子としてのカソードが共通端子11に接続され、入力端子としてのアノードが電源端子21aに接続され、順方向の電圧降下値Vfを有している。
【0021】
1系直流電源21は、正極側電源端子21aと、負極側電源線2bに接続された負極側電源端子21bと、を有し、その電源端子21a,21b間に、複数(N)の蓄電池21−1〜21−Nが並列に接続されている。同様に、2系直流電源22は、正極側電源端子22aと、負極側電源線2bに接続された負極側電源端子22bと、を有し、その電源端子22a,22b間に、複数(N)の蓄電池22−1〜22−Nが並列に接続されている。
【0022】
共通端子11には電流計測部30が接続され、更に、電源端子21aには電圧計測部31が、電源端子22aには電圧計測部32が、それぞれ接続されている。電流計測部30は、共通端子11を流れる直流の電池電流Ibを計測するものであり、シャント抵抗や変流器(CT)等により構成されている。電圧計測部31は、電源端子21a上の電池電圧Vb1を計測するものである。同様に、電圧計測部32は、電源端子22a上の電池電圧Vb2を計測するものである。電圧計測部31,32は、分圧抵抗等によってそれぞれ構成されている。これらの電流計測部30及び電圧計測部31,32には、監視制御部40が接続されている。
【0023】
監視制御部40は、第1、第2スイッチ12−1,12−2のオン/オフを制御するものであり、電流監視部41、電圧監視部42、演算部43、及び制御部としてのスイッチ制御部44を有し、例えば、中央処理装置(CPU)を有するプロセッサ等により構成されている。
【0024】
電流監視部41は、電流計測部30によって計測された電池電流Ibを監視する機能を有している。電圧監視部42は、電圧計測部31,32によってそれぞれ計測された電池電圧Vb1,Vb2を監視する機能を有している。演算部43は、電池放電電圧の最低規定電圧Vbminや電池最大放電電力量Wbmax等を記憶し、電流監視部41及び電圧監視部42の監視結果に基づき、1系、2系充放電電力Pb1,Pb2、及び1系、2系充放電電力量Wb1,Wb2を算出し、更に、算出した1系、2系充放電電力量Wb1,Wb2と電池最大放電電力量Wbmax等との大小を比較する演算・比較機能を有している。スイッチ制御部44は、演算部43の演算・比較結果に基づき、第1、第2スイッチ12−1,12−2をオン/オフ動作させるための第1、第2切替信号S1,S2を生成して所定のタイミングで出力する機能を有している。
【0025】
(実施例1の動作)
図1Bは、
図1A中の第1、第2スイッチ12−1,12−2がオフの場合を示す回路図である。
図1Cは、
図1A中の第1スイッチ12−1がオフ、第2スイッチ12−2がオンの場合を示す回路図である。
【0026】
更に、
図2は、
図1A〜
図1Cにおけるスイッチ切り替え動作時の出力電圧推移を示す波形図である。
図2の横軸は時刻(t)、縦軸は電源線2a,2bの出力電圧Vout、電池電圧Vb1,Vb2、及びスイッチ12−1,12−2のオン/オフ状態である。Vfはダイオード13−1の順方向の電圧降下値、Vbminは電池放電電圧の最低規定電圧である。
【0027】
以下、1系放電開始から2系切り替え放電までの動作(I)と、2系充電開始から1系切り替え充電までの動作(II)と、を説明する。
【0028】
(I) 1系放電開始から2系切り替え放電までの動作
図3Aは、
図1A〜
図1Cにおける1系放電開始から2系切り替え放電までの制御処理を示すフローチャートである。
【0029】
図3Aのフローチャートでは、
図2の1系放電期間H1の処理(ステップST1〜ST7)と、
図2のスイッチ切替期間H2の処理(ステップST8,ST9)と、
図2の2系放電期間H3の処理(ステップST10〜ST15)と、が以下のように行われる。
【0030】
図1Aの電源システムにおいて、商用電源の停電等によって直流電源装置1の出力が停止すると、
図2中の時刻t0において、
