特許第6552976号(P6552976)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

特許6552976バーナ、これを備えたボイラ及びこれを備えた船舶
<>
  • 特許6552976-バーナ、これを備えたボイラ及びこれを備えた船舶 図000002
  • 特許6552976-バーナ、これを備えたボイラ及びこれを備えた船舶 図000003
  • 特許6552976-バーナ、これを備えたボイラ及びこれを備えた船舶 図000004
  • 特許6552976-バーナ、これを備えたボイラ及びこれを備えた船舶 図000005
  • 特許6552976-バーナ、これを備えたボイラ及びこれを備えた船舶 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6552976
(24)【登録日】2019年7月12日
(45)【発行日】2019年7月31日
(54)【発明の名称】バーナ、これを備えたボイラ及びこれを備えた船舶
(51)【国際特許分類】
   F23D 11/24 20060101AFI20190722BHJP
   F23D 11/38 20060101ALI20190722BHJP
   F23L 7/00 20060101ALI20190722BHJP
   F23D 14/22 20060101ALI20190722BHJP
   F23D 14/48 20060101ALI20190722BHJP
【FI】
   F23D11/24 A
   F23D11/38 B
   F23L7/00 Z
   F23D14/22 B
   F23D14/48 B
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-17243(P2016-17243)
(22)【出願日】2016年2月1日
(65)【公開番号】特開2017-138017(P2017-138017A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2018年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100169199
【弁理士】
【氏名又は名称】石本 貴幸
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山根 史也
(72)【発明者】
【氏名】森 匡史
(72)【発明者】
【氏名】松下 浩市
(72)【発明者】
【氏名】末野 智
(72)【発明者】
【氏名】天野 正広
(72)【発明者】
【氏名】天野 英輝
【審査官】 佐々木 訓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−056636(JP,A)
【文献】 実公昭60−042247(JP,Y1)
【文献】 特開平11−082939(JP,A)
【文献】 特開2014−122744(JP,A)
【文献】 特開2017−122540(JP,A)
【文献】 特開2011−75174(JP,A)
【文献】 特開2011−252494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 11/00 − 11/46
F23D 14/00 − 14/84
F23L 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料油を噴射する複数の燃料噴射孔と、
各前記燃料噴射孔の周囲から水素を噴射するとともに各前記燃料噴射孔の周囲に水素領域を形成する複数の水素噴射孔と、
各前記水素噴射孔の周囲から燃焼用空気を供給する空気供給部と、
を備え
各前記燃料噴射孔から噴射された燃料油は、酸素不足とされた前記水素領域で燃焼することを特徴とするバーナ。
【請求項2】
前記燃料噴射孔の噴射角度は、各前記燃料噴射孔が形成された燃料噴射管の中心軸線に対して両側にみた角度範囲が60°以下とされていることを特徴とする請求項1に記載のバーナ。
【請求項3】
燃料ガスを噴射する複数の燃料噴射孔と、
各前記燃料噴射孔の隣に設けられ、該燃料噴射孔よりも小径とされた水素を噴射する複数の水素噴射孔と、
各前記燃料噴射孔および各前記水素噴射孔の周囲から燃焼用空気を供給する空気供給部と、
を備え
各前記燃料噴射孔から噴射された燃料ガスは、酸素不足下で燃焼することを特徴とするバーナ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のバーナを備えていることを特徴とするボイラ。