図1Aに示すように、スイッチ制御部44の第1切替信号S1によって第1スイッチ12−1がオン、第2切替信号S2によって第2スイッチ12−2がオフとなっているため、
図3AのステップST1で、1系直流電源21の放電が開始される。1系直流電源21が放電すると、この放電電力が、次の経路にて負荷3へ供給される。
【0031】
「1系直流電源21の正極側電源端子21a→第1スイッチ12−1→共通端子11→正極側電源線2a→負荷3→負極側電源線2b→1系直流電源21の負極側電源端子21b」
【0032】
1系直流電源21の放電により、
図2に示すように、電池電圧Vb1(=出力電圧Vout)が低下していく。
【0033】
次のステップST2において、演算部43に、電池最大放電電力量Wbmaxが設定され、ステップST3,ST4へ進む。ステップST3において、電圧計測部31により、所定のサンプリング時刻t毎に、電極端子21a上の電池電圧Vb1が計測されると共に、ステップST4において、電流計測部30により、所定のサンプリング時刻t毎に、放電された共通端子11上の電池電流+Ibが計測され、これらの電池電圧Vb1及び電池電流+Ibの計測結果が、電圧監視部42及び電流監視部41へそれぞれ送られ、ステップST5へ進む。
【0034】
ステップST5において、演算部43は、電流監視部41及び電圧監視部42の監視結果に基づき、1系放電電力Pb1を次式から算出し、ステップST6へ進む。
Pb1=Vb1*Ib
【0035】
ステップST6において、演算部45は、現在の計測時の1系放電電力量Wb1(n)を次式から算出し、ステップST7へ進む。
Wb1(n)=Wb1(n−1)+Pb1(n)*t
但し、Pb1(n);現在のサンプリング時刻tの1系放電電力
Wb1(n−1);1サンプリング時刻前の1系放電電力量
【0036】
ステップST7において、演算部43は、現在の1系放電電力量Wb1(n)が電池最大放電電力量Wbmaxよりも大きいか否かを判定する。1系放電電力量Wb1(n)が電池最大放電電力量Wbmaxよりも小さいときには(No)、ステップST3へ戻って1系放電を継続する。これにより、
図2に示すように、電池電圧Vb1(=出力電圧Vout)が低下していく。1系放電電力量Wb1(n)が電池最大放電電力量Wbmax以上のときには(Yes)、1系放電を中止して、1系直流電源21の過放電による劣化を防止するために、ステップST8へ進む。
【0037】
ステップST8において、スイッチ制御部44は、
図2の時刻t1において、演算部43の判定結果に基づき、
図1Bに示すように、第1切替信号S1により、第1スイッチ12−1をオフに切り替える。この時、第2スイッチ12−2は、オフのままである。そのため、1系直流電源21の放電電力は、瞬断することなく継続して、電源端子21a、ダイオード13−1、共通端子11、及び電源線2aを経由して負荷3へ供給される。この時、電源線2aの出力電圧Voutは、
図2に示すように、ダイオード13−1の順方向の電圧降下値Vfだけ低下し、次のステップST9へ進む。
【0038】
ステップST9において、スイッチ制御部44は、
図2の時刻t2において、演算部43の判定結果に基づき、
図1Cに示すように、第2切替信号S2により、第2スイッチ12−2をオンに切り替える。
図2に示すように、満充電された2系直流電源22の出力電圧により、電源端子22a上の電池電圧Vb2は、放電している1系直流電源21における電源端子21a上の電池電圧Vb1よりも高い。そのため、ダイオード13−1を介して放電していた1系直流電源21からの電力供給が遮断され、2系直流電源22の放電電力が、瞬断することなく継続して、電源端子22a、第2スイッチ12−2、共通端子11、及び電源線2aを経由して負荷3へ供給され、次のステップST10へ進む。
【0039】
ステップST10において、電圧計測部32により、所定のサンプリング時刻t毎に、電源端子22a上の電池電圧Vb2が計測され、更に、ステップST11において、電流計測部30により、所定のサンプリング時刻t毎に、放電された共通端子11上の電池電流+Ibが計測され、これらの電池電圧Vb2及び電池電流+Ibの計測結果が、電圧監視部42及び電流監視部41へそれぞれ送られる。
【0040】
次のステップST12において、演算部43は、電流監視部41及び電圧監視部42の監視結果に基づき、2系放電電力Pb2を次式から算出し、ステップST13へ進む。
Pb2=Vb2*Ib
【0041】
ステップST13において、演算部45は、現在の計測時の2系放電電力量Wb2(n)を次式から算出し、ステップST14へ進む。
Wb2(n)=Wb2(n−1)+Pb2(n)*t
但し、Pb2(n);現在のサンプリング時刻tの2系放電電力
Wb2(n−1);1サンプリング時刻前の2系放電電力量
【0042】
ステップST14において、演算部43は、現在の2系放電電力量Wb2(n)が電池最大放電電力量Wbmaxよりも大きいか否かを判定する。2系放電電力量Wb2(n)が電池最大放電電力量Wbmaxよりも小さいときには(No)、ステップST10へ戻って2系放電を継続する。2系放電電力量Wb2(n)が電池最大放電電力量Wbmax以上のときには(Yes)、ステップST15へ進み、2系放電を中止して他の処理を行うために、
図3Aの処理を終了する。
【0043】
このように、本実施例1では、以下のように動作する。
第1スイッチ12−1に対してダイオード13−1を並列に接続しているので、第1スイッチ12−1が1系直流電源21側に接続されている場合は、ダイオード13−1が導通せず、従来回路と同様に、第1スイッチ12−1を介して負荷3へ電力供給が行われる。その後、1系直流電源21が放電して、電池放電電圧の最低規定電圧Vbminまで低下した際に、第1、第2スイッチ12−1,12−2を2系直流電源22に切り替える動作に入るが、この時、瞬間的に回路オープンの状態が発生する。従来回路では、1系直流電源21及び2系直流電源22が共に負荷3から完全に切り離されてしまうため、スイッチ切り替え中に瞬断が発生する。
【0044】
これに対して、本実施例1では、第1スイッチ12−1が無接続の中間状態になると、ダイオード13−1を経由して1系直流電源21から負荷3へ電力供給を継続するため、スイッチ切り替え中は放電電流に対応したダイオード13−1の順方向の電圧降下値Vfまでしか電圧が低下しない。その後、第2スイッチ12−2が、2系直流電源22との接続に切り替わると、放電していない2系直流電源22の電池電圧Vb2が、1系直流電源21の電池電圧Vb1より高いため、ダイオード13−1を介して放電していた1系直流電源21からの電力供給が遮断され、負荷3への電力供給が2系直流電源22側へ無瞬断で切り替わる。
【0045】
(II) 2系充電開始から1系切り替え充電までの動作
図3Bは、
図1A〜
図1Cにおける2系充電開始から1系切り替え充電までの制御処理を示すフローチャートである。
【0046】
図3Bのフローチャートでは、2系充電期間H4の処理(ステップST21〜ST26)と、スイッチ切替期間H5の処理(ステップST27,ST28)と、1系充電期間H6の処理(ステップST29〜ST34)と、が以下のように行われる。
【0047】
直流電源装置1が再起動して、この直流電力が電源線2a,2bを介して負荷3へ供給されると、
図1Cに示すように、スイッチ制御部44の第1切替信号S1によって第1スイッチ12−1がオフ、第2切替信号S2によって第2スイッチ12−2がオンとなっているため、
図3BのステップST21にて、2系直流電源22への充電が開始され、次のステップST22へ進む。
【0048】
ステップST22において、電圧計測部32により、所定のサンプリング時刻t毎に、電源端子22a上の電池電圧Vb2が計測されると共に、ステップST23において、電流計測部30により、所定のサンプリング時刻t毎に、充電時における共通端子11上の電池電流−Ibが計測され、これらの電池電圧Vb2及び電池電流−Ibの計測結果が、電圧監視部42及び電流監視部41へそれぞれ送られ、ステップST24へ進む。