【請求項5】
請求項4に記載のボイラを備えていることを特徴とする船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料油や燃料ガスと水素との混焼が可能なバーナ、これを備えたボイラ及びこれを備えた船舶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶の主機を駆動させる舶用ボイラは、重油やLNGといった炭化水素燃料により運用している。
近年の排ガス規制強化の影響から、硫黄分を多く含む重油の使用に際して、高価な低硫黄重油への燃料転換や、高性能脱硫装置への改造が求められているが、ランニングコスト増加が想定される。また、炭化水素燃料は、二酸化炭素を含む燃焼ガスを排出し、地球温暖化への影響が懸念される。
これに対して、重油またはLNGの一方を水素で代替することにより、硫黄酸化物の生成を抑制し、二酸化炭素排出量を削減することが検討されている。
炭化水素燃料であるLPGと水素とを混焼するバーナについては、下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭60−42247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、水素は燃料中に炭素を含まないため、輻射特性が重油やLNGと大きく異なる。このため、火炉吸熱量の低下が問題となるが、上記特許文献1ではこの点について考慮されていない。
【0005】
また、水素燃焼時に、重油・LNG焚きボイラと同等の性能を得ることができる構造が求められる。水素燃焼は炭化水素燃料と比較して、輻射特性が劣るため、伝熱管のピッチを挟隙化して伝熱管の本数を増加することや、伝熱管にフィンを設置して伝熱面積を増大させることが考えられる。しかし、重油・LNGの燃焼排ガス中に含まれる固形物質の付着等による燃焼ガス流路閉塞等の観点から、このような対策は難しい。したがって、重油・LNG焚きボイラから大幅な構造変更はできない。
【0006】
以上から、水素燃焼時に輻射伝熱量が低下することにより、重油・LNG焚き時と同等のボイラ性能を得ることができないという問題がある。
また、水素燃焼時に輻射伝熱量が低下することにより、火炉内での吸熱が十分に進まずに火炉出口温度が上昇することから、現行の蒸発管や過熱器の材料見直しが必要になるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、大幅なボイラ構造の変化を伴わずに燃料油または燃料ガスと水素との混焼が可能なバーナ、これを備えたボイラ及びこれを備えた船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のバーナ、これを備えたボイラ及びこれを備えた船舶は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるバーナは、燃料油を噴射する複数の燃料噴射孔と、各前記燃料噴射孔の周囲から水素を噴射するとともに各前記燃料噴射孔の周囲に水素領域を形成する複数の水素噴射孔と、各前記水素噴射孔の周囲から燃焼用空気を供給する空気供給部と、を備え、各前記燃料噴射孔から噴射された燃料油は、酸素不足とされた前記水素領域で燃焼することを特徴とする。
【0009】
燃料噴射孔の周囲に水素を噴射するので、燃料噴射孔の周囲には、水素が噴射されて形成される水素領域が存在する。このため、燃料噴射孔から噴射された燃料油(例えば重油)は、さらに外周に存在する空気と出会う前に、燃料噴射孔の周囲に存在する水素領域に噴射される。この水素領域では、水素が燃料油よりも燃焼速度が速いため、水素の燃焼が燃料油の燃焼よりも優先して行われる。したがって、水素領域では、水素燃焼により酸素を消費しているため、酸素不足の領域となる。そして、燃料油は、水素が助燃剤となった状態で、酸素不足下での燃焼が安定的に行われる。これにより、燃料油は酸素不足下で燃焼を開始するので、積極的に煤の発生が進行し、粒子輻射率が増大する。したがって、水素を燃料として混合しても、炉内の輻射伝熱性能が低下することを回避して、十分な火炉吸熱量を確保することが可能となる。
【0010】
さらに、本発明のバーナによれば、前記燃料噴射孔の噴射角度は、各燃料噴射孔が形成された燃料噴射管の中心軸線に対して両側にみた角度範囲が60°以下とされていることを特徴とする。
【0011】