【0049】
ステップST24において、演算部43は、電流監視部41及び電圧監視部42の監視結果に基づき、2系充電電力−Pb2を次式から算出し、ステップST25へ進む。
−Pb2=Vb2*(−Ib)
【0050】
ステップST25において、演算部45は、現在の計測時の2系放電電力量Wb2(n)を次式から算出し、ステップST26へ進む。
Wb2(n)=Wb2(n−1)−Pb2(n)*t
但し、−Pb2(n);現在のサンプリング時刻tの2系充電電力
Wb2(n−1);1サンプリング時刻前の2系放電電力量
【0051】
ステップST26において、演算部43は、現在の2系放電電力量Wb2(n)が0よりも小さいか否かを判定する。2系放電電力量Wb2(n)が0よりも大きいときには(No)、ステップST22へ戻って2系充電を継続する。2系放電電力量Wb2(n)が0以下のとき(Yes)、2系直流電源22が満充電の状態になっているので、ステップST27,ST28へ進む。
【0052】
ステップST27,ST28において、スイッチ制御部44は、
図1Aに示すように、演算部43の判定結果に基づき、第2切替信号S2により、第2スイッチ12−2をオフに切り替えた後、第1切替信号S1により、第1スイッチ12−1をオンに切り替えて、1系直流電源21への充電を開始し、次のステップST29へ進む。
【0053】
ステップST29において、電圧計測部31により、所定のサンプリング時刻t毎に、電源端子21a上の電池電圧Vb1が計測された後、ステップST30において、電流計測部30により、所定のサンプリング時刻t毎に、充電中の共通端子11上の電池電流−Ibが計測され、これらの電池電圧Vb1及び電池電流−Ibの計測結果が、電圧監視部42及び電流監視部41へそれぞれ送られ、ステップST31へ進む。
【0054】
ステップST31において、演算部43は、電流監視部41及び電圧監視部42の監視結果に基づき、1系充電電力−Pb1を次式から算出し、ステップST32へ進む。
−Pb1=Vb1*(−Ib)
【0055】
ステップST32において、演算部45は、現在の計測時の1系放電電力量Wb1(n)を次式から算出し、ステップST33へ進む。
Wb1(n)=Wb1(n−1)−Pb1(n)*t
但し、−Pb1(n);現在のサンプリング時刻tの1系充電電力
Wb1(n−1);1サンプリング時刻前の1系放電電力量
【0056】
ステップST33において、演算部43は、現在の1系放電電力量Wb1(n)が0よりも小さいか否かを判定する。1系放電電力量Wb1(n)が0よりも大きいときには(No)、ステップST29へ戻って1系充電を継続する。1系放電電力量Wb1(n)が0以下のとき(Yes)、1系直流電源21が満充電になっているので、ステップST34において、
図3Bの処理を終了する。
【0057】
(実施例1の効果)
本実施例1によれば、次の(a)〜(c)のような効果がある。
【0058】
(a) 本実施例1を利用することにより、電池並列接続数に制約がある場合にも、容易に並列数を増やすことが可能となる。
【0059】
(b) 電池系統を切り替える際に、複数の半導体スイッチによる複雑なオン/オフ制御を必要とせず、無瞬断での切り替えが可能となり、負荷3の装置や機器等を停止させることなく、長時間の電池バックアップが可能な電源システムを容易に構築することができ、負荷3への給電信頼性の向上を期待できる。
【0060】
(c) スイッチ切り替え動作時に、それまでスイッチ12−1又は12−2を通過していた電流は、ダイオード13−1でバイパスされるため、スイッチ切り替えによる電流遮断が発生せず、例えば、機械接点式のスイッチ12−1,12−2の場合は、スイッチ切り替え動作によるアークの発生が抑制されることにより、スイッチ12−1,12−2の摩耗が抑制されるという効果も期待できる。