燃料噴射孔の噴射角度について、燃料噴射管の中心軸線に対して両側にみた角度範囲を60°以下の範囲とすることで、中心軸線側に傾斜した噴射角度とする。これにより、水素噴射孔から水素が噴射されて形成される水素領域に対して重油が可及的に長く存在することができ、また、水素領域の外側に位置する空気に対して可及的に遅く導くことができる。したがって、燃料油の酸素不足下での燃焼を促進することができ、輻射率を増大することができる。
【0012】
また、本発明のバーナは、燃料ガスを噴射する複数の燃料噴射孔と、各前記燃料噴射孔の隣に設けられ、該燃料噴射孔よりも小径とされた水素を噴射する複数の水素噴射孔と、各前記燃料噴射孔および各前記水素噴射孔の周囲から燃焼用空気を供給する空気供給部とを備え、各前記燃料噴射孔から噴射された燃料ガスは、酸素不足下で燃焼することを特徴とする。
【0013】
燃料ガスを噴射する燃料噴射孔の隣に、水素を噴射する水素噴射孔が配置されている。そして、水素噴射孔は、燃料噴射孔よりも小径とされている。したがって、燃料噴射孔から噴射された燃料ガスは、水素噴射孔よりも多くの燃料が供給されるので燃料過剰となり、酸素不足下での燃焼となる。
一方、水素噴射孔から噴射された水素は、水素が燃料ガスよりも燃焼速度が速いため、水素の燃焼が燃料ガスの燃焼よりも優先して行われて酸素を消費する。これにより、燃料ガスの燃料をさらに酸素不足下で行わせることができる。
燃料ガスは、水素が助燃剤となった状態で、酸素不足下で安定的に燃焼させられるので、水素を燃料として混合しても、炉内の輻射伝熱性能が低下することを回避して、十分な火炉吸熱量を確保することが可能となる。
【0014】
また、本発明のボイラは、上記のいずれかに記載のバーナを備えていることを特徴とする。
【0015】
上記のいずれかのバーナを備えているので、燃料に水素を混合しても安定した燃焼が行われる。したがって、ボイラ構造の大幅な変更を行うことなく水素混合燃焼を実現することができる。
【0016】
また、本発明の船舶は、上記のボイラを備えていることを特徴とする。
【0017】
舶用ボイラとして上記のボイラを備えているので、大幅な構造変更を行うことなく水素混合燃焼を実現するボイラを備えた船舶を提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
酸素不足下での燃料油または燃料ガスの燃焼を積極的に導入することによって水素燃焼による輻射伝熱量の低下を補うことができるので、大幅なボイラ構造の変化を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る舶用ボイラを示した縦断面図である。
図2図1のバーナを示した正面図である。
図3図2のバーナから噴射される重油の噴射角度を示した縦断面図である。
図4】バーナからの噴射状態を示し、(a)は一実施形態を示した縦断面図であり、(b)は参考例を示した縦断面図である。
図5】第2実施形態に係るバーナを示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1には、本実施形態にかかる舶用ボイラ(以下、単に「ボイラ」という。)1が示されている。ボイラ1は、船舶に設置されており、船舶の主機の駆動に用いられる。
【0021】
ボイラ1は、二胴水管ボイラとされている。ボイラ1は、火炉2の上部に設置された風箱14内に複数のバーナ3を備えている。図1では、1つのバーナ3が示されているが、紙面垂直方向に他のバーナ3が設置されている。
【0022】
バーナ3は、空気ダクト13を介して導入される燃焼用空気としてのバーナ空気を用いて、重油(燃料油)と水素を燃焼して燃焼ガスを生成する。バーナ3の下部には、円筒状のスロート15が取り付けられており、スロート15の内側は、火炉2側に進むにつれて径が拡大する円錐台形状の中空部となっている。バーナ3は、旋回ベーン16a,16b(図2参照)を備えており、旋回ベーン16a,16bによってバーナ空気が旋回させられることによって旋回噴流を噴射する。旋回噴流は、火炉2内を上方から下方へと流れ、燃焼ガス流れ下流側である側方に位置するフロントバンクチューブ4へと向かう。
【0023】
バーナ3から噴射された旋回噴流は火炎を形成し、これにより生成された高温の燃焼ガスは、火炉2の燃焼ガス流れ下流に配設されたフロントバンクチューブ4、過熱器5及び蒸発管群(蒸発器)6を順番に通過する。
【0024】
フロントバンクチューブ4は、多数の伝熱管から構成され、下方から上方にわたって設けられ、燃焼ガス流れに直交するように平面状に配置されている。フロントバンクチューブ4は、火炉2の下方に設けられたヘッダ12と上方の蒸気ドラム10との間を接続する。
【0025】
過熱器5は、多数の伝熱管から構成され、フロントバンクチューブ4に対して平行に下方から上方の途中位置まで設けられ、燃焼ガス流れに直交するように平面状に配置されている。過熱器5は、火炉2の下方に設けられた2つのヘッダ11に接続されている。すなわち、一方のヘッダ11から飽和蒸気が供給され、伝熱管内を上方へ流れて頂部5aで折り返した後に下方に流れる間に、燃焼ガスによって過熱状態まで加熱され、他方のヘッダ11へと導かれる。
【0026】
蒸発管群6は、多数の伝熱管から構成され、過熱器5に対して平行に下方から上方にわたって設けられ、燃焼ガス流れに直交するように平面状に配置されている。蒸発管群6は、下方の水ドラム9と上方の蒸気ドラム10との間を接続している。下方の水ドラム9内の水が加熱されて蒸発されるにしたがい上方に上昇し、蒸気ドラム10内に蒸気が導かれるようになっている。蒸気ドラム10内の飽和蒸気が、図示しない経路を通り過熱器5のヘッダ11へと導かれて過熱されるようになっている。
【0027】
フロントバンクチューブ4、過熱器5及び蒸発管群6の伝熱管内を流れる水や蒸気と熱交換を終えた燃焼ガスは、出口側ガスダクト7を通ってガス出口8からボイラ1の外部へ排出される。
【0028】
図2には、バーナ3の正面図が示されている。バーナ3の中央には、円筒形状の燃料噴射管17がバーナ3の中心軸線C1に沿って設けられており、この燃料噴射管17の先端には、複数の燃料噴射孔18が等角度間隔を有して円周方向に設けられている。
【0029】
燃料噴射管17を包囲するように、燃料噴射管17と共通の中心軸線C1を有する円筒形状の水素噴射管19が設けられている。水素噴射管19の先端には、複数の水素噴射孔20が等角度間隔を有して円周方向に設けられている。
【0030】
水素噴射管19を包囲するように、水素噴射管19と共通の中心軸線C1を有する円筒形状の空気供給管21a,21bが二重管構造をなして設けられている。空気供給管21a,21bには、放射状に伸びる複数の旋回ベーン16a,16bが設けられており、空気供給管21a,21bの先端の空気供給部22a,22bから旋回空気流が流されるようになっている。
【0031】
図3には、燃料噴射孔18の噴射角度が示されている。同図に示されているように、燃料噴射孔18の噴射方向は、バーナ3(即ち燃料噴射管17)の中心軸線C1に対して傾斜している。燃料噴射孔18の噴射角度は、バーナ3の中心軸線C1に対して両側にみた角度範囲θが60°以下とされている。一般の重油炊きボイラのバーナの燃料噴射孔の噴射角度範囲が80°〜100°の範囲なので、本実施形態の燃料噴射孔18の噴射角度は狭角化されている。
【0032】
したがって、図4(a)に示すように、燃料噴射孔18から噴射された重油は、符号J1で示すように、水素噴射孔20からバーナ3の中心軸線C1と平行に噴射された水素流れH1に対して小さな交差角をもって流れる。したがって、重油が水素噴射孔20の外周側を流れる空気流れA1に到達するまでの時間を長くとることができる。
水素噴射孔20から噴射された水素によって循環渦R1が形成され、水素燃焼による着火が行われる。この水素燃焼が起点となり重油の燃焼が行われ、炭素を含む燃料粒子Pによる発光が行われる。
【0033】
これに対して、図4(b)に示した一般の重油炊きボイラの場合には、燃料噴射角が大きいので、燃料噴射孔18の外周側に位置する空気流れA1に直接向かい、重油が空気流れA1に比較的早く到達することになる。
【0034】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
燃料噴射孔18の周囲に水素を噴射するので、燃料噴射孔18の周囲には、水素が噴射されて形成される水素領域が存在する。このため、燃料噴射孔18から噴射された重油は、さらに外周に存在する空気と出会う前に、燃料噴射孔18の周囲に存在する水素領域に噴射される。この水素領域では、水素が重油よりも燃焼速度が速いため、水素の燃焼が重油の燃焼よりも優先して行われる。したがって、水素領域では、水素燃焼により酸素を消費しているため、酸素不足の領域となる。そして、重油は、水素が助燃剤となった状態で、酸素不足下で安定的に燃焼が行われる。これにより、重油は酸素不足下で燃焼を開始するので、積極的な煤の発生が進行し、粒子輻射率が増大する。したがって、水素を燃料として混合しても、炉内の輻射伝熱性能が低下することを回避して、十分な火炉吸熱量を確保することが可能となる。
【0035】