【実施例2】
【0061】
(実施例2の構成)
図4は、本発明の実施例2における電源システムの概略の構成を示す回路図であり、実施例1を示す
図1A中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0062】
本実施例2の電源システムでは、実施例1の切替回路10及び監視制御部40に代えて、これらとは構成の異なる切替回路10A及び監視制御部40Aが設けられている。
【0063】
本実施例2の切替回路10Aでは、実施例1の切替回路10に対して、ダイオード13−1のアノードと電源端子21aとの間に、第3切替信号S3によりオン/オフが切り替えられる第3スイッチ12−3と、ダイオード13−1のアノードと電源端子22aとの間に、第4切替信号S4によりオン/オフが切り替えられる第4スイッチ12−4と、が追加されている。第3、第4スイッチ12−3,12−4は、機械接点式スイッチや、半導体スイッチング素子等により構成されている。
【0064】
更に、本実施例2の監視制御部40Aでは、実施例1の監視制御部40内のスイッチ制御部44に代えて、これとは機能の異なるスイッチ制御部44Aが設けられている。スイッチ制御部44Aは、演算部43の演算・比較結果に基づき、第1、第2スイッチ12−1,12−2をオン/オフするための第1、第2切替信号S1,S2と、第3、第4スイッチ12−3,12−4をオン/オフするための第3、第4切替信号S3,S4と、を生成して所定のタイミングで出力する機能を有している。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0065】
(実施例2の動作)
図5は、
図4におけるスイッチ切り替え動作時の出力電圧推移を示す波形図である。
図2と同様に、
図5の横軸は計測サンプリング時刻(t)、縦軸は出力電圧Vout、電池電圧Vb1,Vb2、及び第1〜第4スイッチ12−1〜12−4のオン/オフ状態である。Vfはダイオード13−1の電圧降下値、Vbminは電池放電電圧の最低規定電圧である。
【0066】
本実施例2では、
図5に示す時刻t0〜t1の1系放電期間H1、時刻t1〜t2のスイッチ切替期間H2、時刻t2〜t3の2系放電期間H3、時刻t3〜t5の2系充電期間H4、時刻t5〜t6のスイッチ切替期間H5、及び、時刻t6以降の1系充電期間H6において、以下のような動作が行われる。
【0067】
図5の時刻t0〜t1の1系放電期間H1において、時刻t0では、
図4に示す監視制御部40A内のスイッチ制御部44Aの第1〜第4切替信号S1〜S4により、第1、第3スイッチ12−1,12−3がオンし、第2、第4スイッチ12−2,12−4がオフする。これにより、1系直流電源21の放電が開始され、この放電電力が、次の経路にて負荷3へ供給され、電池電圧Vb1(=出力電圧Vout)が低下していく。
【0068】
「正極側電源端子21a→第1スイッチ12−1→共通端子11→正極側電源線2a→負荷3→負極側電源線2b→負極側電源端子21b」
【0069】
時刻t1〜t2のスイッチ切替期間H2において、時刻t1では、スイッチ制御部44Aの第1切替信号S1により、第1スイッチ12−1がオフする。すると、1系直流電源21の放電電力が、第3スイッチ12−3、ダイオード13−1、及び電源線2aを経由して負荷3へ供給され、この負荷3への電力供給が継続される。この時、電源線2aの出力電圧Voutは、ダイオード13−1の順方向の電圧降下値Vfだけ低下する。
【0070】
時刻t2〜t3の2系放電期間H3において、時刻t2では、スイッチ制御部44Aの第2切替信号S2により、第2スイッチ12−2がオンする。第2スイッチ12−2がオンすると、ダイオード13−1からの電力供給が遮断され、2系直流電源22からの電力供給に切り替わる。2系直流電源22の放電電力は、次の経路にて負荷3へ供給され、電池電圧Vb2(=出力電圧Vout)が低下していく。