例えば、比重0.9の重油を空気過剰率1.0で燃焼させた場合と、空気過剰率0.9で燃焼させた場合とを比較すると、火炎内平均輻射率はおよそ3倍程度になる。したがって、本実施形態のように、酸素不足下で重油の燃焼を行うことは炉内の輻射伝熱性能を改善するのに有効となる。
輻射率がn倍になることで、水素混焼量を高めることができ、重油燃焼量を1/nまで削減することができる。これにより、燃焼量に対する重油中の硫黄分が占める割合が低下することから、排ガス中硫黄酸化物濃度が低下する。
また、本実施形態によれば、水素混焼が可能となるので、低硫黄重油への燃料転換、脱硫装置高性能化といった措置が不要になる。
また、水素混焼によって重油燃焼量が低下するので、二酸化炭素排出量を削減できる。
【0036】
燃料噴射孔18の噴射角度について、燃料噴射管17の中心軸線C1に対して両側にみた角度範囲を60°以下の範囲とすることで、中心軸線C1側に傾斜した噴射角度とすることとした。これにより、水素噴射孔20から水素が噴射されて形成される水素領域に対して重油が可及的に長く存在することができ、また、水素領域の外側に位置する空気に対して可及的に遅く導くことができる。したがって、重油の酸素不足下での燃焼を促進することができ、輻射率を増大することができる。
また、水素の燃焼速度が重油よりも十分に速いことから、バーナ3近傍での安定燃焼を期待でき、水素が助燃剤として働くことで噴射角が狭くなった場合にも、着火・保炎性能を確保することができる。
【0037】
また、上述のように本実施形態のバーナ3は、重油と水素との混合燃焼を安定して行うことができるので、過熱器5等の材質の変更といったボイラ構造の大幅な変更を行う必要がない。
【0038】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態では、第1実施形態に対して、燃料が重油ではなくLNG(燃料ガス)である点で相違する。したがって、バーナの構造が異なるが、ボイラの全体構造は同様なので、その説明は省略する。
【0039】
図5には、本実施形態に係るバーナ3’の正面図が示されている。バーナ3’は、LNGと水素との混焼に用いられる。バーナ3’には、複数の燃料噴射孔18’が等角度間隔を有して円周方向に複数設けられている。また、各燃料噴射孔18’の間には、水素噴射孔20’が等角度間隔を有して円周方向に設けられている。すなわち、燃料噴射孔18’の両隣に、水素噴射孔20’が配置されている。水素噴射孔20’の口径は、燃料噴射孔18’の口径よりも小さい。
燃料噴射孔18’及び水素噴射孔20’の外周側には、複数の旋回ベーン16を有する空気供給部22が設けられている。
【0040】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
LNGを噴射する燃料噴射孔18’の両隣に、水素を噴射する水素噴射孔20’が配置されている。そして、水素噴射孔20’は、燃料噴射孔18’よりも小径とされている。したがって、燃料噴射孔18’から噴射されたLNGは、水素噴射孔20’よりも多くの燃料が供給されるので燃料過剰となり、酸素不足下での燃焼となる。
一方、水素噴射孔20’から噴射された水素は、水素がLNGよりも燃焼速度が速いため、水素の燃焼がLNGの燃焼よりも優先して行われて酸素を消費する。これにより、LNGの燃料をさらに酸素不足下で行わせることができる。
LNGは、水素が助燃剤となった状態で、酸素不足下で安定的に燃焼させられるので、LNG中の炭素分の発光によって輻射量を増加させることができる。したがって、水素を燃料として混合しても、炉内の輻射伝熱性能が低下することを回避して、十分な火炉吸熱量を確保することが可能となる。
【0041】
なお、バーナ3’で燃焼させる燃料ガスとしては、本実施形態のように典型的にはLNGが挙げられるが、例えばLPGのように他の燃料ガスであっても良い。また、燃料噴射孔18’から噴射する燃料ガスに水素を混合してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 ボイラ
2 火炉
3,3’ バーナ
4 フロントバンクチューブ
5 過熱器
5a 頂部
6 蒸発管群
9 水ドラム
7 出口側ガスダクト
8 ガス出口
10 蒸気ドラム
11 ヘッダ
12 ヘッダ
13 空気ダクト
14 風箱
15 スロート
16,16a,16b 旋回ベーン
17 燃料噴射管
18,18’ 燃料噴射孔
19 水素噴射管
20,20’ 水素噴射孔
21a,21b 空気供給管
22,22a,22b 空気供給部
図1
図2
図3
図4
図5