【0071】
「正極側電源端子22a→第2スイッチ12−2→共通端子11→正極側電源線2a→負荷3→負極側電源線2b→負極側電源端子22b」
【0072】
時刻t2が経過すると、スイッチ制御部44Aの第3、第4切替信号S3,S4により、第3スイッチ12−3がオフした後、第4スイッチ12−4がオンする。時刻t3になると、2系直流電源22の電池電圧Vb2(=出力電圧Vout)は、電池放電電圧の最低規定電圧Vbminまで降下する。
【0073】
時刻t3〜t5の2系充電期間H4において、例えば、時刻t3の時に、直流電源装置1が再起動すると、この直流電源装置1の出力電圧Voutが、最低規定電圧Vbminから上昇していく。これにより、直流電源装置1の直流電力が、電源線2a,2bを介して負荷3へ供給される。同時に、直流電源装置1の直流電力により、共通端子11、第2スイッチ12−2、及び、電源端子22aを経由して、2系直流電源22が充電され、電池電圧Vb2が上昇していく。
【0074】
時刻t4になると、スイッチ制御部44Aの第3、第4切替信号S3,S4により、第4スイッチ12−4がオフした後、第3スイッチ12−3がオンする。時刻t5になると、2系直流電源22が満充電されるので、スイッチ制御部44Aの第2切替信号S2により、第2スイッチ12−2がオフする。
【0075】
時刻t5〜t6のスイッチ切替期間H5において、第3スイッチ12−3がオンした後の時刻t5の時に、第2スイッチ12−2がオフする。その後、時刻t6になると、スイッチ制御部44Aの第1切替信号S1により、第1スイッチ12−1がオンし、時刻t6以降の1系充電期間H6へ進む。
【0076】
前述したように、時刻t2の時に2系放電期間H3が開始し、負荷3への電力供給が2系直流電源22に切り替わった後に、第4スイッチ12−4がオンし、直流電源装置1が再起動して、2系直流電源22の充電が完了する時刻t5の前に、第4スイッチ12−4がオフしてから第3スイッチ12−3がオンし、時刻t6の時に、第1スイッチ12−1がオンに切り替わる。第1スイッチ12−1がオンになる1系放電期間H1から、第2スイッチ12−2がオンする2系放電期間H3へ、切り替わる際に、1系直流電源21が完全に過放電状態になる前に、2系直流電源22側へ切り替わる。そのため、2系充電期間H4の終了時刻t5において、2系直流電源22が満充電になった後、第1スイッチ12−1がオンになる1系充電期間H6へ切り替える際に、仮に、直流電源装置1が停止しても、1系直流電源21から第3スイッチ12−3及びダイオード13−1を介して負荷3へ電力供給が可能である。従って、2系直流電源22から1系直流電源21へ切り替わる際にも、無瞬断での切り替えが可能となる。
【0077】
(実施例2の効果)
本実施例2によれば、実施例1と略同様の効果がある。更に、1系放電期間H1から2系放電期間H3へ切り替わる際に、1系直流電源21が完全に過放電状態になる前に、2系直流電源22側へ切り替わる。そのため、2系直流電源22が満充電になった後、1系充電期間H6へ切り替わる際に、仮に、直流電源装置1が停止しても、1系直流電源21から負荷3へ電力供給が可能である。これにより、2系直流電源22から1系直流電源21へ切り替わる際にも、無瞬断での切り替えが可能になる、といった効果がある。
【実施例3】
【0078】
並列接続する直流電源系統は、上記実施例1、2のように2系統だけではなく、3系統以上の複数系統であって対応が可能である。本実施例3では、直流電源系統が3系統の場合について説明する。
【0079】
(実施例3の構成)
図6は、本発明の実施例3における電源システムの概略の構成を示す回路図であり、実施例2を示す
図4中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0080】
本実施例3の電源システムでは、実施例2に対して、第3直流電源としての3系直流電源23が追加され、2系統直流電源22とその3系直流電源23との間に、実施例2の切替回路10Aと同様の構成の切替回路10Bが接続されている。これに対応して、実施例2の監視制御部40Aに代えて、これとは構成の異なる監視制御部40Bが設けられている。
【0081】
追加された3系直流電源23は、1系直流電源21及び2系直流電源22と同様に、正極側電源端子23a及び負極側電源端子23bを有し、この電源端子23a,23b間に、複数の蓄電池が並列に接続されて構成されている。追加された切替回路10Bは、2系直流電源22の電源端子22aと、3系直流電源23の電源端子23aと、の間に接続されている。切替回路10Bは、切替回路10Aと同様の構成であり、4つの第5〜第8切替信号S5〜S8によりそれぞれオン/オフする4つの第5〜第8スイッチ12−5〜12−8と、整流手段としてのダイオード13−2と、により構成されている。第5〜第8スイッチ12−5〜12−8は、第1〜第4スイッチ12−1〜12−4と同様に、機械接点式スイッチや、半導体スイッチング素子等により構成されている。
【0082】
監視制御部40Bでは、実施例2のスイッチ制御部44Aに代えて、これとは機能の異なるスイッチ制御部44Bが設けられている。スイッチ制御部44Bは、演算部43の演算・比較結果に基づき、8つの第1〜第8スイッチ12−1〜12−8をそれぞれオン/オフするための8つの第1〜第8切替信号S1〜S8を生成して所定のタイミングで出力する機能を有している。その他の構成は、実施例2と同様である。
【0083】
(実施例3の動作・効果)
本実施例3の追加された切替回路10Bでは、実施例2の切替回路10Aと同様の動作が行われる。これにより、実施例1、2と同様の効果を奏することができ、直流電源の系統が増えても対応が可能になる。
【0084】
(変形例)
本発明は、上記実施例1〜3に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(1)〜(5)のようなものがある。
【0085】
(1) 1系、2系、3系直流電源21,22,23は、並列接続された複数の蓄電池により構成されているが、他の分散型電源により構成しても良い。例えば、実施例1、2を示す
図1A及び
図4中の2系直流電源22に代えて、あるいは、実施例3を示す
図6中の3系直流電源23に代えて、分散型電源としての可搬型電源装置を非常時のみ接続する構成等に変更しても良い。この場合、無電圧状態で可搬型電源装置を接続してから第2スイッチ12−2(あるいは第6スイッチ12−6)を切り替えることが可能となるため、より安全に作業を行うことができるようになる。
【0086】
(2) ダイオード13−1,13−2は、これに代えて、トランジスタ等の半導体素子からなる他の整流手段で構成しても良い。
【0087】
(3) スイッチ12−1〜12−8を切り替えるための切替信号S1〜S8を生成する監視制御部40,40A、40Bは、図示以外の構成に変更しても良い。例えば、スイッチ制御部44,44A,44Bは、切替信号S1〜S8を出力し、スイッチ12−1〜12−8が正常にオン/オフしているか否かを検出するためのホトカプラ等の検出手段からのスイッチ状態信号を入力し、スイッチ12−1〜12−8が動作不良を起こしている場合には、警報等を出力するような、構成に変更しても良い。
【0088】
(4) 監視制御部40,40A,40Bは、直流電源装置1内に設けられる制御部内に設けても良い。
【0089】
(5) 2つの第1、第2スイッチ12−1,12−2、2つの第3、第4スイッチ12−3,12−4、2つの第5、第6スイッチ12−5,12−6、更に、2つの第7、第8スイッチ12−7,12−8は、それぞれ1つの切替スイッチ(即ち、切替信号によって1つの共通端子と2つの接続端子との間の接続状態が切り替わるスイッチ)により構成しても良い。このような切替スイッチを使用しても、実施例1〜3と同様の作用効果を奏することができる。